(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-27
(45)【発行日】2023-10-05
(54)【発明の名称】アノード触媒、水電解セル及び水電解セルスタック
(51)【国際特許分類】
C25B 11/081 20210101AFI20230928BHJP
B01J 23/58 20060101ALI20230928BHJP
B01J 23/62 20060101ALI20230928BHJP
C25B 1/04 20210101ALI20230928BHJP
C25B 9/00 20210101ALI20230928BHJP
C25B 11/052 20210101ALI20230928BHJP
【FI】
C25B11/081
B01J23/58 M
B01J23/62 M
C25B1/04
C25B9/00 A
C25B11/052
(21)【出願番号】P 2022145406
(22)【出願日】2022-09-13
【審査請求日】2023-02-27
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000220262
【氏名又は名称】東京瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村越 莉帆
(72)【発明者】
【氏名】宇根本 篤
【審査官】池ノ谷 秀行
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/156599(WO,A1)
【文献】ACS Catalysis,米国,2019年07月30日,Vol. 9,p. 8561-8574
【文献】米国,Chemistry of Materials,2020年04月29日,Vol. 32,p. 3904-3910
【文献】RSC Advances,英国,2022年08月26日,Vol. 12,p. 24427-24438
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25B 1/04
C25B 9/00
C25B 11/052
C25B 11/081
B01J 23/58
B01J 23/62
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Aサイトイオンにアルカリ土類金属イオンと、Bサイトイオンに金属イオン(但し、イリジウムイオンを除く)とイリジウムイオンと、を含むペロブスカイト型構造を有する酸化物を含み、
(1)前記アルカリ土類金属イオンがストロンチウムイオンを含み、かつ前記Bサイトイオンに少なくともスズイオンを含む、(2)前記アルカリ土類金属イオンがバリウムイオンを含み、かつ前記Bサイトイオンはジルコニウムイオンを含む、あるいは、(3)前記アルカリ土類金属イオンがカルシウムイオンを含み、かつ前記Bサイトイオンはチタンイオン、ジルコニウムイオン及びスズイオンからなる群より選択される少なくとも1種を含
み、
前記Bサイトイオンに含まれるイリジウムイオンのモル濃度は、0.20mol/mol~0.80mol/molであるアノード触媒。
【請求項2】
前記Bサイトイオンに含まれるイリジウムイオンのモル濃度は、0.50mol/mol~0.70mol/molである請求項1に記載のアノード触媒。
【請求項3】
アノードガス拡散層と、請求項1
又は請求項2に記載のアノード触媒と、電解質膜と、カソード触媒と、カソードガス拡散層と、セパレータとを備える水電解セル。
【請求項4】
請求項
3に記載の水電解セルを複数積層させた水電解セルスタック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、アノード触媒、水電解セル及び水電解セルスタックに関する。
【背景技術】
【0002】
水の電気分解(以下、「水電解」という場合がある。)は、電気分解によって水から水素及び酸素を生成する方法である。例えば、エネルギー源として水素を利用する技術において、水電解は、持続可能な水素生成のための有望な技術である。
【0003】
水電解に用いる水電解セルは、アノードセパレータ、アノードガス拡散層、アノード触媒、電解質膜、カソード触媒、カソードガス拡散層、カソードセパレータ等を備えている。アノード触媒及びカソード触媒については、水電解に適した触媒が検討されている。
【0004】
例えば、特許文献1では、パラジウム(Pd)とルテニウム(Ru)を含むPdRu固溶体ナノ粒子が開示され、このナノ粒子は、水電解反応用触媒として用いられることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ルテニウム、イリジウム等のアノード活性を有する元素を含むアノード触媒は、高い触媒活性を有する。しかし、アノード触媒は、水電解中は強酸化雰囲気に晒されるため、例えば、ルテニウム、イリジウム等の元素は溶解しやすく、当該元素を含むアノード触媒は短寿命化しやすい。
【0007】
例えば、特許文献1のようなルテニウムを含む水電解反応用触媒では、ルテニウムが溶解しやすく、当該触媒は短寿命化するおそれがある。
【0008】
本開示の目的は、高触媒活性と長寿命とが両立されたアノード触媒、並びに、これを含む水電解セル及び水電解セルスタックを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示は、以下の態様を含む。
<1> Aサイトイオンにアルカリ土類金属イオンと、Bサイトイオンに金属イオン(但し、イリジウムイオンを除く)とイリジウムイオンと、を含むペロブスカイト型構造を有する酸化物を含み、
前記アルカリ土類金属イオンがストロンチウムイオンを含み、かつ前記Bサイトイオンに少なくともスズイオンを含む、あるいは、前記アルカリ土類金属イオンがカルシウムイオン及びバリウムイオンからなる群より選択される少なくとも1種を含むアノード触媒。
<2> 前記アルカリ土類金属イオンがカルシウムイオン及びバリウムイオンからなる群より選択される少なくとも1種を含む場合、前記Bサイトイオンは、チタンイオン、ジルコニウムイオン及びスズイオンからなる群より選択される少なくとも1種を含む<1>に記載のアノード触媒。
<3> 前記Bサイトイオンに含まれるイリジウムイオンのモル濃度は、0.20mol/mol~0.80mol/molである<1>又は<2>に記載のアノード触媒。
<4> 前記Bサイトイオンに含まれるイリジウムイオンのモル濃度は、0.50mol/mol~0.70mol/molである<1>又は<2>に記載のアノード触媒。
<5> アノードガス拡散層と、<1>~<4>のいずれか1つに記載のアノード触媒と、電解質膜と、カソード触媒と、カソードガス拡散層と、セパレータとを備える水電解セル。
<6> <5>に記載の水電解セルを複数積層させた水電解セルスタック。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、高触媒活性と長寿命とが両立されたアノード触媒、並びに、これを含む水電解セル及び水電解セルスタックが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の実施形態について説明する。本開示は、以下の実施形態に何ら制限されず、本開示の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。図面における寸法の比率は、必ずしも実際の寸法の比率を表すものではない。
【0013】
本開示において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
【0014】
本開示中に段階的に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値に置き換えられてもよく、ある数値範囲で記載された下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の下限値に置き換えられてもよい。本開示中に段階的に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えられてもよい。
【0015】
本開示において、2以上の好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
【0016】
<アノード触媒>
本開示のアノード触媒は、Aサイトイオンにアルカリ土類金属イオンと、Bサイトイオンに金属イオン(但し、イリジウムイオンを除く)とイリジウムイオンと、を含むペロブスカイト型構造を有する酸化物を含み、前記アルカリ土類金属イオンがストロンチウムイオンを含み、かつ前記Bサイトイオンに少なくともスズイオンを含む、あるいは、前記アルカリ土類金属イオンがカルシウムイオン及びバリウムイオンからなる群より選択される少なくとも1種を含む。
【0017】
本開示のアノード触媒は、ペロブスカイト型構造を有する酸化物を含むことで長寿命となる傾向にある。さらに、ペロブスカイト型構造のBサイトイオンとしてイリジウムイオンを組み込み、Aサイトイオン及びBサイトイオンが上記のイオンであることで当該アノード触媒を備える水電解セルの電流密度を高めることが可能となる。そのため、本開示のアノード触媒は、高触媒活性を有する傾向にある。
【0018】
Aサイトイオンにアルカリ土類金属イオンと、Bサイトイオンに金属イオンとイリジウムイオンと、を含むペロブスカイト型構造を有する酸化物については、従来公知の方法により製造することができる。例えば、従来公知の固相法、液相法等により当該ペロブスカイト型構造を有する酸化物を作製可能である。固相法としては、固体原料の直接反応による方法が挙げられ、液相法としては、ペッチーニ法、錯体重合法、水熱合成法等が挙げられる。
【0019】
本開示のアノード触媒は、ペロブスカイト型構造を有する酸化物を含む。ペロブスカイト型構造を有する酸化物は、一般的にABO3の化学式で表される。ペロブスカイト型構造の酸化物は酸素不定性を有するものもある。酸素量が3より欠損、あるいは過剰となっていてもよい。また、AサイトイオンとBサイトイオンは、それぞれ別の元素に部分的に置換されていてもよい。
【0020】
ペロブスカイト型構造のAサイトイオンは、アルカリ土類金属イオンである。アルカリ土類金属イオンとしては、カルシウムイオン、ストロンチウムイオン、バリウムイオン、ラジウムイオン等が挙げられる。本開示では、Aサイトイオンであるアルカリ土類金属イオンは、ストロンチウムイオン、カルシウムイオン及びバリウムイオンからなる群より選択される少なくとも1種を含む。Aサイトイオンは、1種のアルカリ土類金属イオンであってもよく、2種以上のアルカリ土類金属イオンであってもよい。
【0021】
ペロブスカイト型構造のBサイトイオンは、金属イオン(但し、イリジウムイオンを除く)及びイリジウムイオンである。
【0022】
アルカリ土類金属イオンがストロンチウムイオンを含む場合、ペロブスカイト型構造を有する酸化物は、Bサイトイオンに少なくともスズイオンを含む。この場合、ペロブスカイト型構造を有する酸化物は、Bサイトイオンにスズイオン以外のその他の金属イオンを含んでいてもよく、含んでいなくてもよい。その他の金属イオンとしては、スカンジウム(Sc)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、ルテニウム(Ru)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、アンチモン(Sb)等の金属のイオンが挙げられる。中でも、その他の金属イオンは、チタンイオン及びジルコニウムイオンの少なくとも一方であってもよい。
【0023】
アルカリ土類金属イオンがカルシウムイオン及びバリウムイオンからなる群より選択される少なくとも1種を含む場合、Bサイトイオンである金属イオン(但し、イリジウムイオンを除く)は特に限定されない。この場合、当該金属イオンとしては、スカンジウム(Sc)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、ルテニウム(Ru)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、スズ(Sn)、アンチモン(Sb)等の金属のイオンが挙げられる。Bサイトイオンは、安定な元素であり、かつアノード触媒の長寿命化が期待される観点から、当該金属イオンとして、チタンイオン、ジルコニウムイオン及びスズイオンからなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよく、ジルコニウムイオン及びスズイオンからなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。
【0024】
Aサイトイオンであるアルカリ土類金属イオン及びBサイトイオンである金属イオンの組み合わせである(アルカリ土類金属イオン、金属イオン)としては、例えば、(ストロンチウムイオン、スズイオン)(カルシウムイオン、チタンイオン)、(カルシウムイオン、ジルコニウムイオン)、(カルシウムイオン、スズイオン)、(バリウムイオン、チタンイオン)、(バリウムイオン、ジルコニウムイオン)、(バリウムイオン、スズイオン)等が挙げられる。
【0025】
Bサイトイオンに含まれる金属イオンのモル濃度(金属イオンが2種以上の場合は、2種以上の金属イオンの合計モル濃度)は、0.20mol/mol~0.80mol/molであってもよく、0.25mol/mol~0.65mol/molであってもよく、0.25mol/mol~0.55mol/molであってもよく、0.30mol/mol~0.50mol/molであってもよい。
【0026】
Bサイトイオンに含まれるイリジウムイオンのモル濃度は、0.20mol/mol~0.80mol/molであってもよく、0.35mol/mol~0.75mol/molであってもよく、0.45mol/mol~0.75mol/molであってもよく、0.50mol/mol~0.70mol/molであってもよい。
【0027】
Bサイトイオンに含まれる金属イオンのモル濃度及びBサイトイオンに含まれるイリジウムイオンのモル濃度は、高周波誘導結合プラズマ(ICP)によりアノード触媒を分析することで求めることができる。
【0028】
本開示のアノード触媒は、Aサイトイオンにアルカリ土類金属イオンと、Bサイトイオンに金属イオン(但し、イリジウムイオンを除く)とイリジウムイオンと、を含むペロブスカイト型構造を有する酸化物以外の成分を含んでいてもよい。例えば、ペロブスカイト型構造を有する酸化物以外の触媒活性を有する成分、ペロブスカイト型構造を有する酸化物の生成に用いた原料の未反応成分、副反応成分等が挙げられる。
【0029】
本開示のアノード触媒でのペロブスカイト型構造を有する酸化物の含有率は、特に限定されず、アノード触媒の全量に対して、50質量%~100質量%であることが好ましく、70質量%~100質量%であることがより好ましく、90質量%~100質量%であることがさらに好ましい。
【0030】
<水電解セル>
本開示の水電解セルは、アノードガス拡散層と、前述の本開示のアノード触媒と、電解質膜と、カソード触媒と、カソードガス拡散層と、セパレータとを備える。
【0031】
前述のアノードガス拡散層、電解質膜、カソード触媒、カソードガス拡散層及びセパレータとしては、従来公知の水電解セルにて使用される部材を適用してもよい。
【0032】
水電解セルは、他の構成要素を更に含んでいてもよい。他の構成要素は、公知の水電解セルの構成要素から選択されてもよい。他の構成要素としては、例えば、ガスケット、シール材等が挙げられる。
【0033】
例えば、アノードガス拡散層及びカソードガス拡散層としては、それぞれ独立に、多孔質体、粉末焼結体、繊維焼結体、金属メッシュ、フェルトなどの、層内を流体が流通可能とする物質を用いることができる。
【0034】
アノードガス拡散層は、酸化による高抵抗化を抑制する観点から、耐食性の導電性材料でコーティングされていてもよい。コーティング材としては、例えば、白金、金、銀、窒化チタン、炭化チタン、炭窒化チタン等が挙げられる。
【0035】
電解質膜は、水電解に使用される公知の電解質膜(イオン交換膜であってもよい)から選択されてもよい。電解質膜は、プロトン(H+)を選択的に透過する性質を有することが好ましい。電解質膜としては、例えば、高分子電解質膜(PEM)が挙げられる。高分子電解質膜としては、例えば、スルホン酸基を有するパーフルオロカーボン膜、スルホン酸基を有するパーフルオロカーボン膜等が挙げられる。スルホン酸基を有するパーフルオロカーボン膜としては、例えば、ナフィオン膜が挙げられる。
【0036】
電解質膜は、イオン性基を有することによりプロトン伝導性を有するポリマーであり、例えば、フッ素系高分子電解質と炭化水素系高分子電解質のいずれであってもよい。
【0037】
ここで、フッ素系高分子電解質とは、ポリマー中のアルキル基及び/又はアルキレン基における水素の大部分又は全部がフッ素原子に置換されたものを意味する。イオン性基を有するフッ素系高分子電解質の代表例としては、“ナフィオン”(登録商標)(ケマーズ(株)製)、“アクイビオン”(登録商標)(ソルベイ社製)、“フレミオン”(登録商標)(AGC(株)製)及び“アシプレックス”(登録商標)(旭化成(株)製)などの市販品が挙げられる。
【0038】
炭化水素系電解質としては、主鎖に芳香環を有する芳香族炭化水素系ポリマーが好ましい。ここで、芳香環としては、ベンゼン環、ナフタレン骨格等の炭素原子と水素原子のみからなる炭化水素系芳香環だけでなく、ピリジン環、イミダゾール環、チオール環等のヘテロ環などを含んでいてもよい。また、芳香環ユニットと共に一部脂肪族系ユニットがポリマーを構成していてもよい。
【0039】
芳香族炭化水素系ポリマーの具体例としては、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンオキシド、ポリアリーレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンスルフィドスルホン、ポリパラフェニレン、ポリアリーレン、ポリアリーレンケトン、ポリエーテルケトン、ポリアリーレンホスフィンオキシド、ポリエーテルホスフィンオキシド、ポリベンズオキサゾール、ポリベンズチアゾール、ポリベンズイミダゾール、ポリアミド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリイミドスルホンから選択される構造を芳香環とともに主鎖に有するポリマーが挙げられる。なお、ここでいうポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン等は、その分子鎖にスルホン結合、エーテル結合、ケトン結合等を有している構造の総称であり、ポリエーテルケトンケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトンケトン、ポリエーテルケトンエーテルケトンケトン、ポリエーテルケトンスルホンなどを含む。芳香族炭化水素系ポリマーは、これらの構造を複数有していてもよい。これらのなかでも、芳香族炭化水素系ポリマーとして特にポリエーテルケトン骨格を有するポリマー、すなわちポリエーテルケトン系ポリマーが好ましい。
【0040】
電解質膜は、補強材と組み合わせてもよい。補強材を用いることで、例えば、ホットプレス法により電解質膜と電極を接合する際に膜が破損することによるガスのリーク、電極内の短絡等が生じにくくなる。
【0041】
補強材の具体例としては、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PFA(テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)、PVDF(ポリビニリデンフルオライド)、FEP(テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体)等のフッ素系高分子又はPE(ポリエチレン),PP(ポリプロピレン)等の熱可塑性樹脂、PI(ポリイミド)、PSF(ポリスルホン)、PES(ポリエーテルスルホン)、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、PPSS(ポリフェニレンスルフィドスルホン)、PPO(ポリフェニレンオキシド)、PEK(ポリエーテルケトン)、PBI(ポリベンズイミダゾール)、PPS(ポリフェニレンスルフィド)、PPP(ポリパラフェニレン)、PPQ(ポリフェニルキノキサリン)、ポリベンゾオキサゾール(PBO)、ポリベンゾチアゾール(PBT)、ポリパラフェニレンテレフタルアミド(PPTA)等のエンジニアリングプラスチックなどからなる均質な多孔質膜が挙げられる。
【0042】
カソード触媒は、水電解に使用される公知の触媒から選択されてもよい。触媒の成分としては、例えば、白金、金、銀、パラジウム、イリジウム、ロジウム、ルテニウム、スズ、鉄、コバルト、ニッケル、モリブデン、タングステン、バナジウム及びこれらの合金、これらの酸化物等が挙げられる。触媒の形態は、粒子であってもよい。また、アノード触媒は、担体に担持された触媒を含んでいてもよい。担体としては、例えば、酸化チタン、酸化スズ等が挙げられる。カソード触媒は、担体に担持された触媒を含んでいてもよい。担体としては、例えば、カーボンブラック等が挙げられる。
【0043】
水電解セルは、アノード触媒(好ましくはアノード触媒粒子)及びアイオノマーを含むアノード触媒層を備えていてもよく、カソード触媒(好ましくはカソード触媒粒子)及びアイオノマーを含むカソード触媒層を備えていてもよい。これにより、触媒層内での触媒とアイオノマーとの接触面積が増えるため、反応が促進される傾向にある。
【0044】
アノード触媒の一次粒子径は1nm~10μmであることが好ましく、2nm~1μmであることがより好ましく、5nm~100nmであることがさらに好ましい。アノード触媒の一次粒子径が1nm以上であることにより、接触面積を増加させるために必要なアイオノマーの混合比が大きくなりすぎず、アノード触媒層内部での電子伝導パスを多く確保できるため、高抵抗化しにくくなる傾向にある。アノード触媒の一次粒子径が10μm以下であることにより、アイオノマーとの接触面積の低下が抑制されるため、高抵抗化しにくくなる傾向にある。
【0045】
セパレータとしては、アノードガス拡散層側に配置されるアノードセパレータ、及びカソードガス拡散層側に配置されるカソードセパレータが挙げられる。セパレータの材質としては、例えば、チタン、ステンレス、カーボン等が挙げられる。アノード側に発生する酸素による酸化抑制の観点から、アノードセパレータは、チタンを含むことが好ましい。
【0046】
アノードセパレータは、酸化による高抵抗化を抑制するため、耐食性の導電性材料でコーティングされていてもよい。コーティング材としては、例えば、白金、金、銀、窒化チタン、炭化チタン、炭窒化チタン等が挙げられる。
【0047】
水電解セルにおける各構成要素の配置は、公知の水電解セルを参考に決定されてもよい。水電解セルにおいて、電解質膜は、アノード触媒とカソード触媒との間に位置することが好ましい。水電解セルにおいて、電解質膜並びにアノード触媒及びカソード触媒は、アノードガス拡散層とカソードガス拡散層との間に位置することが好ましい。水電解セルにおいて、電解質膜、アノード触媒及びカソード触媒並びにアノードガス拡散層及びカソードガス拡散層は、2つのセパレータの間に位置することが好ましい。
【0048】
水電解セルの一例を
図1に示す。
図1は、水電解セルの概略断面図である。
図1に示すように、水電解セル100は、
図1の上側から順にアノードセパレータ60と、アノードガス拡散層20と、アノード触媒12と、電解質膜11と、カソード触媒13と、カソードガス拡散層30と、カソードセパレータ70と、を備える。さらに、アノードセパレータ60と電解質膜11との間にガスケット40が配置されており、カソードセパレータ70と電解質膜11との間にガスケット50が配置されている。
【0049】
<水電解装置>
本開示の水電解装置は、前述の本開示の水電解セルを複数積層してなる水電解セルスタックであってもよく、当該水電解セルスタック又は本開示の水電解セルと他の構成要素とを備える装置であってもよい。
【0050】
他の構成要素は、公知の水電解装置の構成要素から選択されてもよい。他の構成要素としては、例えば、パワーコンディショナー、水ポンプ、イオン交換樹脂、熱交換器及び除湿器などの補機類が挙げられる。
【実施例】
【0051】
以下、実施例により本開示を詳細に説明する。ただし、本開示は、以下の実施例に制限されるものではない。以下の実施例に示される事項は、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更されてもよい。
【0052】
<実施例1>
ペッチーニ法により、イリジウムイオンをチタン酸バリウム(BaTiO3)のBサイトに組み込んだペロブスカイト型構造を有する酸化物を含む触媒粉末を得た。出発原料は、炭酸バリウム(BaCO3)、チタンテトラブトキシド(C16H36O4Ti)及びヘキサクロロイリジウム酸カリウム(K2IrCl6)とした。BaCO3を0.390g、K2IrCl6を0.08g、クエン酸一水和物(C6H8O7・H2O)を0.28g、硝酸(1.38)を0.3mLそれぞれ秤量し、10mL純水に投入して混合し、室温で10分以上攪拌して溶解した。この混合溶液を溶液Aとした。C16H36O4Tiを0.056g秤量して、4mLのエチレングリコール(C2H6O2)ともに混合し、10分以上攪拌して混合した。この混合溶液を溶液Bとした。溶液Aを溶液Bに投入した後、ホットスターラーを使用し、70℃で3時間以上攪拌混合した。その後、混合溶液をジルコニア製るつぼに移し、180℃で12時間、200℃で6時間、300℃で6時間、500℃で3時間、600℃で6時間熱処理した。熱処理後の粉末を回収し、濃度1Mの塩酸水溶液50mLとともにビーカーに投入して3時間以上攪拌し、未反応成分を取り除いた。得られた混合溶液は、吸引ろ過器を使用して水洗し、オーブンにて60℃で乾燥した後、触媒粉末を得た。合成した触媒粉末に対して、X線回折測定を実施したところ、ペロブスカイト型構造に由来する回折パターンが得られた。得られた粉末を王水に溶解し、高周波誘導結合プラズマ(ICP)により分析したところ、Bサイトのイリジウムイオンのモル濃度は0.50mol/molであった。
【0053】
<実施例2>
合成したチタン酸バリウム(BaTiO3)のBサイトに組み込んだイリジウムイオンのモル濃度が0.67mol/molとなるよう、C16H36O4Tiの質量を0.028gに変更した以外は、実施例1と同様にしてペロブスカイト型構造を有する酸化物を含む触媒粉末を得た。実施例1と同様にして求めたBサイトの各条件は、表1に示す通りであった。
【0054】
<実施例3>
合成したペロブスカイト構造を有するスズ酸ストロンチウム(SrSnO3)のBサイトに組み込んだイリジウムイオンのモル濃度(mIr)が0.50mol/molとなるよう、出発原料と混合比を変更した以外は、実施例1と同様にしてペロブスカイト型構造を有する酸化物を含む触媒粉末を得た。出発原料は、硝酸ストロンチウム(Sr(NO3)2)、スズテトラブトキシド(C16H36O4Sn)及びK2IrCl6とした。Sr(NO3)2を0.420g、K2IrCl6を0.08g、C6H8O7・H2Oを0.28gとし、実施例1に記載の方法で溶液Aを作製した。C16H36O4Snを0.067g秤量し、実施例1に記載の方法で溶液Bを作製した。以降の操作は実施例1と同様にして触媒粉末を回収した。実施例1と同様にして求めたBサイトの各条件は表1に示す通りであった。
【0055】
<実施例4>
合成したスズ酸ストロンチウム(SrSnO3)のBサイトに組み込んだイリジウムイオンのモル濃度が0.67mol/molとなるよう、C16H36O4Snの質量を0.034gに変更した以外は、実施例1と同様にしてペロブスカイト型構造を有する酸化物を含む触媒粉末を得た。実施例1と同様にして求めたBサイトの各条件は表1に示す通りであった。
【0056】
<実施例5>
合成したペロブスカイト構造を有するスズ酸バリウム(BaSnO3)のBサイトに組み込んだイリジウムイオンのモル濃度(mIr)が0.67mol/molとなるよう、出発原料と混合比を変更した以外は、実施例1と同様にしてペロブスカイト型構造を有する酸化物を含む触媒粉末を得た。出発原料は酢酸バリウム((CH3COO)2Ba)、C16H36O4Sn及びK2IrCl6とした。(CH3COO)2Baを0.968g、K2IrCl6を0.072g、C6H8O7・H2Oを0.25gとして、実施例1に記載の方法で溶液Aを作製した。C16H36O4Snを0.062g秤量し、実施例1に記載の方法で溶液Bを作製した。以降の操作は実施例1と同様にして触媒粉末を回収した。求めたBサイトの各条件は表1に示す通りであった。
【0057】
<実施例6>
ペッチーニ法により、イリジウムイオンをジルコン酸カルシウム(CaZrO3)のBサイトに組み込んだペロブスカイト型構造を有する酸化物を含む触媒粉末を得た。出発原料は、炭酸カルシウム(CaCO3)、オキシ塩化ジルコニウム八水和物(ZrOCl2・8H2O)及びK2IrCl6とした。CaCO3を0.566g、ZrOCl2・8H2Oを0.256g、C6H8O7・H2Oを4.708g、硝酸(1.38)を2mL、純水を20mL、C2H6O2を8mL秤量した。ホットスターラーを使用し、75℃で3時間以上攪拌混合した。その後、混合溶液をジルコニア製るつぼに移し、180℃で12時間、200℃で6時間、300℃で6時間、500℃で3時間、600℃で6時間、700℃で6時間熱処理した。以降の操作は実施例1と同様にして触媒粉末を回収した。合成した触媒粉末に対して、実施例1と同様の方法でX線回折測定を実施したところ、ペロブスカイト型構造に由来する回折パターンが得られた。得られた粉末を王水に溶解し、高周波誘導結合プラズマ(ICP)により分析したところ、イリジウムイオンのモル濃度(mIr)が0.33mol/molであった。求めたBサイトの各条件は表1に示す通りであった。
【0058】
<実施例7>
合成したペロブスカイト型構造を有するジルコン酸カルシウム(CaZrO3)のBサイトに組み込んだイリジウムイオンのモル濃度が0.40mol/molとなるよう、ZrOCl2・8H2Oの質量を0.196gとした以外は、実施例6と同様にしてペロブスカイト型構造を有する酸化物を含む触媒粉末を得た。実施例1と同様にして求めたBサイトの各条件は表1に示す通りであった。
【0059】
<実施例8>
合成したペロブスカイト型構造を有するジルコン酸カルシウム(CaZrO3)のBサイトに組み込んだイリジウムイオンのモル濃度が0.50mol/molとなるよう、ZrOCl2・8H2Oの質量を0.128gとした以外は、実施例6と同様にしてペロブスカイト型構造を有する酸化物を含む触媒粉末を得た。実施例1と同様にして求めたBサイトの各条件は表1に示す通りであった。
【0060】
<実施例9>
合成したペロブスカイト型構造を有するジルコン酸カルシウム(CaZrO3)のBサイトに組み込んだイリジウムイオンのモル濃度が0.67mol/molとなるよう、ZrOCl2・8H2Oの質量を0.064gとした以外は、実施例6と同様にしてペロブスカイト型構造を有する酸化物を含む触媒粉末を得た。実施例1と同様にして求めたBサイトの各条件は表1に示す通りであった。
【0061】
<実施例10>
合成したペロブスカイト型構造を有するジルコン酸バリウム(BaZrO3)のBサイトに組み込んだイリジウムイオンのモル濃度(mIr)が0.33mol/molとなるよう、出発原料と混合比を変更した以外は、実施例6と同様にしてペロブスカイト型構造を有する酸化物を含む触媒粉末を得た。出発原料は硝酸バリウム(Ba(NO3)2)、ZrOCl2・8H2O及びK2IrCl6とした。Ba(NO3)2を1.449g、K2IrCl6を0.192g、C6H8O7・H2Oを4.708g、ZrOCl2・8H2Oを0.256gとして、実施例6と同様にしてペロブスカイト型構造を有する酸化物を含む触媒粉末を得た。実施例1と同様にして触媒粉末を回収した。求めたBサイトの各条件は表1に示す通りであった。
【0062】
<実施例11>
合成したペロブスカイト型構造を有するジルコン酸バリウム(BaZrO3)のBサイトに組み込んだイリジウムイオンのモル濃度が0.50mol/molとなるよう、Ba(NO3)2を1.464g、ZrOCl2・8H2Oを0.128gとした以外は、実施例6と同様にしてペロブスカイト型構造を有する酸化物を含む触媒粉末を得た。実施例1と同様にして求めたBサイトの各条件は表1に示す通りであった。
【0063】
<実施例12>
合成したペロブスカイト型構造を有するジルコン酸バリウム(BaZrO3)のBサイトに組み込んだイリジウムイオンのモル濃度が0.67mol/molとなるよう、Ba(NO3)2を1.457g、ZrOCl2・8H2Oを0.064gとした以外は、実施例6と同様にしてペロブスカイト型構造を有する酸化物を含む触媒粉末を得た。実施例1と同様にして求めたBサイトの各条件は表1に示す通りであった。
【0064】
<実施例13>
合成したペロブスカイト構造を有するチタン酸カルシウム(CaTiO3)のBサイトに組み込んだイリジウムイオンのモル濃度(mIr)が0.20mol/molとなるよう、出発原料と混合比を変更した以外は、実施例1と同様にしてペロブスカイト型構造を有する酸化物を含む触媒粉末を得た。出発原料は、CaCO3、C16H36O4Ti及びK2IrCl6とした。CaCO3を0.202g、K2IrCl6を0.08g、C6H8O7・H2Oを0.28g、硝酸(1.38)を0.3mLとして、実施例1と同様にしてペロブスカイト型構造を有する酸化物を含む触媒粉末を得た。実施例1と同様にして触媒粉末を回収した。求めたBサイトの各条件は表1に示す通りであった。
【0065】
<実施例14>
合成したペロブスカイト構造を有するジルコン酸カルシウム(CaZrO3)のBサイトに組み込んだイリジウムイオンのモル濃度(mIr)が0.20mol/molとなるよう、ZrOCl2・8H2Oの質量を1.200gとした以外は、実施例6と同様にしてペロブスカイト型構造を有する酸化物を含む触媒粉末を得た。実施例1と同様にして求めたBサイトの各条件は表1に示す通りであった。
【0066】
<比較例1>
チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)を合成した。出発原料と混合比を変更した以外は、実施例1と同様にしてペロブスカイト型構造を有する酸化物を含む触媒粉末を得た。出発原料は硝酸ストロンチウム(Sr(NO3)2)及びC16H36O4Tiとした。Sr(NO3)2を0.420g、C6H8O7・H2Oを0.28gとし、実施例1に記載の方法で溶液Aを作製した。C16H36O4Tiを0.225g秤量し、実施例1に記載の方法で溶液Bを作製した。以降の操作は実施例1と同様にして触媒粉末を回収した。
【0067】
<比較例2>
市販のルチル型構造を有するRuO2を使用した。
【0068】
各実施例及び各比較例にて得たペロブスカイト型構造を有する酸化物を含む触媒粉末をアノード触媒として用いた。実施例1と同様にして求めたBサイトの各条件は、表1に示す通りであった。
【0069】
[電流密度の測定]
合成した触媒の電流密度と電圧の関係は、回転ディスク電極法により室温で評価した。触媒粉末を10mg、5質量%ナフィオン分散溶液を0.1mL、2-プロパノールを0.4mL、及び純水を1.5mLを秤量してガラス容器に移し、ホモジェナイザーにより30分以上混合した。得られた混合溶液を10μL取り分けて、直径5mmのグラッシーカーボン電極上に塗布した。乾燥後、回転ディスク電極装置によりセッティングし、作用極とした。対極は白金線、参照極は水溶媒系Ag/AgCl参照電極をそれぞれ使用し、これらと作用極を、0.5M硫酸水溶液を投入したビーカー内に配置した。開回路で10分以上保持した後、室温において水素可逆電極(RHE)基準で0.05V~1.4Vの範囲、掃引速度100mV/秒、回転速度1,600rpmでサイクリックボルタンメトリー測定を60サイクル実施し、触媒表面の電気化学的クリーニングを実施した。その後、電圧をRHE基準で2Vに12時間保持し、1.6Vにおける電流を計測した。グラッシーカーボン電極の面積で電流値を割り算して電流密度とした。なお、本測定中の回転数は1,600rpmとした。電流密度の測定結果を表1に示す。
【0070】
【0071】
表1に示すように、実施例1~14では、比較例1及び2と比較して電流密度が高かった。比較例2では、電流密度が比較例1と比較しても大きく劣っていた。この理由としては、RHE基準で2Vという高電位では、ルチル型構造が不安定であるため、触媒成分が溶出して失活したことが原因として考えられる。これに対し、実施例1~14及び比較例1に示したペロブスカイト型構造を有する酸化物を含む触媒は、ルチル型構造を有する触媒よりも電流密度が高いことから安定であり、さらに、実施例1~14では、比較例1と比較して高触媒活性を有することがわかった。
【0072】
実施例1、2と、実施例8、9、11、12とを比較すると、Ir濃度が等しい条件では、イオン種がTiよりもZrの方が電流密度が大きい値であった。この理由を検討するため、上記各実施例の触媒粉末についてレーザー回折法により粒度分布測定を実施した。粒度分布測定では、堀場製作所製レーザー回折粒度分布分析装置LA-920型を使用した。触媒粉末を2-プロパノール(IPA)と混合し、超音波洗浄器(エスエヌディ製US-2KS、出力120W)で10分処理することで、触媒粉末をIPA中に高分散した。この結果、BサイトイオンにZrを含む場合には、Aサイトイオンの種類に依らず、μメートルオーダーの凝集物は確認されなかった。一方、Bサイトイオンにチタンを含む場合には、粒子径が0.2μm~10μmの凝集物が見られた。これらの結果から、Bサイトイオンにチタンを含む場合には、触媒粉末にて水電解反応の起点となる表面が減少するため、電流密度が低くなる傾向にあると推測される。
【符号の説明】
【0073】
11:電解質膜
12:アノード触媒
13:カソード触媒
20:アノードガス拡散層
30:カソードガス拡散層
40:ガスケット
50:ガスケット
60:アノードセパレータ
70:カソードセパレータ
100:水電解セル
【要約】
【課題】高触媒活性と長寿命とが両立されたアノード触媒を提供する。
【解決手段】Aサイトイオンにアルカリ土類金属イオンと、Bサイトイオンに金属イオン(但し、イリジウムイオンを除く)とイリジウムイオンと、を含むペロブスカイト型構造を有する酸化物を含み、前記アルカリ土類金属イオンがストロンチウムイオンを含み、かつ前記Bサイトイオンに少なくともスズイオンを含む、あるいは、前記アルカリ土類金属イオンがカルシウムイオン及びバリウムイオンからなる群より選択される少なくとも1種を含むアノード触媒。
【選択図】なし