(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-28
(45)【発行日】2023-10-06
(54)【発明の名称】補強用樹脂組成物、電子部品、電子部品の製造方法、実装構造体及び実装構造体の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08G 59/40 20060101AFI20230929BHJP
C08G 59/56 20060101ALI20230929BHJP
C08G 59/62 20060101ALI20230929BHJP
H05K 3/28 20060101ALI20230929BHJP
H01L 23/12 20060101ALI20230929BHJP
【FI】
C08G59/40
C08G59/56
C08G59/62
H05K3/28 G
H05K3/28 C
H01L23/12 501B
(21)【出願番号】P 2018226757
(22)【出願日】2018-12-03
【審査請求日】2021-09-03
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山津 繁
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 康寛
(72)【発明者】
【氏名】日野 裕久
【審査官】久保 道弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-016576(JP,A)
【文献】国際公開第2014/203735(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/216229(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 59/00 - 59/72
H05K 3/00 - 3/46
H01L 23/00 - 23/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ樹脂(A)、
フェノール樹脂(B)、
ベンゾオキサジン化合物(C)及び
活性剤(D)を含み、
前記エポキシ樹脂(A)、前記フェノール樹脂(B)、前記ベンゾオキサジン化合物(C)及び前記活性剤(D)の合計に対する、
前記エポキシ樹脂(A)の割合が20重量%以上60重量%以下であり、
前記フェノール樹脂(B)の割合が10重量%以上40重量%以下であり、
前記ベンゾオキサジン化合物(C)の割合が5重量%以上30重量%以下であり、
前記活性剤(D)の割合が10重量%以上40重量%以下である、
補強用樹脂組成物。
【請求項2】
前記活性剤(D)は、融点が130℃以上220℃以下である有機酸(D1)を含む、
請求項
1に記載の補強用樹脂組成物。
【請求項3】
前記活性剤(D)は、融点が130℃以上220℃以下であるアミン(D2)を含む、
請求項
1に記載の補強用樹脂組成物。
【請求項4】
前記フェノール樹脂(B)は、水酸基当量が70g/eq以上150g/eq以下であるフェノールノボラック樹脂(B1)を含む、
請求項1~
3のいずれか一項に記載の補強用樹脂組成物。
【請求項5】
前記ベンゾオキサジン化合物(C)は、分子内に複数のオキサジン環を有する多価オキサ
ジン化合物(C1)を含む、
請求項1~
4のいずれか一項に記載の補強用樹脂組成物。
【請求項6】
電子部品本体と、
前記電子部品本体の表面上に形成された導体と、
前記導体上に配置され、前記導体と電気的に接続されている、はんだ製のバンプと、
請求項1~
5のいずれか一項に記載の補強用樹脂組成物の硬化物であり、前記導体と前記バンプとの継目を覆う補強部と、を備える、
電子部品。
【請求項7】
請求項
6に記載の電子部品の製造方法であって、
前記導体と前記バンプとの継目を、請求項1~
5のいずれか一項に記載の補強用樹脂組成物で覆ってから、前記補強用樹脂組成物を硬化させる、
電子部品の製造方法。
【請求項8】
第1導体を備える回路基板と、
第2導体を備える電子部品と、
前記第1導体と前記第2導体との間に介在し、かつ、前記第1導体と前記第2導体とを電気的に接続する、はんだ製のバンプと、
請求項1~
5のいずれか一項に記載の補強用樹脂組成物の硬化物であり、前記第1導体と前記バンプとの継目、及び前記第2導体と前記バンプとの継目のうち、少なくとも一方を覆う補強部と、を備える、
実装構造体。
【請求項9】
請求項
8に記載の実装構造体の製造方法であって、
前記第1導体と前記バンプとの継目、及び前記第2導体と前記バンプとの継目のうち、少なくとも一方を、請求項1~
5のいずれか一項に記載の補強用樹脂組成物で覆ってから、前記補強用樹脂組成物を硬化させる、
実装構造体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般には、補強用樹脂組成物と、電子部品と、電子部品の製造方法と、実装構造体と、実装構造体の製造方法と、に関する。本開示は、詳細には、補強用樹脂組成物と、補強用樹脂組成物の硬化物を含む電子部品及びその製造方法と、補強用樹脂組成物の硬化物を含む実装構造体及びその製造方法と、に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体チップを回路基板に実装する際、はんだ製のバンプと、回路基板が備える導体とを電気的に接続する。バンプと導体とを接続するにあたり、バンプと導体の継目を樹脂組成物の硬化物で覆って補強することがある。例えば、バンプと導体との間に樹脂組成物を配置して、加熱することにより、バンプが導体に接続されると共に、樹脂組成物の硬化物で継目を覆うことができる。継目の補強に使用されうる樹脂組成物の一例が、特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
バンプと導体とを接続するにあたり、バンプと導体をバンプと導体との間で導通不良が生じることがある。特に加熱する際の温度が高いと、導通不良が生じやすい。
【0005】
本開示の目的は、バンプと導体との間で導通不良を生じさせにくく、かつ、導体とバンプとの継目を覆いやすい補強用樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る補強用樹脂組成物は、エポキシ樹脂(A)、フェノール樹脂(B)及びベンゾオキサジン化合物(C)を含む。
【0007】
本開示の一態様に係る電子部品は、電子部品本体と、前記電子部品本体の表面上に形成された導体と、前記導体上に配置され、前記導体と電気的に接続されている、はんだ製のバンプと、補強部と、を備える。前記補強部は、上記補強用樹脂組成物の硬化物であり、前記導体と前記バンプとの継目を覆う。
【0008】
本開示の一態様に係る電子部品の製造方法は、上記電子部品の製造方法であって、前記導体と前記バンプとの継目を、上記補強用樹脂組成物で覆ってから、前記補強用樹脂組成物を硬化させる。
【0009】
本開示の一態様に係る実装構造体は、第1導体を備える回路基板と、第2導体を備える電子部品と、はんだ製のバンプと、補強部と、を備える。前記バンプは、前記第1導体と前記第2導体との間に介在し、かつ、前記第1導体と前記第2導体とを電気的に接続する。前記補強部は、上記補強用樹脂組成物の硬化物であり、前記第1導体と前記バンプとの継目、及び前記第2導体と前記バンプとの継目のうち、少なくとも一方を覆う。
【0010】
本開示の一態様に係る実装構造体の製造方法は、上記実装構造体の製造方法であって、前記第1導体と前記バンプとの継目、及び前記第2導体と前記バンプとの継目のうち、少なくとも一方を、上記補強用樹脂組成物で覆ってから、前記補強用樹脂組成物を硬化させる。
【発明の効果】
【0011】
本開示の一態様に係る補強用樹脂組成物は、バンプと導体との間で導通不良が生じにくく、かつ、バンプと導体との継目を覆いやすい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本開示の一実施形態に係る補強用樹脂組成物と、はんだとを加熱する際のリフロープロファイルの一例を示すグラフである。
【
図2】
図2は、本開示の一実施形態に係る電子部品の一例を示す概略の断面図である。
【
図3】
図3A~
図3Cは、同上の電子部品の製造方法の一例を示す概略の断面図である。
【
図4】
図4A~
図4Cは、本開示の一実施形態に係る実装構造体の一例を示す概略の断面図である。
【
図5】
図5A~
図5Cは、同上の実装構造体の製造方法の一例を示す概略の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
1.概要
本開示の一実施形態に係る補強用樹脂組成物(以下、樹脂組成物(X)ともいう)は、エポキシ樹脂(A)、フェノール樹脂(B)及びベンゾオキサジン化合物(C)を含む。
【0014】
樹脂組成物(X)の温度を上昇させることで熱硬化させる場合、樹脂組成物(X)の熱硬化反応の開始前においては、樹脂組成物(X)の粘度を低めやすく、温度が上昇しても粘度の低い状態を維持しやすい。すなわち、樹脂組成物(X)の粘度が上昇し始める温度を高くさせやすい。
【0015】
また樹脂組成物(X)の温度を上昇させることで熱硬化させる場合、樹脂組成物(X)の硬化反応開始後においては、硬化反応を急激に生じさせやすく、粘度を急激に上昇させやすい。
【0016】
このため、樹脂組成物(X)の硬化反応が開始する前に、はんだ製のバンプを溶融させて、導体とバンプとを接続させやすい。続いて、導体とバンプとの継目を樹脂組成物(X)で覆っている状態で、樹脂組成物(X)を急激に硬化させることができ、製造効率を高めやすい。そのため、バンプがSACはんだ等の融点が高いはんだ製であって、加熱温度が高い場合であっても、導体とバンプとの間で導通不良を生じにくくできる。
【0017】
2.詳細
以下、本実施形態の樹脂組成物(X)、電子部品100(
図2参照)、電子部品100の製造方法(
図3A~
図3C参照)、実装構造体1(
図4A~
図4C参照)、及び実装構造体1の製造方法(
図5A~
図5C参照)を、詳細に説明する。
【0018】
2-1.樹脂組成物(X)
本実施形態の樹脂組成物(X)は、上述の通り、エポキシ樹脂(A)と、フェノール樹脂(B)と、ベンゾオキサジン化合物(C)とを含む。さらに樹脂組成物(X)は、活性剤(D)を含むことが好ましい。以下、エポキシ樹脂(A)、フェノール樹脂(B)、ベンゾオキサジン化合物(C)及び活性剤(D)の詳細を説明する。
【0019】
(1)エポキシ樹脂(A)
エポキシ樹脂(A)は、エポキシ基を有する化合物であり、加熱によって硬化する性質を有する。このためエポキシ樹脂(A)は、樹脂組成物(X)に熱硬化性を付与することができる。
【0020】
エポキシ樹脂(A)は、常温で液状であることが好ましい。この場合、樹脂組成物(X)において、エポキシ樹脂(A)と、他の成分とを混合しやすくすることができる。なお、常温で液状であるとは、大気圧下、かつ、周囲の温度が5℃以上28℃以下(特に20℃前後)の状態において、流動性を有することを意味する。エポキシ樹脂(A)が常温で液状であるためには、エポキシ樹脂(A)に常温で液状の成分のみが含まれていてもよく、エポキシ樹脂(A)に常温で液状の成分と常温で液状でない成分とが含まれていてもよく、反応性希釈剤、溶剤等によってエポキシ樹脂(A)が常温で液状となっていてもよい。
【0021】
エポキシ樹脂(A)は、一分子内にエポキシ基を二つ以上有する液状のエポキシ樹脂(A1)を含むことが好ましい。エポキシ樹脂(A1)は、例えばグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、及びオレフィン酸化型(脂環式)エポキシ樹脂からなる群から選択される一種以上の成分を含むことができる。
【0022】
エポキシ樹脂(A1)は、例えばビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールF型エポキシ樹脂等の水添ビスフェノール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン環含有エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、脂肪族系エポキシ樹脂、及びトリグリシジルイソシアヌレートからなる群から選択される一種以上の成分を含むことができる。
【0023】
エポキシ樹脂(A1)は、ビスフェノール型エポキシ樹脂及び水添ビスフェノール型エポキシ樹脂のうち、一方又は両方を含むことが特に好ましい。この場合、樹脂組成物(X)を低粘度化しやすく、かつ、樹脂組成物(X)の硬化物の物性を向上させやすい。
【0024】
エポキシ樹脂(A1)として市販品を使用してもよい。市販品としては、例えばビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱ケミカル(株)製:品番jER828)およびビスフェノールF型エポキシ樹脂(三菱ケミカル(株)製:品番jER806)等が挙げられる。
【0025】
エポキシ樹脂(A)は、エポキシ樹脂(A1)のみを含んでいてもよく、エポキシ樹脂(A1)とエポキシ樹脂(A1)以外のエポキシ樹脂とを含んでいてもよい。
【0026】
(2)フェノール樹脂(B)
フェノール樹脂(B)は、フェノール性水酸基を有する化合物である。このフェノール性水酸基は、エポキシ樹脂(A)のエポキシ基と反応することができる。
【0027】
フェノール樹脂(B)は、特に一分子中に二個以上のフェノール性水酸基を有することが好ましい。一分子中に二個以上のフェノール性水酸基を有するフェノール樹脂(B)として、例えばビスフェノールA、フェノールノボラック、クレゾールノボラック等の多官能フェノール類が挙げられる。フェノール樹脂(B)は、これらの成分のうち一種以上を含むことができる。フェノール樹脂(B)は、市販品であってもよい。市販品のフェノール樹脂として、例えばフェノールホルムアルデヒドノボラック樹脂(明和化成(株)製:品番MEH-8000H)、フェノールノボラック樹脂(明和化成(株)製:品番HF-1M)、フェノールアラルキル樹脂(明和化成(株)製:品番MEH-7800)、ビフェニルアラルキル樹脂(明和化成(株)製:品番MEH-7851SS)等が挙げられる。
【0028】
フェノール樹脂(B)は、水酸基当量が70g/eq以上150g/eq以下であるフェノールノボラック樹脂(B1)を含むことが特に好ましい。この場合、フェノール樹脂(B)のエポキシ樹脂(A)に対する溶解性を向上させることができる。なお、本明細書において、水酸基当量とは、JIS K 0070に準拠した中和滴定法によって測定した数値を指す。
【0029】
フェノールノボラック樹脂(B1)は、特に液状であることが好ましい。すなわち、フェノール樹脂(B)は、一分子中に二個以上のフェノール性水酸基を有し、水酸基当量が70g/eq以上150g/eq以下であり、かつ、液状であるフェノールノボラック樹脂(B1)を含むことが好ましい。この場合、樹脂組成物(X)の濡れ性を向上させることができる。このようなフェノールノボラック樹脂(B1)の市販品として、例えばフェノールホルムアルデヒドノボラック樹脂(明和化成(株)製:品番MEH-8000H)が挙げられる。
【0030】
フェノール樹脂(B)は、フェノールノボラック樹脂(B1)のみを含んでいてもよく、フェノールノボラック樹脂(B1)と、フェノールノボラック樹脂(B1)以外のフェノール樹脂を含んでいてもよい。
【0031】
(3)ベンゾオキサジン化合物(C)
ベンゾオキサジン化合物(C)は、ジヒドロベンゾオキサジン環を含有する化合物である。ベンゾオキサジン化合物(C)は、原材料の種類によって、種々の構造を有する。ベンゾオキサジン化合物(C)は、例えば、各種のフェノール、アミンおよびホルムアルデヒド等から合成することができる。
【0032】
ジヒドロベンゾオキサジン環は化学的に安定であるため、常態下では、ベンゾオキサジン化合物(C)の重合反応は進まない。しかし、ベンゾオキサジン化合物(C)を約170℃以上に加熱することで、ジヒドロベンゾオキサジン環が開環して、フェノール性水酸基と塩基性アミノ基とからなるジアミノジフェニル構造を有するポリベンゾオキサジン化合物が生成する。この開環によって形成されたジアミノジフェニル構造に存在する塩基性アミノ基は、エポキシ樹脂(A)とフェノール樹脂(B)との反応の硬化促進剤として働き、高温での反応を促進させることができる。具体的には、SACはんだの融点よりも高い温度における反応が促進させることができる。そのため、はんだの溶融が開始した後に、樹脂組成物(X)の硬化反応を加速させることができる。さらに、ジヒドロベンゾオキサジン環は、170℃になるまで開環しないため、エポキシ樹脂(A)とフェノール樹脂(B)との反応は進まず、はんだが溶融するまでに樹脂組成物(X)が硬化することも抑制することができる。さらに、ジヒドロベンゾオキサジン環の開環後、フェノール樹脂(B)のフェノール性水酸基は、副生成物を生じることなく自己重合したり、エポキシ樹脂(A)等と反応し得る。このように、はんだ溶融後には、ジヒドロベンゾオキサジン環の開環によって、樹脂組成物(X)が急激に反応する。
【0033】
ベンゾオキサジン化合物(C)は、分子内に複数のオキサジン環を有する多価オキサジン化合物(C1)を含むことが好ましい。多価オキサジン化合物(C1)は、エポキシ樹脂(A)との反応によって、三次元架橋構造を形成しやすい。このため、ベンゾオキサジン化合物(C)が、多価オキサジン化合物(C1)を含む場合、多価オキサジン化合物(C1)を含まない場合よりも、樹脂組成物(X)の硬化物のガラス転移温度(Tg)を大きくすることができる。
【0034】
多価オキサジン化合物(C1)として、市販品を使用してもよい。ベンゾオキサジン化合物(C1)の代表的な市販品の一例として、P-d型ベンゾオキサジン化合物:フェノールとジアミノジフェニルメタンとホルムアルデヒドとの重合物(四国化成工業(株)製)が挙げられる。P-d型ベンゾオキサジン化合物は、例えば、下記のような構造を有する。
【0035】
【化1】
(式中、Rは、水素又はアリル基を示す。アリル基は電子吸引基であってもよく、電子供与基であってもよい。)
【0036】
多価オキサジン化合物(C1)の代表的な市販品の一例として、F-a型ベンゾオキサジン化合物:ビスフェノールFとアニリンとホルムアルデヒドとの重合物(四国化成工業(株)製)が挙げられる。F-a型ベンゾオキサジン化合物は、下記のような構造を有する。
【0037】
【0038】
(4)活性剤(D)
樹脂組成物(X)は、上述の通り、活性剤(D)を含むことが好ましい。活性剤(D)は、金属酸化膜を除去する機能を有するため、樹脂組成物(X)が活性剤(D)を含むことにより、樹脂組成物(X)にフラックス作用を付与することができる。なお、フラックス作用とは、はんだペーストが塗布される金属表面に生じた酸化皮膜を除去するという還元作用、及び、溶融はんだの表面張力を低下させて、はんだの接合金属表面への濡れ性を促進する作用を意味する。
【0039】
活性剤(D)は、融点が130℃以上220℃以下である有機酸(D1)、及び融点が130℃以上220℃以下であるアミン(D2)のうち少なくとも一方を含むことが好ましい。この場合、活性剤(D)によってエポキシ樹脂(A)の硬化反応が促進されにくくすることができる。また、融点が200℃付近または200℃以上であるはんだを使用する場合であっても、はんだを溶融させる前に、はんだの酸化皮膜を除去することができる。また、はんだの溶融前に有機酸(D1)又はアミン(D2)が溶融されることで、はんだ溶融前において、樹脂組成物(X)を低粘度化することができ、樹脂組成物(X)の濡れ性を向上させることができる。
【0040】
有機酸(D1)は、例えばロジン成分材料、アジピン酸、グルタル酸、コハク酸、マロン酸、クエン酸、コルク酸、セバシン酸及びピメリン酸からなる群から選択される一種以上を含むことができる。有機酸(D1)は、特にコハク酸(融点186℃)、アジピン酸(融点152℃)、コルク酸(融点142℃)、セバシン酸(融点133℃)を含むことが好ましい。
【0041】
アミン(D2)は、フラックスとして使用されるアミンであれば特に限定されないが、例えば種々のアミン塩、トリエタノールアミン(TEA)及びグアニジンからなる群から選択される一種以上を含むことができる。
【0042】
活性剤(D)は、有機酸(D1)及びアミン(D2)以外の成分を含んでいてもよい。活性剤(D)は、融点が130℃未満の有機酸又はアミンを含んでいてもよく、融点が220℃超の有機酸又はアミンを含んでいてもよい。
【0043】
(5)その他の成分(E)
樹脂組成物(X)は、エポキシ樹脂(A)、フェノール樹脂(B)、ベンゾオキサジン化合物(C)及び活性剤(D)以外の成分(E)を含んでいてもよい。成分(E)は、例えばロジン等の成分改質剤、フィラー、チクソ性付与剤等を含むことができる。
【0044】
(6)各成分の含有割合
樹脂組成物(X)において、エポキシ樹脂(A)、フェノール樹脂(B)、ベンゾオキサジン化合物(C)及び活性剤(D)の合計に対する、エポキシ樹脂(A)の割合は、20重量%以上60重量%以下であることが好ましい。
【0045】
また樹脂組成物(X)において、エポキシ樹脂(A)、フェノール樹脂(B)、ベンゾオキサジン化合物(C)及び活性剤(D)の合計に対する、フェノール樹脂(B)の割合は、10重量%以上40重量%以下であることが好ましい。
【0046】
また樹脂組成物(X)において、エポキシ樹脂(A)、フェノール樹脂(B)、ベンゾオキサジン化合物(C)及び活性剤(D)の合計に対する、ベンゾオキサジン化合物(C)の割合は、5重量%以上30重量%以下であることが好ましい。
【0047】
また樹脂組成物(X)において、エポキシ樹脂(A)、フェノール樹脂(B)、ベンゾオキサジン化合物(C)及び活性剤(D)の合計に対する、活性剤(D)の割合は、3重量%以上40重量%以下であることが好ましい。
【0048】
樹脂組成物(X)において、エポキシ樹脂(A)、フェノール樹脂(B)、ベンゾオキサジン化合物(C)及び活性剤(D)の割合が、上記の条件を満たすことにより、樹脂組成物(X)の硬化物のガラス転移温度を低下できると共に、樹脂組成物(X)の硬化物の弾性率を向上させることができる。そのため、樹脂組成物(X)の硬化物ではんだの周囲を覆うことによる補強効果を向上させることができる。
【0049】
特に、エポキシ樹脂(A)、フェノール樹脂(B)、ベンゾオキサジン化合物(C)及び活性剤(D)の合計に対する、エポキシ樹脂(A)の割合が60重量%以下であることが好ましい。この場合、樹脂組成物(X)を迅速に硬化させることができ、樹脂組成物(X)の硬化が遅くなることを抑制することができる。
【0050】
特にエポキシ樹脂(A)、フェノール樹脂(B)、ベンゾオキサジン化合物(C)及び活性剤(D)の合計に対する、ベンゾオキサジン化合物(C)の割合が30重量%以下であることが好ましい。この場合、樹脂組成物(X)の硬化物に、ボイド(気泡)が発生することを抑制することができる。
【0051】
2-2.樹脂組成物(X)を用いた導体とバンプとの継目の補強
以下、樹脂組成物(X)を用いて、導体とはんだ製のバンプとの継目を補強する補強部を作製する方法について説明する。
【0052】
導体上にはんだ製のバンプを配置して、このバンプを溶融させることにより、導体とバンプとを電気的に接続することができる。この導体とバンプとの継目を樹脂組成物(X)の硬化物で覆うことで、導体とバンプとの継目を補強することができる。例えば、導体とバンプとの間に樹脂組成物(X)が配置された状態で、バンプ及び樹脂組成物(X)が加熱されると、樹脂組成物(X)の粘度が下がることで樹脂組成物(X)が流動し、それに伴ってバンプが導体に接触する。樹脂組成物が流動性を維持している状態で、バンプは溶融して導体に溶着する。樹脂組成物(X)は導体とバンプとの継目を覆い、その状態で硬化することで、補強部が作製される。これにより、導体とバンプとを電気的に接続し、かつ導体とバンプとの継目を樹脂組成物(X)の硬化物である補強部で覆うことで補強できる。バンプを溶融させるため、バンプ及び樹脂組成物(X)は、はんだの融点よりも高い温度まで加熱される。
【0053】
導体とバンプとを電気的に接続し、かつ補強部を作製する場合の、加熱温度のプロファイル及び樹脂組成物(X)の粘度変化の例を
図1のグラフに示す。
図1のグラフにおいて、実線は加熱温度を示し、破線は樹脂組成物(X)の粘度を示す。図中のT3(℃)はバンプの融点であり、T1(℃)及びT2(℃)は、室温<T1<T2<T3の関係を満たす特定の温度である。
【0054】
図1に示すように、まず加熱温度を室温からT1(℃)まで上昇させる。続いて、加熱温度の昇温速度を低めながら、加熱温度をT2(℃)まで上昇させる。続いて、昇温速度を高めながら、加熱温度をT3(℃)よりも高い温度(ピーク温度)まで昇温する。続いて、加熱温度を室温まで下げる。
【0055】
バンプの融点T3(℃)はバンプを構成するはんだの組成に依存し、はんだがSn-Ag-Cu(SAC)系はんだである場合、T3(℃)は例えば217以上230℃以下である。T1(℃)は樹脂組成物(X)が溶融を開始する温度付近に規定されることが好ましい。T1(℃)は、特に限定されないが、例えば140℃以上160℃以下である。T2(℃)は、T1(℃)よりも高く、かつ樹脂組成物(X)が硬化を開始する温度よりも低い温度に規定されることが好ましい。T2は特に限定されないが、例えば160℃以上200℃以下である。ピーク温度は、T3(℃)より高く、かつ樹脂組成物(X)が硬化を開始する温度よりも高い温度に規定されることが好ましい。ピーク温度は、特に限定されないが、例えば232℃以上255℃以下である。加熱温度が室温からT1(℃)までの上昇する際の加熱温度の昇温速度は、特に限定されないが、例えば5℃/秒以下である。加熱温度がT1(℃)からT2(℃)まで上昇するのに要する時間は、特に限定されないが、例えば60秒以上100秒以下である。加熱温度がT2(℃)からピーク温度(℃)まで上昇する際の昇温速度は例えば4℃/s以下である。加熱温度がT3(℃)以上である時間は、特に限定されないが、例えば30秒以上90秒以下である。
【0056】
図1に示すように、T1(℃)付近から樹脂組成物(X)の粘度が低下して流動しはじめる。このため、室温からT1(℃)までの加熱温度の昇温速度を制御することにより、加熱開始から樹脂組成物(X)が流動し始めるまでの時間を制御することができる。
【0057】
図1に示すように、加熱温度をT1(℃)からT2(℃)まで上昇させても、樹脂組成物(X)は、低粘度のまま維持される。このため、T1(℃)からT2(℃)までの昇温速度を制御することにより、樹脂組成物(X)が流動性を維持する時間を制御することができる。これにより、樹脂組成物(X)を十分に流動させて、補強部にボイドが発生することを抑制できる。
【0058】
図1に示すように、加熱温度がT2(℃)からピーク温度に向けて上昇すると、加熱温度がT3(℃)を超えてもしばらくは樹脂組成物(X)の粘度は上がりにくく、樹脂組成物(X)が流動性を有する状態が維持され、続いて粘度が急上昇する。すなわち、加熱温度がはんだの融点を超えても、しばらくの間は樹脂組成物(X)が流動性を有する状態が維持されやすい。このため、樹脂組成物(X)が流動することで、バンプが導体に接触しやすくなり、かつバンプが導体に融着しやすくなる。また溶融したバンプのセルフアライメント効果が樹脂組成物(X)によって阻害されにくい。さらに、樹脂組成物(X)が活性剤(D)を含有する場合は、加熱温度がT2(℃)からT3(℃)に上昇する間に、活性剤(D)のフラックス作用によって、はんだの酸化皮膜を迅速に除去することができる。このため、導体とはんだとを良好に接続することができ、導通不良の発生をより抑制することができる。
【0059】
続いて、樹脂組成物(X)が導体とはんだとの継目を覆った状態で硬化することで、導体とはんだとの継目を覆う補強部が作製される。
図1に示すように、加熱温度がピーク温度から室温に向けて下がっても、樹脂組成物(X)の粘度は上昇し続ける。このため、導体とはんだとの継目が樹脂組成物(X)で覆われた状態のまま、この樹脂組成物(X)を迅速に硬化させることができる。
【0060】
樹脂組成物(X)が、このような粘度挙動を実現できるのは、樹脂組成物(X)がエポキシ樹脂(A)、フェノール樹脂(B)、ベンゾオキサジン化合物(C)及び活性剤(D)を含むためと考えられる。
【0061】
具体的には、樹脂組成物(X)の溶融時に加熱温度がT1(℃)からT2(℃)に向けて上昇しても粘度が上がりにくいのは、ベンゾオキサジン化合物(C)が溶融して樹脂組成物(X)が溶融するためと考えられる。また加熱温度がT3(℃)に達しても、樹脂組成物(X)は、すぐには粘度が上がらずに、しばらくしてから粘度が急上昇するのは、ベンゾオキサジン化合物(C)の開環反応が170℃以上の高温で生じるためと考えられる。
【0062】
また樹脂組成物(X)が活性剤(D)を含む場合、活性剤(D)が有機酸(D1)及びアミン(D2)のうち少なくとも一方を含むことにより、活性剤(D)によってエポキシ樹脂(A)の硬化反応が促進されにくくできる。それによっても、加熱温度がT3(℃)に達するまで、樹脂組成物(X)の粘度を低く維持しやすくなる。
【0063】
また加熱温度がピーク温度から室温に向けて下がっても樹脂組成物(X)が迅速に硬化するのは、ベンゾオキサジン化合物(C)の自己重合反応だけでなく、ベンゾオキサジン化合物(C)とエポキシ樹脂(A)とが反応して、三次元架橋構造が形成されるためと考えられる。このため、樹脂組成物(X)の硬化物のガラス転移温度(Tg)を向上させることができる。
【0064】
このため、樹脂組成物(X)を、
図2に示す電子部品100に適用すれば、電子部品本体200が備える導体210とバンプ32との継目20を覆う補強部4を作製することができる。
【0065】
また樹脂組成物(X)を、
図4Aに示す実装構造体1に適用すれば、回路基板2の第1導体21と、バンプ32とを接続する際に、第1導体21とバンプ32との継目20を覆う補強部4を作製することができる。
【0066】
本実施形態の樹脂組成物(X)は、導体とバンプとが電気的に接続された後に、導体とバンプとの継目を覆う補強部を作製するために用いてもよい。
【0067】
2-3.電子部品及びその製造方法
以下、樹脂組成物(X)を適用した電子部品100の構成と、その製造方法とを説明する。
【0068】
(1)電子部品の構成
本実施形態の電子部品100について、
図2を参照しながら説明する。なお、以下に示す電子部品100の構成はあくまで一例であり、電子部品100の構成は、以下の内容に限定されない。
【0069】
電子部品100は、特に限定されないが、例えば表面実装型の半導体チップである。半導体チップは、特に限定されないが、例えばBGA(ボール・グリッド・アレイ)、WLP(ウェハーレベルパッケージ)等である。
【0070】
電子部品100は、電子部品本体200と、導体210と、はんだ製のバンプ30と、補強部4とを備える。
【0071】
導体210は、電子部品本体200の表面に形成されており、このため導体210は、電子部品本本体200の表面で外部に露出している。電子部品100がWLPである場合には、電子部品本体200は、例えば再配線層が設けられたシリコン基板を含み、導体210は、例えば再配線層と電気的に接続されたピラーである。電子部品100がBGAである場合には、電子部品本体200は、例えば基板上に実装されたダイを封止樹脂で封止して構成されるパッケージであり、導体210は、例えばダイと電気的に接続された電極パッドである。電子部品本体200の構造は前記に限られず、電子部品100の種類に応じた適宜の構造であればよい。
【0072】
バンプ30は、導体210上に配置され、導体210と電気的に接続されている。このため、バンプ30と導体210との間には継目20が形成されている。バンプ30は、特に限定されないが、例えばSACはんだ製であってもよく、錫銅系(Sn-Bi系)のはんだ製であってもよい。Sn-Bi系のはんだは、Sn及びBiに加えて、Ag、Ni、Fe、Ge、Cu及びInよりなる群から選択される少なくとも1種の材料を含有してもよい。Sn-Bi系はんだの機械的な性能向上のためには、Sn-Bi系はんだは、Ag、Ni、Fe及びGeからなる群から選択される少なくとも一種の材料を含有することが好ましい。
【0073】
補強部4は、樹脂組成物(X)の硬化物である。電子部品100において、補強部4は、バンプ30と導体210との継目20を覆っている。すなわち電子部品100では、バンプ30と導体210との継目20が、樹脂組成物(X)の硬化物で覆われている。そのため、補強部4によって、バンプ30と導体210との継目20を補強することができ、電子部品100の接続信頼性を向上させることができる。
【0074】
(2)電子部品の製造方法
以下、電子部品100の製造方法を、
図3A~
図3Cを参照しながら説明する。
【0075】
まず、導体210を備える電子部品本体200を用意して、導体210を覆うように樹脂組成物(X)を配置する(
図3A参照)。樹脂組成物(X)を配置する方法は、特に限定されないが、例えばインクジェット法等の印刷法、転写等の方法によって行うことができる。
【0076】
次に、バンプ30が樹脂組成物(X)と接するように、導体210の上方にバンプ30を配置する(
図3B参照)。バンプ30として、例えば、はんだボールを使用することができる。
【0077】
次に、
図3Bに示す状態で、バンプ30及び樹脂組成物(X)を加熱する。加熱方法は特に限定されないが、例えばリフロー炉による加熱を採用することができる。この場合、例えば
図1に示すようなリフロープロファイルに沿って、バンプ30及び樹脂組成物(X)を加熱することができる。
【0078】
上記「2-2.樹脂組成物(X)を用いた導体とバンプとの継目の補強」の項目に記載の通り、バンプ30が溶融するまでは、樹脂組成物(X)が低粘度で維持される。またバンプ30の溶融が開始されても、すぐには樹脂組成物(X)の粘度が上がらず、しばらくしてから粘度が急上昇する。このため、導体210とバンプ30との継目20を、樹脂組成物(X)で覆ってから、樹脂組成物(X)を硬化させることができる。それにより、導体210とバンプ30とが良好に接続することができる。そのため、導体210とバンプ30との導通不良を抑制することができる。また、導体210とバンプ30との継目20を樹脂組成物(X)の硬化物で覆うことができる。そのため、導体210とバンプ30との継目20を補強することができる。
【0079】
2-4.実装構造体及びその製造方法
(1)実装構造体
本実施形態の実装構造体1について、
図4A~
図4Cを参照しながら説明する。なお、以下に示す実装構造体1の構成はあくまで一例であり、実装構造体1の構成は、以下の内容に限定されない。
【0080】
実装構造体1は、回路基板2と、電子部品3と、バンプ32と、補強部4とを備える。
【0081】
回路基板2は、例えばマザー基板、パッケージ基板又はインターポーザー基板である。例えば回路基材2は、ガラスエポキシ製、ポリイミド製、ポリエステル製、セラミック製などの絶縁基板である。回路基板2の表面上には、第1導体21が形成されている。このため、回路基板2は第1導体21を備える。第1導体21は、特に限定されないが、例えば導体配線である。
【0082】
電子部品3は、例えば半導体チップであり、より具体的には、例えばBGA(ボール・グリッド・アレイ)、LGA(ランド・グリッド・アレイ)、又はCSP(チップ・サイズ・パッケージ)などの、フリップチップ型のチップである。電子部品3は、PoP(パッケージ・オン・パッケージ)型のチップであってもよい。電子部品3の表面上に第2導体31が形成されている。このため、電子部品3は第2導体31を備える。第2導体31は、特に限定されないが、例えば電極パッドである。
【0083】
バンプ32は、回路基板2の第1導体21と電子部品3の第2導体31との間に介在している。バンプ32は、第1導体21との第2導体31とを電気的に接続している。バンプ32は、特に限定されないが、例えばSACはんだ製であってもよく、錫銅系(Sn-Bi系)のはんだ製であってもよい。
【0084】
補強部4は、樹脂組成物(X)の硬化物である。実装構造体1において、補強部4は、バンプ32と第1導体21との継目20を覆っている。すなわち実装構造体1では、バンプ32と第1導体21との継目20が、樹脂組成物(X)の硬化物で覆われている。そのため、補強部4によって、バンプ32と第1導体21との継目20を補強することができ、実装構造体1の接続信頼性を向上させることができる。
【0085】
図4Aに示す実装構造体1では、補強部4が、回路基板2の第1導体21とバンプ32との継目20を覆っているが、これに限定されない。
【0086】
例えば
図4Bに示す実装構造体1のように、電子部品3の第2導体31と、バンプ32との継目20が、補強部4で覆われていてもよい。
【0087】
また例えば
図4Cに示す実装構造体1のように、回路基板2の第1導体21とバンプ32との継目20が補強部4で覆われ、かつ電子部品3の第2導体31とバンプ32との継目20が補強部4で覆われていてもよい。
【0088】
また、
図4A及び
図4Cに示す実装構造体1において隣合う第1導体21の間隔が小さい場合(狭ピッチ)、或いは
図4B及び
図4Cに示す実装構造体1において隣合う第2導体31の間隔が小さい場合、隣合う補強部4同士が繋がり、一体化していてもよい。また
図4A~
図4Cに示す実装構造体1において、隣合う全ての補強部4が繋がっていてもよい。すなわち回路基板2の表面が補強部4で覆われていてもよく、電子部品3の表面が補強部4で覆われていてもよい。
【0089】
また
図4Cに示す実装構造体1において、第1導体21とバンプ32との継目20を覆う補強部4と、第2導体31とバンプ32との継目20を覆う補強部4とが繋がり、一体化していてもよい。ただし、バンプ32を構成するはんだの融点以上の温度で複数回加熱する場合(例えば、リフロー工程やリペア工程等)、はんだの再溶融時に内圧が上がり、はんだフラッシュが生じる可能性がある。このため、第1導体21とバンプ32との継目20を覆う補強部4と、第2導体31とバンプ32との継目20を覆う補強部4とは、一体化していない方が好ましい。
【0090】
(2)実装構造体の製造方法
以下、
図4Aに示す実装構造体1の製造方法を、
図5A~
図5Cを参照しながら説明する。
【0091】
まず、第1導体21を備える回路基板2を用意して、第1導体21を覆うように樹脂組成物(X)を配置する(
図5A参照)。樹脂組成物(X)を配置する方法は、特に限定されないが、例えば、印刷、転写、塗布等の方法によって行うことができる。
【0092】
次に、第2導体31を備える電子部品3を用意する。第2導体31上にはバンプ32が設けられ、第2導体31とバンプ32とは電気的に接続されている。この電子部品3を回路基板2の上に、バンプ32が樹脂組成物(X)と接触するように配置する(
図5B参照)。
【0093】
次に、
図5Bに示す状態で、バンプ32及び樹脂組成物(X)を加熱する。加熱方法は特に限定されないが、例えばリフロー炉による加熱を採用することができる。この場合、例えば
図1に示すようなリフロープロファイルに沿って、バンプ32及び樹脂組成物(X)を加熱することができる。
【0094】
上記「2-2.樹脂組成物(X)を用いた導体とバンプとの継目の補強」の項目に記載の通り、バンプ32が溶融するまでは、樹脂組成物(X)が低粘度で維持される。またバンプ32の溶融が開始されても、すぐには樹脂組成物(X)の粘度が上がらず、しばらくしてから粘度が急上昇する。このため、第1導体21とバンプ32との継目20を、樹脂組成物(X)で覆ってから、樹脂組成物(X)を硬化させることができる。それにより、第1導体21とバンプ32とが良好に接続することができ、第1導体21とバンプ32との導通不良を抑制することができる。また、第1導体21とバンプ32との継目20を樹脂組成物(X)の硬化物で覆うことができる。そのため、導体21とバンプ32との継目20を補強することができる。
【0095】
なお、上述の実装構造体1の製造方法では、第2導体31上にバンプ32が設けられているが、これに限定されない。例えば第1導体21上にバンプ32が設けられていてもよい。この場合、第2導体31を覆うように樹脂組成物(X)を配置して、第2導体31とバンプ32とを接続する際に、第2導体31とバンプ32との継目20を、樹脂組成物(X)で覆ってから、樹脂組成物(X)を硬化させることができる。その場合、
図4Bに示す実装構造体1のように、補強部4によって、第2導体31とバンプ32との継目20を補強することができる。
【実施例】
【0096】
1.樹脂組成物の調製
表1に示す成分を、表1に示す割合で混合することにより、樹脂組成物を得た。なお、表1に示す成分の詳細は次のとおりである。
・EPICLON835LV:25℃で液状のビスフェノールF型エポキシ樹脂、エポキシ当量160~170、25℃での粘度2000~2500mPa・s、DIC株式会社製、品名EPICLON835LV。
・MEH8000H:25℃で液状のフェノール樹脂、25℃の粘度1500~3500mPa・s、明和化成株式会社製、品番MEH-8000H。
・P-d:p-d型ベンゾオキサジン化合物、四国化成株式会社製。
・2P4MHZ:2-フェニル-4-ヒドロキシメチル-5-メチルイミダゾール、品番2P4MHZ-PW、四国化成工業株式会社製。
・アジピン酸:アジピン酸、融点152~155℃、東京化成工業株式会社製。
・コハク酸:コハク酸、融点185~189℃、東京化成工業株式会社製。
・TEA:トリエタノールアミン、融点199℃、東京化成工業株式会社製。
・グアニジン:グアニジン塩酸塩、融点185~189℃、東京化成工業株式会社製。
【0097】
2.評価
(1)硬化性
実施例1~10及び比較例1~6の樹脂組成物の240℃におけるゲルタイムを測定した。ゲルタイムの測定には、TAインスツルメンツ社製のレオメーター(DISCOVERY HR-2)を使用した。なお、ゲルタイムとは、樹脂組成物(X)の貯蔵弾性率と、損失弾性率とが一致するまでの時間である。そして、樹脂組成物のゲルタイムを以下の基準で評価した。その結果を、下記の表1及び表2に示す。
・A:120秒以上600秒未満(硬化性が特に良好)
・B:60秒以上120秒未満(硬化性が良好)
・C:60秒未満又は600秒以上(硬化性を有する)
【0098】
(2)濡れ性
実施例1~10及び比較例1~6の樹脂組成物を用いて、銅製の板の上に厚み0.1mmの膜を形成した。融点222℃のSAC305はんだを、直径0.35mmの球状に成形し、このSAC305はんだを膜の上に載せた。続いて、板を膜及びSAC305はんだごと、240℃で3分間加熱してから、室温まで冷却した。続いて、SAC305はんだの、平面視の直径(D)及び高さ寸法(H)を確認し、その結果に基づいて、{(D-H)/D}×100(%)の式で算出される値を求めた。この値を濡れ性の指標とした。この値を以下の基準で評価した。その結果を、下記の表1及び表2に示す。
・A:55%以上(はんだへの濡れ性が特に良好)。
・B:40%以上55%未満(はんだへの濡れ性が良好)。
・C:40%未満(はんだへの濡れ性を有する)。
【0099】
(3)ボイド
実施例1~10及び比較例1~6の樹脂組成物から硬化物を作製した。具体的には、銅製の板(2.5cm×2.5cm)の上に0.5mm厚のコの字型のシリコンゴムを貼り付けて樹脂組成物を流し込み、スライドガラス(2.5cm×2.5cm厚み1mm)を上からかぶせ、樹脂組成物が漏れ出さないようクリップで固定した。続いて、樹脂組成物を、240℃の硬化炉の中で20分間加熱して硬化させることにより、厚さ0.5mm、大きさ2.0cm×2.0cmの硬化物を作製した。この硬化物が有するボイド(気泡)を観察し、以下の基準で評価した。その結果を、下記の表1及び表2に示す。
・A:ボイドの数が10個未満。
・B:ボイドの数が10個以上30個未満。
・C:ボイドの数が30個以上。
【0100】
(4)総合評価
上記硬化性、濡れ性、及びボイドの評価結果を、以下の基準で評価した。その結果を下記の表1及び表2に示す。
・A:硬化性、濡れ性、及びボイドの評価において、全てA評価。
・B:硬化性、濡れ性、及びボイドの評価において、B評価が一つ以上、C評価がない。
・C:硬化性、濡れ性、及びボイドの評価において、C評価が一つ以上。
【0101】
【0102】
【符号の説明】
【0103】
1 実装構造体
2 回路基板
3 電子部品
20 継目
21 第1導体
30、32 バンプ
31 第2導体
100 電子部品
200 電子部品本体
210 導体