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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-28
(45)【発行日】2023-10-06
(54)【発明の名称】水素供給装置
(51)【国際特許分類】
   A61H 33/14 20060101AFI20230929BHJP
   C01B 3/00 20060101ALI20230929BHJP
   C01B 3/04 20060101ALI20230929BHJP
   B01F 23/10 20220101ALI20230929BHJP
   B01F 35/83 20220101ALI20230929BHJP
   B01D 53/22 20060101ALI20230929BHJP
   C25B 9/00 20210101ALI20230929BHJP
【FI】
A61H33/14 B
C01B3/00 Z
C01B3/04 R
B01F23/10
B01F35/83
B01D53/22
C25B9/00 A
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2018057765
(22)【出願日】2018-03-26
(65)【公開番号】P2019058640
(43)【公開日】2019-04-18
【審査請求日】2021-02-26
(31)【優先権主張番号】P 2017186904
(32)【優先日】2017-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107641
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 耕一
(72)【発明者】
【氏名】高橋 康文
(72)【発明者】
【氏名】羽藤 一仁
(72)【発明者】
【氏名】鵜飼 邦弘
【審査官】井出 和水
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-032273(JP,A)
【文献】特開2000-140043(JP,A)
【文献】国際公開第2008/013163(WO,A1)
【文献】特開2012-102924(JP,A)
【文献】特開2017-046929(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61H 33/14
A61G 10/00 - A61G 10/04
C01B 3/00
C01B 3/04
B01F 23/10
B01F 35/71
B01F 35/83
B01D 53/22
C25B 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
室外に接した入口及び室内に接した出口を有する風路と、
前記風路に配置され、前記入口から前記出口への空気の流れを生じさせるファンと、
前記風路に水素ガスを供給するための第一供給口をなす端部を有する第一配管と、
前記第一配管に取り付けられ、前記水素ガスの流量を調整する流量調整装置と、
を備える水素供給装置であって、
前記風路に接する第二供給口を有するとともに前記第一配管から前記水素ガスが供給され、前記水素ガスを希釈ガスによって希釈する混合器をさらに備え、
前記混合器において希釈された前記水素ガスが前記第二供給口を通って前記風路に供給される、
水素供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、水素供給装置及び水素供給システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、水素を含ませた水の飲用に加え、水素ガスを体内に吸入する医療技術に注目が集まっている。例えば、非特許文献1の先進医療Bの項目には、「水素ガス吸入療法」の概要が記載されている。
【0003】
また、図13に示す通り、特許文献1には、水素供給システム300が記載されている。水素供給システム300は、水素供給手段302から水素供給管304を通じて水素を室内303に供給する。加えて、水素供給システム300は、水素攪拌手段305を有し、室内303に水素が偏在しない機能を有する。さらに、水素供給システム300は、センサ306、制御器307、開閉栓308、及び排出口309を有する。
【0004】
センサ306は、室内303の上方又はその周辺に取り付けられている。センサ306は、室内303の水素濃度を測定する。制御器307は、回路等によってセンサ306と接続され、センサ306と連動する。開閉栓308は、水素供給管304の内部に設けられており、制御器307を介してセンサ306と連動する。センサ306で測定された水素濃度がある一定の値を超えると、制御器307によって開閉栓308が作動し、水素供給手段302から水素供給管304を通じて室内303に供給される水素量が制御される。センサ306によって測定された室内303の水素量がある一定の値を超えると、制御器307によって排出口309が作動し、室内303の水素を含む空気が室外310へ排出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開2008/013163号
【非特許文献】
【0006】
【文献】“先進医療の各技術の概要”、[online]、平成29年9月1日、厚生労働省、[平成29年9月15日検索]、インターネット<URL: http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/isei/sensiniryo/kikan03.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
非特許文献1及び特許文献1に記載の技術において、水素ガスを室外の空気と混合して室内に供給することは想定されていない。そこで、本開示は、水素ガスを室外の空気と混合して室内に供給でき、高い安全性を確保するために有利な技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示は、
室外に接した入口及び室内に接した出口を有する風路と、
前記風路に配置され、前記入口から前記出口への空気の流れを生じさせるファンと、
前記風路に水素ガスを供給するための第一供給口をなす端部を有する第一配管と、
前記第一配管に取り付けられ、前記水素ガスの流量を調整する流量調整装置と、を備えた、
水素供給装置。
【発明の効果】
【0009】
上記の水素供給装置は、水素ガスを室外の空気と混合して室内に供給でき、高い安全性を確保するために有利である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本開示の水素供給装置の一例を模式的に示す図である。
図2図2は、図1の水素供給装置の動作の一例を示すフローチャートである。
図3図3は、図2とともに、図1の水素供給装置の動作の一例を示すフローチャートである。
図4図4は、図1の水素供給装置の動作の別の一例を示すフローチャートである。
図5図5は、図2とともに、図1の水素供給装置の動作の一例を示すフローチャートである。
図6図6は、図1の水素供給装置の設置状態の一例を示す図である。
図7図7は、本開示の水素供給装置の別の一例を模式的に示す図である。
図8図8は、本開示の水素供給装置のさらに別の一例を模式的に示す図である。
図9図9は、図8の水素供給装置の動作の一例を示すフローチャートである。
図10図10は、本開示の水素供給装置のさらに別の一例を模式的に示す図である。
図11図11は、本開示の水素供給装置のさらに別の一例及び本開示の水素供給システムの一例を模式的に示す図である。
図12図12は、図11に示す水素供給装置の動作の一例を示すフローチャートである。
図13図13は、従来の水素供給システムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<本発明者の検討に基づく知見>
水素を含ませた水の飲用によって体内に水素を取り込む方法は、水素ガスが水に微量しか溶けないので、微量の水素しか摂取できないという問題があった。そこで、水素の摂取量を高めるために、特許文献1に記載の水素供給システム300のように、水素ガスを室内に供給することが考えられる。一方で、水素ガスを室外の空気と混合して室内に日常的に供給することは試みられたことがない。
【0012】
空気中における水素ガスの濃度は爆発下限界未満に保たれることが必要である。特許文献1に記載の水素供給システム300において、センサ306によって室内303の上方又はその周辺において水素濃度が測定されているものの、水素供給管304において水素ガスと他の気体とを混合することは示唆されておらず、水素供給管304を通って高濃度の水素ガスが供給される可能性がある。この場合、室内303の水素供給管304の付近において、水素ガスの濃度が爆発下限界を超えて爆発範囲に収まる空間が生じる可能性がある。このため、特許文献1に記載の技術は、安全性を高める余地を有する。
【0013】
上記の事情に鑑み、本発明者は、水素ガスを室外の空気と混合して室内に供給でき、高い安全性を確保するために有利な技術について日夜検討を重ね、本開示の水素供給装置を案出した。
【0014】
本開示の第1態様は、
室外に接した入口及び室内に接した出口を有する風路と、
前記風路に配置され、前記入口から前記出口への空気の流れを生じさせるファンと、
前記風路に水素ガスを供給するための第一供給口をなす端部を有する第一配管と、
前記第一配管に取り付けられ、前記水素ガスの流量を調整する流量調整装置と、を備えた、
水素供給装置を提供する。
【0015】
第1態様によれば、第一供給口を通って風路に水素ガスが供給されるので、室外から風路に取り込まれた空気に水素ガスを混合させて室内に供給できる。加えて、流量調整装置によって風路に供給される水素ガスの流量を調整できるので、風路における水素ガスの濃度を空気中における水素ガスの爆発下限界を踏まえた所望の範囲に調整できる。このため、第1態様に係る水素供給装置は高い安全性を確保するために有利である。
【0016】
本開示の第2態様は、第1態様に加えて、前記風路における前記空気の流れ方向において前記端部よりも下流に配置され、前記風路における水素ガスの濃度を検出する水素ガスセンサをさらに備えた、水素供給装置を提供する。第2態様によれば、水素ガスセンサによって風路における水素ガスの濃度を検出でき、その検出結果は風路における水素ガスの濃度を所望の範囲に調整するために利用できる。このため、第2態様に係る水素供給装置は高い安全性を確保するためにより有利である。
【0017】
本開示の第3態様は、第1態様又は第2態様に加えて、制御器をさらに備え、前記制御器は、前記流量調整装置を制御して前記出口における水素ガスの濃度を特定の濃度より低く保つ、水素供給装置を提供する。第3態様によれば、制御器による流量調整装置の制御により、出口における水素ガスの濃度が空気中における水素ガスの爆発下限界を踏まえた特定の濃度よりも低く保たれる。これにより、水素供給装置がより確実に高い安全性を有する。
【0018】
本開示の第4態様は、第3態様に加えて、前記制御器は、前記水素ガスセンサによって検出された水素ガスの濃度が前記特定の濃度以上である場合に、前記流量調整装置を制御して前記風路への水素ガスの供給を停止させ、若しくは、前記風路に供給される水素ガスの流量を低減させ、又は、前記ファンを制御して前記風路における前記空気の流量を増加させる、水素供給装置を提供する。第4態様によれば、水素ガスセンサによって検出された水素ガスの濃度が特定の濃度以上である場合に、流量調整装置又はファンが上記のように制御される。このため、特定の濃度以上の水素ガス濃度を有する混合気体が室内に供給し続けられることがない。これにより、水素供給装置がより確実に高い安全性を有する。
【0019】
本開示の第5態様は、第3態様又は第4態様に加えて、前記制御器は、前記水素ガスセンサによって検出された水素ガスの濃度が前記特定の濃度以上である場合に、前記ファンを制御して前記風路における前記空気の流量を増加させた後に前記流量調整装置を制御して前記風路への水素ガスの供給を停止させる又は前記風路に供給される水素ガスの流量を低減させる、水素供給装置を提供する。第5態様によれば、水素ガスセンサによって検出された水素ガスの濃度が特定の濃度以上である場合に、流量調整装置及びファンが上記のように制御される。このため、特定の濃度以上の水素ガス濃度を有する混合気体が室内に供給し続けられることがない。これにより、水素供給装置がより確実に高い安全性を有する。
【0020】
本開示の第6態様は、第3態様~第5態様のいずれか1つの態様に加えて、前記風路において前記ファンと前記入口との間に配置された温度センサをさらに備え、前記制御器は、前記温度センサによって検出された温度が特定の温度以上である場合に、前記流量調整装置及び前記ファンを制御して前記風路への水素ガスの供給を停止させるとともに前記ファンを停止させる、水素供給装置を提供する。第6態様によれば、温度センサによって検出された温度が特定の温度以上である場合に、水素ガスの供給が停止するとともにファンも停止する。これにより、高温の空気と水素ガスとの混合気体が室内に供給されることを防止できる。このため、水素供給装置がより確実に高い安全性を有する。
【0021】
本開示の第7態様は、第1態様~第6態様のいずれか1つの態様に加えて、前記ファンは、前記風路において、前記端部と前記出口との間に配置されている、水素供給装置を提供する。第7態様によれば、第一供給口を通って風路に供給された水素ガスが空気とともにファンを通過して流れるので、水素ガスと空気とが良好に撹拌され、出口から吹き出される空気の水素ガス濃度が空間的に均一になりやすい。
【0022】
本開示の第8態様は、第7態様において、前記水素ガスセンサは、前記空気の流れ方向において前記ファンよりも下流に配置されている、水素供給装置を提供する。第8態様によれば、水素ガスセンサは、ファンによって良好に撹拌された水素ガスと空気との混合気体に対して水素ガスの濃度の検出を行うので、水素ガスの濃度を適切に検出できる。
【0023】
本開示の第9態様は、第1態様~第6態様のいずれか1つの態様に加えて、前記端部は、前記風路において、前記ファンと前記出口との間に配置されている、水素供給装置を提供する。第9態様によれば、第一供給口を通って風路に供給された水素ガスがファンを通過しないので、ファンで発生しうる静電気に水素ガスが曝されることを防止できる。加えて、ファンによって加速された空気の流れに向かって水素ガスが風路に供給されるので、水素ガスと空気とが良好に撹拌され、出口から吹き出される空気の水素ガス濃度が空間的に均一になりやすい。
【0024】
本開示の第10態様は、第1態様~第9態様のいずれか1つの態様に加えて、前記風路は、前記空気の流れを下方から上方に導くための縦長の風路を有し、前記端部は、前記縦長の風路に配置されている、水素供給装置を提供する。水素ガスは軽いので上方に流れやすい。第10態様によれば、第一供給口を通って縦長の風路に水素ガスが供給されるので、空気の上昇する流れによって水素ガスが加速され、空気と水素ガスとが良好に撹拌される。このため、出口から吹き出される空気の水素ガス濃度が空間的に均一になりやすい。
【0025】
本開示の第11態様は、第1態様~第10態様のいずれか1つの態様に加えて、前記第一配管に水素ガスを供給する水素ガス供給源をさらに備えた、水素供給装置を提供する。第11態様によれば、水素ガス供給源から第一供給口を通過させて風路に水素ガスを供給できる。
【0026】
本開示の第12態様は、第1態様~第11態様のいずれか1つの態様に加えて、前記水素ガス供給源は、水を電気分解して前記水素ガスを発生させる電解装置を備えた、水素供給装置を提供する。第12態様によれば、水素ガスを供給するインフラストラクチャーが整備されていない環境でも、水の電気分解によって水素ガスを発生させ、その水素ガスを室外の空気と混合させて室内に供給できる。また、水素ガス供給源として高圧の水素が貯蔵された耐圧容器を用いる場合と比べて、水素ガス供給源を交換する作業が発生しない。加えて、水素供給の需要に応じて水を電気分解して水素を発生させればよいので、水素ガスを長期間貯留する必要がない。
【0027】
本開示の第13態様は、第1態様~第12態様のいずれか1つの態様に加えて、前記風路に接する第二供給口を有するとともに前記第一配管から前記水素ガスが供給され、前記水素ガスを希釈ガスによって希釈する混合器をさらに備え、前記混合器において希釈された前記水素ガスが前記第二供給口を通って前記風路に供給される、水素供給装置を提供する。第13態様によれば、混合器において希釈された水素ガスが風路に供給されて空気と接触する。これにより、水素ガスを風路により安全に供給できる。このため、水素供給装置がより高い安全性を有する。
【0028】
本開示の第14態様は、第13態様に加えて、前記混合器は、前記流量調整装置を通過した水素ガスを流すための流路と、前記流路に接し前記希釈ガスを前記流路に供給するための第三供給口とを有する、水素供給装置を提供する。第14態様によれば、流量調整装置を通過した水素ガスに対して希釈ガスを供給して水素ガスを希釈できる。
【0029】
本開示の第15態様は、第13態様又は第14態様に加えて、前記希釈ガスは、水素ガスに対して不活性なガスである、水素供給装置を提供する。第15態様によれば、混合器において水素ガスを安全に希釈できる。
【0030】
本開示の第16態様は、第15態様に加えて、前記希釈ガスは、窒素ガスである、水素供給装置を提供する。窒素ガスは入手しやすいので、第16態様によれば、水素供給装置のランニングコストを低減できる。
【0031】
本開示の第17態様は、第16態様に加えて、前記混合器に接続され、空気から前記窒素ガスを分離するガス分離器をさらに備えた、水素供給装置を提供する。第17態様によれば、ガス分離器において、水素ガスを希釈するための窒素ガスを空気から分離できるので、窒素ガスを供給するインフラストラクチャーが整備されていない環境でも窒素ガスを混合器に供給でき、水素供給装置のランニングコストをより低減できる。
【0032】
本開示の第18態様は、第1態様~第17態様のいずれか1つの態様に加えて、前記風路における前記入口と前記ファン及び前記端部との間の第一位置、前記風路における前記出口と前記ファン及び前記端部との間の第二位置、又は前記第一位置及び前記第二位置の両方に配置され、不燃性材料でできており、ガスを透過させるとともに異物を捕捉するフィルターをさらに備えた、水素供給装置を提供する。第18態様によれば、フィルターによって異物が捕捉されるので、異物が室内に供給されることを防止できる。特に、第一位置にフィルターが配置されていれば、異物とファンとの接触により静電気が発生することを防止できる。また、仮に、風路において水素ガスの燃焼により火炎が生じても、火炎の伝播を抑制できる。加えて、仮に、風路の外部に火炎が発生していてもその火炎が風路に及ぶことを防止できる。このため、水素供給装置はより高い安全性を有する。
【0033】
本開示の第19態様は、第1態様~第18態様のいずれか1つの態様に加えて、前記風路における前記入口と前記ファン及び前記端部との間の第三位置、前記風路における前記出口と前記ファン及び前記端部との間の第四位置、又は前記第三位置及び前記第四位置の両方に配置され、前記風路を閉じるシャッターをさらに備え、前記制御器は、前記水素ガスセンサによって検出された水素ガスの濃度が前記特定の濃度以上である場合に、前記シャッターを制御して前記風路を閉じる、水素供給装置を提供する。第19態様によれば、水素ガスセンサによって検出された水素ガスの濃度が特定の濃度以上である場合に、シャッターによって風路が閉じられるので、特定の濃度以上の水素ガス濃度を有する混合気体が室内に供給し続けられることがない。このため、水素供給装置はより高い安全性を有する。
【0034】
本開示の第20態様は、第1態様~第19態様のいずれか1つの態様に加えて、前記風路は、複数の前記出口を有する下流部分を含む、水素供給装置を提供する。第20態様によれば、室外から風路に取り込まれた空気に水素ガスを混合させた混合気体を複数の出口から供給できる。
【0035】
本開示の第21態様は、第2態様に加えて、前記風路は、複数の前記出口を有する下流部分を含み、前記水素ガスセンサは、前記空気の流れ方向において前記複数の下流部分よりも上流に配置されている、水素供給装置を提供する。第21態様によれば、室外から風路に取り込まれた空気に水素ガスを混合させた混合気体を複数の出口から供給できる。加えて、複数の出口から供給される混合気体における水素ガスの濃度を効率的に検出できる。
【0036】
本開示の第22態様は、第1態様~第21態様のいずれか1つの態様に加えて、前記制御器は、前記室内における人の存否を示す第一情報を取得又は記憶し、前記第一情報が前記室内における人の存在を示すときに前記流量調整装置を制御して前記風路に水素ガスを供給する、水素供給装置を提供する。第22態様によれば、室内に人が存在するときに水素ガスを供給でき、水素ガスを効率的に利用できる。
【0037】
本開示の第23態様は、第22態様に加えて、前記制御器は、前記室内における人の位置を示す第二情報をさらに取得し、かつ、前記第二情報に基づいて前記流量調整装置を制御して前記水素ガスの流量を調整する、水素供給装置を提供する。第23態様によれば、室内における人に位置に応じて水素ガスを効率的に供給できる。
【0038】
本開示の第24態様は、前記制御器は、前記室内における人の生体情報である第三情報を取得し、かつ、前記第三情報に基づいて前記流量調整装置を制御して前記水素ガスの流量を調整する、水素供給装置を提供する。第24態様によれば、室内における人の生体情報に応じて水素ガスを効率的に供給できる。
【0039】
本開示の第25態様は、
第1態様~第21態様のいずれか1つの態様の水素供給装置と、
前記室内における人の存否及び前記室内における人の生体情報の少なくとも1つを検出する検出器と、を備え、
前記制御器は、前記検出器の検出結果を示す情報を前記第一情報として取得する、
水素供給システムを提供する。
【0040】
第25態様によれば、第1態様~第21態様のいずれか1つの態様と同じ効果が得られる。
【0041】
本開示の第26態様は、第25態様に加えて、前記室内における人の位置を示す情報をさらに検出する、水素供給システムを提供する。
【0042】
以下、本開示の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明は本発明の一例に関するものであり、本発明はこれらに限定されるものではない。添付の図面における矢印は空気及び水素ガスなどのガスの流れを概念的に示す。本明細書において、ガスの濃度につき「%」とは、体積基準の百分率を意味し、典型的には1気圧及び20℃における体積比率を意味する。
【0043】
図1に示す通り、水素供給装置1aは、風路4と、ファン6と、第一配管30と、流量調整装置8とを備えている。風路4は、室外に接した入口3及び室内に接した出口2を有する。ファン6は、風路4に配置され、入口3から出口2への空気の流れを生じさせる。第一配管30は、端部31を有する。端部31は、風路4に水素ガスを供給するための第一供給口32をなす。流量調整装置8は、第一配管30に取り付けられており、風路4に供給される水素ガスの流量を調整する。
【0044】
水素供給装置1aにおいて、第一配管30の端部31は、例えば、風路4に配置されている。一方、端部31は風路4の外側に配置されていてもよい。この場合、例えば第一配管30の内部と風路4との間にフィルターが介在した状態で、第一配管30の内部と風路4とがつながっていてもよい。
【0045】
水素供給装置1aにおいて、ファン6が作動すると、室外の空気が入口3から風路4に取り込まれ、入口3から出口2に向かって空気の流れが生じる。第一供給口32を通って風路4に供給された水素ガスは風路4を流れる空気と混合され、室外の空気とともに水素ガスが出口2を通って室内に供給される。風路4における水素ガスの濃度は、流量調整装置8によって、空気中における水素ガスの爆発下限界を踏まえた所望の範囲に調整される。このため、水素供給装置1aは高い安全性を確保するために有利である。
【0046】
図1に示す通り、水素供給装置1aは、例えば、水素ガスセンサ7をさらに備えている。水素ガスセンサ7は、風路4における空気の流れ方向において端部31よりも下流に配置され、風路4における水素ガスの濃度を検出する。水素ガスセンサ7によって風路4における水素ガスの濃度を検出でき、その検出結果は風路4における水素ガスの濃度を所望の範囲に調整するために利用できる。このため、水素供給装置1aは高い安全性を確保するために有利である。なお、風路4における空気の流れ方向において端部31よりも下流とは、端部31と風路4における出口2との間の位置又は空気の流れ方向において出口2よりも下流で、風路4における水素ガス濃度を検出可能な位置を意味する。
【0047】
ファン6は、例えば、風路4の軸線方向において入口3よりも出口2に近い位置に配置されている。ファン6が作動すると、空気の流れ方向においてファン6の上流が負圧になる。このため、ファン6が、風路4の軸線方向において入口3よりも出口2に近い位置に配置されていれば、風路4の広い範囲において風路4を定める構成部品の隙間から空気が流出して水素供給装置1a又は他の空間に溜まることを防止できる。これにより、水素供給装置1aが高い安全性を有する。
【0048】
図1に示す通り、水素供給装置1aは、例えば、水素ガス供給源9をさらに備えている。水素ガス供給源9から第一配管30に水素ガスが供給される。図1において、水素ガス供給源9が流量調整装置8を介して第一配管30と接続されているが、これに限定されない。例えば、水素ガス供給源9と第一配管30との間にフィルターなどの部材が介在して、水素ガス供給源9と第一配管30とが接続されていてもよい。また、第一配管30が水素ガス供給源9と直接接続されていてもよい。水素ガス供給源9は、特に限定されないが、例えば、高圧の水素が貯蔵された耐圧容器である。水素ガス供給源9は、水を電気分解して水素ガスを発生させる電解装置を備えたものであってもよい。水素ガス供給源9は、燃料電池発電設備に水素を供給するための水素ガス供給源であってもよい。なお、水素ガス供給源9において、水素に対して不活性な成分が水素とともに含まれていてもよい。
【0049】
第一配管30が水素ガスを供給するためのガス栓に接続されて風路4に水素ガスが供給されてもよい。この場合、水素供給装置1aは必ずしも水素ガス供給源9を備えていなくてもよい。
【0050】
流量調整装置8は、典型的には、水素ガスの質量流量を調整する。流量調整装置8は、例えば、マスフローコントローラによって構成されている。マスフローコントローラは、センサ、制御回路、及び弁を備える。マスフローコントローラにおいて、センサによって検出された水素ガスの質量流量を示す信号が制御回路に入力され、その入力に基づいて制御回路は制御信号を生成して弁を制御する。流量調整装置8がマスフローコントローラによって構成されていれば、弁のみによって水素ガスの流量を制御する場合と比べて、水素ガスの質量流量を正確に調整できる。流量調整装置8は、例えば、流量センサと流量調整弁との組み合わせであってもよいし、流量調整弁のみであってもよい。このような構成の流量調整装置8は安価であり、水素供給装置1aの製造コストの低減につながる。
【0051】
水素ガスセンサ7は、例えば、接触燃焼式ガスセンサ、半導体式ガスセンサ、又は熱電式ガスセンサ等の公知の水素ガスセンサである。水素ガスセンサ7は、水素ガス濃度の特定の範囲(例えば、1~5%以下)で高い感度を有することが望ましい。水素ガスセンサ7は、典型的には熱電式ガスセンサである。水素ガスセンサ7として熱電式ガスセンサを用いれば、空気中の水素ガスの濃度を、約0.5ppm(parts per million)~約5%の水素ガス濃度の範囲で精度良く検出できる。
【0052】
端部31は、例えば、風路4の軸線上又は風路4の軸線の近くである風路4の中央に配置されている。風路4の中央では空気の流速が大きいので、端部31が風路4の中央に配置されていれば、大きな流速の空気の流れに向かって水素ガスが供給され、水素ガスと空気とが良好に撹拌される。第一供給口32は、例えば、上向きに開口している。これにより、風路4において水素ガスが拡散しやすく、水素ガスと空気とが良好に撹拌される。
【0053】
図1に示す通り、水素供給装置1aは、制御器10をさらに備えている。制御器10は、流量調整装置8を制御して出口2における水素ガスの濃度を特定の濃度(例えば4%)より低く保つ。特定の濃度は、例えば、空気中の水素ガスの爆発下限界以下に定められている。流量調整装置8及び制御器10は、検出信号及び制御信号等の信号をやり取りできるように有線又は無線によってお互いに接続されている。流量調整装置8は、例えば、水素ガスの質量流量を検出する機能を有し、流量調整装置8によって検出された水素ガスの質量流量を示す信号が制御器10に入力される。また、制御器10は、流量調整装置8に制御信号を送り、流量調整装置8はその制御信号に従って動作する。
【0054】
制御器10は、例えば、インターフェース、CPU等の演算装置、RAM又はROM等の記憶装置を備えたコンピュータである。制御器10には、水素供給装置1aの運転のために必要なプログラムが格納されている。
【0055】
ファン6は、制御器10から送信される制御信号を受信できるように有線又は無線によって制御器10に接続されている。図1に示す通り、水素供給装置1aは、例えば、風量センサ13をさらに備えている。風量センサ13は、例えば、風路4においてファン6と入口3との間に配置されている。風量センサ13は、例えば、熱式の風量センサである。制御器10は、例えば、風量センサ13による検出結果を示す信号を風量センサ13から受信できるように有線又は無線によって風量センサ13に接続されている。
【0056】
制御器10は、例えば、水素ガスセンサ7によって検出された水素ガスの濃度が特定の濃度以上である場合に、流量調整装置8を制御して風路4への水素ガスの供給を停止させ、又は、風路4に供給される水素ガスの流量を低減させる。もしくは、制御器10は、ファン6を制御して風路4における空気の流量を増加させる。これにより、特定の濃度以上の水素ガス濃度を有する混合気体が室内に供給し続けられることがない。このため、水素供給装置1aがより確実に高い安全性を有する。
【0057】
制御器10は、例えば、水素ガスセンサ7によって検出された水素ガスの濃度が特定の濃度以上である場合に、ファン6を制御して風路4における空気の流量を増加させる。その後、制御器10は、例えば、流量調整装置8を制御して風路4への水素ガスの供給を停止させる又は風路4に供給される水素ガスの流量を低減させる。この場合、特定の濃度以上の水素ガス濃度を有する混合気体が室内に供給し続けられることがなく、水素供給装置1aがより確実に高い安全性を有する。
【0058】
制御器10は、例えば、流量調整装置8を制御して風路4への水素ガスの供給を停止させた後にファン6を制御してファン6を停止させる。換言すると、制御器10は、風路4に水素ガスの供給がなされている期間はファン6を作動させる。これにより、空気の流れが生じていない風路4に水素ガスが供給されることを防止できる。
【0059】
制御器10は、例えば、温度センサ13aをさらに備えている。温度センサ13aは、風路4においてファン6と入口3との間に配置されている。制御器10は、例えば、温度センサ13aによって検出された温度が特定の温度(例えば40℃)以上である場合に、流量調整装置8及びファン6を制御して風路4への水素ガスの供給を停止させるとともにファン6を停止させる。この場合、高温の空気と水素ガスとの混合気体が室内に供給されることを防止できるので、水素供給装置1aはより確実に高い安全性を有する。制御器10は、例えば、温度センサ13aによる検出結果を示す信号を受信できるように有線又は無線によって温度センサ13aに接続されている。
【0060】
温度センサ13aは、例えば風量センサ13に組み込まれている。この場合、風量センサ13における検出結果の温度補償のための温度センサ13aを流量調整装置8及びファン6の制御ためにも利用できる。なお、温度センサ13aは、風量センサ13とは独立して配置されていてもよい。
【0061】
図1に示す通り、ファン6は、例えば、風路4において、端部31と出口2との間に配置されている。ファン6は、例えば、空気の流れ方向において端部31よりも下流に配置されている。第一供給口32を通って風路4に供給された水素ガスが空気とともにファン6を通過して流れるので、水素ガスと空気とが良好に撹拌され、出口2から吹き出される空気の水素ガス濃度が空間的に均一になりやすい。
【0062】
ファン6が、風路4において端部31と出口2との間に配置されている場合、水素ガスセンサ7は、例えば、空気の流れ方向においてファン6よりも下流に配置されている。これにより、水素ガスセンサ7は、ファン6によって良好に撹拌された水素ガスと空気との混合気体に対して水素ガスの濃度の検出を行うので、水素ガスの濃度を適切に検出できる。なお、空気の流れ方向においてファン6よりも下流とは、風路4における出口2とファン6との間の位置又は空気の流れ方向において出口2よりも下流で、風路4における水素ガス濃度を検出可能な位置を意味する。
【0063】
図1に示す通り、風路4は、例えば、空気の流れを下方から上方に導くための縦長の風路4aを有する。端部31は、例えば、縦長の風路4aに配置されている。水素ガスは軽いので上方に流れやすい。この場合、第一供給口32を通って縦長の風路4aに水素ガスが供給されるので、空気の上昇する流れによって水素ガスが加速され、空気と水素ガスとが良好に撹拌される。このため、出口2から吹き出される空気の水素ガス濃度が空間的に均一になりやすい。
【0064】
水素ガスセンサ7は、例えば、縦長の風路4aの上端又はその付近に配置されている。この場合、空気の上昇する流れによって、空気と水素ガスとが良好に撹拌された混合気体に対して水素ガスの濃度の検出を行うので、水素ガスの濃度を適切に検出できる。
【0065】
図1に示す通り、水素供給装置1aは、例えば混合器20をさらに備えている。混合器20は、風路4に接する第二供給口5を有する。加えて、第一配管30から水素ガスが混合器20に供給される。混合器20は、水素ガスを希釈ガスによって希釈する。混合器20は、典型的には、流量調整装置8と第二供給口5との間に配置される。この場合、混合器20において希釈された水素ガスが第二供給口5を通って風路4に供給される。このため、混合器20において希釈された水素ガスが風路4に供給されて空気と接触する。これにより、水素は必ず希釈された後に酸素と接触するので、水素が爆発又は燃焼することなく、水素ガスを風路4により安全に供給できる。その結果、水素供給装置1aがより高い安全性を有する。
【0066】
混合器20は、例えば、流路21と、第三供給口22とを有する。流路21は、流量調整装置8を通過した水素ガスを流すためのものである。流路21は、例えばシリンダの内部に存在する。第三供給口22は、流路21に接し希釈ガスを流路21に供給するためのものである。この場合、流量調整装置8を通過した水素ガスに対して希釈ガスを供給して水素ガスを希釈できる。
【0067】
混合器20において水素ガスを希釈する希釈ガスは、典型的には、水素ガスに対して不活性なガスである。これにより、水素ガスを安全に希釈できる。
【0068】
希釈ガスは、例えば窒素ガスである。この場合、窒素ガスは入手しやすいので、水素供給装置1aのランニングコストを低減できる。
【0069】
水素供給装置1aは、例えば、第二流量調整装置22aをさらに備えている。第二流量調整装置22aは、混合器20に供給される希釈ガスの流量を調整する。第二流量調整装置22aは、典型的には希釈ガスの質量流量を調整し、例えばマスフローコントローラによって構成されている。第二流量調整装置22a及び制御器10は、検出信号及び制御信号等の信号をやり取りできるように有線又は無線によってお互いに接続されている。第二流量調整装置22aは、例えば、希釈ガスの質量流量を検出する機能を有し、第二流量調整装置22aによって検出された希釈ガスの質量流量を示す信号が制御器10に入力される。また、制御器10は、第二流量調整装置22aに制御信号を送り、第二流量調整装置22aはその制御信号に従って動作する。
【0070】
水素供給装置1aは、例えば、第四供給口12及び第三流量調整装置12aをさらに備えている。第四供給口12は、風路4に酸素ガスを供給するためのものである。第三流量調整装置12aは、風路4に供給される酸素ガスの流量を調整する。第三流量調整装置12aは、典型的には酸素ガスの質量流量を調整するものであり、例えばマスフローコントローラによって構成されている。第三流量調整装置12a及び制御器10は、検出信号及び制御信号等の信号をやり取りできるように有線又は無線によってお互いに接続されている。第三流量調整装置12aは、例えば、酸素ガスの質量流量を検出する機能を有し、第三流量調整装置12aによって検出された酸素ガスの質量流量を示す信号が制御器10に入力される。また、制御器10は、第三流量調整装置12aに制御信号を送り、第三流量調整装置12aはその制御信号に従って動作する。第四供給口12は、例えば、空気の流れ方向において第二供給口5よりも下流に配置されている。
【0071】
図1に示す通り、水素供給装置1aは、例えば、フィルター2a及びフィルター3aを備えている。フィルター3aは第一位置に配置されている。第一位置は、風路4における入口3とファン6及び端部31との間の位置である。フィルター2aは第二位置に配置されている。第二位置は、風路4における出口2とファン6及び端部31との間の位置である。水素供給装置1aは、第一位置及び第二位置の両方に配置されたフィルターを備えているが、第一位置及び第二位置のいずれか一方に配置されたフィルターを備えていてもよい。フィルター2a及びフィルター3aのそれぞれは、不燃性材料でできており、ガスを透過させるとともに異物を捕捉する。
【0072】
フィルター2a又はフィルター3aによって異物が捕捉されるので、異物が室内に供給されることを防止できる。特に、水素供給装置1aがフィルター3aを備えれば、異物とファン6との接触により静電気が発生することを防止できる。また、仮に、風路4において水素ガスの燃焼により火炎が生じても、火炎の伝播を抑制できる。加えて、仮に、風路4の外部に火炎が発生していてもその火炎が風路4に及ぶことを防止できる。このため、水素供給装置1aはより高い安全性を有する。さらに、水素供給装置1aがフィルター2a又はフィルター3aを備えていれば、風路4における空気の流れが風路4の外部における空気の流れの影響を受けにくいので、風路4において空気の流れが安定する。なお、水素供給装置1aがフィルター2a及びフィルター3aの両方を備える場合、フィルター2a及びフィルター3aは互いに異なる材質でできていてもよい。フィルター3aは、フィルター2aよりも入口3に近い位置に配置されており、フィルター2aに比べて雨又は風等の室外の影響を受けやすい。このため、フィルター3aは、例えば高い強度を有する金属製の網である。一方、フィルター2aは、室内の火災及び異物を考慮して、例えば不燃性の繊維でできた織布である。
【0073】
フィルター2a及びフィルター3aのそれぞれは、例えば、金属製の網又は不燃性の繊維でできた網、織布、若しくは不織布である。フィルター2a及びフィルター3aのそれぞれは、例えば、日本工業規格(JIS) A 1321-1994に定められた難燃1級に適合する。
【0074】
次に、水素供給装置1aの動作の一例を説明する。図2に示す通り、水素供給装置1aの運転開始が指示されると、ステップS101において、制御器10は、室内容積[m3]及び換気回数[回/時間]を取得する。室内容積は、例えば、水素供給装置1aの初期設定において設定される。換気回数は、水素供給装置1aの初期設定において設定されてもよいし、水素供給装置1aの運転開始時における制御器10と通信可能なコントロールパネル(図示省略)へのユーザーの入力に基づいて設定されてもよい。なお、換気回数は水素供給装置1aの運転中に変更されてもよい。この場合、望ましくは、室内における水素ガスの濃度を短期間で上昇させるために水素供給装置1aの運転開始からの所定期間における換気回数がその所定期間経過後の換気回数よりも高く設定される。次に、ステップS102に進み、室内に供給される空気の水素ガスの濃度[%]を設定する。例えば、水素ガスの濃度は、4%未満の特定の値に設定される。次に、ステップS103に進み、制御器10は、室外から風路4に供給される空気の流量である風量の下限値Laを決定する。風量の下限値Laは、例えば、室内容積、換気回数、及び風路4における室外から供給された空気と水素ガスなどの他のガスとの混合比によって決定される。例えば、室内容積が32[m3]であり、換気回数が0.5[回/時間]であり、風路4における室外から供給された空気と水素ガスなどの他のガスとの体積基準の混合比が9:1である場合、風量の下限値Laは、14.4[m3/時間](=32[m3]×0.5[回/時間]×0.9)である。次に、ステップS104に進み、制御器10は、風路4に供給される水素ガスの流量、風路4における窒素ガスの流量、及び風路4における酸素ガスの流量を決定する。風路4に供給される水素ガスの流量は、例えば、室内容積、換気回数、及び水素ガスの濃度の設定値に基づいて決定される。例えば、室内容積及び換気回数が上記の通りであり、水素ガスの濃度の設定値が3%である場合、風路4に供給される水素ガスの流量は、0.48[m3/時間](=32[m3]×0.5[回/時間]×0.03)に決定される。この場合、例えば、出口2から供給される窒素ガスの流量は12.32[m3/時間](=32[m3]×0.5[回/時間]×0.77)に決定され、出口2から供給される酸素ガスの流量は3.20[m3/時間](=32[m3]×0.5[回/時間]×0.20)に決定される。
【0075】
次に、ステップS105に進み、ファン6を作動させる。この場合、制御器10は、風量の下限値Laに基づいてファン6の回転数を決定し、その決定結果に基づいてファン6に制御信号を送信する。制御器10は、例えば室外から風路4に供給される空気の流量が風量の下限値La以上となるようにファン6の回転数を決定する。次に、ステップS106に進み、制御器10は、風量センサ13が検出した風量Faを示す情報を取得する。次に、ステップS107に進み、風量センサ13が検出した風量Faが風量の下限値La以上であるか否か判断する。ステップS107における判断結果が否定的である場合、ステップS106に戻る。このとき、制御器10は、必要に応じてファン6の回転数を増加させた後、ステップS106の処理を実行してもよい。ステップS107における判断結果が肯定的である場合、ステップS108に進み、制御器10は、水素ガスセンサ7が検出した水素ガス濃度Chを示す情報を取得する。次に、ステップS109に進み、水素ガス濃度Chが特定の濃度(例えば1%)未満であるか否かを判断する。何らかの理由で室外から供給された空気に水素ガスが混じっていると、ステップS109における判断結果が否定的な結果になり得る。ステップS109における判断結果が否定的である場合、水素ガスの供給を開始することは適切ではないので、ステップS108に戻り、水素ガス濃度Chが1%未満になるまで、ステップS108及びステップS109の処理を繰り返す。
【0076】
ステップS109における判断結果が肯定的である場合、ステップS110に進み、第三供給口22から窒素ガスの供給が開始される。この場合、制御器10は、風路4における窒素ガスの流量がステップS104において決定した値になるように、第二流量調整装置22aを制御する。具体的に、制御器10は、風路4における窒素ガスの流量をステップS104において決定した値にするための制御信号を第二流量調整装置22aに送り、その制御信号に従って第二流量調整装置22aが動作する。次に、ステップS111に進み、第四供給口12から酸素ガスの供給が開始される。この場合、制御器10は、風路4における酸素ガスの流量がステップS104において決定した値になるように、第三流量調整装置12aを制御する。具体的に、制御器10は、風路4における酸素ガスの流量をステップS104において決定した値にするための制御信号を第三流量調整装置12aに送り、その制御信号に従って第三流量調整装置12aが動作する。次に、ステップS112に進み、第一供給口32から水素ガスの供給が開始される。この場合、制御器10は、風路4に供給される水素ガスの流量がステップS104において決定した値になるように、流量調整装置8を制御する。具体的に、制御器10は、風路4に供給される水素ガスの流量をステップS104において決定した値にするための制御信号を流量調整装置8に送り、その制御信号に従って流量調整装置8が動作する。
【0077】
室外から風路4に供給される空気AOUTと、第二供給口5から供給される窒素ガスによって希釈された水素ガスMHN及び第四供給口12から供給される酸素ガスOSUPとの体積基準の混合比が9:1である場合を考える。この場合、例えば、空気AOUT、希釈された水素ガスMHN及び酸素ガスOSUP、並びに混合気体における酸素ガス、水素ガス、及び窒素ガスの体積割合は表1の通りになる。なお、表1において、酸素ガスの濃度(OSUP)が20%と記載されているが、酸素ガスの濃度を0%としつつ、水素ガス及び窒素ガスの濃度を調整して、混合気体を調製してもよい。
【0078】
【表1】
【0079】
表1の通り、水素供給装置1aを運転できればよいが、実際には様々な要因により、混合気体における水素ガスの濃度が変動する可能性がある。このため、望ましくは、ステップS113以降の処理がさらに実行される。
【0080】
ステップS113において、制御器10は、水素ガスセンサ7が検出した水素ガス濃度Chを示す情報を取得する。次に、ステップS114に進み、制御器10は、水素ガス濃度Chが4%未満であるか否かを判断する。ステップS114における判断結果が肯定的である場合、ステップS115に進み、制御器10は、温度センサ13aが検出した温度Taを取得する。次に、ステップS116に進み、制御器10は、温度Taが40℃未満であるか否かを判断する。ステップS116における判断結果が肯定的である場合、ステップS117に進み、水素供給装置1aの停止指令の有無を判断する。ステップS117において、水素供給装置1aの停止指令がない場合、ステップS118に進み所定期間待機して、ステップS113に戻る。
【0081】
ステップS114における判断結果が否定的である場合、図3に示す、ステップS201に進み、制御器10は流量調整装置8を制御して水素ガスの供給を停止する。次に、ステップS202に進み、制御器10は第三流量調整装置12aを制御して第四供給口12からの酸素ガスの供給を停止する。次に、ステップS203に進み、制御器10は第二流量調整装置22aを制御して第三供給口22からの窒素ガスの供給を停止する。次に、ステップS204に進み、制御器10はファン6を制御してファン6を停止させる。これにより、一連の処理が終了する。
【0082】
ステップS114における判断結果が否定的である場合、図4に示す、ステップS211に進んでもよい。この場合、ステップS211において、制御器10は、ファン6を制御して風路4における空気の流量を増加させる。具体的に、制御器10はファン6の回転数を増加させる。その後、ステップS212、ステップS213、ステップS214、及びステップS215の処理が、それぞれ、ステップS201、ステップS202、ステップS203、及びステップS204と同様に実行される。
【0083】
ステップS116における判断結果が否定的である場合、又は、ステップS117において水素供給装置1aの停止指令がある場合、図5に示す、ステップS301~ステップS304の処理が実行される。ステップS301、ステップS302、ステップS303及びステップS304の処理は、それぞれ、ステップS201、ステップS202、ステップS203、及びステップS204と同様に実行される。これにより、一連の処理が終了する。
【0084】
水素供給装置1aは、例えば、図6に示すように、風路4における出口2の周辺部分が部屋Rと室外とを仕切る壁に形成された貫通穴の内部に位置するように設置される。部屋Rは、典型的には排気口50を有する。水素供給装置1aによって水素ガスが室外の空気と混合されて部屋Rに供給される。これにより、室外の新鮮な空気と水素ガスとの混合気体によって部屋Rが満たされる。また、水素供給装置1aによって供給された混合気体において部屋Rの既存の空気は排気口50から室外に排出される。この換気の方式は、第2種換気方式に該当する。出口2及び排気口50は、望ましくは、部屋Rを平面視したときに最も離れた一対の壁面に沿って位置している。また、望ましくは、部屋Rの高さ方向における出口2と排気口50との間の距離は、部屋Rの天井と床との間の距離の1/2以上である。この場合、空気と水素ガスとの混合気体を部屋Rに均一に行き渡らせやすい。なお、排気口50には排気ファンが配置されてもよい。この場合、水素供給装置1aを用いた換気の方式が第1種換気方式に該当する。
【0085】
水素供給装置1aは、住宅の部屋等の通常の室内に室外の空気と水素ガスとの混合気体を供給できるように設置されるだけでなく、酸素カプセルのように一人のみを収容できる比較的小さい室内に混合気体を供給できるように設置されてもよい。
【0086】
<変形例>
水素供給装置1aは、様々な観点から変更可能である。例えば、混合器20は省略可能であり、水素ガスが希釈されることなく第一供給口32を通って風路4に供給されてもよい。また、酸素ガスを風路に供給するための第四供給口12も省略可能である。水素供給装置1aは、例えば、赤外線センサをさらに備えるように変更されてもよい。赤外線センサは、出口2が接する室内を観察する。赤外線センサは、赤外線センサの観察結果を示す情報を制御器10が受信できるように制御器10に無線又は有線によって接続されている。制御器10は、赤外線センサによって室内に特定の温度(例えば、80℃)以上のスポットがあることが観察されたときに、流量調整装置8を制御して水素ガスの供給を停止させ、かつ、ファン6を停止させる。この処理は、例えば、水素供給装置の運転期間中に割込み処理として実行される。これにより、特定の温度以上のスポットが存在する室内に水素ガスと室外の空気との混合気体を供給することが防止される。
【0087】
水素供給装置1aは、出口2が部屋Rの天井に配置されるのに適した構造を有するように変更されてもよい。この場合、風路4は縦長の風路4aを有していなくてもよい。
【0088】
水素供給装置1aは、風路4の軸線方向において出口2よりも入口3に近い位置にファン6が配置されているように変更されてもよい。ファン6が作動すると、空気の流れ方向においてファン6の下流が正圧になる。このため、ファン6が、風路4の軸線方向において出口2よりも入口3に近い位置に配置されていれば、風路4の広い範囲において風路4を定める構成部品の隙間から外部の空気が流入しにくい。これにより、風路4には異物が入り込みにくく、水素供給装置の安全性を高めることができる。
【0089】
水素供給装置1aは、図7図8図10にそれぞれ示す水素供給装置1b、水素供給装置1c、及び水素供給装置1dのように変更されてもよい。水素供給装置1b、水素供給装置1c、及び水素供給装置1dは、特に説明する場合を除き、水素供給装置1aと同様に構成されている。水素供給装置1b、水素供給装置1c、及び水素供給装置1dの構成要素のうち、水素供給装置1aの構成要素と同一又は対応する構成要素には同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。水素供給装置1aに関する上記の説明は、技術的に矛盾しない限り、水素供給装置1b、水素供給装置1c、及び水素供給装置1dにもあてはまる。
【0090】
図7に示す通り、水素供給装置1bにおいて、端部31は、風路4において、ファン6と風路4の出口2との間に配置されている。端部31は、空気の流れ方向においてファン6よりも下流に配置されている。この場合、第一供給口32を通って風路4に供給された水素ガスがファン6を通過しないので、ファン6で発生しうる静電気に水素ガスが曝されることを防止できる。加えて、水素ガスは、ファン6によって加速された空気の流れに向かって第一供給口32を通って風路4に供給されるので、水素ガスと空気とが良好に撹拌され、出口2から吹き出される混合気体の水素ガス濃度が空間的に均一になりやすい。
【0091】
図8に示す通り、水素供給装置1cは、シャッター2b及びシャッター3bを備えている。シャッター3bは第三位置に配置されている。第三位置は、風路4における入口3とファン6及び端部31との間の位置である。シャッター2bは第四位置に配置されている。第四位置は、風路4における出口2とファン6及び端部31との間の位置である。水素供給装置1cは、第三位置及び第四位置の両方に配置されたシャッターを備えているが、第三位置及び第四位置のいずれか一方に配置されたシャッターを備えていてもよい。シャッター2b及びシャッター3bのそれぞれは、風路4を閉じる。制御器10は、水素ガスセンサ7によって検出された水素ガスの濃度が特定の濃度以上である場合に、シャッター2b及びシャッター3bを制御して風路4を閉じる。シャッター2b及びシャッター3bのそれぞれは、例えば、複数のパネルと、複数のパネルを回転させるアクチュエータ(図示省略)とを備えている。複数のパネルは、風路4の軸線に垂直な方向に並んでおり、アクチュエータによって複数のパネルが回転することによって風路4の開閉がなされる。シャッター2b及びシャッター3bは、制御器10からの制御信号を受信できるように制御器10に有線又は無線によって接続されている。水素供給装置1cにおいて、水素ガスセンサ7によって検出された水素ガスの濃度が特定の濃度以上である場合に、シャッター2b又はシャッター3bによって風路4が閉じられるので、特定の濃度以上の水素ガス濃度を有する混合気体が室内に供給し続けられることがない。このため、水素供給装置1cは高い安全性を有する。
【0092】
水素供給装置1cは、ステップS114における判断結果が否定的である場合に、図3に示すステップS201~S204に代えて、図9に示すステップS221~S225の処理を実行する。ステップS221、ステップS222、ステップS223、及びステップS224の処理は、それぞれ、ステップS201、ステップS202、ステップS203、及びステップS204と同様に実行される。ステップS225において、制御器10は、シャッター2b及びシャッター3bを制御して風路4を閉じ、一連の処理を終了する。
【0093】
図10に示す通り、水素供給装置1dにおいて、水素ガス供給源9は、電解装置17を備えている。電解装置17は水を電気分解して水素ガスを発生させる。この場合、水素ガス供給源9は、容器18をさらに備えている。容器18には水が貯留されており、容器18は、電解装置17に水を供給できるように電解装置17に接続されている。電解装置17で発生した水素ガスは流量調整装置8及び混合器20を通過して風路4に供給される。水素供給装置1dによれば、水素ガスを供給するインフラストラクチャーが整備されていない環境でも、水の電気分解によって水素ガスを発生させ、その水素ガスを室外の空気と混合させて室内に供給できる。また、水素ガス供給源として高圧の水素が貯蔵された耐圧容器を用いる場合と比べて、水素ガス供給源を交換する作業が発生しない。加えて、水素供給の需要に応じて水を電気分解して水素を発生させればよいので、水素ガスを長期間貯留する必要がない。
【0094】
例えば、電解装置17の内部には水を含む電解液が収容されており、アノード及びカソードが電解液に浸っている。電解装置17は、例えば、太陽電池(図示省略)と電気的に接続されており、太陽電池で発生した電力により、アノードとカソードとの間に所定の電位差を発生させることができる。その結果、水を電気分解することができる。太陽電池で発生した電力のうち水素供給装置1d以外の機器に対する電力需要に対して余剰となった電力を用いて電解装置17は水の電気分解を行う。電解装置17を稼働させるための電源としては太陽電池以外の電源を利用してもよい。
【0095】
水素供給装置1dにおいて混合器20には希釈ガスとして窒素ガスが供給される。水素供給装置1dは、ガス分離器16をさらに備えている。ガス分離器16は、水素ガスを希釈するための窒素ガスを空気から分離する。このため、水素供給装置1dのランニングコストが低い。
【0096】
ガス分離器16の内部の空間は、例えば、酸素富化膜によって複数の空間に仕切られている。酸素富化膜は例えば中空糸膜である。ガス分離器16の内部の空間における酸素富化膜の外側の空間が混合器20に連通しており、ガス分離器16の内部の空間における酸素富化膜の内側の空間が第四供給口12につながっている。ガス分離器16は、ガス分離器16に空気を供給するための取込口14に接続されている。取込口14は、例えば、風路4に配置されている。この場合、水素供給装置1dはフィルター3aを備えているので、フィルター3aを通過した異物の少ない空気を取込口14から取り込むことができる。このため、酸素富化膜に異物が付きにくく、窒素ガスの分離効率を長期間にわたって高く保つことができる。
【0097】
取込口14を通って、ガス分離器16の内部に供給された空気のうち酸素ガスは酸素富化膜を透過して第四供給口12に向かって流れる。一方、窒素ガスは酸素富化膜を透過せずに混合器20に向かって流れる。このように空気から窒素ガスを分離して水素ガスの希釈に用いる場合、窒素ガスの流量のみを制御すればよく、第三流量調整装置12aは省略可能である。
【0098】
水素供給装置1dは、例えば移動体に組み込むのに適している。なぜなら、水素ガス及び窒素ガスの外部インフラストラクチャーから移動体に供給し続けることは困難であるからある。水素供給装置1dは、自動車及び鉄道車両などの車に組み込むのに特に適している。また、水素供給装置1dは、P2G(Power to Gas)と称される再生可能エネルギーから得られた電気エネルギーを利用して水素ガスを生成するシステム、又は、水素ガスを生成する機器を備えた住宅等の建物において利用するのに適している。
【0099】
水素供給装置1aは、図11に示す水素供給装置1eのように変更されてもよい。水素供給装置1eは、特に説明する場合を除き、水素供給装置1aと同様に構成されている。水素供給装置1aの構成要素と同一又は対応する水素供給装置1eの構成要素には同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。水素供給装置1a、水素供給装置1b、水素供給装置1c、及び水素供給装置1dに関する構成は、技術的に矛盾しない限り、水素供給装置1eに適用可能である。
【0100】
水素供給装置1eにおいて、風路4は、下流部分4dを含む。下流部分4dは、複数の出口2を有する。下流部分4dが有する出口2の数は、特に制限されない。図11に示す通り、下流部分4dは、例えば、4つの出口2を有する。第一エリア40a、第二エリア40b、第三エリア40c、及び第四エリア40dのそれぞれには1つの出口2が配置されている。これにより、第一エリア40a、第二エリア40b、第三エリア40c、及び第四エリア40dに、室外の空気とともに水素ガスを供給できる。第一エリア40a、第二エリア40b、第三エリア40c、及び第四エリア40dのそれぞれは室内の空間である。第一エリア40a、第二エリア40b、第三エリア40c、及び第四エリア40dのそれぞれは、仕切り壁及び扉によってそのエリアの外部と仕切られていてもよいし、仕切られることなくそのエリアの外部とつながっていてもよい。仕切り壁及び扉によってそのエリアの外部と仕切られていない場合、一つのエリアにおいて、例えば水素濃度の低い領域にのみ水素を供給することも可能である。
【0101】
水素供給装置1eにおいて、水素ガスセンサ7は、例えば、空気の流れ方向において下流部分4dよりも上流に配置されている。水素ガスセンサ7は、典型的には、端部31と下流部分4dとの間に配置されている。これにより、例えば、1つの水素ガスセンサ7によって、複数の出口2のそれぞれから供給される混合気体における水素ガスの濃度を検出でき、水素ガスの濃度を効率的に検出できる。
【0102】
水素供給装置1eは、例えば、下流部分4dに配置された複数のシャッター2bをさらに備える。水素供給装置1eにおけるシャッター2bは、水素供給装置1cにおけるシャッターと同様に構成される。複数のシャッター2bのそれぞれは、1つの出口2に対応して配置されている。また、複数のシャッター2bは、互いに異なる1つの出口2に対応している。これにより、混合気体の供給が不要なエリアに配置された出口2に対応しているシャッター2bを制御器10による制御によって閉じることによって、そのエリアに混合気体が供給されることを防止できる。
【0103】
水素供給装置1eにおいて、制御器10は、例えば、室内における人の存否を示す第一情報を取得又は記憶する。制御器10は、第一情報が室内における人の存在を示すときに流量調整装置8を制御して風路4に水素ガスを供給する。例えば、第一情報が、第一エリア40a、第二エリア40b、第三エリア40c、及び第四エリア40dのいずれかにおける人の存在を示すときに、制御器10は、流量調整装置8を制御して風路4に水素ガスを供給する。
【0104】
一方、制御器10は、第一情報が室内における人の不在を示すときに、流量調整装置8を制御して風路4への水素ガスの供給を停止させる、又は、風路4に水素ガスが供給されない状態を保つ。例えば、第一情報が、第一エリア40a、第二エリア40b、第三エリア40c、及び第四エリア40dのいずれにおいても人が不在であることを示すときに、制御器10は、流量調整装置8を制御して風路4への水素ガスの供給を停止させる。これにより、水素ガスの浪費を防止できる。
【0105】
第一情報が、第一エリア40a及び第二エリア40bにおける人の存在を示し、かつ、第三エリア40c及び第四エリア40dにおける人の不在を示す場合を考える。この場合、制御器10は、流量調整装置8を制御して風路4に水素ガスを供給する。加えて、第一エリア40a及び第二エリア40bに配置された出口2に対応したシャッター2bを制御してこれらのシャッター2bを開く。一方、第三エリア40c及び第四エリア40dに配置された出口2に対応したシャッター2bを制御してこれらのシャッター2bを閉じる。これにより、第一エリア40a及び第二エリア40bに配置された出口2のみから水素ガスを含む混合気体が供給される。制御器10は、望ましくは、流量調整装置8を制御して、第一エリア40a及び第二エリア40bへの混合気体の供給に見合った流量で、風路4に水素ガスを供給する。これにより、水素ガスを効率的に利用できる。
【0106】
図11に示す通り、水素供給装置1eによって、水素供給システム100を構成できる。水素供給システム100は、水素供給装置1eと、検出器60とを備えている。検出器60は、例えば、室内における人の存否を検出する。この場合、検出器60は、例えば人感センサである。検出器60は、例えば、赤外線センサである。制御器10は、検出器60の検出結果を示す情報を第一情報として取得する。制御器10は、検出器60の検出結果を示す情報を取得できるように有線又は無線によって検出器60に接続されている。
【0107】
例えば、第一エリア40a、第二エリア40b、第三エリア40c、及び第四エリア40dのそれぞれに少なくとも1つの検出器60が配置されている。これにより、第一エリア40a、第二エリア40b、第三エリア40c、及び第四エリア40dのそれぞれにおける人の存否を検出できる。
【0108】
制御器10は、例えば、室内における人の位置を示す第二情報をさらに取得し、かつ、第二情報に基づいて流量調整装置8を制御して水素ガスの流量を調整する。検出器60は、例えば、室内における人の位置をさらに検出する。この場合も、検出器60として、赤外線センサを使用できる。例えば、室内に複数の赤外線センサを配置し、人の存在を検出した赤外線センサの位置情報及び検出結果に基づいて室内における人の位置を決定できる。また、検出器60は、赤外線方式又は超音波方式の距離センサであってもよい。この場合、検出器60は、検出器60と人との距離を示す検出結果に基づいて室内における人の位置を検出できる。
【0109】
制御器10は、所定の情報端末、サーバー、又はコントロールパネルから第一情報を取得してもよい。例えば、制御器10は、所定の情報端末又はサーバーに記憶された室内の使用者の在室スケジュール情報又はコントロールパネルに入力された室内の使用者の在室スケジュール情報を第一情報として取得してもよい。この場合、制御器10は、例えば、在室スケジュール情報における在室開始時刻が到来したときに、流量調整装置8を制御して水素ガスの風路4への供給を開始する。また、制御器10は、例えば、在室スケジュール情報における在室開始時刻以前の所定の時刻に、流量調整装置8を制御して水素ガスの風路4への供給を開始してもよい。所定の時刻は、例えば、在室開始時刻の30分前である。この場合、室内の使用者が室内に入ったときに速やかに水素ガスを吸引できる。
【0110】
制御器10は、例えば、GPS(Global Positioning System)モジュールが搭載された所定の情報端末から第二情報を取得してもよい。この場合、制御器10は、室内の使用者の情報端末のGPSモジュールから発信される位置情報を第二情報として取得してもよい。
【0111】
水素供給装置1eにおいて、制御器10は、例えば、室内における人の生体情報である第三情報を取得し、かつ、第三情報に基づいて流量調整装置8を制御して水素ガスの流量を調整する。この場合、検出器60は、例えば、室内における人の生体情報を検出する。人の生体情報は、例えば、体温である。この場合、検出器60として例えば赤外線センサを使用できる。
【0112】
水素供給装置1eの動作の一例を説明する。図12に示す通り、制御器10は、ステップ401において、第一情報を取得する。次に、ステップS402に進み、第一情報が室内における人の存在を示すか否か判断する。ステップS402の判断結果が肯定的である場合、ステップS403に進み、制御器10は第二情報を取得する。さらにステップS403に進み、制御器10は、第三情報を取得する。その後、図2に示すステップS101に進む。制御器10は、例えば、ステップS102において、第一情報、第二情報、又は第三情報を参照して水素ガスの濃度を設定する。制御器10は、例えば、ステップS104において第一情報、第二情報、又は第三情報に基づいて水素ガスの流量を決定する。
【0113】
例えば、制御器10は、ステップS104において、第一情報を参照して、第一エリア40a、第二エリア40b、第三エリア40c、及び第四エリア40dのうち人の存在を示すエリアの容積に基づいて、水素ガスの流量を決定する。
【0114】
例えば、制御器10は、ステップS102において、室内における人の位置が出口2から遠いことを第二情報が示すときには、室内における人の位置が出口2に近いことを第二情報が示す場合に比べて、水素ガスの濃度を高い値に設定する。
【0115】
例えば、制御器10は、例えば、ステップS102において、特定の温度以上の体温を第三情報が示す場合、特定の温度未満の体温を第三情報が示す場合に比べて、水素ガスの濃度を高い値に設定する。特定の温度は、例えば、36.0℃~37.0℃である。体温が比較的高い場合、体内での活性酸素及びフリーラジカルの生成が多いと考えられる。この場合、水素ガスの流量を高くすることによって水素ガスの体内への吸引量が増加し、体内の活性酸素及びフリーラジカルに対する水素による還元を促進できる。一方、体温が比較的低い場合、睡眠中のように活動量が少なく体内での活性酸素及びフリーラジカルの生成が少ないと考えられる。この場合、水素ガスの流量を低くすることによって水素ガスの使用量を低減できる。
【0116】
ステップS402の判断結果が否定的である場合、ステップS405に進み、制御器10は、水素ガスを風路4に供給中であるか否か判断する。ステップS405における判断結果が肯定的である場合、図5に示す、ステップS301~S304の処理を実行する。ステップS405における判断結果が否定的である場合、制御器10は、ステップS406に進んで所定期間待機した後、ステップS401に戻る。なお、ステップS402及びステップS403は、ステップS401と同時に行われてもよいし、ステップS402及びステップS403のそれぞれは、省略されてもよい。
【0117】
水素供給装置1eは、風路4が1つの出口2を有するように変更されてもよい。この場合でも、制御器10は、第一情報、第二情報、及び第三情報の少なくとも1つを取得又は記憶して、これらの情報に基づいて流量調整装置8等の制御対象を適切に制御できる。
【符号の説明】
【0118】
1a~1e 水素供給装置
2 出口
2a フィルター
2b シャッター
3 入口
3a フィルター
3b シャッター
4 風路
4a 縦長の風路
4d 下流部分
5 第二供給口
6 ファン
7 水素ガスセンサ
8 流量調整装置
9 水素ガス供給源
10 制御器
13a 温度センサ
16 ガス分離器
17 電解装置
20 混合器
21 流路
22 第三供給口
30 第一配管
31 端部
32 第一供給口
60 検出器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13