(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-27
(45)【発行日】2023-10-05
(54)【発明の名称】防食構造及び保護カバーユニット
(51)【国際特許分類】
E02D 31/06 20060101AFI20230928BHJP
E02D 5/04 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
E02D31/06 D
E02D5/04
(21)【出願番号】P 2022148432
(22)【出願日】2022-09-16
【審査請求日】2023-03-06
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000211891
【氏名又は名称】株式会社ナカボーテック
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】志鶴 真介
(72)【発明者】
【氏名】町田 勇太
(72)【発明者】
【氏名】五味 誠
【審査官】荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-140796(JP,A)
【文献】特開2018-105052(JP,A)
【文献】実開昭58-115540(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 31/06
E02D 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼管矢板の表面に設置される防食構造であって、
前記鋼管矢板は、外面に継手管が固定された複数の鋼管本体が、該継手管を介して互いに連結されて構成され、且つ該複数の鋼管本体の連結方向に隣り合う一対の鋼管本体の間に、該一対のうちの一方の継手管と他方の継手管とが連結した継手管連結構造を有しており、
前記鋼管矢板の表面に接触する防食層と、該防食層の該鋼管矢板との接触面側とは反対側に位置する保護カバーユニットと、該保護カバーユニットを該鋼管矢板に固定する固定手段とを有し、
前記固定手段は、前記継手管連結構造の外面に固定されたボルトと、該ボルトとともに前記保護カバーユニットを締結するナットとを有し、
前記保護カバーユニットは、前記防食層から近い順に、内層、中間層及び外層を有し、これら3層は、それぞれ、緩衝材と、該緩衝材よりも該防食層から遠い側に位置する保護カバーとを有するとともに、当該層を厚み方向に貫通し且つ前記ボルトが挿通される挿通孔を前記継手管連結構造に対応する位置に有し、
前記内層は、前記継手管連結構造の前記連結方向の中央を基準として、該継手管連結構造の一方側に対応する第1の内層と、他方側に対応する第2の内層とに分割されており、
前記中間層は、前記第1の内層及び前記第2の内層の双方に重なる単一の連続層であり、
前記中間層の前記挿通孔は、前記連結方向に沿って延びる長孔である、防食構造。
【請求項2】
鋼管矢板の表面に設置される防食構造であって、
前記鋼管矢板は、外面に継手管が固定された複数の鋼管本体が、該継手管を介して互いに連結されて構成され、且つ該複数の鋼管本体の連結方向に隣り合う一対の鋼管本体の間に、該一対のうちの一方の継手管と他方の継手管とが連結した継手管連結構造を有しており、
前記鋼管矢板の表面に接触する防食層と、該防食層の該鋼管矢板との接触面側とは反対側に位置する保護カバーユニットと、該保護カバーユニットを該鋼管矢板に固定する固定手段とを有し、
前記固定手段は、前記継手管連結構造の外面に固定されたボルトと、該ボルトとともに前記保護カバーユニットを締結するナットとを有し、
前記保護カバーユニットは、前記防食層から近い順に、内層、中間層及び外層を有し、これら3層は、それぞれ、緩衝材と、該緩衝材よりも該防食層から遠い側に位置する保護カバーとを有するとともに、当該層を厚み方向に貫通し且つ前記ボルトが挿通される挿通孔を前記継手管連結構造に対応する位置に有し、
前記内層は、前記継手管連結構造の前記連結方向の中央を基準として、該継手管連結構造の一方側に対応する第1の内層と、他方側に対応する第2の内層とに分割されており、
前記中間層は、前記第1の内層に重なる第1の中間層と、前記第2の内層に重なる第2の中間層とに分割されており、
前記中間層の前記挿通孔は、前記連結方向に沿って延びる長孔である、防食構造。
【請求項3】
前記中間層は、見掛け厚みが部分的に異なっており、
前記中間層における見掛け厚みが相対的に大きい部分が、前記継手管連結構造に対応する位置に配置されている、請求項1又は2に記載の防食構造。
【請求項4】
前記鋼管矢板の表面に、複数の前記継手管連結構造に対応して複数の前記防食構造が前記連結方向に連なって配置されており、
前記保護カバーユニットは、形状及び寸法が同じである複数の構成要素から形成される、請求項3に記載の防食構造。
【請求項5】
鋼管矢板の表面に設置された防食層を保護する保護カバーユニットであって、
前記鋼管矢板は、外面に継手管が固定された複数の鋼管本体が、該継手管を介して互いに連結されて構成され、且つ該複数の鋼管本体の連結方向に隣り合う一対の鋼管本体の間に、該一対のうちの一方の継手管と他方の継手管とが連結した継手管連結構造を有しており、
前記保護カバーユニットは、使用時に前記防食層から最も近い位置に配置される内層と、該内層よりも該防食層から遠い側に配置される中間層と、該中間層よりも該防食層から遠い側に配置される外層とを有し、これら3層は、それぞれ、緩衝材と、使用時に該緩衝材よりも該防食層から遠い側に配置される保護カバーとを有するとともに、当該層を厚み方向に貫通し且つ固定用ボルトが挿通される挿通孔を前記継手管連結構造に対応する位置に有し、
前記内層は、前記継手管連結構造の前記連結方向の中央を基準として、該継手管連結構造の一方側に対応する第1の内層と、他方側に対応する第2の内層とに分割されており、
前記中間層は、使用時に前記第1の内層及び前記第2の内層の双方に重ねて配置される単一の連続層であり、
前記中間層の前記挿通孔は、前記連結方向に沿って延びる長孔である、保護カバーユニット。
【請求項6】
鋼管矢板の表面に設置された防食層を保護する保護カバーユニットであって、
前記鋼管矢板は、外面に継手管が固定された複数の鋼管本体が、該継手管を介して互いに連結されて構成され、且つ該複数の鋼管本体の連結方向に隣り合う一対の鋼管本体の間に、該一対のうちの一方の継手管と他方の継手管とが連結した継手管連結構造を有しており、
前記保護カバーユニットは、使用時に前記防食層から最も近い位置に配置される内層と、該内層よりも該防食層から遠い側に配置される中間層と、該中間層よりも該防食層から遠い側に配置される外層とを有し、これら3層は、それぞれ、緩衝材と、使用時に該緩衝材よりも該防食層から遠い側に配置される保護カバーとを有するとともに、当該層を厚み方向に貫通し且つ固定用ボルトが挿通される挿通孔を前記継手管連結構造に対応する位置に有し、
前記内層は、前記継手管連結構造の前記連結方向の中央を基準として、該継手管連結構造の一方側に対応する第1の内層と、他方側に対応する第2の内層とに分割されており、
前記中間層は、使用時に前記第1の内層に重ねて配置される第1の中間層と、前記第2の内層に重ねて配置される第2の中間層とに分割されており、
前記中間層の前記挿通孔は、前記連結方向に沿って延びる長孔である、保護カバーユニット。
【請求項7】
前記中間層は、見掛け厚みが部分的に異なっており、
前記中間層における見掛け厚みが相対的に大きい部分は、使用時に前記継手管連結構造に対応する位置に配置される、請求項5又は6に記載の保護カバーユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼管矢板の表面に設置される防食構造及びそれに用いる保護カバーユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
鋼管矢板は、鋼管本体に継手管が溶接されたもので、例えば、複数の鋼管本体が継手管を介して連結された形態で、土留め壁、河川・港湾の護岸壁として使用されている。鋼管矢板には、継手管の形状の相違により、P-P型、P-T型、L-T型等が存在する。特にP-P型の鋼管矢板は、止水壁、橋脚の基礎などで広く利用されている。ここで言う「P-P型」とは、C型継手管どうしの連結構造を指す。前記C型継手管は、鋼管矢板を構成する鋼管本体の軸方向に直交する方向に沿う断面視において、円の一部が切り欠かれた形状(C字形状)をなす継手管である。
【0003】
鋼管矢板のような、海水や河川水に曝された環境下で長期間使用する構造物には、何らかの防食処理を施すのが一般的である。鋼管矢板の防食構造として、鋼管矢板の表面に接触する防食層と、該防食層を被覆する保護カバーとを有するものが知られている(特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-140796号公報
【文献】特開2021-025383号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図13には、従来の鋼管矢板の防食構造の一例である防食構造1Zが示されている。防食構造1Zは、P-P型の鋼管矢板10の表面10aに設置されている。
鋼管矢板10は、外面に継手管(C型継手管)12が固定された複数の鋼管本体11が、継手管12を介して互いに連結されて構成され、且つ複数の鋼管本体11の連結方向Xに隣り合う一対の鋼管本体11,11の間に、該一対のうちの一方の継手管12と他方の継手管12とが連結した継手管連結構造120を有している。防食構造1Zが設置されている鋼管矢板10の表面(被防食面)10aは、鋼管本体11に対応する凸部13と、継手管連結構造120に対応する凹部14とからなる凹凸構造を有している。鋼管矢板10の表面10aでは、凸部13と凹部14とが連結方向Xに交互に配置されており、
図13は、その複数の凹部14のうちの1つを示している。凸部13は、連結方向Xに直交する方向である鉛直方向に延在する畝部であり、凹部14は、同方向に延在する溝部である。
被防食面10aには、複数の凹部14に対応して複数の防食構造1Zが設置されており、複数の防食構造1Zは連結方向Xに連なって配置されている。複数の防食構造1Zは、それぞれ、1つの凹部14(継手管連結構造120)とその両側に位置する一対の凸部13,13(一対の鋼管本体11,11)における該1つの凹部14寄りの部分とに対応している。
防食構造1Zは、継手管連結構造120の連結方向Xの中央部に配置され、継手管連結構造120を構成する継手管12と接触する第1の防食構造90Aと、凹部14の連結方向Xの両側に配置され、鋼管本体11と接触する一対の第2の防食構造90B,90Bとを有している。防食構造90A,90Bは、それぞれ、被防食面10aから近い順に、防食層91、緩衝材92、保護カバー93を有している。防食構造90A,90Bは、継手管12の外面に固定されたボルト94と、ボルト94に螺合されたナット95とによって、被防食面10aに固定されている。防食構造90A,90Bは、それぞれ、当該防食構造を厚み方向に貫通し、ボルト94が挿通される挿通孔(図示せず)を有している。
被防食面10aと防食構造90A,90Bとで囲まれた空間には防食材96が充填されている。
【0006】
鋼管矢板10においては、複数の継手管連結構造120どうしで、当該継手管連結構造120を構成する一対の継手管12,12の位置関係が異なる場合がある。すなわち、鋼管矢板10の設置作業は通常、複数の鋼管本体11をそれぞれ所定の設置予定位置に打設する作業を含むところ、各鋼管本体11の打ち込み精度の誤差に起因して、鋼管矢板10が有する一の継手管連結構造120と他の一の継手管連結構造120とで、継手管12,12の位置関係が異なり得る。具体的に例えば、鋼管矢板10において、一の継手管連結構造120では、
図13に示すように、該連結構造120の連結方向Xに沿う断面視での長軸12Lが連結方向Xに平行であるのに対し、他の一の継手管連結構造120では、
図14に示すように、該長軸12Lが連結方向Xに対して交差する場合がある。このような場合、前者と後者とで、特に継手管連結構造120の周面の形状及び周長が大きく異なり得るため、防食層91を被防食面10aに密着させて所定の防食効果を奏せるようにするためには、防食構造1Zにおける継手管連結構造120に対応する部分(第1の防食構造90A)の形状及び寸法を、前者と後者とで異ならせる必要がある。
このような鋼管矢板における継手管位置の不均一現象は、特に鋼管矢板10の如き、P-P型の鋼管矢板に多く見られる。その理由は、P-P型の鋼管矢板における継手管連結構造が、継手管どうしの連結が比較的緩いC型継手管によって構成されているためである。C型継手管は、継手管12に代表されるように、周方向の一部に切り欠き部を有し、一対のC型継手管による継手管連結構造は、一方の切り欠き部と他方の切り欠き部との嵌合によって構成されるところ、その嵌合部では、一方のC型継手管と他方のC型継手管とが相互に幾分の余裕を持って連結していることが多い。
【0007】
前述した、鋼管矢板における継手管位置の不均一現象の対策として、形状及び/又は寸法が互いに異なる複数種類の防食構造を予め用意しておくことが考えられる。その場合は、例えば防食構造1Zの施工現場で、予め用意した複数種類の防食構造1Zの中から当該継手管連結構造120に適合するものを選択するとともに、その選択した防食構造1Zに、当該継手管連結構造120に固定されたボルト94が挿通可能な挿通孔を穿設する。
図14に示す形態では、第1の防食構造90Aとして、形状及び寸法が互いに異なる3種類の防食構造90A1,90A2,90A3が予め用意されており、この3種類の中から当該継手管連結構造120に適合するものを選択して使用するようになされている。しかしながらこのように、予め複数種類の防食構造を用意し、そのうちの一部のみを選択して使用するとなると、選択されなかった防食構造が無駄になる。また、選択した防食構造については、それが適用される継手管連結構造に適合させるための作業、具体的には例えばスタッドボルトの挿通孔の穿設作業等が必要であるため、施工期間の長期化、施工コストの高騰等の不都合を招くおそれがある。
このような、防食対象である鋼管矢板の構造の不均一性に起因する問題を解決し、施工性及び防食効果に優れる防食技術は未だ提供されていない。
【0008】
本発明の課題は、鋼管矢板の構造の不均一性に起因する問題を解決し、施工性及び防食効果に優れる防食技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、鋼管矢板の表面に設置される防食構造であって、
前記鋼管矢板は、外面に継手管が固定された複数の鋼管本体が、該継手管を介して互いに連結されて構成され、且つ該複数の鋼管本体の連結方向に隣り合う一対の鋼管本体の間に、該一対のうちの一方の継手管と他方の継手管とが連結した継手管連結構造を有しており、
前記鋼管矢板の表面に接触する防食層と、該防食層の該鋼管矢板との接触面側とは反対側に位置する保護カバーユニットと、該保護カバーユニットを該鋼管矢板に固定する固定手段とを有し、
前記固定手段は、前記継手管連結構造の外面に固定されたボルトと、該ボルトとともに前記保護カバーユニットを締結するナットとを有し、
前記保護カバーユニットは、前記防食層から近い順に、内層、中間層及び外層を有し、これら3層は、それぞれ、緩衝材と、該緩衝材よりも該防食層から遠い側に位置する保護カバーとを有するとともに、当該層を厚み方向に貫通し且つ前記ボルトが挿通される挿通孔を前記継手管連結構造に対応する位置に有し、
前記中間層の前記挿通孔は、前記連結方向に沿って延びる長孔である、
防食構造である。
【0010】
また本発明は、鋼管矢板の表面に設置された防食層を保護する保護カバーユニットであって、
前記鋼管矢板は、外面に継手管が固定された複数の鋼管本体が、該継手管を介して互いに連結されて構成され、且つ該複数の鋼管本体の連結方向に隣り合う一対の鋼管本体の間に、該一対のうちの一方の継手管と他方の継手管とが連結した継手管連結構造を有しており、
前記保護カバーユニットは、使用時に前記防食層から最も近い位置に配置される内層と、該内層よりも該防食層から遠い側に配置される中間層と、該中間層よりも該防食層から遠い側に配置される外層とを有し、これら3層は、それぞれ、緩衝材と、使用時に該緩衝材よりも該防食層から遠い側に配置される保護カバーとを有するとともに、当該層を厚み方向に貫通し且つ固定用ボルトが挿通される挿通孔を前記継手管連結構造に対応する位置に有し、
前記中間層の前記挿通孔は、前記連結方向に沿って延びる長孔である、
保護カバーユニットである。
【0011】
また本発明は、鋼管矢板の表面に設置された防食層を保護する保護カバーユニットと、該保護カバーユニットを該鋼管矢板に固定する固定手段とを含む保護カバーユニットセットであって、
前記鋼管矢板は、外面に継手管が固定された複数の鋼管本体が、該継手管を介して互いに連結されて構成され、且つ該複数の鋼管本体の連結方向に隣り合う一対の鋼管本体の間に、該一対のうちの一方の継手管と他方の継手管とが連結した継手管連結構造を有しており、
前記固定手段は、使用時に前記継手管連結構造の外面に固定されるボルトと、該ボルトとともに前記保護カバーユニットを締結するナットとを有し、
前記保護カバーユニットは、使用時に前記防食層から最も近い位置に配置される内層と、該内層よりも該防食層から遠い側に配置される中間層と、該中間層よりも該防食層から遠い側に配置される外層とを有し、これら3層は、それぞれ、緩衝材と、使用時に該緩衝材よりも該防食層から遠い側に配置される保護カバーとを有するとともに、当該層を厚み方向に貫通し且つ前記ボルトが挿通される挿通孔を前記継手管連結構造に対応する位置に有し、
前記中間層の前記挿通孔は、前記連結方向に沿って延びる長孔である、
保護カバーユニットセットである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、鋼管矢板の構造の不均一性に起因する問題を解決し、施工性及び防食効果に優れる防食技術(防食構造、保護カバーユニット、保護カバーユニットセット)が提供される。
本発明の防食構造は、防食対象の鋼管矢板において継手管連結構造を構成する継手管どうしの相対位置が施工誤差によって不均一となっている場合でも、鋼管矢板に対する防食層の密着性を確保して優れた防食効果を発現し得る。そのため、本発明の防食構造を鋼管矢板に適用するに際しては、斯かる継手管位置の不均一現象に備えて、使用されない可能性のある余分な防食構造を予め用意する必要がなく、省資源に役立つととともにコスト低減が図られ、また、施工現場で保護カバーユニットに固定用ボルトの挿通孔を穿設する作業も不要であるため、施工期間の短縮が図られる。加えて、本発明の防食構造は、被防食面との間に隙間が生じにくいため、該隙間に防食材を充填する作業を軽減することができ、設置作業が容易である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本発明の防食構造の使用例を模式的に示す正面図であり、鋼管矢板の表面に本発明の防食構造の一実施形態が設置された状態を示す図である。
【
図3】
図3は、
図2の防食構造の一部を模式的に示す分解斜視図である。
【
図4】
図4は、
図1のI-I線断面(継手管の軸方向と直交する方向に沿う断面)を模式的に示す断面図である。
【
図5】
図5は、
図4に示す防食構造の一部の模式的な分解断面図である。
【
図6】
図6は、
図5に示す内層の図であり、
図6(a)は、該内層の
図1のI-I線断面図、
図6(b)は、該内層の斜視図である。
【
図7】
図7は、
図5に示す中間層の図であり、
図7(a)は、該中間層の
図1のI-I線断面拡大断面図、
図7(b)は、該中間層の斜視図である。
【
図8】
図8は、
図5に示す外層の図であり、
図8(a)は、該外層の
図1のI-I線断面拡大断面図、
図8(b)は、該外層の斜視図である。
【
図9】
図9は、
図1のII-II線断面(継手管の軸方向と直交する方向に沿う断面)を模式的に示す断面図である。
【
図10】
図10は、本発明に係る中間層の他の実施形態を示す図であり、
図10(a)は、該実施形態の厚み方向且つ鋼管本体連結方向に沿う断面を模式的に示す断面図、
図10(b)は、該実施形態の模式的な正面図、
図10(c)は、該実施形態の鋼管矢板への設置前後の様子を模式的に示す断面図である。
【
図11】
図11は、本発明に係る中間層の更に他の実施形態を示す図であり、
図11(a)は、該実施形態の厚み方向且つ鋼管本体連結方向に沿う断面を模式的に示す断面図、
図11(b)は、該実施形態の模式的な正面図、
図11(c)は、該実施形態の鋼管矢板への設置前後の様子を模式的に示す断面図である。
【
図12】
図12(a)~
図12(d)は、それぞれ、本発明に係る中間層の更に他の実施形態の鋼管矢板への設置前後の様子を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明をその好ましい実施形態に基づき図面を参照して説明する。なお、以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には、同一又は類似の符号を付している。図面は基本的に模式的なものであり、各寸法の比率などは現実のものとは異なる場合がある。
【0015】
図1及び
図2には、本発明の防食構造の一実施形態である防食構造1が示されている。防食構造1は、鋼管矢板10の表面10aに設置される。すなわち表面10aは被防食面である。鋼管矢板10は、典型的には、海岸や河川の岸辺に設置された護岸を構成し、その被防食面10aは海洋や河川に面しているため、厳しい腐食条件に晒されている。本発明の防食構造は、このような腐食されやすい鋼管矢板の表面を防食するために用いられる。
【0016】
鋼管矢板10については、前述したとおりである。すなわち鋼管矢板10は、外面に継手管(C型継手管)12が固定された複数の鋼管本体11が、継手管12を介して互いに連結されて構成され、且つ複数の鋼管本体11の連結方向Xに隣り合う一対の鋼管本体11,11の間に、該一対のうちの一方の継手管12と他方の継手管12とが連結した継手管連結構造120を有している。
本実施形態では、鋼管矢板10の被防食面10aは、
図2に示すように、鋼管本体11に対応する凸部13と、継手管12(継手管連結構造120)に対応する凹部14とからなる凹凸構造を有している。凸部13と凹部14とは鋼管本体11の連結方向Xに交互に配置されている。連結方向Xは水平方向に一致し、連結方向Xに直交する方向Yは鉛直方向に一致する。鋼管本体11及び継手管12それぞれの軸方向(長手方向)は方向Yに一致する。鋼管矢板10については、前述の
図13及び
図14に基づく説明が適宜適用される。
【0017】
防食構造1は、
図3~
図5に示すように、鋼管矢板10の被防食面10aに接触する防食層2と、防食層2における鋼管矢板10側とは反対側に位置する保護カバーユニット3と、保護カバーユニット3を鋼管矢板10に固定する固定手段4とを有している。
【0018】
本実施形態では、
図1に示すように、鋼管矢板10の被防食面10aに、複数の凹部14に対応して複数の防食構造1が連結方向Xに連なって配置されている。複数の防食構造1は、それぞれ、1つの凹部14(継手管連結構造120)とその両側に位置する一対の凸部13,13(一対の鋼管本体11,11)それぞれにおける該1つの凹部14寄りの部分とに対応している。
【0019】
防食層2は、防食構造1が奏する防食機能の主体をなすもので、防食材を主体として形成され、典型的には、シート状、ペースト状又はテープ状の防食材からなる。防食層2は単層構造でもよく、複数層が積層された多層構造でもよい。
防食層2を形成する防食材としては、この種の被覆防食体において防食材として使用可能なものを特に制限無く用いることができ、例えば、ペトロラタム系防食材、ウレタン系防食材、水中硬化形エポキシ系樹脂等が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの防食材の中でも特にペトロラタム系防食材は、約30年もの長期間にわたって優れた防食効果を発現可能である上に、補修、更新が比較的容易であるため、本発明に係る防食層として好ましい。
防食層2の厚みは、これを形成する防食材の種類等によって適宜設定すればよく特に限定されない。例えば、防食層2がペトロラタム系防食材を含む場合、防食層2の厚み(防食層2が多層構造の場合は該多層構造の厚み)は、好ましくは2mm以上である。
【0020】
固定手段4は、
図3及び
図4に示すように、継手管連結構造120(継手管12)の外面に固定されたボルト41と、ボルト41とともに保護カバーユニット3を締結するナット45とを有している。
本実施形態では、複数のボルト41は何れもスタッドボルトであり、継手管連結構造120を構成する一対の継手管12,12に対応して連結方向Xに一対が間欠配置されているとともに、方向Yに複数が間欠配置されている。
ボルト41及びナット45の構成材料は特に制限されず、金属、樹脂等を用いることができる。ボルト41及びナット45は、典型的には、金属製である。
【0021】
本実施形態では、固定手段4は更に、支持基材40、固定板43、ワッシャー(平座金)44、ボルトキャップ46及びリベット47を有している。支持基材40は継手管12の外面に固定され、固定板43及びワッシャー44は、支持基材40とナット45との間、より具体的には保護カバーユニット3とナット45との間において、ボルト41が挿通された状態で配置される。ワッシャー44は、平面視環状をなし、固定板43とナット45との間に配置される。ボルトキャップ46は、このボルトキャップ46内に充填されるエポキシ樹脂、ボルト41の固定板43からの突出部並びにワッシャー44及びナット45を一体的に被覆して、その被覆対象物を物理的に保護する。リベット47は、保護カバーユニット3の後述する外層33において、連結方向Xの両端部のうち、鋼管本体11に対応する側の端部どうしを重ね合わせて固定するためのもので、
図3に示すように、外層33(33A,33B)の方向Yに延びる縁部に穿設された貫通孔に挿通されて使用される。なお、
図3では、図面の簡略化のため、1つの継手管連結構造120とその両側に位置する一対の鋼管本体11,11それぞれにおける該1つの継手管連結構造120寄りの部分に設置する防食構造についてだけ図示し、他の部分に設置する防食構造の図示を省略していることに留意されたい。
【0022】
支持基材40は、ボルト41を継手管12に固定する固定具として機能するもので、図示の形態では、方向Yに長い平面視帯状の金属製平板部材からなり、一方の面が継手管12の外面に固定され、他方の面に複数のボルト41が方向Yに間欠配置されている。複数のボルト41は、それぞれ、軸方向の一端が圧入又は溶接により支持基材40に固定されている。
【0023】
固定板43は、保護カバーユニット3の外面に圧着した状態で配置されることにより、保護カバーユニット3の鋼管矢板10に対する密着性、特に継手管12(鋼管矢板10の被防食面10aの凹部14)に対する密着性を高める機能を発揮する。本実施形態では、固定板43は方向Yに長い平面視帯状の平板部材からなり、保護カバーユニット3を構成する外層33の一部である継手管対応部334の外面に接触している。
固定板43の構成材料は特に制限されず、金属、樹脂等を用いることができるが、固定板43が接触する部材(本実施形態では外層33の保護カバー332)が耐食性金属から構成されている場合は、耐食性金属との接触による腐食(異種金属接触腐食)を防止する観点から、固定板43は絶縁性材料から構成されることが好ましい。絶縁性材料としては、例えば、フッ素樹脂、繊維強化プラスチック(FRP)、塩化ビニル樹脂等の樹脂製材料が挙げられる。
固定板43は、前記機能を十分に発揮させる観点から、曲げ剛性に優れていることが好ましく、その観点から、FRP等の樹脂からなる板状部材であることが好ましい。前記板状部材からなる固定板43の厚みは特に制限されないが、好ましくは5~20mmである。固定板43の厚みが小さすぎると、十分な曲げ剛性が得られないおそれがあり、固定板43の厚みが大きすぎると、固定板43の重量増加による施工性の低下を招くおそれがある。
【0024】
ボルトキャップ46は、ボルト41、ナット45等の、固定手段4における保護カバーユニット3の外面側(鋼管矢板10側とは反対側)に配置される部材を保護する役割を担うものである。ボルトキャップ46の構成材料としては、耐衝撃性を有する樹脂が好ましく、例えば、ポリアセタール樹脂、ポリカーボネート、ポリアミド樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)共重合樹脂が挙げられる。
【0025】
本実施形態では、防食構造1は絶縁処理が施されている。本実施形態では、ボルト41が挿通される金属製部材(保護カバー312,322,332、固定板43等)が耐食性金属から構成され、ボルト41が非耐食性金属から構成されているところ、このような異種金属どうしが接触すると、その接触部を中心として腐食が発生し得る。そこで本実施形態では、防食構造1における異種金属どうしの接触部に、フッ素樹脂、FRP、塩化ビニル樹脂等の絶縁性材料からなる絶縁性部材を配置することで、防食構造1に絶縁処理を施している。具体的には本実施形態では、
図3及び
図4に示すように、前記絶縁性部材として絶縁スリーブ42を採用し、保護カバー312,322,332の挿通孔310,320,330及び固定板43の挿通孔430に絶縁スリーブ42を配置するとともに、該絶縁スリーブ42にボルト41を挿通させている。
【0026】
以下、防食構造1の主たる特徴の1つである保護カバーユニット3について説明する。
図3~
図5には、保護カバーユニット3の全体構成が示され、
図6~
図8には、保護カバーユニット3の主要な3つの構成要素(内層、中間層、外層)が個別に示されている。
保護カバーユニット3は、防食層2から近い順に、内層31、中間層32及び外層33を有している。前記3層31~33は、それぞれ、緩衝材と、該緩衝材よりも防食層2から遠い側に位置する保護カバーとを有するとともに、当該層31、32又は33を厚み方向に貫通し且つボルト41が挿通される挿通孔を継手管連結構造120に対応する位置に有している。
【0027】
本実施形態では、前記3層31~33は、それぞれ、前記の緩衝材及び保護カバーに加えて更に、防食層を有している。前記3層31~33が有する防食層は、防食層2と同様に構成することができる。前記3層31~33において、当該層を構成する各要素(緩衝材、保護カバー、防食層)どうしは一体となっている。
【0028】
本実施形態では、内層31は、
図4、
図5及び
図6に示すように、継手管連結構造120の連結方向Xの中央を基準として、継手管連結構造120の一方側に対応する第1の内層31Aと、他方側に対応する第2の内層31Bとに分割されている。両内層31A,31Bは互いに線対称の関係にある。
両内層31A,31Bは、それぞれ、継手管連結構造120を構成する一対の継手管12,12のうちの一方に対応する継手管対応部314と、該一方の継手管12に隣接する鋼管本体11に対応する鋼管本体対応部315とを有し、使用時には
図4に示すように、該一方の継手管12と該鋼管本体11とに跨って配置される。
継手管対応部314及び鋼管本体対応部315は、それぞれ、防食層2から近い順に、防食層313、緩衝材311及び保護カバー312を有している。本実施形態では、防食層313は、緩衝材311及び保護カバー312それぞれの方向Yに沿う縁部から延出しており、緩衝材311及び保護カバー312に比べて、被防食面10aとの重なり部の面積が大きい。
【0029】
本実施形態では前述のとおり、内層31が互いに分離独立した複数の要素(内層31A,31B)から構成されているのに対し、中間層32は、
図4、
図5及び
図7に示すように、第1の内層31A及び第2の内層31Bの双方に重なる単一の連続層であり、使用時には、両内層31A,31Bの双方に跨って配置される。すなわち中間層32は、使用時には
図4に示すように、継手管12(継手管連結構造120)のみに重ねて配置され、鋼管本体11とは重ならない。中間層32は、防食層2から近い順に、防食層323、緩衝材321及び保護カバー322を有している。
【0030】
本実施形態では、外層33は、内層31と同様に、互いに分離独立した複数の要素から構成されている。すなわち本実施形態では、外層33は、
図4、
図5及び
図8に示すように、継手管連結構造120の連結方向Xの中央を基準として、継手管連結構造120の一方側に対応する第1の外層33Aと、他方側に対応する第2の外層33Bとに分割されている。両外層33A,33Bは互いに線対称の関係にある。
両外層33A,33Bは、それぞれ、継手管連結構造120を構成する一対の継手管12,12のうちの一方に対応する継手管対応部334と、該一方の継手管12に隣接する鋼管本体11に対応する鋼管本体対応部335とを有し、使用時には
図4に示すように、該一方の継手管12と該鋼管本体11とに跨って配置される。
鋼管本体対応部335は、防食層2から近い順に、防食層333、緩衝材331及び保護カバー332を有している。一方、継手管対応部334は、保護カバー332のみからなり、防食層333及び緩衝材331を有してない。継手管対応部334は主として、外層33(33A,33B)を鋼管矢板10に固定する固定手段として機能する。
【0031】
緩衝材311,321,331は、前記3層31~33において防食層と保護カバーとの間に配置されることにより、該防食層の被防食面10aに対する密着性を高める機能を発揮する。緩衝材311,321,331としては、柔軟性及び弾力性に優れ、前記機能を発揮し得るものが好ましく、また、被防食面10aが海洋環境に暴露されるものである場合には、更に吸水性を有するものが好ましい。斯かる観点から、緩衝材311,321,331としては、三次元状に連結する骨格を有し、該骨格により三次元状に連結する気孔が形成される三次元網目状構造体を有する連通孔樹脂フォームが好ましい。前記連通孔樹脂フォームとしては、例えば、発泡ポリエチレン、発泡ポリウレタンなどが挙げられる。緩衝材311,321,331の厚みは特に制限されないが、好ましくは5~20mmである。
【0032】
保護カバー312,322,332は、前記3層31~33において緩衝材を保護する役割を担うものである。保護カバー312,322,332としては、この種の防食構造において保護材として使用可能なものを特に制限無く用いることができ、例えば、強化材としてガラス繊維を用いたGFRP製保護カバー;ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリプロピレン樹脂、塩化ビニル樹脂などのプラスチックからなる保護カバー;ステンレス、チタンなどの耐食性金属からなる保護カバーが挙げられる。保護カバーがチタン製の板状部材である場合、その板状部材の厚みは、好ましくは0.4~2.0mmである。
【0033】
前述したように、保護カバーユニット3を構成する前記3層31~33は、それぞれ、当該層31、32又は33を厚み方向に貫通し且つボルト41が挿通される挿通孔を、継手管連結構造120に対応する位置、すなわち
図1に示す如き防食構造1の正面視において継手管連結構造120と重なる位置(継手管連結構造120をその構成部材である継手管12の半径方向に投影した場合の投影像と重なる位置)に有している。前記挿通孔は、内層31(31A,31B)では挿通孔310、中間層32では挿通孔320、外層33(33A,33B)では挿通孔330である。
挿通孔310,320,330は、それぞれ
図3に示すように、継手管連結構造120を構成する一対の継手管12,12に対応して連結方向Xに一対が間欠配置されているとともに、方向Yに複数が間欠配置されている。
挿通孔310,320,330の前記3層31~33における位置は、継手管連結構造120に固定されたボルト41が挿通可能な位置であることを前提として特に制限されない。本実施形態では、前述したように、内層31及び外層33は、使用時に継手管12に対応する部分(継手管対応部314,334)と鋼管本体11に対応する部分(鋼管本体対応部315,335)を有しているので、挿通孔310,330は前者に設けられる。
図6(b)を参照して、内層31(31A,31B)の継手管対応部314において、挿通孔310は、緩衝材311及び保護カバー312の積層構造に設けられていてもよい。
【0034】
防食構造1は、中間層32の挿通孔320が、連結方向Xに沿って延びる長孔である点で特徴付けられる。以下、中間層32の挿通孔320を長孔320とも言う。換言すれば、防食構造1は、長孔320の長軸方向の長さL1(
図3、
図7参照)が、ボルト41の外径L2(
図5参照)に比べて長い点で特徴付けられる。
【0035】
本実施形態では、長孔320は閉じた形状を有している。換言すれば、本実施形態の長孔320は、中間層32の輪郭線よりも内方に位置し、開放端を有してない。また、本実施形態の長孔320は、平面視において楕円形状又は角部が丸みを帯びた長方形形状を有し、その長軸方向は連結方向X(水平方向)に一致している。
本発明では、長孔320の形状は特に制限されず、例えば、長孔320の長軸方向(連結方向X)の一端又は他端は開放端であってもよく、すなわち長孔320の輪郭線は、連結方向Xの一方側又は他方側に向かって凸のU字状であってもよい。
【0036】
前述したように、鋼管矢板10においては、その施工時の誤差に起因して、複数の継手管連結構造120どうしで、当該継手管連結構造120を構成する一対の継手管12,12の位置関係が異なる場合がある。具体的に例えば、鋼管矢板10において、一の継手管連結構造120では、
図4に示すように、該連結構造120の連結方向Xに沿う断面視での長軸12Lが連結方向Xに平行であるのに対し、他の一の継手管連結構造120では、
図9に示すように、該長軸12Lが連結方向Xに対して交差する場合がある。このような場合、防食層2を被防食面10aに密着させて所定の防食効果を奏せるようにするためには、防食構造における継手管連結構造120に対応する部分の形状及び寸法を、一の継手管連結構造120と他の一の継手管連結構造120とで異ならせる必要がある。このような、鋼管矢板における継手管位置の不均一現象の対策として、
図14に示すように、形状及び寸法が互いに異なる複数種類の防食構造を予め用意する方法が考えられるが、この方法には前述したとおり、施工期間の長期化、施工コストの高騰等の問題がある。
【0037】
これに対し、防食構造1に代表される本発明の防食構造は前述したとおり、
図3~
図9に示すように、防食層2の外面側に配置される保護カバーユニット3が、継手管連結構造120に対応する位置に、該継手管連結構造120の外面に固定されたボルト41が挿通される前記3層31~33の積層構造を有し、且つ該積層構造の中間層32が有するボルト41の挿通孔320が、連結方向Xに沿って延びる長孔320であるため、中間層32は、長孔320にボルト41が挿通された状態でも、長孔320におけるボルト41が挿通されていない部分の連結方向Xの長さに相当する分、移動可能である。つまり、保護カバーユニット3の中間層32は、連結方向Xに若干移動可能に固定される。そのため、仮に、防食対象の鋼管矢板10の複数の継手管連結構造120どうしで、当該継手管連結構造120を構成する一対の継手管12,12の位置関係が施工誤差等により均一ではなく、
図4及び
図9に示す如くに違いがあったとしても、その違いは、防食構造1の設置の際に、継手管連結構造120に対応して配置された中間層32が、当該継手管連結構造120の外面に追従して連結方向Xに適宜変位することで吸収される。したがって本発明の防食構造によれば、鋼管矢板における継手管位置の不均一現象の有無にかかわらず、保護カバーユニット3が継手管連結構造120(鋼管矢板10の凹部14)の外面すなわち被防食面10aに追従し、被防食面10aと保護カバーユニット3との間に配置された防食層2が被防食面10aに密着する。また、保護カバーユニット3が、前記3層31~33の積層構造、特に内層31(31A,31B)と中間層32との積層構造を含んで構成されていることも、防食層2の被防食面10aに対する密着性を高める要素となっている。
【0038】
特に本実施形態では、保護カバーユニット3を構成する前記3層のうち、長孔320を有する中間層32が単一の部材からなるのに対し、中間層32を挟持する内層31及び外層33が、それぞれ、継手管連結構造120の連結方向Xの中央を基準として、一方側と他方側とに分割されているため、保護カバーユニット3の鋼管本体11及び継手管12(継手管連結構造120)の双方に対する追従性に優れ、防食層2の被防食面10aに対する密着性が一層高められている。
【0039】
また本実施形態では、鋼管矢板10の被防食面10aに、複数の継手管連結構造120に対応して複数の防食構造1が連結方向Xに連なって配置されているところ、防食構造1は前述したとおり、鋼管矢板における継手管位置の不均一現象に対応したものであるから、斯かる不均一現象に備えて予め、形状及び寸法が互いに異なる複数種類の防食構造1を用意しておく必要はなく、所定の形状及び寸法を有する1種類の防食構造1を複数用意すれば足りる。このように、本発明の防食構造は施工性にも優れる。
したがって、鋼管矢板10に適用された複数の防食構造1どうしは、未使用状態(被防食面10aに配置する前の状態)において、少なくとも保護カバーユニット3の形状及び寸法が互いに同じである。
【0040】
また本実施形態では、
図4及び
図9に示すように、被防食面10aと防食構造1とで囲まれた空間に防食材96が充填されている。このような、被防食面と防食構造との隙間に防食材を充填する技術は、
図13及び
図14に示す如き従来の防食構造でも採用されているが、防食構造1に代表される本発明の防食構造は、前記の特徴的な構成により、被防食面10aとの間に隙間が生じにくいため、従来のこの種の防食構造に比べて防食材96の使用量を低減することができる。したがって本発明の防食構造によれば、防食材96の充填作業が軽減され、設置作業を低コストで効率よく行うことができる。
【0041】
前述した中間層32の長孔320の長さL1(
図3、
図7参照)は、鋼管矢板がP-P型である場合、継手管連結構造120の連結方向Xに沿う断面視での長軸12L(
図4参照)の長さ及び外層33の継手管対応部334の連結方向Xに沿う断面視での長さとのバランスの観点から、好ましくは75mm以下、より好ましくは65mm以下である。
【0042】
なお、内層31の挿通孔310、外層33の挿通孔330等の、防食構造1における挿通孔320以外の他のボルト41の挿通孔(以下、「他のボルト挿通孔」とも言う。)は長孔ではなく、円孔である(
図3、
図6(b)及び
図8(b)参照)。また、他のボルト挿通孔の孔径は、通常の円孔のボルト挿通孔と同様に、挿通されるボルトの外径とほぼ同じである。他のボルト挿通孔としては、例えば、JISB1001-1985において規定されているボルト41の呼び径に対応するボルト穴径(1~3級)を適用することができる。
【0043】
本実施形態では、中間層32は、
図7等に示すように、見掛け厚みが部分的に異なっており、見掛け厚みが相対的に大きい部分(以下、「高厚み部」とも言う。)324と、見掛け厚みが相対的に小さい部分(以下、「低厚み部」とも言う。)325とを有している。中間層32は、連結方向Xの中央部が高厚み部324であり、該中央部の連結方向Xの両側が低厚み部325である。
ここで言う「見掛け厚み」とは、中間層32の一方の面の頂部(最も突出した部位)と他方の面の頂部との間の厚み方向に沿う長さを指し、斯かる頂部どうしの間に空間部が存在する場合は、その空間部の厚みを含む。
図7に示す中間層32は、一方の面の頂部と他方の面の頂部との間に空間部が存在していないので、中間層32の見掛け厚みは、中間層32の中実部分の厚み(実質厚み)と同じであるが、例えば、後述する
図12に示す中間層36~39は、一方の面(被防食面との対向面とは反対側の面)に溝329すなわち空間部が形成されているので、中間層36~39の溝329の形成部位の見掛け厚みは、溝329の深さを含む。
そして本実施形態では、
図4、
図5及び
図9に示すように、中間層32における高厚み部324が、継手管連結構造120に対応する位置に配置されている。より具体的には、高厚み部324は、継手管連結構造120の外面に固定された一対のボルト41,41の間に配置されている。継手管連結構造120の外面(周面)における前記一対のボルト41,41の間は、該一対のボルト41,41の固定位置よりも窪んだ窪み部であり、防食層23が接触しにくい部分である。このような被防食面10aの窪み部に中間層32の高厚み部324が配置されることで、防食層2の被防食面10aへの密着性が一層向上し得る。特に本実施形態の中間層32では、高厚み部324は、低厚み部325に比べて緩衝材321の実質厚みが大きいことで見掛け厚みも大きいため、クッション性に優れ、防食層2を被防食面10aに密着させる効果に優れる。
【0044】
本発明の防食構造の鋼管矢板への設置は、常法に従って行うことができる。例えば、防食構造1の鋼管矢板10の被防食面10aへの設置は、以下の手順で実施することができる。
まず、鋼管矢板10の被防食面10aに付着した海生生物を除去し、被防食面10aの素地調整の程度がISO St2以上となるように素地調整を行う。
次に、被防食面10aにおける複数の継手管連結構造120それぞれの外面に、ボルト41が固定された一対の支持基材40,40を溶接により固定する。その後、ボルト41を絶縁スリーブ42で被覆することにより、ボルト41に絶縁処理を施す。
次に、被防食面10aにペースト状のペトロラタム系防食材等の防食材を直接塗布する等して、被防食面10aに防食層2を設置する。なお、防食層2の設置方法はこれに制限されず、例えば、保護カバーユニット3の内面(被防食面10aとの対向面)に予め形成しておいてもよい。必要に応じ、被防食面10a、特に被防食面10aにおける保護カバーユニット3との間に隙間が生じやすい部位に、パテ状、テープ状又はシート状の防食材96を配置する。
次に、被防食面10aに保護カバーユニット3を設置する。具体的には、被防食面10aに固定済みのボルト41を、内層31(31A,31B)の挿通孔310、中間層32の挿通孔(長孔)320、外層33(外層33A,33B)の挿通孔330に順次挿通させる。この手順で保護カバーユニット3を設置することで、防食構造1の所定の効果が一層確実に奏されるようになり、防食層2の被防食面10aに対する密着性を一層確実に確保し得る。
次に、固定板43の挿通孔430にボルト41を挿通させて、固定板43を保護カバーユニット3の外層33(継手管対応部334)の外面に重ねた後、ボルト41にワッシャー44を挿通させ、ナット45を螺合し、ボルト41の先端部にボルトキャップ46を被せる。また、外層33(33A,33B)の方向Yに延びる縁部に穿設された貫通孔にリベット47を挿通させる。
こうして、鋼管矢板10の被防食面10aに防食構造1を設置することができる。
【0045】
図10~
図12には、本発明の防食構造の他の実施形態が示されている。後述する実施形態については、前述した防食構造1と異なる構成部分を主として説明し、同様の構成部分は同一の符号を付して説明を省略する。特に説明しない構成部分は、防食構造1についての説明が適宜適用される。
【0046】
図10に示す中間層34は、互いに分離独立した複数の要素から構成されている点で、単一の要素から構成される前述の中間層32(
図7等参照)と異なる。すなわち中間層34は、継手管連結構造120の連結方向Xの中央を基準として、継手管連結構造120の一方側に対応する第1の中間層34Aと、他方側に対応する第2の中間層34Bとに分割されている。
両中間層34A,34Bは、それぞれ、
図10(a)及び(b)に示すように、防食層2から近い順に、緩衝材321及び保護カバー322を有するとともに、当該中間層34A,34Bを厚み方向に貫通する長孔320を有する。両中間層34A,34Bは、それぞれ中間層32と同様に、防食層2から最も近い位置に防食層を有していてもよい。
そして、
図10に示す形態では、
図10(c)に示すように、内層31は、継手管連結構造120の連結方向Xの中央を基準として、継手管連結構造120の一方側に対応する第1の内層31Aと、他方側に対応する第2の内層31Bとに分割されているところ、第1の中間層34Aは使用時に第1の内層31Aに重ねて配置され、第2の中間層34Bは、使用時に第2の内層31Bに重ねて配置される。
図10に示す形態では、両中間層34A,34Bは、それぞれ、高厚み部324と低厚み部325とを有しているところ、使用時には
図10(c)に示すように、両中間層34A,34Bそれぞれの高厚み部324が、継手管連結構造120の外面に固定された一対のボルト41,41の間(継手管連結構造120の外面の窪み部)に位置するように、内層31(31A,31B)に重ねて配置され固定される。その際、第1の中間層34Aの高厚み部324における第2の中間層34B寄りの縁部と、第2の中間層34Bの高厚み部324における第1の中間層34A寄りの縁部とが重ね合わされた状態で固定される。つまり両中間層34A,34Bは、それぞれ、使用時に他方と重ね合わされる部分(以下、「被重なり部」とも言う。)326を有し、且つ各被重なり部326が高厚み部324を含んでいる。両中間層34A,34Bの高厚み部324は、柔軟性及び弾力性を有する緩衝材321を含んで構成されているので、このように互いに重ね合わせた状態で固定することができる。両中間層34A,34Bどうしの固定には、必要に応じ、リベット等の、ボルト41以外の他の固定手段を用いてもよい。
【0047】
図11に示す中間層35は、
図10に示す中間層34と同様に、継手管連結構造120の連結方向Xの中央を基準として、継手管連結構造120の一方側に対応する第1の中間層35Aと、他方側に対応する第2の中間層35Bとに分割されているとともに、両中間層35A,35Bは、それぞれ、被重なり部326を有しているところ、両中間層35A,35Bの被重なり部326のうちの一方のみが高厚み部324を含んでいる点で、双方が高厚み部324を含んでいる中間層34と異なる。すなわち、第1の中間層35Aの被重なり部326は、少なくとも緩衝材321及び保護カバー322を含む高厚み部324であるのに対し、第2の中間層35Bの被重なり部326は、保護カバー322を含み緩衝材321を含まない低厚み部325である。
なお、両中間層35A,35Bは、それぞれ、被重なり部326を含む任意の部位における、防食層2から最も近い位置に、防食層を有していてもよい。例えば、第2の中間層35Bの被重なり部326は、保護カバー322の内面側(内層31との対向面側)に配置された防食層を有していてもよい。
中間層35の使用時には
図11(c)に示すように、第1の中間層35Aの被重なり部326である高厚み部324と、第2の中間層35Bの被重なり部326である低厚み部325とが、継手管連結構造120の外面に固定された一対のボルト41,41の間にて互いに重なり合うように、両中間層35A,35Bが内層31(31A,31B)の外面上に固定される。その際、両中間層35A,35Bの被重なり部326どうしの重なり部では、緩衝材321を含まず被重なり部326の厚みが相対的に小さい第2の中間層35Bの被重なり部326が、外面側(被防食面10aから相対的に遠い側)とされる。両中間層35A,35Bの被重なり部326は、それぞれ、保護カバー322を含み、使用時には両者の保護カバー322どうしが重なり合うので、海水等が保護カバー322の内側に侵入する不都合が一層確実に防止され得る。
図11に示す形態では、
図11(c)に示すように、両中間層35A,35Bの被重なり部326どうしが重ね合わされた状態でリベット327により固定されるところ、第2の中間層35Bの被重なり部326を構成する保護カバー322には、
図11(a)及び(b)に示すように、リベット327が挿通される挿通孔328が穿設されている。
【0048】
図12に示す中間層36~39は何れも、第1の内層31A及び第2の内層31Bの双方に重なる単一の連続層であり、且つ見掛け厚みが部分的に異なっていて高厚み部324及び低厚み部325を有し、使用時に高厚み部324が継手管連結構造120に対応する位置に配置される点で、前述の中間層32(
図7等参照)と共通する。
中間層36~39は何れも、保護カバー322の外面(内層31との対向面とは反対側の面)に溝329が形成されている点で特徴付けられる。溝329は、中間層36~39の連結方向Xの中央部に形成され、方向Yに延在している。溝329は、中間層36~39を鋼管矢板10に適切に設置した場合に、継手管連結構造120の外面における一対のボルト41,41の間(一対のボルト41,41の固定位置よりも窪んだ窪み部)に配置される。
【0049】
中間層36の溝329は、
図12(a)に示すように、厚み方向且つ連結方向Xに沿う断面視において、保護カバー322の内面(内層31との対向面)に向かって凸の円弧状を有している。
中間層37の溝329は、
図12(b)に示すように、厚み方向且つ連結方向Xに沿う断面視において、保護カバー322の内面に向かって凸のV字状を有している。
中間層38の溝329は、
図12(c)に示すように、厚み方向且つ連結方向Xに沿う断面視において、保護カバー322の内面に向かって凸の四角形形状を有している。
中間層39の溝329は、
図12(d)に示すように、厚み方向且つ連結方向Xに沿う断面視において、保護カバー322の内面に向かって凸のM字状を有している。すなわち中間層39の溝329は、前記断面視においてV字状の2つの溝が連結方向Xに連接することで構成されている。
保護カバー322の外面に溝329が形成されていることで、溝329が形成されていない場合に比べて、保護カバー322の断面二次モーメントが向上し、保護カバー322の剛性が向上する。
【0050】
本発明には、保護カバーユニットが包含される。本発明の保護カバーユニットは、前記保護カバーユニット3(内層31、中間層32、外層33)に代表される保護カバーユニットを含む。本発明の保護カバーユニットは、前記挿通孔310,320,330に代表される「固定用ボルトの挿通孔」を有するところ、該固定用ボルト(前記実施形態ではボルト41)は、本発明の保護カバーユニットの構成要素ではない。
また本発明には、保護カバーユニットセットが包含される。本発明の保護カバーユニットセットは、前記の本発明の保護カバーユニットと、前記固定手段4(ボルト41、ナット45等)に代表される固定手段とを含む。
本発明の保護カバーユニット及び保護カバーユニットセットについては、基本的に、前述の本発明の防食構造についての説明が適宜適用される。
【0051】
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は前記実施形態に制限されず、また、一の実施形態が具備する構成は、他の実施形態が具備し得る。
前記実施形態では、保護カバーユニット3を構成する3層(内層31、中間層32、外層33を)は、それぞれ、少なくとも緩衝材及び保護カバーを有していればよく、防食層は任意に選択し得る要素である。
前記実施形態では、内層31及び外層33が、それぞれ、互いに分離独立した複数の要素(内層31は31A,31B、外層33は33A,33B)から構成され、中間層32は単一の要素から構成されていたが、これら3層31~33は、それぞれ、単一の要素から構成されていてもよく、複数の要素から構成されていてもよい。
前記実施形態はP-P型の鋼管矢板に適用したものであったが、本発明が適用可能な鋼管矢板はP-P型に制限されず、例えば、P-T型、L-T型にも適用可能である。しかしながら、本発明が解決しようとする課題の主なものの1つである、「鋼管矢板における継手管位置の不均一現象」は、前述したとおりP-P型の鋼管矢板で頻発することから、本発明はP-P型の鋼管矢板に特に好適である。
【符号の説明】
【0052】
1,1Z 防食構造
2,91 防食層
3 保護カバーユニット
31 内層
31A 第1の内層
31B 第2の内層
310 内層の挿通孔
311 内層の緩衝材
312 内層の保護カバー
313 内層の防食層
32,34~39 中間層
34A,35A 第1の中間層
34B,35B 第2の中間層
320 中間層の挿通孔(長孔)
321 中間層の緩衝材
322 中間層の保護カバー
323 中間層の防食層
324 高厚み部
325 低厚み部
326 被重なり部
33 外層
330 外層の挿通孔
331 外層の緩衝材
332 外層の保護カバー
333 外層の防食層
4 固定手段
40 支持基材
41 ボルト
42 絶縁スリーブ
43 固定板
44 ワッシャー
45 ナット
46 ボルトキャップ
47 リベット
10 鋼管矢板
10a 鋼管矢板の表面(被防食面)
11 鋼管本体
12 継手管
120 継手管連結構造
13 凸部
14 凹部
X 鋼管本体の連絡方向(水平方向)
Y 鉛直方向
【要約】
【課題】鋼管矢板の構造の不均一性に起因する問題を解決し、施工性及び防食効果に優れる防食技術を提供すること。
【解決手段】防食構造1は、鋼管矢板10の表面10aに接触する防食層2と、保護カバーユニット3と、固定手段4とを有する。固定手段4は、継手管連結構造120の外面に固定されたボルト41とナット45とを有する。保護カバーユニット3は、防食層2から近い順に、内層31、中間層32及び外層33を有する。これら3層31~33は、それぞれ、緩衝材と、該緩衝材よりも防食層2から遠い側に位置する保護カバーとを有するとともに、当該層31,32又は33を厚み方向に貫通し且つボルト41が挿通される挿通孔を継手管連結構造120に対応する位置に有する。中間層32の挿通孔320は、連結方向Xに沿って延びる長孔であり、該長孔の長軸方向の長さL1がボルト41の外径L2に比べて長い。
【選択図】
図3