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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-27
(45)【発行日】2023-10-05
(54)【発明の名称】土質改良材及び固化処理方法
(51)【国際特許分類】
   C09K 17/10 20060101AFI20230928BHJP
   C09K 17/06 20060101ALI20230928BHJP
   C09K 17/02 20060101ALI20230928BHJP
   C04B 22/14 20060101ALI20230928BHJP
   C04B 22/12 20060101ALI20230928BHJP
   C04B 22/08 20060101ALI20230928BHJP
   C04B 22/06 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
C09K17/10 P
C09K17/06 P
C09K17/02 P
C04B22/14 A
C04B22/12
C04B22/08 B
C04B22/06 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022051940
(22)【出願日】2022-03-28
【審査請求日】2023-04-04
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000240
【氏名又は名称】太平洋セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162145
【弁理士】
【氏名又は名称】村地 俊弥
(74)【代理人】
【識別番号】100103539
【弁理士】
【氏名又は名称】衡田 直行
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 周彦
(72)【発明者】
【氏名】岩井迫 蘭
(72)【発明者】
【氏名】岡田 明也
(72)【発明者】
【氏名】森 喜彦
(72)【発明者】
【氏名】野崎 隆人
(72)【発明者】
【氏名】早川 隆之
【審査官】中野 孝一
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-032233(JP,A)
【文献】特開2006-240907(JP,A)
【文献】特開昭47-034518(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K17/00-17/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメント系固化材と硬化促進剤を含む土質改良材であって、
上記セメント系固化材が、該セメント系固化材を、昇温速度が10℃/分で、800℃になるまで昇温した場合における200~800℃の重量減少率が1.0~5.0%であるものであり、かつ、
上記土質改良材が、粉体又はスラリーであり、
上記硬化促進剤が、硫酸塩系、塩化物系、亜硝酸塩系、及びアルミナ系の中から選ばれる1種以上の硬化促進剤であることを特徴とする土質改良材。
【請求項2】
上記土質改良材の固形分100質量%中、上記セメント系固化材の割合が、70~99質量%で、かつ、上記硬化促進剤の割合が1~30質量%である請求項1に記載の土質改良材。
【請求項3】
上記セメント系固化材が、セメント、及び石膏を含み、かつ、高炉スラグ微粉末を含まないもの、又は、セメント、石膏、及び高炉スラグ微粉末を含むものであり、
上記セメント系固化材中、上記セメントの割合が20~90質量%、上記石膏の割合が無水物換算で5~30質量%、上記高炉スラグ微粉末の割合が0~60質量%である請求項1又は2に記載の土質改良材。
【請求項4】
請求項1~のいずれか1項に記載の土質改良材を用いた固化処理方法であって、
未改良土に対して、上記土質改良材を添加し、混合して固化改良土を得る固化処理方法。
【請求項5】
上記未改良土1mに対する上記土質改良材の供給量が、固形分で、50kg以上である請求項に記載の固化処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土質改良材及び固化処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、様々な土質改良材が提案されている。
例えば、熱帯性泥炭等の高有機質土、マリンクレイ等の高含水土等の各種土質の固化、改良処理に使用するセメント系固化材として、例えば、特許文献1には、普通セメント、高炉セメント、早強セメント、アーウイン系セメントの1種または2種以上を100重量部および石膏を3~100重量部含むことを特徴とするセメント系固化材が記載されている。
また、特許文献2には、カルシウムアルミネートを10重量%以上含みかつ、3CaO・SiOを5~20重量%含有することを特徴とする地盤改良材が記載されている。
さらに、特許文献3には、比表面積が3,000~5,500cm2/gのポルトランドセメント20~40重量%と、比表面積が4,000~10,000cm2/gの高炉スラグ微粉末60~40重量%と、比表面積が3,000~7,000cm2/gの石膏10~30重量%と、からなる有機質土用セメント系固化材が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-137950号公報
【文献】特開2004-155833号公報
【文献】特開平10-245555号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
セメント系固化材が長期に亘って保管されていた場合等において、セメント系固化材が風化している場合(具体的には、セメント系固化材の一部が、セメントの水和反応に寄与しない炭酸カルシウムや水酸化カルシウムに変化している場合)、セメント系固化材の強度発現性が低下するという問題がある。
本発明の目的は、材料として含まれるセメント系固化材が風化している場合であっても、強度発現性に優れた土質改良材及び固化処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、昇温速度が10℃/分で、800℃になるまで昇温した場合における200~800℃の重量減少率が1.0~5.0%であるセメント系固化材と、硬化促進剤を含み、かつ、粉体又はスラリーである土質改良材によれば、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下の[1]~[6]を提供するものである。
[1] セメント系固化材と硬化促進剤を含む土質改良材であって、上記セメント系固化材が、該セメント系固化材を、昇温速度が10℃/分で、800℃になるまで昇温した場合における200~800℃の重量減少率が1.0~5.0%であるものであり、かつ、上記土質改良材が、粉体又はスラリーであることを特徴とする土質改良材。
[2] 上記土質改良材の固形分100質量%中、上記セメント系固化材の割合が、70~99質量%で、かつ、上記硬化促進剤の割合が1~30質量%である前記[1]に記載の土質改良材。
[3] 上記セメント系固化材が、セメント、及び石膏を含み、かつ、高炉スラグ微粉末を含まないもの、又は、セメント、石膏、及び高炉スラグ微粉末を含むものであり、上記セメント系固化材中、上記セメントの割合が20~90質量%、上記石膏の割合が無水物換算で5~30質量%、上記高炉スラグ微粉末の割合が0~60質量%である前記[1]又は[2]に記載の土質改良材。
【0006】
[4] 上記硬化促進剤が、硫酸塩系、塩化物系、亜硝酸塩系、アルミナ系、チオシアン酸塩系、チオ硫酸塩系、及び炭酸塩系の中から選ばれる1種以上の硬化促進剤である前記[1]~[3]のいずれかに記載の土質改良材。
[5] 前記[1]~[4]のいずれかに記載の土質改良材を用いた固化処理方法であって、未改良土に対して、上記土質改良材を添加し、混合して固化改良土を得る固化処理方法。
[6] 上記未改良土1mに対する上記土質改良材の供給量が、固形分で、50kg以上である前記[5]に記載の固化処理方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明の土質改良材及び固化処理方法は、材料として含まれるセメント系固化材が風化している場合であっても、強度発現性に優れたものである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の土質改良材は、セメント系固化材と硬化促進剤を含む土質改良材であって、セメント系固化材が、該セメント系固化材を、昇温速度が10℃/分で、800℃になるまで昇温した場合における200~800℃の重量減少率が1.0~5.0%であるものであり、かつ、土質改良材が、粉体又はスラリーであるものである。
以下、詳しく説明する。
本明細書中、セメント系固化材とは、セメントを含み、かつ、任意に配合可能な混和材を含む、粉体状のものをいう。
セメント系固化材に用いられるセメントの例としては、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント、耐硫酸塩ポルトランドセメント等の各種ポルトランドセメントや、高炉セメント、フライアッシュセメント、シリカセメント等の混合セメントや、エコセメントや、白色セメントや、超速硬セメント等が挙げられる。
中でも、強度発現性等の観点から、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメントが好ましい。
【0009】
セメント系固化材中のセメントの割合は、好ましくは20~90質量%、より好ましくは23~85質量%、さらに好ましくは25~70質量%、さらに好ましくは25~60質量%、特に好ましくは25~35質量%である。上記割合が20質量%以上であれば、固化改良土の強度(例えば、一軸圧縮強さ)をより大きくすることができる。また、上記割合が90質量%以下であれば、材料にかかるコストをより低減し、廃棄物由来の原料の使用量をより多くすることができる。
【0010】
また、作業性がより向上する観点から、セメント系固化材としては、混和材として石膏を含むものが好ましい。セメント系固化材中の石膏の割合は、無水物換算で、好ましくは5~30質量%、より好ましくは8~28質量%、特に好ましくは10~25質量%である。
なお、上記石膏の割合には、セメントに含まれている石膏は含まれないものとする。
上記石膏の例としては、無水石膏、半水石膏、二水石膏、又はこれらの混合物等が挙げられる。
【0011】
セメント系固化材は、固化改良土の強度(例えば、一軸圧縮強さ)をより大きくする観点や、材料にかかるコストを低減し、高炉スラグ微粉末の利用を促進する等の観点から、混和材として、高炉スラグ微粉末を含んでいてもよい。セメント系固化材中の高炉スラグ微粉末の割合は、好ましくは60質量%以下、より好ましくは10~58質量%、さらに好ましくは20~55質量%、特に好ましくは30~50質量%である。上記割合が60質量%以下であれば、相対的にセメントの量が多くなるため、固化改良土の強度(例えば、一軸圧縮強さ)をより大きくすることができる。
なお、セメント系固化材に含まれるセメントが高炉セメントである場合、高炉セメントに含まれる高炉スラグ微粉末は、上記割合に含まれるものとする。
石膏及び高炉スラグ微粉末以外の混和材の例としては、生石灰、消石灰、フライアッシュ、石灰石微粉末、及びシリカフューム等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
セメント系固化材中の石膏及び高炉スラグ微粉末以外の混和材(二種以上の混和材を含むものは、その合計)の割合は、相対的にセメントの割合が多くなり、固化改良土の強度をより大きくすることができる等の観点から、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下、特に好ましくは5質量%以下である。
【0012】
セメント系固化材は、セメント系固化材を昇温速度が10℃/分で、800℃になるまで昇温した場合における200~800℃の重量減少率が1.0~5.0%、好ましくは1.2~4.6%、より好ましくは1.5~3.0%、さらに好ましくは1.6~2.5%であるものである。上記重量減少率が1.0%未満であると、土質改良材が硬化促進剤を含むことによる強度発現性の向上効果が小さくなる。また、重量減少率が1.0%未満であるセメント系固化材は、風化の程度が小さいため、風化によるセメント系固化材の強度発現性の低下も小さく、本発明の効果を得る必要性が少ない。上記重量減少率が5.0%を超える場合、土質改良材の強度発現性が低下する。
なお、200~800℃の重量減少率が大きい程、セメント系固化材中に、セメント系固化材の水和反応に寄与しない炭酸化カルシウム及び水酸化カルシウム(セメント系固化材の風化に伴って形成される化合物)が多く含まれていることを意味する。
上記重量減少率(質量減少率)は、以下の式(1)を用いて算出することができる。
重量減少率={(200℃におけるセメント系固化材の重量-800℃におけるセメント系固化材の重量)/200℃におけるセメント系固化材の重量}×100%・・・(1)
また、重量減少率は、市販の熱重量示差熱分析装置を用いて測定することができる。
【0013】
本明細書中、「硬化促進剤」とは、「JIS A 6204:2011(コンクリート用化学混和剤)」に規定されているものをいう。より具体的には、セメントの水和を早め、初期材齢の強度を大きくするための化学混和剤であって、上記硬化促進剤を用いていない場合の圧縮強度を100%としたときに、材齢1日で120%以上、材齢2日で130%以上、材齢28日で90%以上の各値を満たすものをいう。ここで、「圧縮強度」とは、「JIS A 1108:2018(コンクリートの圧縮強度試験方法)」に規定する方法で測定された値をいう。
硬化促進剤の例としては、硫酸塩系、塩化物系、亜硝酸塩系、アルミナ系、チオシアン酸塩系、チオ硫酸塩系、及び炭酸塩系等の硬化促進剤が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0014】
硫酸塩系硬化促進剤の例としては、硫酸第一鉄、硫酸アルミニウム等が挙げられる。
塩化物系硬化促進剤の例としては、塩化カルシウム、塩化ナトリウム等が挙げられる。
亜硝酸塩系硬化促進剤の例としては、亜硝酸カルシウム、亜硝酸ナトリウム等が挙げられる。
アルミナ系硬化促進剤の例としては、カルシウムアルミネート、カルシウムアルミノフェライト、カルシウムハロアルミネート、カルシウムナトリウムアルミネート、カルシウムリチウムアルミネート、カルシウムサルフォアルミネート及びこれらの水和物等が挙げられる。
中でも、固化改良土の強度をより大きくすることができる観点から、塩化カルシウムが好ましい。
なお、硬化促進剤は、通常、粉体である。
【0015】
土質改良材の固形分100質量%中、セメント系固化材の割合(土質改良材が水を含まない場合における、セメント系固化材の割合)は、好ましくは70~99質量%、より好ましくは75~97質量%、さらに好ましくは82~94質量%、特に好ましくは86~92質量%である。上記割合が70質量%以上であれば、固化改良土の強度をより大きくすることができる。上記割合が99質量%以下であれば、相対的に硬化促進剤の割合が大きくなるため、未改良土の含水比が大きい場合や、上述したセメント系固化材の重量減少率が大きい場合であっても、固化改良土の強度をより大きくすることができる。
土質改良材の固形分100質量%中、硬化促進剤の割合(土質改良材が水を含まない場合における、硬化促進剤の割合)は、好ましくは1~30質量%、より好ましくは3~25質量%、さらに好ましくは6~18質量%、特に好ましくは8~14質量%である。上記割合が1質量%以上であれば、未改良土の含水比が大きい場合や、上述したセメント系固化材の重量減少率が大きい場合であっても、固化改良土の強度をより大きくすることができる。上記割合が30質量%以下であれば、相対的にセメント系固化材の割合が大きくなるため、固化改良土の強度をより大きくすることができる。
【0016】
本発明の土質改良材によれば、軟弱地盤等の強度(例えば、一軸圧縮強さ)の小さい未改良土を、強度のより大きな土(固化改良土)にすることができる。
土質改良材を用いた未改良土の固化処理方法の一例としては、未改良土に対して、土質改良材を添加し、混合して固化改良土を得る方法が挙げられる。
固化処理の対象となる未改良土は、特に限定されるものではないが、含水比が、100%以上(より好ましくは150~1,000%、さらに好ましくは300~800%、特に好ましくは400~700%)である未改良土が好ましい。
一般的に、未改良土の含水比が100%以上である場合、土質改良材の強度発現性が小さくなるが、本発明の土質改良材によれば、含水比が100%以上であるような未改良土であっても、固化改良土の強度を大きくすることができる。
なお、「含水比」(単位:%)とは、未改良土に含まれる固体の質量に対する、未改良土に含まれる水の質量の百分率((水/固体)×100%)をいう。
【0017】
土質改良材は、粉体の状態で添加し、混合してもよく(ドライ添加方法)、スラリーの状態で添加し、混合してもよい(スラリー添加方法)。
例えば、未改良土の含水比が小さい場合(例えば、含水比が300%未満である場合)、未改良土からなる層の厚みが大きく、中層混合処理工法や、深層混合処理工法を用いて固化処理を行う場合、未改良土に土質改良材をより均一に混合したい場合等には、固化改良土の強度をより大きくする観点から、スラリーの状態の土質改良材を、未改良土に供給することが好ましい。この場合、セメント系固化材と硬化促進剤と水を予め混合し、スラリーの形態とした後、該スラリーを未改良土に供給する。
また、粉体状の土質改良材と水を別々に未改良土に供給してもよい。なお、粉体状の土質改良材は、通常、水を除く粉状の各材料を混合することで得ることができる。
土質改良材をスラリーの状態で用いる場合、水粉体比(水と粉体(セメント系固化材と硬化促進剤の混合物)の質量比(水/粉体)を百分率で表したもの)は、土質改良材の強度発現性や、未改良土との混合の容易性等の観点から、好ましくは50~200%、より好ましくは60~150%、特に好ましくは70~120%である。
【0018】
未改良土1mに対する土質改良材の供給量は、対象となる未改良土の性状、施工条件、並びに、処理後に得られる固化改良土に求められる強度等によっても異なるが、未改良土1mに対して、固形分で、好ましくは50kg以上、より好ましくは80~600kg、より好ましくは100~500kg、特に好ましくは150~450kgである。
上記供給量が50kg以上であれば、固化改良土の強度をより大きくすることができる。上記供給量が600kg以下であれば、コストの過度な増加を防ぐことができる。
【0019】
また、セメント系固化材の、セメント系固化材を昇温速度が10℃/分で、800℃になるまで昇温した場合における200~800℃の重量減少率を測定し、得られた重量減少率に基いて、土質改良材を調製してもよい。
具体的には、セメント系固化材の上記重量減少率が1.0%未満である場合、セメント系固化材をそのまま土質改良材とし、セメント系固化材の上記重量減少率が1.0~5.0%である場合、セメント系固化材と硬化促進剤を混合して、土質改良材を得る方法等が挙げられる。
また、セメント系固化材に含まれるセメント以外の材料(石膏、高炉スラグ微粉末等)の割合を適宜変更して、セメント系固化材の上記重量減少率が所望の数値(例えば、1.0~5.0%)となるように、適宜調整してもよい。
【実施例
【0020】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[使用材料]
(1)セメント1;普通ポルトランドセメント、密度:3.12g/cm、ブレーン比表面積:3,800cm/g、室温~1,000℃の重量減少率:5.2%
(2)セメント2;普通ポルトランドセメント、密度:3.16g/cm、ブレーン比表面積:3,300cm/g、室温~1,000℃の重量減少率:2.9%
(3)高炉スラグ微粉末(表2~3中、「高炉スラグ」と示す。);デイ・シイ社製、商品名「セラメント」、密度:2.90g/cm、ブレーン比表面積:4,800cm/g、室温~1,000℃の重量減少率:0.4%
(4)石膏1;無水石膏(表2~3中、「無水」と示す。)、密度:2.70g/cm、ブレーン比表面積:4,100cm/g、室温~1,000℃の重量減少率:0.2%
(5)石膏2;半水石膏(表2~3中、「半水」と示す。)、密度:2.62g/cm、ブレーン比表面積:4,200cm/g、室温~1,000℃の重量減少率:6.4%
(6)石膏3;二水石膏(表2~3中、「二水」と示す。)、密度:2.32g/cm、ブレーン比表面積:3,200cm/g、室温~1,000℃の重量減少率:20.7%
(7)硬化促進剤A;硫酸第一鉄
(8)硬化促進剤B;塩化カルシウム
(9)硬化促進剤C;カルシウムアルミネート系水和物
(10)硬化促進剤D;亜硝酸カルシウム
(11)有機質土1~2;詳細は表1に示す。
なお、材料(1)~(6)の室温~1,000℃の重量減少率とは、熱重量示差熱分析(DTA-TG)装置を用いて、窒素ガスの量が200ml/分であり、10℃/分の昇温速度の条件で、室温から1,000℃になるまで昇温させた際の重量減少率({(室温における材料の重量-1,000℃における材料の重量)/室温における材料の重量×100%})である。
【0021】
【表1】
【0022】
[実施例1~5]
材料として、表2に示す種類の普通ポルトランドセメント及び石膏、並びに高炉スラグ微粉末を含み、セメント系固化材中の各材料の割合が表2に示す割合である粉体状のセメント系固化材を得た。
セメント系固化材の、熱重量示差熱分析(TG-DTA)装置を用いて、窒素ガスの装置内への量が200ml/分であり、10℃/分の昇温速度の条件で、室温から1,000℃になるまで昇温させた場合の、200~800℃の重量減少率({(200℃におけるセメント系固化材の重量-800℃におけるセメント系固化材の重量)/200℃におけるセメント系固化材の重量×100%})を算出した。得られた値を表2に示す。
上記セメント系固化材と、表2に示す種類の硬化促進剤を、表2に示す質量比となる量で混合して粉体状の土質改良材を得た。
有機質土1に、有機質土1m当たりの土質改良材の添加量が400kgとなる粉体状の土質改良材を添加して混合し、固化改良土を得た。
得られた固化改良土の材齢28日における一軸圧縮強さを、「JIS A 1216:2020(土の一軸圧縮試験方法)」に準拠して測定した。
[比較例1~3、5]
硬化促進剤を使用せず、セメント系固化材を土質改良材とする以外は実施例1と同様にして、固化改良土を得た。実施例1と同様にして、一軸圧縮強さ等を測定した。
[比較例4]
実施例1と同様にして、固化改良土を得た。実施例1と同様にして、一軸圧縮強さ等を測定した。
【0023】
【表2】
【0024】
[実施例6]
セメント1、無水石膏、及び高炉スラグ微粉末を含み、セメント系固化材中の各材料の割合が表3に示す割合であるセメント系固化材を得た。
実施例1と同様にして、セメント系固化材の、200~800℃の重量減少率を算出した。
上記セメント系固化材と、表3に示す種類の硬化促進剤を、表3に示す質量比となる量で混合して粉体状の土質改良材を得た。
次いで、粉体状の土質改良材と、該土質改良材と同じ質量の水を混合して、水粉体比(水と粉体状の土質改良材の質量比を100分率で表したもの)が100%であるスラリーを得た。
有機質土2に、有機質土1m当たりの土質改良材(固形分)の添加量が100kgとなる量の上記スラリーを添加して混合し、固化改良土を得た。
得られた固化改良土の一軸圧縮強さを、実施例1と同様にして測定した。
[比較例6]
硬化促進剤を使用せず、セメント系固化材を土質改良材とする以外は実施例6と同様にして、固化改良土を得た。実施例6と同様にして、一軸圧縮強さ等を測定した。
[参考例1]
セメント1の代わりにセメント2を使用し、200~800℃の重量減少率が表3に示す値であるセメント系固化材を用いた以外は、実施例6と同様にして、固化改良土を得た。実施例6と同様にして、一軸圧縮強さ等を測定した。
[参考例2]
セメント1の代わりにセメント2を使用し、200~800℃の重量減少率が表3に示す値であるセメント系固化材を用いた以外は、比較例6と同様にして、固化改良土を得た。比較例6と同様にして、一軸圧縮強さ等を測定した。
結果を表3に示す。
【0025】
【表3】
【0026】
表2~3から、実施例1と比較例1(硬化促進剤を用いない以外は実施例1と同様のもの)の比較から、本発明の土質改良材によれば、固化改良土の一軸圧縮強さをより大きくすることができることがわかる。同様の傾向は、実施例2と比較例3、実施例3と比較例2、実施例4と比較例1、実施例5と比較例5、実施例6と比較例6の各々の比較でも見られた。
また、表3の参考例1と参考例2を比較すると、セメント系固化材の重量減少率が0.8%である場合、セメント系固化材のみを用いた参考例2の材齢28日の一軸圧縮強さは550kN/mであるのに対して、セメント系固化材及び硬化促進剤を使用した参考例1の固化改良土の材齢28日の一軸圧縮強さは440kN/mであることがわかる。このことから、セメント系固化材の重量減少率が0.8%である場合(すなわち、セメント系固化材の風化が進んでいない場合)、硬化促進剤を用いても、固化改良土の一軸圧縮強さは大きくならないことがわかる。
【要約】
【課題】材料として含まれるセメント系固化材が風化している場合であっても、強度発現性に優れた土質改良材及び固化処理方法を提供することである。
【解決手段】セメント系固化材と硬化促進剤を含む土質改良材であって、上記セメント系固化材が、該セメント系固化材を、昇温速度が10℃/分で、800℃になるまで昇温した場合における200~800℃の重量減少率が1.0~5.0%であるものであり、かつ、上記土質改良材が、粉体又はスラリーである土質改良材。未改良土に対して、上記土質改良材を添加し、混合して固化改良土を得る固化処理方法。
【選択図】なし