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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-28
(45)【発行日】2023-10-06
(54)【発明の名称】アイロン
(51)【国際特許分類】
   D06F 75/08 20060101AFI20230929BHJP
   D06F 75/26 20060101ALI20230929BHJP
【FI】
D06F75/08
D06F75/26
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020028770
(22)【出願日】2020-02-21
(65)【公開番号】P2021132687
(43)【公開日】2021-09-13
【審査請求日】2022-07-06
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】実松 渉
(72)【発明者】
【氏名】辻 敦志
(72)【発明者】
【氏名】鼻戸 由美
【審査官】高橋 祐介
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-076699(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0189991(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0126512(US,A1)
【文献】米国特許第04835363(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06F 75/08
D06F 75/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を出力する発光体と、
前記光を透過するベース面と、を備えるアイロンであって、
前記発光体と前記ベース面との間に可視光の透過を抑制するフィルタを備え
前記フィルタは、前記可視光を反射し、かつ、赤外線を透過させるように構成される
アイロン。
【請求項2】
前記フィルタは、前記ベース面の前記発光体側の面と接する
請求項1に記載のアイロン。
【請求項3】
前記光を前記ベース面に向けて反射する反射板をさらに備える
請求項1または2に記載のアイロン。
【請求項4】
前記発光体は、ハロゲンランプまたはカーボンヒータである
請求項1~3のいずれか一項に記載のアイロン。
【請求項5】
前記ベース面の温度を検出する検出部を備える
請求項1~4のいずれか一項に記載のアイロン。
【請求項6】
前記検出部が検出する前記ベース面の温度に応じて前記発光体の出力を制御する制御部をさらに備える
請求項5に記載のアイロン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、アイロンに関する。
【背景技術】
【0002】
ハロゲンランプ等の発光体を熱源として、衣類に対して熱を与えてアイロン掛けを実行できるアイロンが知られている。特許文献1は、衣類の色調に応じて発光体の発光量を調節するアイロンの構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平4-5998号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のアイロンでは、衣類が複数の色調から構成される場合には、適切に発光体の発光量を制御できず、衣類の焦げ付きまたは加熱不足が生じる場合がある。
本開示は、上記課題を解決するための発明であり、衣類に対して適切に熱を伝達できるアイロンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示に関するアイロンは、光を出力する発光体と、前記光を透過するベース面と、を備えるアイロンであって、前記発光体と前記ベース面との間に可視光の透過を抑制するフィルタを備える。
【発明の効果】
【0006】
本開示に関するアイロンによれば、衣類に対して適切に熱を伝達することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施の形態1のアイロンの側面図。
図2図1のアイロンの断面図。
図3図1のアイロンの電気的接続を示すブロック図。
図4】比較例のアイロンの断面図。
図5】比較例のアイロンを使用してアイロン掛けした場合の、生地温度の経時的変化を示すグラフ。
図6】実施の形態1のアイロンを使用してアイロン掛けした場合の、生地温度の経時的変化を示すグラフ。
図7】実施の形態2のアイロンの制御部が実行する第1制御の一例を示したフローチャート。
図8】実施の形態2のアイロンを使用してアイロン掛けした場合の、生地温度の経時的変化を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(アイロンが取り得る形態の一例)
本開示に関するアイロンは、光を出力する発光体と、前記光を透過するベース面と、を備えるアイロンであって、前記発光体と前記ベース面との間に可視光の透過を抑制するフィルタを備える。
可視光は、衣類の色が黒いほど吸収され、衣類の色が白いほど反射される。このため、可視光による加熱は衣類の色により衣類上の温度にばらつきが生じる。上記アイロンによれば、ベース面を可視光が透過することが抑制される。このため、衣類の色によらず衣類上の温度を一定に保つことができる。
【0009】
前記アイロンの一例によれば、前記フィルタは、前記可視光を反射し、かつ、赤外線を透過させる。
上記アイロンによれば、可視光を反射するので、ベース面が加熱されない。このため、ベース面の温度を一定に保つことができる。
【0010】
前記アイロンの一例によれば、前記フィルタは、前記ベース面の前記発光体側の面と接する。
上記アイロンによれば、簡素な構成でフィルタを配置できる。
【0011】
前記アイロンの一例によれば、前記光を前記ベース面に向けて反射する反射板をさらに備える。
上記アイロンによれば、発光体の光をより好適に出力できる。
【0012】
前記アイロンの一例によれば、前記発光体は、ハロゲンランプまたはカーボンヒータである。
上記アイロンによれば、簡易な構成で好適な出力を備える発光体を配置できる。
【0013】
前記アイロンの一例によれば、前記ベース面の温度を検出する検出部を備える。
ベース面の温度は、衣類の生地の温度と対応する。上記アイロンによれば、衣類の生地の温度を検出できる。
【0014】
前記アイロンの一例によれば、前記検出部が検出する前記ベース面の温度に応じて前記発光体の出力を制御する制御部をさらに備える。
上記アイロンによれば、発光体の出力をベース面の温度に応じて制御できるので、より好適に衣類に対して熱を伝達できる。
【0015】
(実施の形態1)
以下、図1~3を参照して実施の形態1のアイロン10について説明する。アイロン10は、衣類のしわを伸ばすアイロン機能を備える。アイロン機能は、熱およびアイロン10の圧力を衣類のしわに対して当てることで衣類のしわを伸ばす機能である。アイロン10を構成する主な要素は、ハウジング11およびベース面12である。ハウジング11は、アイロン10の外観を構成し、アイロン10を構成する他の要素の少なくとも1つを収容する。ハウジング11の形状は任意であるが、ユーザが持ちやすいように構成された把持部11Aが形成されることが好ましい。ハウジング11は、熱耐性に優れた任意の材料により構成される。一例では、ハウジング11を構成する材料はポリカーボネートである。ハウジング11は、内部空間を開放する開口部を備える。ハウジング11の開口部の形状と略一致するようにベース面12が設けられる。ベース面12は、熱および圧力を衣類に伝達する。ベース面12は、耐熱性および熱伝導性に優れた材料により構成される。一例では、ベース面12は耐熱ガラスにより構成される。
【0016】
アイロン10は、制御部20、記憶部30、操作部40、検出部50、電源部60、発光体70をさらに備える。制御部20、記憶部30、操作部40、検出部50、電源部60、発光体70の少なくとも1つは、ハウジング11の内部に保持される。
【0017】
制御部20は制御プログラムを実行する演算処理装置により構成される。演算処理装置は、例えばCPU(Central Processing Unit)およびMPU(Micro Processing Unit)の一方または両方により構成される。制御部20は、記憶部30、操作部40、検出部50、発光体70と無線または有線で通信できるように構成される。制御部20は、例えば電源部60から電力が供給され、操作部40からの操作信号が入力されることで制御を開始する。好ましくは、制御部20はハウジング11内において熱発生源である発光体70から離れた場所に設けられる。一例では、制御部20は、把持部11Aに対応する場所に設けられる。
【0018】
記憶部30は、制御部20が実行する種々の制御を実行するためのプログラム情報および制御情報を記憶する。記憶部30は、例えば不揮発性メモリおよび揮発性メモリを備える。制御情報は、衣類の種類と発光体70の出力量とを対応させた情報およびベース面12の温度と衣類の生地の温度とを対応させた情報を含む。衣類の種類は、例えば衣類の材料である。衣類の材料の一例は、ポリエステル、ナイロン、および、綿である。記憶部30は、例えば制御部20と同一の制御回路に設けられる。
【0019】
操作部40は、例えばユーザからの操作による操作信号を制御部20に対して出力する。操作信号は、例えば発光体70の発光量の調節に関する信号、および、衣類の種類の選択に関する信号を含む。操作部40の一部は、ユーザが操作しやすいようにハウジング11の外側に向けて突出するように構成される。操作部40は、例えばボタン、スイッチ、および、ダイヤルにより構成される。操作部40は、タッチパネルにより構成されていてもよい。
【0020】
検出部50は、アイロン10に関する種々の情報を検出する。検出部50は、例えば温度情報を検出する。検出部50は、例えばサーミスタにより構成される。検出部50が検出した温度情報の一例は、ベース面12の温度である。温度情報は、制御部20に電気信号として出力される。検出部50が設けられる位置は、例えばベース面12におけるハウジング11の内側である。好ましくは、検出部50の中心はアイロン10の垂直方向において発光体70の中心と一致する。検出部50は、アイロン10の使用回数や使用時間を検出するように構成されていてもよい。
【0021】
電源部60は、制御部20、記憶部30、操作部40、検出部50、および、発光体70に対して電力を供給する。図示される例では、電源部60は、商用電源等の外部電源である。電源部60は、ハウジング11の内部に設けられる2次電池の構成であってもよい。電源部60が外部電源である場合、アイロン10と電源部60とは、電力線61により接続される。
【0022】
発光体70は、光を発生させ衣類に対して熱を伝達する。発光体70は、電気により熱を発生させるハロゲンランプ、セラミックヒータ、または、カーボンヒータにより構成される。発光体70の形状は、任意の形状である。一例では、発光体70の形状は、棒状である。制御部20は、電源部60からの電力供給量を制御することで発光体70の発光量を制御する。好ましくは発光体70と制御部20との間には、断熱部材71が設けられる。断熱部材71は、例えばウレタンまたはポリスチレンにより構成される。
【0023】
アイロン10は、反射板80およびフィルタ90をさらに含む。反射板80およびフィルタ90は、ハウジング11内に設けられる。反射板80は、発光体70の光および熱がベース面12へ効率よく伝達されるための構成である。反射板80は、好ましくはベース面12の全体に対して発光体70の光および熱を反射するように構成される。反射板80の形状は、例えば中心に発光体70が設けられる椀状形状である。反射板80は、例えばステンレス鋼またはアルミニウム金属により構成される。
【0024】
フィルタ90は、発光体70から出力される所定の波長の光がベース面12を透過することを抑制する構成である。所定の光の一例は、可視光である。好ましくは、フィルタ90は、可視光を反射し、ベース面12から可視光が出力されない、または、出力量が低下するように構成される。フィルタ90の形状は、ベース面12の形状と略一致するように構成される。フィルタ90は、ベース面12の発光体70側に接触するように構成される。フィルタ90は、例えば誘電体多層膜を蒸着したダイクロイックミラーにより構成される。フィルタ90は、紫外線がベース面12を透過することを抑制するように構成されていてもよい。
【0025】
図4は、比較例のアイロン10の構成を示す。比較例のアイロン10は、フィルタ90を備えていない点以外は、実施の形態1のアイロン10の構成と同一である。比較例のアイロン10において、ベース面12を透過する光は可視光を含む。
【0026】
図5および図6を参照して、実施の形態1のアイロン10または比較例のアイロン10を使用した場合における生地の温度の上昇について説明する。生地の温度の経時的変化は、別途用意したサーモグラフィーカメラにより測定した。アイロン10は、発光体70としてハロゲンランプを含む。試験者は、操作部40の操作により衣類の種類として綿生地を選択し、制御部20は綿生地に応じて発光体70を制御した。
【0027】
図5および図6における実線は、綿生地を利用した黒色の衣類に対する結果を示す。図5および図6における破線は、綿生地を利用した青色の衣類に対する結果を示す。図5および図6における一点鎖線は、綿生地を利用した赤色の衣類に対する結果を示す。図5および図6における二点鎖線は、綿生地を利用した白色の衣類に対する結果を示す。
【0028】
図5に示されるように、比較例のアイロン10においては、照射時間が経過するごとに生地の温度のばらつきが大きくなった。一方で、図6に示されるように実施の形態1のアイロン10では、衣類の色に関わらず生地の温度が一定に保たれた。また、実施の形態1のアイロン10においては、生地の温度はアイロン機能の発揮に適した150~170℃の範囲内に収束した。
【0029】
本実施の形態1のアイロン10の作用について説明する。
ユーザは、操作部40を操作して電源部60から電力の供給を開始する。ユーザは、操作部40を操作して、アイロンがけの対象となる衣類の生地の種類を選択する。制御部20は、記憶部30に記憶される衣類の種類と発光体70の出力量とを対応させた情報に基づいて、発光体70の出力量を決定する。発光体70から出力された光は、大部分がベース面12に向かい、一部が反射板80に反射してベース面12に向かう。ベース面12の発光体70側に設けられるフィルタ90により、可視光が反射される。一方で赤外線はフィルタ90を通過して、ベース面12から出力される。衣類は、赤外線により加熱されアイロン10のベース面12が押し当てられることによって、衣類のしわが除去される。
【0030】
実施の形態1のアイロン10によれば、以下の効果が得られる。
発光体70から出力される赤外線により、衣類の色に関わらず生地温度を一定に保つことができる。このため、加熱のばらつきが生じにくく、衣類の焦げ付きや加熱不足が生じにくい。
【0031】
(実施の形態2)
図7および図8を利用して実施の形態2のアイロン10について説明する。実施の形態2のアイロン10は、制御部20が検出部50の検出温度に基づいて発光体70の出力を制御する第1制御を実行する点以外は、実施の形態1のアイロン10と同様である。このため、同一の構成に関しては、説明の一部または全部を省略する。
【0032】
制御部20は、検出部50から検出される温度情報に基づいて第1制御を実行する。温度情報は、例えばベース面12の温度である。制御部20は、例えば記憶部30に保存されるベース面12の温度と生地の種類ごと温度との対応を示す情報から、検出温度として生地の温度を推定する。制御部20は、検出温度が所定温度以上である場合に、発光体70の出力を低下させる。所定温度は、例えば170~200℃の任意の値である。一例では、180℃である。
【0033】
図7を参照して、制御部20が実行する第1制御の一例について説明する。
制御部20は、ステップS11において、検出部50から温度情報を取得する。制御部20は、記憶部30を参照して衣類の生地の温度である検出温度を推定する。制御部20は、ステップS12において検出温度が所定温度以上であるか否かを判定する。検出温度が所定温度以上であると判定した場合に、制御部20は、ステップS13の処理を実行する。検出温度が所定温度未満であると判定した場合、制御部20は処理を終了する。制御部20は、ステップS13において、発光体70の出力を低下させる。ステップS13の処理の終了後、制御部20は、制御を終了する。制御部20は、電源部60から電力が供給され、発光体70が出力する間に所定間隔で第1制御を実行する。
【0034】
図8における実線は制御部20による第1制御が実行されなかった場合を示す。図8における破線は、第1制御が実行された場合を示す。制御部20による第1制御が実行されない場合は、照射時間が経過するごとに生地温度が高くなった。一方で第1制御が実行された場合では、照射時間が長くなった場合でも、生地温度の上昇が抑制された。
【0035】
実施の形態2のアイロン10の作用について説明する。
ユーザは、操作部40を操作して電源部60から電力の供給を開始する。ユーザは、操作部40を操作して、対象となる衣類の生地の種類を選択する。制御部20は、記憶された衣類の生地の種類と生地温度とのテーブルから、発光体70の出力を決定する。発光体70から出力された光は、大部分がベース面12に向かい、一部が反射板80に反射してベース面12に向かう。ベース面12の発光体70側に設けられるフィルタ90により、可視光が反射される。一方で赤外線はフィルタ90を通過して、ベース面12から出力される。赤外線により衣類が加熱されしわが除去される。しわの除去に伴いベース面12が加熱される。検出部50が温度情報を検出し、制御部20は、温度情報に基づいて発光体70の出力を低下させる。
【0036】
実施の形態2のアイロン10によれば、以下の効果がさらに得られる。
検出温度が所定温度以上の場合、発光体70の出力を低下させるので衣類の焦げ付きが生じにくい。また、ベース面12の温度から生地温度を推定するので、新たに生地の温度を測定するセンサを設ける必要がないため、アイロン10の構成を簡素にすることができる。
【0037】
(変形例)
実施の形態に関する説明は本発明に関するアイロンが取り得る形態の例示であり、その形態を制限することを意図していない。本発明は実施の形態以外に例えば以下に示される実施の形態の変形例、および、相互に矛盾しない少なくとも2つの変形例が組み合わせられた形態を取り得る。
【0038】
・現在の検出部50が検出する情報を報知する報知部をさらに備えていてもよい。報知部は、例えば現在のベース面12の温度および現在のベース面12の温度から推定される生地の温度情報をユーザに報知する。アイロン10の電源部60が2次電池である場合、現在の2次電池のバッテリ残量を報知するよう構成されてもよい。
【0039】
・第1制御において、制御部20は、検出温度が所定温度よりも閾値以上低かった場合、発光体70の出力を増加させる制御を行ってもよい。閾値は、例えば20℃である。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本開示に関するアイロンは、業務用および家庭用の衣類のしわを除去するアイロンに利用できる。
【符号の説明】
【0041】
10 :アイロン
12 :ベース面
20 :制御部
70 :発光体
80 :反射板
90 :フィルタ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8