(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-27
(45)【発行日】2023-10-05
(54)【発明の名称】電源遮断装置および電源遮断方法
(51)【国際特許分類】
H02J 50/40 20160101AFI20230928BHJP
H02J 50/90 20160101ALI20230928BHJP
H02J 50/12 20160101ALI20230928BHJP
H02J 50/80 20160101ALI20230928BHJP
H02H 3/08 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
H02J50/40
H02J50/90
H02J50/12
H02J50/80
H02H3/08 D
(21)【出願番号】P 2022502691
(86)(22)【出願日】2020-02-27
(86)【国際出願番号】 JP2020007913
(87)【国際公開番号】W WO2021171453
(87)【国際公開日】2021-09-02
【審査請求日】2022-06-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】弁理士法人 共立特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤村 晋吾
(72)【発明者】
【氏名】水野 草太
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 雄介
(72)【発明者】
【氏名】青木 猛史
(72)【発明者】
【氏名】山際 真人
(72)【発明者】
【氏名】平野 崇
(72)【発明者】
【氏名】田中丸 重典
【審査官】辻丸 詔
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/141365(WO,A1)
【文献】特開2004-047862(JP,A)
【文献】特開2017-063526(JP,A)
【文献】国際公開第2019/239510(WO,A1)
【文献】米国特許第04616216(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 50/40
H02J 50/90
H02J 50/12
H02J 50/80
H02H 3/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に所定の対基板作業を行う複数の対基板作業機が並んで設置されている基板生産ラインに沿って設けられる走行路を走行可能な可動部と、
前記可動部に設けられ、前記対基板作業機から非接触給電によって供給された供給電力を用いて前記可動部を走行させる駆動部と、
電力を生成する電源装置と、
前記電源装置によって生成された前記電力を複数の前記対基板作業機の各々に配電する配電部と、
複数の前記対基板作業機の各々に設けられ、前記配電部を介して配電された前記電力を用いて前記駆動部に供給する前記供給電力を生成する電力供給回路と、
複数の前記対基板作業機のうちの少なくとも一つの前記対基板作業機において前記対基板作業機を駆動させる駆動電力が遮断されたときに、前記電力供給回路に対する前記電力の供給を停止させる供給制御部と、
を備える電源遮断装置
であって、
前記供給制御部は、
前記電源装置の入力側に設けられ、電磁コイルが励磁されているときに交流電力を前記電源装置に入力可能な電磁接触器と、
前記電磁コイルを励磁する励磁回路と、
複数の前記対基板作業機の各々に設けられ、複数の前記対基板作業機のうちの少なくとも一つの前記対基板作業機の前記駆動電力が遮断されたときに、前記励磁回路を解放する作業機側開閉器と、
を備え、
前記励磁回路は、前記電磁コイルおよび前記作業機側開閉器が直列接続されている電源遮断装置。
【請求項2】
前記電源装置および複数の前記対基板作業機は、デイジーチェーン接続されており、
前記配電部は、前記電源装置によって生成された前記電力を前記基板生産ラインの一端側の前記対基板作業機から他端側の前記対基板作業機まで順に配電する請求項1に記載の電源遮断装置。
【請求項3】
前記作業機側開閉器は、作業者によって前記対基板作業機の前記駆動電力の投入または遮断が可能なブレーカである請求項
1または請求項2に記載の電源遮断装置。
【請求項4】
基板に所定の対基板作業を行う複数の対基板作業機が並んで設置されている基板生産ラインに沿って設けられる走行路を走行可能な可動部と、
前記可動部に設けられ、前記対基板作業機から非接触給電によって供給された供給電力を用いて前記可動部を走行させる駆動部と、
電力を生成する電源装置と、
前記電源装置によって生成された前記電力を複数の前記対基板作業機の各々に配電する配電部と、
複数の前記対基板作業機の各々に設けられ、前記配電部を介して配電された前記電力を用いて前記駆動部に供給する前記供給電力を生成する電力供給回路と、
複数の前記対基板作業機のうちの少なくとも一つの前記対基板作業機において前記対基板作業機を駆動させる駆動電力が遮断されたときに、前記電力供給回路に対する前記電力の供給を停止させる供給制御部と、
を備え、
前記供給制御部は、
前記電源装置の入力側に設けられ、電磁コイルが励磁されているときに交流電力を前記電源装置に入力可能な電磁接触器と、
前記電磁コイルを励磁する励磁回路と、
前記電源装置を備える作業機に設けられ、複数の前記対基板作業機のうちの少なくとも一つの前記対基板作業機の前記駆動電力が遮断されたときに、前記励磁回路を解放する電源側開閉器と、
所定時間が経過するごとに複数の前記対基板作業機について前記対基板作業機が正常に動作している正常状態を確認する正常状態確認部と、
を備え、
前記励磁回路は、前記電磁コイルおよび前記電源側開閉器が直列接続されており、
前記正常状態確認部は、複数の前記対基板作業機のうちの少なくとも一つの前記対基板作業機について前記正常状態を確認できなかったときに、前記電源側開閉器を開状態にさせ
る電源遮断装置。
【請求項5】
前記正常状態確認部は、前記所定時間が経過するごとに複数の前記対基板作業機と通信を試行して、複数の前記対基板作業機のうちの少なくとも一つの前記対基板作業機と通信ができなかったときに、前記正常状態を確認できなかったと判断する請求項
4に記載の電源遮断装置。
【請求項6】
前記電力供給回路は、前記所定時間より短い周期で、カウンタが所定値に達する前に前記カウンタをリセットし、前記所定時間が経過し且つ前記カウンタが前記所定値に達しているときに、タイムオーバを示す状態信号を出力するウォッチドッグタイマを備え、
前記正常状態確認部は、前記ウォッチドッグタイマから前記状態信号を取得したときに、前記正常状態を確認できなかったと判断する請求項
4または請求項
5に記載の電源遮断装置。
【請求項7】
前記電源装置は、直流電力を生成し、
前記電力供給回路は、
前記直流電力を平滑する平滑コンデンサと、
前記供給制御部によって前記直流電力の出力が停止されたときに、前記平滑コンデンサに残存する電荷を放電する放電回路と、
を備える請求項1~請求項
6のいずれか一項に記載の電源遮断装置。
【請求項8】
前記基板生産ラインは、ベースと、前記ベースの上に引き出し可能に設けられる作業モジュールとを備える前記対基板作業機が増減可能に設けられており、
前記電力供給回路は、前記ベースに設けられている請求項1~請求項
7のいずれか一項に記載の電源遮断装置。
【請求項9】
前記電源装置は、直流電力を生成する請求項1~請求項
8のいずれか一項に記載の電源遮断装置。
【請求項10】
基板に所定の対基板作業を行う複数の対基板作業機が並んで設置されている基板生産ラインに沿って設けられる走行路を走行可能な可動部と、
前記可動部に設けられ、前記対基板作業機から非接触給電によって供給された供給電力を用いて前記可動部を走行させる駆動部と、
電力を生成する電源装置と、
前記電源装置によって生成された前記電力を複数の前記対基板作業機の各々に配電する配電部と、
複数の前記対基板作業機の各々に設けられ、前記配電部を介して配電された前記電力を用いて前記駆動部に供給する前記供給電力を生成する電力供給回路と、
を備える給電システムに適用され、
複数の前記対基板作業機のうちの少なくとも一つの前記対基板作業機において前記対基板作業機を駆動させる駆動電力が遮断されたときに、前記電力供給回路に対する前記電力の供給を停止させる供給制御工程を備え
、
前記供給制御工程は、
前記電源装置の入力側に設けられ、電磁コイルが励磁されているときに交流電力を前記電源装置に入力可能な電磁接触器と、
前記電磁コイルを励磁する励磁回路と、
複数の前記対基板作業機の各々に設けられ、複数の前記対基板作業機のうちの少なくとも一つの前記対基板作業機の前記駆動電力が遮断されたときに、前記励磁回路を解放する作業機側開閉器と、
を備え前記電磁コイルおよび前記作業機側開閉器が直列接続されている前記励磁回路を用いて、前記電力の供給を停止させる電源遮断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、電源遮断装置および電源遮断方法に関する技術を開示する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の非接触給電装置では、固定部は、複数の基板生産機が列設された基板生産ラインであり、複数の基板生産機の列設方向に移動体の移動方向が設定される。複数の基板生産機の各々には、同数の給電コイルが配置されており、移動体には、少なくとも一つの受電コイルが配置されている。一の基板生産機の給電コイルが受電コイルに給電可能になると、給電コイルから受電コイルに給電が開始される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の非接触給電装置では、電力供給回路が複数の対基板作業機の各々に設けられている形態が想定される。電力供給回路は、配電部を介して配電された電力を用いて駆動部に供給する供給電力を生成する。この形態では、対基板作業機を駆動させる駆動電力が遮断されても、電力供給回路には、配電部を介して電力が供給され続ける可能性がある。対基板作業機を駆動させる駆動電力が遮断されると、作業者がメンテナンス作業などを行う可能性があるので、対基板作業機を駆動させる駆動電力が遮断された場合は、電力供給回路に対する電力の供給を停止させることが望ましい。
【0005】
このような事情に鑑みて、本明細書は、対基板作業機を駆動させる駆動電力が遮断されたときに、電力供給回路に対する電力の供給を停止させることが可能な電源遮断装置を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書は、可動部と、駆動部と、電源装置と、配電部と、電力供給回路と、供給制御部とを備える電源遮断装置を開示する。前記可動部は、基板に所定の対基板作業を行う複数の対基板作業機が並んで設置されている基板生産ラインに沿って設けられる走行路を走行可能である。前記駆動部は、前記可動部に設けられ、前記対基板作業機から非接触給電によって供給された供給電力を用いて前記可動部を走行させる。前記電源装置は、電力を生成する。前記配電部は、前記電源装置によって生成された前記電力を複数の前記対基板作業機の各々に配電する。前記電力供給回路は、複数の前記対基板作業機の各々に設けられ、前記配電部を介して配電された前記電力を用いて前記駆動部に供給する前記供給電力を生成する。前記供給制御部は、複数の前記対基板作業機のうちの少なくとも一つの前記対基板作業機において前記対基板作業機を駆動させる駆動電力が遮断されたときに、前記電力供給回路に対する前記電力の供給を停止させる。
【0007】
また、本明細書は、可動部と、駆動部と、電源装置と、配電部と、電力供給回路とを備える給電システムに適用され、供給制御工程を備える電源遮断方法を開示する。前記可動部は、基板に所定の対基板作業を行う複数の対基板作業機が並んで設置されている基板生産ラインに沿って設けられる走行路を走行可能である。前記駆動部は、前記可動部に設けられ、前記対基板作業機から非接触給電によって供給された供給電力を用いて前記可動部を走行させる。前記電源装置は、電力を生成する。前記配電部は、前記電源装置によって生成された前記電力を複数の前記対基板作業機の各々に配電する。前記電力供給回路は、複数の前記対基板作業機の各々に設けられ、前記配電部を介して配電された前記電力を用いて前記駆動部に供給する前記供給電力を生成する。前記供給制御工程は、複数の前記対基板作業機のうちの少なくとも一つの前記対基板作業機において前記対基板作業機を駆動させる駆動電力が遮断されたときに、前記電力供給回路に対する前記電力の供給を停止させる。
【発明の効果】
【0008】
上記の電源遮断装置は、供給制御部を備える。よって、電源遮断装置は、対基板作業機を駆動させる駆動電力が遮断されたときに、電力供給回路に対する電力の供給を停止させることができる。電源遮断装置について上述されていることは、電源遮断方法についても同様に言える。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】給電システムを備える基板生産ラインの構成例を示す平面図である。
【
図2】
図1の走行装置および部品装着機の概略構成を示す斜視図である。
【
図4】第一形態の供給制御部を備える電源遮断装置の構成例を示す模式図である。
【
図5】対基板作業機と駆動部の間で非接触給電を行う給電回路の一例を示す回路図である。
【
図6】第二形態の供給制御部を備える電源遮断装置の構成例を示す模式図である。
【
図7】第二形態の供給制御部の制御ブロックの一例を示すブロック図である。
【
図8】第二形態の供給制御部による制御手順の一例を示すフローチャートである。
【
図9】部品装着機の構成例を示す側面視の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
1.実施形態
1-1.基板生産ライン1の構成例
本実施形態の電源遮断装置70は、基板生産ライン1に適用される。
図1に示すように、基板生産ライン1は、複数(同図では、4つ)の部品装着機10が
図2に示す基板90の搬送方向に並んで設置されている。部品装着機10は、基板90に所定の対基板作業を行う対基板作業機WM0に含まれる。なお、基板生産ライン1には、例えば、スクリーン印刷機、はんだ検査機、外観検査機、リフロー炉などの種々の対基板作業機WM0を設けることができる。
【0011】
また、基板生産ライン1の基板搬入側(
図1の紙面左側)には、カセット式のフィーダ20の保管に用いられるフィーダ保管装置BS0が設置されている。本実施形態の基板生産ライン1には、複数(4つ)の部品装着機10およびフィーダ保管装置BS0の各々に対して所定の作業を行う作業機としての走行装置50が設けられている。基板生産ライン1を構成する各装置および走行装置50は、ネットワークを介してライン制御装置LC0と種々のデータを入出力可能に構成されている。走行装置50の詳細構成は、後述されている。
【0012】
フィーダ保管装置BS0は、複数のスロットを備える。フィーダ保管装置BS0は、複数のスロットの各々に装備されたフィーダ20をストックする。フィーダ保管装置BS0のスロットに装備されたフィーダ20は、ライン制御装置LC0との間で通信可能な状態となる。これにより、フィーダ保管装置BS0のスロットと当該スロットに装備されたフィーダ20の識別情報が関連付けられて、ライン制御装置LC0に記録される。
【0013】
ライン制御装置LC0は、基板生産ライン1の動作状況を監視し、部品装着機10、フィーダ保管装置BS0、走行装置50を含む生産設備の制御を行う。例えば、ライン制御装置LC0には、部品装着機10を制御するための各種データが記憶されている。ライン制御装置LC0は、各生産設備における生産処理の実行に際して、制御プログラムなどの各種データを各生産設備に適宜送出する。
【0014】
1-2.部品装着機10の構成例
図2に示すように、基板生産ライン1を構成する複数(4つ)の部品装着機10は、基板搬送装置11と、部品供給装置12と、ヘッド駆動装置13とを備えている。以下の説明において、部品装着機10の水平幅方向であり基板90の搬送方向をX方向とし、部品装着機10の水平奥行き方向をY方向とし、X方向およびY方向に垂直な鉛直方向(
図2の紙面上下方向)をZ方向とする。
【0015】
基板搬送装置11は、ベルトコンベアおよび位置決め装置などにより構成される。基板搬送装置11は、基板90を搬送方向(X方向)に順次搬送するとともに、機内の所定位置に基板90を位置決めする。基板搬送装置11は、部品装着機10による装着処理が終了した後に、基板90を部品装着機10の機外に搬出する。
【0016】
部品供給装置12は、基板90に装着される部品を供給する。部品供給装置12は、フィーダ20を装備可能な上部スロット121および下部スロット122を備えている。上部スロット121は、部品装着機10の前部側の上部に配置され、装備されたフィーダ20を動作可能に保持する。つまり、上部スロット121に装備されたフィーダ20は、部品装着機10による装着処理において動作を制御され、当該フィーダ20の上部の規定位置に設けられた取り出し部において部品を供給する。
【0017】
下部スロット122は、上部スロット121の下方に配置され、装備されたフィーダ20をストックする。つまり、下部スロット122は、生産に用いられるフィーダ20を予備的に保持する。また、下部スロット122は、生産に用いられた使用済みのフィーダ20を一時的に保持する。なお、上部スロット121と下部スロット122との間におけるフィーダ20の交換は、後述する走行装置50による自動交換、または、作業者による手動交換によって行われる。
【0018】
また、フィーダ20は、部品供給装置12の上部スロット121または下部スロット122に装備されると、コネクタを介して部品装着機10から電力が供給される。そして、フィーダ20は、部品装着機10との間で通信可能な状態となる。上部スロット121に装備されたフィーダ20は、部品装着機10による制御指令などに基づいて、部品を収容するキャリアテープの送り動作を制御する。これにより、フィーダ20は、フィーダ20の上部に設けられた取り出し部において、後述する装着ヘッド30の保持部材によって部品を採取可能に供給する。
【0019】
ヘッド駆動装置13は、部品供給装置12によって供給された部品を、基板搬送装置11によって機内に搬入された基板90上の所定の装着位置まで移載する。ヘッド駆動装置13は、直動機構によって移動台131を水平方向(X方向およびY方向)に移動させる。移動台131には、クランプ部材によって装着ヘッド30が交換可能に固定される。装着ヘッド30は、部品を採取するとともに、部品の上下方向位置および角度を調整して基板90に装着する。
【0020】
具体的には、フィーダ20によって供給される部品を保持する保持部材が、装着ヘッド30に取り付けられている。保持部材には、例えば、供給される負圧エアによって部品を保持する吸着ノズル、部品を把持して保持するチャックなどが適用され得る。装着ヘッド30は、保持部材をZ方向に移動可能に、且つ、Z軸に平行なθ軸周りに回転可能に保持する。装着ヘッド30は、ヘッド駆動装置13の直動機構によって水平方向(X方向およびY方向)に移動される。
【0021】
上記の部品装着機10は、部品を基板90に装着する装着処理を実行する。装着処理において、部品装着機10は、画像処理の結果、各種センサによる検出結果、予め記憶されている制御プログラムなどに基づいて、ヘッド駆動装置13に制御信号を送出する。これにより、装着ヘッド30に支持されている複数の保持部材(例えば、吸着ノズル)の位置および角度が制御される。
【0022】
なお、装着ヘッド30に保持される保持部材(例えば、吸着ノズル)は、装着処理において基板90に装着される部品の種別に応じて適宜変更され得る。例えば、部品装着機10は、実行する装着処理において用いる吸着ノズルが装着ヘッド30に保持されていない場合に、ノズルステーションに収容されている吸着ノズルを装着ヘッド30に保持させる。ノズルステーションは、部品装着機10の機内の所定位置に着脱可能に装備される。
【0023】
1-3.交換システム40および走行装置50の構成例
図1~
図3に示すように、交換システム40は、第一レール41と、第二レール42と、走行装置50とを備える。
図1に示すように、第一レール41および第二レール42は、複数の部品装着機10の前部に設けられている固定部である。本実施形態の第一レール41および第二レール42は、電気伝導体によって形成されており、走行装置50の走行路40Rを構成する。
【0024】
第一レール41は、複数(4つ)の部品装着機10の各々における上部スロット121と下部スロット122との上下方向の間に設けられる。第二レール42は、部品装着機10の下部スロット122の下方に設けられる。第一レール41および第二レール42は、基板生産ライン1において、基板90の搬送方向(X方向)の概ね全域に亘って延伸している。
【0025】
また、
図3に示すように、第一レール41は、上方に開口した溝形状に形成されている。第一レール41の一対の側壁部には、複数の磁石43がX方向に並んで設けられている。複数の磁石43の各々は、X方向にN極およびS極が交互に現れるように配置される。第一レール41の上面には、X方向に延びるリニアスケール44が設けられている。第一レール41の溝底部には、Y方向に一対の送電部45が配置されている。一対の送電部45は、X方向に延びる送電コイルである。一対の送電部45は、後述する走行装置50の受電部52に非接触で電力を供給する。
【0026】
また、第一レール41の一対の側壁部では、上部において走行装置50の可動部51を構成する複数の第一ガイドローラ512が転動可能に支持されている。さらに、第一レール41の溝底部のY方向中央には、可動部51を構成する複数の走行ローラ514が転動可能な走行溝46が形成されている。第二レール42では、走行装置50の可動部51を構成する第二ガイドローラ513が転動可能に支持されている。上記の構成により、第一レール41および第二レール42は、走行装置50を鉛直方向に支持すると共に、走行装置50の傾動を抑制している。
【0027】
走行装置50は、可動部51と、受電部52と、駆動部53と、位置検出部54と、作業ロボット55と、メンテナンススイッチ56と、人感センサ57と、制御装置58とを備える。可動部51は、走行装置50の本体である。可動部51は、第一レール41および第二レール42によって形成される走行路40Rに沿って走行可能に設けられる。可動部51は、ブラケット511、第一ガイドローラ512、第二ガイドローラ513および走行ローラ514を備えている。
【0028】
ブラケット511は、駆動部53などを支持するフレーム部材である。第一ガイドローラ512は、ブラケット511に設けられ、第一レール41の上部に転動可能に係合する。このとき、第一ガイドローラ512は、X方向の移動が許容され、Y方向およびZ方向の移動が規制される。第二ガイドローラ513は、ブラケット511に設けられ、第二レール42に沿って転動する。
【0029】
走行ローラ514は、第一レール41の溝底部に形成された走行溝46の一対の側壁部を転動可能に、Y方向に並んで二個一組でブラケット511に設けられる。上記の構成により、可動部51は、走行装置50の姿勢を維持しつつ、第一レール41および第二レール42によって形成される走行路40Rに沿って走行可能になる。
【0030】
受電部52は、ブラケット511において走行ローラ514のY方向外側に対をなすように設けられる。本実施形態では、一対の受電部52の各々は、X方向に延びる受電コイルである。受電部52は、可動部51のX方向位置によらずに、第一レール41に設けられている少なくとも一つの送電部45と対向する。後述するように、送電部45には、複数(4つ)の部品装着機10の各々に設けられる電力供給回路73から交流電力が供給される。電力供給回路73は、電源装置71から出力される電力を用いて交流電力を生成する。
【0031】
これらにより、送電部45および受電部52は、電磁結合して磁路を形成する。このように、受電部52は、例えば、電磁結合方式の非接触給電によって、送電部45から電力を受け取ることができる。受電部52が受け取った電力は、後述する受電回路PR0を介して駆動部53、作業ロボット55、制御装置58などに供給される。
【0032】
駆動部53は、可動部51に設けられている。駆動部53は、対基板作業機WM0から非接触給電によって供給された供給電力を用いて可動部51を走行させる。具体的には、駆動部53には、ムービングコイル531が用いられている。ムービングコイル531は、第一レール41に設けられる磁石43に対向して配置されている。駆動部53は、ムービングコイル531に給電することにより、ムービングコイル531を励磁させる。これにより、駆動部53は、磁石43との間にX方向の推進力を生成する。このように、駆動部53は、固定部である第一レール41に並んで設けられている磁石43と共にリニアモータを構成している。
【0033】
位置検出部54は、第一レール41に設けられるリニアスケール44に対向するように、ブラケット511に配置されている。位置検出部54は、リニアスケール44の目盛りを検出して、可動部51の走行路40Rにおける現在位置を検出する。位置検出部54は、種々の方法によって、可動部51の現在位置を検出することができる。例えば、位置検出部54は、光学的な検出方法、電磁誘導を用いた検出方法などによって、可動部51の現在位置を検出することができる。
【0034】
作業ロボット55は、可動部51に設けられ、所定の作業を行う。所定の作業には、部品装着機10などの対基板作業機WM0に着脱可能に装備される交換要素を対基板作業機WM0との間で交換する交換作業が含まれる。本実施形態の作業ロボット55は、基板90に装着される部品を供給するフィーダ20を交換要素として、基板生産ライン1を構成する複数(4つ)の部品装着機10との間、および、フィーダ保管装置BS0との間でフィーダ20の交換作業を行う。上記の交換作業には、フィーダ20の回収作業およびフィーダ20の補給作業のうちの少なくとも一方が含まれる。
【0035】
本実施形態の作業ロボット55は、フィーダ保管装置BS0から部品装着機10の上部スロット121または下部スロット122にフィーダ20を搬送する。また、作業ロボット55は、部品装着機10の上部スロット121と下部スロット122との間でフィーダ20を交換する。さらに、作業ロボット55は、使用済みのフィーダ20を部品装着機10からフィーダ保管装置BS0に搬送する。
図3に示すように、作業ロボット55の保持部551は、フィーダ20を保持する。保持部551は、フィーダ20の着脱方向(本実施形態では、Y方向)および上下方向(Z方向)に移動可能に設けられている。
【0036】
メンテナンススイッチ56は、作業者による操作を受け付けて、制御装置58に信号を送出する。制御装置58は、メンテナンススイッチ56の状態に基づいて、走行装置50の制御モードを通常の運用モードまたはメンテナンスモードに切り替える。メンテナンススイッチ56は、例えば、走行装置50の走行停止、作業ロボット55の作業エラーなどが生じた場合、基板生産ライン1で使用される機器のメンテナンスを行う場合などに、作業者によって操作される。メンテナンスモードでは、可動部51の走行および作業ロボット55の作業が規制される。
【0037】
人感センサ57は、周辺の作業者の存在を検出し、制御装置58に検出信号を送出する。人感センサ57は、例えば、赤外線、超音波などを用いて、作業者を検出する。制御装置58は、人感センサ57から送出された検出信号の有無に基づいて、走行装置50の所定範囲に作業者が接近しているか否かを認識することができる。
【0038】
制御装置58は、演算装置、記憶装置および制御回路を備えている。制御装置58は、複数(4つ)の部品装着機10、フィーダ保管装置BS0、走行装置50を含む交換システム40およびライン制御装置LC0などと通信可能に設けられており、これらを駆動制御することができる。例えば、走行装置50は、制御装置58によって駆動制御されて、第一レール41および第二レール42に沿って所定位置まで移動すると共に、停止位置において交換要素であるフィーダ20の交換を行う。
【0039】
1-4.給電システム60および電源遮断装置70の構成例
図1および
図4に示すように、給電システム60は、可動部51と、駆動部53と、電源装置71と、配電部72と、電力供給回路73とを備えている。電源遮断装置70は、可動部51と、駆動部53と、電源装置71と、配電部72と、電力供給回路73と、供給制御部74とを備えている。既述したように、可動部51は、基板90に所定の対基板作業を行う複数の対基板作業機WM0が並んで設置されている基板生産ライン1に沿って設けられる走行路40Rを走行可能である。駆動部53は、可動部51に設けられ、対基板作業機WM0から非接触給電によって供給された供給電力を用いて可動部51を走行させる。
【0040】
電源装置71は、電力を生成する。電源装置71は、公知の電源装置を用いることができ、種々の直流電力または交流電力を生成することができる。本実施形態の電源装置71は、三相(R相、S相、T相)の交流電力を直流電力に変換する電力変換器であり、入力された交流電力から直流電力を生成する。また、電源装置71は、例えば、基板生産ライン1の一端側の作業機に設けることができる。本実施形態の電源装置71は、フィーダ保管装置BS0に設けられている。
【0041】
配電部72は、電源装置71によって生成された電力を複数の対基板作業機WM0の各々に配電する。電源装置71および複数の対基板作業機WM0は、例えば、デイジーチェーン接続、バス接続、スター接続などによって電気的に接続される。本実施形態の配電部72では、電源装置71および複数の対基板作業機WM0がデイジーチェーン接続されており、配電部72は、電源装置71によって生成された電力を基板生産ライン1の一端側の対基板作業機WM0から他端側の対基板作業機WM0まで順に配電する。同図では、図示の便宜上、電源装置71および複数(2つ)の部品装着機10がデイジーチェーン接続されている状態が示されているが、実際は、電源装置71および
図1に示す複数(4つ)の部品装着機10がデイジーチェーン接続されている。
【0042】
電力供給回路73は、複数の対基板作業機WM0の各々に設けられ、配電部72を介して配電された電力を用いて駆動部53に供給する供給電力を生成する。例えば、供給電力は、
図5に示す給電回路PS0を介して駆動部53に供給される。給電回路PS0は、対基板作業機WM0と駆動部53の間で非接触給電を行う電気回路であり、送電回路PT0と受電回路PR0とを備えている。電力供給回路73は、送電回路PT0に交流電力を供給する。
【0043】
図5に示すように、電力供給回路73は、平滑コンデンサC0と、放電回路DS0と、電力変換器INV0とを備えている。平滑コンデンサC0および放電回路DS0は、電力変換器INV0の入力側において並列接続されている。配電部72を介して入力された直流電力(同図では、直流電力Vdc1で示されている。)は、平滑コンデンサC0によって平滑され、電力変換器INV0によって交流電力に変換される。電力変換器INV0は、直流電力を交流電力に変換する電力変換器であり、公知の電力変換器を用いることができる。なお、放電回路DS0については、後述されている。
【0044】
送電回路PT0は、送電側共振部RT1と、送電部45とが直列接続されており、送電側共振回路が形成されている。例えば、送電側共振部RT1は、コンデンサを用いることができる。送電部45は、コイルを用いることができる。受電回路PR0は、受電部52と、受電側共振部RR1と、整流回路RC0とを備えている。受電部52および受電側共振部RR1は、整流回路RC0の入力側において並列接続されており、受電側共振回路が形成されている。例えば、受電部52は、コイルを用いることができる。受電側共振部RR1は、コンデンサを用いることができる。
【0045】
整流回路RC0は、送電回路PT0から供給された交流電力を整流する整流回路であり、公知の整流回路を用いることができる。既述したように、本実施形態では、整流回路RC0によって整流された直流電力(同図では、直流電力Vdc2で示されている。)は、駆動部53、作業ロボット55、制御装置58などに供給される。なお、受電回路PR0は、整流回路RC0によって整流された直流電力を交流電力に変換する電力変換器を備えることもできる。
【0046】
供給制御部74は、複数の対基板作業機WM0のうちの少なくとも一つの対基板作業機WM0において対基板作業機WM0を駆動させる駆動電力が遮断されたときに、電力供給回路73に対する電力の供給を停止させる。供給制御部74は、対基板作業機WM0を駆動させる駆動電力が遮断されたときに、電力供給回路73に対する電力の供給を停止させることができれば良く、種々の形態をとり得る。例えば、供給制御部74は、以下に示す第一形態であっても良く、第二形態であっても良い。また、供給制御部74は、第一形態および第二形態を組み合わせた形態であっても良い。
【0047】
1-5.第一形態の供給制御部74の構成例
図4に示すように、第一形態の供給制御部74は、電磁接触器75と、励磁回路76と、作業機側開閉器77とを備えている。電磁接触器75は、電源装置71の入力側に設けられ、電磁コイル751が励磁されているときに交流電力を電源装置71に入力可能にする。具体的には、電磁接触器75は、電磁コイル751が励磁されているときに、接点が閉状態になり、三相(R相、S相、T相)の交流電力が電源装置71に入力される。逆に、電磁接触器75は、電磁コイル751が励磁されていないときに、接点が開状態になり、三相(R相、S相、T相)の交流電力は、電源装置71に入力されなくなる。
【0048】
励磁回路76は、電磁コイル751を励磁する。本形態の励磁回路76は、直流電源DC1から出力される直流電力によって電磁コイル751を励磁する。作業機側開閉器77は、複数の対基板作業機WM0の各々に設けられ、複数の対基板作業機WM0のうちの少なくとも一つの対基板作業機WM0の駆動電力が遮断されたときに、励磁回路76を解放する。
【0049】
励磁回路76は、電磁コイル751および作業機側開閉器77が直列接続されている。そのため、複数の対基板作業機WM0のうちの少なくとも一つの対基板作業機WM0に設けられている作業機側開閉器77が閉状態から開状態に切り替わると、励磁回路76が解放される。その結果、電磁コイル751が励磁されなくなり、三相(R相、S相、T相)の交流電力は、電源装置71に入力されなくなる。つまり、電力供給回路73に対する電力の供給が停止される。
【0050】
作業機側開閉器77は、対基板作業機WM0の駆動電力の遮断に連動して作業機側開閉器77を閉状態から開状態に切り替えることができれば良く、種々の形態をとり得る。本形態の作業機側開閉器77は、作業者によって対基板作業機WM0の駆動電力の投入または遮断が可能なブレーカである。この場合、作業者が複数の対基板作業機WM0のすべてのブレーカを閉状態にして、すべての対基板作業機WM0の駆動電力が投入されると、励磁回路76が閉路され、電磁コイル751が励磁される。その結果、電磁接触器75の接点が閉状態になり、三相(R相、S相、T相)の交流電力が電源装置71に入力されて、電力供給回路73に直流電力が供給される。
【0051】
作業者が複数の対基板作業機WM0のうちの少なくとも一つの対基板作業機WM0のブレーカを開状態にして、少なくとも一つの対基板作業機WM0の駆動電力が遮断されると、励磁回路76が解放され、電磁コイル751が励磁されなくなる。その結果、電磁接触器75の接点が開状態になり、三相(R相、S相、T相)の交流電力は、電源装置71に入力されなくなり、電力供給回路73に対する電力の供給が停止される。このように、本形態の作業機側開閉器77は、作業者によって対基板作業機WM0の駆動電力の投入または遮断が可能なブレーカであるので、対基板作業機WM0の駆動電力の遮断に連動して作業機側開閉器77を閉状態から開状態に容易に切り替えることができる。
【0052】
1-6.第二形態の供給制御部74の構成例
図6に示すように、第二形態の供給制御部74は、電磁接触器75と、励磁回路76と、電源側開閉器78と、正常状態確認部80とを備えている。電磁接触器75は、第一形態の供給制御部74の電磁接触器75と同様である。電源側開閉器78は、電源装置71を備える作業機に設けられ、複数の対基板作業機WM0のうちの少なくとも一つの対基板作業機WM0の駆動電力が遮断されたときに、励磁回路76を解放する。既述したように、電源装置71は、フィーダ保管装置BS0に設けられており、本形態の電源側開閉器78は、フィーダ保管装置BS0に設けられている。
【0053】
励磁回路76は、第一形態の供給制御部74と同様に、電磁コイル751を励磁する。但し、本形態の励磁回路76は、電磁コイル751および電源側開閉器78が直列接続されている。そのため、フィーダ保管装置BS0に設けられている電源側開閉器78が閉状態から開状態に切り替わると、励磁回路76が解放される。その結果、電磁コイル751が励磁されなくなり、三相(R相、S相、T相)の交流電力は、電源装置71に入力されなくなる。つまり、電力供給回路73に対する電力の供給が停止される。
【0054】
正常状態確認部80は、所定時間が経過するごとに複数の対基板作業機WM0について対基板作業機WM0が正常に動作している正常状態を確認する。正常状態確認部80は、複数の対基板作業機WM0のうちの少なくとも一つの対基板作業機WM0について正常状態を確認できなかったときに、電源側開閉器78を開状態にさせる。
図7に示すように、本形態の正常状態確認部80は、
図1に示すライン制御装置LC0に設けられている。なお、正常状態確認部80は、複数の基板生産ライン1を管理する管理装置に設けることもできる。また、正常状態確認部80は、クラウド上に形成することもできる。
【0055】
正常状態確認部80は、複数の対基板作業機WM0について正常状態を確認して、少なくとも一つの対基板作業機WM0について正常状態を確認できなかったときに、電源側開閉器78を開状態にさせることができれば良く、種々の形態をとり得る。例えば、正常状態確認部80は、所定時間が経過するごとに複数の対基板作業機WM0と通信を試行して、複数の対基板作業機WM0のうちの少なくとも一つの対基板作業機WM0と通信ができなかったときに、正常状態を確認できなかったと判断することができる。
【0056】
正常状態確認部80は、
図8に示すフローチャートに従って、電源側開閉器78を開閉制御する。具体的には、正常状態確認部80は、所定時間が経過するごとに複数の対基板作業機WM0と通信を試行して、複数の対基板作業機WM0のうちの少なくとも一つの対基板作業機WM0と通信ができなかったか否かを判断する(ステップS11)。既述したように、基板生産ライン1を構成する複数の対基板作業機WM0は、ネットワークを介してライン制御装置LC0と種々のデータを入出力可能に構成されている。正常状態確認部80は、例えば、
図7に示す対基板作業機WM0の制御装置14に正常状態確認信号を送信する。制御装置14は、対基板作業機WM0を構成する各装置を駆動制御する。
【0057】
正常状態確認信号は、限定されない。正常状態確認信号は、例えば、PINGを用いることができる。この場合、正常状態確認部80は、複数の対基板作業機WM0の各々の制御装置14に対して、所定のメッセージを送信する。そして、正常状態確認部80は、メッセージを送信してから、メッセージに対する返信を受信するまでの所要時間を測定する。正常状態確認部80は、所定時間が経過するまでに返信を受信したときに、対基板作業機WM0と通信ができたと判断し、所定時間が経過するまでに返信を受信しなかったときに、対基板作業機WM0と通信ができなかったと判断する。
【0058】
少なくとも一つの対基板作業機WM0と通信ができなかった場合(ステップS11でYesの場合)、正常状態確認部80は、対基板作業機WM0の正常状態を確認できなかったと判断する(ステップS12)。そして、正常状態確認部80は、電源側開閉器78を開状態にして(ステップS13)、制御は、一旦、終了する。すべての対基板作業機WM0と通信ができた場合(ステップS11でNoの場合)、正常状態確認部80は、対基板作業機WM0の正常状態を確認できたと判断して(ステップS14)、制御は、一旦、終了する。
【0059】
電力供給回路73は、ウォッチドッグタイマを備えることもできる。ウォッチドッグタイマは、所定時間より短い周期で、カウンタが所定値に達する前にカウンタをリセットし、所定時間が経過し且つカウンタが所定値に達しているときに、タイムオーバを示す状態信号を出力する。この場合、正常状態確認部80は、ウォッチドッグタイマからタイムオーバを示す状態信号を取得したときに、正常状態を確認できなかったと判断することができる。
【0060】
ウォッチドッグタイマは、例えば、
図5に示す電力供給回路73の放電回路DS0および電力変換器INV0を駆動制御する制御装置に設けることができる。また、ウォッチドッグタイマは、配電部72を介して入力された直流電力(直流電力Vdc1)を監視する電源監視装置などに設けることもできる。このように、ウォッチドッグタイマは、ハードウエアで実現することができる。また、ウォッチドッグタイマは、ソフトウエアで実現することもできる。
【0061】
また、正常状態確認部80は、所定時間が経過するごとに複数の対基板作業機WM0と通信を試行して、複数の対基板作業機WM0のうちの少なくとも一つの対基板作業機WM0と通信ができず、且つ、ウォッチドッグタイマからタイムオーバを示す状態信号を取得したときに、正常状態を確認できなかったと判断することもできる。
【0062】
さらに、供給制御部74は、第一形態および第二形態を組み合わせた形態であっても良い。具体的には、供給制御部74は、電磁接触器75と、励磁回路76と、作業機側開閉器77と、電源側開閉器78と、正常状態確認部80とを備える。また、励磁回路76は、電磁コイル751、作業機側開閉器77および電源側開閉器78が直列接続される。この形態では、電力供給回路73に対する電力の供給を停止させる二つの停止手段を備えるので、一の停止手段に不具合が生じても、他の停止手段によって電力供給回路73に対する電力の供給を停止させることができ、一つの停止手段を備える形態と比べて、電源遮断装置70の信頼性が向上する。
【0063】
1-7.その他
図5に示すように、電力供給回路73には、配電部72を介して直流電力が供給されるので、電力供給回路73は、電源装置71が生成した直流電力を平滑する平滑コンデンサC0を備えている。供給制御部74によって電力供給回路73に対する電力の供給が停止されても、平滑コンデンサC0には電荷が残存している可能性がある。
【0064】
そこで、電力供給回路73は、放電回路DS0を備えると良い。放電回路DS0は、供給制御部74によって直流電力の出力が停止されたときに、平滑コンデンサC0に残存する電荷を放電する。放電回路DS0は、供給制御部74によって直流電力の出力が停止されたときに、平滑コンデンサC0に残存する電荷を放電することができれば良く、種々の形態をとり得る。
【0065】
本実施形態の放電回路DS0は、スイッチング素子TR0と、抵抗器R0とを備えている。スイッチング素子TR0および抵抗器R0は、直列接続され、平滑コンデンサC0と並列接続されている。電力供給回路73の制御装置は、供給制御部74によって直流電力の出力が停止されたときに、所定時間、スイッチング素子TR0を開状態から閉状態に制御して、平滑コンデンサC0に残存する電荷を放電することができる。
【0066】
また、放電回路DS0は、抵抗器R0を流れる電流を検出する電流検出器を備えることもできる。この場合、電力供給回路73の制御装置は、電流検出器の検出結果に基づいて、抵抗器R0を流れる電流が一定になるように、スイッチング素子TR0を開閉制御する定電流制御を行うこともできる。
【0067】
既述したように、電源装置71によって生成された電力を複数の対基板作業機WM0の各々に供給する形態として、バス接続が考えられる。バス接続では、共通の電源ラインに複数の対基板作業機WM0の各々の電力供給回路73が並列接続される。しかしながら、この形態では、予め電源ラインを配置しておく必要があり、電源ラインを伸縮させることは困難である。そのため、この形態では、例えば、生産計画に応じて対基板作業機WM0を増減させることが困難である。
【0068】
そこで、本実施形態では、電源装置71および複数の対基板作業機WM0がデイジーチェーン接続されている。これにより、対基板作業機WM0を容易に増減させることができる。例えば、対基板作業機WM0が増設されると、増設前の最後尾の対基板作業機WM0の電力供給回路73と、増設する対基板作業機WM0の電力供給回路73とが電気的に接続される。また、励磁回路76を形成する
図4および
図6に示す接続部761は、増設前の最後尾の対基板作業機WM0において電気的に開放され、増設する対基板作業機WM0において電気的に接続される。なお、
図4および
図6では、図示の便宜上、白色の丸印で示される接続位置が紙面右方向にずらして図示されている。また、電気的に開放される部位は、破線で示されている。
【0069】
また、
図9に示すように、本実施形態の基板生産ライン1は、ベースB0と、ベースB0の上に引き出し可能に設けられる作業モジュールM0とを備える対基板作業機WM0が増減可能に設けられている。作業モジュールM0には、既述した基板搬送装置11、装着ヘッド30などが設けられている。そのため、電力供給回路73は、ベースB0に設けられている。
【0070】
なお、
図9の実線で示される作業モジュールM0は、ベースB0の搭載位置に搭載されている状態を示している。破線で示される作業モジュールM0は、搭載位置から引き出された状態を示している。例えば、作業者は、対基板作業機WM0のメンテナンスを行う際に、ブレーカを操作して、対基板作業機WM0の駆動電力を遮断した後に、作業モジュールM0を引き出すことができる。メンテナンスが終了すると、作業者は、作業モジュールM0をベースB0の搭載位置まで引き戻す。作業モジュールM0がベースB0の搭載位置まで引き戻されると、作業者は、ブレーカを操作して、対基板作業機WM0の駆動電力を投入することができる。
【0071】
電源装置71は、交流電力を生成することもできる。この場合、配電部72は、電源装置71によって生成された交流電力を基板生産ライン1の一端側の対基板作業機WM0から他端側の対基板作業機WM0まで順に配電する。しかしながら、この形態では、複数の対基板作業機WM0の各々に、入力された交流電力を直流電力に変換する電力変換器が必要になる。そこで、本実施形態の電源装置71は、直流電力を生成する。また、直流電力を生成する電源装置71の出力側に開閉器を設けることもできるが、交流電力を断続する場合と比べて、開閉器が大型化し、高コスト化する可能性がある。そこで、本実施形態では、電磁接触器75は、電源装置71の入力側に設けられている。
【0072】
また、電源装置71によって生成された電力を複数の対基板作業機WM0の各々に供給する形態として、スター接続が考えられる。この形態においても、配電部72は、電源装置71によって生成された電力を複数の対基板作業機WM0の各々に配電することができる。但し、この形態では、電源遮断装置70は、励磁回路76および電源側開閉器78が電源装置71を備える作業機に設けられる第二形態の供給制御部74を備えることができるが、第一形態の供給制御部74を備えることが困難である。そこで、本実施形態では、電源装置71および複数の対基板作業機WM0がデイジーチェーン接続されている。これにより、供給制御部74のバリエーションが増加し、既述したように、複数の停止手段によって電源遮断装置70の信頼性を向上させることもできる。
【0073】
2.電源遮断方法
電源遮断装置70について既述されていることは、電源遮断方法についても同様に言える。電源遮断方法は、可動部51と、駆動部53と、電源装置71と、配電部72と、電力供給回路73とを備える給電システム60に適用され、供給制御工程を備える。供給制御工程は、供給制御部74が行う制御に相当する。電源遮断方法は、正常状態確認工程を備えることもできる。正常状態確認工程は、正常状態確認部80が行う制御に相当する。
【0074】
3.実施形態の効果の一例
電源遮断装置70は、供給制御部74を備える。よって、電源遮断装置70は、対基板作業機WM0を駆動させる駆動電力が遮断されたときに、電力供給回路73に対する電力の供給を停止させることができる。電源遮断装置70について上述されていることは、電源遮断方法についても同様に言える。
【符号の説明】
【0075】
1:基板生産ライン、40R:走行路、51:可動部、53:駆動部、
60:給電システム、70:電源遮断装置、71:電源装置、
72:配電部、73:電力供給回路、74:供給制御部、
75:電磁接触器、751:電磁コイル、76:励磁回路、
77:作業機側開閉器、78:電源側開閉器、80:正常状態確認部、
C0:平滑コンデンサ、DS0:放電回路、90:基板、
B0:ベース、M0:作業モジュール、WM0:対基板作業機。