(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-28
(45)【発行日】2023-10-06
(54)【発明の名称】三輪自転車
(51)【国際特許分類】
B62K 5/10 20130101AFI20230929BHJP
B62K 5/02 20130101ALI20230929BHJP
B62K 5/06 20060101ALI20230929BHJP
B62J 45/412 20200101ALI20230929BHJP
B62J 45/20 20200101ALI20230929BHJP
B62M 6/40 20100101ALI20230929BHJP
【FI】
B62K5/10
B62K5/02
B62K5/06
B62J45/412
B62J45/20
B62M6/40
(21)【出願番号】P 2019016439
(22)【出願日】2019-01-31
【審査請求日】2021-12-20
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】菅 祐司
【審査官】結城 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-149828(JP,A)
【文献】特開昭59-179467(JP,A)
【文献】特開平9-216595(JP,A)
【文献】特開平9-207862(JP,A)
【文献】特開2004-122832(JP,A)
【文献】特開2004-131027(JP,A)
【文献】特開2014-193679(JP,A)
【文献】国際公開第2019/162714(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62K 5/02- 5/10,
B62J 45/20,45/40,
B62M 6/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレームと、
前記フレームを移動面上で支える一つの前輪及び二つの後輪と、
走行速度を検出するための速度センサと、
を備え、
前記フレームは、
前記前輪が前ホークを介して取り付けられた前部フレームと、
前記後輪が取り付けられた後部フレームと、を備え、
前記前部フレームと前記後部フレームは、長手方向に延びた回転軸回りに互いに回転可能に接続されており、
前記回転軸回りの回転力が生じると、前記回転力に対して抵抗力を加える抵抗力発生装置と、
前記速度センサの検出結果を用いて、前記抵抗力発生装置から生じる前記抵抗力を制御する制御部と、
前記回転軸回りの回転力が生じると前記検出結果に依存せず前記前部フレームを基準位置に戻そうとする揺動復元装置と、を更に備え、
前記制御部は、前記検出結果が所定速度以下であるときに、前記抵抗力を所定の抵抗力とし、前記検出結果が前記所定速度を超えたときに、前記抵抗力を前記所定の抵抗力よりも小さい抵抗力に変
え、
前記後部フレームに対する前記前部フレームの回転に応じて、前記回転軸で回転する回転体を更に備え、
前記抵抗力発生装置は、前記回転体の回転力に対して抵抗力を加えるように構成され、
前記回転体は歯車を含み、
前記抵抗力発生装置は、前記歯車にかみ合う歯を有するロータリダンパである、
三輪自転車。
【請求項2】
前記抵抗力発生装置は、オイルダンパである、
請求項
1記載の三輪自転車。
【請求項3】
前記一つの前輪及び前記二つの後輪の少なくとも一つに対し、駆動補助出力を加えるモータユニットを更に備える、
請求項1
又は2に記載の三輪自転車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、三輪自転車に関する。より詳細には、前輪と後輪とを備える三輪自転車に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、従来の三輪自転車が記載されている。特許文献1に記載の三輪自転車は、前ホークを介して前輪が取り付けられた前フレームと、二つの後輪が取り付けられた後フレームと、を備える。
【0003】
前フレームの後部には、前フレーム後メインパイプが設けられている。前フレーム後メインパイプは、前フレームの前側部分と、後フレームとをつなぐ。前フレーム後メインパイプは、前フレーム後メインパイプの中心軸を回転軸として、後フレームに対して回転可能に取り付けられている。
【0004】
このように、後フレームに対し、前フレームが回転可能であるため、ユーザは、左右方向のいずれかに旋回したいときには、前フレームを左右方向のいずれかに傾けることで、重心移動をすることができる。この結果、ユーザは、左右方向のいずれか望む向きに三輪自転車を旋回させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1に記載の三輪自転車では、前フレームが後フレームに対して回転可能であるが、一定の速度以上で移動している際には、前フレームに対して慣性力等が働いて、走行が安定する。
【0007】
しかしながら、一定の速度未満で移動しているとき(要するに低速時)には、前フレームに対して働く慣性力等が小さく、前フレームの自立が不安定になり、走行が安定しないことがある。
【0008】
本開示は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、例えば、低速時において、前部フレームの自立が不安定になるのを抑えることができる三輪自転車を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示に係る一態様の三輪自転車は、フレームと、前記フレームを移動面上で支える一つの前輪及び二つの後輪と、を備える。前記フレームは、前記前輪が前ホークを介して取り付けられた前部フレームと、前記後輪が取り付けられた後部フレームと、前記前部フレームと前記後部フレームとをつなぐ連結フレームと、を有する。前記連結フレームは、前記後部フレームに対して、前記前部フレームを、平面視で前後方向に沿った回転軸で回転可能とするシャフトを含む。前記回転軸回りの回転力が生じると、前記回転力に対して抵抗力を加える抵抗力発生装置を更に備える。
【発明の効果】
【0010】
本開示に係る上記態様の三輪自転車は、例えば、低速時において、前部フレームの自立が不安定になるのを抑えることができる、という利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本開示の一実施形態に係る三輪自転車の側面図である。
【
図3】
図3は、
図2の後部フレーム及び連結フレーム周辺の拡大平面図である。
【
図4】
図4は、同上の後部フレーム及び連結フレーム周辺の鉛直面での断面図である。
【
図5】
図5は、同上の後部フレーム周辺の拡大平面図である。
【
図6】
図6Aは、同上の三輪自転車の揺動復元機構において、基準位置にあるときの背面図である。
図6Bは、同上の三輪自転車の揺動復元機構において、第一レバーが基準位置から一方向に回転したときの背面図である。
図6Cは、同上の三輪自転車の揺動復元機構において、第一レバーが基準位置から他方向に回転したときの背面図である。
【
図7】
図7は、同上の三輪自転車の抵抗力発生装置近傍の背面図である。
【
図8】
図8は、変形例1に係る三輪自転車の制御部周辺のブロック図である。
【
図9】
図9は、変形例2に係る三輪自転車の後部フレーム及び連結フレーム周辺の拡大平面図である。
【
図10】
図10は、同上の抵抗力発生装置近傍の背面図である。
【
図11】
図11は、変形例3に係る三輪自転車の側面図である。
【
図12】
図12は、同上の三輪自転車のハブモータの一部破断図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(1)実施形態
(1.1)概要
本実施形態に係る三輪自転車1は、
図1に示すように、フレーム2と、フレーム2を移動面上で支える一つの前輪92及び二つの後輪91と、を備える。フレーム2は、前部フレーム21と、後部フレーム3と、連結フレーム32と、を備える。前部フレーム21には、前ホーク26を介して前輪92が取り付けられている。後部フレーム3には、後輪91が取り付けられている。連結フレーム32は、前部フレーム21と後部フレーム3とをつなぐ。連結フレーム32は、シャフト33を少なくとも一部に含む。シャフト33は、後部フレーム3に対して、前部フレーム21を、平面視で前後方向に沿った回転軸331を中心として回転可能とする。ここで、本開示でいう「平面視」とは、移動面100に直交する方向のうち、対象物を、当該対象物の上方から見ることを意味する。
【0013】
三輪自転車1は、抵抗力発生装置8を備える。抵抗力発生装置8は、シャフト33における回転力に対して抵抗力を加える装置である。本実施形態に係る抵抗力発生装置8は、
図3に示すように、例えば、ロータリダンパ80である。ここでいう、ロータリダンパ80は、例えば、オイルダンパである。
【0014】
このため、例えば、低速時において、前部フレーム21が回転軸331回りに回転するのを抑えることができ、前部フレーム21の自立が不安定になるのを抑えることができる。したがって、本実施形態に係る三輪自転車1では、安定した走行を実現しやすい。
【0015】
本開示でいう「低速」とは、三輪自転車1の前進による慣性力等が前部フレーム21に加わっても、前部フレーム21の自立が安定しない速度を意味する。本開示に係る「低速」は、一例として、1~5km/hである。
【0016】
(1.2)詳細
(1.2.1)全体構成
以下、本実施形態に係る三輪自転車1について、詳細に説明する。
【0017】
本実施形態に係る三輪自転車1は、
図1に示すように、電動アシスト自転車である。本開示でいう「電動アシスト自転車」は、ユーザの踏む力(以下、「踏力」という)を、駆動補助出力によって補うモータユニット7を持つ自転車を意味する。したがって、本開示でいう「電動アシスト自転車」は、法規上、電動アシスト自転車に属する自転車だけでなく、法規上は電動アシスト自転車に属しないモータユニット7を持つ自転車も含まれる。本開示でいう「駆動補助出力」は、モータが車輪に与える回転出力を意味する。
【0018】
本実施形態に係る三輪自転車1は、電動アシスト自転車であるが、本開示では、踏力により車輪に動力を与える駆動系(人力駆動系)と、モータにより車輪に動力を与える駆動系(モータ駆動系)と、が独立している自転車(モータのみでも走行可能な自転車)であってもよい。ここでは、人力駆動系とモータ駆動系とが独立した自転車と、電動アシスト自転車と、を含む自転車を「電動自転車」という。なお、本開示でいう「三輪自転車」は、電動自転車でなくてもよく、モータユニット7を持たない人力駆動系のみの自転車であってもよい。
【0019】
本実施形態に係る三輪自転車1のユーザは、主に、高齢者、足腰が弱い者、バランスをとるのが苦手な者、障がい者等である。ただし、本開示では、ユーザは、特に限らず、若年者、中年者、健常者等であってもよい。
【0020】
ここで、本開示では、三輪自転車1が移動面100に沿って進む方向を「前方向」とし、その反対方向を「後方向」として定義する。また、前方向及び後方向の二方向を「前後方向」として定義し、前後方向に直交しかつ移動面100に沿う二方向を「左右方向」として定義する。また、本実施形態では、移動面100は、水平面であるとして説明する。ただし、実際には、移動面100は、必ずしも水平な平面とは限らず、例えば、凹凸面、水平面に対して勾配を有する傾斜面、湾曲した面、球面等であってもよい。なお、これらの方向の定義は、三輪自転車1の使用態様を限定する趣旨ではない。また、図面中の各方向を示す矢印は、説明のために表記しているに過ぎず、実体を伴わない。
【0021】
三輪自転車1は、本実施形態では、
図1に示すように、フレーム2、前ホーク26、一つの前輪92、二つの後輪91、ハンドル38、サドル40、一対のクランクアーム96及び一対のペダル95を備える。また、三輪自転車1は、バッテリ装置6、モータユニット7及びモータブラケット73を備える。また、三輪自転車1は、回転体310、揺動復元機構31、抵抗力発生装置8、速度センサ52及び制御基板5を備える。
【0022】
(1.2.2)前輪・後輪
前輪92及び後輪91は、フレーム2を移動面100上で支える。前輪92及び後輪91の各々は、タイヤ920、ホイール921及びハブ922を備える。
【0023】
前輪92のハブ922には前輪軸93が通されている。前輪92は、前輪軸93によって、前ホーク26に回転可能に取り付けられている。前輪92の回転軸は、前輪軸93の中心軸と同じであり、左右方向に略平行である。
【0024】
二つの後輪91は、フレーム2に含まれる後部フレーム3に対し、回転可能に取り付けられている。二つの後輪91は、
図2に示すように、左右方向に離れている。
図3に示すように、各後輪91のハブ922には後輪軸94が通されている。各後輪91は、後輪軸94によって、後部フレーム3に回転可能に取り付けられている。後輪91の回転軸は、後輪軸94の中心軸と同じであり、左右方向に略平行である。本実施形態に係る三輪自転車1では、二つの後輪91は独立して回転することができる。本実施形態では、二つの後輪91のうち、一方の後輪91が駆動輪であり、他方の後輪91が従動輪である。ただし、両方の後輪91を駆動輪としてもよい。デファレンシャルギア(差動装置)を使用すれば、両方の後輪91を駆動輪とすることを実現することができる。
【0025】
(1.2.3)前ホーク
前ホーク26は、
図1に示すように、前輪92とフレーム2との間に介在する。前ホーク26は、一対のホーク足261と、一対のホーク足261の上端をつなぐホーク肩262と、ホーク肩262から突出するホークステム263と、を備える。一対のホーク足261には、ハブ922に通された前輪軸93によって、前輪92が回転可能に取り付けられている。前輪92の回転軸は、移動面100に対して略平行であり、前輪92を支える前輪軸93の中心軸と同じである。ホークステム263の突出方向(長手方向)は、ホーク肩262から、上方向に行くに従って後方向に行くように、移動面100に対して傾いている。
【0026】
(1.2.4)フレーム
フレーム2は、三輪自転車1の骨組みである。フレーム2は、本実施形態では、アルミニウムを主成分とするアルミニウム合金で構成される。ただし、本開示では、フレーム2は、アルミニウム合金に限らず、鉄、クロムモリブデン鋼、ハイテンスチール、チタン、マグネシウム等で構成されてもよい。また、本開示に係るフレーム2は、金属に限らず、カーボン、木材、竹、繊維強化合成樹脂(例えば、CFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastics))等で構成されてもよい。フレーム2は、本実施形態では、
図1に示すように、前部フレーム21と、後部フレーム3と、連結フレーム32と、を備える。
【0027】
(1.2.4.1)前部フレーム
前部フレーム21は、フレーム2において前側部分を構成する。前部フレーム21には、前ホーク26を介して、前輪92が取り付けられている。前部フレーム21には、本実施形態では、バッテリ装置6、サドル40、モータブラケット73、モータユニット7及び制御基板5が取り付けられている。
【0028】
ここで、本開示でいう「取り付ける」とは、物を、取付け対象物に対して、直接的又は間接的に設置することを意味する。ここでいう「直接的」とは、取付け対象物に物が接触した状態で、取付け対象物に物が設置されていることを意味する。ここでいう「間接的」とは、取付け対象物と物との間に、例えば、パッキン、取付け金具、ブラケット等の他部材を介在させた状態で、取付け対象物に物が設置されていることを意味する。
【0029】
前部フレーム21は、複数のパイプで構成されている。前部フレーム21は、本実施形態では、ヘッドパイプ24、ダウンチューブ22、シートチューブ23、シートステイ25及びバッテリブラケット27を備える。
【0030】
本開示でいう「パイプ」とは、細長くて中空な部材を意味する。本開示に係るパイプの断面形状は、例えば、円形状(正円、長円及び楕円を含む)、長方形状(正方形を含む)、六角形状、八角形状等であってもよい。
【0031】
ヘッドパイプ24は、前ホーク26を支える。要するに、前部フレーム21には、前輪92が前ホーク26を介して取り付けられている。ヘッドパイプ24の中心軸は、上方向に行くに従って後方向に行くように、移動面100に対して傾いている。ヘッドパイプ24には、ヘッドパイプ24の中心軸とホークステム263の中心軸とが一致するように、ホークステム263が通される。これによって、ヘッドパイプ24は、ホークステム263を回転可能に支える。ホークステム263の回転軸は、本実施形態では、ヘッドパイプ24の中心軸と同じである。
【0032】
ダウンチューブ22は、ヘッドパイプ24とシートチューブ23とをつなぐ。ダウンチューブ22は、本実施形態では、第一下管221と、第二下管222と、を備える。第一下管221は、シートチューブ23の下端と第二下管222とをつなぐ。第一下管221の中心軸は、前方向に行くに従って上方向に行くように、移動面100に対して傾斜している。第一下管221の前端部は、第二下管222の前後方向の後側の端部に接続されており、円弧状に形成されている。
【0033】
第二下管222は、第一下管221とヘッドパイプ24とをつなぐ。第二下管222は直線状に形成されており、第二下管222の中心軸は、前方向に行くに従って上方向に行くように、移動面100に対して傾斜している。本実施形態に係るダウンチューブ22では、第二下管222の前端と後端とを通る仮想直線(第二下管222中心軸)と移動面100とのなす角は、第一下管221の前端と後端とを通る仮想直線と移動面100とのなす角よりも大きい。第二下管222と第一下管221とは一体であり、連続している。
【0034】
シートチューブ23は、サドル40を保持する。シートチューブ23の下端は、ダウンチューブ22の後端部に接続されている。シートチューブ23は、直線状に形成されており、シートチューブ23の中心軸は、上方向に行くに従って後方向に行くように、移動面100に対して傾斜している。シートチューブ23は、前後方向において、前輪92と後輪91との間に位置している。シートチューブ23には、シートチューブ23の中心軸に沿った方向(長手方向)に沿って移動可能に、サドル40が取り付けられている。
【0035】
サドル40は、シートピラー401を有する。シートピラー401は、サドル40においてユーザが座る部分から下側に突出している。シートピラー401は、本実施形態では、下方向に行くに従って前方向に行くように、移動面100に対して傾斜している。シートピラー401は、シートチューブ23の中心軸に沿うようにして、シートチューブ23に通されている。
【0036】
バッテリブラケット27には、バッテリ装置6が取り付けられる。バッテリブラケット27は、ダウンチューブ22の長手方向の後側の端部に取り付けられている。バッテリブラケット27は、本実施形態では、バッテリ装置6が載る天板部271を有する。ここで、バッテリ装置6は、バッテリ62と、バッテリ62が着脱可能に装着される装着部61と、を備える。バッテリ装置6の詳細については、後述の「(1.2.8)バッテリ装置」の欄で説明する。
【0037】
天板部271には装着部61が取り付けられている。より具体的には、装着部61は、天板部271の上面に載った状態で取り付けられており、天板部271に対して固定されている。
【0038】
シートステイ25は、シートチューブ23を補強する。シートステイ25は、本実施形態では、シートチューブ23とバッテリブラケット27とをつないでいる。シートステイ25は、一対の縦支持体251と、横支持体252と、を備える。一対の縦支持体251は、左右方向に離れて配置されている。各縦支持体251は、本実施形態では、パイプであり、その中心軸がシートチューブ23の中心軸に略平行である。横支持体252は、一対の縦支持体251とシートチューブ23とをつないでいる。横支持体252は、本実施形態では、平面視でT字状に形成されている。なお、縦支持体251の中心軸は、シートチューブ23の中心軸に対して平行でなくてもよい。
【0039】
(1.2.4.2)後部フレーム
後部フレーム3は、フレーム2において後側部分を構成する。後部フレーム3には、後輪91が取り付けられている。後部フレーム3は、
図2に示すように、前後方向において、前部フレーム21よりも後側に配置されている。後部フレーム3は、
図3,4に示すように、後部フレーム本体30と、接続部29(
図4)と、を備える。
【0040】
後部フレーム本体30は、後部フレーム3の骨組みである。後部フレーム本体30は、
図5に示すように、複数(ここでは六つ)のプレート302と、複数(ここでは二つ)の連結体303(
図2)と、を備える。
【0041】
複数のプレート302は、前後方向に略平行で、かつ鉛直面に沿っている。複数のプレート302のうち、最も外側のプレート302には、後輪ブレーキ41が取り付けられている。複数のプレート302のうち、それ以外のプレート302には、軸受け304が取り付けられている。複数のプレート302は、互いに平行である。複数の軸受け304の回転軸は、一直線上に位置しており、後輪軸94の回転軸と同じである。要するに、この複数の軸受け304は、後輪軸94を回転可能に支持する。
【0042】
ここで、軸受けの種類は、例えば、スラスト荷重、ラジアル荷重、潤滑性等を考慮して、例えば、転がり軸受け、滑り軸受け等から適宜選択される。転がり軸受としては、例えば、ラジアル玉軸受、ラジアルころ軸受等が挙げられる。滑り軸受けとしては、例えば、静圧気体軸受、動圧気体軸受、静圧流体軸受、動圧流体軸受、スクイーズ油膜軸受、ハイブリッド軸受、固体潤滑軸受、無潤滑軸受、自己潤滑軸受、多孔質自己潤滑軸受、焼結含油軸受、自給式滑り軸受ユニット等が挙げられる。
【0043】
ここで、本実施形態では、後輪軸94は、長手方向の途中で分断しており、左右方向に離れて二つある。二つの後輪軸94は、分離しており、互いに独立して回転可能である。一方の後輪軸94は、二つの後輪91のうちの一方の後輪91のハブ922に取り付けられている。他方の後輪軸94は、二つの後輪91のうちの他方の後輪91のハブ922に取り付けられている。
【0044】
二つの後輪軸94のうちの一方の後輪軸94には、リアスプロケット305が固定されている。したがって、リアスプロケット305の回転軸は、後輪軸94の回転軸と同じである。リアスプロケット305は、
図1に示すように、モータユニット7の駆動スプロケット71に対し、動力伝達体74を介して連結されている。これにより、駆動スプロケット71から出力された回転動力は、動力伝達体74を介してリアスプロケット305に伝達され、二つの後輪91のうちの一方の後輪91を回転させる。この後輪91を、駆動輪という場合がある。二つの後輪軸94のうち、駆動輪とは反対側の後輪91は、動力の伝達がされない。この後輪91を、従動輪という場合がある。
【0045】
連結体303は、複数のプレート302を互いにつなぐ。本実施形態では、連結体303は、角パイプである。ただし、連結体は、角パイプに限らず、例えば、丸パイプ、軸体、プレート等であってもよい。複数の連結体303は、
図4に示すように、上下方向に離れている。
【0046】
接続部29は、
図4に示すように、後部フレーム本体30に対して、連結フレーム32を接続する部分である。本実施形態では、接続部29は、後部フレーム本体30に対して、連結フレーム32のシャフト33が固定される。具体的には、接続部29とシャフト33との固定は、例えば、溶接による結合、スプライン結合、キー溝とキーとによる結合、クサビによる結合、嵌め合いによる結合、ねじによる結合等により実現される。また、接続部29は連結体303に対して固定される。連結体303に対する接続部29の固定は、例えば、溶接による結合、クサビによる結合、嵌め合いによる結合、ねじによる結合等により実現される。
【0047】
本開示でいう「スプライン結合」には、例えば、角形スプライン、インボリュートスプライン、ボールスプライン、三角山セレーション、インボリュートセレーション等による結合が含まれる。
【0048】
(1.2.4.3)連結フレーム
連結フレーム32は、
図1に示すように、前部フレーム21と後部フレーム3とをつなぐ。連結フレーム32は、平面視において、前後方向に長手方向を有するシャフト33を有する。ここで、「平面視において、前後方向に長手方向を有する」とは、例えば、
図1に示すように、側面視において、移動面100に対して傾いていてもよいし、移動面100に対して略平行であってもよいことを意味する。連結フレーム32は、
図4に示すように、取付け具34と、ケース35と、シャフト33と、複数(ここでは二つ)の軸受け351と、を備える。
【0049】
取付け具34は、前部フレーム21に対する、連結フレーム32の取付け部分である。取付け具34は、バッテリブラケット27に対し、取付け軸341によって回転可能に取り付けられている。取付け具34の回転軸は、取付け軸341の中心軸と同じであり、左右方向に略平行である。
【0050】
ケース35は、取付け具34に取り付けられている。本実施形態に係るケース35は、取付け具34に対して固定されている。ケース35は、筒状に形成されている。ケース35の中心軸は、平面視において前後方向に略平行である。ケース35の中心軸は、本実施形態では、後方向に行くに従って下方向に行くように、移動面100に対して傾斜している。
【0051】
シャフト33は、ケース35に対して、相対的に回転可能に取り付けられている。シャフト33のケース35に対する回転軸331は、ケース35の中心軸と同じであり、またシャフト33の中心軸とも同じである。シャフト33の長手方向の後側の端部は、後部フレーム3に対して、接続部29で固定されている。要するに、シャフト33は、後部フレーム3に対して前部フレーム21を回転可能とする。したがって、本実施形態では、後部フレーム3に対する前部フレーム21の回転軸331は、シャフト33の中心軸であって、平面視で前後方向に沿っている。シャフト33とケース35との相対回転をなす回転軸331を、以下では「シャフト33の回転軸331」又は「ケース35の回転軸331」という場合があるが、両者は同じ軸331のことである。
【0052】
シャフト33の回転軸331の長手方向は、移動面100に対して傾いている。具体的には、シャフト33の回転軸331の長手方向と水平面とのなす角は、0°より大きく、かつ30°以下である。より好ましくは、シャフト33の回転軸331の長手方向と水平面とのなす角は、15°±5°である。
【0053】
ここでいう移動面100は、前輪92の下端(接地する点)と、後輪91の下端と、を通る平面(仮想平面)であり、シャフト33の回転軸331の長手方向は、この仮想平面に対して傾斜している。
【0054】
ケース35に対するシャフト33の中心軸に平行な方向への移動は制限されている。ケース35に対するシャフト33の中心軸に平行な方向への移動の制限は、例えば、E型の止め輪354等で実現される。
【0055】
シャフト33とケース35との間には、複数の軸受け351が設けられている。複数の軸受け351は、本実施形態では、ケース35の長手方向の両端部に取り付けられている。本実施形態に係る軸受け351は、例えば、滑り軸受けである。
【0056】
本実施形態に係る三輪自転車1は、
図4に示すように、減衰装置36を備える。減衰装置36は、シートステイ25と、ケース35と、にまたがって取り付けられている。減衰装置36は、前部フレーム21に対し、連結フレーム32が取付け軸341を中心に回転したときの振動を減衰する。これによって、前部フレーム21に対して伝達する後部フレーム3の振動を減衰させることができ、ユーザが受ける振動を和らげることができる。
【0057】
減衰装置36は、本実施形態では、スプリングとオイルダンパとを備えたサスペンションである。ただし、本開示では、減衰装置36は、スプリングなどの弾性体のみで構成されてもよいし、オイルダンパのみで構成されてもよい。
【0058】
(1.2.5)回転体
回転体310は、後部フレーム3に対する前部フレーム21の回転に応じて、回転軸331を中心として回転する。回転体310は、
図4に示すように、ケース35に取り付けられており、ケース35に対して固定されている。したがって、回転体310の回転軸は、ケース35の回転軸331と同じである。回転体310は、固着具3101と、軸部材3102と、プレート3103と、歯車3104と、を備える。
【0059】
固着具3101は、軸部材3102を、ケース35の回転軸331から、ラジアル方向に離す部材である。固着具3101は、本実施形態では、板状に形成されており、ケース35の外周面からラジアル方向に突出する。ただし、本開示では、固着具3101は、例えば、棒状、ブロック状等に形成されてもよい。本実施形態に係る固着具3101は、
図4に示すように、前部フレーム21が基準位置にあるときに、ケース35の外周面から、回転軸331に直交する方向のうちの上側に突出している。
【0060】
軸部材3102は、固着具3101に取り付けられている。軸部材3102の長手方向は、シャフト33の中心軸に略平行である。軸部材3102は、ケース35の回転軸331に対して、ラジアル方向に離れている。軸部材3102の回転軸は、ケース35の回転軸331と同じである。軸部材3102は、後部フレーム3に対する前部フレーム21の回転軸331を中心とする回転に伴って、ケース35と一緒に回転する。
【0061】
プレート3103は、軸部材3102の先端面に固定されており、シャフト33に対して、回転可能に取り付けられている。プレート3103の回転軸は、ケース35の回転軸331と同じである。プレート3103は、
図7に示すように、取付け部3105と、取付け部3105に設けられた円弧状部3106と、を備える。
【0062】
取付け部3105は、シャフト33に取り付けられる部分(ここでは貫通孔)を含んでいる。本実施形態では、取付け部3105は、シャフト33の外周面に対して摺動する摺動筒部3107と、軸部材3102に対して取り付けられるボルト3108が通る取付穴を有する。軸部材3102と取付け部3105とは、本実施形態では、ボルト3108によって固定されるが、溶接等によって固定されてもよい。
【0063】
円弧状部3106には、歯車3104が取り付けられる。円弧状部3106は、本実施形態では、取付け部3105に一体的に形成されている。円弧状部3106は、上側の縁が円弧状に形成されており、上側の縁の中心がシャフト33の回転軸331とほぼ同じ位置にある。円弧状部3106の上側の縁に沿って歯車3104の歯が並んでいる。歯車3104の歯が並ぶ円弧の中心は、シャフト33の中心軸と同じであるが、円弧状部3106の縁の中心は、必ずしも、シャフト33の中心軸と同じである必要はない。
【0064】
プレート3103は、ケース35が回転すると、シャフト33の外周面に沿って回転軸331を中心として回転する。プレート3103の回転軸は、後部フレーム3に対する前部フレーム21の回転軸と同じである。
【0065】
歯車3104は、後述の抵抗力発生装置8にかみ合う。歯車3104は、複数の歯を含む。歯車3104は円弧状部3106に取り付けられており、プレート3103と共に回転する。歯車3104の回転軸は、ケース35の回転軸331と同じである。
【0066】
(1.2.6)揺動復元機構
揺動復元機構31は、後部フレーム3に対して、前部フレーム21が回転軸331を中心に回転したときに、前部フレーム21を基準位置に戻そうとする力を、前部フレーム21に加える機構である。したがって、本実施形態に係る三輪自転車1では、ユーザが乗車中において、左右方向のいずれかに進行方向を変える際、後部フレーム3に対して、前部フレーム21を左右方向のいずれかに傾けた場合に、前部フレーム21は基準位置に戻りやすい。
【0067】
本開示でいう「基準位置」とは、三輪自転車1の正面視において、シートチューブ23の中心軸が移動面100に対して直交するときの前部フレーム21の位置を意味する。以下では、前部フレーム21が基準位置にあるときの連結フレーム32の位置についても「基準位置」という場合がある。
【0068】
本実施形態に係る揺動復元機構31は、
図4に示すように、後部フレーム3の前方において、シャフト33に取り付けられている。ただし、揺動復元機構31は、例えば、後部フレーム3の後方において、シャフト33に取り付けられてもよく、取付け位置は特に限定されない。揺動復元機構31は、
図6Aに示すように、第一レバー313と、第二レバー317と、弾性体318と、を備える。
【0069】
第一レバー313及び第二レバー317の各々は、
図6A~6Cに示すように、シャフト33に対し、回転可能に取り付けられている。第一レバー313及び第二レバー317の回転軸は、ケース35の回転軸331(シャフト33の中心軸)と同じである。第一レバー313は、軸部材3102に押されることによって、一方向に回転する。第二レバー317は、軸部材3102に押されることによって、他方向に回転する。本開示でいう「一方向」と「他方向」とは、回転軸331回りにおいて、互いに反対を向く方向である。本開示でいう「一方向」及び「他方向」は、回転軸331回りにおいて互いに反対向きであることを意味する表現に過ぎず、右方向又は左方向といった特定の方向を表現する意図ではない。
【0070】
第一レバー313及び第二レバー317の各々は、レバー本体320と、弾性体取付け部314と、を備える。本実施形態では、二つのレバー313,317は、互いに同一形状に形成されているが、互いに鏡像対称に形成されてもよい。本実施形態では、二つのレバー313,317は同じ構造であるため、主に第一レバー313について説明し、第二レバー317についての説明は省略する。
【0071】
レバー本体320は、第一レバー313の主体を構成する部材であり、シャフト33に対する取付け部分を含む。レバー本体320は、
図4に示すように、シャフト33の軸方向の中間部分(後部フレーム3とケース35との間)に対し、回転可能に取り付けられている。レバー本体320の回転軸は、シャフト33の回転軸331と同じである。本実施形態に係るレバー本体320は、
図6Aに示すように、シャフト33の軸方向にみて、略L字状に形成されている。ただし、レバー本体320は、シャフト33の軸方向にみて、例えば、円形状、矩形状等に形成されてもよく、形状には特に制限はない。
【0072】
レバー本体320は、基準位置にあるときにおいて、上下方向において回転軸331よりも上側に、押し部315を有する。押し部315は、軸部材3102の側面に対向する面である。押し部315は、軸部材3102が一方向(第二レバー317の場合は他方向)へ移動すると、軸部材3102を押す。レバー本体320は、押し部315が押されることで、回転軸331を中心に回転する。レバー本体320の回転軸は、上下方向において、押し部315と移動規制部316との間にある。
【0073】
レバー本体320は、複数の立上げ片3190を有する。複数の立上げ片3190は、弾性体取付け部314が取り付けられる箇所と、移動規制部316が取り付けられる箇所と、に設けられている。立上げ片3190は、回転軸331に直交する面に対して交差する方向に突出したリブ状に形成されている。立上げ片3190が設けられることで、レバー本体320の強度が高くなる上に、移動規制部316及び弾性体取付け部314が取り付けやすい。
【0074】
弾性体取付け部314は、レバー本体320に取り付けられる。弾性体取付け部314には、弾性体318が取り付けられる。弾性体取付け部314は、本実施形態では、レバー本体320が基準位置にあるときにおいて、上下方向において、回転軸331よりも上側に位置している。弾性体取付け部314は、本実施形態ではアイボルトであり、ナットによってレバー本体320に取り付けられている。ただし、本開示では、弾性体取付け部314は、弾性体318が取付け可能であれば、アイボルトに限らず、フックであってもよいし、立上げ片3190に形成された切欠きであってもよい。また、弾性体取付け部314は、立上げ片3190に取り付けられなくてもよく、レバー本体320において、シャフト33の軸方向に向く面に取り付けられてもよい。
【0075】
弾性体318は、第一レバー313又は第二レバー317に対して、軸部材3102からの力による回転力とは反対方向の力を与える。弾性体318は、本実施形態では、引張コイルばねである。ただし、本開示では、弾性体318は、レバー313,317に対して力を付与できればよく、引張コイルばねでなくてもよい。弾性体318としては、例えば、板ばね、ねじりコイルばね、ゴム等が挙げられる。本実施形態では、弾性体318は、第一レバー313の弾性体取付け部314と、第二レバー317の弾性体取付け部314とに掛け渡されている。したがって、例えば、第一レバー313の回転によって弾性体318が引張力を受けると、第二レバー317は、同方向に引っ張られる。このとき、本実施形態では、第二レバー317が第一レバー313からの引張力によって回転しないように、
図6Bに示すように、移動規制部316が固定体319に当たって、第二レバー317の回転が制限される。
【0076】
移動規制部316は、基準位置にある第一レバー313に対し、回転軸331の他方向(第二レバー317では一方向)への回転力が加わった場合に、固定体319に当たる部分である。したがって、
図6Cに示すように、軸部材3102から第二レバー317に対して他方向に力が加わった場合に、弾性体318から第一レバー313に対して他方向への回転力が加えられるが、固定体319に対して移動規制部316が当たることで、回転が規制される。本実施形態では、移動規制部316は、ボルトであり、ナットによってレバー本体320(具体的には、立上げ片3190)に取り付けられている。立上げ片3190に対するボルトの頭の突出寸法を調整することで、弾性体318による引張力を調整することができる。
【0077】
なお、移動規制部316は、第二レバー317にも設けられている。固定体319は、第二レバー317の移動規制部316に当たることで、
図6Bに示すように、基準位置にある第二レバー317の、一方向(第一レバー313の回転と同じ方向)の回転を規制する。
【0078】
固定体319は、
図4に示すように、シャフト33に対して固定されている。固定体319は、固定具353と、軸体352と、を備える。固定具353は、シャフト33から、シャフト33の中心軸に直交する方向のうちの下側に突出している。固定具353とシャフト33とは溶接等により固定されている。軸体352は、固定具353に取り付けられている。軸体352は、シャフト33の中心軸に略平行である。軸体352は、
図6A~6Cに示すように、第一レバー313の移動規制部316と、第二レバー317の移動規制部316との間に配置されている。
【0079】
ケース35が回転すると(ここでは、この方向を一方向とする)、
図6Bに示すように、回転体310が回転軸331回りの一方向(
図6Bの黒矢印の方向)に回転する。すると、回転体310の軸部材3102は、第一レバー313の押し部315を押し、第一レバー313を一方向に回転させる。第一レバー313が一方向に回転すると、弾性体318の一端は、第一レバー313の弾性体取付け部314によって(ここでは右側に)引っ張られる。
【0080】
このとき、弾性体318の他端は、第二レバー317に対して、引張力を与える。第二レバー317は、弾性体318から引張力を受けると、一方向に回転しようとするが、移動規制部316が固定体319に当たる。このため、第二レバー317は、一方向には回転しない。したがって、弾性体318は、弾性的に伸び、第一レバー313に対して、他方向への回転力(
図4Bの白抜き矢印)を加える。
【0081】
これによって、基準位置から一方向に回転する回転体310には、第一レバー313から、基準位置に戻そうとする他方向に向かう回転力が与えられる。したがって、ケース35につながる前部フレーム21には、前部フレーム21が基準位置から傾くと、基準位置に戻そうとする力が加わる。
【0082】
次に、
図6Cに示すように、ケース35が他方向に回転すると、回転体310が回転軸331回りの他方向(
図6Cの黒矢印の方向)に回転する。すると、回転体310の軸部材3102は、第二レバー317の押し部315を押し、第二レバー317を他方向に回転させる。第二レバー317が他方向に回転すると、弾性体318の一端は、第二レバー317の弾性体取付け部314によって(ここでは左側に)引っ張られる。
【0083】
このとき、弾性体318の他端は、第一レバー313に対して、引張力を与える。第一レバー313は、弾性体318から引張力を受けると、他方向に回転しようとするが、移動規制部316が固定体319に当たる。このため、第一レバー313は、他方向には回転しない。したがって、弾性体318は、弾性的に伸び、第二レバー317に対して、一方向への回転力(
図6Cの白抜き矢印)を与える。
【0084】
これによって、基準位置から他方向に回転する回転体310には、第二レバー317から、基準位置に戻そうとする一方向に向かう回転力が加わる。
【0085】
(1.2.7)抵抗力発生装置
抵抗力発生装置8は、回転軸331回りの回転力が生じると、その回転力に対して抵抗力を加える装置である。抵抗力発生装置8は、
図4に示すように、後部フレーム3に取り付けられている。本実施形態に係る抵抗力発生装置8は、回転体310の回転力に対して抵抗力を加えることで、後部フレーム3に対する前部フレーム21の回転力(傾いたときに発生する力)に対して抵抗力を加える。
【0086】
抵抗力発生装置8は、歯車にかみ合う複数の歯82を有するロータリダンパ80である。抵抗力発生装置8は、本実施形態では、非圧縮性流体を用いたダンパである。具体的には、本実施形態に係る抵抗力発生装置8は、非圧縮性流体としてオイルを用いた粘性抵抗型のオイルダンパである。ただし、抵抗力発生装置8は、エア式又は電動式の抵抗力発生装置8であってもよい。
【0087】
抵抗力発生装置8は、入力軸における変位に対する速度が速いほど、強い抵抗力を発生させる。したがって、本実施形態に係る三輪自転車1では、後部フレーム3に対し、前部フレーム21が傾こうとする力が急激に加わると、前部フレーム21の傾こうとする力に対して比較的強い抵抗力を発生させる。一方、後部フレーム3に対し、前部フレーム21が傾こうとする力が緩やかに加わると、前部フレーム21の傾こうとする力に対して、比較的弱い抵抗力を発生させる。
【0088】
本実施形態に係る三輪自転車1では、後部フレーム3に対して、前部フレーム21が回転軸331を中心に回転すると、回転体310が回転軸331を中心に回転する。回転体310の歯車3104には抵抗力発生装置8の歯82がかみ合っているため、抵抗力発生装置8は、回転体310の回転力に対して抵抗力を発生させる。これによって、抵抗力発生装置8は、前部フレーム21に対し、回転軸331を中心に回転しようとする力を減衰させることができる。
【0089】
ところで、三輪自転車1は、移動中において、所定速度以上では、前部フレーム21に働く慣性力等によって走行が安定する。一方、所定速度未満では、前部フレーム21に働く慣性力等が小さく、自立した姿勢を保ちにくい。ここでいう「所定速度」は、前部フレーム21の直立姿勢が保たれる程度の速度を意味する。「所定速度」は、例えば、5~8km/h以下であり、より好ましくは5km/h以下である。
【0090】
これに対し、本実施形態に係る三輪自転車1は、後部フレーム3に対して前部フレーム21が傾こうとする力に抵抗力を発生させる抵抗力発生装置8を備える。したがって、三輪自転車1が所定速度未満の速度で移動しているときにも、前部フレーム21を自立した姿勢に保つことができる。
【0091】
これに対し、抵抗力発生装置8は、入力軸における変位に対する速度が緩やかだと、比較的弱い抵抗力を発生させる。すなわち、三輪自転車1が所定速度以上で移動している場合、左右方向のいずれかに旋回するときには、前部フレーム21における急激な重心移動が少ないため、抵抗力発生装置8で生じる抵抗力が原因で、左右方向に旋回を行いにくい事態は生じにくい。
【0092】
ロータリダンパ80は、
図7に示すように、回転体310の回転軸331(シャフト33の中心軸)に対し、回転軸331に直交する方向の上側に位置している。ロータリダンパ80は、回転体310の移動範囲の中央に位置している。ロータリダンパ80は、
図4に示すように、断面略L字状の固定具81によって、後部フレーム3に取り付けられている。
【0093】
これによって、抵抗力発生装置8は、回転体310が回転軸331回りにおいて一方向又は他方向のいずれに回転しても、回転体310に対して抵抗力を加えることができる。
【0094】
(1.2.8)ハンドル
ハンドル38は、
図1に示すように、前輪92の向きを操作する。ハンドル38は、本実施形態では、正面視略U字状に形成されている。ハンドル38は、先端にグリップ381を有する。ハンドル38はホークステム263の上端に固定されている。ハンドル38とホークステム263との接続部分の上方には、バスケット39が取り付けられている。
【0095】
(1.2.9)バッテリ装置
バッテリ装置6は、少なくともモータユニット7のモータに対して、電力を供給する装置である。バッテリ装置6は、
図1に示すように、装着部61と、バッテリ62と、を備える。
【0096】
装着部61は、バッテリ62が装着される部分である。装着部61には、バッテリ62が取外し可能に取り付けられている。装着部61は、バッテリブラケット27の天板部271に対し、載った状態で固定されている。
【0097】
バッテリ62は、モータに対して供給する電気的エネルギーを蓄える二次電池である。バッテリ62は、単数又は複数のセルが内蔵されている。バッテリ62は、装着部61に対して電気的に接続される。これにより、バッテリ62はモータに対して電力を供給し得る。
【0098】
本開示では、バッテリ装置6は、モータユニット7に対してのみ電力を供給するように構成されてもよいし、モータユニット7に加えて、例えば、ヘッドライト、モータのON/OFFの操作部等に電力を供給するように構成されてもよい。
【0099】
(1.2.10)モータユニット・モータブラケット
モータユニット7は、ペダル95から入力された踏力を補助する力を出力する。モータユニット7は、ユーザがペダル95を漕ぎ、クランクアーム96を介して、踏力(外力)がクランク軸に入力されると、クランク軸が回転する。本実施形態に係るモータユニット7は、クランク軸が踏力を受けて回転すると、クランク軸の回転速度及びクランク軸に生じるトルクを検出し、その検出結果に応じた力を出力する。要するに、本実施形態に係るモータユニット7は、踏力に対して駆動補助出力を加えた力を、出力することができる。
【0100】
本実施形態に係るモータユニット7は、モータ(不図示)と、動力伝達体74が掛けられる駆動スプロケット71と、を有する。駆動スプロケット71として、踏力によって回転する第一駆動スプロケット710と、モータによって回転する第二駆動スプロケット(不図示)とを備える。要するに、本実施形態に係るモータユニット7は、踏力と、駆動補助出力とを別々に動力伝達体74に対して伝える二軸式のモータユニットである。
【0101】
ただし、本開示では、モータユニット7は、ペダル95及びクランクアーム96を介して伝達された踏力と、モータの駆動補助出力と、を駆動スプロケット71に伝達した上で、動力伝達体74に動力を伝達する一軸式のモータユニット7であってもよい。
【0102】
モータユニット7のクランク軸の両端の各々には、クランクアーム96と、ペダル95とが取り付けられる。要するに、一対のクランクアーム96と一対のペダル95は、フレーム2の右側と左側とに配置される。ペダル95は、本実施形態では、二つの後輪91の少なくとも一つを駆動する。
【0103】
実施形態では、動力伝達体74はチェーンであるが、本開示ではこれに限らない。例えば、動力伝達体74は、ベルト又はワイヤ等であってもよい。
【0104】
モータユニット7は、モータブラケット73を介して、フレーム2に取り付けられている。モータブラケット73は、第一下管221に取り付けられている。モータブラケット73は、本実施形態では、バッテリブラケット27よりも前方に配置されており、シートチューブ23の中心軸の延長線よりも前方に配置されている。なお、モータブラケット73とバッテリブラケット27とはつながっていてもよい。
【0105】
本実施形態では、モータブラケット73がシートチューブ23の中心軸の延長線よりも前方に配置されているため、モータブラケット73がシートチューブ23の中心軸の延長線上にある態様よりも、ユーザはペダル95を漕ぎやすい。モータブラケット73がシートチューブ23の中心軸の延長線よりも前方に配置されていると、ペダル95とサドル40との距離を大きく取りやすいからである。
【0106】
(2)変形例
上記実施形態は、本開示の様々な実施形態の一つに過ぎない。上記実施形態は、本開示の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
【0107】
(2.1)変形例1
上記実施形態に係る抵抗力発生装置8は、作動流体として粘性流体であるオイルを用いたオイルダンパであったが、作動流体として、磁気機能性流体を用いてもよい。磁気機能性流体では、一定の磁界が印可されることで、減衰特性を変えることができる。
【0108】
磁気機能性流体は、磁界を印可することで、磁界に応答して粘性が変化する。磁気機能性流体は、例えば、磁性流体(MF;Magnetic fluid)、磁気粘性流体(MRF;(Magneto-rheological fluid)、磁気混合流体(MCF;(Magnetic compound fluid)等を含む。
【0109】
本変形例に係る抵抗力発生装置8は、
図8に示すように、作動流体に対して磁界を印可する電磁石83を備える。本変形例に係る抵抗力発生装置8では、電磁石83に対して供給する電力を変化させることで、抵抗力発生装置8の減衰力を変化させることができる。なお、抵抗力発生装置8に対して磁界を印可するものとして、永久磁石が用いられてもよい。
【0110】
本変形例では、三輪自転車1は、抵抗力発生装置8の磁気機能性流体の粘性を変化させる制御部51を備える。本変形例に係る制御部51は、電磁石83に供給する電力を変化させることで、抵抗力発生装置8で発生する抵抗力を制御することができる。制御部51は、速度センサ52の検知結果を用いて、抵抗力発生装置8で発生する抵抗力を制御する。本実施形態に係る制御部51は、制御基板5に含まれる。
【0111】
(2.1.1)速度センサ
速度センサ52は、三輪自転車1の走行速度を検出する。速度センサ52は、本実施形態では、前輪92のスポークの一部に設けられたマグネット520と、マグネット520の移動を検知するホールセンサ521とを備え、ホールセンサ521の検知信号を制御部51に出力し、演算することで前輪92の角速度から走行速度を検出する。ただし、速度センサ52は、例えば、ドップラ式又は空間フィルタ式を採用してもよい。また、速度センサ52は、検出素子と、検出素子から受け取った電気信号から速度を割り出す制御部51と、が一つの筐体に収まっていてもよい。
【0112】
(2.1.2)制御基板
制御基板5(
図1参照)は、抵抗力発生装置8を制御する制御部51(
図8)を有する。制御基板5は、上記実施形態と同様、プリント基板である。制御部51は、1以上のプロセッサ及び1以上のメモリを有するマイクロコントローラを主構成とする。すなわち、マイクロコントローラのメモリに記録されたプログラムを、マイクロコントローラのプロセッサが実行することにより、制御部51の機能が実現される。プログラムはメモリに予め記録されていてもよいし、メモリカード等の非一時的記録媒体に記録されて提供されてもよい。制御部51には、速度センサ52及び抵抗力発生装置8が電気的に接続されている。
【0113】
制御部51は、速度センサ52の検出結果を用いて、抵抗力発生装置8で生じる抵抗力を制御する。本変形例に係る制御部51は、速度センサ52による検出結果が、所定速度以下であるときに、抵抗力を所定の抵抗力とし、検出結果が所定速度を超えたときに、抵抗力を所定の抵抗力よりも小さい抵抗力に変える。
【0114】
ここでいう「所定の抵抗力」とは、上記実施形態に係る抵抗力発生装置8で発生する抵抗力に相当する抵抗力を意味する。要するに、本変形例では、所定の抵抗力を発生させるときの磁気機能性流体の粘度は、作動流体がオイルであるときの粘度に相当する。
【0115】
これによって、三輪自転車1において、低速時には、前部フレーム21が傾きにくく、かつ通常速度から高速時には、前部フレーム21を傾かせやすくでき、重心移動が容易にできる。
【0116】
本変形例では、速度センサ52による検出結果に対し、段階的に電力を変えてもよいし、連続的に電力を変えてもよい。また、ユーザの操作によって、電力の供給をON/OFF切替え可能に構成し、抵抗力発生装置8で生ずる抵抗力の有無を切り替えてもよい。
【0117】
(2.2)変形例2
上記実施形態では、抵抗力発生装置8として、ロータリダンパ80が用いられたが、本変形例では、
図9,
図10に示すように、少なくとも一つの直動式ダンパ84が用いられる。直動式ダンパ84は、回転体310の回転力を受けて、回転体310に対して抵抗力を加える。
【0118】
回転体310は、
図10に示すように、プレート3103を備える。プレート3103は、上記実施形態に係るプレート3103(
図7参照)と比べて、歯車3104が設けられていない点で異なる。本変形例に係るプレート3103は、取付け部3105における回転軸331に直交する方向における上側の端部に、接続部3109が設けられている。接続部3109には、直動式ダンパ84のロッド842が回転可能に取り付けられる。ロッド842の回転軸は、回転軸331に略平行である。
【0119】
直動式ダンパ84は、後部フレーム本体30のプレート302に回転可能に取り付けられるシリンダ841と、シリンダ841に対して移動可能なロッド842と、を備える。シリンダの回転軸は、回転軸331に略平行である。本実施形態に係る直動式ダンパ84の作動流体は、上記実施形態と同じく、オイルである。したがって、本実施形態に係る直動式ダンパ84は、オイルダンパである。本実施形態に係る三輪自転車1は、
図10に示すように、二つの直動式ダンパ84を備える。以下では、右側の直動式ダンパ84を第一ダンパ84aとし、左側の直動式ダンパ84を第二ダンパ84bとして定義する。
【0120】
回転体310が回転軸331を中心にして一方向(矢印の方向)に回転すると、第一ダンパ84aのロッド842が後退し、かつ第二ダンパ84bのロッド842が前進する。また、回転体310が回転軸331を中心にして他方向に回転すると、第一ダンパ84aのロッド842が前進し、かつ第二ダンパ84bのロッド842が後退する。
【0121】
なお、本変形例に係る直動式ダンパ84において、作動流体として、変形例1に記載の磁気機能性流体を用いてもよい。
【0122】
(2.3)変形例3
上記実施形態の三輪自転車1では、モータユニット7がダウンチューブ22に取り付けられる、いわゆるセンタユニット方式のモータユニット7を備えたが、
図11,
図12に示すように、フロントハブユニット方式のモータユニット7であってもよい。本変形例では、
図11において、上記実施形態と同じ構成については同符号を付して説明を省略する。
【0123】
本変形例に係る三輪自転車1では、
図11に示すように、モータユニット7としてのハブモータ75と、踏力検出ユニット70と、踏力検出ユニットブラケット730と、を備える。
【0124】
踏力検出ユニットブラケット730は、ダウンチューブ22の第一下管221に取り付けられている。踏力検出ユニットブラケット730には、踏力検出ユニット70が取り付けられている。なお、本変形例の踏力検出ユニットブラケット730は、上記実施形態のモータブラケット73と、同じ構造であり、踏力検出ユニットブラケット730とモータユニット7とに、共通して使用することができる。踏力検出ユニットブラケット730と、モータブラケット73と、を併せて「取付けブラケット」という場合がある。
【0125】
踏力検出ユニット70は、クランク軸に連結されたペダル95から入力された踏力を検出する。本変形例では、踏力検出ユニット70は、踏力の検出として、トルクを検出する。このトルクの検出は、例えば、磁歪式トルクセンサによって、クランク軸に生じたひずみを検出することで行われる。なお、踏力の検出として、クランク軸の軸回りの回転を、回転センサで検出してもよい。
【0126】
踏力検出ユニット70で検出された検出結果は、ハブモータ75に出力される。
【0127】
ハブモータ75は、踏力検出ユニット70の検出結果に基づいて、駆動補助出力を発生する。本変形例に係るハブモータ75は、前輪92の前輪軸93に対して同心状に取り付けられている。ハブモータ75は、
図12に示すように、一対の固定軸76と、モータ装置77と、減速機構78と、ハブケース79と、を備える。
【0128】
固定軸76は、前輪92の回転軸に沿って延びており、フレーム2に取り付けられる。固定軸76は、本実施形態では、一対のホーク足261に取り付けられ、当該一対のホーク足261に対して固定される。
【0129】
モータ装置77は、モータ771を駆動源とし、回転動力を出力する。モータ装置77は、モータ771と、ハウジング772と、を備える。ハウジング772には、固定軸76の一方が固定されている。モータ771は、ハウジング772に取り付けられている。モータ771は、ロータ774と、ステータ773と、を備える。ロータ774には、出力軸775が取り付けられており、ロータ774と出力軸775とは互いに固定されている。出力軸775の外周には、歯部776が形成されている。
【0130】
減速機構78は、モータ装置77から出力された回転動力が入力されると、減速した上で、ハブケース79を回転させる。減速機構78は、本変形例では、複数の平歯車781を備えた遊星歯車機構である。複数の平歯車781は、出力軸775の周囲に配置され、かつ歯部776に噛み合う。本変形例に係る減速機構78では、複数の平歯車781は、出力軸775の周りを公転しないが、公転可能に構成されてもよい。減速機構78は、ハブケース79の内部に配置されている。平歯車781は、歯部776に対してかみ合い、かつハブケース79の内周面にかみ合う。
【0131】
ハブケース79は、ハウジング772に対して、回転可能に取り付けられている。ハブケース79の回転軸は、固定軸76の中心軸と同じであり、前輪92の回転軸と同じである。ハブケース79とハウジング772との間には、ベアリング791が介在している。ハブケース79には、前輪92のスポーク942が取り付けられる。モータ771の出力軸775からハブケース79までの動力伝達経路には、ワンウェイクラッチが設けられている。ワンウェイクラッチは、三輪自転車が走行中において、モータ771による加速をハブケース79に伝えるが、ハブケース79からモータ771への動力伝達を遮断する。
【0132】
モータ装置77から回転動力が出力されると、その回転動力は、減速機構78に伝達し、ハブケース79を回転させる。ハブケース79は、ホイール921を回転させ、前輪92に対して駆動補助出力を伝達する。
【0133】
(2.4)その他の変形例
以下、実施形態の変形例を列挙する。以下に説明する変形例は、適宜組み合わせて適用可能である。
【0134】
変形例1に係る三輪自転車1では、制御部51によって、抵抗力発生装置8を制御したが、本開示では、手動操作によって抵抗力発生装置8を作動させてもよい。例えば、ハンドル38のグリップ381に、操作用のレバーを設け、操作用のレバーを操作することで、抵抗力発生装置8の抵抗力の有無を切り替えてもよい。
【0135】
上記実施形態では、連結フレーム32は、後部フレーム3に対して、連結フレーム32の回転軸331の周りに回転可能に接続されていたが、本開示では、連結フレーム32は、前部フレーム21に対して、回転軸331周りに回転可能に接続されてもよい。この場合、連結フレーム32と後部フレーム3とは、左右方向に延びた軸周りに回転可能に連結されることが好ましい。
【0136】
上記実施形態では、連結フレーム32と前部フレーム21とは、左右方向に延びた軸周りに回転可能に取り付けられたが、本開示では、連結フレーム32においてシャフト33とは反対側の端部と、対応するフレーム2とは互いに固定されてもよい。例えば、上記実施形態では、連結フレーム32と前部フレーム21とは溶接で固定されてもよい。この場合、連結フレーム32とバッテリブラケット27とが一体であってもよい。
【0137】
上記実施形態では、揺動復元機構31は、後部フレーム3が備えたが、本開示では、前部フレーム21が備えてもよい。また、本開示では、揺動復元機構31は無くてもよい。
【0138】
上記実施形態では、連結フレーム32の長手方向は、移動面100に対して交差していたが、本開示では、移動面100に対して略平行であってもよい。
【0139】
ペダル95は、上記実施形態では、二つの後輪91の一方を駆動したが、二つの後輪91の両方を駆動してもよい。また、ペダル95は、前輪92のみを駆動してもよい。
【0140】
上記実施形態では、電動自転車に基づいて三輪自転車1を説明したが、本開示では、電動自転車でない三輪自転車1であってもよい。
【0141】
上記変形例1では、フロントハブユニット方式のモータユニット7であったが、変形例1のハブモータ75を、二つの後輪91のうちの駆動輪のハブに取り付けた、いわゆるリアハブユニット方式のモータユニット7としてもよい。
【0142】
上記実施形態では、後部フレーム3に対しシャフト33が固定され、シャフト33に対して前部フレーム21が回転可能に取り付けられたが、本開示では、後部フレーム3に対しシャフト33が回転可能に取り付けられ、シャフト33に対して前部フレーム21が固定されてもよい。また、連結フレーム32は、前部フレーム21及び後部フレーム3のいずれか一方に一体的に設けられてもよい。
【0143】
上記実施形態では、回転体310に対して抵抗力を加えることで、前部フレーム21の回転力に対して抵抗力を加えたが、シャフト33での回転(ケース35の回転)に対して直接抵抗力を加えてもよい。例えば、ケース35の外周面に歯を形成し、当該歯に対し、抵抗力発生装置8の歯82をかみ合わせてもよい。
【0144】
本開示にて、「略平行」のように「略」を伴った表現が、用いられる場合がある。例えば、「略平行」とは、実質的に「平行」であることを意味し、厳密に「平行」な状態だけでなく、数度程度の誤差を含む意味である。他の「略」を伴った表現についても同様である。
【0145】
また、本開示において「前端部」及び「前端」などのように、「…端部」と「…端」とで区別した表現が用いられている。例えば、「前端部」とは、「前端」を含む一定の範囲を持つ部分を意味する。他の「…端部」を伴った表現についても同様である。
【0146】
(3)態様
以上説明したように、第1の態様に係る三輪自転車(1)は、フレーム(2)と、フレーム(2)を移動面(100)上で支える一つの前輪(92)及び二つの後輪(91)と、を備える。フレーム(2)は、前輪(92)が前ホーク(26)を介して取り付けられた前部フレーム(21)と、後輪(91)が取り付けられた後部フレーム(3)と、前部フレーム(21)と後部フレーム(3)とをつなぐ連結フレーム(32)と、を有する。連結フレーム(32)は、後部フレーム(3)に対して、前部フレーム(21)を、平面視で前後方向に沿った回転軸(331)で回転可能とするシャフト(33)を含む。三輪自転車(1)は、回転軸(331)回りの回転力が生じると、回転力に対して抵抗力を加える抵抗力発生装置(8)を更に備える。
【0147】
この態様によれば、三輪自転車(1)の低速時において、前部フレーム(21)が回転軸(331)回りに回転しようとしたときに、抵抗力を加えることができ、前部フレーム(21)の自立が不安定になるのを抑えることができる。したがって、本態様に係る三輪自転車(1)では、安定した走行を実現しやすい。
【0148】
第2の態様に係る三輪自転車(1)では、第1の態様において、後部フレーム(3)に対する前部フレーム(21)の回転に応じて、回転軸(331)で回転する回転体(310)を更に備える。抵抗力発生装置(8)は、回転体(310)の回転力に対して抵抗力を加えるように構成される。
【0149】
この態様によれば、回転体(310)の回転力に対して抵抗力を加えるように構成するだけで、前部フレーム(21)が回転軸(331)回りに回転しようとしたときに、抵抗力を加えることができる。
【0150】
第3の態様に係る三輪自転車(1)では、第2の態様において、回転体(310)は歯車(3104)を含む。抵抗力発生装置(8)は歯車(3104)にかみ合う歯(82)を有するロータリダンパ(80)である。
【0151】
この態様によれば、簡略化した構成で、前部フレーム(21)の回転力に対して抵抗力を加えることができる。
【0152】
第4の態様に係る三輪自転車(1)では、第2の態様において、抵抗力発生装置(8)は、回転体(310)の回転力を受ける直動式ダンパ(84)である。
【0153】
この態様によれば、直動式ダンパ(84)を用いて、前部フレーム(21)の回転力に対して抵抗力を加えることができる。
【0154】
第5の態様に係る三輪自転車(1)では、第3又は第4の態様において、抵抗力発生装置(8)は、オイルダンパである。
【0155】
この態様によれば、オイルダンパの減衰特性を利用して、前部フレーム(21)の回転力に対して抵抗力を加えることができる。
【0156】
第6の態様に係る三輪自転車(1)では、第1~第5のいずれか一つの態様において、走行速度を検出するための速度センサ(52)と、速度センサ(52)の検出結果を用いて、抵抗力発生装置(8)から生じる抵抗力を制御する制御部(51)と、を更に備える。
【0157】
この態様によれば、三輪自転車(1)の速度に応じて、前部フレーム(21)の回転力に対して加わる抵抗力を変化させることができ、三輪自転車(1)の乗り心地を向上することができる。
【0158】
第7の態様に係る三輪自転車(1)では、第6の態様において、制御部(51)は、検出結果が所定速度以下であるときに、前記抵抗力を所定の抵抗力とし、検出結果が所定速度を超えたときに、抵抗力を所定の抵抗力よりも小さい抵抗力に変える。
【0159】
この態様によれば、低速時には、前部フレーム(21)が傾きにくくなって、ユーザの重心移動が抑制され、通常速度以上では、前部フレーム(21)が傾きやすくなって、ユーザの重心移動が行いやすい。この結果、三輪自転車(1)の乗り心地を向上することができる。
【0160】
第8の態様に係る三輪自転車(1)では、第1~第7のいずれか一つの態様において、一つの前輪(92)及び二つの後輪(91)の少なくとも一つに対し、駆動補助出力を加えるモータユニット(7)を更に備える。
【0161】
この態様によれば、電動自転車において、安定した走行を実現することができる。
【0162】
第2~第7の態様に係る構成については、三輪自転車(1)に必須の構成ではなく、適宜省略可能である。
【符号の説明】
【0163】
1 三輪自転車
2 フレーム
21 前部フレーム
26 前ホーク
3 後部フレーム
310 回転体
3104 歯車
32 連結フレーム
33 シャフト
331 回転軸
51 制御部
52 速度センサ
7 モータユニット
8 抵抗力発生装置
80 ロータリダンパ
82 歯
84 直動式ダンパ
91 後輪
92 前輪
100 移動面