IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ パナソニックIPマネジメント株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-セパレータおよび非水電解質二次電池 図1
  • 特許-セパレータおよび非水電解質二次電池 図2
  • 特許-セパレータおよび非水電解質二次電池 図3
  • 特許-セパレータおよび非水電解質二次電池 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-28
(45)【発行日】2023-10-06
(54)【発明の名称】セパレータおよび非水電解質二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/451 20210101AFI20230929BHJP
   H01M 50/457 20210101ALI20230929BHJP
   H01M 50/443 20210101ALI20230929BHJP
   H01M 50/434 20210101ALI20230929BHJP
   H01M 50/446 20210101ALI20230929BHJP
   H01M 50/426 20210101ALI20230929BHJP
   H01M 50/463 20210101ALI20230929BHJP
   H01M 50/46 20210101ALI20230929BHJP
【FI】
H01M50/451
H01M50/457
H01M50/443 M
H01M50/434
H01M50/446
H01M50/426
H01M50/463 Z
H01M50/46
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020547945
(86)(22)【出願日】2019-05-08
(86)【国際出願番号】 JP2019018313
(87)【国際公開番号】W WO2020066108
(87)【国際公開日】2020-04-02
【審査請求日】2022-03-18
(31)【優先権主張番号】P 2018178980
(32)【優先日】2018-09-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】塚越 貴史
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 晋也
【審査官】森 透
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/118627(WO,A1)
【文献】特開2006-049114(JP,A)
【文献】特表2014-509777(JP,A)
【文献】特開2016-018773(JP,A)
【文献】特表2018-508093(JP,A)
【文献】特開2016-006718(JP,A)
【文献】韓国登録特許第1536560(KR,B1)
【文献】特開2014-035858(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M50/40-50/497
H01G11/00-11/86
H01M10/052
H01M10/0566
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極合材層を有する正極と、負極合材層を有する負極とを備えた非水電解質二次電池に用いられるように構成されたセパレータであって、
樹脂基材と、前記樹脂基材の一方の面全体を覆う第1耐熱層と、前記樹脂基材の他方の面の一部を覆う第2耐熱層と、前記樹脂基材の他方の面が前記第2耐熱層で覆われていない未被覆領域と、を備え、
前記未被覆領域が前記正極合材層と前記負極合材層のうちの一方に対向するように前記セパレータが前記正極と前記負極との間に設けられるように構成されており、
前記第1耐熱層及び前記第2耐熱層は、無機粒子とバインダーとを含み、各耐熱層中の前記無機粒子の含有量は50質量%~90質量%であり、前記バインダーの含有量は10質量%~50質量%であり、
前記未被覆領域は、前記樹脂基材の端部に連通している、セパレータ。
【請求項2】
前記バインダーはポリフッ化ビニリデンを含む、請求項1に記載のセパレータ。
【請求項3】
前記未被覆領域は、前記樹脂基材の短手方向の一端部から他端部に延びている短手方向未被覆領域を有する、請求項1又は2に記載のセパレータ。
【請求項4】
前記未被覆領域は直線状である、請求項1~3のいずれか1項に記載のセパレータ。
【請求項5】
前記未被覆領域の面積は、前記セパレータの他方の面の面積の5%~20%である、請求項1~4のいずれか1項に記載のセパレータ。
【請求項6】
前記未被覆領域は、前記樹脂基材の短手方向に対して傾斜している短手方向の一端部から他端部に伸びている短手方向未被覆領域を有する、請求項1~5のいずれか1項に記載のセパレータ。
【請求項7】
前記未被覆領域は前記負極合材層に対向するように構成されている、請求項1~6のいずれか1項に記載のセパレータ。
【請求項8】
求項1~のいずれか1項に記載のセパレータと、前記正極と、前記負極とを備え、
前記セパレータは前記正極と前記負極との間に配置されている、非水電解質二次電池。
【請求項9】
前記第1耐熱層が前記正極と対向している、請求項に記載の非水電解質二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、セパレータおよび非水電解質二次電池の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高出力、高エネルギー密度の二次電池として、正極、負極及び正極と負極との間に配置されたセパレータとを有する電極体と、非水電解質と、これらを収容する電池ケースとを備えた非水電解質二次電池が広く利用されている。
【0003】
しかし、非水電解質二次電池の高容量化のためにセパレータの薄膜化や電極の高密度化が図られているため、電池の製造時において、非水電解質が電極体内部へ浸透し難いことが課題となっている。電極体内部への非水電解質の浸透性が低い場合、電極体を収容した電池ケース内に非水電解質を注入した後、電池を長時間放置したり高温処理したりすることが必要であるため、製造コストが高くなる場合がある。また、長時間放置や高温処理等の際に電池内で副反応が生じ、電池性能が低下する虞もある。また、非水電解質が電極体内部へ十分に浸透されないと、電池の充放電中にLi析出等が起こり、電池の安全性が低下する虞もある。そのため、電極体内部への非水電解質の浸透性を向上させることは重要な課題である。
【0004】
例えば、特許文献1には、電極に凹凸を形成して、非水電解質の浸透経路を確保する技術が提案されている。
【0005】
また、例えば、特許文献2には、セパレータ上に、電極とセパレータとを接着させる接着部と未接着部よりなる空隙を形成し、当該空隙を電極の端部まで連通させて、非水電解質の浸透経路を確保する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第5088856号公報
【文献】特開2002-15773号公報
【発明の概要】
【0007】
ところで、非水電解質二次電池は、異物(例えば釘等の金属物)の突刺しによって異常発熱が起こると、セパレータが変形(収縮等)して、正極と負極とが直接接触したり、セパレータの絶縁性が維持されずに、異物を介して正極と負極との間に電流が流れて、電圧変動が生じたりする場合がある。いずれの場合も電池の更なる発熱に繋がり、電池の安全性が低下することになる。なお、特許文献2におけるセパレータ上の接着部は、電極とセパレータとを接着させることが目的であるため、耐熱性が低く、異物(例えば釘等の金属物)の突刺しによる異常発熱時のセパレータの変形等を抑制する機能はほとんどない。
【0008】
そこで、本開示の目的は、非水電解質の浸透性が高く、及び異物(例えば釘等の金属物)の突刺しによる異常発熱時のセパレータの変形や電池の電圧変動が抑制されるセパレータ、及び当該セパレータを備えた非水電解質二次電池を提供することにある。
【0009】
本開示の一態様であるセパレータは、正極合材層を有する正極と、負極合材層を有する負極とを備えた非水電解質二次電池に用いられるように構成されたセパレータであって、樹脂基材と、前記樹脂基材の一方の面全体を覆う第1耐熱層と、前記樹脂基材の他方の面の一部を覆う第2耐熱層と、前記樹脂基材の他方の面が前記第2耐熱層で覆われていない未被覆領域と、を備え、前記未被覆領域が前記正極合材層と前記負極合材層のうちの一方に対向するように前記セパレータが前記正極と前記負極との間に設けられるように構成されており、前記第1耐熱層及び前記第2耐熱層は、無機粒子とバインダーとを含み、各耐熱層中の前記無機粒子の含有量は50質量%~90質量%であり、前記バインダーの含有量は10質量%~50質量%であり、前記未被覆領域は、前記樹脂基材の端部に連通していることを特徴とする。
【0010】
本開示の一態様である非水電解質二次電池は、上記セパレータと、正極と、負極とを備え、前記セパレータは前記正極と前記負極との間に配置されていることを特徴とする。
【0011】
本開示の一態様によれば、非水電解質の浸透性が高く、及び異物(例えば釘等の金属物)の突刺しによる異常発熱時のセパレータの変形や電池の電圧変動が抑制されるセパレータ、及び当該セパレータを備えた非水電解質二次電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態の一例である非水電解質二次電池の模式斜視図である。
図2】実施形態の一例である電極体の模式断面図である。
図3】第2耐熱層側(樹脂基材の他方の面側)から見たセパレータの模式平面図である。
図4】第2耐熱層側(樹脂基材の他方の面側)から見たセパレータの他の一例を示す模式平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、実施形態の一例について詳細に説明する。実施形態の説明で参照する図面は、模式的に記載されたものであり、図面に描画された構成要素の寸法比率などは、現物と異なる場合がある。
【0014】
図1は、実施形態の一例である非水電解質二次電池の模式斜視図である。図1に示す非水電解質二次電池10は、角形電池であるが、本開示の非水電解質二次電池はこれに限定されるものではなく、例えば、円筒形電池、コイン形電池、ボタン形電池、ラミネート形電池等の従来公知の形態を適用できる。
【0015】
図1に示す非水電解質二次電池10は、電極体11と、非水電解質と、電池ケース14と、を備える。電極体11及び非水電解質は、電池ケース14内に収容されている。電極体11の具体的構成は後述するが、正極と、負極と、正極と負極との間に設けられたセパレータとを有する。
【0016】
電池ケース14は、上部に開口部を有する有底角形のケース本体15と、ケース本体15の開口部を塞ぐ封口体16と、正極と電気的に接続されている正極端子12と、負極と電気的に接続されている負極端子13とを有する。ケース本体15及び封口体16は、例えばアルミニウムを主成分とする金属材料で構成される。正極端子12及び負極端子13は、絶縁部材17を介して封口体16に固定されている。なお、一般的に、封口体16には、ガス排出機構(図示せず)が設けられている。電池ケース14の形態は上記に限定されるものではなく、円筒形、コイン形、ボタン形等の金属製ケース、樹脂シートをラミネートして形成された樹脂製ケース(ラミネート型)等の従来公知の形態を適用できる。
【0017】
図2は、実施形態の一例である電極体の模式断面図である。図2に示す電極体11は、矩形の正極20及び矩形の負極22が矩形のセパレータ24を介して交互に積層された積層型の電極体である。なお、電極体11の形態はこれに限定されるものではなく、例えば、正極20及び負極22がセパレータ24を介して巻回されてなる巻回型の電極体等でもよい。正極20、負極22及びセパレータ24の形状は矩形に限定されず、円形等でもよい。
【0018】
図2に示す正極20は、金属箔等の正極集電体26と、正極集電体26の両面に形成された正極合材層28とを備える。図2に示す負極22は、金属箔等の負極集電体30と、負極集電体30の両面に形成された負極合材層32とを備える。正極20及び負極22の各部材の詳細は後述する。
【0019】
図2に示すセパレータ24は、樹脂基材34と、樹脂基材34の一方の面全体を覆う第1耐熱層36と、樹脂基材34の他方の面の一部を覆う第2耐熱層38と、樹脂基材34の他方の面において第2耐熱層38で覆われていない未被覆領域40とを有する。未被覆領域40は樹脂基材34が露出した領域である。第1耐熱層36及び第2耐熱層38は、所定量の無機粒子及びバインダーを含む。無機粒子及びバインダーの含有量は後述する。
【0020】
樹脂基材34は、樹脂材料を主体とした基材であれば特に制限されるものではないが、例えば、PE(ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)等のポリオレフィン樹脂、PPS(ポリフェニレンサルファイド)樹脂、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)樹脂、PI(ポリイミド)樹脂等が挙げられる。特に、突き刺し強度が高いポリオレフィン樹脂を用いることが好ましい。樹脂基材34の厚さは任意であるが、例えば、5μm~30μmの範囲である。なお、樹脂材料は、樹脂基材34の質量の90質量%以上含まれることが好ましく、100質量%含まれることがより好ましい。
【0021】
図3は、第2耐熱層側(樹脂基材の他方の面側)から見たセパレータの模式平面図である。図3に示すように、樹脂基材34の他方の面上の未被覆領域40は、樹脂基材34の短手方向(矢印X)に沿って、短手方向の一端部から他端部に延びている短手方向未被覆領域40aから構成されている。短手方向未被覆領域40aは、樹脂基材34の短手方向の両端部と連通している。また、図3に示すように、未被覆領域40は、樹脂基材34の長手方向(矢印Y)に沿って、所定の間隔を空けて複数配置されていてもよい。すなわち、未被覆領域40と第2耐熱層38とが、樹脂基材34の長手方向に沿って交互に配置されていてもよい。
【0022】
図4は、第2耐熱層側(樹脂基材の他方の面側)から見たセパレータの他の一例を示す模式平面図である。図4に示すように、樹脂基材34の他方の面上の未被覆領域40は、樹脂基材34の短手方向に対して傾斜していてもよい。すなわち、未被覆領域40は、樹脂基材34の短手方向に対して傾斜しており、樹脂基材34の短手方向の一端部から他端部に延びる短手方向未被覆領域40aを有する。短手方向未被覆領域40aは、樹脂基材34の長手方向の両端部と連通している。なお、図4に示す未被覆領域40は、樹脂基材34の短手方向に対して傾斜しており、短手方向の一端部から長手方向の一端部、及び短手方向の他端部から長手方向の他端部に延びる短手方向未被覆領域40bを更に有する。短手方向未被覆領域40bは、短手方向の端部及び長手方向の端部と連通している。また、図4に示すように、未被覆領域40(短手方向未被覆領域40a,40b)は、樹脂基材34の長手方向に沿って、所定の間隔を空けて複数配置されていてもよい。すなわち、未被覆領域40(短手方向未被覆領域40a,40b)と第2耐熱層38とが、樹脂基材34の長手方向に沿って交互に配置されていてもよい。
【0023】
未被覆領域40は、平面視において、直線状、円弧状、波状等特に限定されるものではないが、形成の容易さ等の点で、線状であることが好ましい。
【0024】
樹脂基材34の端部と連通する未被覆領域40は、非水電解質が通る流路として機能するものであるので、電極体11を収容した電池ケース14内に非水電解質を注液した際、非水電解質は、樹脂基材34の端部から未被覆領域40を通って、電極体11内部に浸透する。したがって、樹脂基材34の表面に、樹脂基材34の端部と連通する未被覆領域40を有するセパレータ24を用いることにより、電極体11内への非水電解質の浸透性を高めることができる。
【0025】
図での説明は省略するが、樹脂基材34の他方の面上の未被覆領域40は、樹脂基材34の長手方向に沿って、長手方向の一端部から他端部に延びている長手方向未被覆領域から構成されていてもよい(すなわち、長手方向未被覆領域は、樹脂基材34の長手方向の両端部と連通している)。しかし、長手方向未被覆領域は、非水電解質が通る流路としては長い流路となるため、効率的に非水電解質を電極体11内部に浸透させることが困難となる場合がある。したがって、樹脂基材34の長手方向の一端部から他端部に延びる長手方向未被覆領域より、樹脂基材34の短手方向の一端部から他端部に延びる短手方向未被覆領域の方が、電極体11内への非水電解質の浸透性を高める点で好ましい。
【0026】
耐熱層(第1耐熱層36及び第2耐熱層38)は、耐熱性及び絶縁性を有するものであり、異物(例えば釘等の金属物)の突刺しによる電池の異常発熱時のセパレータ24の変形(収縮等)やセパレータ24の絶縁性の低下を抑える機能を有する。しかし、樹脂基材34の両面に、耐熱層だけでなく未被覆領域40を設けた場合、異物の突刺しによる電池の異常発熱時に、セパレータ24が変形したり、セパレータ24の絶縁性が低下して電池の電圧変動が生じたりする。このようなセパレータ24の変形を抑制したり絶縁性の低下を抑えて電池の電圧変動を抑制したりするには、本実施形態の第1耐熱層36のように、樹脂基材34の一方の面全体が、耐熱層で覆われている必要がある。第2耐熱層38の総面積は、セパレータ24の他方の面の面積の70%~95%であることが好ましい(未被覆領域40の面積は、セパレータ24の他方の面の面積の5%~20%であることが好ましい)。
【0027】
また、異物の突刺しによる電池の異常発熱は、主に正極20側で起こるため、図2に示すように、樹脂基材34の一方の面全体を覆う第1耐熱層36が正極20と対向していることが好ましい。これにより、異物の突刺しによる電池の異常発熱時のセパレータ24の変形を効果的に抑制することができる。
【0028】
第1耐熱層36中の無機粒子の含有量は、50質量%~90質量%であり、好ましくは60質量%~80質量%であり、第1耐熱層36中のバインダーの含有量は、10質量%~50質量%であり、好ましくは20質量%~40質量%である。また、第2耐熱層38中の無機粒子の含有量は、50質量%~90質量%であり、好ましくは60質量%~80質量%であり、第2耐熱層38中のバインダーの含有量は、10質量%~50質量%であり、好ましくは20質量%~40質量%である。第1耐熱層36及び第2耐熱層38において、無機粒子の含有量が50質量%未満及びバインダーの含有量が50質量%超であると、耐熱層中の無機粒子の含有量が少なく、十分な耐熱効果が得られないため、異物の突刺しによる電池の異常発熱時におけるセパレータ24の変形を十分に抑制することができない。また、第1耐熱層36及び第2耐熱層38において、無機粒子の含有量が90質量%超及びバインダーの含有量が10質量%未満であると、耐熱層の機械的強度が低下するため、ひび割れ等が起こり、層を維持することが困難となる。
【0029】
無機粒子は、金属酸化物粒子、金属窒化物粒子、金属フッ化物粒子及び金属炭化物粒子等が挙げられる。金属酸化物粒子としては、例えば、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化ニッケル、酸化珪素、酸化マンガン等が挙げられる。金属窒化物粒子としては、例えば、窒化チタン、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化マグネシウム、窒化ケイ素等が挙げられる。金属フッ化物粒子としては、例えば、フッ化アルミニウム、フッ化リチウム、フッ化ナトリウム、フッ化マグネシウム、フッ化カルシウム、フッ化バリウム等が挙げられる。金属炭化物粒子としては、例えば、炭化ケイ素、炭化ホウ素、炭化チタン、炭化タングステン等が挙げられる。なお、これらは、1種単独でもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0030】
バインダーとしては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)やポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニル(PVF)などの含フッ素樹脂、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン-テトラフルオロエチレン共重合体やエチレン-テトラフルオロエチレン共重合体などの含フッ素ゴム、スチレン-ブタジエン共重合体およびその水素化物、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体およびその水素化物、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体およびその水素化物、メタクリル酸エステル-アクリル酸エステル共重合体、スチレン-アクリル酸エステル共重合体、アクリロニトリル-アクリル酸エステル共重合体、エチレンプロピレンラバー、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニルなどのゴム類、ポリフェニレンエーテル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリアミド、ポリエステル、ポリアクリロニトリル、セルロース、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、ポリアクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル、ポリビニルアルコールなどの樹脂、カルボキシメチルセルロース(CMC)、アクリルアミド、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、グアーガム、アルギン酸ナトリウム、カラギーナン、キサンタンガムおよびこれらの塩などの水溶性高分子等が挙げられる。これらの中では、耐熱性等の点で、ポリフッ化ビニリデンが好ましい。なお、これらは1種単独でもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0031】
セパレータ24の製造方法の一例を説明する。無機粒子、バインダーを含むスラリーを樹脂基材34の一方の面全体に塗布した後、乾燥して第1耐熱層36を形成する。次に、樹脂基材34の他方の面に、短冊状のマスキングテープを樹脂基材34の長手方向に所定の間隔を空けて複数貼り付けた後、上記スラリーを樹脂基材34の他方の面全体に塗布し、乾燥した後、マスキングテープを剥がして、第2耐熱層38及び未被覆領域40を形成する。
【0032】
以下に、正極20、負極22、及び非水電解質について説明する。
【0033】
正極20を構成する正極集電体26には、アルミニウムなどの正極20の電位範囲で安定な金属の箔、当該金属を表層に配置したフィルム等が用いられる。
【0034】
正極20を構成する正極合材層28は、正極活物質を含む。また、正極合材層28は、正極活物質の他に、導電材及びバインダーを含むことが好適である。正極20の厚みは、例えば、10μm以上である。
【0035】
正極20は、例えば、正極活物質、導電材及びバインダーを含む正極合材スラリーを調製し、この正極合材スラリーを正極集電体26上に塗布、乾燥して正極合材層28を形成し、この正極合材層28を加圧成形することにより作製できる。
【0036】
正極活物質は、例えば、リチウム遷移金属酸化物等が例示できる。リチウム遷移金属酸化物を構成する金属元素は、たとえば、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、カルシウム(Ca)、スカンジウム(Sc)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、ガリウム(Ga)、ゲルマニウム(Ge)、イットリウム(Y)、ジルコニウム(Zr)、錫(Sn)、アンチモン(Sb)、タングステン(W)、鉛(Pb)、およびビスマス(Bi)から選択される少なくとも1種である。これらの中では、Co、Ni、Mn、Alから選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0037】
導電材としては、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、黒鉛等の炭素材料が例示できる。これらは、単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0038】
バインダーとしては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)等のフッ素樹脂、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリイミド、アクリル樹脂、ポリオレフィン等が例示できる。また、これらの樹脂と、カルボキシメチルセルロース(CMC)又はその塩、ポリエチレンオキシド(PEO)等が併用されてもよい。これらは、単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0039】
負極22を構成する負極集電体30には、銅などの負極22の電位範囲で安定な金属の箔、当該金属を表層に配置したフィルム等を用いることができる。
【0040】
負極22を構成する負極合材層32は、負極活物質を含む。また、負極合材層32は、負極活物質の他に、バインダーを含むことが好適である。負極22の厚みは、例えば、10μm以上である。
【0041】
負極22は、例えば、負極活物質、バインダー等を含む負極合材スラリーを調整し、この負極合材スラリーを負極集電体30上に塗布、乾燥して負極合材層32を形成し、この負極合材層32を加圧成形することにより作製できる。
【0042】
負極活物質としては、リチウムイオンを可逆的に吸蔵、放出できるものであれば特に限定されず、例えば天然黒鉛、人造黒鉛等の炭素材料、ケイ素(Si)、錫(Sn)等のリチウムと合金化する金属、又はSi、Sn等の金属元素を含む合金、複合酸化物などを用いることができる。これらは、単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0043】
バインダーとしては、正極20の場合と同様にフッ素樹脂、PAN、ポリイミド、アクリル樹脂、ポリオレフィン等を用いることができる。水系溶媒を用いて合材スラリーを調製する場合は、CMC又はその塩、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、ポリアクリル酸(PAA)又はその塩、ポリビニルアルコール(PVA)等を用いることが好ましい。
【0044】
[非水電解質]
非水電解質は、非水溶媒と、非水溶媒に溶解した溶質(電解質塩)とを含む。非水溶媒には、例えばエステル類、エーテル類、ニトリル類、ジメチルホルムアミド等のアミド類、ヘキサメチレンジイソシアネート等のイソシアネート類及びこれらの2種以上の混合溶媒等を用いることができる。非水溶媒は、これら溶媒の水素の少なくとも一部をフッ素等のハロゲン原子で置換したハロゲン置換体を含有していてもよい。
【0045】
上記エステル類の例としては、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート等の環状炭酸エステル、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、メチルプロピルカーボネート、エチルプロピルカーボネート、メチルイソプロピルカーボネート等の鎖状炭酸エステル、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン等の環状カルボン酸エステル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、プロピオン酸メチル(MP)、プロピオン酸エチル等の鎖状カルボン酸エステルなどが挙げられる。
【0046】
上記エーテル類の例としては、1,3-ジオキソラン、4-メチル-1,3-ジオキソラン、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、プロピレンオキシド、1,2-ブチレンオキシド、1,3-ジオキサン、1,4-ジオキサン、1,3,5-トリオキサン、フラン、2-メチルフラン、1,8-シネオール、クラウンエーテル等の環状エーテル、1,2-ジメトキシエタン、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジヘキシルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、メチルフェニルエーテル、エチルフェニルエーテル、ブチルフェニルエーテル、ペンチルフェニルエーテル、メトキシトルエン、ベンジルエチルエーテル、ジフェニルエーテル、ジベンジルエーテル、o-ジメトキシベンゼン、1,2-ジエトキシエタン、1,2-ジブトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、1,1-ジメトキシメタン、1,1-ジエトキシエタン、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチル等の鎖状エーテル類などが挙げられる。
【0047】
上記ニトリル類の例としては、アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、バレロニトリル、n-ヘプタニトリル、スクシノニトリル、グルタロニトリル、アジボニトリル、ピメロニトリル、1,2,3-プロパントリカルボニトリル、1,3,5-ペンタントリカルボニトリル等が挙げられる。
【0048】
上記ハロゲン置換体の例としては、フルオロエチレンカーボネート(FEC)等のフッ素化環状炭酸エステル、フッ素化鎖状炭酸エステル、フルオロプロピオン酸メチル(FMP)等のフッ素化鎖状カルボン酸エステルなどが挙げられる。
【0049】
電解質塩の例としては、LiBF、LiClO、LiPF、LiAsF、LiSbF、LiAlCl、LiSCN、LiCFSO、LiCFCO、Li(P(C)F)、LiPF6-x(C2n+1(1<x<6,nは1又は2)、LiB10Cl10、LiCl、LiBr、LiI、クロロボランリチウム、低級脂肪族カルボン酸リチウム、Li、Li(B(C)F)等のホウ酸塩類、LiN(SOCF、LiN(C2l+1SO)(C2m+1SO){l,mは0以上の整数}等のイミド塩類などが挙げられる。電解質塩は、これらを1種単独で用いてもよいし、複数種を混合して用いてもよい。電解質塩の濃度は、例えば非水溶媒1L当り0.8~1.8モルである。
【実施例
【0050】
以下、実施例により本開示をさらに説明するが、本開示はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0051】
<実施例>
[正極の作製]
正極活物質として、LiNi1/3Co1/3Mn1/3で表されるリチウム遷移金属酸化物を用い、当該正極活物質を94質量%と、アセチレンブラックを4質量%と、ポリフッ化ビニリデンを2質量%とを混合し、さらにN-メチル-2-ピロリドン(NMP)を適量加えて、正極合材スラリーを調製した。次に、アルミニウム箔からなる正極集電体のリードが接続される部分を残して、正極合材スラリーを塗布し、塗膜を乾燥させた。塗膜を圧延した後、所定の電極サイズに切断し、正極集電体の両面に正極合材層が形成された正極を作製した。
【0052】
[負極の作製]
負極活物質として黒鉛とSiOを96/4の質量比で混合した混合物を用い、当該負極活物質を98質量%と、SBRを1質量%と、CMCを1質量%とを混合し、さらに水を適量加えて、負極合材スラリーを調製した。次に、銅箔からなる負極集電体のリードが接続される部分を残して、負極合材スラリーを塗布し、塗膜を乾燥させた。塗膜を圧延した後、所定の電極サイズに切断し、負極集電体の両面に負極合材層が形成された負極を作製した。
【0053】
[セパレータの作製]
ポリフッ化ビニリデンを50質量%と、酸化アルミニウムを50質量%とを混合し、さらにN-メチル-2-ピロリドン(NMP)を適量加えて、耐熱層用スラリーを調製した。次にポリエチレンからなる厚み12μmの樹脂基材上の一方の面全体に、耐熱層用スラリーを塗布し、乾燥させて、第1耐熱層を形成した。その後、樹脂基材の他方の面に、樹脂基材の長手方向に沿って塗布部(5cm幅)と未塗布部(5mm幅)が交互に存在するように耐熱層用スラリーを塗布し、乾燥させて、第2耐熱層と未被覆領域を形成した。
【0054】
[非水電解質の調製]
エチレンカーボネート(EC)と、フッ化エチレンカーボネート(FEC)と、ジエチルカーボネート(DEC)とを、27:3:70の体積比で混合した混合溶媒にビニレンカーボネート(VC)を1質量%添加し、LiPFを1.2モル/Lの割合で溶解させた。これを非水電解質として用いた。
【0055】
[試験セルの作製]
上記負極および上記正極にリードをそれぞれ取り付け、上記セパレータを介して各電極を1枚ずつ交互に積層した積層型の電極体を作製した。作製した電極体をアルミニウムラミネートシートで構成される外装体に挿入して、105℃で2時間30分真空乾燥した後、上記非水電解質を注入し、外装体の開口部を封止して試験セル(ラミネートセル)を作製した。試験セルの設計容量は640mAhである。
【0056】
<比較例1>
セパレータの作製において、樹脂基材の一方の面全体及び他方の面全体に、耐熱層用スラリーを塗布して、樹脂基材の両面全体に耐熱層を形成したこと以外は、実施例と同様にセパレータを作製し、当該セパレータを用いて実施例1と同様に試験セルを作製した。
【0057】
<比較例2>
セパレータの作製において、樹脂基材の一方面及び他方の面に、樹脂基材の長手方向に沿って塗布部(5cm幅)と未塗布部(5mm幅)が交互に存在するように耐熱層用スラリーを塗布して、樹脂基材の両面に耐熱層及び未被覆領域を形成したこと以外は、実施例1と同様にセパレータを作製し、当該セパレータを用いて実施例と同様に試験セルを作製した。
【0058】
<非水電解質の浸透性評価>
実施例、比較例1及び2の試験セルを作製してから15分後に分解し、セパレータの濡れを目視で確認した。セパレータの全面が濡れていれば、電極体内への非水電解質の浸透性が高いセルと言える。
【0059】
<安全性評価>
実施例、比較例1及び2の試験セルを、25℃の温度環境下、0.5Itの定電流で電池電圧が4.3Vになるまで定電流で充電した後、4.3Vで電流値が1/20Itになるまで定電圧で充電した。充電状態の試験セルを25℃の環境下で、Φ1mmの釘を用い、1.0mm/sec.の速度で釘刺し試験を行い、試験前後での電圧変化およびセパレータの変形の有無を評価した。釘刺し試験前の電圧と釘刺ししてから5分後の電圧変化が0.1V以上または、セパレータの変形がある場合を安全性NG、電圧変化が0.1V以下かつセパレータの変形が無い場合を安全性OKとした。
【0060】
表1に、実施例、比較例1及び2の非水電解質の浸透性評価、安全性評価の結果をまとめた。
【0061】
【表1】
【0062】
表1の評価結果から分かるように、実施例は、比較例1より非水電解質の浸透性が高く、比較例2より安全性が高い結果となった。したがって、実施例1のセパレータを用いることで、非水電解質の浸透性が高まり、異物の突刺しによる異常発熱時のセパレータの変形や電池の電圧変動が抑えられると言える。
【符号の説明】
【0063】
10 非水電解質二次電池
11 電極体
12 正極端子
13 負極端子
14 電池ケース
15 ケース本体
16 封口体
17 絶縁部材
20 正極
22 負極
24 セパレータ
26 正極集電体
28 正極合材層
30 負極集電体
32 負極合材層
34 樹脂基材
36 第1耐熱層
38 第2耐熱層
40 未被覆領域
40a,40b 短手方向未被覆領域
図1
図2
図3
図4