(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-28
(45)【発行日】2023-10-06
(54)【発明の名称】改修された防水構造の生産方法
(51)【国際特許分類】
E04D 7/00 20060101AFI20230929BHJP
E04G 23/03 20060101ALI20230929BHJP
【FI】
E04D7/00 G
E04G23/03
(21)【出願番号】P 2023027914
(22)【出願日】2023-02-27
(62)【分割の表示】P 2018121747の分割
【原出願日】2018-06-27
【審査請求日】2023-02-27
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】591037960
【氏名又は名称】シーカ・ジャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100166637
【氏名又は名称】木内 圭
(72)【発明者】
【氏名】谷原 大亮
(72)【発明者】
【氏名】小関 晋平
【審査官】山口 敦司
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-089768(JP,A)
【文献】特開2016-108935(JP,A)
【文献】特開昭63-126746(JP,A)
【文献】特開昭63-075248(JP,A)
【文献】特開2004-084466(JP,A)
【文献】特開2010-255336(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04D 7/00
E04G 23/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
改修された防水構造の生産方法であって、前記生産方法は、
アスファルトシートで構成されたシート防水層を有し、改修が必要な防水構造を準備する準備ステップと、
前記改修が必要な防水構造を改修する改修ステップと、を備え、
前記改修ステップは、
前記シート防水層の表面にプライマー液を塗布してプライマー層を形成する工程と、
前記プライマー層の上に塗膜防水層を形成する工程と、を有し、
前記塗膜防水層は、繊維基材と、前記塗膜防水層を形成する工程において繊維基材に含浸された樹脂組成物とを有し、
前記樹脂組成物は、ポリウレタン樹脂を含み、
前記シート防水層は、複数の前記アスファルトシートが並んで敷設されて構成され、
前記繊維基材は、ガラス繊維である長繊維で構成したチョップドストランドマットであり、
前記塗膜防水層を形成する工程において、前記プライマー層の表面に前記ポリウレタン樹脂を含む第1の液状防水材を塗布し、その上に前記繊維基材を重ね、前記繊維基材の上に前記ポリウレタン樹脂を含む第2の液状防水材を塗布し、前記第1の液状防水材および前記第2の液状防水材を硬化させることによって前記塗膜防水層を形成し、
前記ポリウレタン樹脂として1液型のポリウレタン樹脂を用いる、
防水構造の生産方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改修された防水構造の生産方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建造物の屋上などに適用される防水構造としては、アスファルトシートを用いたシート防水層(アスファルトルーフィング)を有する防水構造がある(例えば、特許文献1を参照)。シート防水層は、例えば、複数のアスファルトシートが並んで敷設されて構成される。シート防水層は経年により劣化するため、改修を行う必要がある。改修方法としては、例えば、シート防水層の表面に、絶縁層(ポリマーセメントモルタル層など)を形成した後、防水塗膜を形成する方法がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記改修方法では凹凸箇所などで防水塗膜が部分的に薄くなることがあり、この箇所において防水性能が低下する可能性があった。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、アスファルトシートを用いた防水構造を補修するにあたり、高い防水性能を確保できる、改修された防水構造の生産方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、アスファルトシートで構成されたシート防水層を有する防水構造を改修する方法であって、前記シート防水層の表面にプライマー液を塗布してプライマー層を形成する工程と、前記プライマー層の上に塗膜防水層を形成する工程と、を有し、前記塗膜防水層は、繊維基材と、前記繊維基材に含浸された樹脂組成物とを有し、前記樹脂組成物は、ポリウレタン樹脂を含む、防水構造の改修方法を提供する。
【0007】
前記シート防水層は、前記複数のアスファルトシートが並んで敷設されて構成され、前記複数のアスファルトシートのうち隣り合うアスファルトシートの一部が重なり合うことにより段差部が形成されていてもよい。前記アスファルトシートは、表面に砂が付着した砂付きアスファルトシートであってもよい。
【0008】
本発明の他の態様は、アスファルトシートによって構成されたシート防水層と、前記シート防水層の表面に形成されたプライマー層と、前記プライマー層の上に形成された塗膜防水層と、を有し、前記塗膜防水層は、繊維基材と、前記繊維基材に含浸された樹脂組成物とを有し、前記樹脂組成物は、ポリウレタン樹脂を含む、防水構造を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、塗膜防水層は、繊維基材と、繊維基材に含浸された樹脂組成物とを有する。そのため、塗膜防水層は、シート防水層の凹凸箇所においても局所的に薄くならず、十分な厚さを確保できる。従って、塗膜防水層の防水性の低下を防ぐことができる。よって、高い防水性能を有する防水構造を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1実施形態の改修方法により改修された防水構造を示す概略図である。
【
図2】改修前の防水構造の第1の例を示す概略図である。
【
図3】アスファルトシートの一例を示す概略図である。
【
図4】第1実施形態による防水構造の改修方法の概要を説明する工程図である。
【
図7】塗膜防水層に用いられる繊維基材の一例を示す模式図である。
【
図8】第1実施形態による防水構造の改修方法によって改修された防水構造を示す概略図である。
【
図9】改修前の防水構造の第2の例を示す概略図である。
【
図10】第2実施形態の改修方法によって改修された防水構造を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態の改修方法により改修された防水構造を示す概略図である。
図2は、改修前の防水構造の第1の例を示す概略図である。
図3は、アスファルトシートの一例を示す概略図である。
図1に示すように、第1実施形態による改修方法の対象は、下地101に設けられた既存の防水構造2Aである。第1実施形態による改修方法によって改修された防水構造1は、シート防水層2と、プライマー層3と、塗膜防水層4と、トップコート層5とを備えている。
【0012】
下地101は、例えば、コンクリート建造物の屋上におけるパラペット部102に囲まれた平場面103、およびパラペット部102の内面(立ち上がり面104)である。以下の説明における「上」および「下」は、
図1における上下方向に応じて定められる。
図1では、下地101の表面(平場面103および立ち上がり面104)に、防水構造2Aが設けられている。なお、平面視とは、下地101の平場面103に対して垂直な方向から見ることをいう。
【0013】
図2に示すように、防水構造2Aは、シート防水層2(アスファルトルーフィング)を有する。シート防水層2は、複数の砂付きアスファルトシート11が並んで敷設されて構成されている。
図3に示すように、砂付きアスファルトシート11は、例えば、アスファルトシート12と、砂13とを備える。アスファルトシート12は、例えば、繊維シートなどの芯材14にアスファルト材15が含浸および被覆されて構成されている。アスファルトシート12を構成するアスファルト材としては、改質アスファルトを使用できる。砂13は、アスファルトシート12の上面12a(表面)に付着している。砂13は、例えば、珪砂等の鉱物粉末である。砂13は、アスファルトシート12を保護する機能、および、アスファルトシート12どうしのブロッキングを防ぐ機能を有する。
【0014】
図2に示すように、砂付きアスファルトシート11は、例えば、帯状に形成されている。砂付きアスファルトシート11は、砂13(
図3参照)が付着した面を上にして敷設される。複数の砂付きアスファルトシート11のうち、隣り合う砂付きアスファルトシート11,11は、一部が重ねあわされている。詳しくは、複数の砂付きアスファルトシート11のうち、第1の砂付きアスファルトシート11Aの側縁部11a(側縁11bを含む帯状部分)の上に、第2の砂付きアスファルトシート11Bの側縁部11aが重ねあわされている。隣り合う砂付きアスファルトシート11,11は、側縁部11a,11aが重ねられているため、継ぎ目箇所における防水性能を高めることができる。
【0015】
砂付きアスファルトシート11,11の側縁部11a,11aが重ねあわされた部分を重なり部16という。重なり部16は、他の部分より厚くなっているため、重なり部16によって段差部17(凹凸箇所)が形成されている。段差部17は、重なり部16における第2の砂付きアスファルトシート11Bと、第1の砂付きアスファルトシート11Aとの高低差によって形成された不連続箇所である。
【0016】
以下、
図4~
図8を参照して、既存の防水構造2Aを改修する方法について説明する。
図4は、第1実施形態による防水構造の改修方法の概要を説明する工程図である。
図5は、
図4に続く工程図である。
図6は、塗膜防水層の一例を示す模式図である。
図7は、塗膜防水層に用いられる繊維基材の一例を示す模式図である。
図8は、第1実施形態による防水構造の改修方法によって改修された防水構造を示す概略図である。
【0017】
(第1工程:プライマー層の形成)
図4に示すように、砂付きアスファルトシート11の表面にプライマー層3を形成する。プライマー層3は、シート防水層2と、後述する塗膜防水層4(
図5参照)との接着性を高めるために形成される。プライマー層3は、例えばエポキシ系樹脂、エポキシウレタン系樹脂、ウレタン系樹脂、アクリルウレタン系樹脂、合成ゴム系樹脂、シラン系樹脂等の樹脂を主成分とすることが好ましい。プライマー層3は、砂付きアスファルトシート11の表面にプライマー液を塗布し、硬化させることによって形成する。
【0018】
(第2工程:塗膜防水層の形成)
次いで、
図5に示すように、プライマー層3の表面に塗膜防水層4を形成する。
図6に示すように、塗膜防水層4は、繊維基材41と、繊維基材41に含浸された樹脂組成物42とを有する。
塗膜防水層4の厚さT1は、例えば、1mm以上、12mm以下である。厚さT1が1mm以上であると、塗膜防水層4の防水性能を高めることができる。厚さT1が12mm以下であると、塗膜防水層4の硬化に要する時間を短くできるため工期を短くできる。
【0019】
図7に示すように、繊維基材41を構成する繊維41aとしては、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、金属繊維等の無機繊維;アラミド繊維、ポリエステル繊維、ナイロン繊維等の有機繊維等が使用できる。繊維基材41を構成する繊維41aとしては、特に、ガラス繊維を用いることが好ましい。
【0020】
繊維基材41は、長繊維で構成した織物、編物、組み物、引き揃えなどの形態であってよい。織物としては、平織、朱子織、綾織などの二軸織物、または三軸以上の多軸織物が挙げられる。繊維基材41は、不織布であってもよい。繊維基材41は、マット状に形成してもよい。繊維基材41の形態の具体例としては、ロービングクロス、チョップドストランドマットなどがある。塗膜防水層4における繊維基材41の含有量は、例えば30~40体積%としてよい。
【0021】
繊維基材41の目付量は、例えば、100g/m2以上、1000g/m2以下であってよい。目付量が100g/m2以上であると、塗膜防水層4が局部的に薄くなるのを抑制できる。目付量が1000g/m2以下であると、特に、樹脂組成物42を構成するポリウレタン樹脂が1液型である場合に、塗膜防水層4の硬化に要する時間を短くできるため工期を短くしやすい。
【0022】
繊維基材41の厚さT2は、例えば、0.1mm以上、10mm以下である。厚さT2が0.1mm以上であると、塗膜防水層4が局部的に薄くなるのを防ぐことができる。厚さT2が10mm以下であると、特に、樹脂組成物42を構成するポリウレタン樹脂が1液型である場合に、塗膜防水層4の硬化に要する時間を短くできるため工期を短くできる。塗膜防水層4の厚さT1に対する繊維基材41の厚さT2の比率T2/T1は、10%以上であることが好ましい。比率T2/T1が10%以上であると、塗膜防水層4が局部的に薄くなるのを抑制できる。
【0023】
樹脂組成物42は、ポリウレタン樹脂を含む。ポリウレタン樹脂としては、1液型(湿気硬化型)を用いてもよいし、2液型を用いてもよい。1液型(湿気硬化型)のポリウレタン樹脂は2つに分類できる。1つは空気中の水分と液状防水材中のイソシアネート成分が直接反応して硬化するタイプである。このタイプを第1タイプという。もう1つは、液状防水材中に少なくとも2つの成分、すなわち成分1と成分2とを含有するタイプである。成分2は、成分1とは反応しないが、空気中の水分によって成分2’となり、この成分2’が成分1と反応することによって硬化が進行する。一般に、成分2を潜在性硬化剤という。このタイプを第2タイプという。
【0024】
第1タイプの防水材は、例えば、ポリイソシアネートとポリオールとを含む。ポリイソシアネートとしては、例えばジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート(MDI)、カルボジイミド変性ジフェニルメタンジイソシアネート(液状MDI)、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート(粗製MDI)、2,4-トリレンジイソシアネート(2,4-TDI)、2,6-トリレンジイソシアネート(2,6-TDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート、3-イソシアナトメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(IPDI)等の低分子量イソシアネート化合物が挙げられる。ポリオールとしては、水酸基を2以上持つものであれば特に限定されないが、例えばポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリテトラメチレングリコール等が挙げられる。第1タイプの防水材は、例えば、ポリイソシアネートとポリオールとを反応させて得られるウレタンプレポリマーであってもよい。
【0025】
第2タイプの防水材は、例えば、ポリイソシアネート(成分1)と、潜在性硬化剤(成分2)とを含む。ポリイソシアネート(成分1)としては、第1タイプの防水材に使用できるポリイソシアネートとして例示したポリイソシアネートが使用できる。ポリイソシアネート(成分1)としては、上述のウレタンプレポリマーが使用できる。
【0026】
2液型の液状防水材は、例えば、ポリイソシアネートを含有する主剤と、イソシアネート基と反応性のある多官能活性水素化合物を含有する硬化剤とが現場において混ぜ合わされて使用される。
【0027】
樹脂組成物42は、溶剤、可塑剤、硬化触媒、充填材、酸化防止剤、難燃剤、安定剤、紫外線吸収剤、界面活性剤、着色顔料等の添加剤を含んでいてもよい。樹脂組成物42に添加される可塑剤としては、フタル酸エステル、アジピン酸エステル、セバシン酸エステル、アゼライン酸エステル、トリメリット酸エステル等のカルボン酸エステルが使用できる。特に、アジピン酸ジイソノニル(DINA)、フタル酸ジ-2-エチルヘキシル(DOP)、フタル酸ジイソノニル(DINP)等が好適である。これらは単独で用いてもよいし、2以上を併用してもよい。なお、樹脂組成物42は、ポリウレタン樹脂以外の樹脂を含んでいてもよい。
【0028】
可塑剤の使用量は、ポリイソシアネート100重量部に対して40質量部以下(好ましくは20質量部以下)が好適である。可塑剤の使用量が40質量部以下であると、シート防水層2の溶剤成分が塗膜防水層4に移行しにくくなる。可塑剤の使用量は、例えば5質量部以上である。可塑剤の使用量が5質量部以上であると、塗膜防水層4に十分な可塑性を与えることができる。
【0029】
図6に示すように、塗膜防水層4は、例えば、プライマー層3(
図5参照)の表面に液状防水材を塗布し、その上に繊維基材41を重ね、繊維基材41の上に液状防水材を塗布し、液状防水材を硬化させることによって形成することができる。液状防水材は、繊維基材41に含浸される。液状防水材は、繊維基材41の表面を被覆されてもよい。
液状防水材の塗布は、手塗り、圧送手塗り、圧送吹き付け(スプレー)などにより行うことができる。手塗りは、作業者が、例えばコテ、ローラー、レーキ等を使用して液状防水材をプライマー層3の表面に塗布する。圧送手塗りは、圧送ポンプ付き塗装装置から吐出された液状防水材を、コテ等を用いてプライマー層3の表面に塗り広げる。圧送吹き付けは、圧送ポンプ付き塗装装置から送液されてスプレーノズルから噴射される液状防水材をプライマー層3の表面に吹き付ける。
【0030】
(第3工程:トップコート層の形成)
次いで、
図8に示すように、塗膜防水層4の表面にトップコート層5を形成する。トップコート層5には、アクリル系の樹脂(例えば、アクリルウレタン樹脂、アクリルシリコン樹脂など)、フッ素樹脂、シリコン樹脂などが使用できる。トップコート層5は、紫外線等を遮って塗膜防水層4を保護すること、防水構造1の外観を良好にすることなどを目的として形成される。トップコート層5は、原料液を、手塗り、圧送手塗り、圧送吹き付け(スプレー)などにより塗膜防水層4の表面に塗布し、硬化させることによって形成する。これにより、
図1および
図8に示す防水構造1を得る。
【0031】
第1の実施形態の改修方法によれば、塗膜防水層4は、繊維基材41と、繊維基材41に含浸された樹脂組成物42とを有する。そのため、塗膜防水層4は、シート防水層2の段差部17においても局所的に薄くならず、十分な厚さを確保できる。従って、塗膜防水層4の防水性の低下を防ぐことができる。よって、高い防水性能を有する防水構造1を形成することができる。
【0032】
隣り合う砂付きアスファルトシート11,11の重なり部16は、シート防水層2の防水性能を高めるために有利となる構造であるが、重なり部16によって形成される段差部17は、その上に形成される層の厚さに影響を与える可能性がある。これに対し、第1の実施形態の改修方法によれば、繊維基材41を用いた塗膜防水層4によって、重なり部16がもたらす悪影響を回避し、塗膜防水層4の防水性能の低下を防ぐことができる。
【0033】
第1の実施形態の改修方法によれば、シート防水層2と塗膜防水層4との間にプライマー層3を形成する。プライマー層3は、シート防水層2の溶剤成分が塗膜防水層4に移行するのを妨げるため、シート防水層2の溶剤成分は塗膜防水層4に移行しにくくなる。よって、塗膜防水層4の防水性能の低下を防ぐことができる。
【0034】
第1の実施形態の改修方法によれば、塗膜防水層4は繊維基材41を有するため、薄層化する変形が起こりにくい。そのため、トップコート層5または塗膜防水層4の表面に雨滴が当たることによる凹部形成を抑制できる。したがって、天候が不安定な場合でも施工がしやすくなり、工期を短くするうえで有利となる。
【0035】
第1の実施形態の改修方法によれば、絶縁層(ポリマーセメントモルタル層など)を形成する必要がないため、工程を簡略にし、施工コストの低減および工期の短縮を図ることができる。
【0036】
[第2実施形態]
図9は、改修前の防水構造の第2の例を示す概略図である。
図10は、第2実施形態の改修方法によって改修された防水構造51を示す概略図である。以下、第1実施形態の改修方法との共通構成については、同じ符号を付して説明を省略する。
【0037】
図9に示すように、第2実施形態による改修方法の対象は、下地101に設けられた既存の防水構造52Aである。防水構造52Aは、シート防水層52を有する。シート防水層52は、複数の砂付きアスファルトシート11が並んで敷設されて構成されている。隣り合う砂付きアスファルトシート11,11は、側縁11b,11bが離れている。そのため、砂付きアスファルトシート11の側縁11bに段差部が形成されるとともに、側縁11b,11b間が凹所となる可能性がある。
【0038】
図10に示すように、シート防水層52の表面にプライマー液を塗布し、硬化させることによってプライマー層53を形成する。プライマー液の一部は、砂付きアスファルトシート11,11の側縁11b,11bの隙間に充てんされる。次いで、プライマー層53の上に塗膜防水層4を形成する。塗膜防水層4の上にトップコート層5を形成する。第2実施形態による改修方法によって改修された防水構造51は、シート防水層52と、プライマー層53と、塗膜防水層4と、トップコート層5とを備えている。
【0039】
第2の実施形態の改修方法によれば、塗膜防水層4は、繊維基材41と、繊維基材41に含浸された樹脂組成物42とを有するため、塗膜防水層4は、隣り合う砂付きアスファルトシート11,11の間の箇所においても厚さが変化しにくい。従って、塗膜防水層4の防水性の低下を防ぐことができる。よって、高い防水性能を有する防水構造51を形成することができる。
【0040】
以上、本発明の実施形態による防水施工方法について説明したが、本発明は上記実施形態に制限されることなく、本発明の範囲内で自由に変更が可能である。例えば、隣り合う砂付きアスファルトシートは、側縁どうしが突き合わせられていてもよい。塗膜防水層を構成する樹脂組成物は、ポリウレタン樹脂以外の樹脂を含んでいてもよい。実施形態の改修方法では、シート防水層の上にプライマー層を形成する。プライマー層は、シート防水層に対する塗膜防水層の密着性を高める作用があるため形成することが好ましいが、プライマー層がない場合でも塗膜防水層の防水性の低下を防ぐ効果は得られる。実施形態の改修方法では、シート防水層の凹凸箇所として、凸箇所である重なり部によって形成された段差部を例示したが、凹凸箇所はアスファルトシートの側縁の間に形成された凹所であってもよい。
【符号の説明】
【0041】
1,51 防水構造
2,52 シート防水層
2A,52A 防水構造
3 プライマー層
4 塗膜防水層
11 砂付きアスファルトシート(アスファルトシート)
16 重なり部
17 段差部
41 繊維基材
42 樹脂組成物