(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-28
(45)【発行日】2023-10-06
(54)【発明の名称】熱交換器およびこれを備えた温水装置
(51)【国際特許分類】
F28D 7/16 20060101AFI20230929BHJP
F24H 9/00 20220101ALI20230929BHJP
F24H 1/14 20220101ALI20230929BHJP
F28F 1/32 20060101ALI20230929BHJP
【FI】
F28D7/16 Z
F24H9/00 A
F24H1/14 B
F28F1/32 P
F28F1/32 F
F28F1/32 N
F28F1/32 D
(21)【出願番号】P 2019213261
(22)【出願日】2019-11-26
【審査請求日】2022-10-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000004709
【氏名又は名称】株式会社ノーリツ
(74)【代理人】
【識別番号】100120514
【氏名又は名称】筒井 雅人
(72)【発明者】
【氏名】井口 雅博
【審査官】礒部 賢
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/013369(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第107014066(CN,A)
【文献】特開2019-128132(JP,A)
【文献】特許第6314106(JP,B2)
【文献】特開2018-066519(JP,A)
【文献】特開2004-003773(JP,A)
【文献】特開2018-080866(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28D 7/16
F24H 9/00
F24H 1/14
F28F 1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱用気体が内部に流入するケース内に配され、かつ加熱用気体流れ方向と交差する幅方向に間隔を隔てて並んだ複数の管体部を有し、これら複数の管体部として、加熱用気体流れ方向に2段の千鳥配列とされた複数の上流側管体部および下流側管体部を含む伝熱管と、
前記複数の管体部が貫通して接合されたフィンと、
を備えている、熱交換器であって、
前記フィンは、前記各上流側管体部の外周面の周囲のうち、加熱用気体流れ方向下流側の左右両側に位置し、かつ前記外周面の下流側部分に隙間を介して対向する一対の切り起こし部を、前記幅方向に並んだ配置で複数対備えており、
前記一対の切り起こし部は、加熱用気体流れ方向上流側の上側端部どうしの相互間の第1の幅が、前記各上流側管体部の外径よりも大きく、かつ加熱用気体流れ方向下流側の下側端部どうしの相互間の第2の幅が前記第1の幅よりも小さくなるように傾斜しており、
前記複数の上流側管体部のうち、互いに隣り合う2つの上流側管体部の相互間領域には、前記一対の切り起こし部の非形成部として、前記2つの上流側管体部の相互間寸法よりも幅狭の加熱用気体通過部が設けられて
おり、
前記フィンのうち、前記一対の切り起こし部から加熱用気体流れ方向下流側に位置する前記下流側管体部の外周面近傍部分にわたる領域、前記加熱用気体通過部、および前記加熱用気体通過部の加熱用気体流れ方向上流側領域は、一連に繋がった第1の切欠き部とされており、
前記一対の切り起こし部は、前記第1の切欠き部の縁部の一部分が屈曲した構成であり、前記加熱用気体通過部としての前記一対の切り起こし部の相互間領域は、前記幅方向の全域にわたって前記第1の切欠き部の一部をなす切欠き部とされていることを特徴とする、熱交換器。
【請求項2】
請求項1に記載の熱交換器であって、
前記一対の切り起こし部の下側端部は、前記各上流側管体部の外周面の下端部よりも加熱用気体流れ方向下流側に位置している、熱交換器。
【請求項3】
請求項1または2に記載の熱交換器であって、
前記フィンは、前記一対の切り起こし部の下側端部どうしの相互間に形成されている隙間の加熱用気体流れ方向下流側に、前記各下流側管体部の外周面の下端部と略同等高さの配置に設けられた追加の切り起こし部を、さらに備えている、熱交換器。
【請求項4】
請求項
3に記載の熱交換器であって、
前記フィンの加熱用気体流れ方向下流側の端縁部は、前記追加の切り起こし部に対応する部分が第2の切欠き部とされた凹凸状である、熱交換器。
【請求項5】
請求項
1ないし4のいずれかに記載の熱交換器
を備えていることを特徴とする、温水装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、いわゆるフィンチューブタイプの伝熱管を用いた熱交換器、およびこれを備えた給湯装置などの温水装置に関する。
【背景技術】
【0002】
温水装置を構成する熱交換器の具体例として、
図8に示すような熱交換器9がある(特許文献1,2を参照)。
この熱交換器9は、プレート状の複数のフィン90に伝熱管Teが貫通して接合されている。バーナ(不図示)により発生された燃焼ガス(加熱用気体)を熱交換器9に向けて進行させると、前記燃焼ガスからフィン90および伝熱管Teによって熱回収がなされ、伝熱管Te内を流通する湯水が加熱されて温水が生成される。
伝熱管Teは、燃焼ガス流れ方向の上流側管体部8Aおよび下流側管体部8Bが、上下2段の千鳥配列とされた構成とされている。このような構成によれば、燃焼ガスを上流側管体部8Aおよび下流側管体部8Bの双方に対して直接作用させることが可能である。
【0003】
しかしながら、前記従来技術においては、次に述べるように、未だ改善すべき余地がある。
【0004】
第1に、上流側管体部8Aには、その上側から燃焼ガスが作用し、熱回収がなされるものの、上流側管体部8Aの外周面のうち、燃焼ガス流れ方向下流側の下面部80には、燃焼ガスが効率よく作用しない。このため、上流側管体部8Aによる熱回収量を多くし、熱交換効率を高める上で、改善すべき余地がある。燃焼ガスの温度は、下流側管体部8B側よりも上流側管体部8A側の方が高温であるため、熱交換効率を効率よく高める上では、上流側管体部8Aによる熱回収量を多くすることが望まれる。
第2に、下流側管体部8Bには、互いに隣り合う2つの上流側管体部8Aの相互間領域を通過した燃焼ガスが作用するものの、この燃焼ガスは、上流側管体部8Aに作用する燃焼ガスと比較すると、流速vが低下したものとなる。一方、下流側管体部8Bによる熱回収量は、燃焼ガスの流速vが低いほど少なくなる。したがって、下流側管体部8Bによる熱回収量も十分に多いとは言えず、この点においても改善すべき余地がある。
【0005】
なお、従来においては、熱交換器の熱交換効率を高めるための手段として、たとえば特許文献3,4に示すように、フィンに切り起こし部を設ける手段があるが、これらのいずれの手段によっても前記した不具合を適切に解消するには到らない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】実開昭62-8577号公報
【文献】特許第6314106号公報
【文献】特開2002-228267号公報
【文献】特開2018-80866号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記したような事情のもとで考え出されたものであり、簡易な構成により、従来よりも熱交換効率を高めることが可能な熱交換器、およびこれを備えた温水装置を提供することを、その課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を講じている。
【0009】
本発明の第1の側面により提供される熱交換器は、加熱用気体が内部に流入するケース内に配され、かつ加熱用気体流れ方向と交差する幅方向に間隔を隔てて並んだ複数の管体部を有し、これら複数の管体部として、加熱用気体流れ方向に2段の千鳥配列とされた複数の上流側管体部および下流側管体部を含む伝熱管と、前記複数の管体部が貫通して接合されたフィンと、を備えている、熱交換器であって、前記フィンは、前記各上流側管体部の外周面の周囲のうち、加熱用気体流れ方向下流側の左右両側に位置し、かつ前記外周面の下流側部分に隙間を介して対向する一対の切り起こし部を、前記幅方向に並んだ配置で複数対備えており、前記一対の切り起こし部は、加熱用気体流れ方向上流側の上側端部どうしの相互間の第1の幅が、前記各上流側管体部の外径よりも大きく、かつ加熱用気体流れ方向下流側の下側端部どうしの相互間の第2の幅が前記第1の幅よりも小さくなるように傾斜しており、前記複数の上流側管体部のうち、互いに隣り合う2つの上流側管体部の相互間領域には、前記一対の切り起こし部の非形成部として、前記2つの上流側管体部の相互間寸法よりも幅狭の加熱用気体通過部が設けられており、前記フィンのうち、前記一対の切り起こし部から加熱用気体流れ方向下流側に位置する前記下流側管体部の外周面近傍部分にわたる領域、前記加熱用気体通過部、および前記加熱用気体通過部の加熱用気体流れ方向上流側領域は、一連に繋がった第1の切欠き部とされており、前記一対の切り起こし部は、前記第1の切欠き部の縁部の一部分が屈曲した構成であり、前記加熱用気体通過部としての前記一対の切り起こし部の相互間領域は、前記幅方向の全域にわたって前記第1の切欠き部の一部をなす切欠き部とされていることを特徴としている。
【0010】
このような構成によれば、次のような効果が得られる。
第1に、加熱用気体が伝熱管の上流側管体部どうしの相互間に進行した場合、この加熱用気体の一部は、一対の切り起こし部に当たることにより、これら一対の切り起こし部と上流側管体部の外周面の下流側部分との隙間に進入し、この外周面の下流側部分に沿って流れる。したがって、従来技術と比較すると、上流側管体部の外周面の下流側部分による加熱用気体からの熱回収量を多くし、熱交換効率を高めることができる。
第2に、伝熱管の上流側管体部どうしの相互間に進行した加熱用気体としては、一対の切り起こし部の非形成部としての加熱用気体通過部を通過してから下流側管体部に作用するものが生じるが、前記加熱用気体通過部は、その幅が狭く絞られているため、この加熱用気体通過部を通過して下流側管体部に作用する加熱用気体の流速は速められる。したがって、このことにより下流側管体部による熱回収量が増加することとなり、熱交換器の熱交換効率を一層高めることが可能となる。
さらに、フィンおよび伝熱管に加熱用気体を作用させる場合、フィンの温度分布の均一化を図り、熱応力の発生を抑制し、熱応力に起因する伝熱管の歪みなどを抑制することが望まれる。ここで、前記構成によれば、フィンのうち、他の部分よりも高温になり易い部分である領域が、切欠き部(第1の切欠き部)とされ、除去されているため、フィンの温度分布の均一化を図り、伝熱管の歪みなどを抑制する上で、好ましいものとなる。また、伝熱管による熱回収量を増やす上でも好ましいものとなる。
【0011】
本発明において、好ましくは、前記一対の切り起こし部の下側端部は、前記各上流側管体部の外周面の下端部よりも加熱用気体流れ方向下流側に位置している。
【0012】
このような構成によれば、一対の切り起こし部と上流側管体部の外周面との隙間に進入した加熱用気体が、前記外周面に沿って流れる場合に、前記外周面の下端部に到る広い領域に沿わせて流れさせることができる。したがって、上流側管体部による熱回収量を多くする上で、一層好ましいものとなる。
【0015】
本発明において、好ましくは、前記フィンは、前記一対の切り起こし部の下側端部どうしの相互間に形成されている隙間の加熱用気体流れ方向下流側に、前記各下流側管体部の外周面の下端部と略同等高さの配置に設けられた追加の切り起こし部を、さらに備えている。
【0016】
このような構成によれば、上流側管体部の外周面と一対の切り起こし部との隙間に進入した加熱用気体が、一対の切り起こし部の下側端部どうしの相互間の隙間を通過して加熱用気体流れ方向下流側に進行すると、この加熱用気体は、追加の切り起こし部に衝突し、その衝突後には、下流側管体部の外周面の下端部近辺に向けて進行する。したがって、下流側管体部の外周面の下端部近辺を利用した熱回収も促進されることとなり、熱交換器の熱交換効率を一層高めることが可能となる。
【0017】
本発明において、好ましくは、前記フィンの加熱用気体流れ方向下流側の端縁部は、前記追加の切り起こし部に対応する部分が第2の切欠き部とされた凹凸状である。
【0018】
このような構成によれば、次のような効果が得られる。
すなわち、加熱用気体からの伝熱管およびフィンによる熱回収に伴って凝縮水が発生し、この凝縮水がフィンに付着する場合がある。この凝縮水の付着量が多いと、排気閉塞またはこれに近い状態となるため、好ましくない。これに対し、前記構成によれば、フィンの加熱用気体流れ方向下流側の端縁部は、凹凸状であるため、前記端縁部が非凹凸状である場合と比較すると、前記凝縮水を前記端縁部から排除させ易くなり、フィンに多くの凝縮水が長期間にわたって付着したままになることを抑制可能である。
【0019】
本発明の第2の側面により提供される温水装置は、本発明の第1の側面により提供される熱交換器を備えていることを特徴としている。
【0020】
このような構成によれば、本発明の第1の側面により提供される熱交換器について述べたのと同様な効果が得られる。
【0021】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行なう発明の実施の形態の説明から、より明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明に係る温水装置の一例を示す要部断面図である。
【
図3】
図1および
図2に示す温水装置で用いられているフィンの正面図である。
【
図7】
図3~
図5に示すフィンを製造する際の途中工程の一例を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照して具体的に説明する。
【0024】
図1および
図2に示す温水装置WHは、バーナ1、1次熱交換器としての熱交換器HE、および2次熱交換器7を備えている。熱交換器HEは、本発明に係る熱交換器の一例に相当し、2次熱交換器7は、本発明に係る熱交換器には相当しない。
【0025】
バーナ1は、従来既知の逆燃式のものである。このバーナ1においては、たとえばファン10から吐出される燃焼用空気に燃料ガスが混合されて点火され、このバーナ1からケース2内に、加熱用気体としての燃焼ガスが下向きに供給される。
【0026】
熱交換器HEは、前記したケース2に加え、伝熱管T、複数のフィン5、および複数の胴パイプ39を備えており、これらはたとえばステンレス製である。胴パイプ39は、湯水加熱用の吸熱に加え、ケース2の側壁部20を冷却する役割を果たし、ケース2の側壁部20の内面に沿って設けられている。胴パイプ39には、2次熱交換器7の複数の伝熱管70を通過した湯水が、接続管48を介して供給される。この湯水は、胴パイプ39を通過した後に、伝熱管Tに流れ込み、その出湯口37に到達して出湯する。
2次熱交換器7は、熱交換器HEから熱回収(顕熱の回収)がなされた後の燃焼ガスから、潜熱をさらに回収するためのものであり、ケース2内のうち、熱交換器HEの下方に複数の伝熱管70を配置して構成されている。伝熱管70は、たとえば蛇行状伝熱管70である。
【0027】
熱交換器HEの伝熱管Tは、ケース2内に横架設されて上下および水平方向に複数並んだ直状の管体部4が、ベンド管49や、ケース2に設けられたヘッダ部47などを介して一連に接続された構成である。複数の管体部4は、上下2段の千鳥配列とされている。本実施形態においては、燃焼ガス流れ方向(加熱用気体流れ方向)が下向きであるため、上段側の管体部4が、上流側管体部4(4A)であり、下段側の管体部4が、下流側管体部4(4B)である。
【0028】
複数のフィン5は、複数の管体部4が貫通し、かつこれら管体部4にロウ付けされており、管体部4の軸長方向に適当な間隔で複数並んでいる。
図3~
図5によく表れているように、各フィン5は、各管体部4が挿通される部位であって、上下2段の千鳥配列とされた複数の貫通孔50、複数対の切り起こし部51、追加の切り起こし部53、複数の加熱用気体通過部54、複数の第1および第2の切欠き部55,56、ならびに複数のスリット部57a,57bを備えている。
【0029】
フィン5の前記した各部、複数の上流側管体部4A、および下流側管体部4Bの具体的な構成について、
図6を参照して詳述する。
【0030】
各一対の切り起こし部51は、フィン5の一部をフィン5の厚み方向に屈曲させた部位であり、上流側管体部4Aの外周面4aの周囲のうち、加熱用気体流れ方向下流側の左右両側にそれぞれ位置し、外周面4aの下面部4a'(本発明でいう外周面の下流側部分に相当)に隙間C1を介して対向接近している。これら一対の切り起こし部51は、これらの上側端部51aどうしの相互間の第1の幅L1よりも、下側端部51bどうしの相互間の第2の幅L2の方が小さくなるように傾斜している。一対の切り起こし部51は、左右対称とされているが、本発明はこれに限定されず、これらはその形状やサイズなどに多少の差異があってもよい。
【0031】
前記した第1の幅L1は、上流側管体部4Aの外径Dよりも大きく、熱交換器HEの幅方向において、一対の切り起こし部51の上側端部51aは、上流側管体部4Aの外周面よりも適当な寸法L3だけはみ出した位置ある。この構成により、熱交換器HEに向けて進行した燃焼ガスの一部は、一対の切り起こし部51に当たり、これらによって隙間C1に効率よく導かれる。
好ましくは、一対の切り起こし部51の下側端部51bは、上流側管体部4Aの外周面4aの下端部よりも下方に位置している。この構成により、隙間C1に進行した燃焼ガスを外周面4aの下端部まで作用させることの確実化が図られる。
【0032】
追加の切り起こし部53は、一対の切り起こし部51の下側端部51bどうしの相互間に形成されている隙間C2の直下であって、下流側管体部4Bの下端部P1と略同等高さの位置に設けられている。隙間C2を通過して下向きに進行した燃焼ガスは、この追加の切り起こし部53に衝突し、その左右両側に位置する下流側管体部4Bの下端部P1の近辺に作用することとなる。
【0033】
追加の切り起こし部53は、フィン5の下縁部に第2の切欠き部56を形成し、その上縁部を屈曲させることにより形成されている。このため、フィン5の下縁部は、正面視において凹凸状となっている。このフィン5の形状は、燃焼ガスからの熱回収に伴って発生した凝縮水が、フィン5の下縁部からその下方に流れ落ちて排除されることを促進することができる。
図1において、フィン5の下縁部と2次熱交換器7の伝熱管70との相互間寸法L20を小さくすると、フィン5の下縁部から伝熱管70に凝縮水を積極的に伝わらせて、凝縮水の排除をより促進することが可能であり、そのような構成を採用する上でも好ましいものとなる。
【0034】
図6において、互いに隣り合う2つの上流側管体部4Aの相互間領域には、一対の切り起こし部51のそれぞれの一部が存在しているものの、一対の切り起こし部51の非形成部としての加熱用気体通過部54も形成されている。この加熱用気体通過部54は、下向きに進行してきた燃焼ガスをさらに下向きに進行させて下流側管体部4Bの外周面に衝突させるべく、下流側管体部4Bの直上に位置している。加熱用気体通過部54の幅L4は、2つの上流側管体部4Aどうしの相互間寸法L5よりも小さい。このため、加熱用気体通過部54を下向きに通過した燃焼ガスの流速vは、加熱用気体通過部54の上側領域の流速よりも速くなる。
【0035】
第1の切欠き部55は、フィン5のうち、一対の切り起こし部51の形成箇所からその下方に位置する下流側管体部4Bの外周面の近傍部分にわたる領域Sa、加熱用気体通過部54の領域、および加熱用気体通過部54の上側領域Sb(加熱用気体通過部54の加熱用気体流れ方向上流側領域)が、一連に繋がった状態で切り欠かれた部分である。このような構成によれば、フィン5のうち、他の部分よりも高温になり易い前記したSa,54,Sbが、切り欠かれて除去されているため、フィン5の温度分布の均一化を図るのに役立つ。また、前記した領域Sa,54,Sbによって燃焼ガスから熱回収がなされることはないため、下流側管体部4Bに到達する燃焼ガスの温度を高くする作用も得られる。
【0036】
スリット部57a,57bは、フィン5の上流側管体部4Aの下方領域に設けられている。このため、上流側管体部4Aの下方領域が、他の部分と比較して高温になることが抑制される他、追加の切り起こし部53に到達する燃焼ガスの温度を高くする作用も得られる。
【0037】
次に、前記した温水装置WHの作用について説明する。
【0038】
まず、バーナ1により発生された燃焼ガスが、下向きに進行し、熱交換器HEに到達した際、その一部の燃焼ガスは、上流側管体部4Aの外周面4aの上面部に直接衝突して作用した後に、その下方に進行していくが、その燃焼ガスの多くは、一対の切り起こし部51に当たり、隙間C1にガイドされる。また、上流側管体部4Aに直接衝突しない燃焼ガスの一部も、一対の切り起こし部51に当たり、隙間C1にガイドされる。このようにして隙間C1に進入した燃焼ガスは、上流側管体部4Aの外周面4aの下面部4a'に沿って流れ、この下面部4a'による熱回収がなされる。したがって、上流側管体部4Aの外周面の全周を利用した熱回収がなされ、上流側管体部4Aによる熱回収量を多くすることができる。
【0039】
熱交換器HEに向けて進行した燃焼ガスのうち、前記した隙間C1にガイドされない他の一部の燃焼ガスは、加熱用気体通過部54を通過して下流側管体部4Bの外周面の上部に到達するが、その際には、既述したように、その燃焼ガスの流速vは速くなる。したがって、下流側管体部4Bによる熱回収量が高くなる効果が得られる。一方、一対の切り起こし部51の相互間の隙間C2を通過した燃焼ガスは、その後に追加の切り起こし部53に衝突し、かつこの衝突によって流れ方向に変化を生じることにより、下流側管体部4Bの外周面の下端部P1の近辺に作用する。したがって、下流側管体部4Bの外周面の下面部を利用した熱回収量も多くなる。その結果、下流側管体部4Bについても、上流側管体部4Aと同様に、その外周面の全周を利用した効率のよい熱回収がなされることとなり、熱交換器HEの熱交換効率を高くすることができる。
【0040】
その他、本実施形態によれば、第1の切欠き部55やスリット部57a,57bが設けられているため、下流側管体部4Bに作用する燃焼ガスの温度低下を抑制し得るとともに、フィン5の温度分布の均一化を図り、フィン5に大きな熱応力、およびこれに起因する歪みが発生しないようにすることができる。
【0041】
図7は、複数のフィン5を製造する場合の一例を示している。フィン5の製造に際しては、たとえば1枚の金属板に打ち抜き加工やその他のプレス加工を施すことにより、複数のフィン5が一連に繋がった中間品Wを製造し、これの中間品Wを複数のフィン5に切断・分離させる。同図に示す中間品Wにおいては、同図の上側のフィン5の第2の切欠き部56に、下側のフィン5の一部が、適当な寸法L8だけ進入した状態で、上下2つのフィン5が繋がっている。
このような構成によれば、2つのフィン5の配列ピッチを小さくし、1枚の金属板から製造されるフィン5の枚数を多くすることができる利点が得られる。本実施形態のフィン5は、前記したような手法を用いて廉価に製造することも可能である。
【0042】
本発明は、上述した実施形態の内容に限定されない。本発明に係る熱交換器、およびこれを備えた温水装置の各部の具体的な構成は、本発明の意図する範囲内において種々に設計変更自在である。
【0043】
上述の実施形態においては、熱交換器の上側にバーナを配置した逆燃式であるが、これに限定されず、たとえば熱交換器の下側にバーナを配置した正燃式とすることもできる。この場合、本発明でいう加熱用気体流れ方向は、上向きとなる。
【0044】
フィンは、ステンレス製に限定されず、他の材質とすることもできる。
伝熱管は、フィンを貫通する複数の管体部として、加熱用気体流れ方向に2段の千鳥配列とされている管体部を含んでいればよく、その具体的な数や、配列ピッチなどは限定されない。また、前記した2段の千鳥配列とは別の管体部が追加して設けられていてもよい。
加熱用気体は、燃焼ガスに限定されず、たとえばコージェネレーションシステムにおいて発生する高温の排ガスなどとすることもできる。
【0045】
本発明に係る熱交換器は、2次熱交換器の前段に設けられる顕熱回収用の1次熱交換器でなくてもよく、顕熱回収、潜熱回収の種別を問わない。
本発明に係る温水装置は、湯水を加熱して温水を生成する機能を備えたものであり、一般的な給湯装置の他、たとえば風呂給湯装置、暖房用温水装置、融雪用の温水装置などとして構成することができる。
【符号の説明】
【0046】
WH 温水装置
HE 熱交換器
C1 隙間
T 伝熱管
1 バーナ
2 ケース
4 管体部
4a 外周面(上流側管体部の)
4a'下面部(外周面の下流側部分)
4A 上流側管体部
4B 下流側管体部
5 フィン
51 切り起こし部
51a 上側端部(切り起こし部の)
51b 下側端部(切り起こし部の)
53 追加の切り起こし部
54 加熱用気体通過部
55,56 第1および第2の切欠き部