(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-27
(45)【発行日】2023-10-05
(54)【発明の名称】回転機制御装置
(51)【国際特許分類】
H02P 21/05 20060101AFI20230928BHJP
H02P 21/24 20160101ALI20230928BHJP
【FI】
H02P21/05
H02P21/24
(21)【出願番号】P 2022085836
(22)【出願日】2022-05-26
【審査請求日】2022-06-03
(31)【優先権主張番号】P 2021203816
(32)【優先日】2021-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2021203968
(32)【優先日】2021-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】松山 哲也
(72)【発明者】
【氏名】田中 雄也
【審査官】保田 亨介
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-136806(JP,A)
【文献】特開2015-223023(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P21/00-25/03
25/04
25/10-27/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
同期回転機の磁束である回転機磁束を推定する磁束推定部と、
推定された前記回転機磁束である推定磁束と前記同期回転機の検出電流との第1内積、または前記同期回転機の永久磁石の推定された磁石磁束と前記検出電流との第2内積を用いたフィードバック制御を実行することによって指令磁束の振幅である指令振幅を生成する指令振幅生成部と、
前記推定磁束と前記検出電流とに基づいて前記磁石磁束の位相である磁石位相を特定し、前記磁石位相をdm軸としかつ前記磁石位相に対して90度進んだ位相をqm軸としたdm-qm座標を用いて、前記推定磁束のqm軸磁束と前記検出電流のqm軸電流と前記磁石位相の高調波成分とを特定
し、前記qm軸磁束と前記高調波成分とから磁気エネルギーを特定する磁化特性特定部と、
前記qm軸電流と前記高調波成分と
前記磁気エネルギーとに基づいて得られるリプル補償トルクを用いて、リプル補償位相を特定するリプル補償特定部と、
前記リプル補償位相とトルク指令または回転速度指令
から生成される位相とを加算することによって指令磁束ベクトル位相を特定する指令位相特定部と、
前記指令振幅と前記指令磁束ベクトル位相とに基づいて前記指令磁束を生成する指令磁束生成部とを備える、
回転機制御装置。
【請求項2】
同期回転機の磁束である回転機磁束を推定する磁束推定部と、
推定された前記回転機磁束である推定磁束と前記同期回転機の検出電流との第1内積、または前記同期回転機の永久磁石の推定された磁石磁束と前記検出電流との第2内積を用いたフィードバック制御を実行することによって指令磁束の振幅である指令振幅を生成する指令振幅生成部と、
前記推定磁束と前記検出電流とに基づいて前記磁石磁束の位相である磁石位相を特定し、前記磁石位相をdm軸としかつ前記磁石位相に対して90度進んだ位相をqm軸としたdm-qm座標を用いて、前記推定磁束のqm軸磁束と前記検出電流のqm軸電流と前記磁石位相の高調波成分とを特定
し、前記qm軸磁束と前記高調波成分とから磁気エネルギーを特定する磁化特性特定部と、
前記qm軸電流と前記高調波成分と
前記磁気エネルギーとに基づいてリプル補償トルクを特定するリプル補償特定部と、
前記リプル補償トルクに基づいて共振部によって特定されるリプル補償位相とトルク指令または回転速度指令
から生成される位相とを加算することによって指令磁束ベクトル位相を特定する指令位相特定部と、
前記指令振幅と前記指令磁束ベクトル位相とに基づいて前記指令磁束を生成する指令磁束生成部とを備える、
回転機制御装置。
【請求項3】
同期回転機の磁束である回転機磁束を推定する磁束推定部と、
推定された前記回転機磁束である推定磁束と前記同期回転機の検出電流との第1内積、または前記同期回転機の永久磁石の推定された磁石磁束と前記検出電流との第2内積を用いたフィードバック制御を実行することによって指令磁束の振幅である指令振幅を生成する指令振幅生成部と、
前記推定磁束と前記検出電流とに基づいて前記磁石磁束の位相である磁石位相を特定し、前記磁石位相をdm軸としかつ前記磁石位相に対して90度進んだ位相をqm軸としたdm-qm座標を用いて、前記検出電流のqm軸電流の脈動分を含むリプル補償トルクに基づいて、共振部によってリプル補償位相を特定するリプル補償特定部と、
前記リプル補償位相とトルク指令または回転速度指令
から生成される位相とを加算することによって指令磁束ベクトル位相を特定する指令位相特定部と、
前記指令振幅と前記指令磁束ベクトル位相とに基づいて前記指令磁束を生成する指令磁束生成部とを備える、
回転機制御装置。
【請求項4】
前記推定磁束に基づいて前記推定磁束の位相である推定位相を特定する位相特定部と、前記推定磁束と前記検出電流とに基づいて推定トルクを演算するトルク推定部とをさらに備え、
前記指令位相特定部は、前記推定トルクを指令トルクに収束させるためのトルク位相と前記リプル補償位相と前記推定位相とを加算することによって、前記指令磁束ベクトル位相を特定する、
請求項1から3のいずれか1項に記載の回転機制御装置。
【請求項5】
前記指令位相特定部は、(1)前記推定磁束の位相である推定位相が移動するべき制御周期毎の移動量を、前記同期回転機への前記回転速度指令を用いて特定し、(2)特定された前記移動量と前記リプル補償位相とを用いて前記指令磁束ベクトル位相を特定する、
請求項1から3のいずれか1項に記載の回転機制御装置。
【請求項6】
前記推定磁束に基づいて前記推定磁束の位相である推定位相を特定する位相特定部をさらに備え、
前記指令位相特定部は、(1)前記推定位相が移動するべき制御周期毎の移動量を、前記同期回転機への前記回転速度指令を用いて特定し、(2)特定された前記移動量と前記リプル補償位相と前記推定位相とを用いて前記指令磁束ベクトル位相を特定する、
請求項1から3のいずれか1項に記載の回転機制御装置。
【請求項7】
前記推定磁束と前記検出電流とに基づいて推定トルクを演算するトルク推定部をさらに備え、
前記指令位相特定部は、前記推定トルクをさらに用いて前記指令磁束ベクトル位相を特定する、
請求項5に記載の回転機制御装置。
【請求項8】
前記推定磁束と前記検出電流とに基づいて推定トルクを演算するトルク推定部をさらに備え、
前記指令位相特定部は、前記推定トルクをさらに用いて前記指令磁束ベクトル位相を特定する、
請求項6に記載の回転機制御装置。
【請求項9】
前記指令振幅生成部は、前記第1内積または前記第2内積の演算結果の目標値として、ゼロに設定する、
請求項1から3のいずれか1項に記載の回転機制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、回転機を制御する回転機制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、同期回転機(同期モータ)の駆動方法として、直接トルク制御(DTC:Direct Torque Control)を用いた位置センサレス磁束制御が知られている。たとえば、特許文献1には、位置センサレス磁束制御について開示されている。
【0003】
また、従来、トルクリプルを低減する方法等が知られている。たとえば、非特許文献1および非特許文献2には、トルクリプルを低減する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【非特許文献】
【0005】
【文献】井上征則、森本茂雄、真田雅之、「高調派を含む埋込磁石同期モータの直接トルク制御によるトルクリプル低減」、平成18年電気学会産業応用部門大会、1-4、p.173-176
【文献】寺山祐樹、星伸一、「PMSMの磁気飽和を考慮した鎖交磁束高調波成分推定値を用いたトルクリプル抑制制御」、電気学会論文誌D、Vol.141、No.4、pp.366-373
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
位置センサレス磁束制御において、トルクリプルを効果的に低減することが望まれる。
【0007】
そこで、本開示は、位置センサレス磁束制御において、トルクリプルを効果的に低減できる回転機制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様に係る回転機制御装置は、同期回転機の磁束である回転機磁束を推定する磁束推定部と、推定された前記回転機磁束である推定磁束と前記同期回転機の検出電流との第1内積、または前記同期回転機の永久磁石の推定された磁石磁束と前記検出電流との第2内積を用いたフィードバック制御を実行することによって指令磁束の振幅である指令振幅を生成する指令振幅生成部と、前記推定磁束と前記検出電流とに基づいて前記磁石磁束の位相である磁石位相を特定し、前記磁石位相をdm軸としかつ前記磁石位相に対して90度進んだ位相をqm軸としたdm-qm座標を用いて、前記推定磁束のqm軸磁束と前記検出電流のqm軸電流と前記磁石位相の高調波成分とを特定する磁化特性特定部と、前記qm軸電流と前記高調波成分とに基づいて得られるリプル補償トルクを用いて、リプル補償位相を特定するリプル補償特定部と、前記リプル補償位相とトルク指令または回転速度指令とに基づいて指令磁束ベクトル位相を特定する指令位相特定部と、前記指令振幅と前記指令磁束ベクトル位相とに基づいて前記指令磁束を生成する指令磁束生成部とを備える。
【0009】
本開示の一態様に係る回転機制御装置は、同期回転機の磁束である回転機磁束を推定する磁束推定部と、推定された前記回転機磁束である推定磁束と前記同期回転機の検出電流との第1内積、または前記同期回転機の永久磁石の推定された磁石磁束と前記検出電流との第2内積を用いたフィードバック制御を実行することによって指令磁束の振幅である指令振幅を生成する指令振幅生成部と、前記推定磁束と前記検出電流とに基づいて前記磁石磁束の位相である磁石位相を特定し、前記磁石位相をdm軸としかつ前記磁石位相に対して90度進んだ位相をqm軸としたdm-qm座標を用いて、前記推定磁束のqm軸磁束と前記検出電流のqm軸電流と前記磁石位相の高調波成分とを特定する磁化特性特定部と、前記qm軸電流と前記高調波成分とに基づいてリプル補償トルクを特定するリプル補償特定部と、前記リプル補償トルクに基づいて共振部によって特定されるリプル補償位相とトルク指令または回転速度指令とに基づいて指令磁束ベクトル位相を特定する指令位相特定部と、前記指令振幅と前記指令磁束ベクトル位相とに基づいて前記指令磁束を生成する指令磁束生成部とを備える。
【0010】
本開示の一態様に係る回転機制御装置は、同期回転機の磁束である回転機磁束を推定する磁束推定部と、推定された前記回転機磁束である推定磁束と前記同期回転機の検出電流との第1内積、または前記同期回転機の永久磁石の推定された磁石磁束と前記検出電流との第2内積を用いたフィードバック制御を実行することによって指令磁束の振幅である指令振幅を生成する指令振幅生成部と、前記推定磁束と前記検出電流とに基づいて前記磁石磁束の位相である磁石位相を特定し、前記磁石位相をdm軸としかつ前記磁石位相に対して90度進んだ位相をqm軸としたdm-qm座標を用いて、前記検出電流のqm軸電流の脈動分を含むリプル補償トルクに基づいて、共振部によってリプル補償位相を特定するリプル補償特定部と、前記リプル補償位相とトルク指令または回転速度指令とに基づいて指令磁束ベクトル位相を特定する指令位相特定部と、前記指令振幅と前記指令磁束ベクトル位相とに基づいて前記指令磁束を生成する指令磁束生成部とを備える。
【発明の効果】
【0011】
本開示の一態様に係る回転機制御装置によれば、位置センサレス磁束制御において、トルクリプルを効果的に低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、第1の実施の形態に係る回転機制御装置等のブロック図である。
【
図2】
図2は、αβ座標系、dq座標系、およびdmqm座標系を説明するための図である。
【
図3】
図3は、
図1の回転機制御装置の位置センサレス制御部のブロック図である。
【
図4】
図4は、
図3の位置センサレス制御部の指令振幅生成部のブロック図である。
【
図5】
図5は、
図3の位置センサレス制御部の磁化特性特定部のブロック図である。
【
図6】
図6は、
図5の磁化特性特定部のフーリエ変換部のブロック図である。
【
図7】
図7は、
図5の磁化特性特定部によって生成される磁気エネルギーテーブルを示す図である。
【
図8】
図8は、
図3の位置センサレス制御部のリプル補償特定部のブロック図である。
【
図9】
図9は、
図8のリプル補償特定部のリプルトルク特定部のブロック図である。
【
図10】
図10は、
図8のリプル補償特定部のリプル位相特定部のブロック図である。
【
図11】
図11は、
図3の位置センサレス制御部の指令位相特定部のブロック図である。
【
図12】
図12は、第2の実施の形態に係る回転機制御装置の指令振幅生成部のブロック図である。
【
図13】
図13は、第3の実施の形態に係る回転機制御装置の磁化特性特定部のブロック図である。
【
図14】
図14は、第3の実施の形態に係る回転機制御装置の他の磁化特性特定部のブロック図である。
【
図15】
図15は、第4の実施の形態に係る回転機制御装置の位置センサレス制御部のブロック図である。
【
図17】
図17は、第5の実施の形態に係る回転機制御装置の指令位相特定部のブロック図である。
【
図18】
図18は、第6の実施の形態に係る回転機制御装置の指令位相特定部のブロック図である。
【
図19】
図19は、第7の実施の形態に係る回転機制御装置の指令位相特定部のブロック図である。
【
図20】
図20は、第8の実施の形態に係る回転機制御装置の指令位相特定部のブロック図である。
【
図21】
図21は、第9の実施の形態に係る回転機制御装置の指令位相特定部のブロック図である。
【
図22】
図22は、第10の実施の形態に係る回転機制御装置等のブロック図である。
【
図26】
図26は、第13の実施の形態に係る回転機制御装置の位置センサレス制御部のブロック図である。
【
図28】
図28は、第14の実施の形態に係る回転機制御装置の指令位相特定部のブロック図である。
【
図29】
図29は、第15の実施の形態に係る回転機制御装置の指令位相特定部のブロック図である。
【
図30】
図30は、第16の実施の形態に係る回転機制御装置の指令位相特定部のブロック図である。
【
図31】
図31は、第17の実施の形態に係る回転機制御装置の指令位相特定部のブロック図である。
【
図32】
図32は、第18の実施の形態に係る回転機制御装置の指令位相特定部のブロック図である。
【
図33】
図33は、第19の実施の形態に係る回転機制御装置等のブロック図である。
【
図36】
図36は、回転機におけるトルクの波形を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示の一態様に係る回転機制御装置の具体例について、図面を参照しながら説明する。ここで示す実施の形態は、いずれも本開示の一具体例を示すものである。したがって、以下の実施の形態で示される数値、形状、構成要素、構成要素の配置および接続形態、ならびに、ステップ(工程)およびステップの順序等は、一例であって本開示を限定する趣旨ではない。また、各図は、模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。
【0014】
なお、本開示の包括的または具体的な態様は、システム、方法、集積回路、コンピュータプログラムまたはコンピュータ読み取り可能なCD-ROMなどの記録媒体で実現されてもよく、システム、方法、集積回路、コンピュータプログラムおよび記録媒体の任意な組み合わせで実現されてもよい。
【0015】
(第1の実施の形態)
図1に示すように、回転機制御装置100は、第1電流センサ102、第2電流センサ104、位置センサレス制御部106、およびデューティ生成部108を備えている。回転機制御装置100は、PWM(Pulse Width Modulation)インバータ300および同期回転機400に接続されている。
【0016】
位置センサレス制御部106は、同期回転機400の位置センサレス磁束制御を行う。位置センサレス制御部106は、同期回転機400の位置センサレス磁束制御運転を実行するように構成されている。本実施の形態では、位置センサレス磁束制御運転が実行されている期間において、同期回転機400のロータの回転速度(回転数)が、同期回転機400に印加される回転機電流の回転速度(同期速度)に一致する。位置センサレス磁束制御運転は、エンコーダおよびレゾルバ等の位置センサを用いない運転である。本明細書では、説明の便宜上、推定された回転機磁束の位相を用いて回転機磁束を制御する運転を磁束制御運転と称する。回転機磁束は、同期回転機400に印加されている3相交流座標上の電機子鎖交磁束と、この電機子鎖交磁束を座標変換することにより得た磁束の両方を含む概念である。本明細書では、「振幅」は、単に大きさ(絶対値)を指す場合がある。
【0017】
回転機制御装置100の一部または全部の要素は、DSP(Digital Signal Processor)またはマイクロコンピュータにおいて実行される制御アプリケーションによって提供され得る。DSPまたはマイクロコンピュータは、コア、メモリ、A/D変換回路および通信ポート等の周辺装置を含んでいてもよい。また、回転機制御装置100の一部または全部の要素は、論理回路によって構成されていてもよい。
【0018】
(回転機制御装置100による制御の概要)
回転機制御装置100は、指令トルクTe
*および相電流iu,iwから、デューティDu,Dv,Dwを生成する。PWMインバータ300によって、デューティDu,Dv,Dwから、同期回転機400に印加するべき電圧ベクトルvu,vv,vwが生成される。指令トルクTe
*は、上位制御装置から回転機制御装置100に与えられる。指令トルクTe
*は、モータトルクが追従するべきトルクを表す。
【0019】
以下、回転機制御装置100の動作の概要を説明する。電流センサ102,104(第1電流センサ102、第2電流センサ104)によって、相電流iu,iwが検出される。位置センサレス磁束制御運転を実行しているとき、位置センサレス制御部106によって、指令トルクTe
*および相電流iu,iwから、指令電圧ベクトルvu
*,vv
*,vw
*が生成される。指令電圧ベクトルvu
*,vv
*,vw
*の各成分は、それぞれ3相交流座標上のU相電圧、V相電圧、およびW相電圧に対応する。デューティ生成部108によって、指令電圧ベクトルvu
*,vv
*,vw
*から、デューティDu,Dv,Dwが生成される。デューティDu,Dv,Dwは、PWMインバータ300に入力される。このような制御によって、同期回転機400は、トルクが指令トルクTe
*に追従するように制御される。
【0020】
以下では、α-β座標に基づいて回転機制御装置100を説明することがある。また、d-q座標に基づいて回転機制御装置100を説明することもある。また、dm-qm座標に基づいて回転機制御装置100を説明することもある。
図2に、α-β座標、d-q座標、およびdm-qm座標を示す。α-β座標は、固定座標である。α-β座標は、静止座標とも交流座標とも称される。α軸は、U軸(
図2では省略)と同一方向に延びる軸として設定される。U軸は、回転機制御装置100のU相巻線に対応する。β軸は、α軸と直交する。d-q座標は、回転座標である。d-q座標は、同期回転機400のロータの位相をd軸とし、当該位相に対して90度進んだ位相をq軸とする座標系である。dm-qm座標は、回転座標である。dm軸は、同期回転機400の永久磁石の推定された磁束である磁石磁束Ψ
a mの位相である磁石位相θ
d mをdm軸とし、磁石位相θ
d mに対して90度進んだ位相をqm軸とした座標系である。
【0021】
(位置センサレス制御部106)
図1に戻って、位置センサレス制御部106は、回転機磁束の振幅が目標振幅へと収束するように指令振幅を設定する位置センサレス磁束制御運転を実行する。位置センサレス磁束制御運転は、磁束推定部112(後述)に基づいて推定された回転機磁束の位相(推定位相θ
s)から求められる指令位相θ
s
*を参照しながら実行される。目標振幅は、回転機磁束の振幅が最終的に到達するべき振幅である。指令振幅は、回転機磁束の振幅が追従するべき振幅である。
【0022】
図3に示すように、位置センサレス制御部106は、u,w/α,β変換部110、磁束推定部112、位相特定部114、トルク推定部116、指令振幅生成部118、磁化特性特定部120、リプル補償特定部122、指令位相特定部124、指令磁束生成部126、電圧指令生成部128、およびα,β/u,v,w変換部130を備えている。
【0023】
位置センサレス制御部106では、u,w/α,β変換部110によって、相電流iu,iwが、軸電流iα,iβに変換される。軸電流iα,iβは、同期回転機400のα-β座標上におけるα軸電流iαおよびβ軸電流iβをまとめて記載したものである。磁束推定部112によって、回転機磁束が推定される(推定磁束Ψsが求められる)。推定磁束Ψsのα軸成分およびβ軸成分をそれぞれ推定磁束Ψα,Ψβと記載する。位相特定部114によって、推定磁束Ψsから、回転機磁束の位相が推定される(推定磁束Ψsの推定位相θsが求められる)。トルク推定部116によって、推定磁束Ψsおよび軸電流iα,iβから、モータトルクが推定される(推定トルクTeが求められる)。指令振幅生成部118によって、推定磁束Ψsおよび軸電流iα,iβから、指令振幅|Ψs
*|が生成される。磁化特性特定部120によって、推定磁束Ψsおよび軸電流iα,iβから、qm軸電流iq mおよび磁石位相θd mの高調波成分nθd mが特定される。リプル補償特定部122によって、qm軸電流iq mおよび高調波成分nθd mから、リプル補償位相θrippleが特定される。指令位相特定部124によって、推定磁束Ψsの推定位相θs、指令トルクTe
*、推定トルクTe、およびリプル補償位相θrippleから、指令磁束ベクトルΨs
*の指令位相(指令磁束ベクトル位相)θs
*が求められる。指令磁束生成部126によって、指令振幅|Ψs
*|および指令位相θs
*から、指令磁束ベクトルΨs
*が求められる。指令磁束ベクトルΨs
*のα軸成分およびβ軸成分を、それぞれα軸指令磁束Ψα
*およびβ軸指令磁束Ψβ
*と記載する。電圧指令生成部128によって、指令磁束Ψα
*,Ψβ
*、推定磁束Ψα,Ψβ、および軸電流iα,iβから、指令軸電圧vα
*,vβ
*が求められる。指令軸電圧vα
*,vβ
*は、同期回転機400のα-β座標上におけるα軸指令軸電圧vα
*およびβ軸指令軸電圧vβ
*をまとめて記載したものである。α,β/u,v,w変換部130によって、指令軸電圧vα
*,vβ
*が、指令電圧ベクトルvu
*,vv
*,vw
*に変換される。
【0024】
位置センサレス磁束制御運転においては、このような制御によって、モータトルクが指令トルクTe
*に追従し、回転機磁束が指令磁束ベクトルΨs
*に追従する。その結果、同期回転機400の速度が指令速度ωref
*に追従する。上述のように、「位置センサレス制御部106は、回転機磁束の振幅が目標振幅へと収束するように、指令振幅を設定する位置センサレス磁束制御運転を実行する」と表現する場合、「目標振幅」は、指令振幅|Ψs
*|に対応する。これを考慮して、以下では、指令振幅|Ψs
*|を目標振幅|Ψs
*|と称することがある。
【0025】
本明細書では、軸電流iα,iβは、実際に同期回転機400を流れる電流ではなく、情報として伝達される電流値を意味する。指令軸電圧vα
*,vβ
*、推定磁束Ψs、推定位相θs、指令位相θs
*、推定トルクTe、指令トルクTe
*、指令振幅|Ψs
*|(目標振幅|Ψs
*|)、指令磁束ベクトルΨs
*、指令電圧ベクトルvu
*,vv
*,vw
*、指令速度ωref
*、磁石位相θd m、高調波成分nθd m、およびqm軸電流iq m等も情報として伝達される値を意味する。
【0026】
図3に示す位置センサレス制御部106の構成要素について、以下で説明する。
【0027】
(u,w/α,β変換部110)
u,w/α,β変換部110は、相電流iu,iwを軸電流iα,iβに変換する。具体的には、u,w/α,β変換部110は、式(1)および式(2)によって、相電流iu,iwを軸電流iα,iβに変換して、軸電流iα,iβを出力する。
【0028】
【0029】
【0030】
(磁束推定部112)
磁束推定部112は、同期回転機400の磁束である回転機磁束を推定し、推定された回転機磁束である推定磁束Ψs(推定磁束Ψα,Ψβ)を出力する。磁束推定部112は、位置センサレス磁束制御運転を実行しているとき、軸電流iα,iβおよび指令軸電圧vα
*,vβ
*から、推定磁束Ψsを求める。具体的には、磁束推定部112は、式(3)および式(4)を用いて、推定磁束Ψα,Ψβを求める。式(3)および式(4)におけるΨα|t=0およびΨβ|t=0は、それぞれ推定磁束Ψα,Ψβの初期値である。式(3)および式(4)におけるRは、同期回転機400の巻線抵抗である。磁束推定部112がDSP、マイクロコンピュータ等のディジタル制御装置に組み込まれている場合、式(3)および式(4)における演算のために必要となる積分器は離散系で構成され得る。この場合には、1制御周期前における推定磁束Ψα,Ψβに、現在の制御周期に由来する値を加減算すればよい。
【0031】
【0032】
【0033】
(位相特定部114)
位相特定部114は、推定磁束Ψs(推定磁束Ψα,Ψβ)に基づいて、推定磁束Ψsの位相である推定位相θsを特定する。本実施の形態では、位相特定部114は、推定磁束Ψsから推定位相θsを求める。具体的には、位相特定部114は、式(5)によって、推定磁束Ψsから推定位相θsを求める。たとえば、位相特定部114は、公知の位相推定器である。
【0034】
【0035】
(トルク推定部116)
トルク推定部116は、推定磁束Ψs(推定磁束Ψα,Ψβ)と検出電流iとに基づいて、推定トルクTeを演算する。本実施の形態では、検出電流iは、軸電流iα,iβであり、トルク推定部116は、推定磁束Ψsおよび軸電流iα,iβから推定トルクTeを求める。具体的には、トルク推定部116は、式(6)によって、推定磁束Ψsおよび軸電流iα,iβから推定トルクTeを求める。式(6)におけるPは、同期回転機400の極対数である。
【0036】
【0037】
(指令振幅生成部118)
指令振幅生成部118は、推定された回転機磁束である推定磁束Ψ
s(推定磁束Ψ
α,Ψ
β)と同期回転機400の検出電流iとの第1内積、または同期回転機400の永久磁石の推定された磁石磁束Ψ
a mと検出電流iとの第2内積を用いたフィードバック制御を実行することによって指令磁束の振幅である指令振幅|Ψ
s
*|を生成する。
図4に示すように、本実施の形態では、指令振幅生成部118は、第2内積を用いたフィードバック制御を実行することによって指令振幅|Ψ
s
*|を生成する。
【0038】
指令振幅生成部118は、仮想インダクタンス(同期回転機400のインダクタンス)Lq m、軸電流iα,iβ、および推定磁束Ψs(推定磁束Ψα,Ψβ)を用いて、無効電力成分を示す誤差変数εを演算する。具体的には、まず、指令振幅生成部118は、電機子反作用磁束を推定する(推定電機子反作用磁束Lq miを求める)。推定電機子反作用磁束Lq miのα軸成分およびβ軸成分を、それぞれ推定電機子反作用磁束Lq miα、推定電機子反作用磁束Lq miβと記載する。推定電機子反作用磁束Lq miαは、仮想インダクタンスLq mと軸電流iαとの積であり、推定電機子反作用磁束Lq miβは、仮想インダクタンスLq mと軸電流iβとの積である。次に、指令振幅生成部118は、推定磁束Ψs(推定磁束Ψα,Ψβ)および推定電機子反作用磁束Lq mi(推定電機子反作用磁束Lq miα,Lq miβ)から、同期回転機400の永久磁石の推定された磁石磁束(推定磁石磁束)Ψa mを求める。磁石磁束Ψa mのα軸成分およびβ軸成分を、それぞれ推定磁石磁束Ψa mα,Ψa m βと記載する。具体的には、指令振幅生成部118は、式(7)に示すように、推定磁束Ψαから推定電機子反作用磁束Lq miαを減じることによって磁石磁束Ψa mαを求める。また、指令振幅生成部118は、式(8)に示すように、推定磁束Ψβから推定電機子反作用磁束Lq miβを減じることによって磁石磁束Ψa mβを求める。次に、指令振幅生成部118は、磁石磁束Ψa mα,Ψa m βおよび軸電流iα,iβから誤差変数εを式(9)のように計算する。
【0039】
【0040】
【0041】
【0042】
式(9)および
図4に示すように、指令振幅生成部118は、誤差変数εとして、同期回転機400の永久磁石の推定された磁石磁束Ψ
a mと同期回転機400の検出電流iとの内積(第2内積)を演算する。
【0043】
なお、誤差変数εは、同期回転機400の推定磁束Ψa mと同期回転機400の検出電流iとの内積(第1内積)を演算することでも求めることができる。
【0044】
このため、指令振幅生成部118は、式(10)に示すように、誤差変数εとして、上記第2内積の替わりに、同期回転機400の推定磁束Ψsと同期回転機400の検出電流iとの内積(第1内積)を演算する構成であってもよい。
【0045】
【0046】
図4に示すように、指令振幅生成部118は、減算器132、Pゲイン134、Iゲイン136、積分器138、加算器140、および加算器142を有している。指令振幅生成部118は、誤差変数εの目標値、すなわち、第1内積または第2内積の演算結果の目標値ε
*を設定する。ここでは、指令振幅生成部118は、第1内積または第2内積の演算結果の目標値ε
*として、ゼロに設定する。加算器142は、算出された磁束偏差ΔΨの絶対値|ΔΨ|と、推定磁束Ψ
a mのノミナル値であるΨ
a_nominalとを加算し、指令振幅|Ψ
s
*|を生成する。
【0047】
このように、指令振幅生成部118は、誤差変数εを用いたフィードバック制御を実行することによって、指令振幅|Ψs
*|を生成する。
【0048】
(磁化特性特定部120)
図5に示すように、磁化特性特定部120は、推定磁束Ψ
sと検出電流iとに基づいて磁石磁束Ψ
a mの位相である磁石位相θ
d m(
図2参照)を特定し、磁石位相θ
d mをdm軸としかつ磁石位相θ
d mに対して90度進んだ位相をqm軸としたdm-qm座標を用いて、推定磁束Ψ
sのqm軸磁束Ψ
q mと検出電流iのqm軸電流i
q mと磁石位相θ
d mの高調波成分nθ
d mとを特定する。qm軸磁束Ψ
q mは、推定磁束Ψ
sのqm軸成分であり、qm軸電流i
q mは、検出電流iのqm軸成分である。
【0049】
磁化特性特定部120は、磁石磁束特定部144、磁石位相特定部146、α,β/qm変換部148、α,β/qm変換部150、高調波成分特定部152、フーリエ変換部154、および磁気エネルギー特定部156を有している。
【0050】
磁石磁束特定部144は、仮想インダクタンス(同期回転機400のインダクタンス)L
q m、軸電流i
α,i
β、および推定磁束Ψ
s(推定磁束Ψ
α,Ψ
β)に基づいて、磁石磁束Ψ
a mを特定する。具体的には、磁石磁束特定部144は、式(11)によって磁石磁束Ψ
a mαを求め、式(12)によって磁石磁束Ψ
a mβを求める。
図2に示すように、磁石磁束Ψ
a mαは、磁石磁束Ψ
a mのα軸成分であり、磁石磁束Ψ
a mβは、磁石磁束Ψ
amのβ軸成分である。
【0051】
【0052】
【0053】
磁石位相特定部146は、式(13)によって、磁石磁束Ψa mαおよび磁石磁束Ψa mβから磁石位相θd mを求める。
【0054】
【0055】
α,β/qm変換部148は、軸電流iα,iβをqm軸電流iq mに変換する。具体的には、α,β/qm変換部148は、式(14)によって、軸電流iα,iβをqm軸電流iq mに変換して、qm軸電流iq mを出力する。
【0056】
【0057】
α,β/qm変換部150は、推定磁束Ψs(推定磁束Ψα,Ψβ)をqm軸磁束Ψq mに変換する。具体的には、α,β/qm変換部150は、式(15)によって、推定磁束Ψs(推定磁束Ψα,Ψβ)をqm軸磁束Ψq mに変換して、qm軸磁束Ψq mを出力する。
【0058】
【0059】
高調波成分特定部152は、磁石位相θd mの高調波成分nθd mを求める。具体的には、高調波成分特定部152は、磁石位相θd mに次数nを乗算することによって、高調波成分nθd mを求め、高調波成分nθd mを出力する。
【0060】
フーリエ変換部154は、qm軸磁束Ψq mおよび高調波成分nθd mから、磁束Ψqmcnおよび磁束Ψqmsnを求める。
【0061】
図6に示すように、フーリエ変換部154は、増幅器158、乗算器160、ローパスフィルタ162、乗算器164、およびローパスフィルタ166を有している。
【0062】
増幅器158は、qm軸磁束Ψq mを2倍に増幅する。
【0063】
乗算器160は、2倍に増幅されたqm軸磁束Ψq mにcosnθd mを乗算する。
【0064】
ローパスフィルタ162は、2倍に増幅されかつcosnθd mが乗算されたqm軸磁束Ψq mから、磁束Ψqmcnを出力する。
【0065】
乗算器164は、2倍に増幅されたqm軸磁束Ψq mにsinnθd mを乗算する。
【0066】
ローパスフィルタ166は、2倍に増幅されかつsinnθd mが乗算されたqm軸磁束Ψq mから、磁束Ψqmsnを出力する。
【0067】
図5に戻って、磁気エネルギー特定部156は、式(16)によって磁束Ψ
qmcnから磁気エネルギーW´
qmcnを求め、式(17)によって磁束Ψ
qmsnから磁気エネルギーW´
qmsnを求める。
【0068】
【0069】
【0070】
磁気エネルギー特定部156は、求めた結果を用いて、
図7に示すような磁気エネルギーテーブル168を作成する。
図7の(a)は、qm軸電流i
q mの値に対応する磁気エネルギーW´
qmcnの値を示すテーブルである。
図7の(b)は、qm軸電流i
q mの値に対応する磁気エネルギーW´
qmsnの値を示すテーブルである。
【0071】
(リプル補償特定部122)
図8に示すように、リプル補償特定部122は、qm軸電流i
q mと高調波成分nθ
d mとに基づいて得られるリプル補償トルクT
rippleを用いて、リプル補償位相θ
rippleを特定する。リプル補償特定部122は、磁気エネルギーテーブル168、リプルトルク特定部170、およびリプル位相特定部172を有している。
【0072】
リプル補償特定部122は、α,β/qm変換部148から出力されたqm軸電流i
q m、および磁気エネルギー特定部156によって作成された磁気エネルギーテーブル168(
図7参照)によって、磁気エネルギーW´
qmcnおよび磁気エネルギーW´
qmsnを求める。具体的には、リプル補償特定部122は、磁気エネルギーテーブル168から、α,β/qm変換部148から出力されたqm軸電流i
q mの値に対応する磁気エネルギーW´
qmcnの値を選択して出力する。また、リプル補償特定部122は、磁気エネルギーテーブル168から、α,β/qm変換部148から出力されたqm軸電流i
q mの値に対応する磁気エネルギーW´
qmsnの値を選択して出力する。
【0073】
図9に示すように、リプルトルク特定部170は、加算器174、乗算器176、乗算器178、減算器180、および乗算器182を有している。
【0074】
加算器174は、磁石位相θd mの高調波成分nθd mと調整位相Δθとを加算する。たとえば、調整位相Δθは、外部から入力される。
【0075】
乗算器176は、W´qmsnにcos(nθd m+Δθ)を乗算する。
【0076】
乗算器178は、W´qmcnにsin(nθd m+Δθ)を乗算する。
【0077】
減算器180は、W´qmsncos(nθd m+Δθ)からW´qmcnsin(nθd m+Δθ)を減算する。
【0078】
乗算器182は、式(18)によってリプル補償トルクTrippleを求める。nは、次数であり、Pは、同期回転機400の極対数である。
【0079】
【0080】
図10に示すように、リプル位相特定部172は、乗算器184を有している。
【0081】
乗算器184は、式(19)によって、リプル補償トルクTrippleおよび調整ゲインKrippleを用いてリプル補償位相θrippleを求める。調整ゲインKrippleは、既知の定数である。また、τsは、モータ時定数であり、τssは、微分演算子である。
【0082】
【0083】
(指令位相特定部124)
図3に戻って、指令位相特定部124は、リプル補償位相θ
rippleとトルク指令または回転速度指令とに基づいて指令磁束ベクトル位相を特定する。ここでは、トルク指令に基づく例を示す。指令磁束ベクトル位相は、指令位相θ
s
*である。つまり、本実施の形態では、
図2に示すように、指令位相θ
s
*は、指令磁束ベクトルΨ
s
*の位相である。本実施の形態では、指令位相特定部124は、推定トルクT
eを指令トルクT
e
*に収束させるためのトルク位相Δθ
sとリプル補償位相θ
rippleと推定位相θ
sとを加算することによって、指令位相θ
s
*を特定する。つまり、指令位相特定部124は、トルク位相Δθ
s、リプル補償位相θ
ripple、および推定位相θ
sを用いて、指令位相θ
s
*を特定する。
【0084】
図11に示すように、指令位相特定部124は、減算器186、PI補償器188、加算器190、および加算器192を有している。
【0085】
減算器186は、指令トルクTe
*から推定トルクTeを減算し、偏差を求める。
【0086】
PI補償器188は、減算器186によって求められた偏差を0に収束させるための比例積分制御によって、トルク位相Δθsを求める。
【0087】
加算器190は、トルク位相Δθsとリプル補償位相θrippleとを加算する。
【0088】
加算器192は、トルク位相Δθsとリプル補償位相θrippleとに推定位相θsをさらに加算し、指令位相θs
*を求める。
【0089】
(指令磁束生成部126)
図3に戻って、指令磁束生成部126は、指令振幅|Ψ
s
*|と指令位相θ
s
*とに基づいて、指令磁束Ψ
α
*,Ψ
β
*を生成する。本実施の形態では、指令磁束生成部126は、指令振幅|Ψ
s
*|と指令位相θ
s
*とに基づいて、指令磁束ベクトルΨ
s
*(指令磁束Ψ
α
*,Ψ
β
*)を求める。本実施の形態では、指令磁束生成部126は、指令振幅|Ψ
s
*|および指令位相θ
s
*から、指令磁束ベクトルΨ
s
*(指令磁束Ψ
α
*,Ψ
β
*)を求める。具体的には、指令磁束生成部126は、式(20)および(21)によって、指令磁束Ψ
α
*,Ψ
β
*を求める。
【0090】
【0091】
【0092】
(電圧指令生成部128)
電圧指令生成部128は、推定磁束Ψs(推定磁束Ψα,Ψβ)、軸電流iα,iβ、および指令磁束ベクトルΨs
*(指令磁束Ψα
*,Ψβ
*)を用いて、指令軸電圧vα
*,vβ
*を求める。まず、電圧指令生成部128は、指令磁束Ψα
*から推定磁束Ψαを減算することによって、これらの偏差(磁束偏差ΔΨα:Ψα
*-Ψα)を求める。また、電圧指令生成部128は、指令磁束Ψβ
*から推定磁束Ψβを減算することによって、これらの偏差(磁束偏差ΔΨβ:Ψβ
*-Ψβ)を求める。そして、電圧指令生成部128は、磁束偏差ΔΨα,ΔΨβおよび軸電流iα,iβを用いて、指令軸電圧vα
*,vβ
*を求める。具体的には、電圧指令生成部128は、式(22)によって、磁束偏差ΔΨαおよび軸電流iαを用いてα軸指令軸電圧vα
*を求める。また、電圧指令生成部128は、式(23)によって、磁束偏差ΔΨβおよび軸電流iβを用いてβ軸指令軸電圧vβ
*を求める。ここで、Tsは、制御周期である。
【0093】
【0094】
【0095】
(α,β/u,v,w変換部130)
α,β/u,v,w変換部130は、指令軸電圧vα
*,vβ
*を、指令電圧ベクトルvu
*,vv
*,vw
*に変換する。具体的には、α,β/u,v,w変換部130は、式(24)によって、指令軸電圧vα
*,vβ
*を指令電圧ベクトルvu
*,vv
*,vw
*に変換して、指令電圧ベクトルvu
*,vv
*,vw
*を出力する。
【0096】
【0097】
図1に戻って、回転機制御装置100の残りの構成要素および回転機制御装置100に接続される構成要素について、以下で説明する。
【0098】
(第1電流センサ102、第2電流センサ104)
第1電流センサ102および第2電流センサ104として、公知の電流センサを用いることができる。本実施の形態では、第1電流センサ102は、u相を流れる相電流iuを測定するように設けられている。第2電流センサ104は、w相を流れる相電流iwを測定するように設けられている。ただし、第1電流センサ102および第2電流センサ104は、u相およびw相の2相以外の組み合わせの2相の電流を測定するように設けられていてもよい。
【0099】
(デューティ生成部108)
デューティ生成部108は、指令電圧ベクトルvu
*,vv
*,vw
*から、デューティDu,Dv,Dwを生成する。本実施の形態では、デューティ生成部108は、指令電圧ベクトルvu
*,vv
*,vw
*の各成分を、各相のデューティDu,Dv,Dwに変換する。デューティDu,Dv,Dwの生成方法としては、一般的な電圧形PWMインバータに用いられる方法を用いればよい。たとえば、デューティDu,Dv,Dwは、指令電圧ベクトルvu
*,vv
*,vw
*を、後述のPWMインバータ300の直流電源の電圧値Vdcの半分の値で除すことにより求めてもよい。この場合、デューティDuは、2×vu
*/Vdcである。デューティDvは、2×vv
*/Vdcである。デューティDwは、2×vw
*/Vdcである。デューティ生成部108は、デューティDu,Dv,Dwを出力する。
【0100】
(PWMインバータ300)
PWMインバータ300は、直流電源と変換回路とを有し、変換回路が、PWM制御によって直流電圧を電圧ベクトルvu,vv,vwに変換する。PWMインバータ300は、変換した電圧ベクトルvu,vv,vwを、同期回転機400に印加する。
【0101】
(同期回転機400)
同期回転機400は、回転機制御装置100の制御対象である。同期回転機400には、PWMインバータ300によって、電圧ベクトルが印加される。「同期回転機400に電圧ベクトルが印加される」とは、同期回転機400における3相交流座標上の3相(U相、V相、W相)の各々に電圧が印加されることを指す。本実施の形態では、3相(U相、V相、W相)の各々が、相対的に高電圧を有する高電圧相と、相対的に低電圧を有する低電圧相との2種類から選択されるいずれかとなるように、同期回転機400が制御される。
【0102】
同期回転機400は、たとえば、永久磁石同期モータである。永久磁石同期モータとしては、IPMSM(Interior Permanent Magnet Synchronous Motor)およびSPMSM(Surface Permanent Magnet Synchronous Motor)が挙げられる。IPMSMは、d軸インダクタンスLdとq軸インダクタンスLqとが相違する突極性(一般には、Lq>Ldの逆突極性)を有し、マグネットトルクに加えてリラクタンストルクも利用できる。このため、IPMSMの駆動効率は極めて高い。同期回転機400としては、シンクロナスリラクタンスモータを用いることもできる。
【0103】
(効果等)
第1の実施の形態に係る回転機制御装置100は、同期回転機400の磁束である回転機磁束を推定する磁束推定部112と、推定された回転機磁束である推定磁束Ψsと同期回転機400の検出電流iとの第1内積、または同期回転機400の永久磁石の推定された磁石磁束Ψa mと検出電流iとの第2内積を用いたフィードバック制御を実行することによって指令磁束Ψα
*,Ψβ
*の振幅である指令振幅|Ψs
*|を生成する指令振幅生成部118と、推定磁束Ψsと検出電流iとに基づいて磁石磁束Ψa mの位相である磁石位相θd mを特定し、磁石位相θd mをdm軸としかつ磁石位相θd mに対して90度進んだ位相をqm軸としたdm-qm座標を用いて、推定磁束Ψsのqm軸磁束Ψq mと検出電流iのqm軸電流iq mと磁石位相θd mの高調波成分nθd mとを特定する磁化特性特定部120と、qm軸電流iq mと高調波成分nθd mとに基づいて得られるリプル補償トルクTrippleを用いて、リプル補償位相θrippleを特定するリプル補償特定部122と、リプル補償位相θrippleとトルク指令または回転速度指令とに基づいて指令位相θs
*を特定する指令位相特定部124と、指令振幅|Ψs
*|と指令位相θs
*とに基づいて指令磁束Ψα
*,Ψβ
*を生成する指令磁束生成部126とを備える。
【0104】
これによれば、磁石位相θd mを特定でき、磁石位相θd mをdm軸としかつ磁石位相θd mに対して90度進んだ位相をqm軸としたdm-qm座標を用いて、推定磁束Ψsのqm軸磁束Ψq mと検出電流iのqm軸電流iq mと磁石位相θd mの高調波成分nθd mとを特定でき、qm軸電流iq mと高調波成分nθd mとに基づいて得られるリプル補償トルクTrippleを用いて、リプル補償位相θrippleを特定でき、リプル補償位相θrippleとトルク指令または回転速度指令とに基づいて指令位相θs
*を特定できるので、位置センサレス磁束制御において、トルクリプルを効果的に低減できる。
【0105】
また、第1の実施の形態に係る回転機制御装置100は、推定磁束Ψsに基づいて推定磁束Ψsの位相である推定位相θsを特定する位相特定部114と、推定磁束Ψsと検出電流iとに基づいて推定トルクTeを演算するトルク推定部116とをさらに備え、指令位相特定部124は、推定トルクTeを指令トルクTe
*に収束させるためのトルク位相Δθsとリプル補償位相θrippleと推定位相θsとを加算することによって、指令位相θs
*を特定する。
【0106】
これによれば、推定トルクTeを指令トルクTe
*に収束させるためのトルク位相Δθsとリプル補償位相θrippleと推定位相θsとを加算することによって、指令位相θs
*を特定できるので、位置センサレス磁束制御において、トルクリプルをさらに効果的に低減できる。
【0107】
また、第1の実施の形態に係る回転機制御装置100において、指令振幅生成部118は、第1内積または第2内積の演算結果の目標値として、ゼロに設定する。
【0108】
これによれば、同期回転機400の永久磁石の磁石磁束Ψa mの方向の界磁磁束を発生させる電流を流すことができるので、トルクリプルをさらに効果的に低減できる。
【0109】
(第2の実施の形態)
以下、第1の実施の形態に係る回転機制御装置100の一部が変更されて構成される第2の実施の形態に係る回転機制御装置について説明する。ここでは、第2の実施の形態に係る回転機制御装置について、回転機制御装置100と同様の構成要素については、既に説明済みであるとして同じ符号を振ってその詳細な説明を省略し、回転機制御装置100との相違点を中心に説明する。
【0110】
図12は、第2の実施の形態に係る回転機制御装置の指令振幅生成部118aのブロック図である。
【0111】
図12に示すように、第2の実施の形態に係る回転機制御装置は、第1の実施の形態に係る回転機制御装置100から、指令振幅生成部118が指令振幅生成部118aに変更されて構成される。
【0112】
指令振幅生成部118aは、加算器142を有していない点において、指令振幅生成部118と主に異なっている。指令振幅生成部118aは、加算器140によって求められた値を、指令振幅|Ψs
*|として出力する。
【0113】
上述したように、指令振幅生成部118aは、加算器142を有していなくてもよい。
【0114】
(第3の実施の形態)
以下、第1の実施の形態に係る回転機制御装置100の一部が変更されて構成される第3の実施の形態に係る回転機制御装置について説明する。ここでは、第3の実施の形態に係る回転機制御装置について、回転機制御装置100と同様の構成要素については、既に説明済みであるとして同じ符号を振ってその詳細な説明を省略し、回転機制御装置100との相違点を中心に説明する。
【0115】
図13は、第3の実施の形態に係る回転機制御装置の磁化特性特定部120bのブロック図である。
図14は、第3の実施の形態に係る回転機制御装置の他の磁化特性特定部120cのブロック図である。
【0116】
図13に示すように、第3の実施の形態に係る回転機制御装置は、第1の実施の形態に係る回転機制御装置100から、磁化特性特定部120が磁化特性特定部120bに変更されて構成される。
【0117】
磁化特性特定部120bは、電機子反作用磁束特定部194をさらに有している点において、磁化特性特定部120と主に異なっている。
【0118】
電機子反作用磁束特定部194は、軸電流iαに仮想インダクタンスLq mを乗算することによって、推定電機子反作用磁束Lq miαを求めて出力し、軸電流iβに仮想インダクタンスLq mを乗算することによって、推定電機子反作用磁束Lq miβを求めて出力する。
【0119】
α,β/qm変換部150は、推定電機子反作用磁束Lq miα,Lq miβをqm軸磁束Ψq mに変換する。具体的には、α,β/qm変換部150は、式(25)によって、推定電機子反作用磁束Lq miα,Lq miβをqm軸磁束Ψq mに変換して、qm軸磁束Ψq mを出力する。
【0120】
【0121】
上述したように、磁化特性特定部120bは、電機子反作用磁束特定部194をさらに有していてもよい。
【0122】
なお、
図13に示した磁化特性特定部120bは
図14に示す磁化特性特定部120cであってもよい。
【0123】
図14に示すように、磁化特性特定部120cは、電機子反作用磁束特定部194に代わって電機子反作用磁束特定部194cを有している点において、磁化特性特定部120bと主に異なっている。すなわち、電機子反作用磁束特定部194cは、α,β/qm変換部148の後段に配される。そして、電機子反作用磁束特定部194cは、α,β/qm変換部148から出力されるqm軸電流i
q mに仮想インダクタンスL
q mを乗算することによって、qm軸磁束Ψ
q mを出力する。したがって、磁化特性特定部120cは、磁化特性特定部120bに比べ、α,β/qm変換部150が不要となり、簡単な構成とすることができる。
【0124】
上述したように、磁化特性特定部120bは、電機子反作用磁束特定部194cを有する磁化特性特定部120cに代えてもよい。
【0125】
(第4の実施の形態)
以下、第1の実施の形態に係る回転機制御装置100の一部が変更されて構成される第4の実施の形態に係る回転機制御装置について説明する。ここでは、第4の実施の形態に係る回転機制御装置について、回転機制御装置100と同様の構成要素については、既に説明済みであるとして同じ符号を振ってその詳細な説明を省略し、回転機制御装置100との相違点を中心に説明する。
【0126】
図15は、第4の実施の形態に係る回転機制御装置の位置センサレス制御部106cのブロック図である。
図16は、
図15の位置センサレス制御部106cの指令位相特定部124cのブロック図である。
【0127】
図15に示すように、第4の実施の形態に係る回転機制御装置は、第1の実施の形態に係る回転機制御装置100から、位置センサレス制御部106が位置センサレス制御部106cに変更されて構成される。
【0128】
位置センサレス制御部106cは、指令位相特定部124に代えて指令位相特定部124cを有している点において、位置センサレス制御部106と主に異なっている。
【0129】
本実施の形態では、位置センサレス制御部106cには、指令速度ωref
*が与えられる。指令速度ωref
*は、同期回転機400が追従するべき速度を表す。位置センサレス制御部106cは、指令速度ωref
*および相電流iu,iwから、指令電圧ベクトルvu
*,vv
*,vw
*を生成する。このような制御によって、同期回転機400は、速度が指令速度ωref
*に追従するように制御される。
【0130】
図16に示すように、指令位相特定部124cは、積分器200および加算器202を有している。指令位相特定部124cは、リプル補償位相θ
rippleと回転速度指令とに基づいて指令位相θ
s
*を特定する。
【0131】
積分器200は、指令速度ωref
*を積分する。
【0132】
加算器202は、積分器200によって求められた値にリプル補償位相θrippleを加算し、指令位相θs
*を特定する。
【0133】
上述したように、回転機制御装置は、位置センサレス制御部106に代えて位置センサレス制御部106cを備えていてもよい。
【0134】
(第5の実施の形態)
以下、第4の実施の形態に係る回転機制御装置の一部が変更されて構成される第5の実施の形態に係る回転機制御装置について説明する。ここでは、第5の実施の形態に係る回転機制御装置について、第4の実施の形態に係る回転機制御装置と同様の構成要素については、既に説明済みであるとして同じ符号を振ってその詳細な説明を省略し、第4の実施の形態に係る回転機制御装置との相違点を中心に説明する。
【0135】
図17は、第5の実施の形態に係る回転機制御装置の指令位相特定部124dのブロック図である。
【0136】
図17に示すように、第5の実施の形態に係る回転機制御装置は、第4の実施の形態に係る回転機制御装置から、指令位相特定部124cが指令位相特定部124dに変更されて構成される。
【0137】
指令位相特定部124dは、(1)推定磁束Ψsの位相である推定位相θsが移動するべき制御周期毎の移動量Δθを、同期回転機400への回転速度指令を用いて特定し、(2)特定された移動量Δθとリプル補償位相θrippleとを用いて指令位相θs
*を特定する。指令位相特定部124dは、加算器202、乗算器204、および加算器206を有している。
【0138】
乗算器204は、指令速度ωref
*にTsを乗算し、移動量Δθを求める。ここで、Tsは、制御周期である。
【0139】
加算器202は、移動量Δθにリプル補償位相θrippleを加算する。
【0140】
加算器206は、加算器202によって求められた値に推定位相θsを加算することによって、指令位相θs
*を特定する。
【0141】
上述したように、指令位相特定部124dは、加算器202、乗算器204、および加算器206を有していてもよい。
【0142】
第5の実施の形態に係る回転機制御装置は、推定磁束Ψsに基づいて推定磁束Ψsの位相である推定位相θsを特定する位相特定部114をさらに備え、指令位相特定部124dは、(1)推定位相Ψsが移動するべき制御周期毎の移動量Δθを、同期回転機400への回転速度指令を用いて特定し、(2)特定された移動量Δθとリプル補償位相θrippleと推定位相θsとを用いて指令位相θs
*を特定する。
【0143】
これによれば、推定位相Ψsが移動するべき制御周期毎の移動量Δθとリプル補償位相θrippleと推定位相θsとを用いて指令位相θs
*を特定できるので、位置センサレス磁束制御において、トルクリプルをさらに効果的に低減できる。
【0144】
(第6の実施の形態)
以下、第5の実施の形態に係る回転機制御装置の一部が変更されて構成される第6の実施の形態に係る回転機制御装置について説明する。ここでは、第6の実施の形態に係る回転機制御装置について、第5の実施の形態に係る回転機制御装置と同様の構成要素については、既に説明済みであるとして同じ符号を振ってその詳細な説明を省略し、第5の実施の形態に係る回転機制御装置との相違点を中心に説明する。
【0145】
図18は、第6の実施の形態に係る回転機制御装置の指令位相特定部124eのブロック図である。
【0146】
図18に示すように、第6の実施の形態に係る回転機制御装置は、第5の実施の形態に係る回転機制御装置から、指令位相特定部124dが指令位相特定部124eに変更されて構成される。
【0147】
指令位相特定部124eは、推定トルクTeをさらに用いて指令位相θs
*を特定する。指令位相特定部124eは、加算器202、加算器206、乗算器208、ハイパスフィルタ210、符号反転器212、PI補償器214、および加算器216を有している。
【0148】
乗算器208は、指令速度ωref
*にTsを乗算し、ωref
*Tsを求める。
【0149】
ハイパスフィルタ210は、推定トルクTeからトルクTHを出力する。
【0150】
符号反転器212は、トルクTHの符号を反転させる。
【0151】
PI補償器214は、トルク-THからΔωref
*Tsを求める。
【0152】
加算器216は、乗算器208によって求められたωref
*TsとPI補償器214によって求められたΔωref
*Tsとを加算し、トルク位相Δθsを求める。
【0153】
加算器202は、トルク位相Δθsにリプル補償位相θrippleを加算する。
【0154】
加算器206は、加算器202によって求められた値に推定位相θsを加算することによって、指令位相θs
*を特定する。
【0155】
上述したように、指令位相特定部124eは、加算器202、加算器206、乗算器208、ハイパスフィルタ210、符号反転器212、PI補償器214、および加算器216を有していてもよい。
【0156】
第6の実施の形態に係る回転機制御装置は、推定磁束Ψsと検出電流iとに基づいて推定トルクTeを演算するトルク推定部116をさらに備え、指令位相特定部124eは、推定トルクTeをさらに用いて指令位相θs
*を特定する。
【0157】
これによれば、推定トルクTeをさらに用いて指令位相θs
*を特定できるので、位置センサレス磁束制御において、トルクリプルをさらに効果的に低減できる。
【0158】
(第7の実施の形態)
以下、第4の実施の形態に係る回転機制御装置の一部が変更されて構成される第7の実施の形態に係る回転機制御装置について説明する。ここでは、第7の実施の形態に係る回転機制御装置について、第4の実施の形態に係る回転機制御装置と同様の構成要素については、既に説明済みであるとして同じ符号を振ってその詳細な説明を省略し、第4の実施の形態に係る回転機制御装置との相違点を中心に説明する。
【0159】
図19は、第7の実施の形態に係る回転機制御装置の指令位相特定部124fのブロック図である。
【0160】
図19に示すように、第7の実施の形態に係る回転機制御装置は、第4の実施の形態に係る回転機制御装置から、指令位相特定部124cが指令位相特定部124fに変更されて構成される。
【0161】
指令位相特定部124fは、積分器200、加算器202、ハイパスフィルタ218、ゲイン乗算器220、および減算器222を有している。
【0162】
ハイパスフィルタ218は、推定トルクTeからトルクTHを出力する。
【0163】
ゲイン乗算器220は、トルクTHにゲインK1を乗算する。
【0164】
減算器222は、指令速度ωref
*からK1THを減算する。
【0165】
積分器200は、減算器222によって求められた値を積分する。
【0166】
加算器202は、積分器200によって求められた値にリプル補償位相θrippleを加算することによって、指令位相θs
*を特定する。
【0167】
上述したように、指令位相特定部124fは、積分器200、加算器202、ハイパスフィルタ218、ゲイン乗算器220、および減算器222を有していてもよい。
【0168】
(第8の実施の形態)
以下、第7の実施の形態に係る回転機制御装置の一部が変更されて構成される第8の実施の形態に係る回転機制御装置について説明する。ここでは、第8の実施の形態に係る回転機制御装置について、第7の実施の形態に係る回転機制御装置と同様の構成要素については、既に説明済みであるとして同じ符号を振ってその詳細な説明を省略し、第7の実施の形態に係る回転機制御装置との相違点を中心に説明する。
【0169】
図20は、第8の実施の形態に係る回転機制御装置の指令位相特定部124gのブロック図である。
【0170】
図20に示すように、第8の実施の形態に係る回転機制御装置は、第7の実施の形態に係る回転機制御装置から、指令位相特定部124fが指令位相特定部124gに変更されて構成される。
【0171】
指令位相特定部124gは、加算器202、乗算器204、加算器206、ハイパスフィルタ218、ゲイン乗算器220、および減算器222を有している。
【0172】
加算器202は、乗算器204によって求められた移動量Δθにリプル補償位相θrippleを加算する。
【0173】
加算器206は、加算器202によって求められた値に推定位相θsを加算することによって、指令位相θs
*を特定する。
【0174】
上述したように、指令位相特定部124gは、加算器202、乗算器204、加算器206、ハイパスフィルタ218、ゲイン乗算器220、および減算器222を有していてもよい。
【0175】
(第9の実施の形態)
以下、第8の実施の形態に係る回転機制御装置の一部が変更されて構成される第9の実施の形態に係る回転機制御装置について説明する。ここでは、第9の実施の形態に係る回転機制御装置について、第8の実施の形態に係る回転機制御装置と同様の構成要素については、既に説明済みであるとして同じ符号を振ってその詳細な説明を省略し、第8の実施の形態に係る回転機制御装置との相違点を中心に説明する。
【0176】
図21は、第9の実施の形態に係る回転機制御装置の指令位相特定部124hのブロック図である。
【0177】
図21に示すように、第9の実施の形態に係る回転機制御装置は、第8の実施の形態に係る回転機制御装置から、指令位相特定部124gが指令位相特定部124hに変更されて構成される。
【0178】
指令位相特定部124hは、加算器202、加算器206、乗算器208、PI補償器214、加算器216、ローパスフィルタ224、および減算器226を有している。
【0179】
乗算器208は、指令速度ωref
*にTsを乗算し、ωref
*Tsを求める。
【0180】
ローパスフィルタ224は、推定トルクTeからトルクTLを出力する。
【0181】
減算器226は、トルクTLから推定トルクTeを減算することによって、トルク-THを求める。
【0182】
PI補償器214は、トルク-THからΔωref
*Tsを求める。
【0183】
加算器216は、乗算器208によって求められたωref
*TsとPI補償器214によって求められたΔωref
*Tsとを加算し、トルク位相Δθsを求める。
【0184】
加算器202は、加算器216によって求められたトルク位相Δθsにリプル補償位相θrippleを加算する。
【0185】
加算器206は、加算器202によって求められた値に推定位相θsを加算することによって、指令位相θs
*を特定する。
【0186】
上述したように、指令位相特定部124hは、加算器202、加算器206、乗算器208、PI補償器214、加算器216、ローパスフィルタ224、および減算器226を有していてもよい。
【0187】
(第10の実施の形態)
以下、第1の実施の形態に係る回転機制御装置100の一部が変更されて構成される第10の実施の形態に係る回転機制御装置100jについて説明する。ここでは、第10の実施の形態に係る回転機制御装置100jについて、回転機制御装置100と同様の構成要素については、既に説明済みであるとして同じ符号を振ってその詳細な説明を省略し、回転機制御装置100との相違点を中心に説明する。
【0188】
図22に示すように、回転機制御装置100jは、第1電流センサ102、第2電流センサ104、位置センサレス制御部106j、およびデューティ生成部108を備えている。回転機制御装置100jは、PWM(Pulse Width Modulation)インバータ300および同期回転機400に接続されている。
【0189】
位置センサレス制御部106jは、同期回転機400の位置センサレス磁束制御を行う。位置センサレス制御部106jは、同期回転機400の位置センサレス磁束制御運転を実行するように構成されている。本実施の形態では、位置センサレス磁束制御運転が実行されている期間において、同期回転機400のロータの回転速度(回転数)が、同期回転機400に印加される回転機電流の回転速度(同期速度)に一致する。位置センサレス磁束制御運転は、エンコーダおよびレゾルバ等の位置センサを用いない運転である。本明細書では、説明の便宜上、推定された回転機磁束の位相を用いて回転機磁束を制御する運転を磁束制御運転と称する。回転機磁束は、同期回転機400に印加されている3相交流座標上の電機子鎖交磁束と、この電機子鎖交磁束を座標変換することにより得た磁束の両方を含む概念である。本明細書では、「振幅」は、単に大きさ(絶対値)を指す場合がある。
【0190】
回転機制御装置100jの一部または全部の要素は、DSP(Digital Signal Processor)またはマイクロコンピュータにおいて実行される制御アプリケーションによって提供され得る。DSPまたはマイクロコンピュータは、コア、メモリ、A/D変換回路および通信ポート等の周辺装置を含んでいてもよい。また、回転機制御装置100jの一部または全部の要素は、論理回路によって構成されていてもよい。
【0191】
(回転機制御装置100jによる制御の概要)
回転機制御装置100jは、指令トルクTe
*および相電流iu,iwから、デューティDu,Dv,Dwを生成する。PWMインバータ300によって、デューティDu,Dv,Dwから、同期回転機400に印加するべき電圧ベクトルvu,vv,vwが生成される。指令トルクTe
*は、上位制御装置から回転機制御装置100jに与えられる。指令トルクTe
*は、モータトルクが追従するべきトルクを表す。
【0192】
以下、回転機制御装置100jの動作の概要を説明する。電流センサ102,104(第1電流センサ102、第2電流センサ104)によって、相電流iu,iwが検出される。位置センサレス磁束制御運転を実行しているとき、位置センサレス制御部106jによって、指令トルクTe
*および相電流iu,iwから、指令電圧ベクトルvu
*,vv
*,vw
*が生成される。指令電圧ベクトルvu
*,vv
*,vw
*の各成分は、それぞれ3相交流座標上のU相電圧、V相電圧、およびW相電圧に対応する。デューティ生成部108によって、指令電圧ベクトルvu
*,vv
*,vw
*から、デューティDu,Dv,Dwが生成される。デューティDu,Dv,Dwは、PWMインバータ300に入力される。このような制御によって、同期回転機400は、トルクが指令トルクTe
*に追従するように制御される。
【0193】
以下では、α-β座標に基づいて回転機制御装置100jを説明することがある。また、d-q座標に基づいて回転機制御装置100jを説明することもある。また、dm-qm座標に基づいて回転機制御装置100jを説明することもある。
図2に、α-β座標、d-q座標、およびdm-qm座標を示す。α-β座標は、固定座標である。α-β座標は、静止座標とも交流座標とも称される。α軸は、U軸(
図2では省略)と同一方向に延びる軸として設定される。U軸は、回転機制御装置100のU相巻線に対応する。β軸は、α軸と直交する。d-q座標は、回転座標である。d-q座標は、同期回転機400のロータの位相をd軸とし、当該位相に対して90度進んだ位相をq軸とする座標系である。dm-qm座標は、回転座標である。dm軸は、同期回転機400の永久磁石の推定された磁束である磁石磁束Ψ
a mの位相である磁石位相θ
d mをdm軸とし、磁石位相θ
d mに対して90度進んだ位相をqm軸とした座標系である。
【0194】
(位置センサレス制御部106j)
図22に戻って、位置センサレス制御部106jは、回転機磁束の振幅が目標振幅へと収束するように指令振幅を設定する位置センサレス磁束制御運転を実行する。位置センサレス磁束制御運転は、磁束推定部112(後述)に基づいて推定された回転機磁束の位相(推定位相θ
s)から求められる指令位相θ
s
*を参照しながら実行される。目標振幅は、回転機磁束の振幅が最終的に到達するべき振幅である。指令振幅は、回転機磁束の振幅が追従するべき振幅である。
【0195】
図23に示すように、位置センサレス制御部106jは、u,w/α,β変換部110、磁束推定部112、位相特定部114、トルク推定部116、指令振幅生成部118、磁化特性特定部120、リプル補償特定部122j、指令位相特定部124j、指令磁束生成部126、電圧指令生成部128、およびα,β/u,v,w変換部130を備えている。
【0196】
位置センサレス制御部106jでは、u,w/α,β変換部110によって、相電流iu,iwが、軸電流iα,iβに変換される。軸電流iα,iβは、同期回転機400のα-β座標上におけるα軸電流iαおよびβ軸電流iβをまとめて記載したものである。磁束推定部112によって、回転機磁束が推定される(推定磁束Ψsが求められる)。推定磁束Ψsのα軸成分およびβ軸成分をそれぞれ推定磁束Ψα,Ψβと記載する。位相特定部114によって、推定磁束Ψsから、回転機磁束の位相が推定される(推定磁束Ψsの推定位相θsが求められる)。トルク推定部116によって、推定磁束Ψsおよび軸電流iα,iβから、モータトルクが推定される(推定トルクTeが求められる)。指令振幅生成部118によって、推定磁束Ψsおよび軸電流iα,iβから、指令振幅|Ψs
*|が生成される。磁化特性特定部120によって、推定磁束Ψsおよび軸電流iα,iβから、qm軸電流iq mおよび磁石位相θd mの高調波成分nθd mが特定される。リプル補償特定部122jによって、qm軸電流iq mおよび高調波成分nθd mから、リプル補償トルクTrippleが特定される。指令位相特定部124jによって、推定磁束Ψsの推定位相θs、指令トルクTe
*、推定トルクTe、およびリプル補償トルクTrippleから、指令磁束ベクトルΨs
*の指令位相(指令磁束ベクトル位相)θs
*が求められる。指令磁束生成部126によって、指令振幅|Ψs
*|および指令位相θs
*から、指令磁束ベクトルΨs
*が求められる。指令磁束ベクトルΨs
*のα軸成分およびβ軸成分を、それぞれα軸指令磁束Ψα
*およびβ軸指令磁束Ψβ
*と記載する。電圧指令生成部128によって、指令磁束Ψα
*,Ψβ
*、推定磁束Ψα,Ψβ、および軸電流iα,iβから、指令軸電圧vα
*,vβ
*が求められる。指令軸電圧vα
*,vβ
*は、同期回転機400のα-β座標上におけるα軸指令軸電圧vα
*およびβ軸指令軸電圧vβ
*をまとめて記載したものである。α,β/u,v,w変換部130によって、指令軸電圧vα
*,vβ
*が、指令電圧ベクトルvu
*,vv
*,vw
*に変換される。
【0197】
位置センサレス磁束制御運転においては、このような制御によって、モータトルクが指令トルクTe
*に追従し、回転機磁束が指令磁束ベクトルΨs
*に追従する。その結果、同期回転機400の速度が指令速度ωref
*に追従する。上述のように、「位置センサレス制御部106jは、回転機磁束の振幅が目標振幅へと収束するように、指令振幅を設定する位置センサレス磁束制御運転を実行する」と表現する場合、「目標振幅」は、指令振幅|Ψs
*|に対応する。これを考慮して、以下では、指令振幅|Ψs
*|を目標振幅|Ψs
*|と称することがある。
【0198】
本明細書では、軸電流iα,iβは、実際に同期回転機400を流れる電流ではなく、情報として伝達される電流値を意味する。指令軸電圧vα
*,vβ
*、推定磁束Ψs、推定位相θs、指令位相θs
*、推定トルクTe、指令トルクTe
*、指令振幅|Ψs
*|(目標振幅|Ψs
*|)、指令磁束ベクトルΨs
*、指令電圧ベクトルvu
*,vv
*,vw
*、指令速度ωref
*、磁石位相θd m、高調波成分nθd m、およびqm軸電流iq m等も情報として伝達される値を意味する。
【0199】
図23に示す位置センサレス制御部106jの構成要素について、以下で説明する。
【0200】
(リプル補償特定部122j)
図24に示すように、リプル補償特定部122jは、qm軸電流i
q mと高調波成分nθ
d mとに基づいてリプル補償トルクT
rippleを特定する。リプル補償特定部122jは、磁気エネルギーテーブル168、およびリプルトルク特定部170を有している。
【0201】
リプル補償特定部122jは、α,β/qm変換部148から出力されたqm軸電流i
q m、および磁気エネルギー特定部156によって作成された磁気エネルギーテーブル168(
図7参照)によって、磁気エネルギーW´
qmcnおよび磁気エネルギーW´
qmsnを求める。具体的には、リプル補償特定部122jは、磁気エネルギーテーブル168から、α,β/qm変換部148から出力されたqm軸電流i
q mの値に対応する磁気エネルギーW´
qmcnの値を選択して出力する。また、リプル補償特定部122jは、磁気エネルギーテーブル168から、α,β/qm変換部148から出力されたqm軸電流i
q mの値に対応する磁気エネルギーW´
qmsnの値を選択して出力する。
【0202】
(指令位相特定部124j)
図23に戻って、指令位相特定部124jは、リプル補償トルクT
rippleに基づいて共振部189(後述)によって特定されるリプル補償位相θ
rippleとトルク指令または回転速度指令とに基づいて指令磁束ベクトル位相を特定する。ここでは、トルク指令に基づく例を示す。指令磁束ベクトル位相は、指令位相θ
s
*である。つまり、本実施の形態では、
図2に示すように、指令位相θ
s
*は、指令磁束ベクトルΨ
s
*の位相である。本実施の形態では、指令位相特定部124jは、推定トルクT
eを指令トルクT
e
*に収束させるためのトルク位相Δθ
sとリプル補償位相θ
rippleと推定位相θ
sとを加算することによって、指令位相θ
s
*を特定する。つまり、指令位相特定部124jは、トルク位相Δθ
s、リプル補償位相θ
ripple、および推定位相θ
sを用いて、指令位相θ
s
*を特定する。
【0203】
図25に示すように、指令位相特定部124jは、減算器186、PI補償器188、共振部189、加算器190、および加算器192を有している。
【0204】
減算器186は、指令トルクTe
*から推定トルクTeおよびリプル補償トルクTrippleを減算し、偏差ΔTを求める。
【0205】
PI補償器188は、減算器186によって求められた偏差ΔTを0に収束させるための比例積分制御によって、トルク位相Δθsを求める。
【0206】
共振部189は、式(26)によって、偏差ΔTを用いてリプル補償位相θrippleを特定する。b0は、係数であり、予め設定された定数である。また、ξは、減衰係数であり、ωnは、固有振動数であり、sは、伝達関数である。
【0207】
【0208】
このように、共振部189は、リプル補償トルクTrippleに基づいてリプル補償位相θrippleを特定する。たとえば、共振部189は、共振器である。
【0209】
加算器190は、トルク位相Δθsとリプル補償位相θrippleとを加算する。
【0210】
加算器192は、トルク位相Δθsとリプル補償位相θrippleとに推定位相θsをさらに加算し、指令位相θs
*を求める。
【0211】
(効果等)
第10の実施の形態に係る回転機制御装置100jは、同期回転機400の磁束である回転機磁束を推定する磁束推定部112と、推定された回転機磁束である推定磁束Ψsと同期回転機400の検出電流iとの第1内積、または同期回転機400の永久磁石の推定された磁石磁束Ψa mと検出電流iとの第2内積を用いたフィードバック制御を実行することによって指令磁束Ψα
*,Ψβ
*の振幅である指令振幅|Ψs
*|を生成する指令振幅生成部118と、推定磁束Ψsと検出電流iとに基づいて磁石磁束Ψa mの位相である磁石位相θd mを特定し、磁石位相θd mをdm軸としかつ磁石位相θd mに対して90度進んだ位相をqm軸としたdm-qm座標を用いて、推定磁束Ψsのqm軸磁束Ψq mと検出電流iのqm軸電流iq mと磁石位相θd mの高調波成分nθd mとを特定する磁化特性特定部120と、qm軸電流iq mと高調波成分nθd mとに基づいてリプル補償トルクTrippleを特定するリプル補償特定部122jと、リプル補償トルクTrippleに基づいて共振部189によって特定されるリプル補償位相θrippleとトルク指令または回転速度指令とに基づいて指令位相θs
*を特定する指令位相特定部124jと、指令振幅|Ψs
*|と指令位相θs
*とに基づいて指令磁束Ψα
*,Ψβ
*を生成する指令磁束生成部126とを備える。
【0212】
これによれば、磁石位相θd mを特定でき、磁石位相θd mをdm軸としかつ磁石位相θd mに対して90度進んだ位相をqm軸としたdm-qm座標を用いて、推定磁束Ψsのqm軸磁束Ψq mと検出電流iのqm軸電流iq mと磁石位相θd mの高調波成分nθd mとを特定でき、qm軸電流iq mと高調波成分nθd mとに基づいてリプル補償トルクTrippleを特定でき、リプル補償トルクTrippleに基づいて特定されるリプル補償位相θrippleとトルク指令または回転速度指令とに基づいて指令位相θs
*を特定できるので、位置センサレス磁束制御において、トルクリプルを効果的に低減できる。
【0213】
また、第10の実施の形態では、
図25で説明したように、推定トルクT
eを用いてリプル補償位相θ
rippleを求めているので、高精度にトルクリプルを低減できる。
【0214】
また、第10の実施の形態に係る回転機制御装置100jは、推定磁束Ψsに基づいて推定磁束Ψsの位相である推定位相θsを特定する位相特定部114と、推定磁束Ψsと検出電流iとに基づいて推定トルクTeを演算するトルク推定部116とをさらに備え、指令位相特定部124jは、推定トルクTeを指令トルクTe
*に収束させるためのトルク位相Δθsとリプル補償位相θrippleと推定位相θsとを加算することによって、指令位相θs
*を特定する。
【0215】
これによれば、推定トルクTeを指令トルクTe
*に収束させるためのトルク位相Δθsとリプル補償位相θrippleと推定位相θsとを加算することによって、指令位相θs
*を特定できるので、位置センサレス磁束制御において、トルクリプルをさらに効果的に低減できる。
【0216】
また、第10の実施の形態に係る回転機制御装置100jにおいて、指令振幅生成部118は、第1内積または第2内積の演算結果の目標値として、ゼロに設定する。
【0217】
これによれば、同期回転機400の永久磁石の磁石磁束Ψa mの方向の界磁磁束を発生させる電流を流すことができるので、トルクリプルをさらに効果的に低減できる。
【0218】
(第11の実施の形態)
以下、第10の実施の形態に係る回転機制御装置100jの一部が変更されて構成される第11の実施の形態に係る回転機制御装置について説明する。ここでは、第11の実施の形態に係る回転機制御装置について、回転機制御装置100jと同様の構成要素については、既に説明済みであるとして同じ符号を振ってその詳細な説明を省略し、回転機制御装置100jとの相違点を中心に説明する。
【0219】
図12は、第2の実施の形態に係る回転機制御装置の指令振幅生成部118aのブロック図である。
【0220】
図12に示すように、第11の実施の形態に係る回転機制御装置は、第10の実施の形態に係る回転機制御装置100jから、指令振幅生成部118が指令振幅生成部118aに変更されて構成される。
【0221】
(第12の実施の形態)
以下、第10の実施の形態に係る回転機制御装置100jの一部が変更されて構成される第12の実施の形態に係る回転機制御装置について説明する。ここでは、第12の実施の形態に係る回転機制御装置について、回転機制御装置100jと同様の構成要素については、既に説明済みであるとして同じ符号を振ってその詳細な説明を省略し、回転機制御装置100jとの相違点を中心に説明する。
【0222】
図13は、第3の実施の形態に係る回転機制御装置の磁化特性特定部120bのブロック図である。
図14は、第3の実施の形態に係る回転機制御装置の他の磁化特性特定部120cのブロック図である。
【0223】
図13に示すように、第12の実施の形態に係る回転機制御装置は、第10の実施の形態に係る回転機制御装置100jから、磁化特性特定部120が磁化特性特定部120bに変更されて構成される。
【0224】
なお、
図13に示した磁化特性特定部120bは
図14に示す磁化特性特定部120cであってもよい。
【0225】
(第13の実施の形態)
以下、第10の実施の形態に係る回転機制御装置100jの一部が変更されて構成される第13の実施の形態に係る回転機制御装置について説明する。ここでは、第13の実施の形態に係る回転機制御装置について、回転機制御装置100jと同様の構成要素については、既に説明済みであるとして同じ符号を振ってその詳細な説明を省略し、回転機制御装置100jとの相違点を中心に説明する。
【0226】
図26は、第13の実施の形態に係る回転機制御装置の位置センサレス制御部106kのブロック図である。
図27は、
図26の位置センサレス制御部106kの指令位相特定部124kのブロック図である。
【0227】
図26に示すように、第13の実施の形態に係る回転機制御装置は、第10の実施の形態に係る回転機制御装置100jから、位置センサレス制御部106jが位置センサレス制御部106kに変更されて構成される。
【0228】
位置センサレス制御部106kは、指令位相特定部124jに代えて指令位相特定部124kを有している点において、位置センサレス制御部106jと主に異なっている。
【0229】
本実施の形態では、位置センサレス制御部106kには、指令速度ωref
*が与えられる。指令速度ωref
*は、同期回転機400が追従するべき速度を表す。位置センサレス制御部106kは、指令速度ωref
*および相電流iu,iwから、指令電圧ベクトルvu
*,vv
*,vw
*を生成する。このような制御によって、同期回転機400は、速度が指令速度ωref
*に追従するように制御される。
【0230】
図27に示すように、指令位相特定部124kは、共振部189、積分器200、および加算器202を有している。指令位相特定部124kは、リプル補償位相θ
rippleと回転速度指令とに基づいて指令位相θ
s
*を特定する。
【0231】
共振部189は、リプル補償トルクTrippleに基づいてリプル補償位相θrippleを特定する。たとえば、共振部189は、上述した式(26)におけるΔTをTrippleに置き換えて計算することによって、リプル補償位相θrippleを特定する。
【0232】
積分器200は、指令速度ωref
*を積分する。
【0233】
加算器202は、積分器200によって求められた値にリプル補償位相θrippleを加算し、指令位相θs
*を特定する。
【0234】
上述したように、回転機制御装置は、位置センサレス制御部106jに代えて位置センサレス制御部106kを備えていてもよい。
【0235】
(第14の実施の形態)
以下、第13の実施の形態に係る回転機制御装置の一部が変更されて構成される第14の実施の形態に係る回転機制御装置について説明する。ここでは、第14の実施の形態に係る回転機制御装置について、第13の実施の形態に係る回転機制御装置と同様の構成要素については、既に説明済みであるとして同じ符号を振ってその詳細な説明を省略し、第13の実施の形態に係る回転機制御装置との相違点を中心に説明する。
【0236】
図28は、第14の実施の形態に係る回転機制御装置の指令位相特定部124lのブロック図である。
【0237】
図28に示すように、第14の実施の形態に係る回転機制御装置は、第13の実施の形態に係る回転機制御装置から、指令位相特定部124kが指令位相特定部124lに変更されて構成される。
【0238】
指令位相特定部124lは、(1)推定磁束Ψsの位相である推定位相θsが移動するべき制御周期毎の移動量Δθを、同期回転機400への回転速度指令を用いて特定し、(2)特定された移動量Δθとリプル補償位相θrippleとを用いて指令位相θs
*を特定する。指令位相特定部124lは、共振部189、加算器202、乗算器204、および加算器206を有している。
【0239】
乗算器204は、指令速度ωref
*にTsを乗算し、移動量Δθを求める。ここで、Tsは、制御周期である。
【0240】
加算器202は、移動量Δθにリプル補償位相θrippleを加算する。
【0241】
加算器206は、加算器202によって求められた値に推定位相θsを加算することによって、指令位相θs
*を特定する。
【0242】
上述したように、指令位相特定部124lは、共振部189、加算器202、乗算器204、および加算器206を有していてもよい。
【0243】
第14の実施の形態に係る回転機制御装置は、推定磁束Ψsに基づいて推定磁束Ψsの位相である推定位相θsを特定する位相特定部114をさらに備え、指令位相特定部124lは、(1)推定位相Ψsが移動するべき制御周期毎の移動量Δθを、同期回転機400への回転速度指令を用いて特定し、(2)特定された移動量Δθとリプル補償位相θrippleと推定位相θsとを用いて指令位相θs
*を特定する。
【0244】
これによれば、推定位相Ψsが移動するべき制御周期毎の移動量Δθとリプル補償位相θrippleと推定位相θsとを用いて指令位相θs
*を特定できるので、位置センサレス磁束制御において、トルクリプルをさらに効果的に低減できる。
【0245】
(第15の実施の形態)
以下、第14の実施の形態に係る回転機制御装置の一部が変更されて構成される第15の実施の形態に係る回転機制御装置について説明する。ここでは、第15の実施の形態に係る回転機制御装置について、第14の実施の形態に係る回転機制御装置と同様の構成要素については、既に説明済みであるとして同じ符号を振ってその詳細な説明を省略し、第14の実施の形態に係る回転機制御装置との相違点を中心に説明する。
【0246】
図29は、第15の実施の形態に係る回転機制御装置の指令位相特定部124mのブロック図である。
【0247】
図29に示すように、第15の実施の形態に係る回転機制御装置は、第14の実施の形態に係る回転機制御装置から、指令位相特定部124lが指令位相特定部124mに変更されて構成される。
【0248】
指令位相特定部124mは、推定トルクTeをさらに用いて指令位相θs
*を特定する。指令位相特定部124mは、共振部189、加算器202、加算器206、乗算器208、ハイパスフィルタ210、符号反転器212、PI補償器214、加算器216、および減算器217を有している。
【0249】
乗算器208は、指令速度ωref
*にTsを乗算し、ωref
*Tsを求める。
【0250】
ハイパスフィルタ210は、推定トルクTeからトルクTHを出力する。
【0251】
符号反転器212は、トルクTHの符号を反転させる。
【0252】
PI補償器214は、トルク-THからΔωref
*Tsを求める。
【0253】
加算器216は、乗算器208によって求められたωref
*TsとPI補償器214によって求められたΔωref
*Tsとを加算し、トルク位相Δθsを求める。
【0254】
減算器217は、-TrippleからTeを減算する。
【0255】
共振部189は、リプル補償トルクTrippleに基づいてリプル補償位相θrippleを特定する。たとえば、共振部189は、上述した式(26)におけるΔTを-Tripple-Teに置き換えて計算することによって、リプル補償位相θrippleを特定する。
【0256】
加算器202は、トルク位相Δθsにリプル補償位相θrippleを加算する。
【0257】
加算器206は、加算器202によって求められた値に推定位相θsを加算することによって、指令位相θs
*を特定する。
【0258】
上述したように、指令位相特定部124mは、共振部189、加算器202、加算器206、乗算器208、ハイパスフィルタ210、符号反転器212、PI補償器214、加算器216、および減算器217を有していてもよい。
【0259】
第15の実施の形態に係る回転機制御装置は、推定磁束Ψsと検出電流iとに基づいて推定トルクTeを演算するトルク推定部116をさらに備え、指令位相特定部124mは、推定トルクTeをさらに用いて指令位相θs
*を特定する。
【0260】
これによれば、推定トルクTeをさらに用いて指令位相θs
*を特定できるので、位置センサレス磁束制御において、トルクリプルをさらに効果的に低減できる。
【0261】
(第16の実施の形態)
以下、第13の実施の形態に係る回転機制御装置の一部が変更されて構成される第16の実施の形態に係る回転機制御装置について説明する。ここでは、第16の実施の形態に係る回転機制御装置について、第13の実施の形態に係る回転機制御装置と同様の構成要素については、既に説明済みであるとして同じ符号を振ってその詳細な説明を省略し、第13の実施の形態に係る回転機制御装置との相違点を中心に説明する。
【0262】
図30は、第16の実施の形態に係る回転機制御装置の指令位相特定部124nのブロック図である。
【0263】
図30に示すように、第16の実施の形態に係る回転機制御装置は、第13の実施の形態に係る回転機制御装置から、指令位相特定部124kが指令位相特定部124nに変更されて構成される。
【0264】
指令位相特定部124nは、共振部189、積分器200、加算器202、減算器217、ハイパスフィルタ218、ゲイン乗算器220、および減算器222を有している。
【0265】
ハイパスフィルタ218は、推定トルクTeからトルクTHを出力する。
【0266】
ゲイン乗算器220は、トルクTHにゲインK1を乗算する。
【0267】
減算器222は、指令速度ωref
*からK1THを減算する。
【0268】
積分器200は、減算器222によって求められた値を積分する。
【0269】
減算器217は、-TrippleからTeを減算する。
【0270】
共振部189は、リプル補償トルクTrippleに基づいてリプル補償位相θrippleを特定する。たとえば、共振部189は、上述した式(26)におけるΔTを-Tripple-Teに置き換えて計算することによって、リプル補償位相θrippleを特定する。
【0271】
加算器202は、積分器200によって求められた値にリプル補償位相θrippleを加算することによって、指令位相θs
*を特定する。
【0272】
上述したように、指令位相特定部124nは、共振部189、積分器200、加算器202、減算器217、ハイパスフィルタ218、ゲイン乗算器220、および減算器222を有していてもよい。
【0273】
(第17の実施の形態)
以下、第16の実施の形態に係る回転機制御装置の一部が変更されて構成される第17の実施の形態に係る回転機制御装置について説明する。ここでは、第17の実施の形態に係る回転機制御装置について、第16の実施の形態に係る回転機制御装置と同様の構成要素については、既に説明済みであるとして同じ符号を振ってその詳細な説明を省略し、第16の実施の形態に係る回転機制御装置との相違点を中心に説明する。
【0274】
図31は、第17の実施の形態に係る回転機制御装置の指令位相特定部124pのブロック図である。
【0275】
図31に示すように、第17の実施の形態に係る回転機制御装置は、第16の実施の形態に係る回転機制御装置から、指令位相特定部124nが指令位相特定部124pに変更されて構成される。
【0276】
指令位相特定部124pは、共振部189、加算器202、乗算器204、加算器206、減算器217、ハイパスフィルタ218、ゲイン乗算器220、および減算器222を有している。
【0277】
加算器202は、乗算器204によって求められた移動量Δθにリプル補償位相θrippleを加算する。
【0278】
加算器206は、加算器202によって求められた値に推定位相θsを加算することによって、指令位相θs
*を特定する。
【0279】
上述したように、指令位相特定部124pは、共振部189、加算器202、乗算器204、加算器206、減算器217、ハイパスフィルタ218、ゲイン乗算器220、および減算器222を有していてもよい。
【0280】
(第18の実施の形態)
以下、第17の実施の形態に係る回転機制御装置の一部が変更されて構成される第18の実施の形態に係る回転機制御装置について説明する。ここでは、第18の実施の形態に係る回転機制御装置について、第17の実施の形態に係る回転機制御装置と同様の構成要素については、既に説明済みであるとして同じ符号を振ってその詳細な説明を省略し、第17の実施の形態に係る回転機制御装置との相違点を中心に説明する。
【0281】
図32は、第18の実施の形態に係る回転機制御装置の指令位相特定部124qのブロック図である。
【0282】
図32に示すように、第18の実施の形態に係る回転機制御装置は、第17の実施の形態に係る回転機制御装置から、指令位相特定部124pが指令位相特定部124qに変更されて構成される。
【0283】
指令位相特定部124qは、共振部189、加算器202、加算器206、乗算器208、PI補償器214、加算器216、減算器217、ローパスフィルタ224、および減算器226を有している。
【0284】
乗算器208は、指令速度ωref
*にTsを乗算し、ωref
*Tsを求める。
【0285】
ローパスフィルタ224は、推定トルクTeからトルクTLを出力する。
【0286】
減算器226は、トルクTLから推定トルクTeを減算することによって、トルク-THを求める。
【0287】
PI補償器214は、トルク-THからΔωref
*Tsを求める。
【0288】
加算器216は、乗算器208によって求められたωref
*TsとPI補償器214によって求められたΔωref
*Tsとを加算し、トルク位相Δθsを求める。
【0289】
加算器202は、加算器216によって求められたトルク位相Δθsにリプル補償位相θrippleを加算する。
【0290】
加算器206は、加算器202によって求められた値に推定位相θsを加算することによって、指令位相θs
*を特定する。
【0291】
上述したように、指令位相特定部124qは、共振部189、加算器202、加算器206、乗算器208、PI補償器214、加算器216、減算器217、ローパスフィルタ224、および減算器226を有していてもよい。
【0292】
(第19の実施の形態)
以下、第1の実施の形態に係る回転機制御装置100の一部が変更されて構成される第19の実施の形態に係る回転機制御装置100rについて説明する。ここでは、第19の実施の形態に係る回転機制御装置100rについて、回転機制御装置100と同様の構成要素については、既に説明済みであるとして同じ符号を振ってその詳細な説明を省略し、回転機制御装置100との相違点を中心に説明する。
【0293】
図33に示すように、回転機制御装置100rは、第1の実施の形態に係る回転機制御装置100から、位置センサレス制御部106が位置センサレス制御部106rに変更されて構成される。
【0294】
図34に示すように、位置センサレス制御部106rは、位置センサレス制御部106から、磁化特性特定部120およびリプル補償特定部122がリプル補償特定部122rに変更されて構成される。
【0295】
図35に示すように、リプル補償特定部122rは、推定磁束Ψ
sと検出電流iとに基づいて磁石磁束Ψ
a mの位相である磁石位相θ
d mを特定し、磁石位相θ
d mをdm軸としかつ磁石位相θ
d mに対して90度進んだ位相をqm軸としたdm-qm座標を用いて、検出電流iのqm軸電流i
q mの脈動分を含むリプル補償トルクT
rippleに基づいて、共振部189によってリプル補償位相θ
rippleを特定する。具体的には、リプル補償特定部122rは、推定磁束Ψ
sと検出電流iとに基づいて磁石磁束Ψ
a mの位相である磁石位相θ
d mを特定する。そして、リプル補償特定部122rは、磁石位相θ
d mをdm軸としかつ磁石位相θ
d mに対して90度進んだ位相をqm軸としたdm-qm座標を用いて、検出電流iのqm軸電流i
q mを求める。そして、リプル補償特定部122rは、検出電流iのqm軸電流i
q mの脈動分を含むリプル補償トルクT
rippleを求める。そして、リプル補償特定部122rは、検出電流iのqm軸電流i
q mの脈動分を含むリプル補償トルクT
rippleに基づいて、共振部189によってリプル補償位相θ
rippleを特定する。リプル補償特定部122rは、磁石磁束特定部144、磁石位相特定部146、α,β/qm変換部148、トルク成分特定部228、および共振部189を有している。
【0296】
トルク成分特定部228は、qm軸電流iq mの脈動分を含むリプル補償トルクTrippleを求める。具体的に、トルク成分特定部228は、式(27)によって、qm軸電流iq mの脈動分を含むリプル補償トルクTrippleを求める。
【0297】
【0298】
共振部189は、qm軸電流iq mの脈動分を含むリプル補償トルクTrippleに基づいて、リプル補償位相θrippleを特定する。具体的には、共振部189は、式(28)によって、qm軸電流iq mの脈動分を含むリプル補償トルクTrippleに基づいて、リプル補償位相θrippleを特定する。b0は、係数であり、予め設定された定数である。また、ξは、減衰係数であり、ωnは、固有振動数であり、sは、伝達関数である。
【0299】
【0300】
このように、共振部189は、qm軸電流iq mの脈動分を含むリプル補償トルクTrippleに基づいてリプル補償位相θrippleを特定する。たとえば、共振部189は、共振器である。
【0301】
なお、たとえば、位置センサレス制御部106rは、指令振幅生成部118に代えて指令振幅生成部118aを有していてもよい。また、たとえば、位置センサレス制御部106rは、指令位相特定部124に代えて、指令位相特定部124c、指令位相特定部124d、指令位相特定部124e、指令位相特定部124f、指令位相特定部124g、または指令位相特定部124hを有していてもよく、位置センサレス制御部106rに指令速度ωref
*が与えられてもよい。
【0302】
図36は、回転機におけるトルクの波形を示すグラフである。具体的には、
図36は、回転機制御装置による回転機の制御をシミュレーションした場合における回転機におけるトルクを示すグラフである。ここでは、比較例に係る方法で回転機制御装置を駆動させて回転機を制御した後に、実施例に係る方法で回転機制御装置を駆動させて回転機を制御した。回転機は磁石磁束に高調波成分を持つモータを想定しており、回転速度が3600r/minとなりかつ定格負荷の50%となるように回転機を制御した。比較例に係る方法は、非特許文献1に記載された方法と同様の方法であり、実施例に係る方法は、回転機制御装置100rによる方法と同様の方法である。
【0303】
図36に示すように、実施例に係る方法で回転機制御装置を駆動させた場合、比較例に係る方法で回転機制御装置を駆動させた場合に比べて、トルクリプル率を約22%低減することができた。トルクリプル率は、(最大トルク-最小トルク)/平均トルクによって求められる。
【0304】
また、第1の実施の形態の回転機制御装置100による方法と同様の方法で回転機制御装置を駆動させた場合、および第10の実施の形態の回転機制御装置100jによる方法と同様の方法で回転機制御装置を駆動させた場合にも、比較例に係る方法で回転機制御装置を駆動させた場合に比べて、トルクリプル率を低減することができた。
【0305】
(効果等)
第19の実施の形態に係る回転機制御装置100rは、同期回転機400の磁束である回転機磁束を推定する磁束推定部112と、推定された回転機磁束である推定磁束Ψsと同期回転機400の検出電流iとの第1内積、または同期回転機400の永久磁石の推定された磁石磁束Ψa mと検出電流iとの第2内積を用いたフィードバック制御を実行することによって指令磁束Ψα
*,Ψβ
*の振幅である指令振幅|Ψs
*|を生成する指令振幅生成部118と、推定磁束Ψsと検出電流iとに基づいて磁石磁束Ψa mの位相である磁石位相θd mを特定し、磁石位相θd mをdm軸としかつ磁石位相θd mに対して90度進んだ位相をqm軸としたdm-qm座標を用いて、検出電流iのqm軸電流iq mの脈動分を含むリプル補償トルクTrippleに基づいて、共振部189によってリプル補償位相θrippleを特定するリプル補償特定部122rと、リプル補償位相θrippleとトルク指令または回転速度指令とに基づいて指令位相θs
*を特定する指令位相特定部124と、指令振幅|Ψs
*|と指令位相θs
*とに基づいて指令磁束Ψα
*,Ψβ
*を生成する指令磁束生成部126とを備える。
【0306】
これによれば、磁石位相θd mを特定でき、磁石位相θd mをdm軸としかつ磁石位相θd mに対して90度進んだ位相をqm軸としたdm-qm座標を用いて、推定磁束Ψsのqm軸磁束Ψq mと検出電流iのqm軸電流iq mとを特定でき、検出電流iのqm軸電流iq mの脈動分を含むリプル補償トルクTrippleに基づいてリプル補償位相θrippleを特定でき、リプル補償位相θrippleとトルク指令または回転速度指令とに基づいて指令位相θs
*を特定できるので、位置センサレス磁束制御において、トルクリプルを効果的に低減できる。
【0307】
(他の実施の形態等)
以上、本開示の一態様に係る回転機制御装置について、第1から第19の実施の形態に基づいて説明したが、本開示は、これら実施の形態に限定されるものではない。本開示の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形をこの実施の形態に施したものや、異なる実施の形態における構成要素を組み合わせて構築される形態も、本開示の1つまたは複数の態様の範囲内に含まれてもよい。
【0308】
上述した第1の実施の形態では、回転機制御装置100が、トルク推定部116および位相特定部114を備えている場合について説明したが、これに限定されない。たとえば、回転機制御装置は、トルク推定部116および位相特定部114を備えていなくてもよい。この場合、たとえば、回転機制御装置は、推定トルクT
eおよび推定位相θ
sを外部から取得してもよい。また、たとえば、
図16に示すように、推定トルクT
eおよび推定位相θ
sを用いずに指令位相θ
s
*を特定してもよい。
【0309】
また、上述した第1の実施の形態では、回転機制御装置100が、トルク推定部116を備えている場合について説明したが、これに限定されない。たとえば、回転機制御装置は、トルク推定部116を備えていなくてもよい。この場合、たとえば、回転機制御装置は、推定トルクT
eを外部から取得してもよい。また、たとえば、
図17に示すように、推定トルクT
eを用いずに指令位相θ
s
*を特定してもよい。第2から第9の実施の形態についても同様である。
【0310】
なお、上述した実施の形態において、各構成要素は、専用のハードウェアで構成されるか、各構成要素に適したソフトウェアプログラムを実行することによって実現されてもよい。各構成要素は、CPU(Central Processing Unit)またはプロセッサ等のプログラム実行部が、ハードディスクまたは半導体メモリ等の記録媒体に記録されたソフトウェアプログラムを読み出して実行することによって実現されてもよい。
【0311】
なお、以下のような場合も本開示に含まれる。
【0312】
(1)上記の各装置は、具体的には、マイクロプロセッサ、ROM、RAM、ハードディスクユニット、ディスプレイユニット、キーボード、マウスなどから構成されるコンピュータシステムである。前記RAMまたはハードディスクユニットには、コンピュータプログラムが記憶されている。前記マイクロプロセッサが、前記コンピュータプログラムにしたがって動作することにより、各装置は、その機能を達成する。ここでコンピュータプログラムは、所定の機能を達成するために、コンピュータに対する指令を示す命令コードが複数個組み合わされて構成されたものである。
【0313】
(2)上記の各装置を構成する構成要素の一部または全部は、1個のシステムLSI(Large Scale Integration:大規模集積回路)から構成されているとしてもよい。システムLSIは、複数の構成部を1個のチップ上に集積して製造された超多機能LSIであり、具体的には、マイクロプロセッサ、ROM、RAMなどを含んで構成されるコンピュータシステムである。前記RAMには、コンピュータプログラムが記憶されている。前記マイクロプロセッサが、前記コンピュータプログラムにしたがって動作することにより、システムLSIは、その機能を達成する。
【0314】
(3)上記の各装置を構成する構成要素の一部または全部は、各装置に脱着可能なICカードまたは単体のモジュールから構成されているとしてもよい。前記ICカードまたは前記モジュールは、マイクロプロセッサ、ROM、RAMなどから構成されるコンピュータシステムである。前記ICカードまたは前記モジュールは、上記の超多機能LSIを含むとしてもよい。マイクロプロセッサが、コンピュータプログラムにしたがって動作することにより、前記ICカードまたは前記モジュールは、その機能を達成する。このICカードまたはこのモジュールは、耐タンパ性を有するとしてもよい。
【0315】
(4)本開示は、上記に示す方法であるとしてもよい。また、これらの方法をコンピュータにより実現するコンピュータプログラムであるとしてもよいし、前記コンピュータプログラムからなるデジタル信号であるとしてもよい。
【0316】
また、本開示は、前記コンピュータプログラムまたは前記デジタル信号をコンピュータ読み取り可能な記録媒体、例えば、フレキシブルディスク、ハードディスク、CD-ROM、MO、DVD、DVD-ROM、DVD-RAM、BD(Blu-ray(登録商標) Disc)、半導体メモリなどに記録したものとしてもよい。また、これらの記録媒体に記録されている前記デジタル信号であるとしてもよい。
【0317】
また、本開示は、前記コンピュータプログラムまたは前記デジタル信号を、電気通信回線、無線または有線通信回線、インターネットを代表とするネットワーク、データ放送等を経由して伝送するものとしてもよい。
【0318】
また、本開示は、マイクロプロセッサとメモリを備えたコンピュータシステムであって、前記メモリは、上記コンピュータプログラムを記憶しており、前記マイクロプロセッサは、前記コンピュータプログラムにしたがって動作するとしてもよい。
【0319】
また、前記プログラムまたは前記デジタル信号を前記記録媒体に記録して移送することにより、または前記プログラムまたは前記デジタル信号を前記ネットワーク等を経由して移送することにより、独立した他のコンピュータシステムにより実施するとしてもよい。
【0320】
(5)上記実施の形態及びその他の形態を組み合わせてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0321】
本開示は、回転機を制御する回転機制御装置等に広く利用可能である。
【符号の説明】
【0322】
100,100j,100r 回転機制御装置
102 第1電流センサ
104 第2電流センサ
106,106c,106j,106k,106r 位置センサレス制御部
108 デューティ生成部
110 u,w/α,β変換部
112 磁束推定部
114 位相特定部
116 トルク推定部
118,118a 指令振幅生成部
120,120b,120c 磁化特性特定部
122,122j リプル補償特定部
124,124c,124d,124e,124f,124g,124h,124j,124k,124l,124m,124n,124p,124q 指令位相特定部
126 指令磁束生成部
128 電圧指令生成部
130 α,β/u,v,w変換部
132,180,186,222,226 減算器
134 Pゲイン
136 Iゲイン
138,200 積分器
140,142,174,190,192,202,206,216 加算器
144 磁石磁束特定部
146 磁石位相特定部
148,150 α,β/qm変換部
152 高調波成分特定部
154 フーリエ変換部
156 磁気エネルギー特定部
158 増幅器
160,164,176,178,182,184,204,208 乗算器
162,166,224 ローパスフィルタ
168 磁気エネルギーテーブル
170 リプルトルク特定部
172 リプル位相特定部
188,214 PI補償器
189 共振部
194,194c 電機子反作用磁束特定部
210,218 ハイパスフィルタ
212 符号反転器
220 ゲイン乗算器
228 トルク成分特定部