(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-28
(45)【発行日】2023-10-06
(54)【発明の名称】射出成形におけるガス抜き用コマ装置
(51)【国際特許分類】
B29C 45/34 20060101AFI20230929BHJP
B29C 45/26 20060101ALI20230929BHJP
B29C 33/10 20060101ALI20230929BHJP
【FI】
B29C45/34
B29C45/26
B29C33/10
(21)【出願番号】P 2020206336
(22)【出願日】2020-11-25
【審査請求日】2022-08-03
(73)【特許権者】
【識別番号】500283169
【氏名又は名称】有限会社 サンエイ・モールド
(72)【発明者】
【氏名】桜井 久次郎
【審査官】北澤 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-344391(JP,A)
【文献】特開2015-157464(JP,A)
【文献】特開2002-127206(JP,A)
【文献】特開平11-090609(JP,A)
【文献】国際公開第2009/122819(WO,A1)
【文献】特開2007-283498(JP,A)
【文献】特開2019-064008(JP,A)
【文献】特開平09-029788(JP,A)
【文献】特開2008-173776(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/00-45/84
B29C 33/00-33/76
B22D 15/00-17/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
射出成形用金型のスプルaの先端部分の金型内に埋設
され、スプルaの軸線に直角にスプルを取り囲む
平面的形状が正方形または矩形または円形もしくは多角形の排気前室2と
、金型Kに穿設した排気孔4の間を切り欠き溝s並びに排気溝gにより連結した構造の射出成形におけるガス抜き用コマ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は合成樹脂等の射出成形金型に適用することによって、成形時に金型内のガスを迅速に排出する事が出来る射出成形におけるガス抜き用コマ装置に関するのである。
【背景技術】
【0002】
本件発明者は過去20有余年にわたって射出成形特に合成樹脂等の射出成形における射出成形品の歩止まりの悪さを改良すべく研究を行ってきた。それらは特許或いは特許出願として公にされ、その結果発明者が到達したガス抜きの基本思想は業界に広く知られるようになり、今日に至っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第4085182号
【文献】特許第4096327号
【文献】特許第5413780号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
射出成形により加工される合成樹脂は多種多様の物が存在するが、これまで何らかの理由でガス抜きが困難だった樹脂にも本件発明者の技術思想を適用すると言う要求が多発しており、例えば加工温度が高いもの、製品の堆積が大きいもの、完成品の高い透明性が要求されるもの等々、樹脂材料毎また加工現場毎に各種の改良が必要になりつつある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
これまでは必要に応じて、成形に使用される金型のランナー部分や成形品を形成する金型の適当箇所から、
図9ならびに
図10のごとき一辺3ミリメートル程度の三角形二個により構成した断面V字型の切り欠き溝sとそれに連続する幅2/100ミリメートル程度の排気溝gにより金型内部の気体を排気口eして外部に排出し、金型内部の気圧を可能な限り理想状態まで引き下げる努力が行われてきた。
【0006】
このようなガス抜きのための構造は、金型一個一個の構造に従い適宜設置箇所を定めて金型の一部を切削したり、切削したピンを埋め込んだりして獲得していたが、その作業には理論で説明しがたい設置のためのノウハウが存在し、万人が手順通りに行えば最良の結果が得られると言う技術的理想とはかなりの乖離が存在する。
【0007】
専門の知識を有する者であれば誰もが簡単に設置でき、最大のガス抜き結果が得られるコマ装置を提供することによって、射出成形におけるガス抜きのより効率的で容易な実現を達成する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によると、金型の定められた箇所に一個の部品を埋設する簡単な設計で、金型内部のガス抜きを迅速確実に行えるため、金型内部に充填される溶融材料が金型内部で早期に安定しまた材料から発生するガスが材料を押し上げつつ材料の周囲を巡回する時間も短くなり、結果的に成形品表面に容認でいない瑕疵や高温溶融材料の焼け等が生じない効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図6】 本発明を適用すべき射出成形機の断面的説明図である。
【
図7】 本発明を適用すべき射出成形機の断面的説明図である。
【
図8】 本発明の基礎となるブロック体の斜面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に係る射出成形におけるガス抜き用コマ装置10の基礎ユニットと呼ぶ基本形態の最小単位は、
図8に示すごときブロック体1で、このブロック体1には、一辺略3ミリメートル程度の三角形二個により構成した断面V字型の切り欠き溝sとそれに連続する幅2/100ミリメートル程度の排気溝gが穿設されており、排気溝gは一端を切り欠き溝sにまた他端を排気口eに開口して両者間を連通させている。
【0011】
前述の基礎ユニットを、必要に応じて複数個併設してコマ装置10を形成し、そのコマ装置を射出成形機のスプルa先端に
図6のごとく埋設設置し、スプルaに流れ込んだ溶融材料の移動とそれ自身から発生するガスによるスプル内の気体圧力が上昇すると、その圧力が切り欠き溝sによりすべて排気溝gへ送り込まれ、大きく減圧されて排気口eから大気中へ放出される際の吸引力によって、スプルa、ランナーR、ゲートMを介して製品と成るべき空間K内部の気体をすべてを金型外部へ吸引放出して、溶融材料の金型内部への充填をガス圧の抵抗無しの状態で円滑に行わしめる。
【0012】
コマ装置の埋設設置箇所は任意に選択できるが、実際の金型設計上の利便性と大気中への排気通路の開口の自由性を考慮すると、
図6の射出成形機の固定型Fのスプルa先端にスプルaの軸線と直角に配置するのが合理的である。
【実施例1】
【0013】
図1に示す第一の実施例において、コマ装置10には中心のスプル孔a’を取り囲む平面正方形の排気前室2の四辺にそれぞれ三個の基礎ユニット1を合計12個配置した形状で、スプルaから排気前室2に溶融材料が供給されると、排気前室2内の大気並びにガスから成る型内部の気体は切り欠き溝sから排気溝gを介して排気口eへ押し出され、型内部を減圧吸引しつつ金型に設置した排気孔4(
図5参照)によって大気中に放出される。
【実施例2】
【0014】
図2に示す第二の実施例は、コマ装置10aが平面円形を呈しており、スプル孔a’の周囲の排気前室2も平面円形に成っている。排気前室2の周囲のリング状の立ち上がり部分に切り欠き溝s、排気溝gおよび排気口eをスプルaの軸線に直角に且つ軸線に対して放射状に複数配置されており、排気効果は実施例1の物と全く同様である。
【実施例3】
【0015】
図3に示す第三の実施例は、平面円形または多角形のコマ装置10bに対し、平面円形または多角形の排気前室2を取り囲むリング状の隆起部分3に、スプルaの軸線に対して放射状に切り欠き溝sと排気溝gを複数個穿設し、隆起部分3の外側に設けた周囲の空間を排気室e’としたもので、排気溝eの切削加工を省略することによってコマ装置10bの製造を容易にしたものである。
【実施例4】
【0016】
図4に示す第四の実施例は、第三の実施例の隆起部分3の内側に第二の隆起部分3’を嵌装した物で、二つの隆起部分それぞれに互いに一致する位置で切り欠き溝sと排気溝gが穿設されており、短い間隔で二回の減圧ガス抜きが行えるようにした物である。
【実施例5】
【0017】
図5に示す第五の実施例は、第一の実施例と同様の平面正方形のコマ装置10cにおいて、合計16箇所の切り欠き溝s・排気溝gおよび排気口eを設置したもので、金型Kのコマ装置10c周囲に穿設した排気孔4によって排気前室2内の空気およびガスはすべて大気中に排出される。
【産業上の利用可能性】
【0018】
本発明の基礎となる切り欠き溝s、排気溝gおよび排気口eを使用した射出成形における金型内部のガス抜き方法或いはそれに使用される各種ピン類その他の装置は、最初の発明以来20年の間に、電気・自動車・医療・ダイカスト金属加工等々の広い範囲で利用され、本件発明者にさらなる改良が求められているのが現在の状況で、本発明によりより簡単迅速な金型製作とそれによる歩止まりの良い射出成形品の確保が可能となる本発明の意味は、産業界全般にさらに多大な利用途を提供する事が明らかである。
【符号の説明】
【0019】
1 ブロック体
2 排気前室
3 隆起部分
4 排気孔
10 コマ装置
a スプル
g 排気溝
s 切り欠き溝
e 排気口