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特許7357083弁輪形成術のための手動内部ガイドワイヤナビゲーション
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-27
(45)【発行日】2023-10-05
(54)【発明の名称】弁輪形成術のための手動内部ガイドワイヤナビゲーション
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/06 20060101AFI20230928BHJP
   A61M 25/095 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
A61M25/06 556
A61M25/06 550
A61M25/095
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021576757
(86)(22)【出願日】2020-06-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-06
(86)【国際出願番号】 US2020038902
(87)【国際公開番号】W WO2021015905
(87)【国際公開日】2021-01-28
【審査請求日】2021-12-23
(31)【優先権主張番号】62/868,169
(32)【優先日】2019-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506192652
【氏名又は名称】ボストン サイエンティフィック サイムド,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】BOSTON SCIENTIFIC SCIMED,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】ロール、ジェームズ ピー.
(72)【発明者】
【氏名】シューイ、ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】ボールドウィン、キャサリン エル.
(72)【発明者】
【氏名】アボット、アーロン
(72)【発明者】
【氏名】エッゲルト、ジョエル ティ.
(72)【発明者】
【氏名】コースラ、ジュニア ジェームズ ケイ.
(72)【発明者】
【氏名】キルビントン、ジェイソン エイ.
(72)【発明者】
【氏名】イルバーグ、レオ
【審査官】上石 大
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-005422(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0005763(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0272734(US,A1)
【文献】特表平09-509074(JP,A)
【文献】特表2018-533446(JP,A)
【文献】特表2014-530660(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/06
A61M 25/095
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
近位端から遠位端まで延びるルーメンを有し、且つ、治療部位を含む心腔内に経管的に前進されるように構成されたイントロデューサシースと、
遠位端を有するワーキングカテーテルであって、前記イントロデューサシース内を長手方向に移動して、前記イントロデューサシースの遠位端の近接した位置に前記ワーキングカテーテルの遠位端を配置するように構成された、前記ワーキングカテーテルと、
前記ワーキングカテーテル内に移動可能に配置されたガイドカテーテルであって、前記ワーキングカテーテルの前記治療部位への経路を設けるために、前記ワーキングカテーテルの遠位端を通過して前記治療部位まで前記ガイドカテーテルの遠位端を前進させるように構成された移動機構を備える、前記ガイドカテーテルと、
を備え
前記ワーキングカテーテルは、前記ワーキングカテーテルの遠位端に組織係合機構を含む弁輪形成術カテーテルである、システム。
【請求項2】
近位端から遠位端まで延びるルーメンを有し、且つ、治療部位を含む心腔内に経管的に前進されるように構成されたイントロデューサシースと、
遠位端を有するワーキングカテーテルであって、前記イントロデューサシース内を長手方向に移動して、前記イントロデューサシースの遠位端の近接した位置に前記ワーキングカテーテルの遠位端を配置するように構成された、前記ワーキングカテーテルと、
前記ワーキングカテーテル内に移動可能に配置されたガイドカテーテルであって、前記ワーキングカテーテルの前記治療部位への経路を設けるために、前記ワーキングカテーテルの遠位端を通過して前記治療部位まで前記ガイドカテーテルの遠位端を前進させるように構成された移動機構を備える、前記ガイドカテーテルと、
を備え、
前記ガイドカテーテルは、前記ガイドカテーテルの遠位端に配置された遠位ガイドワイヤアンカーを含み、前記移動機構は、前記ガイドカテーテルを治療部位に固定するために、前記遠位ガイドワイヤアンカーを治療部位の組織の中に駆動し、
前記遠位ガイドワイヤアンカーはらせん部材、クランプ部材、フック部材、又は針部材のうちの少なくとも1つを含み、
前記ワーキングカテーテルは、前記ワーキングカテーテルの遠位端に組織係合機構を含む弁輪形成術カテーテルである、システム。
【請求項3】
前記ガイドカテーテルは、前記ガイドカテーテルの遠位端に配置された遠位ガイドワイヤアンカーを含み、前記移動機構は、前記ガイドカテーテルを治療部位に固定するために、前記遠位ガイドワイヤアンカーを治療部位の組織の中に駆動する、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記遠位ガイドワイヤアンカーはらせん部材、クランプ部材、フック部材、又は針部材のうちの少なくとも1つを含む、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記イントロデューサシースの近位端は、前記イントロデューサシースの遠位端を心腔内に案内するための操縦コントローラをさらに備える、請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項6】
前記組織係合機構は針、フック、クランプ、ねじ、フレーム、又はアンカーのうちの少なくとも1つを含む、請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項7】
前記ワーキングカテーテルは、前記組織係合機構を制御するために接続された組織係合制御機構を備える、請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項8】
前記ワーキングカテーテルのワーキングチャンネル内に摺動可能に配置されるインプラントスタイレットをさらに備え、前記インプラントスタイレットは、インプラントスタイレットの遠位端内に支持された少なくとも1つのインプラント構成要素を含む、請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項9】
前記インプラントスタイレットは、インプラントスタイレットの近位端に配置された少なくとも1つのインプラント離脱機構を備え、前記少なくとも1つのインプラント離脱機構は、前記インプラントスタイレットから少なくとも1つのインプラント構成要素を離脱させる、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
イントロデューサシース支持体、ワーキングカテーテル支持体、又はインプラントスタイレット支持体のうちの少なくとも1つを含むステージング構造をさらに備える、請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項11】
前記ステージング構造は、レールを備えたカテーテルスタンドを含み、前記ワーキングカテーテル支持体は、前記カテーテルスタンドの前記レール上に摺動可能に配置されており、前記ワーキングカテーテル支持体の前記レールに沿った移動は、前記ワーキングカテーテルを前記イントロデューサシース内で移動させる、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記移動機構は、前記ガイドカテーテルを前記ワーキングカテーテルの遠位端内に後退させるようにさらに構成される、請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項13】
前記遠位ガイドワイヤアンカーに近接した位置に配置された視覚化機構を備える、請求項2又は3に記載のシステム。
【請求項14】
前記ガイドカテーテルは、前記視覚化機構を備える、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記視覚化機構は、心腔内エコー(ICE)トランスデューサを備える、請求項13に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療機器の分野、より詳細には、弁輪形成術システム及び使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
三尖弁は、心臓の右心房と右心室の間にあり、右心室から右心房への血液の逆流を防止するように機能する。三尖弁は、前尖、後尖、及び中隔尖の3つの弁尖で構成されている。各弁尖は、腱索を介して、それぞれ右心室の前部、後部、及び中隔の乳頭筋に連結されている。
【0003】
健康な心臓では、三尖弁は心室収縮期に閉鎖する一方向弁として機能し、右心房への血液の三尖弁逆流(TR)を防止する。罹患した心臓では、三尖弁の拡張により、収縮期収縮中に弁尖が効果的に閉鎖しない、又は密着しなくなる可能性がある。その結果、心室収縮中に血液の逆流が起きて心拍出量が低下する。
【0004】
三尖弁修復の目標は、弁装置の生理学的形態と機能とを回復させることによって弁の機能を取り戻すことである。1つの例示的な技術は、クリップ等の手段を介して、前尖の中点と中隔(CS)への接合点との間で、弁を短縮する。弁の修復/交換は、開心術、又は管腔内視鏡法を用いて実施することができる。いずれの場合も、心房細動(AF)は、心臓の要素との不注意な接触、及び関連する心臓神経系の損傷によって少なくとも部分的に引き起こされる一般的な副作用である。弁輪形成術用カテーテルによって弁修復構成要素が送達され、罹患した弁の周囲に配置されるため、不注意な接触が生じる可能性がある。不注意による接触を最小限に抑えるために、心エコー検査などを使用して、弁輪形成術カテーテルの位置を視覚化することができる。一部のシステムでは、弁輪形成術カテーテルのサイズがその視覚化を妨げ、精度を損ない、心臓の要素との不注意な接触及び関連する損傷を増加させる。弁輪形成術カテーテルの位置決めは、ペースメーカー及び除細動器のリード線を有する患者にとって特に困難な場合がある。三尖弁のテザリング、抗血小板薬及び抗凝固薬の使用、及び高いTR再発率は、神経系の損傷に起因するか、神経系の損傷によって悪化される可能性がある。これらの問題を低減又は克服する弁修理システムを特定することが望ましい。
【発明の概要】
【0005】
本発明の実施形態は、心腔内の治療部位にワーキングカテーテルを指向するように構成されたガイドカテーテルを含む低侵襲性管腔内弁輪形成術システム及び使用方法に関する。ガイドカテーテルは、ワーキングカテーテル内に移動可能に配置され、ワーキングカテーテルは、心臓内に経管的に延びるように構成されたイントロデューサシース内に移動可能に配置される。ガイドカテーテルは、低ノイズのためのサイズにされ、及び/又は視覚化を助ける材料で形成される。一実施形態では、ガイドカテーテルは、治療部位で組織に埋め込まれるように構成された遠位ガイドワイヤアンカーを含む。ワーキングカテーテルは、ガイドカテーテル上を治療部位まで直接前進させることにより、ワーキングカテーテルと他の心臓の要素の間の不注意な接触の可能性を低減することができる。
【0006】
一態様によれば、システムは、近位端から遠位端まで延びるルーメンを有し、治療部位を含む心腔内に経管的に前進させるように構成されたイントロデューサシースと、イントロデューサ内で長手方向に移動してイントロデューサシースの遠位端に近接した位置にワーキングカテーテルの遠位端を配置するワーキングカテーテルと、ワーキングカテーテル内に移動可能に配置され、ワーキングカテーテルの遠位端を通過してガイドカテーテルの遠位端を治療部位に前進させる移動機構を備えて、ワーキングカテーテルのために治療部位への通路を設ける、ガイドカテーテルとを備える。
【0007】
いくつかの実施形態では、ガイドカテーテルは、遠位端に配置された遠位ガイドワイヤアンカーを含み、移動機構は、遠位ガイドワイヤアンカーを治療部位の組織内に駆動して、ガイドカテーテルを治療部位に固定するように構成される。様々な実施形態において、遠位ガイドワイヤアンカーは、らせん部材、クランプ部材、フック部材、又は針部材のうちの少なくとも1つを含む。イントロデューサシースの近位端は、イントロデューサシースの遠位端に接続された操縦コントローラを含み、イントロデューサシースの遠位端を心腔内に案内する。ワーキングカテーテルは、遠位組織係合機構及び近位組織係合制御機構を備える。
【0008】
いくつかの実施形態では、システムは、ワーキングカテーテルのワーキングチャンネル内で摺動可能に配置可能なインプラントスタイレットを含み、インプラントスタイレットは、インプラントスタイレットの遠位端内に支持された少なくとも1つのインプラント構成要素を含む。システムは、イントロデューサシース支持体、ワーキングカテーテル支持体、又はインプラントスタイレット支持体のうちの少なくとも1つを含むステージング構造を含む。ステージング構造は、レールを含むカテーテルスタンドを含み、ワーキングカテーテル支持体は、レールに沿ったワーキングカテーテル支持体の移動によりイントロデューサシース内でワーキングカテーテルが移動されるようにカテーテルスタンドのレール上に摺動可能に配置される。
【0009】
いくつかの実施形態では、移動機構は、ガイドカテーテルをワーキングカテーテルの遠位端内に引き込むようにさらに構成される。いくつかの実施形態は、ガイドカテーテル、遠位ガイドワイヤアンカー、又はワーキングカテーテルのうちの1つ上の遠位ガイドワイヤアンカーに近接した位置に配置された視覚化機構を含む。視覚化機構は、例えば、心腔内エコー(ICE)トランスデューサを含む。
【0010】
別の態様によれば、弁輪形成術は、近位端から遠位端まで延びるルーメンを有するイントロデューサシースを、治療部位を含む心腔内に経管的に前進させる工程と、ワーキングカテーテルの遠位端をイントロデューサシースの遠位端まで前進させる工程と、ワーキングカテーテルの為の通路を設けるためにガイドカテーテルをワーキングカテーテルの遠位端を超えて治療部位まで前進させる工程と、ガイドカテーテルの遠位端を治療部位に固定する工程とを含む。
【0011】
いくつかの実施形態では、この方法は、ガイドカテーテルによって設けられた通路に沿って、ワーキングカテーテルを治療部位に移動させる工程を含む。この方法は、ワーキングカテーテルの遠位端をイントロデューサシースの遠位端に近接した位置に配置するためにガイドカテーテル上で治療部位からワーキングカテーテルを後退させる工程をさらに含んでもよい。この方法は、ガイドカテーテルの遠位端を治療部位から離脱させる工程と、ガイドカテーテルの遠位端を第2の治療部位に前進させる工程と、ワーキングカテーテルの遠位端をガイドカテーテル上で第2の治療部位に前進させる工程と含んでもよい。
【0012】
更なる態様によれば、カテーテルシステムは、ワーキングカテーテルの遠位端が心腔の治療部位から除去される心腔内の少なくとも一部に前進させる為に構成されたワーキングカテーテルと、ワーキングカテーテル内に移動可能に配置されたガイドカテーテルとを含み、ガイドカテーテルは、ワーキングカテーテル内を通って治療部位にガイドカテーテルを前進させるように構成された移動機構と、ガイドカテーテルの遠位端を治療部位に結合するための取り付け機構と、ガイドカテーテルに沿って治療部位にワーキングカテーテルを摺動可能に移動させるように構成された機構を備える。いくつかの実施形態では、カテーテルシステムは、ガイドカテーテルに連結された遠位ガイドワイヤアンカーをさらに含み、移動機構は、遠位ガイドワイヤアンカーを治療部位の組織に駆動して、ガイドカテーテルを治療部位に固定するように構成される。様々な実施形態において、遠位ガイドワイヤアンカーはらせん部材、クランプ部材、フック部材、又は針部材のうちの少なくとも1つを含む。ワーキングカテーテルは針、フック、クランプ、ねじ、フレーム、又はアンカーのうちの少なくとも1つなどの、遠位端に組織係合機構を含む弁輪形成術カテーテルからなる。いくつかの実施形態では、カテーテルシステムは、ガイドカテーテルの取り付け機構に近接した位置に配置された視覚化機構を含む。
【0013】
本発明の非限定的な実施形態は、概略的であり、縮尺通りに描かれることを意図されていない添付の図を参照して例として説明されている。図では、図示されている各同一又はほぼ同一の構成要素は、通常、単一の数字で表されている。明確性のために、すべての構成要素は、すべての図においてラベル付けされているわけではないし、当業者が本発明を理解するために図解が必要でない場合には、各実施形態のすべての構成要素が示されているわけでもない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態にかかる弁輪形成術システムを示す図。
図2A】本発明の一実施形態にかかるイントロデューサシースを示す斜視図。
図2B】本発明の一実施形態にかかるイントロデューサシースを示す斜視図。
図3図1の弁輪形成術システムを示す別図。
図4A】本発明の一実施形態にかかる作動中のカテーテルを示す斜視図。
図4B】本発明の一実施形態にかかる作動中のカテーテルを示す斜視図。
図4C】本発明の一実施形態にかかる作動中のカテーテルを示す斜視図。
図5A】本発明にかかるワーキングカテーテルの遠位端の一実施形態を示す斜視図。
図5B】本発明にかかるワーキングカテーテルの遠位端の一実施形態を示す斜視図。
図6】本発明にかかるワーキングカテーテルの近位ハンドルの一実施形態を示す図。
図7】本発明にかかるイントロデューサシースの一実施形態を示す図。
図8】本発明にかかるワーキングカテーテルの一実施形態を示す図。
図9A】本明細書に開示されるように、治療部位に係合されたガイドカテーテルの実施形態を示す図。
図9B】本明細書に開示されるように、治療部位に係合されたガイドカテーテルの実施形態を示す図。
図10】本明細書に開示されるように、ガイドカテーテルに沿って治療部位に進められたワーキングカテーテルの実施形態を示す図。
図11】本発明にかかるインプラントスタイレットを含む弁輪形成術システムの一実施形態を示す図。
図12A】本明細書に開示されるように、後退するガイドカテーテルの遠位端の一実施形態を示す様々な図。
図12B】本明細書に開示されるように、後退するガイドカテーテルの遠位端の一実施形態を示す様々な図。
図13A】本発明にかかるカテーテルシステムの視覚化機構の様々な実施形態を示す図。
図13B】本発明にかかるカテーテルシステムの視覚化機構の様々な実施形態を示す図。
図13C】本発明にかかるカテーテルシステムの視覚化機構の様々な実施形態を示す図。
図14A】本発明にかかる組織係合フレームを含む弁輪形成術システムの一実施形態を示す図。
図14B】本発明にかかる組織係合フレームを含む弁輪形成術システムの一実施形態を示す図。
図15A】本発明にかかるワイヤ上組織係合機構を含む弁輪形成術システムの一実施形態を示す図。
図15B】本発明にかかるワイヤ上組織係合機構を含む弁輪形成術システムの一実施形態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
一態様によれば、低侵襲性管腔内弁輪形成術システム及び使用方法は、ワーキングカテーテルを心腔内の治療部位に指向するように構成されたガイドカテーテルを含む。そのような構成では、弁輪形成術中の制御された移動やワーキングカテーテルの正確な配置により、意図しない接触や関連する心臓損傷の可能性を低減することができる。
【0016】
一実施形態では、ガイドカテーテルは、ワーキングカテーテル内に移動可能に配置され、ワーキングカテーテルは、心腔内に延びるイントロデューサシース内に移動可能に配置される。ガイドカテーテルは、ガイドカテーテルの遠位端の視覚化を容易にするように構成される。例えば、ガイドカテーテルは、ノイズを低減するようなサイズにされ、及び/又は視覚化を支援する材料で形成される。一実施形態では、ガイドカテーテルは、遠位ガイドワイヤアンカーを含む。視覚化を使用して、遠位ガイドワイヤアンカーを標的部位の組織に埋め込むことができる。次に、ワーキングカテーテルをガイドカテーテル上で直接治療部位まで前進させて、心臓の要素との不注意な接触の可能性を低減することができる。いくつかの実施形態では、視覚化は、ワーキングカテーテル内に血管内心臓エコーグラフィー(ICE)カテーテル用のチャンネルを設けることによってさらに改善し得る。いくつかの実施形態では、ICEカテーテルは、ガイドカテーテルの遠位端に形成される。
【0017】
いくつかの実施形態では、弁輪形成術システムは、インプラント配備システムをさらに含む。インプラント配備システムは、組織係合機構及び/又は組織再形成機構を含む。インプラント配備システムは、ワーキングカテーテルの一部、又はインプラントスタイレット、又は他の形態のカテーテルを使用してワーキングカテーテル内を通って送達することができる追加の構成要素を含む。
【0018】
一態様によれば、弁輪形成術システムは、直径が減少するにつれて長さが増加する複数の入れ子になったカテーテルを含む。このような構成は、1つ以上のワーキングカテーテル及び/又はインプラント配備システム(例えばフレーム、アンカー、ねじ、バスケット、弁、クリップなどを含む)が、ガイドカテーテル上で低侵襲性に治療部位まで交換可能に且つ正確に配備されることを可能にする。
【0019】
弁輪形成術システムの上記及び別の有益な側面を以下に説明する。本発明の実施形態は、三尖弁を特に参照して説明されているが、本明細書に開示されている原理は、例えば僧帽弁輪などの任意の弁輪の再建を容易にすることにすぐに適合させることができ、及び/又はその他の拡張、弁の機能不全、弁の漏出、及びその他の同様の心不全状態にも同様に有用であることに留意されたい。
【0020】
本明細書で使用される場合、「遠位」という用語は、医療機器を患者の体内に導入するときに医療専門家から最も遠い端を指し、「近位」という用語は、医療機器を患者の体内に導入するときに医療専門家に最も近い端を指す。
【0021】
図1は、そのような弁輪形成術システム100と共に使用するために配置された心臓200を含むベンチテストセットアップを示す。弁輪形成術システム100は、弁などの心臓の要素を修復したり、交換したりするために、心臓200内に別個に又は組み合わせて経管的に前進させることができる複数のカテーテルを含む入れ子になったカテーテルセット120を備える。ステージ150は、弁輪形成術手順中に弁輪形成術システム100を安定化させるカテーテルスタンド155で構成される。図1は、ベンチセットアップを示す。カテーテルスタンド155は、以下で説明するように、カテーテルセット120を支持するために、手術弁輪形成術手順中に使用される。いくつかの実施形態では、カテーテルセット120のカテーテルは、カテーテルの移動及び/又は機能を制御するように構成された1つ以上の制御機構を備える近位ハンドルを含む。カテーテルスタンド155は、複数のハンドルマウント130,132,134を備え、各ハンドルマウントは、カテーテルセット120のカテーテルのうちの1つのハンドルを支持するように構成される。いくつかの実施形態では、ハンドルマウント130,132,134の1つ以上は、カテーテルスタンド155のレール165上に摺動可能に配置されており、それぞれのハンドルによって支持されたカテーテルの遠位端が弁形成術のために位置決めされたとき、例えばロック可能なブラケット133又は135によって、所定の位置にロックされる。
【0022】
図1の実施形態では、カテーテルセット120は、イントロデューサシース122、ワーキングカテーテル124、及びインプラントスタイレット126を含む。例示的な特定の実施形態として、イントロデューサシース/カテーテル、ワーキングシース/カテーテル、及びインプラントシース/カテーテル、及び/又はスタイレットの数及び構成を説明するが、本明細書に開示される原理は、カテーテルの他の種類、数及び構成に拡張できることを理解されたい。
【0023】
図2Aは、イントロデューサシース122の側面視であり、図2Bは上面視である。イントロデューサシース122は、近位端215でハンドル225に連結された遠位端205を有するシャフト210を含む。シャフト210は、動脈又は静脈の管腔内を通って心腔内に移動したとき、シャフト210の遠位端を偏倚させるように構成されたハンドル225内の機構に接続された埋め込み型プルケーブルを含む操縦可能なシャフトである。ハンドル225は、イントロデューサシース122の遠位端205の偏倚を制御するダイヤル220などの操縦制御機構を含む。代替的な操縦制御機構には、例えばサムホイール、ダイヤル、ノブ、スイッチなどが含まれる。
【0024】
一態様によれば、イントロデューサシース122は、図2Aの線「A」で示すように、カテーテル122内を貫通して長手方向に延びるイントロデューサルーメンを含む。イントロデューサルーメンは、例えばインプラント構成要素を含む弁輪形成術カテーテルなどのワーキングカテーテルを支持するサイズを有する。
【0025】
一実施形態では、イントロデューサシース122は、フランスのコロンブのアルケマ社(ARKEMA)によって提供されるPEBAXなどの熱可塑性エラストマー(TPE)の複数の層からなる複合体を含有する。代替的には、開示されたシステムは、イントロデューサシース用の具体的な材料組成物に限定されないが、ナイロン、ポリウレタン、ポリエステル、シリコーン又は他の同様の材料を使用して、張引強度及びフープ強度のために、編組ワイヤ又はコイル上に押し出されて層状にされた薄い壁を設ける。いくつかの実施形態では、シャフト210の長さは、24インチ~52インチの間、より具体的には42インチ~46インチの間の範囲である。一実施形態では、内径は24~31フレンチ(Fr)の範囲であり、外径は26~34フレンチ以上の範囲である。例示的な実施形態では、内径は、例えば28フレンチであり、外径は、32フレンチである。
【0026】
一実施形態では、コネクタ230は、ハンドル225の近位端に配置される。コネクタ230は、例えば、ワーキングカテーテルとの係合可能に構成される。いくつかの実施形態では、コネクタ230は、弁輪形成術中の失血を最小限に抑えるために止血弁を有利に含んでもよい。
【0027】
いくつかの実施形態では、ハンドル225は、配置後のイントロデューサシースの移動を最小限にするために、ハンドル225をカテーテルスタンド155(図1)に係合、ロック、又は別の方法で連結するように構成された要素を備え得る。例えば、イントロデューサシース122は、ハンドルマウント130(図1)のクイックリリースラッチ構成に係合するように構成されたネック213を含む。
【0028】
図3は、テストベッド上で試験するために構成された弁輪形成術システムの実施形態を示す。図3では、イントロデューサシース122の遠位端は、心臓200の内腔内に延びている。ネック213は、弁輪形成術の間、ハンドルマウント130のクイックリリースラッチにロックされる。イントロデューサが配置されると、例えばワーキングカテーテル124及び/又はスタイレット126を使用して、弁輪形成術の処置が開始される。
【0029】
この用途の目的のために、「ワーキング」カテーテルは、心臓弁を修復したり交換したりするために使用される1つ以上の構成要素を運搬又は制御する任意のカテーテルであり得る。イントロデューサシースと同様に、ワーキングカテーテルはPEBAX、ナイロン、ポリウレタン、ポリエステル、シリコーン、又は別の類似の材料で構成することができる。ワーキングカテーテルは、ワーキングカテーテルの遠位端に1つ以上の組織係合機構、例えば針、フック、アンカー、クリップ、ねじ、ストラットなどを含むことができ、組織係合機構は、弁輪形成術の処置の一部として心臓組織に係合するように構成される。一態様によれば、ワーキングカテーテルは、ガイドカテーテルも含み(又は受け入れるように構成され)、ガイドカテーテルは、以下で説明されるように、ワーキングカテーテルを正確かつ制御された方法で心腔内の治療部位に案内する。一般に、ワーキングカテーテルは6~27フレンチの範囲である。例えば、34フレンチの外径(OD)及び30フレンチの内径(ID)を有するイントロデューサシースの場合、27フレンチ又は28フレンチのワーキングカテーテルは、狭い曲率半径に制限されることなくイントロデューサ内で移動することができる。
【0030】
図4A~4Cは、例示的なワーキングカテーテル124を示す斜視図である。図4Aでは、ワーキングカテーテル124が、遠位端405、近位端415、及びそれらの間に配置されたワーキングシャフト410を含むことを示すためにワーキングカテーテル124の上下方向に見た図が示されている。チャンネルBは、ワーキングカテーテル124の近位端415と遠位端405との間に延びる。近位端415は、組織係合制御部420及びガイドカテーテル制御部430を備えるハンドル425を含む。組織係合制御部420は、組織係合ロック422を含む。一実施形態では、組織係合ロック422は、第1の位置でシャフト410の遠位端405を操縦可能にし、第2の位置でシャフト410の遠位端405を所定の位置にロックする、ダイヤルを含む。図4Aでは、ガイドカテーテル制御部430は、シャフト410のチャンネルB内に配置されたガイドカテーテル427の近位端、及びガイドカテーテルロック432を含む。一実施形態では、ガイドカテーテルロック432は、第1の位置においてチャンネルB内で長手方向の移動及びガイドカテーテル427の操縦を可能にし、第2の位置においてガイドカテーテル427の遠位端を所定の位置にロックする。
【0031】
例示的な実施形態では、ガイドカテーテル427はPEBAX、ナイロン、ポリウレタン、ポリエステル、シリコーン又は他の同様の材料などの材料で形成される。一実施形態では、ガイドカテーテル427は、例えば、直径9フレンチ以下の操縦可能なカテーテルであり、少なくともワーキングカテーテルの遠位端内に摺動可能に配置され、ワーキングカテーテル124のシャフト410の遠位端を越えて延びるように構成される。サイズが比較的小さいため、ガイドカテーテルは心腔内でより簡単に視覚化でき、手術中の弁輪形成術構成要素を配置する精度を向上させることができる。
【0032】
図4Bは、ワーキングカテーテル124の下から上に見た図であり、ガイドカテーテル制御部分430及び組織係合制御部分420を含む、近位端415のハンドル425の下側を示す。図4Bでは、遠位ガイドワイヤアンカー411は、ワーキングカテーテル124のシャフト410の遠位端405を通過して延びる。
【0033】
ハンドル425のガイドカテーテル制御部430は、第1の面に配置された操縦コントローラ470と、異なる表面に配置された移動機構450とを含む。必須ではないが、ハンドルの異なる表面に制御部を設けることにより、外科医は片手でガイドカテーテルの遠位端をより簡単に操縦し且つ前進させることができる。一実施形態では、操縦コントローラ470は回転可能なレバーを備えるが、ホイール、ダイヤルなどの別の類似の機構を代用してもよい。移動機構450は、サムホイール又は別の同様の機構を含み、第1の方向へのサムホイールの回転により、ガイドカテーテルは、ワーキングカテーテル124の遠位端を経て前進され、反対方向である第2の方向へのサムホイールの回転により、ガイドカテーテルはワーキングカテーテル124の中に後退させられる。
【0034】
図4Cは、ワーキングカテーテル124の斜視側面図を示し、ワーキングカテーテル124は、近位端415に組織係合制御部420及びガイドカテーテル制御部430を有するハンドル425と、シャフト410と、遠位端405に遠位ガイドワイヤアンカー411とを含む。図4Cでは、操縦コントローラ470は、より詳細には、移動機構450(図4B)によって前進又は後退させつつガイドカテーテルを操縦するために親指などで制御することができるレバーを含む。遠位ガイドワイヤアンカー411が固定されると、ガイドカテーテルロック432を作動させて、遠位ガイドワイヤアンカー411の位置を固定する。組織係合制御部420は、シャフト410の遠位端405を操縦するために使用されるレバー460などの制御部を含む。シャフト410の遠位端405が作動位置に操縦されると、組織係合ロック422は作動されて、シャフト410の作動位置を保持する。
【0035】
図5A,5Bは、ワーキングカテーテル500の遠位端をより詳細に示す図であり、図5Aは、ワーキングカテーテル500の側方斜視図であり、図5Bは、カテーテル500の遠位端を近位方向に見た図である。両図では、ガイドカテーテル510は、ワーキングカテーテル500の遠位端にあるチャンネル505内を通過して延びる。ワーキングカテーテル500は、図4A~4Cについて上記したように、ワーキングカテーテルのハンドルの組織係合機構要素によって制御される針530などの組織係合機構を含む。上記のように、針が示されているが、図5A,5Bは、カテーテルの1つの形態を示しているに過ぎず、クリップ、アンカー、針、ストラット、拍車(spur)、又は弁輪形成術の手順のためにワーキングカテーテルの遠位端を心臓組織に少なくとも一時的に係合させることに使用される同様の機構などの組織係合手段を含むその他の種類のカテーテルも均等であると考えられる。
【0036】
一実施形態では、ガイドカテーテル510の遠位端は、遠位ガイドワイヤアンカー520を含む。遠位ガイドワイヤアンカー520は、ステンレス鋼、ニチノールなどで構成され、ガイドカテーテル510を治療部位に固定するように構成された鋭利な遠位端を含む。遠位ガイドワイヤアンカーは、軸方向の全長が約2mm~10mm~約15ミリメートル(mm)の範囲であり、直径は約0.2mm以下~3mm以上の範囲である。遠位ガイドワイヤアンカー520はらせん、クランプ、フック、針などを含むがこれらに限定されない多くの形態をとることができる取り付け機構を備え得る。一実施形態では、遠位ガイドワイヤアンカー520及び/又はガイドカテーテル510の遠位部の一方又は双方は、心エコー検査下及び/又は蛍光透視法で高い視認性を設けるニチノール、ステンレス鋼、PEEK、ポリマー又は他の材料などの材料で構成され得る。いくつかの実施形態では、遠位ガイドワイヤアンカー520は、薄壁のシームレス白金イリジウム合金で構成された白金イリジウムマーカーバンド(図示せず)を含むがこれらに限定されない視覚化を支援する要素を備え得る。マーカーバンドは、蛍光透視法下の血管形成術及び他の処置の間のカテーテルチューブ及びセンサー用の放射線不透過性マーカーも含み得る。マーカーバンドの一般的な寸法には、直径が約0.2~8.0mm、壁の厚さが約0.015~0.5mm、長さが約0.2mm~約25mmの範囲が含まれる。
【0037】
一実施形態では、ワーキングカテーテルのシャフト515は、組織係合機構530を支持するとともにワーキングチャンネル505を含む。いくつかの実施形態では、ガイドカテーテル510を支持するワーキングチャンネル505は、ワーキングカテーテル500の長さの少なくとも一部に沿って延びる。一態様によれば、ワーキングカテーテル内のワーキングチャンネルの位置は、ワーキングカテーテルの組織係合機構530に干渉しないように選択される。シース525は、シャフト515上に配置され、PEBAXなどの材料で形成されてイントロデューサシース内でワーキングカテーテルのスムーズな移動を容易にする。
【0038】
図6は、カテーテルスタンド650に固定されたワーキングカテーテルのハンドル600を示す。ブラケット633は、ハンドル600の組織係合部620を支持するように構成され、ブラケット635は、ハンドル600のガイドカテーテル部630を支持するように構成される。そのような構成により、使用中にワーキングカテーテルの遠位端の位置を変える可能性のあるハンドル600の不注意な移動に対してワーキングカテーテルを固定することができる。図示の実施形態では、カテーテルスタンド650は、そり669が摺動可能に配置されるレール660を備える。一実施形態では、そり669は、レールに沿ったそり669の移動を可能にするためにレール660に乗るように構成された突条又は他の特徴を含む支持部材665,668を含む。レール660上のそり668の位置は、ロック機構667によって固定される。図6の実施形態では、第2のレール670がそり669上に配置されている。支持部材672は、支持部材672をレール670に摺動可能に係合する要素を含み、ハンドル600のガイドカテーテル部分630を支持するように構成されたブラケット635を含む。そのような構成は、心臓の要素との不注意な接触の機会を最小限にする方法で、ガイドカテーテルの遠位端の弁輪形成術治療部位への制御された手動による導入を容易にする。
【0039】
ここで図7~13を参照して、本明細書に開示される弁輪形成術カテーテルシステムの使用方法の一実施形態を説明する。図7は、罹患した弁720上のステージング位置に配置されたイントロデューサシース710を上から見た図である。一実施形態では、「ステージング位置」は、イントロデューサシースの遠位端が心腔内に前進された位置であって、イントロデューサシースの遠位端が治療部位から間隔をおいて配置された位置、すなわち治療部位から離間した位置を含む。イントロデューサシース710の遠位端と治療部位720との間の間隔は、以下に限定されるものではないが、患者の解剖学的構造、治療部位の位置、イントロデューサシースの構成、ガイドカテーテルの長さ、及び利用可能な視覚化技術等に依存して変わり得るが、イントロデューサシース又はイントロデューサシース内のカテーテルに干渉することなく治療部位の視覚化を可能にするために十分でなければならない。例えば、一実施形態では、弁輪形成術処置におけるイントロデューサシースのステージング位置は、イントロデューサシースが弁又は弁輪の上方に比較的に中心決めされる位置であるが、弁又は弁輪から間隔をおいて例えば1~2mmから35~55mmの間で間隔をおいて配置される位置である。
【0040】
図8では、ワーキングカテーテル730は、ワーキングカテーテル730の遠位端にある組織係合機構735がイントロデューサシース710のステージング位置に近接した位置に配置されるまで、イントロデューサシース710内を通過して前進される。一実施形態によれば、ワーキングカテーテルのステージング位置は、イントロデューサシースのステージング位置に対応し、ワーキングカテーテル730の遠位端の組織係合機構735は、イントロデューサシース710から露出されるが、弁720から十分に離間して配置されて、ワーキングカテーテル730に干渉されることなく弁の視覚化を可能にする。
【0041】
図9Aは、ワーキングカテーテル730の組織係合機構735はワーキングカテーテルのステージング位置で弁から間隔をおいて保持されるが、ガイドカテーテル910は、ワーキングカテーテル730から心臓の壁940に向かって前進されることを示す。図9Aに示すように、ガイドカテーテル910の遠位端に配置された遠位ガイドワイヤアンカー915は、少なくとも部分的に埋め込まれるまで組織内に前進される。図9Bでは、遠位ガイドワイヤアンカー915(図示せず)は、弁720に近接した位置で心臓壁940の組織内に完全に埋め込まれ、ガイドカテーテル910は、心臓壁940への直接的な経路を設ける。次に、ワーキングカテーテル730をガイドカテーテル910上に前進させて、ワーキングカテーテル730の組織係合機構735を制御された方法で心臓壁940に搬送することができる。
【0042】
図10では、ワーキングカテーテル730は、ガイドカテーテル910によって形成された経路に沿って前進され、組織係合機構735は、弁輪形成術手順を開始するために心臓壁の隣に配置されている。9フレンチ以下の外形を有するガイドカテーテル910を使用して治療部位に案内することにより、不注意な接触の可能性を大幅に低減して、接触した場合には、そのような接触によって引き起こされる衝撃を大幅に低減する。ガイドカテーテル910が配備されると、治療部位を正確に標的し、より大きなワーキングカテーテル730が制御された方法でガイドカテーテル上に配備されることにより、弁輪形成術システムの配備に伴う悪影響を低減する。ワーキングカテーテル730は、ワーキングカテーテルのハンドル上の組織係合機構の制御部の操作を通じて心臓組織に係合するように制御することができる。例えば、一実施形態では、組織係合機構735は、心臓壁の組織を把持するために開閉が制御され、例えば、レバー460(図4C)を使用して組織係合機構735の針を開閉すること及びロック422(図4A)を使用して弁形成修復要素を送達する為に針を組織が係合された方向に固定する。
【0043】
一態様によれば、図11に示すように、1つ以上の弁輪形成術構成要素が、インプラントスタイレット126を使用して心腔に送達される。一実施形態では、インプラントスタイレット126は、ワーキングカテーテルのルーメン内を通過してその遠位端まで延びて、インプラント構成要素を標的治療部位に正確に配置する。インプラントスタイレットの構造は、弁輪形成術の処置によって異なる。例えば、インプラントスタイレットは、フレーム、バスケット、バンド、アンカー、クリップ、縫合糸、又は弁のサイズを縮小させるために使用される他の機構を含むがこれらに限定されない、1つ以上のインプラント構成要素を配備するように構成される。インプラント構成要素の配備は、さまざまな方法で制御される。例えば、図11では、インプラントスタイレットは、複数のカラー1101,1102を含み、各カラーはアンカーに対応する。1つ以上のインプラント構成要素は、スタイレットの遠位端に配置される。スタイレットに沿ったカラー1101,1102の前進は、例えば、プッシャー機構又は他のそのような装置を前進させて構成要素を先端から押し出すことによって、ワーキングカテーテルの遠位端を通過してアンカーを押し出したり、又は配備できる。いくつかの実施形態では、押しボタン又はダイヤルを使用して、複数の構成要素を配備できる。
【0044】
弁輪形成術構成要素を配備して適切な操作をした後、ワーキングカテーテル730は、心臓の要素への影響を最小限にしながら、心腔内の次の治療部位に移動される。したがって、図12Aでは、ワーキングカテーテル730は、上記のようにワーキングカテーテルのステージング位置に引き戻されて、ワーキングカテーテルの遠位端は、ステージング位置でイントロデューサシース710の遠位端に近接した位置に配置されているが、イントロデューサシース710の遠位端からは露出されている。クリップ1200が標的組織部位に係合されると、ガイドカテーテル910を離脱させることができる。一実施形態では、離脱は、移動機構450(図4B)を使用して、例えば、サムホイールを回転させて遠位ガイドワイヤアンカーを組織から後退させることによって達成することができる。図4Bに示すように、ガイドカテーテル910は、次の治療部位に進められるのに先立ち、ワーキングカテーテル730内に後退される。別の実施形態では、ガイドカテーテル910は、ワーキングカテーテル730内に後退されることなく、クリップ1200を離脱した後、次の治療部位に直接移動される。したがって、開示された弁輪形成術システムは、外科医が、患者/罹患した弁の特徴及び個人的な好みに基づいて手術の順序を柔軟に変更することを可能にする。
【0045】
いくつかの実施形態では、遠位ガイドワイヤアンカーは、インプラントの一部を含み、ガイドカテーテルの後退は、遠位ガイドワイヤアンカーの離脱を含む。そのような実施形態では、ガイドカテーテルは、ガイドカテーテルのルーメン内に直列に配置され、例えば押しボタン又は他の方法の作用によって各標的治療部位に押し出される複数の遠位ガイドワイヤアンカーを含み得る。
【0046】
したがって、改善された視覚化及び精度を備えた弁の修理及び/又は交換のためのシステム及び方法が示され、説明されてきた。一態様によれば、ガイドカテーテルの遠位端に視覚化手段を含めることによって、精度において利点をさらに高めることができることが認識されている。図13Aは、ICEセンサーアレイ1342を含む血管内心臓エコーグラフィー(ICE)カテーテル1340に取り付けられた遠位ガイドワイヤアンカー1320を含む例示的なガイドカテーテル1300の遠位端を示す。上記のように、ワーキングカテーテルの遠位端は、針1330などの組織係合機構も含む。一実施形態では、ICEカテーテル1340は、ガイドカテーテルを支持するワーキングカテーテルのルーメン内で回転されて、心腔内の様々な治療部位を視覚化することができる。いくつかの実施形態では、ICEイメージングを含むガイドカテーテルは、12フレンチ以下の外形を備えることにより、ガイドカテーテル1340の性能に悪影響を与えることなく視覚化を高めて心臓の要素への悪影響を最小限にする。
【0047】
他の様々な実施形態では、ICEセンサーアレイ1342は、カテーテルシステムの遠位端に近接した別の部位に配置される。例えば、センサーアレイ1342は、図13Bに示すように、ワーキングカテーテル730の組織係合機構735の表面に配置されて、使用者がガイドカテーテル910の遠位端と同様に組織係合機構735を視覚化することを可能にする視覚範囲1350を形成し得る。代替的には、センサーアレイ1342は、図13Cに示すように、ワーキングカテーテル730の遠位端に配置されて、ワーキングカテーテル910の遠位端ならびに組織係合機構735の視覚化を可能にする視覚化範囲1352を設ける。
【0048】
代替的な実施形態は、2016年11月15日に出願された、「心臓弁輪を再形成するための埋め込み型装置及び送達システム」という表題がつけられた、米国特許出願第15/352、288号明細書に開示され、参照によりその全体が本明細書に援用されるように、ワーキングカテーテルの中央ルーメン内にAcuson IPX8 AcuNavカテーテルなどの超音波カテーテルを配備することができる。いずれの方法を使用しても、弁輪の内側の周囲で超音波装置を回転させることにより、弁輪形成術の精度を高めるために、インプラント構成要素と弁尖の相対位置をより簡単に視覚化することができる。
【0049】
上記のように、ガイドカテーテルを使用して治療部位をより正確に標的化することを含む本明細書に開示される概念は、様々な弁輪形成術システムでの使用に適合させることができる。図14A,14Bは、フレームベースの弁輪形成術手順への本発明にかかる技術の利用を示している。図14Aに示すように、導入シース1410は、弁1450の上に導入され、ガイドワイヤ1405などの複数のガイドワイヤは、組織係合部材としてフレーム様のステント1420を使用して、弁1450に近接する位置に進められる。遠位ガイドワイヤアンカーは、弁1450に近接した位置で組織の中に打ち込むことができ、図14Bに示すように、その後、フレームは、取り除くことができる。ガイドワイヤ1405は、弁輪形成術の手順の間、弁輪形成術の構成要素を弁の周囲の治療部位に送るために残っていてもよい。ガイドワイヤ1405は、治療が完了したら除去することができる。
【0050】
図15A,15Bは、弁輪形成術「オーバーザワイヤ」(OTW:Over-the-Wire)ツール1520を治療部位1555に送るために、本明細書に開示されたガイドカテーテル1505を使用する弁輪形成術システム1500の代替の実施形態を示す。図15Aに示すように、ガイドカテーテル1505は、最初に、心臓壁の治療部位1555に送られる。図15Bに示すように、次に、OTWツール1520は、ガイドカテーテル1505上を治療部位1555に対して正確に送られ不注意な接触の可能性を低減させつつ治療の精度を高める。したがって、本明細書に開示された原理は、弁の修理及び交換に対して、簡単で、悪影響が少なく、柔軟性の高い解決策を提供する。
【0051】
したがって、本発明は、本明細書に示された実施に限定されることを意図するものではなく、本明細書に開示された特許請求の範囲、原理及び新規の要素に一致する最も広い範囲を与えられるべきである。「例」という言葉は、本明細書では、「例示、例、又は図示のように機能する」ことを意味するために排他的に使用される。本明細書で「例」として説明されている実施形態は、特に明記しない限り、必ずしも他の実施形態よりも好ましい又は有利であると解釈されるべきではない。
【0052】
この明細書において個別の実装の文脈で説明されている特定の要素は、単一の実装で組み合わせて実装することもできる。逆に、単一の実装の文脈で説明されているさまざまな要素は、複数の実装で個別に、又は任意の適切なサブコンビネーションで実装することもできる。さらに、特定の組み合わせで機能するものとして説明され、最初にそのように請求項に記載されている要素であっても、請求項に記載された組み合わせからの1つ以上の要素は、場合によっては組み合わせから切り出すことができ、請求項に記載された組み合わせは、サブコンビネーション又は、サブコンビネーションのバリエーションに関してもよい。同様に、操作は特定の順序で図面に描かれているが、これは、望ましい結果を達成するために、そのような操作が示された特定の順序又は連続した順序で実行されること、又は図示されたすべての操作が実行されることを要求することとして理解されるべきではない。さらに、他の実装も以下の特許請求の範囲に含まれる。場合によっては、特許請求の範囲に記載された工程は、異なる順序で実行され、それでも望ましい結果を達成することができる。
【0053】
一般に、本明細書で使用される用語は、一般に「開放された」用語として意図されていることが当業者であれば理解できる(例えば、「含んでいる」という用語は、「含んでいるがこれに限定されない」と解釈されるべきであり、「有する」という用語は、「少なくとも有する」と解釈されるべきであり、「含む」という用語は、「含むがこれに限定されない」と理解されるべきである)。導入されたクレームの記載の具体的な数字が意図されている場合には、そのような意図はクレームに明示的に記載され、そのような記載がない場合には、そのような意図はないことが、当業者であれば理解できる。例えば、理解を助けるために、以下の添付の特許請求の範囲は、請求項の列挙を紹介するために、導入句「少なくとも1つ」及び「1つ以上」という用語を使用している。ただし、そのような句の使用は、不定冠詞「a」又は「an」によるクレームの記載の導入が、そのような導入されたクレームの記載を含む特定のクレームを、そのような記載を1つだけ含む実施形態に限定することを意味すると解釈されるべきではなく、同一のクレームには、「1つ以上」又は「少なくとも1つ」という導入句と、「a」又は「an」などの不定冠詞が含まれ(例えば、「a」及び/又は「an」は通常、「少なくとも1つ」又は「1つ以上」を意味することが意図されている)、同じことが、クレームの記載を導入する際に使用される定冠詞の使用にも当てはまる。さらに、導入された請求項の特定の数が明示的に記載されている場合でも、当業者は、そのような記載は通常、少なくとも記載された数を意味すると解釈されるべきであることを認識する(例えば、他の修飾語を伴わない「2つの記載」という記載は、一般に少なくとも2つの記載、又は2つ以上の記載を意味する)。さらに、「A、B、Cなどの少なくとも1つ」に類似した規則が使用される場合には、一般に、そのような構成は、当業者がその慣習を理解するという意味において意図されている(例えば、「A、B、及びCの少なくとも1つを有するシステム」は、Aのみ、Bのみ、Cのみ、A及びB、A及びC、B及びC、及び/又はA,B,及びCを有するシステムを含むが、これらに限定されない。)。「A、B、又はCなどの少なくとも1つ」に類似した規則が使用されている場合、一般に、そのような構成は、当業者がその慣習を理解するという意味で意図されている(例えば、「A、B、又はCの少なくとも1つを有するシステム」は、Aのみ、Bのみ、Cのみ、A及びB、A及びC、B及びC、及び/又はA,B,及びCを有するシステムを含むが、これらに限定されない。)発明の詳細な説明、特許請求の範囲、又は図面のいずれにおいても、2つ以上の代替用語を提示する事実上すべての選言的単語及び/又は句は、用語のうちの一つ、用語のいずれか一方、又は両方の用語を含む可能性が企図されている。例えば、「A又はB」という句は、「A」又は「B」、又は「A及びB」の可能性を含むことが理解できる。
【0054】
本明細書に開示され、特許請求の範囲に記載された装置及び/又は方法は、本発明に照らして過度の実験なしに作成及び実行することができる。本発明の装置及び方法の様々な実施形態が説明されてきたが、本発明の概念、主旨及び範囲を逸脱することなく、装置及び/又は方法に、及び方法の工程又は工程の順序に変更を加えることができることは当業者であれば理解できる。当業者に明らかなそのようなすべての類似する代替及び変更は、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の主旨、範囲、及び概念の範囲内であると見なされる。
図1
図2A
図2B
図3
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9A
図9B
図10
図11
図12A
図12B
図13A
図13B
図13C
図14A
図14B
図15A
図15B