(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-28
(45)【発行日】2023-10-06
(54)【発明の名称】搬送システム及び搬送方法
(51)【国際特許分類】
B66F 9/075 20060101AFI20230929BHJP
B66F 9/24 20060101ALI20230929BHJP
【FI】
B66F9/075 L
B66F9/24 L
(21)【出願番号】P 2020549403
(86)(22)【出願日】2019-09-26
(86)【国際出願番号】 JP2019038025
(87)【国際公開番号】W WO2020067371
(87)【国際公開日】2020-04-02
【審査請求日】2022-07-11
(31)【優先権主張番号】P 2018180699
(32)【優先日】2018-09-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018180700
(32)【優先日】2018-09-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 淳一
(72)【発明者】
【氏名】白水 博
(72)【発明者】
【氏名】中村 徹
(72)【発明者】
【氏名】水野 修
【審査官】八板 直人
(56)【参考文献】
【文献】実開昭64-055168(JP,U)
【文献】実開昭58-099297(JP,U)
【文献】特開2018-112874(JP,A)
【文献】特開2006-027789(JP,A)
【文献】特開2002-160894(JP,A)
【文献】特開平08-318833(JP,A)
【文献】特開2001-088906(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66F 9/075
B66F 9/24
B62B 3/06
B66F 9/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動輪により移動面上を
自律移動する本体部と、
少なくとも1つの車輪を有し、前記本体部から延びて搬送対象物に差し込まれた状態で前記搬送対象物を支持する支持部と、
前記支持部と前記本体部の移動経路上にある段差との位置関係を検知する検知部と、
前記支持部が前記搬送対象物に差し込まれる高さである第1高さと、前記支持部が前記搬送対象物を支持する高さである第2高さとの間で前記支持部を昇降させる昇降制御部と、
前記車輪が前記移動面に接しない状態と、前記車輪が前記移動面に接する状態とを切り替える車輪制御部と、を備
え、
前記本体部が前記搬送対象物に前記支持部を差し込み可能な領域に位置することを前記検知部が検知した場合、前記昇降制御部は、前記支持部を前記第1高さに配置し、かつ、前記車輪制御部は、前記車輪が前記移動面に接しない状態とする、準備動作を実行する、
搬送システム。
【請求項2】
前記準備動作の後、前記車輪制御部は、前記昇降制御部が前記第1高さから前記第2高さに前記支持部を移動させる前に、前記車輪が前記移動面に接する状態に切り替える、
請求項1記載の搬送システム。
【請求項3】
前記車輪制御部は、前記支持部と前記車輪とを機械的に連結し、前記支持部の昇降に伴って前記車輪を移動させるリンク機構である、
請求項1又は2に記載の搬送システム。
【請求項4】
前記本体部又は前記支持部は、前記駆動輪と前記車輪との間に位置する補助輪を有する、
請求項1~3のいずれか1項に記載の搬送システム。
【請求項5】
前記補助輪が前記移動面に接しない状態と、前記補助輪が前記移動面に接する状態とを切り替える補助輪制御部を更に備える、
請求項4記載の搬送システム。
【請求項6】
前記補助輪制御部は、前記支持部と前記補助輪とを機械的に連結し、前記支持部の昇降に伴って前記補助輪を移動させるリンク機構である、
請求項5記載の搬送システム。
【請求項7】
前記車輪は、前記支持部の高さに依らず、前記移動面に接することが可能である、
請求項1~6のいずれか1項に記載の搬送システム。
【請求項8】
前記本体部及び前記支持部を、前記本体部の外部から前記本体部に送信される指令により制御する上位システムを更に備える、
請求項1~7のいずれか1項に記載の搬送システム。
【請求項9】
駆動輪により移動面上を自律移動する本体部と、
少なくとも1つの車輪を有し、前記本体部から延びて搬送対象物に差し込まれた状態で前記搬送対象物を支持する支持部と、
前記支持部と前記本体部の移動経路上にある段差との位置関係を検知する検知部と、
前記支持部が前記搬送対象物に差し込まれる高さである第1高さと、前記支持部が前記搬送対象物を支持する高さである第2高さとの間で前記支持部を昇降させる昇降制御部と、
前記車輪が前記移動面に接しない状態と、前記車輪が前記移動面に接する状態とを切り替える車輪制御部と、を備える搬送装置による搬送方法であって、
前記本体部が前記搬送対象物に前記支持部を差し込み可能な領域に位置することを前記検知部が検知すると、前記昇降制御部が前記支持部を前記搬送対象物に差し込まれる高さに移動させ、前記車輪制御部が、前記車輪を、前記移動面に接する位置から、前記移動面に接しない位置に移動させる、
搬送方法。
【請求項10】
前記支持部と前記車輪との間に設けられて、前記車輪へ伝わる衝撃を緩和するサスペンションを備える、
請求項1~8のいずれか1項に記載の搬送システム。
【請求項11】
前記サスペンションの衝撃緩和動作が有効である有効状態と、前記サスペンションの衝撃緩和動作が無効である無効状態とを切り替える切替部を更に備える、
請求項10記載の搬送システム。
【請求項12】
前記切替部は、前記支持部の昇降に伴って前記有効状態と前記無効状態とを切り替える、
請求項11記載の搬送システム。
【請求項13】
前記切替部は、前記支持部と前記車輪とを機械的に連結し、前記支持部の昇降に伴って前記車輪を移動させるリンク機構により実現される、
請求項12記載の搬送システム。
【請求項14】
前記リンク機構は、前記車輪及び前記サスペンションが取り付けられるアームと、前記アームに力を伝えることにより前記アームを移動させる伝達部と、を有しており、
前記切替部は、前記伝達部を前記アームから離すことにより前記有効状態に、前記伝達部を前記アームに接触させることにより前記無効状態に切り替える、
請求項13記載の搬送システム。
【請求項15】
前記切替部は、前記支持部が前記第1高さから前記第2高さへと移動すると、前記サスペンションを前記有効状態から前記無効状態へ切り替える、
請求項12~14のいずれか1項に記載の搬送システム。
【請求項16】
前記サスペンションは、前記サスペンションの振動を減衰させるダンパを有する、
請求項10~15のいずれか1項に記載の搬送システム。
【請求項17】
前記支持部が、前記搬送対象物に差し込まれる高さである第1高さから、前記支持部が前記搬送対象物を支持する高さである第2高さへと移動すると、
前記支持部と前記車輪との間に設けられて、前記車輪へ伝わる衝撃を緩和するサスペンションを、衝撃緩和動作が有効である有効状態から、前記衝撃緩和動作が無効である無効状態へ切り替える、
請求項9に記載の搬送方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に搬送システム及び搬送方法に関する。より詳細には、本開示は、搬送対象物を搬送する搬送システム及び搬送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、パレット(搬送対象物)を搬送するパレットトラック(搬送システム)が開示されている。このパレットトラックでは、トラック本体(本体部)の後側(フォーク側)に対し、昇降機構によってフォーク(支持部)が昇降可能に組み付けられている。また、このパレットトラックでは、フォークの先端部に小車輪(車輪)が組み付けられている。
【0003】
特許文献1に記載の搬送システムでは、本体部の移動時において、支持部の車輪が移動面に接したままである。このため、特許文献1に記載の搬送システムでは、本体部の移動経路上に段差がある場合、支持部の車輪が段差に接触することを起因として搬送対象物の搬送に影響を与える可能性がある、という問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【0005】
本開示は、本体部の移動経路上に段差がある場合に、支持部の車輪が段差に接触しにくい搬送システム及び搬送方法を提供することを目的とする。
【0006】
本開示の一態様に係る搬送システムは、本体部と、支持部と、検知部と、昇降制御部と、車輪制御部と、を備える。前記本体部は、駆動輪により移動面上を自律移動する。前記支持部は、少なくとも1つの車輪を有し、前記本体部から延びて搬送対象物に差し込まれた状態で前記搬送対象物を支持する。前記検知部は、前記支持部と前記本体部の移動経路上にある段差との位置関係を検知する。前記昇降制御部は、前記支持部が前記搬送対象物に差し込まれる高さである第1高さと、前記支持部が前記搬送対象物を支持する高さである第2高さとの間で前記支持部を昇降させる。前記車輪制御部は、前記車輪が前記移動面に接しない状態と、前記車輪が前記移動面に接する状態とを切り替える。前記本体部が前記搬送対象物に前記支持部を差し込み可能な領域に位置することを前記検知部が検知した場合、前記昇降制御部は、前記支持部を前記第1高さに配置し、かつ、前記車輪制御部は、前記車輪が前記移動面に接しない状態とする、準備動作を実行する。
【0007】
本開示の一態様に係る搬送方法は、本体部と、支持部と、検知部と、昇降制御部と、車輪制御部と、を備える搬送装置による搬送方法である。前記本体部は、駆動輪により移動面上を自律移動する。前記支持部は、少なくとも1つの車輪を有し、前記本体部から延びて搬送対象物に差し込まれた状態で前記搬送対象物を支持する。前記検知部は、前記支持部と前記本体部の移動経路上にある段差との位置関係を検知する。前記昇降制御部は、前記支持部が前記搬送対象物に差し込まれる高さである第1高さと、前記支持部が前記搬送対象物を支持する高さである第2高さとの間で前記支持部を昇降させる。前記車輪制御部は、前記車輪が前記移動面に接しない状態と、前記車輪が前記移動面に接する状態とを切り替える。この搬送方法は、前記本体部が前記搬送対象物に前記支持部を差し込み可能な領域に位置することを前記検知部が検知すると、前記昇降制御部が、前記支持部を前記搬送対象物に差し込まれる高さに移動させ、前記車輪制御部が、前記車輪を、前記移動面に接する位置から、前記移動面に接しない位置に移動させる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1Aは、実施形態1に係る搬送システムにおいて、支持部が搬送対象物に差し込まれる前の状態を示す概略図である。
図1Bは、同上の搬送システムにおいて、支持部が搬送対象物に差し込まれている状態を示す概略図である。
図1Cは、同上の搬送システムにおいて、支持部が搬送対象物を持ち上げている状態を示す概略図である。
【
図2】
図2は、同上の搬送システムにおいて、搬送装置及び搬送対象物の外観を示す斜視図である。
【
図3】
図3は、同上の搬送システムにおいて、搬送装置の外観を示す斜視図である。
【
図4】
図4は、同上の搬送システムのブロック図である。
【
図5】
図5Aは、同上の搬送システムにおいて、車輪の第1状態を示す概略図である。
図5Bは、同上の搬送システムにおいて、車輪の第2状態を示す概略図である。
【
図6】
図6は、同上の搬送システムの動作を説明するフローチャートである。
【
図7】
図7は、比較例の搬送システムにおいて、支持部が搬送対象物に差し込まれている状態を示す概略図である。
【
図8】
図8Aは、実施形態2に係る搬送システムにおいて、支持部の車輪が段差を乗り越える前の状態を示す概略図である。
図8Bは、同上の搬送システムにおいて、支持部の車輪が段差を乗り越えている状態を示す概略図である。
【
図9】
図9は、同上の搬送システムのブロック図である。
【
図10】
図10Aは、同上の搬送システムにおいて、車輪の第1状態を示す概略図である。
図10Bは、同上の搬送システムにおいて、車輪の第2状態を示す概略図である。
【
図11】
図11Aは、同上の搬送システムにおいて、支持部が搬送対象物に差し込まれる前の状態を示す概略図である。
図11Bは、同上の搬送システムにおいて、支持部が搬送対象物に差し込まれている状態を示す概略図である。
図11Cは、同上の搬送システムにおいて、支持部が搬送対象物を持ち上げている状態を示す概略図である。
【
図12】
図12は、同上の搬送システムの動作を説明するフローチャートである。
【
図13】
図13Aは、実施形態2の変形例に係る搬送システムにおいて、支持部の車輪が段差を乗り越える前の状態を示す概略図である。
図13Bは、同上の搬送システムにおいて、支持部の車輪が段差を乗り越えている状態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(実施形態1)
(1)概要
本実施形態に係る搬送システム100は、
図1A~
図1Cに示すように、搬送装置1を備えている。本実施形態では、
図4に示すように、搬送システム100は、複数の搬送装置1と、複数の搬送装置1をそれぞれ遠隔で制御する上位システム5と、を備えている。以下では、特に断りのない限り、任意の1台の搬送装置1に着目して説明する。以下の説明は、残りの全ての搬送装置1の各々についても同様に適用し得る。
【0012】
搬送装置1は、1つの駆動輪21で移動面200の上を移動する装置であり、搬送対象物X1の搬送用の装置である。搬送装置1は、例えば物流センター(配送センターを含む)、工場、オフィス、店舗、学校、及び病院等の施設に導入される。移動面200は、その上を搬送装置1が移動する面であり、搬送装置1が施設内を移動する場合は施設の床面等が移動面200となり、搬送装置1が屋外を移動する場合は地面等が移動面200となる。以下では、物流センターに搬送装置1を導入する場合について説明する。
【0013】
搬送装置1は、
図1A~
図1Cに示すように、本体部2と、支持部3と、を備えている。また、搬送装置1は、
図4に示すように、昇降制御部43と、車輪制御部44と、を備えている。
【0014】
本体部2は、駆動輪21を有しており、駆動輪21により移動面200上を移動する。本実施形態では、本体部2は、自律移動可能である。
【0015】
支持部3は、少なくとも1つの車輪31を有し、本体部2から延びて搬送対象物X1に差し込まれた状態で搬送対象物X1を支持する。本開示でいう「搬送対象物に差し込まれる」とは、搬送対象物X1の有する差込口X11に差し込むことをいう。本実施形態では、搬送装置1は、一対の支持部3を備えている。したがって、搬送対象物X1は、一対の支持部3が差し込まれた状態で、一対の支持部3に支持される。また、本実施形態では、一対の支持部3は、それぞれ一対の車輪31を有している。以下の説明では、特に断りのない限り、一対の支持部3を単に「支持部3」といい、一対の車輪31を単に「車輪31」という。
【0016】
昇降制御部43は、第1高さH1と、第2高さH2との間で支持部3を昇降させる。本開示でいう「高さ」は、上下方向における、移動面200から支持部3の上面までの長さである。第1高さH1は、支持部3が搬送対象物X1に差し込まれる高さである。第2高さH2は、支持部3が搬送対象物X1を支持する高さである。つまり、第1高さH1にある支持部3は、移動面200に接している状態の搬送対象物X1に差し込み可能である。また、第2高さH2にある支持部3は、搬送対象物X1を移動面200から浮かせた状態で支持可能である。
【0017】
車輪制御部44は、車輪31が移動面200に接しない状態(以下、「非接地状態」ともいう)と、車輪31が移動面200に接する状態(以下、「接地状態」ともいう)とを切り替える。つまり、非接地状態にある車輪31は、移動面200から浮いている。
【0018】
上述のように、本実施形態では、支持部3の車輪31を、接地状態から非接地状態に切り替えることが可能である。このため、本実施形態では、本体部2の移動経路上に段差A1がある場合に、支持部3の車輪31が段差A1に接触しにくくなる、という利点がある。
【0019】
(2)詳細
以下、本実施形態に係る搬送システム100について
図1~
図5Bを用いて詳細に説明する。以下では、特に断りのない限り、移動面200に直交する方向を上下方向とし、移動面200から見て搬送装置1側を「上方」、その逆を「下方」として説明する。また、以下では、搬送装置1が一対の支持部3を搬送対象物X1の差込口X11に差し込む際に搬送装置1が進む向きを「後方」、その逆を「前方」として説明する。また、以下では、上下方向及び前後方向の両方向に直交する方向を左右方向として説明する。ただし、これらの方向の規定は、搬送装置1の使用態様を限定する趣旨ではない。また、図面中の各方向を示す矢印は、説明のために表記しているに過ぎず、実体を伴わない。更に、図面中の白抜きの矢印は、物体(例えば、本体部2など)の動く向きを表しているに過ぎず、実体を伴わない。
【0020】
搬送装置1(搬送システム100)は、上述したように、本体部2と、支持部3と、昇降制御部43と、車輪制御部44と、を備えている。また、本実施形態では、搬送装置1は、
図4に示すように、制御部41と、駆動部42と、補助輪制御部45と、検知部46と、通信部47と、を更に備えている。本実施形態では、昇降制御部43、車輪制御部44、及び補助輪制御部45は、後述するリンク機構40により実現されている。
【0021】
搬送装置1は、例えば、施設の床面等からなる平坦な移動面200を自律移動する。ここでは一例として、搬送装置1は、蓄電池を備え、蓄電池に蓄積された電気エネルギを用いて動作することとする。本実施形態では、搬送装置1は、支持部3に搬送対象物X1を支持させた状態で移動面200上を移動する。これにより、搬送装置1は、例えば、施設内のある場所に置かれている搬送対象物X1を、施設内の別の場所に搬送することが可能である。
【0022】
本実施形態では、搬送対象物X1は、
図2に示すように、平パレットである。以下では、特に断りのない限り、「搬送対象物X1」を「パレットX1」という。パレットX1は、直方体状のパレット本体X10を有している。パレット本体X10の上面及び下面は、正方形状である。なお、パレット本体X10の上面及び下面は、長方形状であってもよい。パレット本体X10の厚さ方向(上下方向)の寸法は、幅方向(左右方向)の寸法よりも小さい。パレット本体X10の上面には、荷物が積載可能である。つまり、搬送装置1は、搬送時においては、荷物が積載されていないパレットX1、又は荷物が積載されたパレットX1を支持部3に支持させた状態で、移動面200上を移動することになる。
【0023】
パレット本体X10の4つの側壁(前壁、後壁、左壁、及び右壁)には、それぞれ一対の矩形状の差込口X11が設けられている。各差込口X11は、側壁を厚さ方向(前後方向又は左右方向)に貫通しており、支持部3を差し込み可能となっている。
図2に示す例では、搬送装置1の一対の支持部3は、本体部2を後進させることにより、パレット本体X10の前壁にある一対の差込口X11に差し込まれる。各差込口X11の下側の部位は、桟部X13となっている。これらの桟部X13は、支持部3の車輪31が移動面200に接した状態で支持部3が差込口X11に差し込まれる場合、車輪31が乗り上げる段差A1となる。パレット本体X10の下壁には、厚さ方向(上下方向)に貫通する矩形状の開口X12が設けられている。つまり、支持部3が差込口X11に差し込まれている場合において、支持部3の車輪31は、開口X12を通して移動面200に接することが可能である。
【0024】
本体部2は、例えば金属製である。ただし、本体部2は、金属製に限らず、例えば樹脂製であってもよい。本体部2は、
図2及び
図3に示すように、前後方向よりも左右方向に長く、かつ左右方向及び前後方向よりも上下方向の寸法が大きい直方体状である。本体部2は、1つの駆動輪21と、一対の補助輪22と、操作部23と、を有している。以下では、特に断りのない限り、一対の補助輪22を単に「補助輪22」という。また、本体部2には、制御部41、駆動部42、検知部46、及び通信部47が搭載されている(
図4参照)。
【0025】
本体部2は、駆動輪21により移動面200上に支持される。駆動輪21は、本体部2の下面から下向きに突出するように配置されている。駆動輪21は、駆動部42からの駆動力を受けて回転可能である。本実施形態では、駆動輪21は、例えば上下方向に沿った操舵軸を有する駆動輪である。したがって、本実施形態では、駆動輪21にて支持された本体部2は、駆動輪21及び操舵軸の回転により、移動面200の上を、前、後、左、及び右に移動可能である。
【0026】
補助輪22は、本体部2の下面から下向きに突出するように配置されている。補助輪22は、前後方向において、駆動輪21と、支持部3の車輪31との間に位置する。補助輪22は、リンク機構40(補助輪制御部45)により、補助輪22が移動面200に接しない状態(非接地状態)と、補助輪22が移動面200に接する状態(接地状態)とを切り替えるように構成されている。そして、補助輪22は、接地状態においては、駆動部42からの駆動力を受けて回転可能である。
【0027】
操作部23は、作業員からの操作入力を受け付けるユーザインタフェースである。本実施形態では、操作部23は、タッチパネルディスプレイを搭載している。したがって、タッチパネルディスプレイにて、作業員の操作を受け付ける機能と、作業員に情報を表示する機能と、が実現される。タッチパネルディスプレイは、例えば液晶ディスプレイ、又は有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ等で構成される。本実施形態では、作業員が操作部23を操作することにより、搬送装置1に直接、搬送指令を与えることも可能である。
【0028】
支持部3は、例えば金属製である。ただし、支持部3は、金属製に限らず、例えば樹脂製であってもよい。本実施形態では、支持部3は一対である。一対の支持部3は、
図2及び
図3に示すように、いずれも前後方向に長い矩形状の板であり、本体部2の後面から後向きに延びている。また、一対の支持部3は、左右方向に間隔を空けて配置されている。
【0029】
一対の支持部3は、それぞれパレット本体X10のいずれか1つの側壁にある一対の差込口X11に差し込み可能に構成されている。本実施形態では、一対の支持部3の各々の長さ(前後方向の長さ)は、パレット本体X10の前後方向の長さよりも短くなっている。したがって、一対の支持部3がパレットX1に差し込まれた状態においては、一対の支持部3の各々の先端(後端)は、パレット本体X10の内側に位置することになる。
【0030】
一対の支持部3の各々の後端には、リンク機構40の一部であるアーム32を介して、一対の車輪31が取り付けられている。具体的には、
図5A及び
図5Bに示すように、アーム32の後端には、第1軸321が取り付けられている。そして、一対の車輪31は、第1軸321周りに回転するように、第1軸321に取り付けられている。ここで、アーム32は、支持部3に取り付けられた第2軸322周りに回転するように構成されている。また、アーム32の前端には、第3軸323が取り付けられている。第3軸323には、第3軸323周りに回転するローラ324が取り付けられている。ローラ324は、本体部2から支持部3の内側を通って延びているロッド33の後端に押されるようになっている。アーム32、ローラ324、及びロッド33は、いずれもリンク機構40の一部である。アーム32は、ロッド33の後端とローラ324との間の隙間G1を埋めるようにしてロッド33が後方へと移動し、ロッド33の後端に後向きに押されることにより、第2軸322周りに回転可能である。
【0031】
車輪31は、リンク機構40(車輪制御部44)により、第1状態と、第2状態とに切り替えられる。第1状態は、
図5Aに示すように、アーム32の長さ方向が、支持部3の長さ方向(前後方向)とほぼ平行である状態における車輪31の状態である。第2状態は、
図5Bに示すように、アーム32が
図5Aに示す位置から時計回りに回転した状態における車輪31の状態である。第2状態にある車輪31は、第1状態にある車輪31よりも下向きに突出している。本実施形態では、リンク機構40(車輪制御部44)がロッド33を前後方向に進退させ、アーム32を第2軸322周りに回転させることにより、車輪31が、第1状態と第2状態とのいずれかに切り替えられる。
【0032】
支持部3は、リンク機構40(昇降制御部43)により、本体部2に対して昇降可能である。本実施形態では、支持部3は、
図1A~
図1Cに示すように、通常高さH0、第1高さH1、及び第2高さH2の少なくとも3つの高さに位置し得る。これら3つの高さのうち、通常高さH0が最も低く、第2高さH2が最も高い。
【0033】
支持部3が通常高さH0に位置する場合、第1状態にある車輪31が移動面200に接する。したがって、この場合、本体部2及び支持部3は、駆動輪21及び第1状態にある車輪31が移動面200に接した状態で移動することになる。
【0034】
支持部3が第1高さH1に位置する場合、支持部3は、パレット本体X10の差込口X11に差し込み可能である。なお、支持部3が通常高さH0に位置する場合でも、支持部3は、一応、パレット本体X10の差込口X11に差し込み可能である。支持部3が第1高さH1に位置する場合、第1状態にある車輪31は、移動面200から浮いており、移動面200に接しない。また、この場合、第1状態にある車輪31は、支持部3がパレットX1に差し込まれた状態において、パレットX1の桟部X13(段差A1)にも接しない。
【0035】
支持部3が第2高さH2に位置する場合、支持部3は、パレットX1に差し込まれた状態において、パレットX1を持ち上げることにより、パレットX1を移動面200から浮かせることが可能である。このため、支持部3が第2高さH2に位置する場合、支持部3は、パレットX1を移動面200から浮かせた状態で支持する。したがって、この場合、搬送装置1は、パレットX1を支持部3にて支持しながらパレットX1を搬送することが可能である。また、支持部3が第2高さH2に位置する場合、第2状態にある車輪31が移動面200に接する。したがって、この場合、本体部2及び支持部3は、駆動輪21及び第2状態にある車輪31が移動面200に接した状態で移動することになる。
【0036】
制御部41は、駆動部42、昇降制御部43、車輪制御部44、補助輪制御部45、検知部46、及び通信部47を制御する。本実施形態では、制御部41は、プロセッサ及びメモリを有するコンピュータシステムを主構成とする。コンピュータシステムのメモリに記録されたプログラムを、コンピュータシステムのプロセッサが実行することにより、制御部41の機能が実現される。プログラムは、メモリに記録されていてもよいし、インターネット等の電気通信回線を通して提供されてもよく、メモリカード等の非一時的記録媒体に記録されて提供されてもよい。
【0037】
駆動部42は、駆動輪21に対して、直接的又は間接的に駆動力を与える。また、本実施形態では、補助輪22及び車輪31は、非駆動輪(従動輪)である。したがって、本実施形態では、移動面200に接している補助輪22及び車輪31は、駆動部42により駆動輪21に駆動力が与えられると、駆動輪21の回転に伴って回転する。駆動部42は、本体部2に内蔵されている。駆動部42は、例えば、電動機(モータ)を含み、ギアボックス及びベルト等を介して、電動機で発生する駆動力を間接的に駆動輪21に与える。また、駆動部42は、インホイールモータのように、駆動輪21に対して直接的に駆動力を与える構成であってもよい。駆動部42は、制御部41から入力される制御信号に基づいて、駆動輪21を制御信号に応じた回転方向及び回転速度で駆動する。
【0038】
昇降制御部43は、第1高さH1と、第2高さH2との間で支持部3を昇降させる。本実施形態では、昇降制御部43は、既に述べたように、第1高さH1よりも低い通常高さH0と、第2高さH2との間で支持部3を昇降させる。また、本実施形態では、昇降制御部43は、リンク機構40である。リンク機構40は、例えば、電動機(モータ)を含み、電動機で発生する駆動力にて、支持部3を上下方向に直進移動させることが可能な適宜の機構で実現される。また、リンク機構40は、支持部3と車輪31及び補助輪22とを機械的に連結し、支持部3の移動に伴って車輪31及び補助輪22を移動させることか可能な適宜の機構を含む。
【0039】
車輪制御部44は、車輪31が移動面200に接しない状態(非接地状態)と、車輪31が移動面200に接する状態(接地状態)とを切り替える。また、車輪制御部44は、車輪31を、第1状態と第2状態とのいずれかに切り替える。本実施形態では、車輪制御部44は、支持部3と車輪31とを機械的に連結し、支持部3の昇降に伴って車輪31を移動させるリンク機構40である。つまり、リンク機構40(昇降制御部43)により、支持部3が通常高さH0から第1高さH1へと移動すると、車輪31は、支持部3の上昇に伴って上昇する。このため、車輪31は、接地状態から非接地状態に切り替わる(
図1A及び
図1B参照)。つまり、本実施形態では、昇降制御部43は、車輪制御部44としても機能している。支持部3が通常高さH0から第1高さH1へと移動する際には、ロッド33が後方へと移動するが、ロッド33の後端とローラ324との間の隙間G1を埋めるには至らない。このため、ロッド33により第3軸323が押されることはなく、車輪31は第1状態を維持する。
【0040】
また、リンク機構40により、支持部3が第1高さH1から第2高さH2へと移動すると(
図1B及び
図1C参照)、支持部3の上昇に伴ってロッド33が更に後方へと移動する。そして、ロッド33の後端とローラ324との間の隙間G1が埋められ、ロッド33の後端により第3軸323が後向きに押されることで、アーム32が回転することにより、車輪31が、第1状態から第2状態に切り替わる(
図5A及び
図5B参照)。言い換えれば、車輪31が、非接地状態から接地状態に切り替わる。
【0041】
このように、本実施形態では、支持部3が通常高さH0から第1高さH1へ移動する場合、リンク機構40は、支持部3の上昇に伴って車輪31を接地状態から非接地状態に切り替える。また、支持部3が第1高さH1から第2高さH2へ移動する場合、リンク機構40は、支持部3の上昇に伴って車輪31を非接地状態から接地状態に切り替える。
【0042】
補助輪制御部45は、補助輪22が移動面200に接しない状態(非接地状態)と、補助輪22が移動面200に接する状態(接地状態)とを切り替える。本実施形態では、補助輪制御部45は、支持部3と補助輪22とを機械的に連結し、支持部3の昇降に伴って補助輪22を移動させるリンク機構40である。つまり、本実施形態では、リンク機構40(昇降制御部43)により、支持部3が通常高さH0から第1高さH1へと移動すると、支持部3の上昇に伴ってロッド33が後方へと移動し、ロッド33に連結されたカム機構により、補助輪22が本体部2から下向きに突出する。このため、補助輪22は、非接地状態から接地状態に切り替わる(
図1A及び
図1B参照)。また、リンク機構40により、支持部3が第1高さH1から第2高さH2へと移動すると、支持部3の上昇に伴ってロッド33が更に後方へと移動し、ロッド33に連結されたカム機構により、補助輪22が本体部の内側へ引っ込む。このため、補助輪22は、接地状態から非接地状態に切り替わる(
図1B及び
図1C参照)。
【0043】
このように、本実施形態では、支持部3が通常高さH0から第1高さH1へ移動する場合、リンク機構40は、支持部3の上昇に伴って補助輪22を非接地状態から接地状態に切り替える。また、また、支持部3が第1高さH1から第2高さH2へ移動する場合、リンク機構40は、支持部3の上昇に伴って補助輪22を接地状態から非接地状態に切り替える。
【0044】
検知部46は、本体部2の位置、本体部2の挙動、及び本体部2の周辺状況等を検知する。本開示でいう「挙動」は、動作及び様子等を意味する。つまり、本体部2の挙動は、本体部2が移動中/停止中を表す本体部2の動作状態、本体部2の速度(及び速度変化)、本体部2に作用する加速度、及び本体部2の姿勢等を含む。具体的には、検知部46は、例えば、速度センサ、加速度センサ、ジャイロセンサ等のセンサを含み、これらのセンサにて本体部2の挙動を検知する。また、検知部46は、例えば、ソナーセンサ、レーダ、及びLiDAR(Light Detection and Ranging)等のセンサを含み、これらのセンサにて本体部2の周辺状況を検知する。本開示でいう「周辺状況」には、本体部2(又は、支持部3)の周辺にあるパレットX1を含み得る。また、本開示でいう「周辺状況」には、本体部2の移動経路上にある段差A1(例えば、パレットX1の桟部X13)を含み得る。つまり、検知部46は、支持部3と本体部2の移動経路上にある段差A1との位置関係を検知する。
【0045】
また、検知部46は、駆動輪21の回転数を測定し、測定した駆動輪21の回転数などの情報に基づいて本体部2の位置を推定する。つまり、本実施形態では、本体部2の位置は、主として、事前に取得した電子地図と、後述する第1センサ461及び第2センサ462の検知結果と、いわゆるデッドレコニング(Dead-Reckoning:DR)とにより推定される。
【0046】
本実施形態では、検知部46は、
図2及び
図3に示すように、第1センサ461と、第2センサ462と、を有している。第1センサ461及び第2センサ462は、いずれもLiDARである。第1センサ461は、本体部2の後部に設けられており、本体部2の後方の状況を主として検知するために用いられる。第2センサ462は、本体部2の前部に設けられており、本体部2の前方の状況を主として検知するために用いられる。
【0047】
通信部47は、例えばWi-Fi(登録商標)等の通信方式で無線通信を行う通信モジュールを備えている。また、通信部47は、例えば無線局の免許が不要な通信方式で無線通信を行う通信モジュールを備えていてもよい。この種の通信方式としては、Bluetooth(登録商標)、ZigBee(登録商標)、特定小電力無線等の規格に準拠した通信方式がある。本実施形態では、通信部47は、上位システム5と通信する通信機能を有している。そして、本実施形態では、通信部47は、上位システム5が出力する電子地図、又は指令(搬送指令)などのデータを受信する。
【0048】
また、搬送装置1は、上記以外の構成、例えば、蓄電池の充電回路等を適宜備えている。
【0049】
上位システム5は、搬送システム100に含まれる複数の搬送装置1の各々の動作を管理する。つまり、上位システム5は、搬送装置1(本体部2及び支持部3)を、本体部2の外部から本体部2に送信される指令(搬送指令)により制御する。本実施形態では、上位システム5は、例えばサーバであって、プロセッサ及びメモリを有するコンピュータシステムを主構成とする。コンピュータシステムのメモリに記録されたプログラムを、コンピュータシステムのプロセッサが実行することにより、上位システム5の機能が実現される。プログラムは、メモリに記録されていてもよいし、インターネット等の電気通信回線を通して提供されてもよく、メモリカード等の非一時的記録媒体に記録されて提供されてもよい。
【0050】
(3)動作
以下、本実施形態に係る搬送システム100における搬送装置1の動作について説明する。
【0051】
(3.1)搬送装置の基本動作
まず、搬送装置1の基本動作について説明する。搬送装置1は、制御部41にて駆動部42を制御することで駆動輪21を駆動し、移動面200を自律移動する。このとき、搬送装置1は、メモリ(例えば、制御部41のメモリ)に記憶してある電子地図に従って、移動面200を自律移動する。電子地図には、搬送装置1の移動経路、及び搬送装置1の搬送対象であるパレットX1の位置が記録されている。電子地図は、例えば上位システム5にて更新された電子地図を通信部47にて受信することで、更新可能である。また、電子地図は、例えば上位システム5からの搬送指令を通信部47にて受信することで、搬送装置1が搬送指令に基づいて更新してもよい。また、搬送装置1は、移動中において、本体部2の周辺状況等を検知部46にて検知する。そして、搬送装置1は、例えば検知部46にて移動の妨げとなる障害物を検知した場合、移動経路を逸脱しない範囲内で障害物を避けるように自律移動する。
【0052】
また、搬送装置1は、搬送指令を受けている場合、搬送対象であるパレットX1の位置まで到達すると、一対の支持部3にパレットX1を支持させる。具体的には、一対の支持部3がパレットX1のいずれか1つの側壁にある一対の差込口X11と対向するように、本体部2の位置を調整する。そして、本体部2を後進させることにより、一対の支持部3を一対の差込口X11に差し込む。その後、一対の支持部3を上昇させることにより、パレットX1を持ち上げ、パレットX1を移動面200から浮いた状態とする。これにより、一対の支持部3にパレットX1を支持させることが可能である。
【0053】
(3.2)搬送装置による段差の回避動作
次に、搬送装置1による段差A1(ここでは、パレットX1の桟部X13)の回避動作について
図1A~
図1C、及び
図6を用いて説明する。以下の説明では、搬送装置1が搬送指令を受けており、搬送対象のパレットX1のある場所に向かっていると仮定する。
【0054】
検知部46にてパレットX1を検知するまで、つまり搬送装置1がパレットX1のある場所に到達するまでは(S1:No)、支持部3は、通常高さH0に位置する。また、車輪31は、第1状態にある。このため、搬送装置1は、車輪31が移動面200に接した状態で移動する。
【0055】
検知部46にてパレットX1を検知する、つまり搬送装置1がパレットX1の前に到達すると(S1:Yes)、搬送装置1は、支持部3がパレットX1の一対の差込口X11に差し込み可能な位置となるように、本体部2の位置を調整する。そして、搬送装置1は、リンク機構40により、支持部3を通常高さH0から第1高さH1へと上昇させる。このとき、車輪31は第1状態のままであるため、車輪31は、支持部3の上昇により移動面200から浮いた状態、つまり非接地状態となる(S2)。つまり、本体部2がパレット(搬送対象物)X1に支持部3を差し込み可能な領域に位置することを検知部46が検知した場合、リンク機構40(昇降制御部43)は、支持部3を第1高さH1に配置する。かつ、リンク機構40(車輪制御部44)は、車輪31が移動面200に接しない状態とする、準備動作を実行する。
【0056】
また、リンク機構40により、支持部3が上昇するのに伴って、補助輪22が本体部2に収容された状態から下向きに突出する。これにより、補助輪22は、非接地状態から接地状態に切り替わり、移動面200に接する(S3)。このため、駆動輪21及び補助輪22が移動面200に接するので、支持部3が移動面200に向かって沈み込みにくくなり、本体部2及び支持部3の姿勢が安定する。
【0057】
次に、搬送装置1は、駆動部42により本体部2を後進させる(S4)。すると、本体部2の後進に伴って支持部3が後進することにより、支持部3がパレットX1の差込口X11に差し込まれる。このとき、車輪31が非接地状態にあるため、支持部3は、車輪31がパレットX1の桟部X13(つまり、段差A1)に接することなく、パレットX1の差込口X11へと差し込まれる(
図1B参照)。このように、本実施形態では、車輪31を接地状態から非接地状態へ切り替えることにより、車輪31が段差A1(ここでは、パレットX1の桟部X13)と接触するのを回避している。
【0058】
その後、支持部3のパレットX1への差し込みが完了するまで(S5:No)、搬送装置1は、本体部2を後進させる。本実施形態では、搬送装置1は、検知部46にて本体部2とパレットX1との間の距離が所定の距離に達することを検知すると、支持部3のパレットX1への差し込みが完了したと判断する。
【0059】
支持部3のパレットX1への差し込みが完了すると(S5:Yes)、搬送装置1は、駆動部42による本体部2の移動を停止させる。そして、搬送装置1は、リンク機構40により、支持部3を第1高さH1から第2高さH2へと上昇させる(
図1C参照)。これにより、パレットX1が支持部3により上方へと持ち上げられ、パレットX1が移動面200から浮いた状態となる。
【0060】
このとき、車輪31は、リンク機構40により、支持部3が上昇するのに伴って、第1状態から第2状態に切り替わる。これにより、車輪31は、移動面200に向かって突出することで、パレットX1の開口X12を通して移動面200に接した状態、つまり接地状態となる(S6)。つまり、準備動作の後、リンク機構40(車輪制御部44)は、リンク機構40(昇降制御部43)が第1高さH1から第2高さH2に支持部3を移動させる前に、車輪31が移動面200に接する状態(接地状態)に切り替える。
【0061】
このように、本実施形態では、支持部3が通常高さH0にある場合、第1状態にある車輪31が移動面200に接する。また、支持部3が第2高さH2にある場合、第2状態にある車輪31が移動面200に接する。なお、支持部3が第1高さH1にある場合でも第2状態にある車輪31が移動面200に接し得る。つまり、車輪31は、支持部3の高さに依らず、移動面200に接することが可能である。
【0062】
また、リンク機構40により、支持部3が上昇するのに伴って、補助輪22が本体部2へと引っ込む。これにより、補助輪22は、接地状態から非接地状態に切り替わり、移動面200から浮いた状態となる(S7)。その後、搬送装置1は、支持部3にてパレットX1を支持しながら移動面200上を移動することで、パレットX1を搬送する。パレットX1の搬送時においては、搬送装置1は、駆動輪21及び車輪31が移動面200に接した状態で移動する。
【0063】
以下、本実施形態の搬送システム100の利点について、比較例の搬送システム300との比較を交えて説明する。比較例の搬送システム300では、
図7に示すように、支持部302の車輪303が常に移動面200に接した状態で搬送装置301が移動する点で、本実施形態の搬送システム100と相違する。また、比較例の搬送システム300は、搬送装置301が補助輪を備えていない点で、本実施形態の搬送システム100と相違する。
【0064】
比較例の搬送システム300では、支持部302をパレットX1の差込口X11に挿入する際に、支持部302の車輪303が移動面200に接した状態でパレットX1の桟部X13(つまり、段差A1)に接触する。このため、比較例の搬送システム300では、例えば、支持部302の車輪303がパレットX1の桟部X13を乗り越えずに、桟部X13を押すことで、結果としてパレットX1を支持できずに押してしまう可能性がある。この状況は、特にパレットX1に荷物が載せられていない場合に生じる可能性がある。
【0065】
また、比較例の搬送システム300では、例えば、支持部302の車輪303がパレットX1の桟部X13(つまり、段差A1)を乗り越えたとしても、車輪303が桟部X13を乗り越える際に車輪303が桟部X13に衝突することで、駆動輪304がスリップする可能性がある。このような場合、検知部では、駆動輪304の回転数を正確に測定することが難しい。そして、上記のように駆動輪304の回転数を正確に測定できない状況となれば、搬送装置301は、自分がどの位置にいるかを認識しにくくなる。その結果、搬送装置301は、自分とパレットX1との相対的な位置関係を認識しにくくなることで、パレットX1を搬送することが難しくなる可能性がある。
【0066】
このように、比較例の搬送システム300では、支持部302の車輪303が段差A1(パレットX1の桟部X13)に接触することを起因として、パレットX1の搬送に影響を与える可能性がある。
【0067】
一方、本実施形態の搬送システム100では、支持部3をパレットX1の差込口X11に差し込む際に、支持部3の車輪31を、移動面200に接する状態(接地状態)から移動面200に接しない状態(非接地状態)に切り替えることが可能である。このため、本実施形態では、支持部3の車輪31がパレットX1の桟部X13(つまり、段差A1)に接触しにくい、という利点がある。言い換えれば、本体部2の移動経路上に段差A1がある場合に、支持部3の車輪31が段差A1に接触しにくくなる、という利点がある。したがって、本実施形態では、上述の比較例の搬送システム300で生じ得る問題が生じにくい、つまり、パレットX1の搬送に影響を与えにくい、という利点がある。
【0068】
(4)変形例
上述の実施形態は、本開示の様々な実施形態の一つに過ぎない。上述の実施形態は、本開示の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。また、搬送システム100と同様の機能は、搬送方法、コンピュータプログラム、又はコンピュータプログラムを記録した非一時的記録媒体等で具現化されてもよい。
【0069】
一態様に係る搬送方法は、本体部2と、支持部3と、を備える搬送装置1による搬送方法である。本体部2は、駆動輪21により移動面200上を移動する。支持部3は、少なくとも1つの車輪31を有し、本体部2から延びて搬送対象物X1に差し込まれた状態で搬送対象物X1を支持する。この搬送方法は、本体部2が搬送対象物X1に支持部3を差し込み可能な領域に位置すると、支持部3を搬送対象物X1に差し込まれる高さに移動させる。また、この搬送方法は、車輪31を、移動面200に接する位置から、移動面200に接しない位置に移動させる。
【0070】
以下、上述の実施形態の変形例を列挙する。以下に説明する変形例は、適宜組み合わせて適用可能である。
【0071】
本開示における搬送システム100において、制御部41及び上位システム5等は、コンピュータシステムを含んでいる。コンピュータシステムは、ハードウェアとしてのプロセッサ及びメモリを主構成とする。コンピュータシステムのメモリに記録されたプログラムをプロセッサが実行することによって、本開示における制御部41及び上位システム5としての機能が実現される。プログラムは、コンピュータシステムのメモリに予め記録されてもよく、電気通信回線を通じて提供されてもよく、コンピュータシステムで読み取り可能なメモリカード、光学ディスク、ハードディスクドライブ等の非一時的記録媒体に記録されて提供されてもよい。コンピュータシステムのプロセッサは、半導体集積回路(IC)又は大規模集積回路(LSI)を含む1ないし複数の電子回路で構成される。ここでいうIC又はLSI等の集積回路は、集積の度合いによって呼び方が異なっており、システムLSI、VLSI(Very Large Scale Integration)、又はULSI(Ultra Large Scale Integration)と呼ばれる集積回路を含む。更に、LSIの製造後にプログラムされる、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、又はLSI内部の接合関係の再構成若しくはLSI内部の回路区画の再構成が可能な論理デバイスについても、プロセッサとして採用することができる。複数の電子回路は、1つのチップに集約されていてもよいし、複数のチップに分散して設けられていてもよい。複数のチップは、1つの装置に集約されていてもよいし、複数の装置に分散して設けられていてもよい。ここでいうコンピュータシステムは、1以上のプロセッサ及び1以上のメモリを有するマイクロコントローラを含む。したがって、マイクロコントローラについても、半導体集積回路又は大規模集積回路を含む1ないし複数の電子回路で構成される。
【0072】
また、制御部41及び上位システム5における複数の機能が、1つの筐体内に集約されていることは、制御部41及び上位システム5に必須の構成ではない。つまり、制御部41及び上位システム5の構成要素は、複数の筐体に分散して設けられていてもよい。更に、制御部41及び上位システム5の少なくとも一部の機能、例えば、上位システム5の一部の機能がクラウド(クラウドコンピューティング)等によって実現されてもよい。
【0073】
上述の実施形態では、支持部3をパレットX1へ差し込む際に、支持部3を上昇させることにより、車輪31を接地状態から非接地状態へ切り替えているが、これに限定する趣旨ではない。例えば、支持部3をパレットX1へ差し込む際に、支持部3を上昇させずに、車輪制御部44にて車輪31を上昇させることにより、車輪31を接地状態から非接地状態へ切り替えてもよい。つまり、昇降制御部43が車輪制御部44として機能していなくてもよい。
【0074】
上述の実施形態では、昇降制御部43、車輪制御部44、及び補助輪制御部45の全てが、1つの駆動源(電動機)により駆動されるリンク機構40で実現されているが、これに限定する趣旨ではない。例えば、昇降制御部43、車輪制御部44、及び補助輪制御部45は、それぞれ異なる駆動源により、互いに独立して動作してもよい。例えば、車輪制御部44であれば、支持部3の昇降に依らず、車輪31の接地状態と非接地状態とを切り替えるように、車輪31のみを制御してもよい。また、例えば、補助輪制御部45であれば、支持部3の昇降に依らず、補助輪22の接地状態と非接地状態とを切り替えるように、補助輪22のみを制御してもよい。
【0075】
上述の実施形態では、車輪31が接地状態にある場合、補助輪22を非接地状態とすることで、車輪31及び補助輪22の両方が移動面200に接する状況を回避しているが、これに限定する趣旨ではない。例えば、補助輪22は、常に移動面200に接し続けていてもよい。なお、本体部2及び支持部3の旋回の中心点は、駆動輪21、車輪31、及び補助輪22の全てが移動面200に接する場合と、駆動輪21及び車輪31が移動面200に接する場合とで異なる。このため、補助輪22が常に移動面200に接する態様では、上記の中心点のずれを考慮して本体部2の移動を制御するのが好ましい。
【0076】
上述の実施形態では、車輪31は、パレットX1を搬送していない時、及びパレットX1の搬送時のいずれにおいても移動面200に接しているが、これに限定する趣旨ではない。例えば、車輪31は、パレットX1の搬送時のみ移動面200に接する態様であってもよい。つまり、車輪31は、パレットX1を搬送していない時においては、移動面200に接していなくてもよい。この態様では、例えばカウンターウェイト等を用いて、駆動輪21のみで本体部2及び支持部3の姿勢を安定化させるのが好ましい。
【0077】
上述の実施形態では、駆動輪21は1つのみであるが、複数であってもよい。また、上述の実施形態では、支持部3は一対であるが、1つであってもよいし、更に多数であってもよい。また、上述の実施形態では、支持部3は一対の車輪31を有しているが、支持部3は、1つの車輪31を有していてもよいし、更に多数の車輪31を有していてもよい。また、上述の実施形態では、搬送装置1は一対の補助輪22を有しているが、搬送装置1は、1つの補助輪22を有していてもよいし、更に多数の補助輪22を有していてもよい。
【0078】
上述の実施形態では、本体部2が補助輪22を有しているが、これに限定する趣旨ではない。例えば、補助輪22は、支持部3に設けられていてもよい。この場合、補助輪22は、パレットX1の搬送の妨げとならない位置(つまり、本体部2寄りの位置)に設けられているのが好ましい。また、例えば、車輪31が移動面200から浮いた状態にて、支持部3を移動面200から浮かせた状態を維持可能であれば、搬送装置1は、補助輪22及び補助輪制御部45を有していなくてもよい。
【0079】
上述の実施形態では、車輪31は、支持部3がパレットX1に差し込まれた状態において、パレットX1の開口X12を通して移動面200に接しているが、これに限定する趣旨ではない。例えば、車輪31は、支持部3がパレットX1に差し込まれた状態において、パレットX1の外側にて移動面200に接してもよい。つまり、支持部3の長さ方向(前後方向)の寸法は、パレットX1の長さ方向(前後方向)の寸法よりも小さくてもよいし、大きくてもよい。
【0080】
上述の実施形態では、検知部46は、パレットX1と本体部2との間の距離が所定の距離に達することをもって、支持部3のパレットX1への差し込みの完了を検知しているが、これに限定する趣旨ではない。例えば、検知部46は、本体部2の後部に設けられて、パレットX1に押されるか否かによりオン/オフを切り替えるプッシュスイッチを有していてもよい。この態様では、検知部46は、プッシュスイッチがオンすることをもって、支持部3のパレットX1への差し込みの完了を検知することが可能である。
【0081】
上述の実施形態では、搬送装置1は、自律移動可能であるが、手動式のパレットトラックであってもよい。この態様では、搬送装置1は、本体部2、支持部3、昇降制御部43、及び車輪制御部44を備えていれば、上述の実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0082】
上述の実施形態では、複数の搬送装置1は上位システム5により管理されているが、これに限定する趣旨ではない。例えば、複数の搬送装置1は、上位システム5を介さずに互いに通信可能であってもよい。この態様では、複数の搬送装置1のうちの1以上の搬送装置1が、上位システム5の代わりに他の搬送装置1を管理する場合、上位システム5は不要である。つまり、搬送システム100は、上位システム5を備えていてもよいし、備えていなくてもよい。
【0083】
上述の実施形態では、搬送対象物X1はパレットX1であるが、これに限定する趣旨ではない。例えば、搬送対象物X1は、支持部3が差し込まれる差込口X11を有するケースであってもよい。つまり、搬送対象物X1は、支持部3が差込口X11に差し込まれた状態で支持部3によって支持可能であればよい。
【0084】
上述の実施形態では、段差A1の一例としてパレットX1の桟部X13を挙げているが、これに限定する趣旨ではない。つまり、段差A1は、パレットX1の桟部X13も含めて、搬送装置1の移動経路上に存在し得る。例えば、段差A1が、搬送装置1が通過する必要のある経路上に存在する場合、搬送装置1は、車輪31を接地状態から非接地状態に切り替えることにより、段差A1を回避する。なお、この場合、駆動輪21は段差A1を乗り越えることになるが、駆動輪21は車輪31と比較して径寸法が大きく、段差A1を乗り越える際に衝撃が発生しにくいので、比較例の搬送システム300の説明にて挙げたような問題は生じにくい。
【0085】
ここで、搬送装置1が通過する必要のある経路上にある段差A1は、例えば検知部46が3D-LiDARを有していれば、検知することが可能である。また、例えば、検知部46が本体部2の周辺を撮像するカメラを有していれば、段差A1に予め認識用のマーカを付しておき、検知部46にてマーカを撮像して画像認識により検知することでも、段差A1を検知することが可能である。
【0086】
上述の実施形態では、検知部46にて段差A1を検知しているが、これに限定する趣旨ではない。例えば、搬送装置1が有する電子地図に段差A1のある箇所を記しておけば、搬送装置1は、検知部46にて段差A1を検知しなくても、段差A1の手前に到達した時点で車輪31を接地状態から非接地状態に切り替えることが可能である。その他、搬送装置1が段差A1の手前に到達した時点で、上位システム5が、搬送装置1に対して車輪31を接地状態から非接地状態に切り替えるように指令を与えてもよい。
【0087】
(実施形態2)
(1)概要
本実施形態の搬送装置1は、実施形態1と同様に、本体部2と、支持部3と、を備えている。また、本実施形態の搬送装置1は、実施形態1とは異なり、補助輪22、車輪制御部44、及び補助輪制御部45を備える代わりに、
図8A及び
図8Bに示すように、サスペンション6を備えている。
【0088】
サスペンション6は、支持部3と車輪31との間に設けられて、車輪31へ伝わる衝撃を緩和する。つまり、本実施形態では、例えば本体部2の移動経路上に段差A1があり、車輪31が段差A1に接触する場合に、サスペンション6により車輪31へ伝わる衝撃が緩和される。
【0089】
上述のように、本実施形態では、サスペンション6により、支持部3の車輪31に伝わる衝撃が緩和される。このため、本実施形態では、本体部2の移動経路上にある段差A1に支持部3の車輪31が接触した場合に、搬送対象物X1の搬送に影響を与えにくい、という利点がある。
【0090】
(2)詳細
以下、本実施形態に係る搬送システム100Aについて
図8~
図11Cを用いて詳細に説明する。ただし、以下では、実施形態1と共通する箇所については説明を省略する。
【0091】
搬送装置1(搬送システム100A)は、上述したように、本体部2と、支持部3と、サスペンション6と、を備えている。また、本実施形態では、搬送装置1は、
図9に示すように、制御部41と、駆動部42と、昇降制御部43と、切替部48と、検知部46と、通信部47と、を更に備えている。本実施形態では、昇降制御部43及び切替部48は、リンク機構40により実現されている。
【0092】
一対の支持部3の各々の後端には、サスペンション6及びリンク機構40の一部であるアーム32を介して、一対の車輪31が取り付けられている。具体的には、
図8A及び
図8Bに示すように、アーム32の後端には、第1軸321が取り付けられている。そして、一対の車輪31は、第1軸321周りに回転するように、第1軸321に取り付けられている。ここで、アーム32は、支持部3に取り付けられた第2軸322周りに回転するように構成されている。また、アーム32の前端には、第3軸323が取り付けられている。第3軸323には、第3軸323周りに回転するローラ324が取り付けられている。ローラ324は、本体部2から支持部3の内側を通って延びているロッド33の後端に押されるようになっている。アーム32、ローラ324、及びロッド33は、いずれもリンク機構40の一部である。アーム32は、ローラ324がロッド33の後端に後向きに押されることにより、第2軸322周りに回転可能である。
【0093】
サスペンション6は、一対の支持部3ごとに、支持部3と一対の車輪31との間に設けられている。本実施形態では、サスペンション6は、
図8A及び
図8Bに示すように、移動面200と交差する方向(上下方向)を軸方向とするコイルスプリング61である。コイルスプリング61の軸方向の第1端(上端)は、支持部3に取り付けられている。コイルスプリング61の軸方向の第2端(下端)は、アーム32に取り付けられている。既に述べたように、アーム32の第1軸321には、一対の車輪31が取り付けられている。したがって、サスペンション6は、支持部3とアーム32との間に設けられることにより、間接的に支持部3と一対の車輪31との間に設けられていることになる。
【0094】
そして、サスペンション6は、支持部3とアーム32との間で撓むことにより、車輪31へ伝わる衝撃を緩和する。具体的には、車輪31が本体部2の移動経路上にある段差A1に接触した場合、段差A1から車輪31及びアーム32を介してサスペンション6に力が伝わり、サスペンション6が上方へと撓む。このため、車輪31は、アーム32と共に上方へと移動しながら、段差A1を乗り越える。このとき、段差A1から車輪31へと伝わる力の一部が、サスペンション6に吸収されることにより、車輪31へ伝わる衝撃が緩和される。なお、サスペンション6は、支持部3がパレットX1を支持していない状態において、支持部3が沈み込まない程度に、支持部3の荷重(例えば、数十[kg])を支えることが可能な強度を有していればよい。
【0095】
車輪31は、リンク機構40により、第1状態と、第2状態とに切り替えられる。第1状態は、
図10Aに示すように、アーム32の長さ方向が、支持部3の長さ方向(前後方向)とほぼ平行である状態における車輪31の状態である。第2状態は、
図10Bに示すように、アーム32が
図10Aに示す位置から時計回りに回転した状態における車輪31の状態である。第2状態にある車輪31は、第1状態にある車輪31よりも下向きに突出している。本実施形態では、リンク機構40がロッド33を前後方向に進退させ、アーム32を第2軸322周りに回転させることにより、車輪31が、第1状態と第2状態とのいずれかに切り替えられる。
【0096】
支持部3は、リンク機構40(昇降制御部43)により、本体部2に対して昇降可能である。本実施形態では、支持部3は、
図11A~
図11Cに示すように、第1高さH1、及び第2高さH2の少なくとも2つの高さに位置し得る。第2高さH2は、第1高さH1よりも高い。
【0097】
支持部3が第1高さH1に位置する場合、第1状態にある車輪31が移動面200に接する。したがって、この場合、本体部2及び支持部3は、駆動輪21及び第1状態にある車輪31が移動面200に接した状態で移動することになる。また、支持部3が第1高さH1に位置する場合、支持部3は、パレット本体X10の差込口X11に差し込み可能である。つまり、この場合、支持部3は、車輪31がパレットX1の桟部X13(段差A1)を乗り越えることにより、差込口X11に差し込まれる。
【0098】
支持部3が第2高さH2に位置する場合、支持部3は、パレットX1に差し込まれた状態において、パレットX1を持ち上げることにより、パレットX1を移動面200から浮かせることが可能である。このため、支持部3が第2高さH2に位置する場合、支持部3は、パレットX1を移動面200から浮かせた状態で支持する。したがって、この場合、搬送装置1は、パレットX1を支持部3にて支持しながらパレットX1を搬送することが可能である。また、支持部3が第2高さH2に位置する場合、第2状態にある車輪31が移動面200に接する。したがって、この場合、本体部2及び支持部3は、駆動輪21及び第2状態にある車輪31が移動面200に接した状態で移動することになる。
【0099】
制御部41は、駆動部42、昇降制御部43、切替部48、検知部46、及び通信部47を制御する。
【0100】
駆動部42は、駆動輪21に対して、直接的又は間接的に駆動力を与える。
【0101】
昇降制御部43は、第1高さH1と、第2高さH2との間で支持部3を昇降させる。本開示でいう「高さ」は、上下方向における、移動面200から支持部3の上面までの長さである。第1高さH1は、支持部3が搬送対象物X1に差し込まれる高さである。第2高さH2は、支持部3が搬送対象物X1を支持する高さである。つまり、第1高さH1にある支持部3は、移動面200に接している状態の搬送対象物X1に差し込み可能である。また、第2高さH2にある支持部3は、搬送対象物X1を移動面200から浮かせた状態で支持可能である。
【0102】
本実施形態では、昇降制御部43は、リンク機構40である。リンク機構40は、例えば、電動機(モータ)を含み、電動機で発生する駆動力にて、支持部3を上下方向に直進移動させることが可能な適宜の機構で実現される。また、リンク機構40は、支持部3と車輪31とを機械的に連結し、支持部3の移動に伴って車輪31を移動させることか可能な適宜の機構を含む。つまり、本実施形態では、リンク機構40により、支持部3が第1高さH1から第2高さH2へと移動すると(
図11B及び
図11C参照)、支持部3の上昇に伴ってロッド33が後方へと移動する。このため、ローラ324がロッド33に押されることにより、車輪31が、第1状態から第2状態に切り替わる(
図10A及び
図10B参照)。
【0103】
切替部48は、サスペンション6の衝撃緩和動作が有効である有効状態と、サスペンション6の衝撃緩和動作が無効である無効状態とを切り替える。本開示でいう「衝撃緩和動作」とは、サスペンション6が撓むことにより、車輪31へ伝わる衝撃を緩和する動作をいう。本実施形態では、切替部48は、支持部3の昇降に伴って有効状態と無効状態とを切り替える。特に、本実施形態では、切替部48は、支持部3が第1高さH1から第2高さH2へと移動すると、サスペンション6を有効状態から無効状態に切り替える。言い換えれば、本実施形態では、支持部3が第1高さH1にある場合、サスペンション6が有効状態であり、支持部3が第2高さH2にある場合、サスペンション6が無効状態となる。
【0104】
また、本実施形態では、切替部48は、リンク機構40により実現されている。具体的には、リンク機構40は、
図10A及び
図10Bに示すように、車輪31及びサスペンション6が取り付けられるアーム32と、ロッド33と、を有している。ここで、ロッド33は、既に述べたように、アーム32のローラ324を後向きに押すことにより、アーム32を第2軸322周りに回転させる。つまり、ロッド33は、アーム32に力を伝えることにより、アーム32を移動させる伝達部33である。以下では、特に断りのない限り、「伝達部33」を「ロッド33」という。そして、切替部48は、ロッド33をアーム32から離すことにより有効状態に、ロッド33をアーム32に接触させることにより無効状態に切り替える。
【0105】
つまり、
図10Aに示すように、ロッド33が前進しており、ロッド33とアーム32とが離れている状態(ロッド33とアーム32との間に隙間G1が空いている状態)では、アーム32は、ロッド33からの力が伝わらない状態にある。この状態では、ロッド33がアーム32の動きを阻害することがないので、サスペンション6は、自由に撓むことが可能である。したがって、この状態では、サスペンション6は有効状態にある。
【0106】
一方、
図10Bに示すように、ロッド33が後進しており、ロッド33とアーム32とが接触している状態では、アーム32は、ロッド33からの力が伝わる状態にある。この状態では、ロッド33がアーム32の動きを阻害するので、サスペンション6は、自由に撓むことを阻害される。したがって、この状態では、サスペンション6は無効状態にある。本実施形態では、ロッド33は、後進した状態を維持することにより、アーム32が第2軸322を軸として時計回りに回転した状態で、アーム32を固定している。このため、サスペンション6が元の状態(つまり、撓んでいない状態)に復帰しようとする動きがロッド33により阻害されることで、サスペンション6は、殆ど伸びきった状態を維持することになる。
【0107】
(3)動作
以下、本実施形態に係る搬送システム100Aにおける搬送装置1の動作について説明する。なお、搬送装置1の基本動作については実施形態1と同じであるので、ここでは説明を省略する。したがって、ここでは、搬送装置1による搬送動作について
図11A~
図11C、及び
図12を用いて説明する。以下の説明では、搬送装置1が搬送指令を受けており、搬送対象のパレットX1のある場所に向かっていると仮定する。
【0108】
検知部46にてパレットX1を検知するまで、つまり搬送装置1がパレットX1のある場所に到達するまでは(S11:No)、支持部3は、第1高さH1に位置する。また、車輪31は、第1状態にある。このため、搬送装置1は、車輪31が移動面200に接した状態で移動する。また、支持部3が第1高さH1にある場合、ロッド33は前進しているため、ロッド33とアーム32との間には隙間G1が空いている。このため、サスペンション6は、有効状態にある。
【0109】
検知部46にてパレットX1を検知する、つまり搬送装置1がパレットX1の前に到達すると(S11:Yes)、搬送装置1は、支持部3がパレットX1の一対の差込口X11に差し込み可能な位置となるように、本体部2の位置を調整する。次に、搬送装置1は、駆動部42により本体部2を後進させる(S12)。すると、本体部2の後進に伴って支持部3が後進することにより、支持部3がパレットX1の差込口X11に差し込まれる。このとき、車輪31がパレットX1の桟部X13(つまり、段差A1)に接触するが、サスペンション6が有効状態にあるため、サスペンション6が撓むことにより車輪31へ伝わる衝撃が緩和される。このため、車輪31がパレットX1の桟部X13を乗り越えながら、支持部3がパレットX1の差込口X11へと差し込まれる(
図11B参照)。
【0110】
その後、支持部3のパレットX1への差し込みが完了するまで(S13:No)、搬送装置1は、本体部2を後進させる。本実施形態では、搬送装置1は、検知部46にて本体部2とパレットX1との間の距離が所定の距離に達することを検知すると、支持部3のパレットX1への差し込みが完了したと判断する。
【0111】
支持部3のパレットX1への差し込みが完了すると(S13:Yes)、搬送装置1は、駆動部42による本体部2の移動を停止させる。そして、搬送装置1は、リンク機構40により、支持部3を第1高さH1から第2高さH2へと上昇させる(S14)。これにより、パレットX1が支持部3により上方へと持ち上げられ、パレットX1が移動面200から浮いた状態となる(
図11C参照)。
【0112】
このとき、車輪31は、リンク機構40により、支持部3が上昇するのに伴って、第1状態から第2状態に切り替わる。これにより、車輪31は、移動面200に向かって突出することで、パレットX1の開口X12を通して移動面200に接した状態となる。また、このとき、支持部3が第1高さH1から第2高さH2へと移動するのに伴って、ロッド33が後進することにより、アーム32が時計回りに回転した状態で固定される。したがって、サスペンション6が有効状態から無効状態に切り替わる(
図10B参照)。
【0113】
その後、搬送装置1は、支持部3にてパレットX1を支持しながら移動面200上を移動することで、パレットX1を搬送する。パレットX1の搬送時においては、搬送装置1は、駆動輪21及び車輪31が移動面200に接した状態で移動する。また、パレットX1の搬送時においては、サスペンション6は、無効状態を維持する。このため、パレットX1の搬送時においては、サスペンション6が撓みにくいので、支持部3が上下方向に移動しにくく、支持部3の姿勢の安定化が図られる。
【0114】
以下、本実施形態の搬送システム100Aの利点について、実施形態1でも述べた比較例の搬送システム300との比較を交えて説明する。比較例の搬送システム300では、
図7に示すように、搬送装置301がサスペンションを備えていない点で、本実施形態の搬送システム100Aと相違する。
【0115】
比較例の搬送システム300では、支持部302をパレットX1の差込口X11に挿入する際に、支持部302の車輪303は、支持部302と車輪303との位置関係が固定された状態で、パレットX1の桟部X13(つまり、段差A1)に接触する。このため、比較例の搬送システム300では、例えば、支持部302の車輪303がパレットX1の桟部X13を乗り越えずに、桟部X13を押すことで、結果としてパレットX1を支持できずに押してしまう可能性がある。この状況は、特にパレットX1に荷物が載せられていない場合に生じる可能性がある。
【0116】
また、比較例の搬送システム300では、例えば、支持部302の車輪303がパレットX1の桟部X13(つまり、段差A1)を乗り越えたとしても、車輪303が桟部X13を乗り越える際に車輪303が桟部X13に衝突することで、駆動輪304がスリップする可能性がある。このような場合、検知部では、駆動輪304の回転数を正確に測定することが難しい。そして、上記のように駆動輪304の回転数を正確に測定できない状況となれば、搬送装置301は、自分がどの位置にいるかを認識しにくくなる。その結果、搬送装置301は、自分とパレットX1との相対的な位置関係を認識しにくくなることで、パレットX1を搬送することが難しくなる可能性がある。
【0117】
このように、比較例の搬送システム300では、支持部302の車輪303が段差A1(パレットX1の桟部X13)に接触することを起因として、パレットX1の搬送に影響を与える可能性がある。
【0118】
一方、本実施形態の搬送システム100Aでは、支持部3をパレットX1の差込口X11に差し込む際に、サスペンション6が車輪31に伝わる衝撃を緩和する。このため、本実施形態では、支持部3の車輪31がパレットX1の桟部X13(つまり、段差A1)に接触した場合に、車輪31が桟部X13を押すことなく、桟部X13を乗り越えやすい、という利点がある。また、本実施形態では、車輪31が桟部X13に衝突しても、車輪31に伝わる衝撃がサスペンション6により緩和されるため、結果として駆動輪21に伝わる衝撃も緩和される。このため、本実施形態では、車輪31が桟部X13に衝突しても、駆動輪21がスリップしにくく、駆動輪21の回転数の測定に影響を及ぼしにくい。したがって、本実施形態では、上述の比較例の搬送システム300で生じ得る問題が生じにくい、つまり、パレットX1の搬送に影響を与えにくい、という利点がある。
【0119】
(4)変形例
上述の実施形態は、本開示の様々な実施形態の一つに過ぎない。上述の実施形態は、本開示の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。また、搬送システム100Aと同様の機能は、搬送方法、コンピュータプログラム、又はコンピュータプログラムを記録した非一時的記録媒体等で具現化されてもよい。
【0120】
一態様に係る搬送方法は、本体部2と、支持部3と、を備える搬送装置1による搬送方法である。本体部2は、駆動輪21により移動面200上を移動する。支持部3は、少なくとも1つの車輪31を有し、本体部2から延びて搬送対象物X1に差し込まれた状態で搬送対象物X1を支持する。この搬送方法は、支持部3が第1高さH1から第2高さH2へと移動すると、サスペンション6を、衝撃緩和動作が有効である有効状態から、衝撃緩和動作が無効である無効状態へ切り替える。第1高さH1は、支持部3が搬送対象物X1に差し込まれる高さである。第2高さH2は、支持部3が搬送対象物X1を支持する高さである。サスペンション6は、支持部3と車輪31との間に設けられて、車輪31へ伝わる衝撃を緩和する。
【0121】
以下、上述の実施形態の変形例を列挙する。以下では、実施形態1と共通する変形例については省略する。以下に説明する変形例は、適宜組み合わせて適用可能である。
【0122】
上述の実施形態において、サスペンション6は、
図13A及び
図13Bに示すように、サスペンション6の振動を減衰させるダンパ62を有していてもよい。ダンパ62は、伸縮式のシリンダダンパであって、ここでは、オイル式である。ダンパ62は、コイルスプリング61の内側に配置されており、軸方向の第1端(上端)が支持部3に、軸方向の第2端(下端)がアーム32に取り付けられている。この態様では、サスペンション6が撓んだ状態から元の状態に復帰する際の振動を、ダンパ62により減衰させることが可能である。したがって、この態様では、サスペンション6が振動し続けることによる支持部3の姿勢の乱れを抑えやすい、という利点がある。
【0123】
上述の実施形態では、ロッド33とアーム32との間に隙間G1を空けることにより、サスペンション6を有効状態としているが、これに限定する趣旨ではない。例えば、ロッド33とアーム32との間に隙間G1を空けていなくてもよい。つまり、ロッド33は、常にアーム32と接触していてもよい。この場合、ロッド33がアーム32に接触している状態においても、アーム32の移動が許容されていれば、サスペンション6を有効状態とすることが可能である。
【0124】
上述の実施形態では、切替部48は、支持部3の昇降に伴うロッド33の進退に応じて、ロッド33とアーム32とを接触させるか否かにより、サスペンション6の無効状態と有効状態とを切り替えているが、これに限定する趣旨ではない。例えば、切替部48は、ラックアンドピニオン、ボールねじ、ソレノイドを用いたフック機構、又はカム機構などの適宜の機構を用いて、支持部3の昇降に伴ってサスペンション6の無効状態と有効状態とを切り替えてもよい。
【0125】
上述の実施形態では、昇降制御部43及び切替部48の全てが、1つの駆動源(電動機)により駆動されるリンク機構40で実現されているが、これに限定する趣旨ではない。例えば、昇降制御部43及び切替部48は、それぞれ異なる駆動源により、互いに独立して動作してもよい。この場合、切替部48は、例えば上位システム5からの指令に応じて、サスペンション6の無効状態と有効状態とを切り替えてもよい。つまり、切替部48は、支持部3の昇降に依らず、サスペンション6の無効状態と有効状態とを切り替えてもよい。
【0126】
上述の実施形態では、支持部3がパレットX1を支持している状態においてのみ、サスペンション6を有効状態から無効状態に切り替えているが、これに限定する趣旨ではない。例えば、支持部3がパレットX1を支持していない状態においても、段差A1を乗り越える際にのみサスペンション6を有効状態に切り替え、それ以外の場合においてはサスペンション6を無効状態に切り替えてもよい。
【0127】
上述の実施形態において、搬送装置1は、切替部48を備えていなくてもよい。つまり、サスペンション6は、常に有効状態であってもよい。この場合、サスペンション6は、支持部3がパレットX1を支持している状態において、支持部3が沈み込まない程度に、支持部3及びパレットX1(荷物を含む)の荷重を支えることが可能な強度を有していればよい。
【0128】
上述の実施形態では、搬送装置1は、自律移動可能であるが、手動式のパレットトラックであってもよい。この態様では、搬送装置1は、本体部2、支持部3、及びサスペンション6を備えていれば、上述の実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0129】
上述の実施形態では、段差A1の一例としてパレットX1の桟部X13を挙げているが、これに限定する趣旨ではない。つまり、段差A1は、パレットX1の桟部X13も含めて、搬送装置1の移動経路上に存在し得る。例えば、段差A1が、搬送装置1が通過する必要のある経路上に存在する場合、搬送装置1は、車輪31に伝わる衝撃をサスペンション6により緩和しながら、段差A1を乗り越える。なお、この場合、駆動輪21は段差A1を乗り越えることになるが、駆動輪21は車輪31と比較して径寸法が大きく、段差A1を乗り越える際に衝撃が発生しにくいので、比較例の搬送システム300の説明にて挙げたような問題は生じにくい。
【0130】
上述の実施形態では、検知部46にて段差A1を検知しているが、これに限定する趣旨ではない。例えば、搬送装置1が有する電子地図に段差A1のある箇所を記しておけば、搬送装置1は、検知部46にて段差A1を検知しなくても、段差A1の手前に到達した時点でサスペンション6を無効状態から有効状態に切り替えることが可能である。その他、搬送装置1が段差A1の手前に到達した時点で、上位システム5が、搬送装置1に対してサスペンション6を無効状態から有効状態に切り替えるように指令を与えてもよい。
【0131】
(まとめ)
以上述べたように、第1の態様に係る搬送システム(100)は、本体部(2)と、支持部(3)と、昇降制御部(43)と、車輪制御部(44)と、を備える。本体部(2)は、駆動輪(21)により移動面(200)上を移動する。支持部(3)は、少なくとも1つの車輪(31)を有し、本体部(2)から延びて搬送対象物(X1)に差し込まれた状態で搬送対象物(X1)を支持する。昇降制御部(43)は、支持部(3)が搬送対象物(X1)に差し込まれる高さである第1高さ(H1)と、支持部(3)が搬送対象物(X1)を支持する高さである第2高さ(H2)との間で支持部(3)を昇降させる。車輪制御部(44)は、車輪(31)が移動面(200)に接しない状態と、車輪(31)が移動面(200)に接する状態とを切り替える。
【0132】
この態様によれば、本体部(2)の移動経路上に段差(A1)がある場合に、支持部(3)の車輪(31)が段差(A1)に接触しにくくなる、という利点がある。
【0133】
第2の態様に係る搬送システム(100)は、第1の態様において、支持部(3)と本体部(2)の移動経路上にある段差(A1)との位置関係を検知する検知部(46)を更に備える。
【0134】
この態様によれば、支持部(3)が段差(A1)に接近した場合に、車輪(31)を移動面(200)に接しない状態に切り替えることができるので、車輪(31)が段差(A1)に接触する可能性を低減することができる、という利点がある。
【0135】
第3の態様に係る搬送システム(100)では、第2の態様において、本体部(2)が搬送対象物(X1)に支持部(3)を差し込み可能な領域に位置することを検知部(46)が検知した場合、昇降制御部(43)は、支持部(3)を第1高さ(H1)に配置する。かつ、車輪制御部(44)は、車輪(31)が移動面(200)に接しない状態とする、準備動作を実行する。
【0136】
この態様によれば、支持部(3)を搬送対象物(X1)に差し込む際に、支持部(3)の車輪(31)が搬送対象物(X1)の桟部(X13)(段差(A1))に接触しにくくなる、という利点がある。
【0137】
第4の態様に係る搬送システム(100)では、第3の態様において、準備動作の後に、車輪制御部(44)は、昇降制御部(43)が第1高さ(H1)から第2高さ(H2)に支持部(3)を移動させる前に、車輪(31)が移動面(200)に接する状態に切り替える。
【0138】
この態様によれば、車輪(31)にて支持部(3)が支持する搬送対象物(X1)等の荷重を受けることができるので、支持部(3)の姿勢の安定化を図ることができる、という利点がある。
【0139】
第5の態様に係る搬送システム(100)では、第1~第4のいずれかの態様において、車輪制御部(44)は、支持部(3)と車輪(31)とを機械的に連結し、支持部(3)の昇降に伴って車輪(31)を移動させるリンク機構(40)である。
【0140】
この態様によれば、支持部(3)と連動して車輪(31)が移動するので、車輪(31)を動かすために新たな動力源を設ける必要がない、という利点がある。
【0141】
第6の態様に係る搬送システム(100)では、第1~第5のいずれかの態様において、本体部(2)又は支持部(3)は、駆動輪(21)と車輪(31)との間に位置する補助輪(22)を有する。
【0142】
この態様によれば、車輪(31)が移動面(200)に接地していない状態においても、支持部(3)の姿勢の安定化を図ることができる、という利点がある。
【0143】
第7の態様に係る搬送システム(100)は、第6の態様において、補助輪制御部(45)を更に備える。補助輪制御部(45)は、補助輪(22)が移動面(200)に接しない状態と、補助輪(22)が移動面(200)に接する状態とを切り替える。
【0144】
この態様によれば、補助輪(22)を必要な場合にのみ移動面(200)に接地させることができるので、補助輪(22)が本体部(2)の移動に影響を与えるのを防ぐことができる、という利点がある。
【0145】
第8の態様に係る搬送システム(100)では、第7の態様において、補助輪制御部(45)は、支持部(3)と補助輪(22)とを機械的に連結し、支持部(3)の昇降に伴って補助輪(22)を移動させるリンク機構(40)である。
【0146】
この態様によれば、支持部(3)と連動して補助輪(22)が移動するので、補助輪(22)を動かすために新たな動力源を設ける必要がない、という利点がある。
【0147】
第9の態様に係る搬送システム(100)では、第1~第8のいずれかの態様において、車輪(31)は、支持部(3)の高さに依らず、移動面(200)に接することが可能である。
【0148】
この態様によれば、搬送対象物(X1)を搬送する場合、及び搬送対象物(X1)を搬送しない場合のいずれにおいても、支持部(3)の姿勢の安定化を図ることができる、という利点がある。
【0149】
第10の態様に係る搬送システム(100)は、第1~第9のいずれかの態様において、本体部(2)及び支持部(3)を、本体部(2)の外部から本体部(2)に送信される指令により制御する上位システム(5)を更に備える。
【0150】
この態様によれば、上位システム(5)からの指令を受けて搬送対象物(X1)を搬送することができるので、予め本体部(2)が指令を記憶しておく必要がない、という利点がある。
【0151】
第11の態様に係る搬送方法は、本体部(2)と、支持部(3)と、を備える搬送装置(1)による搬送方法である。本体部(2)は、駆動輪(21)により移動面(200)上を移動する。支持部(3)は、少なくとも1つの車輪(31)を有し、本体部(2)から延びて搬送対象物(X1)に差し込まれた状態で搬送対象物(X1)を支持する。この搬送方法は、本体部(2)が搬送対象物(X1)に支持部(3)を差し込み可能な領域に位置すると、支持部(3)を搬送対象物(X1)に差し込まれる高さに移動させる。また、この搬送方法は、車輪(31)を、移動面(200)に接する位置から、移動面(200)に接しない位置に移動させる。
【0152】
この態様によれば、本体部(2)の移動経路上に段差(A1)がある場合に、支持部(3)の車輪(31)が段差(A1)に接触しにくくなる、という利点がある。
【0153】
第2~第10の態様に係る構成については、搬送システム(100)に必須の構成ではなく、適宜省略可能である。
【0154】
また、第12の態様に係る搬送システム(100A)は、本体部(2)と、支持部(3)と、サスペンション(6)と、を備える。本体部(2)は、駆動輪(21)により移動面(200)上を移動する。支持部(3)は、少なくとも1つの車輪(31)を有し、本体部(2)から延びて搬送対象物(X1)に差し込まれた状態で搬送対象物(X1)を支持する。サスペンション(6)は、支持部(3)と車輪(31)との間に設けられて、車輪(31)へ伝わる衝撃を緩和する。
【0155】
この態様によれば、本体部(2)の移動経路上にある段差(A1)に支持部(3)の車輪(31)が接触した場合に、搬送対象物(X1)の搬送に影響を与えにくい、という利点がある。
【0156】
第13の態様に係る搬送システム(100A)は、第1の態様において、サスペンション(6)の衝撃緩和動作が有効である有効状態と、サスペンション(6)の衝撃緩和動作が無効である無効状態とを切り替える切替部(48)を更に備える。
【0157】
この態様によれば、サスペンション(6)による衝撃緩和動作が不要な場合に、サスペンション(6)が機能しないようにサスペンション(6)の状態を切り替えることができる、という利点がある。
【0158】
第14の態様に係る搬送システム(100A)は、第2の態様において、昇降制御部(43)を更に備える。昇降制御部(43)は、支持部(3)が搬送対象物(X1)に差し込まれる高さである第1高さ(H1)と、支持部(3)が搬送対象物(X1)を支持する高さである第2高さ(H2)との間で支持部(3)を昇降させる。切替部(48)は、支持部(3)の昇降に伴って有効状態と無効状態とを切り替える。
【0159】
この態様によれば、サスペンション(6)を必要に応じて無効状態に切り替えることで、支持部(3)の姿勢の安定化を図ることができる、という利点がある。
【0160】
第15の態様に係る搬送システム(100A)では、第3の態様において、切替部(48)は、支持部(3)と車輪(31)とを機械的に連結し、支持部(3)の昇降に伴って車輪(31)を移動させるリンク機構(40)により実現される。
【0161】
この態様によれば、支持部(3)と連動してサスペンション(6)の状態が切り替えられるので、サスペンション(6)の状態を切り替えるタイミングを制御する必要がない、という利点がある。
【0162】
第16の態様に係る搬送システム(100A)では、第4の態様において、リンク機構(40)は、アーム(32)と、伝達部(ロッド)(33)と、を有している。アーム(32)には、車輪(31)及びサスペンション(6)が取り付けられる。伝達部(33)は、アーム(32)に力を伝えることによりアーム(32)を移動させる。切替部(48)は、伝達部(33)をアーム(32)から離すことにより有効状態に、伝達部(33)をアーム(32)に接触させることにより無効状態に切り替える。
【0163】
この態様によれば、伝達部(33)をアーム(32)に接触させる、又は伝達部(33)をアーム(32)から離すという簡易な構成により、サスペンション(6)の状態を切り替えることができる、という利点がある。
【0164】
第17の態様に係る搬送システム(100A)では、第3~第5のいずれかの態様において、切替部(48)は、支持部(3)が第1高さ(H1)から第2高さ(H2)へと移動すると、サスペンション(6)を有効状態から無効状態へ切り替える。
【0165】
この態様によれば、搬送対象物(X1)の搬送中においてサスペンション(6)を無効状態に切り替えることで、搬送対象物(X1)を支持する支持部(3)の姿勢の安定化を図ることができる、という利点がある。
【0166】
第18の態様に係る搬送システム(100A)は、第1~第6のいずれかの態様において、支持部(3)と本体部(2)の移動経路上にある段差(A1)との位置関係を検知する検知部(46)を更に備える。
【0167】
この態様によれば、支持部(3)が段差(A1)に接近した場合に、サスペンション(6)を無効状態から有効状態へ切り替えたり、本体部(2)の移動速度を遅くして車輪(31)への衝撃を小さくしたりすることができる、という利点がある。
【0168】
第19の態様に係る搬送システム(100A)は、第1~第7のいずれかの態様において、本体部(2)及び支持部(3)を、本体部(2)の外部から本体部(2)に送信される指令により制御する上位システム(5)を更に備える。
【0169】
この態様によれば、上位システム(5)からの指令を受けて搬送対象物(X1)を搬送することができるので、予め本体部(2)が指令を記憶しておく必要がない、という利点がある。
【0170】
第20の態様に係る搬送システム(100A)では、第1~第8のいずれかの態様において、サスペンション(6)は、サスペンション(6)の振動を減衰させるダンパ(62)を有する。
【0171】
この態様によれば、サスペンション(6)の振動に起因する支持部(3)の姿勢の乱れを抑えやすい、という利点がある。
【0172】
第21の態様に係る搬送方法は、本体部(2)と、支持部(3)と、を備える搬送装置(1)による搬送方法である。本体部(2)は、駆動輪(21)により移動面(200)上を移動する。支持部(3)は、少なくとも1つの車輪(31)を有し、本体部(2)から延びて搬送対象物(X1)に差し込まれた状態で搬送対象物(X1)を支持する。この搬送方法は、支持部(3)が第1高さ(H1)から第2高さ(H2)へと移動すると、サスペンション(6)を、衝撃緩和動作が有効である有効状態から、衝撃緩和動作が無効である無効状態へ切り替える。第1高さ(H1)は、支持部(3)が搬送対象物(X1)に差し込まれる高さである。第2高さ(H2)は、支持部(3)が搬送対象物(X1)を支持する高さである。サスペンション(6)は、支持部(3)と車輪(31)との間に設けられて、車輪(31)へ伝わる衝撃を緩和する。
【0173】
この態様によれば、本体部(2)の移動経路上にある段差(A1)に支持部(3)の車輪(31)が接触した場合に、搬送対象物(X1)の搬送に影響を与えにくい、という利点がある。
【0174】
第13~第20の態様に係る構成については、搬送システム(100A)に必須の構成ではなく、適宜省略可能である。
【符号の説明】
【0175】
1 搬送装置
2 本体部
21 駆動輪
22 補助輪
3 支持部
31 車輪
40 リンク機構
43 昇降制御部
44 車輪制御部
45 補助輪制御部
46 検知部
5 上位システム
100 搬送システム
200 移動面
A1 段差
H1 第1高さ
H2 第2高さ
X1 パレット(搬送対象物)