(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-27
(45)【発行日】2023-10-05
(54)【発明の名称】ストラドルドビークル用多重通信ネットワーク接続無線通信装置及びストラドルドビークル
(51)【国際特許分類】
B62J 45/00 20200101AFI20230928BHJP
B60R 16/023 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
B62J45/00
B60R16/023 P
(21)【出願番号】P 2021565608
(86)(22)【出願日】2020-12-16
(86)【国際出願番号】 JP2020046880
(87)【国際公開番号】W WO2021125202
(87)【国際公開日】2021-06-24
【審査請求日】2022-04-21
(31)【優先権主張番号】P 2019228935
(32)【優先日】2019-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001531
【氏名又は名称】弁理士法人タス・マイスター
(72)【発明者】
【氏名】渋谷 博
(72)【発明者】
【氏名】竹内 友宏
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 大樹
【審査官】渡邊 義之
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0286148(US,A1)
【文献】特開2016-197812(JP,A)
【文献】特開2013-19716(JP,A)
【文献】特開2008-24015(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 16/023- 16/033
B62J 45/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも部分的に樹脂製であり且つ車両外観を成す外観部品と、駆動源と、前記駆動源を制御する駆動源制御装置と、少なくとも前記駆動源制御装置と通信可能に接続された鞍乗型車両用多重通信ネットワークとを備える鞍乗型車両に搭載されるように構成され、双方向通信機能を備えた鞍乗型車両用多重通信ネットワーク接続無線通信装置であって、
前記鞍乗型車両用多重通信ネットワーク接続無線通信装置は、
前記鞍乗型車両用多重通信ネットワークに通信可能に接続され、無線通信機能を有する無線通信装置を含む通信回路と、
故障診断ルート経由通信用カプラと、
前記通信回路と前記故障診断ルート経由通信
用カプラとの接続部と、前記通信回路とを収容するハウジングと
を含み、
前記故障診断ルート経由通信用カプラは、
前記外観部品によって覆われることにより前記鞍乗型車両の外部から直接視認されないように前記鞍乗型車両に設けられた故障診断装置用カプラと機械的かつ電気的に接続され、
前記通信回路が、前記故障診断ルート経由
通信用カプラを通じて、給電を受けるとともに、前記故障診断ルート経由通信用カプラ及び前記無線通信装置を介して、
第1通
信及び
第2通信を実行するように構成され、
前記
第1通
信は、前記通信回路が、前記故障診断ルート経由通信用カプラを介して、前記駆動源制御装置から前記鞍乗型車両用多重通信ネットワークに出力された車内データを取得し、前記無線通信装置を介して前記車内データを外部装置に出力する処理であり、
前記
第2通
信は、前記通信回路が、前記無線通信装置を介して、前記鞍乗型車両用多重通信ネットワークに接続された機器が取得可能な車外データを取得し、前記故障診断ルート経由通信用カプラを介して、前記車外データを前記鞍乗型車両用多重通信ネットワークに出力する処理であり、
前記鞍乗型車両用多重通信ネットワークに接続された機器は、情報提示機能を備える機器であり、
前記通信回路は、前記無線通信装置を介して、前記情報提示機能を備える機器が情報提示に用いる前記車外データを取得し、前記故障診断ルート経由通信用カプラを介して、前記鞍乗型車両用多重通信ネットワークに出力するように構成される、
双方向通信機能を備えた鞍乗型車両用多重通信ネットワーク接続無線通信装置。
【請求項2】
前記通信回路は、前記故障診断ルート経由通信用カプラを介して、前記車外データを取得した前記機器が当該取得した車外データに応じて前記鞍乗型車両用多重通信ネットワークに出力した車内データを取得し、前記無線通信装置を介して、前記機器が前記鞍乗型車両用多重通信ネットワークに出力した前記車内データを前記外部装置に出力する、
請求項1に記載の双方向通信機能を備えた鞍乗型車両用多重通信ネットワーク接続無線通信装置。
【請求項3】
前記通信回路は、前記無線通信装置を介して入力される前記車外データの通信量、通信速度、通信頻度、データの種類の少なくとも一つが、前記故障診断ルート経由通信用カプラを介して取得される前記車内データのそれより小さくなるように構成される、
請求項1又は2に記載の双方向通信機能を備えた鞍乗型車両用多重通信ネットワーク接続無線通信装置。
【請求項4】
前記通信回路は、前記故障診断ルート経由通信用カプラを介して取得される前記車内データ、又は前記無線通信装置を介して入力される前記車外データの少なくとも一部を、給電を受けていない状態で記憶するように構成される、
請求項1~3のいずれかに記載の双方向通信機能を備えた鞍乗型車両用多重通信ネットワーク接続無線通信装置。
【請求項5】
前記通信回路は、前記故障診断ルート経由通信用カプラを介して取得される前記車内データの異常、前記無線通信装置を介して入力される前記車外データの異常、及び前記通信回路の機能異常の少なくとも1つが、前記無線通信装置を介してデータ通信する外部装置、又は、前記駆動源制御装置で認識されるように構成される、
請求項1~4のいずれかに記載の双方向通信機能を備えた鞍乗型車両用多重通信ネットワーク接続無線通信装置。
【請求項6】
前記故障診断ルート経由通信用カプラは、故障診断装置が前記故障診断装置用カプラと接続される時には、前記故障診断装置用カプラから取り外され、前記故障診断装置が前記故障診断装置用カプラと接続されない時には、前記故障診断装置用カプラに取り付けられることを可能とするように、前記故障診断装置用カプラに対して着脱可能に構成される、
請求項1~5のいずれかに記載の双方向通信機能を備えた鞍乗型車両用多重通信ネットワーク接続無線通信装置。
【請求項7】
請求項1~6のいずれかに記載された双方向通信機能を備えた鞍乗型車両用多重通信ネットワーク接続無線通信装置が通信可能に接続される前記鞍乗型車両用多重通信ネットワークと、前記鞍乗型車両用多重通信ネットワークに通信可能に接続され、前記駆動源を制御する前記駆動源制御装置と、を備える鞍乗型車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鞍乗型車両に設けられた多重通信ネットワークに接続される、無線通信機能を備えた鞍乗型車両用多重通信ネットワーク接続無線通信装置及び鞍乗型車両に関する。
【背景技術】
【0002】
車載LAN(Local Area Network)を備えた鞍乗型車両が提案されている。そのような鞍乗型車両は、車載機器とこれを制御するコントローラとの組を複数搭載している。例えば、複数のコントローラは、車載LANを介して通信可能に接続されている。複数のコントローラは、車載LANを介して相互にデータの交換を行う。
【0003】
特許文献1には、多重通信線を用いて車載LANが構築された自動二輪車が開示されている。その車載LANは、通信プロトコルにCAN(Controller Area Network)を用いて時分割多重でデータ通信を行う構成となっている。自動二輪車は、ノイズ源となる機器が鞍乗型車両の中央に配置されることが多い。また、自動二輪車は、四輪自動車よりも小型である。このため、自動二輪車の特徴に合わせたノイズ対策が提案されている。
【0004】
特許文献2には、多重通信ネットワークとしてのCANを使用した通信制御システムを搭載した自動二輪車が開示されている。自動二輪車は、四輪自動車よりも小型である。そのため、自動二輪車において機器を搭載できるスペースは、四輪自動車のそれよりも小さい。そのため、自動二輪車においては、CANによって接続される制御ユニットに設けられたCAN通信回路(CANコントローラ)の数をできるだけ少なくすることが望まれている。また、複数のCANコントローラがネットワークに接続されていると、CANコントローラの処理負荷が大きくなり、通信調停の頻度が高まる。これにより、CANの通信速度が低下するおそれが高まる。そこで、自動二輪車の特徴に合わせてCAN通信とシリアル通信とを併用することが提案されている。なお、自動二輪車は、鞍乗型車両の一種である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第4717569号公報
【文献】特許第5186325号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
多重通信ネットワークとしてのCANを搭載した、自動二輪車のような鞍乗型車両が増加している。CANを搭載した鞍乗型車両において、CANを利用して鞍乗型車両と外部装置との間のデータ通信を無線通信で行うことで、鞍乗型車両に搭載したCANの活用範囲を拡大することが求められている。しかしながら、上述したように、鞍乗型車両は、四輪自動車よりも小さい。また、鞍乗型車両は、高圧水で洗浄された時に四輪自動車より内部まで水が浸入しやすい。さらに、鞍乗型車両は、四輪自動車よりも軽量であるため、車体が振動しやすい。このような鞍乗型車両の特徴が考慮された鞍乗型車両の多重通信ネットワークの活用範囲を拡大するデータ通信が求められている。
【0007】
本発明の目的は、鞍乗型車両の特徴が考慮され、鞍乗型車両に設けられた多重通信ネットワークの活用範囲を拡大できる、多重通信ネットワークに接続され且つ無線通信機能を備えた鞍乗型車両用多重通信ネットワーク接続無線通信装置及び鞍乗型車両を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
[態様1]
本発明の一実施形態に係る鞍乗型車両用多重通信ネットワーク接続無線通信装置は、少なくとも部分的に樹脂製であり且つ車両外観を成す外観部品と、駆動源と、駆動源を制御する駆動源制御装置と、少なくとも駆動源制御装置と通信可能に接続された鞍乗型車両用多重通信ネットワークとを備える鞍乗型車両に搭載されるように構成され、双方向通信機能を備える。鞍乗型車両用多重通信ネットワーク接続無線通信装置は、鞍乗型車両用多重通信ネットワークに通信可能に接続され、無線通信機能を有する無線通信装置を含む通信回路と、故障診断ルート経由通信用カプラと、通信回路と故障診断ルート経由通信用カプラとの接続部、及び通信回路を収容するハウジングとを含む。故障診断ルート経由通信用カプラは、外観部品によって覆われることにより鞍乗型車両の外部から直接視認されないように鞍乗型車両に設けられた故障診断装置用カプラと機械的かつ電気的に接続される。通信回路は、故障診断ルート経由通信用カプラを通じて、給電を受けるとともに、故障診断ルート経由通信用カプラ及び無線通信装置を介して、第1通信及び第2通信を実行するように構成される。
第1通信は、通信回路が、故障診断ルート経由通信用カプラを介して、駆動源制御装置から鞍乗型車両用多重通信ネットワークに出力された車内データを取得し、無線通信装置を介して、車内データを外部装置に出力する処理である。
第2通信は、通信回路が、無線通信装置を介して、鞍乗型車両用多重通信ネットワークに接続された機器が取得可能な車外データを取得し、故障診断ルート経由通信用カプラを介して、車外データを鞍乗型車両用多重通信ネットワークに出力する処理である。
【0009】
故障診断ルート経由通信用カプラは、少なくとも部分的に樹脂製であり且つ車両外観を成す鞍乗型車両の外観部品で外部から直接見えない位置に設けられた故障診断装置用カプラに機械的及び通信可能に接続される。鞍乗型車両用多重通信ネットワーク接続無線通信装置は、鞍乗型車両用多重通信ネットワークに通信可能に接続され、無線通信機能を有する無線通信装置を含む通信回路と、鞍乗型車両用多重通信ネットワークを介して駆動源制御装置と通信可能に接続される故障診断ルート経由通信用カプラとを含む。また、鞍乗型車両用多重通信ネットワーク接続無線通信装置は、故障診断ルート経由通信用カプラと通信回路との接続部、及び、通信回路を収容するハウジングを含む。これにより、鞍乗型車両用多重通信ネットワーク接続無線通信装置は、コンパクトに構成される。鞍乗型車両において、故障診断装置用カプラは、少なくとも一部が樹脂製である外観部品によって覆われることにより、外部から直接見えないように設けられている。故障診断装置用カプラは、例えば、(A)外部空間から許可されたアクセスが容易な位置であり、かつ、無線通信する際の障害が少ない位置に設けられている。外部空間から許可されたアクセスとは、例えば、鍵の存在により鞍乗型車両の外部からアクセスが許可されていることを意味する。故障診断装置用カプラは、例えば、(B)外部空間から許可されたアクセスが容易な位置であり、かつ、高圧水による洗浄で水を受けない位置に設けられている。故障診断装置用カプラは、例えば、(C)外部空間からの許可されないアクセスが抑制される位置に設けられている。外部空間から許可されないアクセスとは、鍵の不存在により鞍乗型車両の外部からアクセスが許可されていないことを意味する。故障診断装置用カプラは、例えば、(D)鞍乗型車両の大きさに比較して比較的大きな設置スペースを必要とする部品であり、それが考慮された位置に設けられている。
【0010】
鞍乗型車両用多重通信ネットワーク接続無線通信装置は、上述のようにコンパクトに形成され、鞍乗型車両に特有な課題を解決できるように構成される。さらに、故障診断装置用カプラの特徴(A)(B)(C)(D)を利用可能であり、それにより、優れた効果が実現可能である。通信回路によって実行される第1通信は、通信回路が、故障診断ルート経由通信用カプラを介して、駆動源制御装置から鞍乗型車両用多重通信ネットワークに出力された車内データを取得し、無線通信装置を介して、車内データを外部装置に出力する処理である。通信回路によって実行される第2通信は、通信回路が、無線通信装置を介して、鞍乗型車両用多重通信ネットワークに接続された機器が取得可能な車外データを取得し、通信用カプラを介して、車外データを鞍乗型車両用多重通信ネットワークに出力する処理である。つまり、通信回路は、双方向通信機能を備える。要するに、鞍乗型車両用CAN接続無線通信装置は、故障診断装置用カプラ及び無線通信装置を利用した双方向通信機能を備える。これにより、鞍乗型車両の特徴が考慮され、鞍乗型車両に設けられた多重通信ネットワークの活用範囲を拡大できる、多重通信ネットワークに接続され且つ無線通信機能を備えた鞍乗型車両用多重通信ネットワーク接続無線通信装置を提供することができる。
【0011】
鞍乗型車両用多重通信ネットワーク接続無線通信装置は、コンパクトに形成され、それ故、以下の効果を奏する。より詳細には、鞍乗型車両のような小型の車両において、故障診断装置にケーブルを介して接続されたカプラを故障診断装置用カプラに着脱するためのスペースを利用して、故障診断装置用カプラに故障診断ルート経由通信用カプラを接続した状態で鞍乗型車両の走行や鞍乗型車両の保管を行うことができる。
【0012】
また、鞍乗型車両用多重通信ネットワーク接続無線通信装置は、コンパクトに形成され、例えば、故障診断装置用カプラの特徴(A)(B)(C)(D)を利用することで、以下の効果を実現可能である。より詳細には、特徴(A)を利用することにより、良好な通信状態を得ることができる。特徴(B)を利用することにより、鞍乗型車両用多重通信ネットワーク接続無線通信装置に対する防水対策を行うことができる。特徴(C)を利用することにより、鞍乗型車両へのアクセスが許可された者以外の者に鞍乗型車両用多重通信ネットワーク接続無線通信装置を触られることを防止できる。特徴(D)を利用することにより、鞍乗型車両に新たなスペースを設ける必要がない。より詳細には、四輪車両は、鞍乗型車両よりも大型である。しかしながら、鞍乗型車両において故障診断装置用カプラに接続されるカプラ(つまり、ケーブルを介して故障診断装置に接続されたカプラ)は、四輪車両において故障診断装置用カプラに接続されるカプラと同じ大きさである。そのため、鞍乗型車両の全体に占めるカプラ(故障診断装置にケーブルを介して接続されるカプラ)の割合は、四輪車両の全体に占めるカプラの割合よりも高くなる。前記のように、鞍乗型車両は小型なので、故障診断装置カプラを故障診断装置用カプラに接続するためのスペースの確保が難しい。また、故障診断装置にケーブルを介して接続されたカプラは、故障診断装置用カプラに着脱可能である。そのため、故障診断装置にケーブルを介して接続されたカプラを故障診断装置用カプラに着脱するためのスペースも必要となる。このようなスペースは、鞍乗型車両において外部から直接見えない位置に設けられる必要がある。そのため、故障診断装置にケーブルを介して接続されたカプラを故障診断装置用カプラに接続するためのスペースの確保がより難しい。したがって、鞍乗型車両用多重通信ネットワーク接続無線通信装置がコンパクトに構成されていれば、故障診断装置にケーブルを介して接続されたカプラを故障診断装置用カプラに着脱するためのスペースを利用して、鞍乗型車両用多重通信ネットワーク接続無線通信装置を配置することが可能となる。よって、鞍乗型車両用多重通信ネットワーク接続無線通信装置を配置するために、鞍乗型車両に新たなスペースを設ける必要がない。これにより、鞍乗型車両用多重通信ネットワーク接続無線通信装置を配置するために、鞍乗型車両の構造を変更しなくてもよい。
【0013】
[態様2]
本発明の一実施形態において、通信回路は、故障診断ルート経由通信用カプラを介して、車外データを取得した機器が当該取得した車外データに応じて鞍乗型車両用多重通信ネットワークに出力した車内データを取得し、無線通信装置を介して、機器が鞍乗型車両用多重通信ネットワークに出力した車内データを外部装置に出力する。これにより、故障診断装置用カプラ及び無線通信装置を利用し、今までの無線通信装置では取得できなかった車内データを取得し、無線通信装置を介して当該取得した車内データを外部装置に出力することができる。
【0014】
[態様3]
本発明の一実施形態において、通信回路は、無線通信装置を介して入力される車外データの通信量、通信速度、通信頻度、データの種類の少なくとも一つが、故障診断ルート経由通信用カプラを介して取得される車内データのそれより小さくなるように構成される。これにより、故障診断装置用カプラ及び無線通信装置を利用し、鞍乗型車両に設けられた多重通信ネットワークへの負荷を抑制しつつ、当該多重通信ネットワークの活用範囲を拡大できる。
【0015】
[態様4]
本発明の一実施形態において、通信回路は、故障診断ルート経由通信用カプラを介して取得される車内データ、又は無線通信装置を介して入力される車外データの少なくとも一部を、給電を受けていない状態で記憶するように構成される。これにより、故障診断装置用カプラ及び無線通信装置を利用し、常時通信しなければ取得できなかった車内データを取得し、無線通信装置を介して当該取得した車内データを外部装置に出力することができる。
【0016】
[態様5]
本発明の一実施形態に係る通信回路は、故障診断ルート経由通信用カプラを介して取得される車内データの異常、無線通信装置を介して入力される車外データの異常、及び通信回路の機能異常の少なくとも1つが、無線通信装置を介してデータ通信する外部装置、又は、駆動源制御装置で認識されるように構成される。これにより、故障診断装置用カプラ及び無線通信装置を利用し、鞍乗型車両に設けられた多重通信ネットワークへの負荷を抑制しつつ、当該多重通信ネットワークの活用範囲を拡大できる。
【0017】
[態様6]
本発明の一実施形態において、鞍乗型車両用多重通信ネットワークに接続された機器は、情報提示機能を備える機器であり、通信回路は、無線通信装置を介して、情報提示機能を備える機器が情報提示に用いる車外データを取得し、故障診断ルート経由通信用カプラを介して、鞍乗型車両用多重通信ネットワークに出力するように構成される。これにより、故障診断装置用カプラ及び無線通信装置を利用し、情報提示機能を備える機器が情報提示することができる車外データを、無線通信装置を介して取得し、故障診断ルート経由通信用カプラを介して鞍乗型車両用多重通信ネットワークに出力することができる。
【0018】
[態様7]
本発明の一実施形態において、故障診断ルート経由通信用カプラは、故障診断装置が故障診断装置用カプラと接続される時には、故障診断装置用カプラから取り外され、故障診断装置が故障診断装置用カプラと接続されない時には、故障診断装置用カプラに取り付けられることを可能とするように、故障診断装置用カプラに対して着脱可能に構成される。故障診断装置が故障診断装置用カプラに接続されない限り、故障診断装置用カプラに故障診断ルート経由通信用カプラを接続したままにすることができる。
【0019】
[態様8]
本発明の一実施形態に係る鞍乗型車両は、上記態様1~7のいずれかに記載された、双方向通信機能を備えた鞍乗型車両用多重通信ネットワーク接続無線通信装置が通信可能に接続される鞍乗型車両用多重通信ネットワークと、鞍乗型車両用多重通信ネットワークに通信可能に接続され、駆動源を制御する駆動源制御装置とを備える。これにより、上記態様1~7のいずれかに記載された、双方向通信機能を備えた鞍乗型車両用多重通信ネットワーク接続無線通信装置を使用して鞍乗型車両に設けられた多重通信ネットワークの活用範囲を拡大できる鞍乗型車両を提供することができる。
【0020】
この発明の上述の目的及びその他の目的、特徴、局面及び利点は、添付図面に関連して行われる以下のこの発明の実施形態の詳細な説明から一層明らかとなろう。本明細書にて使用される場合、用語「及び/又は(and/or)」は1つの、又は複数の関連した列挙されたアイテム(items)のあらゆる又は全ての組み合わせを含む。本明細書中で使用される場合、用語「含む、備える(including)」、「含む、備える(comprising)」又は「有する(having)」及びその変形の使用は、記載された特徴、工程、操作、要素、成分及び/又はそれらの等価物の存在を特定するが、ステップ、動作、要素、コンポーネント、及び/又はそれらのグループのうちの1つ又は複数を含むことができる。他に定義されない限り、本明細書で使用される全ての用語(技術用語及び科学用語を含む)は、本発明が属する当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。一般的に使用される辞書に定義された用語のような用語は、関連する技術及び本開示の文脈における意味と一致する意味を有すると解釈されるべきであり、本明細書で明示的に定義されていない限り、理想的又は過度に形式的な意味で解釈されることはない。本発明の説明においては、多数の技術及び工程が開示されていると理解される。これらの各々は個別の利益を有し、それぞれは、他の開示された技術の1つ以上、又は、場合によっては全てと共に使用することもできる。従って、明確にするために、この説明は、不要に個々のステップの可能な組み合わせの全てを繰り返すことを控える。それにもかかわらず、明細書及び特許請求の範囲は、そのような組み合わせが全て本発明及び特許請求の範囲内にあることを理解して読まれるべきである。以下の説明では、説明の目的で、本発明の完全な理解を提供するために多数の具体的な詳細を述べる。しかしながら、当業者には、これらの特定の詳細なしに本発明を実施できることが明らかである。本開示は、本発明の例示として考慮されるべきであり、本発明を以下の図面又は説明によって示される特定の実施形態に限定することを意図するものではない。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、鞍乗型車両の特徴が考慮され、鞍乗型車両に設けられた多重通信ネットワークの活用範囲を拡大できる、多重通信ネットワークに接続される無線通信機能を備えた鞍乗型車両用多重通信ネットワーク接続無線通信装置及び鞍乗型車両を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】鞍乗型車両用多重通信ネットワーク接続無線通信装置を備えた鞍乗型車両の左側面図である。
【
図2】鞍乗型車両用多重通信ネットワーク接続無線通信装置の概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態による鞍乗型車両1の詳細について説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、例示である。本発明は、以下に説明する実施の形態によって、何等、限定的に解釈されるものではない。本発明及び実施の形態は、鞍乗型車両1の進行方向を前方として方向を定義し、記載されている。
【0024】
[鞍乗型車両と基本構成]
鞍乗型車両1は、自動二輪車である。鞍乗型車両1は、鞍乗型車両用多重通信ネットワークとしてのCAN通信回路2を備える。CAN通信回路2は、鞍乗型車両1に設けられた多重通信ネットワークであり、その通信プロトコルはCANである。鞍乗型車両1は、CAN通信回路2に通信可能に接続される複数の装置を備える。鞍乗型車両1は、駆動源31を備える。鞍乗型車両1は、駆動源制御装置3を備える。駆動源制御装置3は、駆動源31を制御する。鞍乗型車両1は、情報提示装置に電気的に接続される情報提示制御装置4を備える。鞍乗型車両1は、ヘッドライトに電気的に接続されるヘッドライト制御装置5を備える。鞍乗型車両1は、電子制御サスペンションに電気的に接続されるサスペンション制御装置6を備える。鞍乗型車両1は、ブレーキ装置に電気的に接続されるブレーキ制御装置7を備える。鞍乗型車両1は、慣性計測装置(IMU:Inertial Measurement Unit)8を備える。
【0025】
駆動源制御装置3、情報提示制御装置4、ヘッドライト制御装置5、サスペンション制御装置6、ブレーキ制御装置7及びIMU8は、CAN通信回路2に通信可能に接続される。駆動源制御装置3、情報提示制御装置4、ヘッドライト制御装置5、サスペンション制御装置6、ブレーキ制御装置7及びIMU8は、CAN通信回路2を介してデータ通信を行う。鞍乗型車両1は、複数の外観部品9を備える。複数の外観部品9は、鞍乗型車両1の前部に設けられるフロントカバー91、ヘッドライトユニット92、鞍乗型車両1の前部の左サイド及び右サイドを覆う前サイドカバー93、鞍乗型車両1の中央部及び後部の左サイド及び右サイドを覆う後サイドカバー94、及びシート95を含む。フロントカバー91、ヘッドライトユニット92、前サイドカバー93、後サイドカバー94及びシート95は、樹脂又は金属で形成される。本実施の形態では、フロントカバー91、ヘッドライトユニット92、前サイドカバー93、後サイドカバー94及びシート95は、基本的に樹脂で形成される。
【0026】
[無線通信装置]
CAN通信回路2には、カプラ10が接続されている。カプラ10は、専用の故障診断装置又はパーソナルコンピューターで構成される故障診断装置をケーブルで通信可能に接続するために設けられた故障診断装置用カプラである。カプラ10は、少なくとも一部が樹脂製である外観部品9で外部から直接見えない位置に設けられている。具体的には、樹脂製の後サイドカバー94及び樹脂製の底板を含むシート95により外部から直接見えない位置に設けられている。なお、CAN通信回路2は、給電機能を備えている。CAN通信回路2は、カプラ10を介して接続された機器に給電可能である。CAN接続無線通信装置11は、鞍乗型車両1に設けられた多重通信ネットワーク、すなわち、CAN通信回路2に接続され、双方向の無線通信が可能な無線通信装置である。CAN接続無線通信装置11は、カプラ10に機械的及び電気的に接続される故障診断ルート経由通信用カプラとしての通信用カプラ12を含む。CAN接続無線通信装置11は、通信用カプラ12を介してCAN通信回路2に通信可能に接続される通信回路13を含む。通信回路13は、無線通信機能を備える無線通信装置14を含む。通信回路13は、例えば、1枚の基板により構成されている。また、この1枚の基板は、モールドされている。これにより、通信回路13には、防水処理が施されている。
【0027】
[態様1]
CAN通信回路2は、鞍乗型車両1に搭載され、少なくとも駆動源31を制御する駆動源制御装置3が通信可能に接続される。CAN接続無線通信装置11は、CAN通信回路2に通信可能に接続され、かつ、無線通信機能を備える。CAN接続無線通信装置11は、CAN通信回路2に通信可能に接続され、少なくとも一部が樹脂製である外観部品9で外部から直接見えない位置に設けられたカプラ10に機械的及び通信可能に接続される通信用カプラ12を含む。CAN接続無線通信装置11は、通信用カプラ12に通信可能に接続され、通信用カプラ12を通じて給電され、無線通信装置14を含む通信回路13を含む。鞍乗型車両用CAN接続無線通信装置11は、通信用カプラ12と通信回路13との接続部、及び、通信回路13を収容するハウジング15を含む。通信回路13は、以下の2点を特徴とする。(1)通信回路13は、通信用カプラ12を介して駆動源制御装置3からCAN通信回路2に出力された車内データを取得し、無線通信装置14を介して車内データを外部装置に出力する。(2)通信回路13は、無線通信装置14を介してCAN通信回路2に接続された機器が取得可能な車外データを取得し、通信用カプラ12を介して車外データをCAN通信回路2に出力する。通信回路13は、双方向通信機能を備える。CAN接続無線通信装置11は、双方向通信機能を備える。
【0028】
[態様1の作用効果]
通信用カプラ12は、少なくとも一部が樹脂製である外観部品9で外部から直接見えない位置に設けられたカプラ10に機械的及び通信可能に接続される。CAN接続無線通信装置11は、通信用カプラ12に通信可能に接続され、通信用カプラ12を通じて給電され、無線通信装置14を含む通信回路13を含む。また、CAN接続無線通信装置11は、通信用カプラ12と通信回路13との接続部、及び、通信回路13を収容するハウジング15を含む。これにより、CAN接続無線通信装置11は、コンパクトに構成される。鞍乗型車両1において、カプラ10は、少なくとも一部が樹脂製である外観部品9で覆われることによって、外部から直接見えない位置に設けられており、(A)外部空間から許可されたアクセスが容易な位置であり、かつ、無線通信する際の障害が少ない位置に設けられている。カプラ10は、(B)外部空間から許可されたアクセスが容易な位置であり、かつ、高圧水による洗浄で水を受けない位置に設けられている。カプラ10は、(C)外部空間からの許可されないアクセスが抑制される位置に設けられている。カプラ10は、(D)鞍乗型車両1の大きさに比較して比較的大きな設置スペースを必要とする部品であり、それが考慮された位置に設けられている。
【0029】
CAN接続無線通信装置11は、コンパクトに形成され、かつ、カプラ10の特徴(A)(B)(C)(D)を利用することで、鞍乗型車両1に特有な課題を解決できるように構成される。(1)通信回路13は、通信用カプラ12を介して駆動源制御装置3からCAN通信回路2に出力された車内データを取得し、無線通信装置14を介して車内データを外部装置に出力する。(2)通信回路13は、無線通信装置14を介してCAN通信回路2に接続された機器が取得可能な車外データを取得し、通信用カプラ12を介して車外データをCAN通信回路2に出力する。通信回路13は、双方向通信機能を備える。CAN接続無線通信装置11は、カプラ10及び無線通信装置14を利用した双方向通信機能を備える。これにより、鞍乗型車両1の特徴が考慮され、鞍乗型車両1のCAN通信回路2の活用範囲を拡大できる、CAN通信回路2に接続される無線通信機能を備えたCAN接続無線通信装置11を提供することができる。
【0030】
CAN接続無線通信装置11は、コンパクトに形成され、それ故、以下の効果を奏する。より詳細には、鞍乗型車両1のような小型の車両において、ケーブルが接続されたカプラをカプラ10に着脱するためのスペースを利用して、カプラ10に通信用カプラ12を接続した状態で鞍乗型車両1の走行や鞍乗型車両1の保管を行うことができる。
【0031】
また、CAN接続無線通信装置11は、コンパクトに形成され、カプラ10の特徴(A)(B)(C)(D)を利用することで、以下の効果を奏する。より詳細には、特徴(A)を利用することにより、良好な通信状態を得ることができる。特徴(B)を利用することにより、CAN接続無線通信装置11に対する防水対策を行うことができる。特徴(C)を利用することにより、鞍乗型車両1へのアクセスを許可された者以外の者にCAN接続無線通信装置11を触られることを防止できる。特徴(D)を利用することにより、鞍乗型車両1に新たなスペースを設ける必要がない。
【0032】
[態様2及びその作用効果]
通信回路13は、通信用カプラ12を介して車外データを取得した機器(CAN通信回路2に接続された機器)が車外データに応じてCAN通信回路2に出力した車内データを取得し、無線通信装置14を介して当該取得した車内データを外部装置に出力する。これにより、カプラ10及び無線通信装置14を利用し、今までの無線通信装置14では取得できなかった車内データを取得し、無線通信装置14を介して当該車内データを外部装置に出力することができる。
【0033】
[態様3及びその作用効果]
通信回路13は、無線通信装置14を介して入力される車外データの通信量、通信速度、通信頻度、データの種類の少なくとも一つが通信用カプラ12を介して取得される車内データのそれより小さくなるように構成される。これにより、カプラ10及び無線通信装置14を利用し、鞍乗型車両1のCAN通信回路2への負荷を抑制しつつ、鞍乗型車両1のCAN通信回路2の活用範囲を拡大できる。
【0034】
[態様4及びその作用効果]
通信回路13は、通信用カプラ12を介して取得される車内データ、又は無線通信装置14を介して入力される車外データの少なくとも一部を、電源が供給されていない状態で記憶するように構成される。これにより、カプラ10及び無線通信装置14を利用し、常時通信しなければ取得できなかった車内データを取得し、無線通信装置14を介して車内データを外部装置に出力することができる。
【0035】
[態様5及びその作用効果]
通信回路13は、通信用カプラ12を介して取得される車内データの異常、無線通信装置14を介して入力される車外データの異常、及び通信回路13の機能異常の少なくとも1つが、無線通信装置14を介してデータ通信する外部装置、又は、駆動源制御装置3で認識されるように構成される。これにより、カプラ10及び無線通信装置14を利用し、鞍乗型車両1のCAN通信回路2への負荷を抑制しつつ、鞍乗型車両1のCAN通信回路2の活用範囲を拡大できる。
【0036】
[態様6及びその作用効果]
通信回路13は、無線通信装置14を介して、CAN通信回路2に接続され且つ情報提示機能を備える機器が情報提示に用いる車外データを取得し、通信用カプラ12を介して、取得した車外データをCAN通信回路2に出力するように構成される。これにより、カプラ10及び無線通信装置14を利用し、情報提示機能を備える機器が情報提示することができる車外データを、無線通信装置14を介して取得し、通信用カプラ12を介してCAN通信回路2に出力することができる。
【0037】
[態様7及びその作用効果]
通信用カプラ12は、故障診断装置がカプラ10と接続される時には、カプラ10から取り外され、故障診断装置がカプラ10と接続されない時には、カプラ10に取り付けられることを可能とするように、カプラ10に対して着脱可能に構成される。故障診断装置がカプラ10と接続されない限り、通信用カプラ12をカプラ10に接続したままにすることができる。
【0038】
[態様8及びその作用効果]
鞍乗型車両1は、上記態様1~7のいずれかに記載された、双方向通信機能を備えたCAN接続無線通信装置11が通信可能に接続されるCAN通信回路2と、CAN通信回路2に通信可能に接続され、駆動源31を制御する駆動源制御装置3とを備える。これにより、上記態様1~7のいずれかに記載された、双方向通信機能を備えたCAN接続無線通信装置11を使用して鞍乗型車両1のCAN通信回路2の活用範囲を拡大できる鞍乗型車両1を提供することができる。
【0039】
[用語の定義]
[通信可能に接続]
通信可能に接続とは、データ通信が行えるように接続されている状態を意味する。通信可能に接続は、例えば、信号線による接続、無線による接続などである。信号線による接続は、例えば、電線による接続、光ファイバーケーブルによる接続などである。無線による接続は、例えば、Bluetooth(登録商標)、NFC(Near Field Communication)等の近距離無線通信技術による接続などである。
【0040】
[機械的に接続]
機械的に接続とは、通信可能に接続された状態か否かにかかわらず2つの物体が物理的に接続された状態を意味する。
【0041】
[電気的に接続]
電気的に接続とは、例えば、信号線による通信が許容された接続を含む。信号線による通信とは、例えば、電線による通信や、光ファイバーケーブルによる通信などを含む。
【0042】
[多重通信ネットワーク]
多重通信ネットワークは、例えば、車載LAN(Local Area Network)である。多重通信ネットワークは、共通の通信線をデータ通信に用いる通信ネットワークであればよい。多重通信ネットワークに機器が接続される態様には、例えば、データ通信に用いられる共通の通信線に機器が通信可能に接続される態様が含まれる。通信プロトコルは、故障診断に係るデータ通信にも用いられるものであれば、特に限定されない。通信プロトコルは、例えば、CAN(Controller Area Network)である。データ通信には、例えば、差動電圧方式が採用される。これにより、外部からのノイズの影響を受け難くなる。データ通信には、例えば、マルチマスタ方式が採用される。マルチマスタ方式では、通信線が空いているときには、通信線に接続された全ての機器が通信可能になる。データ通信には、例えば、CSMA/CA方式が採用される。CSMA/CA方式では、データ通信の優先順位が決められる。ネットワークトポロジーは、例えば、ライン型である。
【0043】
[車内データ]
車内データとは、鞍乗型車両用多重通信ネットワーク接続無線通信装置を除く鞍乗型車両用多重通信ネットワークに接続された機器から鞍乗型車両用多重通信ネットワークに出力されるデータである。車内データは、例えば、駆動源の作動状態を示す駆動源の回転速度、駆動トルク要求指令値などである。車内データは、例えば、駆動源がエンジンである場合、エンジン回転速度、アクセル開度などである。車内データは、例えば、駆動源が電動システムである場合、駆動用バッテリの残量などである。
【0044】
[車外データ]
車外データとは、鞍乗型車両用多重通信ネットワーク接続無線通信装置から鞍乗型車両用多重通信ネットワークに接続された機器に向けて鞍乗型車両用多重通信ネットワークに出力されるデータである。車外データは、例えば、鞍乗型車両用多重通信ネットワークに接続された機器の作動モードを変更するためのデータなどである。車外データは、例えば、情報提示装置で提示する情報に関するデータなどである。提示する情報は、例えば、SNS、メール、通話の受信情報、ナビゲーション情報、サービスに関する情報、メンテナンスに関する情報などである。
【0045】
[鞍乗型車両]
本発明の鞍乗型車両は、自動二輪車に限定されない。例えば、鞍乗型車両は、オンロードタイプの自動二輪車、オフロードタイプの自動二輪車、スクータ、原動機付き自転車、モペット等であっても良い。鞍乗型車両は、自動二輪車、三輪車、四輪バギー、全地形型車両(ATV:All Terrein Vehicle)、水上バイク、スノーモービル等を含む。鞍乗型車両とは、ライダーが鞍にまたがるような状態で乗車する車両である。
【0046】
[外観部品]
外観部品は、鞍乗型車両の外観を成し、少なくとも一部が樹脂製の部品である。外観部品は、例えば、少なくとも一部が合成樹脂で形成される。外観部品は、例えば、鞍乗型車両の車体フレームに着脱可能に取り付けられる。外観部品は、例えば、鞍乗型車両の乗員が着座するシートを含む。つまり、外観部品は、鞍乗型車両の走行時に乗員が使用する部品を含む。
【0047】
[駆動源]
駆動源は、鞍乗型車両に駆動力を付与する駆動源であれば、形式は限定されない。駆動源は、例えば、内燃機関を含むエンジン、電動モータ及びバッテリ等で構成される電動システムなどである。また、駆動源は、内燃機関と電動システムとの組み合わせであってもよい。
【0048】
[制御装置]
制御装置は、例えば、ECU(Electric Control Unit)である。ECUは、例えば、IC(Integrated Circuit)、電子部品、回路基板等の組み合わせによって実現される。制御装置による制御は、例えば、CPU(Central Processing Unit)が不揮発性のメモリに記憶されたプログラムを読み出し、当該プログラムに従って所定の処理を実行すること等によって実現される。
【0049】
[双方向通信機能]
双方向通信機能とは、例えば、鞍乗型車両に設けられた制御装置から鞍乗型車両の外部に設けられた制御装置に通信する機能と、鞍乗型車両の外部に設けられた制御装置から鞍乗型車両の内部に設けられた制御装置に通信する機能との両方を有することである。鞍乗型車両に設けられた制御装置は、例えば、鞍乗型車両用多重通信ネットワークに接続された制御装置である。このような制御装置は、例えば、駆動源制御装置や、鞍乗型車両用多重通信ネットワークに接続された機器が有する制御装置である。
【0050】
[無線通信装置]
無線通信装置は、鞍乗型車両の外部に設けられた制御装置との間で無線によるデータ通信が可能であれば、その通信方式は限定されない。無線通信装置は、携帯端末で使用される通信規格3G/4G/LTE(Long Term Evolution)/5G等を使用する装置であっても良い。無線通信装置は、Bluetooth(登録商標)、NFC(Near Field Communication)等の近距離無線通信装置であっても良い。無線通信装置は、wi-fi等の無線LAN規格を使用する装置であっても良い。
【0051】
[通信回路]
通信回路は、故障診断ルート経由通信用カプラ及び故障診断装置用カプラを介して、鞍乗型車両用多重通信ネットワークに通信可能に接続される。つまり、故障診断ルート経由通信用カプラと故障診断装置用カプラは、通信回路と鞍乗型車両用多重通信ネットワークとの間での通信を許容するように、機械的且つ電気的に接続される。通信回路が故障診断ルート経由通信用カプラを通じて給電を受ける態様には、例えば、通信回路が、故障診断ルート経由通信用カプラ及び故障診断装置用カプラを介して、鞍乗型車両用多重通信ネットワークに接続された機器から給電される態様が含まれる。通信回路が故障診断ルート経由通信用カプラを介して車内データを取得する態様には、例えば、通信回路が、故障診断ルート経由通信用カプラ及びそれに機械的且つ電気的に接続された故障診断装置用カプラを介して、車内データを取得する態様が含まれる。通信回路が故障診断ルート経由通信用カプラを介して車内データを取得する態様には、故障診断ルート経由通信用カプラと故障診断装置用カプラが機械的且つ電気的に接続されることで形成される信号線による通信経路を介して、車内データを取得する態様が含まれる。通信回路が無線通信装置を介して車内データを外部装置に出力する態様には、例えば、通信回路が無線通信装置に指示し、無線通信装置が車内データを外部装置に出力する態様が含まれる。通信回路が無線通信装置を介して車外データを取得する態様には、例えば、通信回路が無線通信装置に指示し、無線通信装置が外部装置と無線通信することで得られた車外データを取得する態様が含まれる。通信回路が故障診断ルート経由通信用カプラを介して車外データを鞍乗型車両用多重通信ネットワークに出力する態様には、例えば、通信回路が、故障診断ルート経由通信用カプラ及びそれに機械的且つ電気的に接続された故障診断装置用カプラを介して、車外データを鞍乗型車両用多重通信ネットワークに出力する態様が含まれる。つまり、通信回路が故障診断ルート経由通信用カプラを介して車外データを鞍乗型車両用多重通信ネットワークに出力する態様には、故障診断ルート経由通信用カプラと故障診断装置用カプラが機械的且つ電気的に接続されることで形成される信号線による通信経路を介して、車外データを鞍乗型車両用多重通信ネットワークに出力する態様が含まれる。
【0052】
[故障診断ルート経由通信用カプラ]
故障診断ルート経由通信用カプラは、故障診断装置用カプラに機械的に且つ電気的に接続されるカプラである。故障診断ルート経由通信用カプラは、例えば、故障診断装置用カプラに着脱可能に接続される。故障診断ルート経由通信用カプラは、故障診断装置用カプラとともに、双方向通信に用いられる通信経路を形成する。つまり、故障診断ルート経由通信用カプラと故障診断装置用カプラが機械的且つ電気的に接続されていない場合には、通信回路と鞍乗型車両用多重通信ネットワークとの間での通信が遮断される。別の表現をすれば、故障診断ルート経由通信用カプラと故障診断装置用カプラが機械的且つ電気的に接続されていない場合には、通信回路と鞍乗型車両用多重通信ネットワークは通信可能に接続されていないことになる。
【0053】
[ハウジング]
ハウジングは、通信回路と故障診断ルート経由通信用カプラとの接続部と、通信回路とを収容する。つまり、ハウジングが通信回路を収容している状態では、故障診断ルート経由通信用カプラの少なくとも一部はハウジングから露出している。このように、故障診断ルート経由通信用カプラの少なくとも一部がハウジングから露出していることにより、故障診断ルート経由通信用カプラを故障診断装置用カプラに機械的且つ電気的に接続することができる。
【0054】
[故障診断装置用カプラ]
故障診断装置用カプラは、例えば、鞍乗型車両の外部に設けられた故障診断装置が着脱可能に接続される構成を有する。故障診断装置が故障診断装置用カプラに接続される態様は、例えば、故障診断装置に接続されて故障診断装置から延びるケーブルに設けられたカプラが故障診断装置用カプラに機械的且つ電気的に接続される態様を含む。
【0055】
[故障診断装置用カプラが設けられる場所]
故障診断装置用カプラは、少なくとも一部が樹脂製である鞍乗型車両の外観部品で外部から直接見えない位置に設けられていれば良い。実施の形態では、故障診断装置用カプラは、樹脂製の後サイドカバー及び樹脂製の底板を含むシートにより外部から直接見えない位置に設けられている。故障診断装置用カプラは、例えば、樹脂製のフロントカバー及び樹脂製のヘッドライトユニットにより外部から直接見えない位置に設けられていても良い。故障診断装置用カプラは、例えば、金属製の後サイドカバー及び樹脂製の底板を含むシートにより外部から直接見えない位置に設けられていても良い。
【0056】
[情報提示装置]
提示される情報は、光、音、振動、においなどライダーが認識できる情報であれば、形式は限定されない。例えば、情報提示装置は、鞍乗型車両に搭載されるスピードメーターであっても良い。例えば、情報提示装置は、鞍乗型車両に搭載されるスピードメーターとは別の装置であっても良い。
【0057】
[鞍乗型車両用多重通信ネットワークに接続される機器]
本発明では、駆動源制御装置が鞍乗型車両用多重通信ネットワークに通信可能に接続されていれば良い。駆動源制御装置は、情報提示機能を備えていても良い。「駆動源制御装置が情報提示機能を備えている」と言うことは、駆動源制御装置と通信可能に接続され、駆動源制御装置とは別体の情報提示装置を駆動源制御装置が備えている場合を含む。なお、実施の形態では、鞍乗型車両用多重通信ネットワークに駆動源制御装置とは別に複数の機器を接続する例を説明した。しかしながら、これに限定されることはない。例えば、鞍乗型車両用多重通信ネットワークに接続される機器は、駆動源制御装置のみであっても良い。つまり、鞍乗型車両用多重通信ネットワークに接続される機器は、駆動源制御装置を含む。当該機器は、鞍乗型車両用多重通信ネットワークに通信可能に接続されていればよい。
【0058】
[外部装置]
外部装置は、双方向通信機能を備えた鞍乗型車両用多重通信ネットワーク接続無線通信装置と接続可能な無線通信装置を備えた装置である。例えば、外部装置は、携帯端末、サーバー、パーソナルコンピューターなどを含む。例えば、携帯端末は、スマートフォン、携帯電話、PDAなどを含む。
【0059】
[態様3の具体的な手段]
通信回路は、無線通信装置を介して入力される車外データの通信量、通信速度、通信頻度、データの種類の少なくとも一つが故障診断ルート経由通信用カプラを介して取得される車内データのそれより小さくなるように構成される。より具体的な構成は、以下のような構成が考えられる。例えば、無線通信装置を介して入力される車外データの通信量、通信速度、通信頻度、データの種類の少なくとも一つが故障診断ルート経由通信用カプラを介して取得される車内データのそれより小さくなるように、通信回路が処理を行う回路及び/又は処理ステップを含む場合である。この場合、通信回路は、処理を行う処理ステップを外部装置から変更不能に構成されていても良い。この場合、鞍乗型車両用多重通信ネットワーク接続無線通信装置を異なる処理を含む鞍乗型車両用多重通信ネットワーク接続無線通信装置に変更しても良い。鞍乗型車両用多重通信ネットワーク接続無線通信装置は、故障診断装置用カプラに着脱するだけで良いため、交換が非常に容易である。この例示の場合、鞍乗型車両に設けられた多重通信ネットワークへの負荷を抑制しつつ故障診断装置用カプラ及び無線通信装置を利用し、鞍乗型車両に設けられた多重通信ネットワークの活用範囲をより拡大することができる。特に、アプリケーションを含む外部装置の設計の自由度を向上できる。或いは、無線通信装置を介して入力される車外データの通信量、通信速度、通信頻度、データの種類の少なくとも一つが、無線通信装置を通信対象とする外部装置が認証によって制限され、かつ、接続可能な特定の外部装置が故障診断ルート経由通信用カプラを介して取得する車内データのそれより小さくなるように、通信回路が処理を行う回路及び/又は処理ステップを含むようにしてもよい。なお、具体的な手段については、上記例示に限定されることはない。
【0060】
[その他]
故障診断装置は、OBD(On-Board Diagnostics)と表現される場合がある。CANは、Controller Area Networkの省略形である。慣性計測装置は、IMU(Inertial Measurement Unit)と表現される場合がある。
【符号の説明】
【0061】
1 鞍乗型車両
2 CAN通信回路(鞍乗型車両用多重通信ネットワーク)
3 駆動源制御装置
4 情報提示制御装置
5 ヘッドライト制御装置
6 サスペンション制御装置
7 ブレーキ制御装置
8 慣性計測装置(IMU:Inertial Measurement Unit)
9 外観部品
10 カプラ(故障診断装置用カプラ)
11 CAN接続無線通信装置(鞍乗型車両用多重通信ネットワーク接続無線通信装置)
12 通信用カプラ
13 通信回路
14 無線通信装置
15 ハウジング
31 駆動源
91 フロントカバー
92 ヘッドライトユニット
93 前サイドカバー
94 後サイドカバー
95 シート