(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-28
(45)【発行日】2023-10-06
(54)【発明の名称】電気装置及びマルチレベルインバータ
(51)【国際特許分類】
H01L 21/337 20060101AFI20230929BHJP
H01L 21/338 20060101ALI20230929BHJP
H01L 29/808 20060101ALI20230929BHJP
H01L 29/812 20060101ALI20230929BHJP
H01L 29/778 20060101ALI20230929BHJP
H02M 7/487 20070101ALI20230929BHJP
H02M 7/48 20070101ALI20230929BHJP
【FI】
H01L29/80 W
H01L29/80 H
H01L29/80 C
H02M7/487
H02M7/48 Z
(21)【出願番号】P 2020556613
(86)(22)【出願日】2019-08-23
(86)【国際出願番号】 JP2019032985
(87)【国際公開番号】W WO2020095510
(87)【国際公開日】2020-05-14
【審査請求日】2022-02-07
(31)【優先権主張番号】P 2018210724
(32)【優先日】2018-11-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019016440
(32)【優先日】2019-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019079572
(32)【優先日】2019-04-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木下 雄介
(72)【発明者】
【氏名】山田 康博
(72)【発明者】
【氏名】一柳 貴志
(72)【発明者】
【氏名】野村 雅則
(72)【発明者】
【氏名】石田 秀俊
【審査官】杉山 芳弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-004253(JP,A)
【文献】国際公開第2011/064955(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/159559(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/099053(WO,A1)
【文献】特開2015-207610(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/778
H01L 29/812
H01L 21/338
H01L 29/808
H01L 21/337
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
双方向スイッチ
を備え、
前記双方向スイッチは、
導電性を有する基板と、
前記基板上に形成されているGaN層と、
前記GaN層上に形成されているAlGaN層と、
前記AlGaN層上に形成されている第1のソース電極、第1のゲート電極、第2のゲート電極、及び第2のソース電極と、
前記第1のゲート電極と前記AlGaN層との間に介在している第1のp型Al
x1Ga
1-x1N層(ここで、0≦x1<1)と、
前記第2のゲート電極と前記AlGaN層との間に介在している第2のp型Al
x2Ga
1-x2N層(ここで、0≦x2<1)と、を備え、
前記基板は、前記第1のソース電極、前記第2のソース電極、前記第1のゲート電極及び前記第2のゲート電極の全てに対して電気的に絶縁されており、
前記双方向スイッチは、
前記基板に導電性材料によって接合されている導電性ダイパッドと、
前記導電性ダイパッドと一体に形成されており、前記基板を定電位点に接続するための端子と、を更に備え
、
前記双方向スイッチの前記端子が前記定電位点に接続されており、
前記定電位点は、直流電源の一端、又はダイオードブリッジを含む整流平滑回路の一出力端、又はツェナダイオードのカソードである、
電気装置。
【請求項2】
双方向スイッチを備え、
前記双方向スイッチは、
導電性を有する基板と、
前記基板上に形成されているGaN層と、
前記GaN層上に形成されているAlGaN層と、
前記AlGaN層上に形成されている第1のソース電極、第1のゲート電極、第2のゲート電極、及び第2のソース電極と、
前記第1のゲート電極と前記AlGaN層との間に介在している第1のp型Al
x1
Ga
1-x1
N層(ここで、0≦x1<1)と、
前記第2のゲート電極と前記AlGaN層との間に介在している第2のp型Al
x2
Ga
1-x2
N層(ここで、0≦x2<1)と、を備え、
前記基板は、前記第1のソース電極、前記第2のソース電極、前記第1のゲート電極及び前記第2のゲート電極の全てに対して電気的に絶縁されており、
前記双方向スイッチは、
前記基板に導電性材料によって接合されている導電性ダイパッドと、
前記導電性ダイパッドと一体に形成されており、前記基板を定電位点に接続するための端子と、を更に備え、
前記双方向スイッチの前記端子が前記定電位点に接続されて
おり、
前記定電位点は、ダイオードブリッジを含む整流平滑回路における前記ダイオードブリッジの一対の出力端のうち低電位側の出力端である、
電気装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電気装置を備える、
マルチレベルインバータ。
【請求項4】
複数の双方向スイッチを有し、前記複数の双方向スイッチを並列接続して構成された双方向スイッチ装置と、
前記双方向スイッチ装置を制御する制御システムと、を備え、
前記複数の双方向スイッチの各々は、
導電性を有する基板と、
前記基板上に形成されているGaN層と、
前記GaN層上に形成されているAlGaN層と、
前記AlGaN層上に形成されている第1のソース電極、第1のゲート電極、第2のゲート電極、及び第2のソース電極と、
前記第1のゲート電極と前記AlGaN層との間に介在している第1のp型Al
x1
Ga
1-x1
N層(ここで、0≦x1<1)と、
前記第2のゲート電極と前記AlGaN層との間に介在している第2のp型Al
x2
Ga
1-x2
N層(ここで、0≦x2<1)と、を備え、
前記複数の双方向スイッチの各々では、前記基板は、前記第1のソース電極、前記第2のソース電極、前記第1のゲート電極及び前記第2のゲート電極の全てに対して電気的に絶縁されており、
前記双方向スイッチ装置は、
前記複数の双方向スイッチの基板に導電性材料によって接合されている導電性ダイパッドと、
前記導電性ダイパッドと一体に形成されており、前記複数の双方向スイッチの基板を定電位点に接続するための端子と、を備え、
前記複数の双方向スイッチの各々は、
前記第1のゲート電極及び前記第2のゲート電極それぞれに与えられる第1のゲート電圧及び第2のゲート電圧の組み合わせに応じて、双方向の電流を通過させる双方向オン状態と、双方向の電流を阻止する双方向オフ状態と、第1方向の電流を通過させる第1のダイオード状態と、前記第1方向とは逆向きである第2方向の電流を通過させる第2のダイオード状態と、を切替可能であり、
前記制御システムは、
前記複数の双方向スイッチの各々において前記第1のダイオード状態又は前記第2のダイオード状態のときの飽和電流が前記双方向スイッチ装置への入力電流の大きさよりも小さな値に抑制されるように、前記複数の双方向スイッチの各々の前記第1のゲート電極及び前記第2のゲート電極へ第1のゲート電圧及び第2のゲート電圧それぞれを与える、
電気装置。
【請求項5】
前記制御システムは、
前記複数の双方向スイッチの各々において前記第1のダイオード状態又は前記第2のダイオード状態のときの飽和電流が双方向スイッチの定格電流よりも小さな値に抑制されるように、前記複数の双方向スイッチの各々の前記第1のゲート電極及び前記第2のゲート電極へ前記第1のゲート電圧及び前記第2のゲート電圧それぞれを与える、
請求項4に記載の電気装置。
【請求項6】
前記制御システムは、
前記複数の双方向スイッチの各々において前記第1のダイオード状態又は前記第2のダイオード状態のときの飽和電流が前記双方向オン状態のときに流れる電流の大きさよりも小さな値に抑制されるように、前記複数の双方向スイッチの各々の前記第1のゲート電極及び前記第2のゲート電極へ前記第1のゲート電圧及び前記第2のゲート電圧それぞれを与える、
請求項4又は5に記載の電気装置。
【請求項7】
前記複数の双方向スイッチは、3つ以上の双方向スイッチであり、
前記制御システムは、
前記3つ以上の双方向スイッチのうち2つの双方向スイッチの各々において前記第1のダイオード状態又は前記第2のダイオード状態のときに流れる電流の大きさの合計が前記双方向スイッチ装置への入力電流の大きさよりも小さな値に抑制されるように、前記複数の双方向スイッチの各々の前記第1のゲート電極及び前記第2のゲート電極へ前記第1のゲート電圧及び前記第2のゲート電圧それぞれを与える、
請求項4~6のいずれか一項に記載の電気装置。
【請求項8】
請求項4~7のいずれか一項に記載の電気装置を備える、
マルチレベルインバータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電気装置及びマルチレベルインバータに関し、より詳細には、2つのゲート電極を備える双方向スイッチを備える電気装置、その電気装置を備えるマルチレベルインバータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ダブルゲート(デュアルゲート)の半導体素子である双方向スイッチ素子が提案されている(特許文献1)。
【0003】
特許文献1に記載された双方向スイッチ素子では、シリコンからなる導電性の基板上にAlNからなるバッファ層を介在させて、半導体層積層体が形成されている。半導体層積層体は、アンドープのGaNからなる第1の層(GaN層)と、アンドープのAlGaNからなる第2の層(AlGaN層)とが下側から順次積層されている。
【0004】
特許文献1に記載された双方向スイッチ素子では、第1の層の第2の層とのヘテロ界面近傍に、2次元電子ガス層であるチャネル領域が生成されている。
【0005】
半導体層積層体の上には、互いに間隔をおいて第1のオーミック電極(第1のソース電極)及び第2のオーミック電極(第2のソース電極)が形成されている。半導体層積層体の上における第1のオーミック電極と第2のオーミック電極との間の領域に、第1のオーミック電極側から順に、第1のp型窒化物半導体層を介在させて形成された第1のゲート電極と、第2のp型窒化物半導体層を介在させて形成された第2のゲート電極と、が並んでいる。
【0006】
特許文献1に記載の双方向スイッチ素子では、例えば基板を電気的にフローティングにした状態で使用された場合に、スイッチング時のオン抵抗が増加する電流コラプスが発生することがあった。電流コラプスは、第1のオーミック電極(第1のソース電極)と第2のオーミック電極(第2のソース電極)との間に高電圧(ストレス電圧)が印加されているときにチャネル領域の近傍の結晶欠陥、界面等に電子が捕獲され、オン抵抗が増大する現象である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【0008】
本開示の目的は、電流コラプスを抑制することが可能な電気装置及びマルチレベルインバータを提供することにある。
【0009】
本開示に係る一態様の電気装置は、双方向スイッチを備える。前記双方向スイッチは、基板と、GaN層と、AlGaN層と、第1のソース電極と、第1のゲート電極と、第2のゲート電極と、第2のソース電極と、第1のp型Alx1Ga1-x1N層(ここで、0≦x1<1)と、第2のp型Alx2Ga1-x2N層(ここで、0≦x2<1)と、を備える。前記基板は、導電性を有する。前記GaN層は、前記基板上に形成されている。前記AlGaN層は、前記GaN層上に形成されている。前記第1のソース電極、前記第1のゲート電極、前記第2のゲート電極、及び前記第2のソース電極は、前記AlGaN層上に形成されている。前記第1のp型Alx1Ga1-x1N層は、前記第1のゲート電極と前記AlGaN層との間に介在している。前記第2のp型Alx2Ga1-x2N層は、前記第2のゲート電極と前記AlGaN層との間に介在している。前記基板は、前記第1のソース電極、前記第2のソース電極、前記第1のゲート電極及び前記第2のゲート電極の全てに対して電気的に絶縁されている。前記双方向スイッチは、前記基板に導電性材料によって接合されている導電性ダイパッドと、前記導電性ダイパッドと一体に形成されており、前記基板を定電位点に接続するための端子と、を更に備える。前記双方向スイッチの前記端子が前記定電位点に接続されている。前記定電位点は、直流電源の一端、又はダイオードブリッジを含む整流平滑回路の一出力端、又はツェナダイオードのカソードである。
本開示に係る一態様の電気装置は、双方向スイッチを備える。前記双方向スイッチは、基板と、GaN層と、AlGaN層と、第1のソース電極と、第1のゲート電極と、第2のゲート電極と、第2のソース電極と、第1のp型Al
x1
Ga
1-x1
N層(ここで、0≦x1<1)と、第2のp型Al
x2
Ga
1-x2
N層(ここで、0≦x2<1)と、を備える。前記基板は、導電性を有する。前記GaN層は、前記基板上に形成されている。前記AlGaN層は、前記GaN層上に形成されている。前記第1のソース電極、前記第1のゲート電極、前記第2のゲート電極、及び前記第2のソース電極は、前記AlGaN層上に形成されている。前記第1のp型Al
x1
Ga
1-x1
N層は、前記第1のゲート電極と前記AlGaN層との間に介在している。前記第2のp型Al
x2
Ga
1-x2
N層は、前記第2のゲート電極と前記AlGaN層との間に介在している。前記基板は、前記第1のソース電極、前記第2のソース電極、前記第1のゲート電極及び前記第2のゲート電極の全てに対して電気的に絶縁されている。前記双方向スイッチは、前記基板に導電性材料によって接合されている導電性ダイパッドと、前記導電性ダイパッドと一体に形成されており、前記基板を定電位点に接続するための端子と、を更に備える。前記双方向スイッチの前記端子が前記定電位点に接続されている。前記定電位点は、ダイオードブリッジを含む整流平滑回路における前記ダイオードブリッジの一対の出力端のうち低電位側の出力端である。
【0010】
本開示に係る一態様の電気装置は、双方向スイッチ装置と、制御システムと、を備える。前記双方向スイッチ装置は、複数の双方向スイッチを有し、前記複数の双方向スイッチを並列接続して構成されている。前記制御システムは、前記双方向スイッチ装置を制御する。前記複数の双方向スイッチの各々は、基板と、GaN層と、AlGaN層と、第1のソース電極と、第1のゲート電極と、第2のゲート電極と、第2のソース電極と、第1のp型Al
x1
Ga
1-x1
N層(ここで、0≦x1<1)と、第2のp型Al
x2
Ga
1-x2
N層(ここで、0≦x2<1)と、を備える。前記基板は、導電性を有する。前記GaN層は、前記基板上に形成されている。前記AlGaN層は、前記GaN層上に形成されている。前記第1のソース電極、前記第1のゲート電極、前記第2のゲート電極、及び前記第2のソース電極は、前記AlGaN層上に形成されている。前記第1のp型Al
x1
Ga
1-x1
N層は、前記第1のゲート電極と前記AlGaN層との間に介在している。前記第2のp型Al
x2
Ga
1-x2
N層は、前記第2のゲート電極と前記AlGaN層との間に介在している。前記複数の双方向スイッチの各々では、前記基板は、前記第1のソース電極、前記第2のソース電極、前記第1のゲート電極及び前記第2のゲート電極の全てに対して電気的に絶縁されている。前記双方向スイッチ装置は、前記複数の双方向スイッチの基板に導電性材料によって接合されている導電性ダイパッドと、前記導電性ダイパッドと一体に形成されており、前記複数の双方向スイッチの基板を定電位点に接続するための端子と、を備える。前記複数の双方向スイッチの各々は、前記第1のゲート電極及び前記第2のゲート電極それぞれに与えられる第1のゲート電圧及び第2のゲート電圧の組み合わせに応じて、双方向の電流を通過させる双方向オン状態と、双方向の電流を阻止する双方向オフ状態と、第1方向の電流を通過させる第1のダイオード状態と、前記第1方向とは逆向きである第2方向の電流を通過させる第2のダイオード状態と、を切替可能である。前記制御システムは、前記複数の双方向スイッチの各々において前記第1のダイオード状態又は前記第2のダイオード状態のときの飽和電流が前記双方向スイッチ装置への入力電流の大きさよりも小さな値に抑制されるように、前記複数の双方向スイッチの各々の前記第1のゲート電極及び前記第2のゲート電極へ第1のゲート電圧及び第2のゲート電圧それぞれを与える。
【0011】
本開示に係る一態様のマルチレベルインバータは、前記電気装置を備える。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、実施形態1に係る双方向スイッチの断面図である。
【
図2】
図2は、同上の双方向スイッチにおける基板の電位とオン抵抗比との関係を示すグラフである。
【
図3】
図3は、同上の双方向スイッチにおける基板の電位とオン抵抗比との関係を示すグラフである。
【
図4】
図4は、同上の双方向スイッチの端子が接続される定電位点を例示するための回路図である。
【
図5】
図5は、同上の双方向スイッチにおける端子の接続先の電位とオン抵抗比との関係を示すグラフである。
【
図6】
図6は、同上の双方向スイッチを備える電気装置であるマルチレベルインバータの回路図である。
【
図7】
図7は、実施形態2に係るスイッチシステムの回路図である。
【
図8】
図8は、同上のスイッチシステムにおける双方向スイッチ装置の備える双方向スイッチの断面図である。
【
図9】
図9Aは、同上のスイッチシステムにおける双方向スイッチ装置の備える双方向スイッチのFETモードでの電流-電圧特性図である。
図9Bは、同上のスイッチシステムにおける双方向スイッチ装置の備える双方向スイッチのダイオードモードでの電流-電圧特性図である。
【
図10】
図10は、同上のスイッチシステムの動作説明図である。
【
図11】
図11は、同上のスイッチシステムを適用する降圧型DC-DCコンバータの回路図である。
【
図12】
図12は、同上のスイッチシステムを降圧型DC-DCコンバータに適用する場合のスイッチシステムの動作説明図である。
【
図13】
図13は、同上のスイッチシステムを適用する昇圧型DC-DCコンバータの回路図である。
【
図14】
図14は、実施形態3に係るスイッチシステムの回路図である。
【
図15】
図15は、同上のスイッチシステムにおける双方向スイッチ装置の備える双方向スイッチの電流-電圧特性図である。
【
図16】
図16は、実施形態4に係るスイッチシステムの回路図である。
【
図17】
図17は、同上のスイッチシステムを降圧型DC-DCコンバータに適用する場合のスイッチシステムの動作説明図である。
【
図18】
図18は、実施形態5に係るスイッチシステムの回路図である。
【
図19】
図19は、同上のスイッチシステムを適用する3レベルインバータ回路の回路図である。
【
図20】
図20は、実施形態6に係るスイッチシステムの回路図である。
【
図21】
図21は、実施形態7に係るスイッチシステムの回路図である。
【
図22】
図22は、同上のスイッチシステムを3レベルインバータ回路に適用する場合のスイッチシステムの動作説明図である。
【
図23】
図23は、実施形態8に係るスイッチシステムの回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
下記の実施形態等において説明する
図1及び8は、模式的な図であり、
図1及び8中の各構成要素の大きさや厚さそれぞれの比が、必ずしも実際の寸法比を反映しているとは限らない。
【0014】
(実施形態1)
以下では、実施形態1に係る双方向スイッチ1について、
図1に基づいて説明する。
【0015】
(1.1)概要
双方向スイッチ1は、双方向スイッチ素子10と、双方向スイッチ素子10を保護するパッケージ11と、を備える。双方向スイッチ素子10は、基板2と、GaN層4と、AlGaN層5と、第1のソース電極S1と、第1のゲート電極G1と、第2のゲート電極G2と、第2のソース電極S2と、第1のp型Alx1Ga1-x1N層61(ここで、0≦x1<1)と、第2のp型Alx2Ga1-x2N層62(ここで、0≦x2<1)と、を備える。実施形態1に係る双方向スイッチ1では、x1=x2である。パッケージ11は、双方向スイッチ素子10の第1のソース電極S1、第1のゲート電極G1、第2のソース電極S2及び第2のゲート電極G2が、それぞれ接続されている第1のソース端子、第1のゲート端子、第2のソース端子及び第2のゲート端子を備える。パッケージ11は、双方向スイッチ素子10の基板2に接続されている端子8を更に備える。
【0016】
双方向スイッチ素子10では、GaN層4は、基板2上に形成されている。AlGaN層5は、GaN層4上に形成されている。第1のソース電極S1、第1のゲート電極G1、第2のゲート電極G2、及び第2のソース電極S2は、AlGaN層5上に形成されている。第1のp型Alx1Ga1-x1N層61は、第1のゲート電極G1とAlGaN層5との間に介在している。第2のp型Alx2Ga1-x2N層62は、第2のゲート電極G2とAlGaN層5との間に介在している。したがって、双方向スイッチ素子10では、基板2上に、GaN層4とAlGaN層5と第1のp型Alx1Ga1-x1N層61及び第2のp型Alx2Ga1-x2N層62とを含む積層体100が形成されている。
【0017】
双方向スイッチ素子10は、デュアルゲート型のGaN系GIT(GIT:Gate Injection Transistor)である。ここにおいて、双方向スイッチ素子10では、AlGaN層5は、GaN層4上に形成されており、GaN層4と共にヘテロ接合部HJ1を構成する。GaN層4においては、ヘテロ接合部HJ1の近傍に、2次元電子ガス(Two-Dimensional Electron Gas)が発生している。2次元電子ガスを含む領域(以下、「2次元電子ガス層」ともいう)は、nチャネル層(電子伝導層)として機能することが可能である。
【0018】
(1.2)双方向スイッチの各構成要素
以下、双方向スイッチ1の各構成要素について、より詳細に説明する。
【0019】
(1.2.1)双方向スイッチ素子
(1.2.1.1)基板
基板2は、導電性のシリコン基板である。したがって、基板2は、導電性基板の一種である。
【0020】
基板2は、第1主面21及び第2主面22を有する。基板2の第1主面21及び第2主面22は、基板2の厚さ方向に直交する。ここにおいて、「直交」とは、厳密に直交する場合のみに限定されず、略直交(厚さ方向と第1主面21又は第2主面22とのなす角度が例えば90°±5°)でもよい。第2主面22は、基板2の厚さ方向において第1主面21の反対側に位置している。第1主面21及び第2主面22は、互いに対向する。ここにおいて、「対向する」とは物理的ではなく幾何学的に対向することを意味する。双方向スイッチ素子10では、積層体100は、基板2の第1主面21上に形成されている。基板2の第1主面21は、例えば、(111)面である。基板2の第1主面21は、例えば、(111)面からのオフ角が0°よりも大きく5°以下の結晶面でもよい。ここにおいて、「オフ角」とは、(111)面に対する第1主面21の傾斜角である。したがって、オフ角が0°であれば、第1主面21は、(111)面である。(111)面は、3つの指数を括弧のなかに入れて表記したミラー指数(Miller Index)による結晶面である。基板2の厚さは、例えば、100μm以上1000μm以下である。
【0021】
基板2は、第1のソース電極S1、第2のソース電極S2、第1のゲート電極G1及び第2のゲート電極G2の全てに対して電気的に絶縁されている。
【0022】
(1.2.1.2)積層体
GaN層4は、バッファ層3を介して基板2上に形成されている。ここにおいて、上述の積層体100は、バッファ層3を含む。積層体100では、バッファ層3、GaN層4及びAlGaN層5は、基板2側からこの順に並んでいる。AlGaN層5は、GaN層4よりもバンドギャップが大きい。
【0023】
積層体100は、AlGaN層5上に形成されている第1のp型Alx1Ga1-x1N層61及び第2のp型Alx2Ga1-x2N層62を含んでいる。第1のp型Alx1Ga1-x1N層61及び第2のp型Alx2Ga1-x2N層62は、AlGaN層5の表面51の一部のみを覆っている。したがって、AlGaN層5の表面51は、第1のp型Alx1Ga1-x1N層61及び第2のp型Alx2Ga1-x2N層62に覆われている領域と、第1のp型Alx1Ga1-x1N層61及び第2のp型Alx2Ga1-x2N層62に覆われていない領域と、を含む。第1のp型Alx1Ga1-x1N層61と第2のp型Alx2Ga1-x2N層62とは、互いに離れている。第1のp型Alx1Ga1-x1N層61及び第2のp型Alx2Ga1-x2N層62は、Mgを含有している。
【0024】
双方向スイッチ素子10では、第1のp型Alx1Ga1-x1N層61及び第2のp型Alx2Ga1-x2N層62の各々は、例えば、p型AlGaN層であるが、p型GaN層であってもよい。
【0025】
積層体100は、基板2上に例えばMOVPE(Metal Organic Vapor Phase Epitaxy)によって成長されたエピタキシャル成長層である。基板2上に積層体100を成長させるエピタキシャル成長装置としてMOVPE装置を採用する場合、Alの原料ガスとしては、トリメチルアルミニウム(TMAl)を採用するのが好ましい。また、Gaの原料ガスとしては、トリメチルガリウム(TMGa)を採用するのが好ましい。Nの原料ガスとしては、NH3を採用するのが好ましい。p型導電性に寄与する不純物であるMgの原料ガスとしては、ビスシクロペンタジエニルマグネシウム(Cp2Mg)を採用するのが好ましい。各原料ガスそれぞれのキャリアガスとしては、例えば、H2ガスを採用するのが好ましい。各原料ガスは、特に限定されず、例えば、Gaの原料ガスとしてトリエチルガリウム(TEGa)、Nの原料ガスとしてヒドラジン誘導体を採用してもよい。
【0026】
バッファ層3は、例えば、アンドープのGaN層である。バッファ層3は、GaN層4、AlGaN層5、第1のp型Alx1Ga1-x1N層61及び第2のp型Alx2Ga1-x2N層62の結晶性の向上を目的として設けた層である。バッファ層3は、基板2の第1主面21上に直接形成されている。バッファ層3を構成するアンドープのGaN層は、その成長時に不可避的に混入されるMg、H、Si、C、O等の不純物が存在してもよい。バッファ層3の厚さは、例えば、100nm以上3000nm以下である。
【0027】
GaN層4は、アンドープのGaN層である。GaN層4を構成するアンドープのGaN層は、その成長時に不可避的に混入されるMg、H、Si、C、O等の不純物が存在してもよい。GaN層4の厚さは、例えば、100nm以上700nm以下である。
【0028】
AlGaN層5は、アンドープのAlGaN層である。AlGaN層5を構成するアンドープのAlGaN層は、その成長時に不可避的に混入されるMg、H、Si、C、O等の不純物が存在してもよい。AlGaN層5のAlの組成比は、例えば、0.2である。ここにおいて、AlGaN層5のAlの組成比とは、アンドープのAlGaN層をAlyGa1-yN層で表したときのyの値である。つまり、AlGaN層5は、アンドープのAl0.2Ga0.8N層である。組成比は、例えば、EDX(Energy Dispersive X-ray Spectroscopy)による組成分析で求めた値である。組成比の相対的な大小関係を議論する上では、組成比は、EDXに限らず、例えば、オージェ電子分光(Auger Electron Spectroscopy)による組成分析、SIMS(Secondary Ion Mass Spectroscopy)による組成分析で求めた値でもよい。AlGaN層5の厚さは、例えば、20nm以上100nm以下である。
【0029】
第1のp型Alx1Ga1-x1N層61及び第2のp型Alx2Ga1-x2N層62は、MOVPE装置によって第1のp型Alx1Ga1-x1N層61と第2のp型Alx2Ga1-x2N層62との元になるp型AlxGa1-xN層(ここで、x=x1=x2)をAlGaN層5上に成長させた後に、フォトリソグラフィ技術及びエッチング技術を利用してp型AlxGa1-xN層をパターニングすることによって形成されている。
【0030】
第1のp型Alx1Ga1-x1N層61及び第2のp型Alx2Ga1-x2N層62の各々のAlの組成比は、AlGaN層5のAlの組成比と同じ(例えば、0.2)であるが、AlGaN層5のAlの組成比と異なっていてもよい。第1のp型Alx1Ga1-x1N層61及び第2のp型Alx2Ga1-x2N層62の各々の厚さは、例えば、50nm以上300nm以下である。
【0031】
(1.2.1.3)第1のソース電極、第1のゲート電極、第2のソース電極、第2のゲート電極
第1のソース電極S1は、AlGaN層5上に形成されている。第1のゲート電極G1は、AlGaN層5上に形成されており、第1のソース電極S1から離れている。第2のゲート電極G2は、AlGaN層5上に形成されており、第1のゲート電極G1から見て第1のソース電極S1とは反対側において第1のゲート電極G1から離れている。第2のソース電極S2は、AlGaN層5上に形成されており、第2のゲート電極G2から見て第1のゲート電極G1とは反対側において第2のゲート電極G2から離れている。
【0032】
第1のソース電極S1及び第2のソース電極S2は、AlGaN層5の表面51において第1のp型Alx1Ga1-x1N層61及び第2のp型Alx2Ga1-x2N層62に覆われていない領域に形成されている。第1のソース電極S1と第2のソース電極S2とは、互いに離れている。第1のソース電極S1及び第2のソース電極S2は、ヘテロ接合部HJ1と電気的に接続されている。ここにおいて、「電気的に接続されている」とはオーミック接触していることを意味する。第1のソース電極S1及び第2のソース電極S2の各々は、例えば、TiとAlとを含んでいる。
【0033】
第1のゲート電極G1は、第1のp型Alx1Ga1-x1N層61を介してAlGaN層5上に形成されている。また、第2のゲート電極G2は、第2のp型Alx2Ga1-x2N層62を介してAlGaN層5上に形成されている。第1のゲート電極G1と第2のゲート電極G2との距離は、第1のp型Alx1Ga1-x1N層61と第2のp型Alx2Ga1-x2N層62との距離よりも長い。第1のゲート電極G1は、第1のソース電極S1に対応している。第2のゲート電極G2は、第2のソース電極S2に対応している。第1のゲート電極G1及び第2のゲート電極G2の各々は、AlGaN層5の表面51に沿った方向において、対応する第1のソース電極S1及び第2のソース電極S2それぞれから離れている。第1のゲート電極G1及び第2のゲート電極G2は、例えば、第1のp型Alx1Ga1-x1N層61及び第2のp型Alx2Ga1-x2N層62にそれぞれオーミック接触している。第1のゲート電極G1及び第2のゲート電極G2の各々は、例えば、PdとAuとを含んでいる。
【0034】
双方向スイッチ素子10では、AlGaN層5の表面51に沿った一方向において、第1のソース電極S1、第1のゲート電極G1、第2のゲート電極G2及び第2のソース電極S2が、この順に並んでいる。第1のソース電極S1、第1のゲート電極G1、第2のゲート電極G2及び第2のソース電極S2は、上記一方向において互いに離れている。
【0035】
(1.2.1.4)双方向スイッチ素子の動作
以下では、説明の便宜上、第1のゲート電極G1と第1のソース電極S1との間に第1の閾値電圧以上の電圧が印加されていない状態を、第1のゲート電極G1がオフ状態ともいう。また、第1のゲート電極G1と第1のソース電極S1との間に第1のゲート電極G1を高電位側として第1の閾値電圧以上の電圧が印加されている状態を、第1のゲート電極G1がオン状態ともいう。また、第2のゲート電極G2と第2のソース電極S2との間に第2の閾値電圧以上の電圧が印加されていない状態を、第2のゲート電極G2がオフ状態ともいう。また、第2のゲート電極G2と第2のソース電極S2との間に第2のゲート電極G2を高電位側として第2の閾値電圧以上の電圧が印加されている状態を、第2のゲート電極G2がオン状態ともいう。
【0036】
双方向スイッチ素子10は、上述の第1のp型Alx1Ga1-x1N層61及び第2のp型Alx2Ga1-x2N層62を備えることにより、ノーマリオフ型のトランジスタを実現している。ここにおいて、第1のp型Alx1Ga1-x1N層61は、第1のゲート電極G1がオフ状態のときに、第1のp型Alx1Ga1-x1N層61直下においてAlGaN層5とGaN層4とに空乏層を形成する。第2のp型Alx2Ga1-x2N層62は、第2のゲート電極G2がオフ状態のときに、第2のp型Alx2Ga1-x2N層62直下においてAlGaN層5とGaN層4とに空乏層を形成する。双方向スイッチ素子10では、第1のゲート電極G1がオン状態のときには、第1のゲート電極G1と第1のソース電極S1との間を2次元電子ガス層でつなげることができる。言い換えれば、双方向スイッチ素子10では、第1のゲート電極G1がオン状態のときには、第1のゲート電極G1と第1のソース電極S1との間で2次元電子ガス層が空乏層により遮られなくなる。また、双方向スイッチ素子10では、第2のゲート電極G2がオン状態のときには、第2のゲート電極G2と第2のソース電極S2との間を2次元電子ガス層でつなげることができる。言い換えれば、双方向スイッチ素子10では、第2のゲート電極G2がオン状態のときには、第2のゲート電極G2と第2のソース電極S2との間で2次元電子ガス層が空乏層により遮られなくなる。
【0037】
双方向スイッチ素子10では、第1のゲート電極G1がオフ状態で、かつ第2のゲート電極G2がオフ状態である場合(第1の動作モードの場合)、第1のソース電極S1と第2のソース電極S2との間において、いずれの方向にも電流を流すことができない。より詳細には、第1の動作モードの場合、第1のソース電極S1が第2のソース電極S2よりも高電位のときに第1のソース電極S1から第2のソース電極S2へ流れる電流が遮断され、かつ、第2のソース電極S2が第1のソース電極S1よりも高電位のときに第2のソース電極S2から第1のソース電極S1へ流れる電流が遮断される。
【0038】
双方向スイッチ素子10では、第1のゲート電極G1がオン状態で、かつ第2のゲート電極G2がオン状態である場合(第2の動作モードの場合)、第1のソース電極S1と第2のソース電極S2との間において、双方向に電流を流すことができる。より詳細には、第2の動作モードの場合、第1のソース電極S1が第2のソース電極S2よりも高電位のときに第1のソース電極S1から第2のソース電極S2へ電流が流れ、かつ、第2のソース電極S2が第1のソース電極S1よりも高電位のときに第2のソース電極S2から第1のソース電極S1へ電流が流れる。
【0039】
双方向スイッチ素子10では、第1のゲート電極G1がオン状態で、かつ第2のゲート電極G2がオフ状態である場合(第3の動作モードの場合)、ダイオードとして機能する。より詳細には、第3の動作モードの場合、第1のソース電極S1が第2のソース電極S2よりも高電位のときには第1のソース電極S1から第2のソース電極S2へ流れる電流が遮断され、かつ、第2のソース電極S2が第1のソース電極S1よりも第2の閾値電圧以上、高電位のときには第2のソース電極S2から第1のソース電極S1へ電流が流れる。
【0040】
双方向スイッチ素子10では、第1のゲート電極G1がオフ状態で、かつ第2のゲート電極G2がオン状態である場合(第4の動作モードの場合)、ダイオードとして機能する。より詳細には、第4の動作モードの場合、第2のソース電極S2が第1のソース電極S1よりも高電位のときには第2のソース電極S2から第1のソース電極S1へ流れる電流が遮断され、かつ、第1のソース電極S1が第2のソース電極S2よりも第1の閾値電圧以上、高電位のときには第1のソース電極S1から第2のソース電極S2へ電流が流れる。
【0041】
双方向スイッチ素子10では、第1の閾値電圧と第2の閾値電圧とが同じ値であるが、互いに異なる値であってもよい。第1の閾値電圧は、第1のゲート電極G1の下側において2次元電子ガス層を遮るように広がっている空乏層が縮小し2次元電子ガス層に電流を流すことができるようになる閾値電圧である。第2の閾値電圧は、第2のゲート電極G2の下側において2次元電子ガス層を遮るように広がっている空乏層が縮小し2次元電子ガス層に電流を流すことができるようになる閾値電圧である。
【0042】
(1.2.2)パッケージ
パッケージ11は、双方向スイッチ素子10の第1のソース電極S1、第1のゲート電極G1、第2のソース電極S2及び第2のゲート電極G2が、それぞれ接続部(例えば、ボンディングワイヤ)を介して接続されている第1のソース端子、第1のゲート端子、第2のソース端子及び第2のゲート端子を備える。パッケージ11は、双方向スイッチ素子10の基板2に接続されている端子8を更に備える。端子8は、基板2を双方向スイッチ1のオン期間における定電位点に接続するための端子である。双方向スイッチ1のオン期間は、双方向スイッチ素子10のオン期間と同じ意味である。また、パッケージ11は、パッケージボディ110を備える。パッケージボディ110は、例えば、略直方体状に形成されている。パッケージボディ110は、電気絶縁性を有する。パッケージボディ110は、電気絶縁性を有する樹脂によって形成されている。パッケージボディ110は、例えば、封止用の樹脂(例えば、黒色顔料を含むエポキシ樹脂等)によって形成されており、遮光性を有する。
【0043】
パッケージ11は、双方向スイッチ素子10を搭載する導電性ダイ7を備えている。端子8は、導電性ダイ7と一体に形成されており、導電性ダイ7と電気的に接続されている。導電性ダイ7の材料は、例えば、銅、銅合金等である。ここにおいて、双方向スイッチ1では、双方向スイッチ素子10の基板2が導電性材料によって導電性ダイ7と接合されることで、基板2と端子8とが電気的に接続されている。これにより、双方向スイッチ1では、基板2の電位が、端子8の電位と同電位となる。導電性材料は、例えば、導電性ペースト(例えば、銀ペースト、金ペースト)等である。
【0044】
パッケージ11において、第1のソース端子と、第1のゲート端子と、第2のソース端子と、第2のゲート端子と、端子8と、は互いに離れて配置されており、互いに電気的に絶縁されている。
【0045】
(1.3)双方向スイッチの特性
図2は、双方向スイッチ1における基板2の電位とオン抵抗比との関係を示すグラフである。
図2では、基板2を端子8を介して直流電源の一端に接続して基板2の電位をVsubとし、Vsubを-100V、0V、100V、200V、300V、400Vのうちいずれかの定電位とした場合、それぞれについて双方向スイッチ1のオン抵抗(Ron)を求め、基準オン抵抗に対するオン抵抗の比であるオン抵抗比(Ron ratio)を求めた結果を示している。
【0046】
オン抵抗比を求めるにあたっては、まず、基板2の電位を定電位とした状態で、制御回路によって双方向スイッチ1をターンオンさせる場合、第1のゲート電極G1又は第2のゲート電極G2であって第1のソース電極S1と第2のソース電極S2とのうち低電位側のソース電極に対応するゲート電極に閾値電圧以上の電圧(例えば、5V)を印加する第1タイミングと、高電位側のソース電極に対応するゲート電極に閾値電圧以上の電圧(例えば、5V)を印加する第2タイミングと、に時間差(例えば、500nsec)を生じさせるように双方向スイッチ素子10を制御する。双方向スイッチ1をターンオンさせる前から第1のソース電極S1と第2のソース電極S2との間に印加するストレス電圧は、400Vとした。また、双方向スイッチ1をターンオンさせたときに第1のソース電極S1と第2のソース電極S2との間に流れる電流を10Aとした。オン抵抗については、第1のソース電極S1と第2のソース電極S2との間の電圧と電流とに基づいてオームの法則に基づいて求めた値である。オン抵抗比は、{双方向スイッチ1の基板2の電位を定電位であるVsubとし、かつストレス電圧を400V、電流を10Aとして、双方向スイッチ1をターンオンさせてから1μsec後のオン抵抗}/{双方向スイッチ1の基板2の電位を0Vとしかつストレス電圧を100Vとして、双方向スイッチ1をターンオンさせてから1μsec後のオン抵抗}である。双方向スイッチ1の基板2の電位を0Vとし(接地し)かつストレス電圧を100Vとして、双方向スイッチ1をターンオンさせてから1μsec後のオン抵抗は、電流コラプスが発生していないときのオン抵抗と同等である。
【0047】
図2には図示されていないが、基板2の電位をフローティング電位とした場合、オン抵抗比は、5である。ここにおいて、基板2の電位をフローティング電位とした場合、オン抵抗比は、{双方向スイッチ1の基板2をフローティング電位とし、かつストレス電圧を400V、電流を10Aとして、双方向スイッチ1をターンオンさせてから1μsec後のオン抵抗}/{双方向スイッチ1の基板2の電位を0Vとしかつストレス電圧を100Vとして、双方向スイッチ1をターンオンさせてから1μsec後のオン抵抗}である。
図2から、基板2の電位を定電位とすることによって、基板2の電位をフローティング電位とした場合と比べて、オン抵抗比を略5分の1程度に低減できることが分かる。
【0048】
また、
図3は、
図2の結果を得た双方向スイッチ1と同じ構成の双方向スイッチ1における基板2の電位とオン抵抗比との関係を示すグラフである。ただし、
図3と
図2とは互いに異なるサンプル(双方向スイッチ1)の測定結果を示している。
【0049】
図3では、
図2の場合と同様、基板2を端子8を介して直流電源の一端に接続して基板2の電位をVsubとしている。また、
図3におけるオン抵抗比(Ron ratio)の求め方は
図2におけるオン抵抗比(Ron ratio)の求め方と同じである。
【0050】
図3から、基板2の電位が正の場合には基板2の電位の絶対値が200Vよりも大きくなってもオン抵抗比が略一定の値であるのに対して、基板2の電位が負の場合には基板2の電位の絶対値が大きくなって200V程度になるとオン抵抗比が増加する傾向にあることが分かる。なお、
図3には図示されていないが、基板2の電位をフローティング電位とした場合、オン抵抗比は、3.8である。
【0051】
図3から双方向スイッチ1では、基板2の電位を定電位点とする場合において、定電位の電位がグランドを基準として負の電位の場合、負の電位の絶対値が所定値(例えば、150V)以下であれば、電流コラプスを抑制することが可能となる。なお、所定値については、双方向スイッチ1の基板2の厚さ、積層体100の厚さ、積層体100の結晶構造、積層体100の結晶性等の違いによって変わることもある。積層体100の結晶構造とは、積層体100に含まれる、GaN層4、AlGaN層5、第1のp型Al
x1Ga
1-x1N層61及び第2のp型Al
x2Ga
1-x2N層62それぞれを構成している結晶の結晶構造を意味する。また、積層体100の結晶性とは、積層体100に含まれる、GaN層4、AlGaN層5、第1のp型Al
x1Ga
1-x1N層61及び第2のp型Al
x2Ga
1-x2N層62それぞれを構成している結晶の結晶性を意味する。
【0052】
双方向スイッチ1における端子8の接続先としては、例えば、
図4に示すような定電圧回路において決めてもよい。
図4の定電圧回路は、交流電源Vsから出力される交流電圧から所定の直流電圧を生成する回路である。交流電源Vsは、例えば、商用電源である。
図4の定電圧回路は、交流電源Vsから出力される交流電圧を全波整流するダイオードブリッジDBと、ダイオードブリッジDBの一対の出力端TA1,TA2間に接続されたコンデンサ(平滑コンデンサ)C11と、コンデンサC11の両端間に接続された抵抗R12とツェナダイオードZDとの直列回路と、ツェナダイオードZDに並列接続されたコンデンサC12と、を備える。ダイオードブリッジDBは、ブリッジ接続された4つのダイオードD1~D4を含んでいる。定電圧回路は、ダイオードブリッジDBと平滑コンデンサとを含む整流平滑回路を有している。また、定電圧回路は、ダイオードブリッジDBの低電位側の出力端TA2とグランドとの間に接続された抵抗R13を更に有している。
【0053】
双方向スイッチ1の第1のソース電極S1と第2のソース電極S2との間に200Vの交流電源を接続し、双方向スイッチ1の端子8を定電位点として定電圧回路のグランド、ダイオードブリッジDBの高電位側の出力端TA1(整流平滑回路の高電位側の出力端)、ツェナダイオードZDのカソードそれぞれに接続した場合について、双方向スイッチ1のオン抵抗を求め、オン抵抗比を求めた結果を
図5に示す。
図5において、「端子の接続先の電位」は、双方向スイッチ1における端子8の接続先の電位を示す。ここで、
図5における「0V」は、定電圧回路のグランドの電位である。また、
図5における「ダイオードブリッジ電圧」は、ダイオードブリッジDBの高電位側の出力端TA1の電位を示す。また、
図5における「ツェナ電圧」は、ツェナダイオードZDのカソードの電位を示す。また、
図5における「フローティング」は、基板2の電位をフローティング電位とした場合を示す。オン抵抗を求めるにあたって、双方向スイッチ1をターンオンさせる前から第1のソース電極S1と第2のソース電極S2との間に印加するストレス電圧は、200Vとした。
図5は、双方向スイッチ1をターンオンさせてから12μsec後のオン抵抗を求めてオン抵抗比を求めた結果である。
【0054】
図5から、双方向スイッチ1の第1のソース電極S1と第2のソース電極S2との間に200Vの交流電源を接続した場合においても、基板2の電位を定電位とすることによって、基板2の電位をフローティング電位とした場合と比べて、オン抵抗比を低減できることが分かる。したがって、双方向スイッチ1の端子8を接続する定電位点は、電位が完全に一定になる電位点に限らず、双方向スイッチ1のオン期間においてほぼ定電位とみなせる電位点でもよい。実施形態1に係る双方向スイッチ1は、基板2に接続された端子8であって基板2を定電位点に接続するための端子8を更に備えることにより、電流コラプスを抑制することが可能となる。
【0055】
また、双方向スイッチ1の端子8を接続する定電位点は、ダイオードブリッジDBを含む整流平滑回路におけるダイオードブリッジDBの一対の出力端TA1、TA2のうち低電位側の出力端TA2であってもよい。この場合、定電位点として定電圧回路のグランド、ダイオードブリッジDBの高電位側の出力端TA1(整流平滑回路の高電位側の出力端)及びツェナダイオードZDのカソードのいずれかを採用した場合と比べて、双方向スイッチ1の電流コラプスを、より抑制することが可能となる。
図4の定電圧回路では、ダイオードブリッジDBの低電位側の出力端TA2とグランドとの間に抵抗R13を設けてあるが、抵抗R13は、必ずしも設ける必要はない。
図4の定電圧回路において抵抗R13をなくしてダイオードブリッジ回路DBの低電位側の出力端TA2をグランドに接続した構成では、ダイオードブリッジDBの低電位側の出力端TA2の電位は、例えば、ダイオードブリッジDBのダイオードD3に順方向電流が流れているときダイオードブリッジDBのダイオードD3の順方向電圧(Vf)にクランプされる。また、この構成では、ダイオードブリッジDBの低電位側の出力端TA2の電位は、例えば、ダイオードブリッジDBのダイオードD1に順方向電流が流れているときダイオードブリッジDBのダイオードD1の順方向電圧(Vf)にクランプされる。
【0056】
(1.4)電気装置
以下、双方向スイッチ1を備える電気装置300の一例について
図6に基づいて説明する。
【0057】
電気装置300は、マルチレベルインバータであり、より詳細には、T型の3レベルインバータである。ここにおいて、電気装置300は、2つのスイッチング素子Q1,Q2の直列回路と、スイッチング素子Q1に逆並列に接続されたダイオードD1と、スイッチング素子Q2に逆並列に接続されたダイオードD2と、2つのスイッチング素子Q1,Q2の接続点に接続された双方向スイッチ1と、を備える。2つのスイッチング素子Q1,Q2の各々は、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)である。
【0058】
また、電気装置300は、制御部301を備える。制御部301は、双方向スイッチ1を制御する。ここにおいて、制御部301は、双方向スイッチ1をターンオンさせる場合、第1のゲート電極G1又は第2のゲート電極G2であって第1のソース電極S1と第2のソース電極S2とのうち低電位側のソース電極に対応するゲート電極に閾値電圧以上の電圧を印加する第1タイミングと、高電位側のソース電極に対応するゲート電極に閾値電圧以上の電圧を印加する第2タイミングと、に時間差(例えば、500nsec)を生じさせるように双方向スイッチ1を制御する。なお、制御部301は、双方向スイッチ1だけでなく、2つのスイッチング素子Q1,Q2も制御するが、双方向スイッチ1のみを制御するように構成されていてもよい。
【0059】
制御部301の実行主体は、コンピュータシステムを含んでいる。コンピュータシステムは、1又は複数のコンピュータを有している。コンピュータシステムは、ハードウェアとしてのプロセッサ及びメモリを主構成とする。コンピュータシステムのメモリに記録されたプログラムをプロセッサが実行することによって、本開示における制御部301の実行主体としての機能が実現される。プログラムは、コンピュータシステムのメモリに予め記録されていてもよいが、電気通信回線を通じて提供されてもよいし、コンピュータシステムで読み取り可能なメモリカード、光学ディスク、ハードディスクドライブ(磁気ディスク)等の非一時的記録媒体に記録されて提供されてもよい。コンピュータシステムのプロセッサは、半導体集積回路(IC)又は大規模集積回路(LSI)を含む1乃至複数の電子回路で構成される。複数の電子回路は、1つのチップに集約されていてもよいし、複数のチップに分散して設けられていてもよい。複数のチップは、1つの装置に集約されていてもよいし、複数の装置に分散して設けられていてもよい。
【0060】
電気装置300を構成するマルチレベルインバータでは、2つのスイッチング素子Q1,Q2の直列回路の両端間に、直流電源となる2つのコンデンサC1及びC2の直列回路が接続されている。2つのコンデンサC1及びC2の直列回路は、直流電源Vdの両端間に接続されている。また、電気装置300を構成するマルチレベルインバータでは、第1のソース電極S1と第2のソース電極S2とのうち一方のソース電極が2つのスイッチング素子Q1,Q2の接続点に接続されているが、他方のソース電極が2つのコンデンサC1,C2の接続点A2に接続されている。
図6では、端子8が接続点A2に接続されているが、直流電源VdとコンデンサC1との接続点A1に接続されていてもよい。また、端子8は、直流電源VdとコンデンサC2との接続点A3に接続されていてもよい。端子8を接続点A1あるいは接続点A2に接続した場合は、第1のソース電極S1と第2のソース電極S2とのうち高電位側のソース電極と基板2との間に直流電源Vdの電圧Edが印加されうる。一方、端子8を接続点A2に接続した場合、第1のソース電極S1と第2のソース電極S2とのうち高電位側のソース電極と基板2との間にはEd/2の電圧が印加される。よって、
図6に示すような電気装置300を構成するマルチレベルインバータでは、双方向スイッチ1に印加される最大電圧が低くなる、端子8と接続点A2とを接続する形態が、より好ましい。
【0061】
なお、マルチレベルインバータの基本的動作については例えば国際公開第2013/099053に記載されているので説明を省略する。
【0062】
上記の実施形態1は、本開示の様々な実施形態の一つに過ぎない。上記の実施形態1は、本開示の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
【0063】
例えば、双方向スイッチ素子10は、バッファ層3とGaN層4との間に、1層以上の窒化物半導体層を含んでいてもよい。また、バッファ層3は、単層構造に限らず、例えば、超格子構造を有していてもよい。
【0064】
また、基板2は、導電性を有していればよく、シリコン基板に限らず、例えば、GaN基板、SiC基板等であってもよい。
【0065】
また、双方向スイッチ1においてパッケージ11は必須の構成要素ではなく、基板2に接続された端子8であって基板2を双方向スイッチ1のオン期間における定電位点に接続するための端子8を備えていれば、上述のパッケージ11における端子8以外の構成要素を備えていない構成であってもよい。また、パッケージ11を備えている場合でも、端子8を備えていればよく、端子8の形状、パッケージ11の形状等は特に限定されない。
【0066】
また、端子8は、導電性ダイ7と一体に形成されているが、これに限らず、例えば、基板2の第2主面22に設けられ基板2とオーミック接触した導電層であってもよい。なお、端子8が導電性ダイ7と一体に形成されている場合、端子8及び導電性ダイ7は、例えば、リードフレームを利用して形成することができる。
【0067】
双方向スイッチ1を備える電気装置は、マルチレベルインバータに限らず、例えば、調光器であってもよいし、交流-交流電力変換を行うマトリクスコンバータであってもよいし、これら以外の電気装置であってもよい。
【0068】
ところで、2つの双方向スイッチ回路(双方向スイッチ)を並列接続した回路(双方向スイッチ装置)を有する電力変換装置が文献1(特開2017-011926号公報)に提案されている。双方向スイッチ回路は、半導体スイッチ素子で構成されている。
【0069】
文献1では、双方向スイッチ回路として、例えば、2つのIGBT及び2つのダイオードを含んだ構成と、2つのMOSFET及び2つのダイオードを含んだ構成と、が記載されている。
【0070】
複数の双方向スイッチを並列接続して構成された双方向スイッチ装置では、複数の双方向スイッチのうち1つの双方向スイッチだけに電流が集中すると、双方向スイッチ装置の温度が上昇しやすくなり、双方向スイッチ装置が熱によるダメージを受ける可能性がある。双方向スイッチ装置において熱によるダメージを受けると、双方向スイッチ装置において、例えば、電気的特性の変化(劣化)、亀裂の発生等が生じることがある。
【0071】
以下の実施形態2~8では、双方向スイッチ装置において熱によるダメージを受けにくい電気装置(スイッチシステム)、及び双方向スイッチ装置の制御方法を提供することもできる。
【0072】
(実施形態2)
以下では、実施形態2に係る電気装置300aについて、
図7、8、9A及び9Bに基づいて説明する。電気装置300aは、スイッチシステムである。
【0073】
(2.1)電気装置の全体構成
電気装置300aは、双方向スイッチ装置101と、双方向スイッチ装置101を制御する制御システム302と、を備える。
【0074】
双方向スイッチ装置101は、
図7に示すように、複数(例えば、3つ)の双方向スイッチ1を並列接続して構成されている。ここにおいて、双方向スイッチ装置101は、一対の主端子111、112を備え、一対の主端子111、112の間に、複数の双方向スイッチ1の並列回路を備えている。双方向スイッチ1の構成については、実施形態1に係る双方向スイッチ1と同じなので、説明を適宜省略する。
図7では、
図6に示した端子8の図示を省略してある。
図8では、
図1に例示した端子8及びパッケージボディ110の図示を省略してある。双方向スイッチ装置101では、複数の双方向スイッチ1が、1つのパッケージに収納されていてもよい。
【0075】
複数の双方向スイッチ1の各々は、第1のゲート電極G1及び第2のゲート電極G2を有する。
【0076】
複数の双方向スイッチ1の各々は、双方向オン状態と、双方向オフ状態と、第1のダイオード状態と、第2のダイオード状態と、を切替可能である。双方向オン状態は、双方向(第1方向F1及び第1方向F1とは反対の第2方向F2)の電流を通過させる状態である。双方向オフ状態は、双方向の電流を阻止する状態である。第1のダイオード状態は、第1方向F1の電流を通過させる状態である。第2のダイオード状態は、第2方向F2の電流を通過させる状態である。
【0077】
(2.2)電気装置(スイッチシステム)の各構成要素
(2.2.1)双方向スイッチ装置
(2.2.1.1)双方向スイッチ装置の構成
双方向スイッチ1は、例えば、
図8に示すように、基板2と、第1の窒化物半導体層であるGaN層4と、第2の窒化物半導体層であるAlGaN層5と、第1のソース電極S1と、第1のゲート電極G1と、第2のゲート電極G2と、第2のソース電極S2と、第1のp型層である第1のp型Al
x1Ga
1-x1N層61と、第2のp型層である第2のp型Al
x2Ga
1-x2N層62と、を備える。
【0078】
双方向スイッチ1は、第1のゲート81と、第2のゲート82と、を有する。双方向スイッチ1における第1のゲート81は、第1のゲート電極G1と、AlGaN層5とともに第1のダイオード構造91を構成する第1のp型Al
x1Ga
1-x1N層61と、を含む。また、第2のゲート82は、第2のゲート電極G2と、AlGaN層5とともに第2のダイオード構造92を構成する第2のp型Al
x2Ga
1-x2N層62と、を含む。したがって、
図8に示した双方向スイッチ1は、MOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field Effect Transistor)のような絶縁ゲート型FET(Field Effect Transistor)ではなく、接合ゲート型FETである。ここにおいて、双方向スイッチ1は、デュアルゲート型のGaN系GITである。
【0079】
第2の窒化物半導体層は、第1の窒化物半導体層よりもバンドギャップが大きい。
【0080】
(2.2.1.2)双方向スイッチ装置における双方向スイッチの動作
以下では、説明の便宜上、第1のゲート電極G1と第1のソース電極S1との間に第1の閾値電圧(例えば、1.3V)以上の電圧が印加されていない状態を、第1のゲート81がオフ状態ともいう。また、第1のゲート電極G1と第1のソース電極S1との間に第1のゲート電極G1を高電位側として第1の閾値電圧以上の電圧が印加されている状態を、第1のゲート81がオン状態ともいう。また、第2のゲート電極G2と第2のソース電極S2との間に第2の閾値電圧(例えば、1.3V)以上の電圧が印加されていない状態を、第2のゲート82がオフ状態ともいう。また、第2のゲート電極G2と第2のソース電極S2との間に第2のゲート電極G2を高電位側として第2の閾値電圧以上の電圧が印加されている状態を、第2のゲート82がオン状態ともいう。
【0081】
双方向スイッチ1は、上述の第1のp型Alx1Ga1-x1N層61(第1のp型層)及び第2のp型Alx2Ga1-x2N層62(第2のp型層)を備えることにより、ノーマリオフ型のトランジスタを実現している。ここにおいて、第1のp型Alx1Ga1-x1N層61は、第1のゲート81がオフ状態のときに、第1のp型Alx1Ga1-x1N層61直下においてAlGaN層5(第2の窒化物半導体層)とGaN層4(第1の窒化物半導体層)とに空乏層を形成する。第2のp型Alx2Ga1-x2N層62(第2のp型層)は、第2のゲート82がオフ状態のときに、第2のp型Alx2Ga1-x2N層62直下においてAlGaN層5とGaN層4とに空乏層を形成する。双方向スイッチ1では、第1のゲート81がオン状態のときには、第1のゲート電極G1と第1のソース電極S1との間を2次元電子ガス層でつなげることができる。言い換えれば、双方向スイッチ1では、第1のゲート81がオン状態のときには、第1のゲート電極G1と第1のソース電極S1との間で2次元電子ガス層が空乏層により遮られなくなる。また、双方向スイッチ1では、第2のゲート82がオン状態のときには、第2のゲート電極G2と第2のソース電極S2との間を2次元電子ガス層でつなげることができる。言い換えれば、双方向スイッチ1では、第2のゲート82がオン状態のときには、第2のゲート電極G2と第2のソース電極S2との間で2次元電子ガス層が空乏層により遮られなくなる。
【0082】
双方向スイッチ1は、第1のゲート81及び第2のゲート82それぞれに与えられる第1のゲート電圧Vg1(
図9A参照)及び第2のゲート電圧Vg2(
図9A参照)の組み合わせに応じて、双方向オン状態と、双方向オフ状態と、第1のダイオード状態と、第2のダイオード状態と、を切替可能である。第1のゲート電圧Vg1は、双方向スイッチ1の第1のゲート81と、第1のソース電極S1を含む第1のソース71との間に印加される電圧である。ここにおいて、第1のゲート電圧Vg1は、双方向スイッチ1の第1のゲート電極G1と、第1のソース電極S1との間に制御システム302から印加される電圧である。第2のゲート電圧Vg2は、双方向スイッチ1の第2のゲート82と、第2のソース電極S1を含む第2のソース72との間に印加される電圧である。ここにおいて、第2のゲート電圧Vg2は、双方向スイッチ1の第2のゲート電極G2と、第2のソース電極S1との間に制御システム302から印加される電圧である。
【0083】
(2.2.1.2.1)双方向オン状態
双方向スイッチ1では、第1のゲート81がオン状態で、かつ第2のゲート82がオン状態である場合に双方向オン状態となる。双方向オン状態は、第1のソース電極S1と第2のソース電極S2との間において、双方向の電流を通過させることができる状態である。より詳細には、双方向オン状態の場合、第1のソース電極S1が第2のソース電極S2よりも高電位のときに第1のソース電極S1から第2のソース電極S2へ電流を通過させることができ、かつ、第2のソース電極S2が第1のソース電極S1よりも高電位のときに第2のソース電極S2から第1のソース電極S1へ電流を通過させることができる。
【0084】
双方向スイッチ1の双方向オン状態は、双方向スイッチ1の動作モードとしてFETモードである。
図9Aは、双方向スイッチ1のFETモードでの電流-電圧特性の一例を示す。
図9Aは、第1のゲート81に与えられる第1のゲート電圧Vg1=3Vで、第2のゲート82に与えられる第2のゲート電圧Vg2が変化した場合の電流-電圧特性図である。
図9Aの横軸は、第2のソース電極S2と第1のソース電極S1との間の電圧である。
図9Aの縦軸は、第2のソース電極S2から第1のソース電極S1へ向かって流れる電流である。つまり、
図9Aの縦軸は、第2方向F2に流れる電流である。
図9Aから、双方向スイッチ1は、FETモードの場合、第2のゲート電圧Vg2の値によらず、オン抵抗が同じであることが分かる。また、
図9Aから、双方向スイッチ1では、FETモードの場合、第2のゲート電圧Vg2が大きくなるにつれて飽和電流が大きくなることが分かる。
【0085】
(2.2.1.2.2)双方向オフ状態
双方向スイッチ1では、第1のゲート81がオフ状態で、かつ第2のゲート82がオフ状態である場合に双方向オフ状態となる。双方向オフ状態は、第1のソース電極S1と第2のソース電極S2との間において、双方向の電流を阻止可能な状態である。より詳細には、双方向オフ状態の場合、第1のソース電極S1が第2のソース電極S2よりも高電位のときに第1のソース電極S1から第2のソース電極S2へ流れる電流が遮断され、かつ、第2のソース電極S2が第1のソース電極S1よりも高電位のときに第2のソース電極S2から第1のソース電極S1へ流れる電流が遮断される。
【0086】
(2.2.1.2.3)第1のダイオード状態
双方向スイッチ1では、第1のゲート81がオフ状態で、かつ第2のゲート82がオン状態である場合に第1のダイオード状態となる。第1のダイオード状態は、第2のソース電極S2と第1のソース電極S1との間において、第1のソース電極S1から第2のソース電極S2への第1方向F1の電流を通過可能であり、かつ、第2のソース電極S2から第1のソース電極S1への第2方向F2の電流を阻止可能な状態である。より詳細には、第1のダイオード状態の場合、第1のソース電極S1が第2のソース電極S2よりも第1の閾値電圧以上、高電位のときには第1のソース電極S1から第2のソース電極S2へ電流が流れ、かつ、第2のソース電極S2が第1のソース電極S1よりも高電位のときには第2のソース電極S2から第1のソース電極S1へ流れる電流が遮断される。
【0087】
双方向スイッチ1の第1のダイオード状態は、双方向スイッチ1の動作モードとしてダイオードモードである。
図9Bは、双方向スイッチ1のダイオードモードでの電流-電圧特性の一例を示す。
図9Bは、第1のゲート電圧Vg1=0V(つまり、第1のゲート81がオフ状態)で、第2のゲート82に与えられる第2のゲート電圧Vg2が変化した場合の電流-電圧特性図である。
図9Bの横軸は、第1のソース電極S1と第2のソース電極S2との間の電圧である。
図9Bの縦軸は、第1のソース電極S1から第2のソース電極S2へ向かって流れる電流である。
図9Bから、双方向スイッチ1の第1のダイオード状態では、ダイオードモードの場合、第2のゲート電圧Vg2が大きくなるにつれて飽和電流が大きくなることが分かる。つまり、双方向スイッチ1では、第1のダイオード状態の場合、第1のゲート電圧Vg1=0Vとして、第2のゲート電圧Vg2を変えることで、飽和電流を調節できる。
【0088】
(2.2.1.2.4)第2のダイオード状態
双方向スイッチ1では、第1のゲート81がオン状態で、かつ第2のゲート82がオフ状態である場合に第2のダイオード状態となる。第2のダイオード状態は、第2のソース電極S2と第1のソース電極S1との間において、第2のソース電極S2から第1のソース電極S1への第2方向F2の電流を通過可能であり、かつ、第1のソース電極S1から第2のソース電極S2への第1方向F1の電流を阻止可能な状態である。より詳細には、第2のダイオード状態の場合、第1のソース電極S1が第2のソース電極S2よりも高電位のときには第1のソース電極S1から第2のソース電極S2へ流れる電流が遮断され、かつ、第2のソース電極S2が第1のソース電極S1よりも第2の閾値電圧以上、高電位のときには第2のソース電極S2から第1のソース電極S1へ電流が流れる。
【0089】
双方向スイッチ1では、第1の閾値電圧と第2の閾値電圧とが同じ値であるが、互いに異なる値であってもよい。第1の閾値電圧は、第1のゲート電極G1の下側において2次元電子ガス層を遮るように広がっている空乏層が縮小し2次元電子ガス層に電流を流すことができるようになる閾値電圧である。第2の閾値電圧は、第2のゲート電極G2の下側において2次元電子ガス層を遮るように広がっている空乏層が縮小し2次元電子ガス層に電流を流すことができるようになる閾値電圧である。
【0090】
(2.2.2)制御システム
制御システム302は、
図7に示すように、第1のゲート駆動回路321と、第2のゲート駆動回路322と、を備える。制御システム302は、制御ユニット23を更に備える。
【0091】
第1のゲート駆動回路321は、複数の双方向スイッチ1の第1のゲート81(の第1のゲート電極G1)に接続されている。第1のゲート駆動回路321は、第1の電源24から直流電圧を供給される。第1の電源24は、例えば、パルス電源であるが、これに限らず、一定電圧を供給する直流電圧源であってもよい。
【0092】
第1のゲート駆動回路321は、複数の双方向スイッチ1の第1のゲート81に第1のゲート電圧Vg1を与える回路である。第1のゲート駆動回路321は、第1のゲートドライバを含む。第1のゲート駆動回路321では、第1のゲートドライバの電源電圧の大きさによって第1のゲート電圧Vg1の大きさが変わる。第1のゲート駆動回路321の第1のゲートドライバは、例えば、制御ユニット23からの制御信号により制御される。
【0093】
第2のゲート駆動回路322は、複数の双方向スイッチ1の第2のゲート82(の第2のゲート電極G2)に接続されている。第2のゲート駆動回路322は、第2の電源25から直流電圧を供給される。第2の電源25は、例えば、直流電圧源である。
【0094】
第2のゲート駆動回路322は、複数の双方向スイッチ1の第2のゲート82に第2のゲート電圧Vg2を与える回路である。第2のゲート駆動回路322は、第2のゲートドライバを含む。第2のゲート駆動回路322では、第2のゲートドライバの電源電圧の大きさによって第2のゲート電圧Vg2の大きさが変わる。第2のゲート駆動回路322は、例えば、制御ユニット23からの制御信号により制御される。
【0095】
制御システム302では、第1のゲート駆動回路321と第2のゲート駆動回路322とは互いに出力電圧が異なる。例えば、制御システム302では、第1のゲート駆動回路321の出力電圧が3.0Vであり、第2のゲート駆動回路322の出力電圧が2.0Vである。
【0096】
制御ユニット23の実行主体は、コンピュータシステムを含んでいる。コンピュータシステムは、1又は複数のコンピュータを有している。コンピュータシステムは、ハードウェアとしてのプロセッサ及びメモリを主構成とする。コンピュータシステムのメモリに記録されたプログラムをプロセッサが実行することによって、本開示における制御ユニット23の実行主体としての機能が実現される。プログラムは、コンピュータシステムのメモリに予め記録されていてもよいが、電気通信回線を通じて提供されてもよいし、コンピュータシステムで読み取り可能なメモリカード、光学ディスク、ハードディスクドライブ(磁気ディスク)等の非一時的記録媒体に記録されて提供されてもよい。コンピュータシステムのプロセッサは、半導体集積回路(IC)又は大規模集積回路(LSI)を含む1乃至複数の電子回路で構成される。複数の電子回路は、1つのチップに集約されていてもよいし、複数のチップに分散して設けられていてもよい。複数のチップは、1つの装置に集約されていてもよいし、複数の装置に分散して設けられていてもよい。
【0097】
(2.3)スイッチシステムの動作
制御システム302は、複数の双方向スイッチ1の各々において第1のダイオード状態又は第2のダイオード状態のときの飽和電流Isat(
図10参照)が双方向スイッチ装置101への入力電流の大きさIin(
図10参照)よりも小さな値に抑制されるように、複数の双方向スイッチ1の各々の第1のゲート81及び第2のゲート82へ第1のゲート電圧Vg1及び第2のゲート電圧Vg2それぞれを与える。入力電流の大きさIinが100A、複数の双方向スイッチ1の各々の定格電流が100A未満(例えば、50A)の場合、複数の双方向スイッチ1の各々において第1のダイオード状態又は第2のダイオード状態のときの飽和電流Isatは、例えば、35A~40Aとする。ここにおいて、飽和電流Isatは、入力電流の大きさIinを双方向スイッチ装置101における双方向スイッチ1の数で除した値よりも大きく、かつ、定格電流未満となるように決めてある。スイッチシステムである電気装置300aでは、複数の双方向スイッチ1の各々において第1のダイオード状態又は第2のダイオード状態のときに、必ずしも、3つの双方向スイッチ1の各々の電流が飽和しなくてもよい。例えば、3つの双方向スイッチ1のうち2つの双方向スイッチ1の電流の大きさが飽和電流Isatとなり、残りの1つの双方向スイッチ1の電流の大きさが飽和電流Isatよりも小さくてもよい。つまり、残り1つの1つの双方向スイッチ1の電流が飽和しなくてもよい。
【0098】
図10は、双方向スイッチ装置101の3つの双方向スイッチ1の各々がダイオードモードで動作する場合の電流-電圧特性図である。各双方向スイッチ1のダイオードモードでの特性である順方向電圧(Vf)は、例えば、3.4V程度である。しかしながら、複数の双方向スイッチ1では、製造ばらつき等によって順方向電圧にばらつきが生じることがある。ここにおいて、
図10は、3つの双方向スイッチ1のダイオードモードでの順方向電圧にばらつきがある場合の電流-電圧特性を模式的に示した図である。
図10の横軸は、双方向スイッチ装置101の一対の主端子111、112間の電圧である。
図10の縦軸は、双方向スイッチ1に流れる電流である。以下では、説明の便宜上、3つの双方向スイッチ1を、順方向電圧が小さい順に、第1双方向スイッチ1、第2双方向スイッチ1、第3双方向スイッチ1と称する。
【0099】
電気装置300aでは、第1~第3の双方向スイッチ1がダイオードモードで動作する場合、まず第1双方向スイッチ1に電流が流れ、第1双方向スイッチ1の電流が飽和電流Isatになると、第1双方向スイッチ1の電圧が上昇し、第2双方向スイッチ1にも電流が流れ、第2双方向スイッチ1の電流が飽和電流Isatになると、第2双方向スイッチ1の電圧が上昇し、第3双方向スイッチ1にも電流が流れる。これにより、電気装置300aでは、複数の双方向スイッチ1の各々に定格電流以上の電流を流すことなく、双方向スイッチ装置101に入力電流の大きさIinと同じ大きさの電流を流すことができる。
【0100】
(2.4)双方向スイッチ装置の制御方法
双方向スイッチ装置101の制御方法では、複数の双方向スイッチ1の各々において第1のダイオード状態又は第2のダイオード状態のときの飽和電流Isatが双方向スイッチ装置101への入力電流Iinの大きさよりも小さな値に抑制されるように、複数の双方向スイッチ1の各々の第1のゲート81及び第2のゲート82へ第1のゲート電圧Vg1及び第2のゲート電圧Vg2それぞれを与える。
【0101】
(2.5)効果
実施形態2に係る電気装置300aでは、制御システム302が、複数の双方向スイッチ1の各々において第1のダイオード状態又は第2のダイオード状態のときの飽和電流Isatが双方向スイッチ装置101への入力電流の大きさIinよりも小さな値に抑制されるように、複数の双方向スイッチ1の各々の第1のゲート81及び第2のゲート82へ第1のゲート電圧Vg1及び第2のゲート電圧Vg2それぞれを与える。これにより、実施形態2に係る電気装置300aでは、双方向スイッチ装置101において熱によるダメージを受けにくくなる。
【0102】
(2.6)電気装置の適用例
電気装置300aは、例えば、
図11に示すような降圧型DC-DCコンバータ400に適用することができる。
【0103】
図11に示した降圧型DC-DCコンバータ400は、直流電源E1の両端間に接続される、ハイサイドスイッチQ11とローサイドスイッチQ12との直列回路と、ハイサイドスイッチQ11とローサイドスイッチQ12との接続点とグランドとの間に接続されている、インダクタL1とコンデンサC3との直列回路と、を備える。
図11に示した降圧型DC-DCコンバータ400に電気装置300aを適用する場合には、ローサイドスイッチQ12として双方向スイッチ装置101を適用する。ハイサイドスイッチQ11は、FET(例えば、GaN系FET)である。この場合、電気装置300aは、ハイサイドスイッチQ11へゲート電圧Vgh(
図12参照)を与えるハイサイドゲート駆動回路を更に備え、ローサイドスイッチQ12とハイサイドスイッチQ11とを制御する。
【0104】
制御ユニット23(
図7参照)は、
図12に示すようなシーケンスでハイサイドスイッチQ11及びローサイドスイッチQ12を動作させる。
図12では、複数の期間T1~T7の各々におけるハイサイドスイッチQ11及びローサイドスイッチQ12それぞれの動作状態をスイッチ又はダイオードの図記号で模式的に表してある。期間T1では、ハイサイドスイッチQ11の動作状態がオン状態であり、ローサイドスイッチQ12の動作状態が第1のダイオード状態である。期間T2では、ハイサイドスイッチQ11の動作状態がオン状態であり、ローサイドスイッチQ12の動作状態が双方向オフ状態である。期間T3では、ハイサイドスイッチQ11の動作状態がオン状態であり、ローサイドスイッチQ12の動作状態が第1のダイオード状態である。期間T4では、ハイサイドスイッチQ11の動作状態がオフ状態であり、ローサイドスイッチQ12の動作状態が第1のダイオード状態である。期間T5では、ハイサイドスイッチQ11の動作状態がオフ状態であり、ローサイドスイッチQ12の動作状態が双方向オン状態である。期間T6では、ハイサイドスイッチQ11の動作状態がオフ状態であり、ローサイドスイッチQ12の動作状態が第1のダイオード状態である。期間T7では、ハイサイドスイッチQ11の動作状態がオン状態であり、ローサイドスイッチQ12の動作状態が第1のダイオード状態である。なお、期間T2では、ローサイドスイッチQ12の動作状態が双方向オフ状態であるが、これに限らず、第1のダイオード状態であってもよい。また、期間T5では、ローサイドスイッチQ12の動作状態が双方向オン状態であるが、これに限らず、第1のダイオード状態であってもよい。
【0105】
電気装置300aは、降圧型DC-DCコンバータ400に適用する例に限らず、例えば、
図13に示すような昇圧型DC-DCコンバータ500に適用してもよい。
図13に示した昇圧型DC-DCコンバータ500は、ハイサイドスイッチQ11とローサイドスイッチQ12との直列回路と、コンデンサC4と、インダクタL2と、を備える。コンデンサC4は、ハイサイドスイッチQ11とローサイドスイッチQ12との直列回路の両端間に接続されている。インダクタL2は、ハイサイドスイッチQ11とローサイドスイッチQ12との接続点に接続されている。昇圧型DC-DCコンバータ500では、インダクタL2とローサイドスイッチQ12との直列回路の両端間に直流電源E2が接続される。
図13に示した昇圧型DC-DCコンバータ500に電気装置300aを適用する場合には、ハイサイドスイッチQ11として双方向スイッチ装置101を適用する。ローサイドスイッチQ12は、FET(例えば、GaN系FET)である。この場合、電気装置300aは、ローサイドスイッチQ12へゲート電圧を与えるローサイドゲート駆動回路を更に備え、ハイサイドスイッチQ11とローサイドスイッチQ12とを制御する。
【0106】
(実施形態3)
以下、実施形態3に係る電気装置300bについて、
図14に基づいて説明する。電気装置300bは、スイッチシステムである。
【0107】
実施形態3に係る電気装置300bは、実施形態2に係る電気装置300aと略同じであり、制御システム302の代わりに制御システム302aを備える点で、実施形態2に係る電気装置300aと相違する。実施形態3に係る電気装置300bに関し、実施形態2に係る電気装置300aと同様の構成要素については、同一の符号を付して説明を省略する。双方向スイッチ1の構成については、実施形態1に係る双方向スイッチ1と同じなので、説明を適宜省略する。
図14では、
図6に示した端子8の図示を省略してある。
【0108】
制御システム302aは、制御システム302と同様、複数の双方向スイッチ1の各々において第1のダイオード状態又は第2のダイオード状態の飽和電流Isatが双方向スイッチ装置101への入力電流の大きさIinよりも小さな値に抑制されるように、複数の双方向スイッチ1の各々の第1のゲート81及び第2のゲート82へ第1のゲート電圧Vg1及び第2のゲート電圧Vg2それぞれを与える。
【0109】
制御システム302aは、第1のゲート駆動回路321aと、第2のゲート駆動回路322aと、第1のゲート抵抗26と、第2のゲート抵抗27と、を備える。また、制御システム302aは、制御システム302の制御ユニット23の代わりに、制御ユニット23aを備えている。
【0110】
制御システム302aでは、第1のゲート駆動回路321aの回路構成と第2のゲート駆動回路322aの回路構成とが同じである。第1のゲート駆動回路321aの出力電圧と第2のゲート駆動回路322aの出力電圧とは同じである。第1のゲート駆動回路321a及び第2のゲート駆動回路322aの各々の出力電圧は、例えば、12Vである。第1のゲート駆動回路321aは、第1の電源24から直流電圧を供給される。第1の電源24は、例えば、パルス電源であるが、これに限らず、一定電圧を供給する直流電圧源であってもよい。第2のゲート駆動回路322aは、第2の電源25から直流電圧を供給される。第2の電源25は、例えば、パルス電源であるが、これに限らず、一定電圧を供給する直流電圧源であってもよい。制御システム302aでは、第1の電源24と第2の電源25とが共通の電源である。第1のゲート駆動回路321a、第2のゲート駆動回路322a、第1の電源24及び第2の電源25は、例えば、制御ユニット23aからの制御信号により制御される。制御システム302aにおいて、制御ユニット23aは必須の構成要素ではない。
【0111】
第1のゲート抵抗26の一端は、第1のゲート駆動回路321aの出力端に接続されている。第1のゲート抵抗26の他端は、複数の双方向スイッチ1の第1のゲートにおける第1ゲート電極G1に接続されている。第2のゲート抵抗27の一端は、第2のゲート駆動回路322aの出力端に接続されている。第2のゲート抵抗27の他端は、複数の双方向スイッチ1の第2のゲート82におけるゲート電極G2に接続されている。第1のゲート抵抗26の抵抗値と第2のゲート抵抗27の抵抗値とが異なる。ここでは、第1のゲート抵抗26の抵抗値が第2のゲート抵抗27の抵抗値よりも小さい。
【0112】
図15は、双方向スイッチ1の第1のゲート81の電圧-電流特性の一例である。横軸は第1のゲート81のゲート電圧Vg1、縦軸は、第1のゲート81から第1のソース電極S1に流れる電流である。つまり、縦軸は、第1のダイオード構造91に流れる電流である。
図15から、双方向スイッチ1は、第1のゲート81へ流れる電流を変えることによって第1のゲート81へ与える第1のゲート電圧Vg1を変えることができることが分かる。制御システム302aでは、第1のゲート駆動回路321aに含まれる第1のゲートドライバの電源電圧と第1のゲート抵抗26の抵抗値とで第1のゲート81へ流れる電流を決めることができる。同様に、双方向スイッチ1は、第2のゲート82へ流れる電流を変えることによって第2のゲート82へ与える第2のゲート電圧Vg2を変えることができる。制御システム302aでは、第2のゲート駆動回路322aに含まれる第2のゲートドライバの電源電圧と第2のゲート抵抗27の抵抗値とで第2のゲート82へ流れる電流を決めることができる。
【0113】
制御システム302aは、上述のように、第1のゲート駆動回路321aと複数の双方向スイッチ1の第1のゲート81における第1のゲート電極G1との間に第1のゲート抵抗26が設けられ、第2のゲート駆動回路322aと複数の双方向スイッチ1の第2のゲート82における第2のゲート電極G2との間に第2のゲート抵抗27が設けられている。これにより、制御システム302aは、第1のゲート駆動回路321aの出力電圧と第2のゲート駆動回路322aの出力電圧とを同じとしながらも、第1のゲート抵抗26の抵抗値と第2のゲート抵抗27の抵抗値とを異ならせることにより、第1のゲート81へ流れる電流と第2のゲート82へ流れる電流とが異なり、第1のゲート電圧Vg1と第2のゲート電圧Vg2とを異ならせることができる。したがって、制御システム302aでは第2のゲート電圧Vg2を第1のゲート電圧Vg1よりも小さくでき、各双方向スイッチ1における第1のダイオード状態のときの飽和電流Isatを抑制できる。
【0114】
実施形態3に係る電気装置300bは、制御システム302aを備えることにより、実施形態2に係る電気装置300aと同様、双方向スイッチ装置101において熱によるダメージを受けにくくなる。
【0115】
実施形態3に係る電気装置300bは、実施形態2に係る電気装置300aと同様、例えば、
図11に示すような降圧型DC-DCコンバータ400、
図13に示すような昇圧型DC-DCコンバータ500等に適用することができる。
【0116】
(実施形態4)
以下、実施形態4に係る電気装置300cについて、
図16に基づいて説明する。電気装置300cは、スイッチシステムである。
【0117】
実施形態4に係る電気装置300cは、実施形態3に係る電気装置300bと略同じであり、制御システム302aの代わりに制御システム302bを備える点で、実施形態3に係る電気装置300bと相違する。実施形態4に係る電気装置300cに関し、実施形態3に係る電気装置300bと同様の構成要素については、同一の符号を付して説明を省略する。双方向スイッチ1の構成については、実施形態1に係る双方向スイッチ1と同じなので、説明を適宜省略する。
図16では、
図6に示した端子8の図示を省略してある。
【0118】
制御システム302bは、制御システム302aと同様、複数の双方向スイッチ1の各々において第1のダイオード状態又は第2のダイオード状態の飽和電流Isatが双方向スイッチ装置101への入力電流の大きさIinよりも小さな値に抑制されるように、複数の双方向スイッチ1の各々の第1のゲート81及び第2のゲート82へ第1のゲート電圧Vg1及び第2のゲート電圧Vg2それぞれを与える。
【0119】
制御システム302bは、スイッチSW0と、第3のゲート抵抗28と、を更に備える。制御システム302bでは、スイッチSW0と第3のゲート抵抗28との直列回路が、第2のゲート抵抗27に並列接続されている。第3のゲート抵抗28の抵抗値は、第2のゲート抵抗27の抵抗値よりも小さい。第3のゲート抵抗28の抵抗値は、第1のゲート抵抗26の抵抗値と同じであるが、異なっていてもよい。
【0120】
制御システム302bに関しては、複数の双方向スイッチ1を双方向オン状態に制御するときに第1のゲート電圧Vg1が例えば3Vになるように第1のゲート抵抗26の抵抗値を決めてある。また、制御システム302bに関しては、複数の双方向スイッチ1を双方向オン状態に制御するときに第2のゲート電圧Vg2を例えば3Vにでき、第1のダイオード状態に制御するときにスイッチSW0をオンして第2のゲート電圧Vg2が例えば2Vに制限されるように、第2のゲート抵抗27及び第3のゲート抵抗28それぞれの抵抗値を決めてある。
【0121】
制御システム302bは、制御ユニット23aの代わりに、制御ユニット23bを有している。制御ユニット23bは、第1のゲート駆動回路321a、第2のゲート駆動回路322a、第1の電源24及び第2の電源25の他にスイッチSW0も制御する。制御ユニット23bは、少なくともスイッチSW0を制御するように構成されていればよい。スイッチSW0は、FET(例えば、GaN系FET、MOSFET等)である。スイッチSW0は、制御ユニット23bにより制御される。
【0122】
実施形態4に係る電気装置300cでは、制御システム302bを備えることにより、実施形態3に係る電気装置300bと同様、双方向スイッチ装置101において熱によるダメージを受けにくくなる。
【0123】
電気装置300cは、実施形態2に係る電気装置300aと同様、例えば、
図11に示すような降圧型DC-DCコンバータ400、
図13に示すような昇圧型DC-DCコンバータ500等に適用することができる。
【0124】
電気装置300cを
図11に示す降圧型DC-DCコンバータ400に適用する場合、制御ユニット23bは、
図17に示すようなシーケンスでハイサイドスイッチQ11、ローサイドスイッチQ12及びスイッチSW0を動作させる。
【0125】
図17では、複数の期間T11~T16の各々におけるハイサイドスイッチQ11及びローサイドスイッチQ12それぞれの動作状態をスイッチ又はダイオードの図記号で模式的に表してある。
図17中のV24は、第1の電源24の出力電圧を示す。また、V25は、第2の電源25の出力電圧を示す。また、
図17中のCh0は、制御ユニット23bからスイッチSW0へ与えられるゲート電圧である。スイッチSW0は、ゲート電圧がハイレベルの場合にオン状態となり、ローレベルの場合にオフ状態となる。
【0126】
期間T11では、ハイサイドスイッチQ11の動作状態がオン状態であり、ローサイドスイッチQ12の動作状態が第1のダイオード状態である。期間T12では、ハイサイドスイッチQ11の動作状態がオン状態であり、ローサイドスイッチQ12の動作状態が双方向オフ状態である。期間T13では、ハイサイドスイッチQ11の動作状態がオン状態であり、ローサイドスイッチQ12の動作状態が第1のダイオード状態である。期間T14では、ハイサイドスイッチQ11の動作状態がオフ状態であり、ローサイドスイッチQ12の動作状態が第1のダイオード状態である。期間T15では、ハイサイドスイッチQ11の動作状態がオフ状態であり、ローサイドスイッチQ12の動作状態が双方向オン状態である。期間T16では、ハイサイドスイッチQ11の動作状態がオフ状態であり、ローサイドスイッチQ12の動作状態が第1のダイオード状態である。なお、期間T12では、ローサイドスイッチQ12の動作状態が双方向オフ状態であるが、これに限らず、第1のダイオード状態であってもよい。また、期間T15では、ローサイドスイッチQ12の動作状態が双方向オン状態であるが、これに限らず、第1のダイオード状態であってもよい。スイッチSW0をオン状態にする期間は、ローサイドスイッチQ12の動作状態が双方向オン状態である期間T15の開始時点よりも遅く及び終了時点も早い期間である。電気装置300cでは、スイッチSW0をオン状態にすることにより、スイッチSW0がオン状態にする前よりも第2のゲート電圧Vg2を大きくすることができる。これにより、双方向スイッチ装置101のオン抵抗を低減でき、導通損失を低減できる。
【0127】
(実施形態5)
以下、実施形態5に係る電気装置300dについて、
図18に基づいて説明する。電気装置300dは、スイッチシステムである。
【0128】
実施形態5に係る電気装置300dは、実施形態2に係る電気装置300aと略同じであり、制御システム302の代わりに制御システム302cを備える点で、実施形態2に係る電気装置300aと相違する。実施形態5に係る電気装置300dに関し、実施形態2に係る電気装置300aと同様の構成要素については、同一の符号を付して説明を省略する。双方向スイッチ1の構成については、実施形態1に係る双方向スイッチ1と同じなので、説明を適宜省略する。
図18では、
図6に示した端子8の図示を省略してある。
【0129】
制御システム302cは、制御システム302と同様、複数の双方向スイッチ1の各々において第1のダイオード状態又は第2のダイオード状態のときに流れる飽和電流の大きさIsatが双方向スイッチ装置101への入力電流の大きさIinよりも小さな値に抑制されるように、複数の双方向スイッチ1の各々の第1のゲートG1及び第2のゲートG2へ第1のゲート電圧Vg1及び第2のゲート電圧Vg2それぞれを与える。
【0130】
制御システム302cは、2つの第1のゲート駆動回路211、212と、2つの第2のゲート駆動回路221、222と、2つの第1の電源241、242と、2つの第2の電源251、252と、を備える。また、制御システム302cは、制御ユニット23cを更に備える。
【0131】
制御システム302cでは、2つの第1のゲート駆動回路211、212と、2つの第1の電源241、242とが一対一に接続されている。また、制御システム302cでは、2つの第1のゲート駆動回路211、212の出力端が複数の双方向スイッチ1の第1のゲート81における第1のゲート電極G1に接続されている。制御システム302cでは、第1のゲート駆動回路211の出力電圧の大きさと、第1のゲート駆動回路212の出力電圧の大きさとが、互いに異なる。第1のゲート駆動回路211の出力電圧の大きさは、例えば、3Vである。第1のゲート駆動回路212の出力電圧の大きさは、第2のダイオード状態のときに第2方向F2に流れる電流の飽和電流Isatを抑制するために決められる。第1のゲート駆動回路212の出力電圧の大きさは、第1のゲート駆動回路211の出力電圧の大きさよりも小さく、例えば、2Vである。
【0132】
また、制御システム302cでは、2つの第2のゲート駆動回路221、222と、2つの第2の電源251、252とが一対一に接続されている。また、制御システム302cでは、2つの第2のゲート駆動回路221、222の出力端が複数の双方向スイッチ1の第2のゲート82における第2のゲート電極G2に接続されている。制御システム302cでは、第2のゲート駆動回路221の出力電圧の大きさと、第2のゲート駆動回路222の出力電圧の大きさとが、互いに異なる。第2のゲート駆動回路221の出力電圧の大きさは、例えば、3Vである。第2のゲート駆動回路222の出力電圧の大きさは、第1のダイオード状態のときに第1方向F1に流れる電流の飽和電流Isatを抑制するために決められる。第2のゲート駆動回路222の出力電圧の大きさは、第2のゲート駆動回路221の出力電圧の大きさよりも小さく、例えば、2Vである。
【0133】
制御システム302cでは、2つの第1のゲート駆動回路211、212のうち一方の第1のゲート駆動回路211の出力電圧の大きさと、2つの第2のゲート駆動回路221、222のうち一方の第2のゲート駆動回路221の出力電圧の大きさと、が同じであり、他方の第1のゲート駆動回路212の出力電圧の大きさと、他方の第2のゲート駆動回路222の出力電圧の大きさと、が同じである。これにより、制御システム302cでは、第1のゲート駆動回路211と第2のゲート駆動回路221との回路構成の共通化を図れる。また、制御システム302cでは、第1のゲート駆動回路212と第2のゲート駆動回路222との回路構成の共通化を図れる。
【0134】
制御システム302cでは、2つの第1の電源241、242は、共通の電源である。また、2つの第2の電源251、252は、共通の電源である。
【0135】
制御システム302cでは、制御ユニット23cが、2つの第1のゲート駆動回路211、212と、2つの第2のゲート駆動回路221、222と、を制御する。これにより、制御システム302cでは、複数の双方向スイッチ1に関して、第1方向F1に電流を流す第1のダイオード状態と、第2方向F2に電流を流す第2のダイオード状態と、を切り替えることができる。
【0136】
実施形態5に係る電気装置300dでは、制御システム302cを備えることにより、実施形態2に係る電気装置300aと同様、双方向スイッチ装置101において熱によるダメージを受けにくくなる。
【0137】
電気装置300dは、例えば、
図19に示すような3レベルインバータ600に適用することができる。
図19に示した3レベルインバータ600は、T型の3レベルインバータである。ここにおいて、3レベルインバータ600は、ハイサイドスイッチQ31とローサイドスイッチQ32との直列回路と、ハイサイドスイッチQ31とローサイドスイッチQ32との接続点に接続された双方向スイッチ素子Q30と、を備える。3レベルインバータ600では、ハイサイドスイッチQ31とローサイドスイッチQ32との直列回路の両端間に、2つの直流電源E31及びE32の直列回路が接続されている。また、3レベルインバータ600では、ハイサイドスイッチQ31とローサイドスイッチQ32との接続点と、2つの直流電源E31,E32の接続点との間に双方向スイッチ素子Q30が接続されている。ハイサイドスイッチQ31及びローサイドスイッチQ32の各々は、例えば、GaN系FETである。双方向スイッチ素子Q30は、双方向スイッチ装置101である。
【0138】
制御システム302cにおける制御ユニット23c(
図18参照)は、双方向スイッチ素子Q30の他に、ハイサイドスイッチQ31及びローサイドスイッチQ32を制御する。なお、3レベルインバータの基本的動作については例えば国際公開第2013/099053号に記載されているので説明を省略する。
【0139】
制御ユニット23cは、双方向スイッチ素子Q30だけでなく、ハイサイドスイッチQ31及びローサイドスイッチQ32も制御するが、これに限らず、ハイサイドスイッチQ31及びローサイドスイッチQ32を制御しなくてもよい。この場合は、3レベルインバータ600が、制御ユニット23cとは別にハイサイドスイッチQ31及びローサイドスイッチQ32を制御する制御装置を備えていればよい。
【0140】
(実施形態6)
以下、実施形態6に係る電気装置300eについて、
図20に基づいて説明する。電気装置300eは、スイッチシステムである。
【0141】
実施形態6に係る電気装置300eは、実施形態5に係る電気装置300dと略同じであり、制御システム302cの代わりに制御システム302dを備える点で、実施形態5に係る電気装置300eと相違する。実施形態6に係る電気装置300eに関し、実施形態5に係る電気装置300dと同様の構成要素については、同一の符号を付して説明を省略する。双方向スイッチ1の構成については、実施形態1に係る双方向スイッチ1と同じなので、説明を適宜省略する。
図20では、
図6に示した端子8の図示を省略してある。
【0142】
制御システム302dは、制御システム302cと同様、複数の双方向スイッチ1の各々において第1のダイオード状態又は第2のダイオード状態のときの飽和電流Isatが双方向スイッチ装置101への入力電流の大きさIinよりも小さな値に抑制されるように、複数の双方向スイッチ1の各々の第1のゲートG1及び第2のゲートG2へ第1のゲート電圧Vg1及び第2のゲート電圧Vg2それぞれを与える。
【0143】
制御システム302dは、2つの第1のゲート駆動回路211d、212dと、2つの第2のゲート駆動回路221d、222dと、2つの第1の電源241、242と、2つの第2の電源251、252と、を備える。制御システム302dは、2つの第1のゲート抵抗261、262と、2つの第2のゲート抵抗271、272と、を更に備える。また、制御システム302dは、制御ユニット23cの代わりに、制御ユニット23dを備える。
【0144】
制御システム302dでは、2つの第1のゲート駆動回路211d、212dと、2つの第1のゲート抵抗261、262とが一対一に接続されている。ここにおいて、第1のゲート抵抗261の一端が第1のゲート駆動回路211dの出力端に接続され、第1のゲート抵抗261の他端が複数の双方向スイッチ1の第1のゲート81における第1のゲート電極G1に接続されている。また、第1のゲート抵抗262の一端が第1のゲート駆動回路212dの出力端に接続され、第1のゲート抵抗262の他端が複数の双方向スイッチ1の第1のゲート81における第1のゲート電極G1に接続されている。
【0145】
制御システム302dでは、2つの第1のゲート駆動回路211d、212dは、同じ回路構成であり、出力電圧の大きさも同じである。また、制御システム302dでは、2つの第1のゲート抵抗261、262の抵抗値が互いに異なる。ここで、第1のゲート抵抗261の抵抗値は、第1のゲート抵抗262の抵抗値よりも小さい。
【0146】
制御システム302dに関しては、複数の双方向スイッチ1を双方向オン状態に制御するときに第1のゲート電圧Vg1が3Vとなり、第2のダイオード状態に制御するときに第1のゲート電圧Vg1が2Vに制限されるように、2つの第1のゲート抵抗261、262それぞれの抵抗値を決めてある。
【0147】
制御システム302dでは、2つの第2のゲート駆動回路221d、222dは、同じ回路構成であり、出力電圧の大きさも同じである。また、制御システム302dでは、2つの第2のゲート抵抗271、272の抵抗値が互いに異なる。ここで、第2のゲート抵抗271の抵抗値は、第2のゲート抵抗272の抵抗値よりも小さい。
【0148】
制御システム302dに関しては、複数の双方向スイッチ1を双方向オン状態に制御するときに第2のゲート電圧Vg2が3Vとなり、第1のダイオード状態に制御するときに第2のゲート電圧Vg2が2Vに制限されるように、2つの第2のゲート抵抗271、272それぞれの抵抗値を決めてある。
【0149】
制御ユニット23dは、2つの第1のゲート駆動回路211d、212dと、2つの第2のゲート駆動回路221d、222dと、2つの第1の電源241、242と、2つの第2の電源251、252と、を制御することで、第1のゲート電圧Vg1及び第2のゲート電圧Vg2それぞれの大きさを変える。
【0150】
実施形態6に係る電気装置300eは、制御システム302dを備えることにより、実施形態5に係る電気装置300dと同様、双方向スイッチ装置101において熱によるダメージを受けにくくなる。
【0151】
(実施形態7)
以下、実施形態7に係る電気装置300fについて、
図21に基づいて説明する。電気装置300fは、スイッチシステムである。
【0152】
実施形態7に係る電気装置300fは、実施形態6に係る電気装置300eと略同じであり、制御システム302dの代わりに制御システム302eを備える点で、実施形態6に係る電気装置300eと相違する。実施形態7に係る電気装置300fに関し、実施形態6に係る電気装置300eと同様の構成要素については、同一の符号を付して説明を省略する。双方向スイッチ1の構成については、実施形態1に係る双方向スイッチ1と同じなので、説明を適宜省略する。
図21では、
図6に示した端子8の図示を省略してある。
【0153】
制御システム302eは、制御システム302dと同様、複数の双方向スイッチ1の各々において第1のダイオード状態又は第2のダイオード状態のときの飽和電流Isatが双方向スイッチ装置101への入力電流の大きさIinよりも小さな値に抑制されるように、複数の双方向スイッチ1の各々の第1のゲートG1及び第2のゲートG2へ第1のゲート電圧Vg1及び第2のゲート電圧Vg2それぞれを与える。
【0154】
制御システム302eは、第1の電源24と、第1のゲート駆動回路321と、2つの第1のゲート抵抗261、262と、第1の電圧調整用スイッチSW1と、第2の電源25と、第2のゲート駆動回路322と、2つの第2のゲート抵抗271、272と、第2の電圧調整用スイッチSW2と、を備える。
【0155】
制御システム302eでは、第1のゲート抵抗262の一端が第1のゲート駆動回路321の出力端と接続され、第1のゲート抵抗262の他端が複数の双方向スイッチ1の第1のゲート81における第1のゲート電極G1と接続されている。また、制御システム302eでは、第1の電圧調整用スイッチSW1と第1のゲート抵抗261との直列回路が、第1のゲート抵抗262に並列接続されている。2つの第1のゲート抵抗261、262の抵抗値は互いに異なる。ここでは、第1のゲート抵抗261の抵抗値が、第1のゲート抵抗262の抵抗値よりも小さい。
【0156】
制御システム302eでは、第2のゲート抵抗272の一端が第2のゲート駆動回路322の出力端と接続され、第2のゲート抵抗272の他端が複数の双方向スイッチ1の第2のゲート82における第2のゲート電極G2と接続されている。また、制御システム302eでは、第2の電圧調整用スイッチSW2と第2のゲート抵抗271との直列回路が、第2のゲート抵抗272に並列接続されている。2つの第2のゲート抵抗271、272の抵抗値は互いに異なる。ここでは、第2のゲート抵抗271の抵抗値が、第2のゲート抵抗272の抵抗値よりも小さい。
【0157】
制御システム302eに関しては、複数の双方向スイッチ1を双方向オン状態に制御するときに第1のゲート電圧Vg1が例えば3Vになり、第2のダイオード状態に制御するときに第1のゲート電圧Vg1が例えば2Vになるように2つの第1のゲート抵抗261、262それぞれの抵抗値を決めてある。また、制御システム302eに関しては、複数の双方向スイッチ1を双方向オン状態に制御するときに第2のゲート電圧Vg2が例えば3Vとなり、第1のダイオード状態に制御するときに第2のゲート電圧Vg2が例えば2Vに制限されるように、2つの第2のゲート抵抗271、272それぞれの抵抗値を決めてある。
【0158】
制御システム302eは、制御ユニット23dの代わりに、制御ユニット23eを有している。制御ユニット23eは、第1のゲート駆動回路321、第2のゲート駆動回路322、第1の電源24及び第2の電源25の他に第1の電圧調整用スイッチSW1、第2の電圧調整用スイッチSW2も制御する。制御ユニット23eは、少なくとも、第1の電圧調整用スイッチSW1及び第2の電圧調整用スイッチSW2を制御するように構成されていればよい。第1の電圧調整用スイッチSW1及び第2の電圧調整用スイッチSW2の各々は、FET(例えば、GaN系FET、MOSFET等)である。
【0159】
実施形態7に係る電気装置300fは、制御システム302eを備えることにより、実施形態6に係る電気装置300eと同様、双方向スイッチ装置101において熱によるダメージを受けにくくなる。
【0160】
実施形態7に係る電気装置300fは、実施形態6に係る電気装置300eと同様、例えば、
図19に示すような3レベルインバータ600に適用することができる。3レベルインバータ600では、出力電流の極性によって制御ユニット23eの制御内容が相違する。3レベルインバータ600の出力電流の極性に関しては、インダクタL3からキャパシタC3に流れる場合を正の極性とし、キャパシタC3からインダクタL3に流れる向きを負の極性とする。
【0161】
3レベルインバータ600の出力電流が正の極性の場合、制御ユニット23eは、例えば、
図22に示すようなシーケンスでハイサイドスイッチQ31及び双方向スイッチ素子Q30(双方向スイッチ装置101)を動作させる。
図22では、複数の期間T21~T25の各々におけるハイサイドスイッチQ31及び双方向スイッチ素子Q30それぞれの動作状態をスイッチ又はダイオードの図記号で模式的に表してある。
図22中のV24は、第1の電源24の出力電圧を示す。また、V25は、第2の電源25の出力電圧を示す。また、
図22中のCh1は、制御ユニット23eから第1の電圧調整用スイッチSW1へ与えられるゲート電圧である。Ch2は、制御ユニット23eから第2の電圧調整用スイッチSW2へ与えられるゲート電圧である。第1の電圧調整用スイッチSW1及び第2の電圧調整用スイッチSW2の各々は、ゲート電圧がハイレベルの場合にオン状態となり、ローレベルの場合にオフ状態となる。
【0162】
期間T21では、ハイサイドスイッチQ31の動作状態がオン状態であり、双方向スイッチ素子Q30の動作状態が双方向オフ状態である。期間T22では、ハイサイドスイッチQ31の動作状態がオン状態であり、双方向スイッチ素子Q30の動作状態が第1のダイオード状態である。期間T23では、ハイサイドスイッチQ31の動作状態がオフ状態であり、双方向スイッチ素子Q30の動作状態が第1のダイオード状態である。期間T24では、ハイサイドスイッチQ31の動作状態がオフ状態であり、双方向スイッチ素子Q30の動作状態が双方向オン状態である。期間T25では、ハイサイドスイッチQ31の動作状態がオフ状態であり、双方向スイッチ素子Q30の動作状態が第1のダイオード状態である。
【0163】
第2の電圧調整用スイッチSW2をオン状態にする期間は、ハイサイドスイッチQ31の動作状態が双方向オン状態である期間T22、T23、T24及びT25のうち期間T24の開始時点よりも遅く及び終了時点も早い期間である。電気装置300fでは、第2の電圧調整用スイッチSW2をオン状態にすることにより、第2の電圧調整用スイッチSW2がオン状態にする前よりも第2のゲート電圧Vg2を大きくすることができる。これにより、双方向スイッチ装置101のオン抵抗を低減でき、導通損失を低減できる。
【0164】
また、第1の電源24の出力電圧V24の立ち上がるタイミングと、ゲート電圧Ch1の立ち上がるタイミングとは、同じでもよいが、ゲート電圧Ch1の立ち上がるタイミングを先にしたほうが双方向スイッチ装置101をより高速にスイッチングできる。また、第1の電源24の出力電圧V24の立ち下がるタイミングと、ゲート電圧Ch1の立ち下がるタイミングとは、同じでもよいが、ゲート電圧Ch1の立ち下がるタイミングを先にしたほうが双方向スイッチ装置101をより高速にスイッチングできる。
【0165】
(実施形態8)
以下、実施形態8に係る電気装置300gについて、
図23に基づいて説明する。
図23は、電気装置300gを適用した降圧型DC-DCコンバータ400fの回路図である。電気装置300gは、スイッチシステムである。
【0166】
実施形態8に係る電気装置300gは、実施形態2に係る電気装置300aと略同じであり、双方向スイッチ装置101の代わりに双方向スイッチ装置101fを備え、制御システム302の代わりに制御システム302fを備える点で、実施形態2に係る電気装置300aと相違する。実施形態8に係る電気装置300gに関し、実施形態2に係る電気装置300aと同様の構成要素については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0167】
降圧型DC-DCコンバータ400fは、降圧型DC-DCコンバータ400(
図11参照)のハイサイドスイッチQ11及びローサイドスイッチQ12の代わりに、ハイサイドスイッチQ1f及びローサイドスイッチQ2fを備える。
【0168】
ハイサイドスイッチQ1fは、2つの電界効果トランジスタQ10を直列接続して構成された3つの第1基本回路が並列接続されて構成されている。ハイサイドスイッチQ1fにおける各電界効果トランジスタQ10は、例えば、GaN系FETである。
【0169】
ローサイドスイッチQ2fは、双方向スイッチ装置101fである。
【0170】
双方向スイッチ装置101fは、双方向スイッチ装置101と略同じであり、複数(例えば、3つ)の双方向スイッチ1に一対一に直列接続された複数(例えば、3つ)の電界効果トランジスタQ20を備える点で相違する。ここにおいて、双方向スイッチ装置101fは、複数(2つ)の電界効果トランジスタQ20を直列接続して構成された所定数(3つ)の第2基本回路が並列接続されている。所定数の第2基本回路の各々において、複数の電界効果トランジスタQ20のうち少なくとも1つの電界効果トランジスタQ20が双方向スイッチ1である。各第2基本回路では、1つの電界効果トランジスタQ20が双方向スイッチ1であり、残りの1つの電界効果トランジスタQ20がGaN系FETである。双方向スイッチ1の構成については、実施形態1に係る双方向スイッチ1と同じなので、説明を適宜省略する。
図23では、
図6に示した端子8の図示を省略してある。
【0171】
制御システム302fは、制御システム302と同様、複数の双方向スイッチ1の各々において第1のダイオード状態又は第2のダイオード状態のときの飽和電流Isatが双方向スイッチ装置101fへの入力電流の大きさIinよりも小さな値に抑制されるように、複数の双方向スイッチ1の各々の第1のゲート81(の第1のゲート電極G1)及び第2のゲート82(の第2のゲート電極G2)へ第1のゲート電圧Vg1及び第2のゲート電圧Vg2それぞれを与える。
【0172】
実施形態8に係る電気装置300gは、制御システム302fを備えることにより、実施形態2に係る電気装置300aと同様、双方向スイッチ装置101fにおいて熱によるダメージを受けにくくなる。
【0173】
上記の実施形態2~8は、本開示の様々な実施形態の一つに過ぎない。上記の実施形態2~8は、本開示の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
【0174】
例えば、第1のp型層及び第2のp型層の各々は、p型AlGaN層に限らず、例えば、p型GaN層であってもよい。また、第1のp型層及び第2のp型層の各々は、例えば、p型金属酸化物半導体層であってもよい。p型金属酸化物半導体層は、例えば、NiO層である。NiO層は、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム及びセシウムの群から選ばれる少なくとも1種のアルカリ金属を不純物として含んでいてもよい。また、NiO層は、例えば、不純物として添加されたときに一価となる銀、銅等の遷移金属を含んでいてもよい。
【0175】
双方向スイッチ1は、バッファ層3と第1の窒化物半導体層(GaN層4)との間に、1層以上の窒化物半導体層を含んでいてもよい。また、バッファ層3は、単層構造に限らず、例えば、超格子構造を有していてもよい。
【0176】
また、基板2は、シリコン基板に限らず、例えば、GaN基板、SiC基板、サファイア基板等であってもよい。
【0177】
また、双方向スイッチ1に代えて用いる双方向スイッチは、デュアルゲート型のGaN系GITに限らず、例えば、2つのMOSFETのドレイン電極同士を接続して構成された双方向スイッチでもよいし、2つのMOSFETのソース電極同士を接続して構成された双方向スイッチでもよいし、第1のIGBTと第1のダイオードとの直列回路と、第2のIGBTと第2のダイオードとの直列回路と、を逆並列接続して構成された双方向スイッチでもよい。ここにおいて、MOSFETは、Si系MOSFETでもよいし、SiC系MOSFETでもよい。また、双方向スイッチ1に代えて用いる双方向スイッチは、例えば、2つのMESFETのドレイン電極同士を接続して構成された双方向スイッチでもよいし、2つのMESFETのソース電極同士を接続して構成された双方向スイッチでもよい。
【0178】
(まとめ)
以上説明した実施形態1~8等から本明細書には以下の態様が開示されている。
【0179】
第1の態様に係る双方向スイッチ(1)は、基板(2)と、GaN層(4)と、AlGaN層(5)と、第1のソース電極(S1)と、第1のゲート電極(G1)と、第2のゲート電極(G2)と、第2のソース電極(S2)と、第1のp型Alx1Ga1-x1N層(61)と、第2のp型Alx2Ga1-x2N層(62)と、を備える。ここで、0≦x1<1である。また、0≦x2<1である。基板(2)は、導電性を有する。GaN層(4)は、基板(2)上に形成されている。AlGaN層(5)は、GaN層(4)上に形成されている。第1のソース電極(S1)、第1のゲート電極(G1)、第2のゲート電極(G2)、及び第2のソース電極(S2)は、AlGaN層(5)上に形成されている。第1のp型Alx1Ga1-x1N層(61)は、第1のゲート電極(G1)とAlGaN層(5)との間に介在している。第2のp型Alx2Ga1-x2N層(62)は、第2のゲート電極(G2)とAlGaN層(5)との間に介在している。基板(2)は、第1のソース電極(S1)、第2のソース電極(S2)、第1のゲート電極(G1)及び第2のゲート電極(G2)の全てに対して電気的に絶縁されている。双方向スイッチ(1)は、基板(2)を定電位点に接続するための端子(8)を更に備える。端子(8)は、基板(2)に接続されている。
【0180】
第1の態様に係る双方向スイッチ(1)では、電流コラプスを抑制することが可能となる。
【0181】
第2の態様に係る電気装置(300;300a;300b;300c;300d;300e;300f;300g)は、第1の態様の双方向スイッチ(1)を備える。双方向スイッチ(1)の端子(8)が定電位点に接続されている。
【0182】
第2の態様に係る電気装置(300;300a;300b;300c;300d;300e;300f;300g)では、電流コラプスを抑制することが可能となる。
【0183】
第3の態様に係る電気装置(300;300a;300b;300c;300d;300e;300f;300g)では、第2の態様において、定電位点は、直流電源の一端、又はダイオードブリッジを含む整流平滑回路の一出力端、又はツェナダイオードのカソードである。
【0184】
第4の態様に係る電気装置(300;300a;300b;300c;300d;300e;300f;300g)では、第2の態様において、定電位点は、ダイオードブリッジ(DB)を含む整流平滑回路におけるダイオードブリッジ(DB)の一対の出力端(TA1、TA2)のうち低電位側の出力端(TA2)である。
【0185】
第4の態様に係る電気装置(300;300a;300b;300c;300d;300e;300f;300g)では、第3の態様と比べて、電流コラプスを、より抑制することが可能となる。
【0186】
第5の態様に係る電気装置(300;300a;300b;300c;300d;300e;300f;300g)では、第2の態様において、定電位点の電位がグランドを基準として負の電位の場合、負の電位の絶対値が所定値以下である。
【0187】
第5の態様に係る電気装置(300;300a;300b;300c;300d;300e;300f;300g)では、定電位点の電位がグランドを基準として負の電位の場合に電流コラプスを抑制することが可能となる。
【0188】
第6の態様に係る電気装置(300a;300b;300c;300d;300e;300f;300g)は、第2~5の態様のいずれか一つにおいて、双方向スイッチ装置(101;101f)と、制御システム(302;302a;302b;302c;302d;302e;302f)と、を備える。双方向スイッチ装置(101;101f)は、双方向スイッチ(1)を複数有し、複数の双方向スイッチ(1)を並列接続して構成されている。制御システム(302;302a;302b;302c;302d;302e;302f)は、双方向スイッチ装置(101;101f)を制御する。複数の双方向スイッチ(1)の各々は、第1のゲート電極(G1)及び第2のゲート電極(G2)を有する。複数の双方向スイッチ(1)の各々は、第1のゲート電極(G1)及び第2のゲート電極(G2)それぞれに与えられる第1のゲート電圧(Vg1)及び第2のゲート電圧(Vg2)の組み合わせに応じて、双方向オン状態と、双方向オフ状態と、第1のダイオード状態と、第2のダイオード状態と、を切替可能である。双方向オン状態は、双方向の電流を通過させる状態である。双方向オフ状態は、双方向の電流を阻止する状態である。第1のダイオード状態は、第1方向(F1)の電流を通過させる状態である。第2のダイオード状態は、第1方向(F1)とは逆向きである第2方向(F2)の電流を通過させる状態である。制御システム(302;302a;302b;302c;302d;302e;302f)は、複数の双方向スイッチ(1)の各々において第1のダイオード状態又は第2のダイオード状態のときの飽和電流(Isat)が双方向スイッチ装置(101;101f)への入力電流の大きさ(Iin)よりも小さな値に抑制されるように、複数の双方向スイッチ(1)の各々の第1のゲート電極(G1)及び第2のゲート電極(G2)へ第1のゲート電圧(Vg1)及び第2のゲート電圧(Vg2)それぞれを与える。
【0189】
第6の態様に係る電気装置(300a;300b;300c;300d;300e;300f;300g)は、双方向スイッチ装置(101;101f)において熱によるダメージを受けにくくなる。
【0190】
第7の態様に係る電気装置(300;300a;300b;300c;300d;300e;300f;300g)では、第6の態様において、制御システム(302;302a;302b;302c;302d;302e;302f)は、複数の双方向スイッチ(1)の各々において第1のダイオード状態又は第2のダイオード状態のときの飽和電流(Isat)が双方向スイッチ(1)の定格電流よりも小さな値に抑制されるように、複数の双方向スイッチ(1)の各々の第1のゲート電極(G1)及び第2のゲート電極(G2)へ第1のゲート電圧(Vg1)及び第2のゲート電圧(Vg2)それぞれを与える。
【0191】
第7の態様に係る電気装置(300a;300b;300c;300d;300e;300f;300g)では、双方向スイッチ装置(101;101f)に対してより大きな電流を流すことを可能としながらも双方向スイッチ装置(101;101f)において熱によるダメージを受けにくくなる。
【0192】
第8の態様に係る電気装置(300a;300b;300c;300d;300e;300f;300g)では、第6又は7の態様において、制御システム(302;302a;302b;302c;302d;302e;302f)は、複数の双方向スイッチ(1)の各々において第1のダイオード状態又は第2のダイオード状態のときの飽和電流(Isat)が双方向オン状態のときに流れる電流の大きさよりも小さな値に抑制されるように、複数の双方向スイッチ(1)の各々の第1のゲート電極(G1)及び第2のゲート電極(G2)へ第1のゲート電圧(Vg1)及び第2のゲート電圧(Vg2)それぞれを与える。
【0193】
第8の態様に係る電気装置(300a;300b;300c;300d;300e;300f;300g)では、複数の双方向スイッチ(1)のうちのいずれかに電流が集中して流れるのを抑制でき、双方向スイッチ装置(101;101f)において熱によるダメージを受けにくくなる。
【0194】
第9の態様に係る電気装置(300a;300b;300c;300d;300e;300f;300g)では、第6~8の態様のいずれか一つにおいて、複数の双方向スイッチ(1)は、3つ以上の双方向スイッチ(1)である。制御システム(302;302a;302b;302c;302d;302e;302f)は、3つ以上の双方向スイッチ(1)のうち2つの双方向スイッチ(1)の各々において第1のダイオード状態又は第2のダイオード状態のときに流れる電流の大きさの合計が双方向スイッチ装置(101;101f)への入力電流の大きさ(Iin)よりも小さな値に抑制されるように、複数の双方向スイッチ(1)の各々の第1のゲート電極(G1)及び第2のゲート電極(G2)へ第1のゲート電圧(Vg1)及び第2のゲート電圧(Vg2)それぞれを与える。
【0195】
第10の態様に係るマルチレベルインバータは、第1の態様の双方向スイッチ(1)を備える。
【0196】
第10の態様に係るマルチレベルインバータでは、電流コラプスを抑制することが可能となる。
【0197】
第11の態様に係る電気装置(300a;300b;300c;300d;300e;300f;300g)では、第6~9の態様のいずれか一つにおいて、複数の双方向スイッチ(1)の各々は、第1のゲート(81)を含む第1のダイオード構造(91)と、第2のゲート(82)を含む第2のダイオード構造(92)と、を有する。
【0198】
第11の態様に係る電気装置(300a;300b;300c;300d;300e;300f;300g)では、第1のゲート(81)に流れる電流の大きさを変えることにより第1のゲート電圧(Vg1)の大きさを変えることができ、かつ、第2のゲート(82)に流れる電流の大きさを変えることにより第2のゲート電圧(Vg2)の大きさを変えることができる。
【0199】
第12の態様に係る電気装置(300a;300b;300c;300d;300e;300f;300g)では、第11の態様において、第1のゲート(81)は、第1のゲート電極(G1)と、AlGaN層(5)とともに第1のダイオード構造(91)を構成する第1のp型Alx1Ga1-x1N層(61)と、を含む。第2のゲート(82)は、第2のゲート電極(G2)と、AlGaN層(5)とともに第2のダイオード構造(92)を構成する第2のp型Alx2Ga1-x2N層(62)と、を含む。
【0200】
第12の態様に係る電気装置(300a;300b;300c;300d;300e;300f;300g)では、複数の双方向スイッチ(1)の各々の小型化及び低抵抗化を図れる。
【0201】
第13の態様に係る電気装置(300a)では、第6~9、11~12の態様のいずれか一つにおいて、制御システム(302)は、第1のゲート駆動回路(321)と、第2のゲート駆動回路(322)と、を備える。第1のゲート駆動回路(321)は、複数の双方向スイッチ(1)の第1のゲート電極(G1)に接続されている。第2のゲート駆動回路(322)は、複数の双方向スイッチ(1)の第2のゲート電極(G2)に接続されている。第2のゲート駆動回路(322)の出力電圧の大きさが第1のゲート駆動回路(321)の出力電圧の大きさよりも小さい。
【0202】
第14の態様に係る電気装置(300b;300c)では、第11又は12の態様において、制御システム(302a;302b)は、第1のゲート抵抗(26)と、第1のゲート駆動回路(321a)と、第2のゲート抵抗(27)と、第2のゲート駆動回路(322a)と、を備える。第1のゲート抵抗(26)は、複数の双方向スイッチ(1)の第1のゲート電極(G1)に接続されている。第1のゲート駆動回路(321a)は、第1のゲート抵抗(26)を介して複数の双方向スイッチ(1)の第1のゲート電極(G1)に接続されている。第2のゲート抵抗(27)は、複数の双方向スイッチ(1)の第2のゲート電極(G2)に接続されている。第2のゲート駆動回路(322a)は、第2のゲート抵抗(27)を介して複数の双方向スイッチ(1)の第2のゲート抵抗(27)に接続されている。第1のゲート抵抗(26)の抵抗値が第2のゲート抵抗(27)の抵抗値よりも小さい。
【0203】
第14の態様に係る電気装置(300b;300c)では、第1のゲート駆動回路(321a)の回路構成と第2のゲート駆動回路(322a)の回路構成とを同じとすることが可能となる。
【0204】
第15の態様に係る電気装置(300c)では、第14の態様において、制御システム(302b)は、第2のゲート抵抗(27)に並列接続されている、スイッチ(SW0)と第3のゲート抵抗(28)との直列回路を更に備える。
【0205】
第15の態様に係る電気装置(300c)では、複数の双方向スイッチ(1)の各々のオン抵抗を低減することが可能となる。
【0206】
第16の態様に係る電気装置(300d)では、第6~9、11~12の態様のいずれか一つにおいて、制御システム(302c)は、2つの第1のゲート駆動回路(211,212)と、2つの第2のゲート駆動回路(221,222)と、を備える。2つの第1のゲート駆動回路(211,212)は、複数の双方向スイッチ(1)の第1のゲート電極(G1)に接続されており、互いに出力電圧の大きさが異なる。2つの第2のゲート駆動回路(221,222)は、複数の双方向スイッチ(1)の第2のゲート電極(G2)に接続されており、互いに出力電圧の大きさが異なる。
【0207】
第16の態様に係る電気装置(300d)では、双方向スイッチ装置(101)を双方向オン状態、双方向オフ状態、第1のダイオード状態、第2のダイオード状態のいずれの状態にも制御することが可能となる。
【0208】
第17の態様に係る電気装置(300e)では、第11又は12の態様において、制御システム(302d)は、2つの第1のゲート駆動回路(211d,212d)と、2つの第1のゲート抵抗(261,262)と、2つの第2のゲート駆動回路(221d,222d)と、2つの第2のゲート抵抗(271,272)と、を備える。2つの第1のゲート駆動回路(211d,212d)は、複数の双方向スイッチ(1)の第1のゲート電極(G1)に接続されている。2つの第1のゲート抵抗(261,262)は、2つの第1のゲート駆動回路(211d,212d)に一対一に対応し対応する第1のゲート駆動回路と第1のゲート電極(G1)とに接続されており、互いの抵抗値が異なる。2つの第2のゲート駆動回路(221d,222d)は、複数の双方向スイッチ(1)の第2のゲート電極(G2)に接続されている。2つの第2のゲート抵抗(271,272)は、2つの第2のゲート駆動回路(221d,222d)に一対一に対応し対応する第2のゲート駆動回路と第2のゲート電極(G2)とに接続されており、互いの抵抗値が異なる。
【0209】
第18の態様に係る電気装置(300f)では、第11又は12の態様において、制御システム(302e)は、第1のゲート駆動回路(321)と、第2のゲート駆動回路(322)と、2つの第1のゲート抵抗(261,262)と、2つの第2のゲート抵抗(271,272)と、第1の電圧調整用スイッチ(SW1)と、第2の電圧調整用スイッチ(SW2)と、を有する。2つの第1のゲート抵抗(261,262)は、第1のゲート駆動回路(321)と複数の双方向スイッチ(1)の第1のゲート電極(G1)とに接続されており、それぞれの抵抗値が異なり互いに並列接続されている。2つの第2のゲート抵抗(271,272)は、第2のゲート駆動回路(322)と複数の双方向スイッチ(1)の第2のゲート電極(G2)とに接続されており、それぞれの抵抗値が異なり互いに並列接続されている。第1の電圧調整用スイッチ(SW1)は、2つの第1のゲート抵抗(261,262)のうち抵抗値の小さな第1のゲート抵抗(261)に直列に接続されている。第2の電圧調整用スイッチ(SW2)は、2つの第2のゲート抵抗(271,272)のうち抵抗値の小さな第2のゲート抵抗(271)に直列に接続されている。
【0210】
第18の態様に係る電気装置(300f)では、双方向スイッチ装置(101)を双方向オン状態、双方向オフ状態、第1のダイオード状態、第2のダイオード状態のいずれの状態にも制御することが可能となる。
【0211】
第19の態様に係る電気装置(300g)では、第6~9、11~18の態様のいずれか一つにおいて、双方向スイッチ装置(101f)では、複数の電界効果トランジスタ(Q20)を直列接続して構成された所定数の基本回路が並列接続されている。所定数の基本回路の各々において、複数の電界効果トランジスタ(Q20)のうち少なくとも1つの電界効果トランジスタ(Q20)が双方向スイッチ(1)である。
【0212】
第19の態様に係る電気装置(300g)では、双方向スイッチ装置(101f)の耐圧の高耐圧化を図ることが可能となる。
【0213】
第20の態様に係る双方向スイッチ装置(101;101f)の制御方法は、複数の双方向スイッチ(1)を並列接続して構成された双方向スイッチ装置(101;101f)の制御方法である。複数の双方向スイッチ(1)の各々は、第1のゲート(81)及び第2のゲート(82)を有する。複数の双方向スイッチ(1)の各々は、第1のゲート(81)及び第2のゲート(82)それぞれに与えられる第1のゲート電圧(Vg1)及び第2のゲート電圧(Vg2)の組み合わせに応じて、双方向オン状態と、双方向オフ状態と、第1のダイオード状態と、第2のダイオード状態と、を切替可能である。双方向オン状態は、双方向の電流を通過させる状態である。双方向オフ状態は、双方向の電流を阻止する状態である。第1のダイオード状態は、第1方向(F1)の電流を通過させる状態である。第2のダイオード状態は、第1方向(F1)とは逆向きである第2方向(F2)の電流を通過させる状態である。双方向スイッチ装置(101;101f)の制御方法では、複数の双方向スイッチ(1)の各々において第1のダイオード状態又は第2のダイオード状態のときの飽和電流(Isat)が双方向スイッチ装置(101;101f)への入力電流の大きさ(Iin)よりも小さな値に抑制されるように、複数の双方向スイッチ(1)の各々の第1のゲート(81)及び第2のゲート(82)へ第1のゲート電圧(Vg1)及び第2のゲート電圧(Vg2)それぞれを与える。
【0214】
第20の態様に係る双方向スイッチ装置(101;101f)の制御方法は、双方向スイッチ装置(101;101f)において熱によるダメージを受けにくくなる。
【0215】
双方向スイッチ(1)では、1つの双方向スイッチ(1)単体で使用される場合、第1のダイオード状態又は第2のダイオード状態で動作するときに双方向スイッチ(1)の温度上昇により双方向スイッチ(1)が熱によるダメージを受ける可能性がある。
【0216】
上述の第6の態様の電気装置(300;300b;300c;300d;300e;300f;300g)では、双方向スイッチ装置(101;101f)が、複数の双方向スイッチ(1)を並列接続して構成されているが、これに限らず、別の態様に係る電気装置では、双方向スイッチ装置が1つの双方向スイッチ(1)で構成されていてもよい。
【0217】
上記別の態様に係る電気装置は、双方向スイッチ装置と、制御システムと、を備える。双方向スイッチ装置は、1つの双方向スイッチ(1)で構成されている。制御システムは、双方向スイッチ装置を制御する。双方向スイッチ(1)は、第1のゲート電極(G1)及び第2のゲート電極(G2)を有する。双方向スイッチ(1)の各々は、第1のゲート電極(G1)及び第2のゲート電極(G2)それぞれに与えられる第1のゲート電圧(Vg1)及び第2のゲート電圧(Vg2)の組み合わせに応じて、双方向オン状態と、双方向オフ状態と、第1のダイオード状態と、第2のダイオード状態と、を切替可能である。双方向オン状態は、双方向の電流を通過させる状態である。双方向オフ状態は、双方向の電流を阻止する状態である。第1のダイオード状態は、第1方向(F1)の電流を通過させる状態である。第2のダイオード状態は、第1方向(F1)とは逆向きである第2方向(F2)の電流を通過させる状態である。制御システムは、双方向スイッチ(1)において第1のダイオード状態又は第2のダイオード状態のときの飽和電流(Isat)が双方向スイッチ装置への入力電流の大きさ(Iin)よりも小さな値に抑制されるように、双方向スイッチ(1)の第1のゲート電極(G1)及び第2のゲート電極(G2)へ第1のゲート電圧(Vg1)及び第2のゲート電圧(Vg2)それぞれを与える。
【0218】
上記別の態様に係る電気装置は、双方向スイッチ装置において熱によるダメージを受けにくくなる。
【0219】
上述の第7~9、11~19の態様は、複数の双方向スイッチ(1)に関する規定を1つの双方向スイッチ(1)に関する規定に変更して上記別の態様に係る電気装置に適宜適用することができる。
【符号の説明】
【0220】
1 双方向スイッチ
2 基板
4 GaN層
5 AlGaN層
61 第1のp型Alx1Ga1-x1N層(ここで、0≦x1<1)
62 第2のp型Alx2Ga1-x2N層(ここで、0≦x2<1)
8 端子
F1 第1方向
F2 第2方向
G1 第1のゲート電極
G2 第2のゲート電極
Iin 入力電流の大きさ
Isat 飽和電流
S1 第1のソース電極
S2 第2のソース電極
TA1、TA2 出力端
Vg1 第1のゲート電圧
Vg2 第2のゲート電圧
101、101f 双方向スイッチ装置
300 電気装置(マルチレベルインバータ)
300a、300b、300c、300d、300e、300f、300g 電気装置(スイッチシステム)
302、302a、302b、302c、302d、302e、302f 制御システム