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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-28
(45)【発行日】2023-10-06
(54)【発明の名称】電力システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/38 20060101AFI20230929BHJP
   H02J 1/00 20060101ALI20230929BHJP
   H02J 7/34 20060101ALI20230929BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20230929BHJP
   H02J 7/35 20060101ALI20230929BHJP
   H02J 3/32 20060101ALI20230929BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20230929BHJP
   H02M 3/00 20060101ALI20230929BHJP
   G05F 1/67 20060101ALI20230929BHJP
【FI】
H02J3/38 130
H02J1/00 306B
H02J7/34 D
H02J7/00 L
H02J7/35 K
H02J3/38 120
H02J3/38 160
H02J3/32
H02J1/00 304G
H02J1/00 304H
H02M7/48 E
H02M3/00 H
G05F1/67 A
H02M7/48 T
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019019857
(22)【出願日】2019-02-06
(65)【公開番号】P2020127339
(43)【公開日】2020-08-20
【審査請求日】2021-09-14
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123102
【弁理士】
【氏名又は名称】宗田 悟志
(72)【発明者】
【氏名】吉武 晃
(72)【発明者】
【氏名】加藤 友美
(72)【発明者】
【氏名】狩川 拓也
(72)【発明者】
【氏名】則竹 良典
【審査官】赤穂 嘉紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-175888(JP,A)
【文献】特開2014-128047(JP,A)
【文献】特開2003-339118(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 1/00-1/16
H02J 3/00-5/00
H02J 7/00-7/12
H02J 7/34-7/36
H02M 7/48
H02M 3/00
G05F 1/67
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電、蓄電、配電のうちの少なくとも1つを実行可能な第1制御対象に接続されるとともに、直流バスにも接続される第1電力変換装置と、
発電、蓄電、配電のうちの少なくとも1つを実行可能な第2制御対象に接続されるとともに、前記直流バスにも接続される第2電力変換装置とを備え、
前記第1電力変換装置は、前記直流バスの電圧を、第1上側しきい値と第1下側しきい値で挟まれた第1範囲に入れるための第1安定化用指令値と、前記第1安定化用指令値とは別の第1制御用指令値とをもとに導出した第1制御値により、前記第1制御対象の電力制御を実行し、
前記第2電力変換装置は、前記直流バスの電圧を、第2上側しきい値と第2下側しきい値で挟まれた第2範囲に入れるための第2安定化用指令値と、前記第2安定化用指令値とは別の第2制御用指令値とをもとに導出した第2制御値により、前記第2制御対象の電力制御を実行し、
前記第1上側しきい値は前記第2上側しきい値よりも大きく、
前記第1下側しきい値は前記第2下側しきい値よりも小さ
前記第1電力変換装置は、前記第1制御用指令値と前記第1安定化用指令値とを選択的に切りかえることによって、前記第1制御値を導出し、
前記第1電力変換装置は、前記第1制御用指令値が非存在である場合、前記第1安定化用指令値を前記第1制御値とし、前記第1制御用指令値が存在する場合、前記第1制御用指令値を前記第1制御値とする、
電力システム。
【請求項2】
前記第1電力変換装置は、外部からの入力を受けつけた場合に、当該入力に対応した前記第1制御用指令値を導出する、
請求項に記載の電力システム。
【請求項3】
前記第1電力変換装置は、前記第1電力変換装置内の状態が規定範囲以上になる場合に、前記第1制御用指令値を導出する、
請求項1または2に記載の電力システム。
【請求項4】
前記第1電力変換装置は、複数種類の前記第1制御用指令値を導出可能である場合、前記直流バスから第1電力変換装置に入力される電力、あるいは第1電力変換装置から前記直流バスに出力される電力が小さくなる前記第1制御用指令値を導出する、
請求項1から3のいずれか1項に記載の電力システム。
【請求項5】
前記第1制御対象は電力系統である、
請求項1からのいずれかに記載の電力システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、直流バスに機器が接続される電力システムに関する。
【背景技術】
【0002】
太陽光、風力等の自然エネルギーを利用した発電装置と蓄電池とを接続したシステムにおいて、発電装置が発電した電力を蓄電池に充電する場合に、余剰電力が発生することがある。余剰電力により、システムの直流バスの電圧が上昇すると、システムの不安定な動作が発生しうる。そのため、発電装置と蓄電池では、直流バスの電圧に応じて、制御方式が切りかえられる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-46532号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
発電装置、蓄電池、電力系統のそれぞれには電力変換装置が接続され、複数の電力変換装置が直流バスに接続される。このようなシステムの構成を簡易にするために、複数の電力変換装置は、接続された発電装置等に対する電力制御を独立して実行する。このような状況下において、システムを安定化させるために複数電力変換装置が直流バスの電圧に応じて電力制御を実行する場合、電力制御の効率が低下する。一方、各電力変換装置が接続される発電装置、蓄電池、電力系統は、それぞれ異なった役割を有する。このような機器の役割を考慮しながら、電力制御の効率の低下を抑制することが求められる。
【0005】
本開示はこうした状況に鑑みなされたものであり、その目的は、システムを安定化しながら、電力制御の効率の低下を抑制する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示のある態様の電力システムは、発電、蓄電、配電のうちの少なくとも1つを実行可能な第1制御対象に接続されるとともに、直流バスにも接続される第1電力変換装置と、発電、蓄電、配電のうちの少なくとも1つを実行可能な第2制御対象に接続されるとともに、直流バスにも接続される第2電力変換装置とを備える。第1電力変換装置は、直流バスの電圧を、第1上側しきい値と第1下側しきい値で挟まれた第1範囲に入れるための第1安定化用指令値と、第1安定化用指令値とは別の第1制御用指令値とをもとに導出した第1制御値により、第1制御対象の電力制御を実行し、第2電力変換装置は、直流バスの電圧を、第2上側しきい値と第2下側しきい値で挟まれた第2範囲に入れるための第2安定化用指令値と、第2安定化用指令値とは別の第2制御用指令値とをもとに導出した第2制御値により、第2制御対象の電力制御を実行し、第1上側しきい値は第2上側しきい値よりも大きく、第1下側しきい値は第2下側しきい値よりも小さ第1電力変換装置は、第1制御用指令値と第1安定化用指令値とを選択的に切りかえることによって、第1制御値を導出し、第1電力変換装置は、第1制御用指令値が非存在である場合、第1安定化用指令値を第1制御値とし、第1制御用指令値が存在する場合、第1制御用指令値を第1制御値とする
【0009】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本開示の表現を方法、装置、システム、コンピュータプログラム、またはコンピュータプログラムを記録した記録媒体などの間で変換したものもまた、本開示の態様として有効である。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、システムを安定化しながら、電力制御の効率の低下を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施例1に係る電力システムの構成を示す図である。
図2】実施例1に係る電力変換装置の構成を示す図である。
図3図2の安定化用指令値導出部に記憶されるしきい値を示す図である。
図4図2の安定化用指令値導出部に記憶される別のしきい値を示す図である。
図5】実施例2に係る電力系統用電力変換装置の構成を示す図である。
図6】実施例2に係る電力系統用電力変換装置の別の構成を示す図である。
図7】実施例2に係る電力系統用電力変換装置のさらに別の構成を示す図である。
図8】実施例2に係る制御用指令値導出部の構成を示す図である。
図9】実施例2に係る電力系統用電力変換装置の出力手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(実施例1)
本開示を具体的に説明する前に、概要を述べる。実施例は、需要家において、発電装置、蓄電池、電力系統のそれぞれに電力変換装置を接続し、複数の電力変換装置を直流バスに接続する電力システムに関する。需要家は、電力会社等からの電力の供給を受けている施設であり、例えば、住宅、事務所、店舗、工場、公園などである。需要家において電力系統から延びる配電線は電力変換装置に接続される。前述のごとく、電力システムの構成を簡易にするために、各電力変換装置は電力制御を独立して実行する。独立した電力制御により、複数の電力変換装置が直流バスに直流電力を一斉に出力すると、直流バスの電圧が高くなるので、電力システムが不安定になる。電力システムを安定化させるために複数電力変換装置が直流バスの電圧に応じて電力制御を実行する場合、直流バスの電圧を考慮した電力制御となり、電力制御の効率が低下する。
【0013】
一方、各電力変換装置が接続される発電装置、蓄電池、電力系統は、それぞれ異なった役割を有する。例えば、太陽電池のような発電装置は、直流バスに大きな直流電力を供給する役割を有し、電力系統は、電力システムを安定化する役割を有する。そのため、これらの機器の役割を考慮しながら、電力システムを安定化しつつ、電力制御の効率の低下を抑制することが求められる。
【0014】
このために、各電力変換装置は、直流バスの電圧を安定化させるための制御と、機器本来の制御とに応じた制御値をもとに、電力変換を実行する。直流バスの電圧を安定化させるための制御は、予め定められた範囲から直流バスの電圧が出た場合に、直流バスの電圧を当該範囲内に戻すようになされる。予め定められた範囲から直流バスの電圧が出た場合とは、直流バスの電圧が当該範囲の最大値よりも大きくなったり、当該範囲の最小値よりも小さくなったりすることである。一方、機器本来の制御は、機器が太陽電池である場合、MPPT(Maximum power Point Tracking)制御である。電力システムを安定化させるためには、直流バスの電圧を安定化させるための制御の実行が望ましいが、電力制御の効率の低下を抑制するためには、機器本来の制御の実行が望ましい。
【0015】
ここでは、電力変換装置に接続される機器の役割を考慮して、各電力変換装置において設定される範囲を変える。例えば、電力系統に接続される電力変換装置では、範囲を狭くする。その結果、当該電力変換装置では、直流バスの電圧を安定化させるための制御が実行されやすくなる。一方、太陽電池のような発電装置に接続される電力変換装置では、範囲を広くする。その結果、当該電力変換装置では、直流バスの電圧を安定化させるための制御が実行されにくくなる。各電力変換装置において設定される範囲を変えることにより、システムが安定化するとともに、電力制御の効率の低下が抑制される。
【0016】
図1は、電力システム100の構成を示す。電力システム100は、電力系統10、配電線12、直流バス14と総称される第1直流バス14a、第2直流バス14b、第3直流バス14c、分岐点16、電力系統用電力変換装置30、太陽電池用電力変換装置40、太陽電池42、蓄電池用電力変換装置50、蓄電池52、計測装置60と総称される第1計測装置60a、第2計測装置60b、第3計測装置60cを含む。電力システム100は、需要家内に設置される。ここで、電力系統用電力変換装置30と太陽電池用電力変換装置40とが1つの装置であってもよく、電力系統用電力変換装置30と蓄電池用電力変換装置50とが1つの装置であってもよい。前者は太陽光発電用のパワーコンディショナに相当し、後者は蓄電池用のパワーコンディショナに相当する。
【0017】
電力系統10は、電力会社の商用電源であり、例えば単相3線式200V/100Vの商用電力である。電力系統10から需要家内に向かって配電線12が延びる。配電線12には、公知の技術が使用されればよいので、ここでは説明を省略する。配電線12には、電力系統用電力変換装置30が接続され、電力系統用電力変換装置30からは第1直流バス14aが延び、第1直流バス14aは、分岐点16において第2直流バス14bと第3直流バス14cとに分岐される。第2直流バス14bには太陽電池用電力変換装置40と太陽電池42が接続され、第3直流バス14cには蓄電池用電力変換装置50と蓄電池52とが接続される。このように、電力系統用電力変換装置30、太陽電池用電力変換装置40、蓄電池用電力変換装置50は、直流バス14に接続される。
【0018】
電力系統用電力変換装置30は、配電線12からの交流電力を直流電力に変換し、直流電力を直流バス14に出力する。また、電力系統用電力変換装置30は、直流バス14からの直流電力を交流電力に変換し、交流電力を配電線12に出力する。このように電力系統用電力変換装置30は、交流電力と直流電力との間の変換を実行する。
【0019】
太陽電池42は、再生可能エネルギー発電装置である。太陽電池42は、光起電力効果を利用し、光エネルギーを直接電力に変換する。太陽電池として、シリコン太陽電池、化合物半導体などを素材にした太陽電池、色素増感型(有機太陽電池)等が使用される。太陽電池42は、太陽電池用電力変換装置40に接続され、発電した直流電力を太陽電池用電力変換装置40に出力する。太陽電池用電力変換装置40は、太陽電池42から出力される直流電力を、所望の電圧値の直流電力に変換し、変換した直流電力を直流バス14に出力する。
【0020】
蓄電池52は、電力を充放電可能であり、直列または直並列接続された複数の蓄電池セルにより構成される。蓄電池セルには、リチウムイオン蓄電池、ニッケル水素蓄電池、鉛蓄電池、電気二重層キャパシタ、リチウムイオンキャパシタ等が使用される。蓄電池52として、電気二重層コンデンサが使用されてもよい。蓄電池用電力変換装置50は、蓄電池52の充放電を制御する。蓄電池用電力変換装置50は、蓄電池52の充電時に直流バス14からの直流電力を、所望の電圧値の直流電力に変換し、変換した直流電力を蓄電池52に出力する。一方、蓄電池用電力変換装置50は、蓄電池52の放電時に蓄電池52からの直流電力を、所望の電圧値の直流電力に変換し、変換した直流電力を直流バス14に出力する。
【0021】
第1計測装置60aから第3計測装置60cは、直流バス14に配置される。これらの計測装置60は、直流バス14の電圧値を計測する電圧計である。第1計測装置60aは、計測した電圧値を電力系統用電力変換装置30に出力し、第2計測装置60bは、計測した電圧値を太陽電池用電力変換装置40に出力し、第3計測装置60cは、計測した電圧値を蓄電池用電力変換装置50に出力する。
【0022】
ここで、電力系統10、太陽電池42、蓄電池52は、発電、蓄電、配電のうちの少なくとも1つを実行可能な制御対象といえる。電力系統10を第1制御対象と呼ぶ場合、蓄電池52は第2制御対象と呼ばれ、太陽電池42は第3制御対象と呼ばれる。蓄電池52が第3制御対象と呼ばれ、太陽電池42が第2制御対象と呼ばれてもよい。また、電力系統10を除外して、蓄電池52を第1制御対象と呼ぶ場合、太陽電池42は第2制御対象と呼ばれる。また、電力系統用電力変換装置30、太陽電池用電力変換装置40、蓄電池用電力変換装置50は、電力変換装置と総称される。第1制御対象に接続される電力変換装置を第1電力変換装置と呼ぶ場合、第2制御対象に接続される電力変換装置は第2電力変換装置と呼ばれ、第3制御対象に接続される電力変換装置は第3電力変換装置と呼ばれる。
【0023】
図2は、電力変換装置200の構成を示す。電力変換装置200は、変換部210、制御部220を含む。制御部220は、安定化用指令値導出部250、制御用指令値導出部260、制御値導出部270、指示部280を含み、安定化用指令値導出部250は、上側導出部252、下側導出部254を含む。電力変換装置200は、電力系統用電力変換装置30、太陽電池用電力変換装置40、蓄電池用電力変換装置50の総称である。以下では、(1)電力変換装置200が電力系統用電力変換装置30である場合、(2)電力変換装置200が太陽電池用電力変換装置40である場合、(3)電力変換装置200が蓄電池用電力変換装置50である場合の順に説明する。
【0024】
(1)電力変換装置200が電力系統用電力変換装置30である場合
変換部210は、双方向インバータである。変換部210は、順潮流の際に、配電線12からの交流電力を直流電力に変換し、直流電力を直流バス14に出力する。また、変換部210は、逆潮流の際に、直流バス14からの直流電力を交流電力に変換し、交流電力を配電線12に出力する。変換部210の制御は制御部220によってなされる。
【0025】
安定化用指令値導出部250は、第1計測装置60aからの電圧値、つまり直流バス14の電圧値を受けつける。安定化用指令値導出部250は、予め定められた範囲(以下、「電力系統用範囲」という)から電圧値が出た場合に、電圧値を電力系統用範囲内に入れるための電力系統安定化用指令値を生成する。具体的に説明すると、上側導出部252は、電力系統用範囲の上側のしきい値(以下、「電力系統用上側しきい値」という)を設定しており、電圧値が電力系統用上側しきい値以上である場合に、電圧値を下げるための電力系統上側安定化用指令値を生成する。上側導出部252は、電力系統上側安定化用指令値を制御値導出部270に出力する。下側導出部254は、電力系統用範囲の下側のしきい値(以下、「電力系統用下側しきい値」という)を設定しており、電圧値が電力系統用下側しきい値以下である場合に、電圧値を上げるための電力系統下側安定化用指令値を生成する。下側導出部254は、電力系統下側安定化用指令値を制御値導出部270に出力する。
【0026】
制御用指令値導出部260は、電力系統10本来の機能を発揮させるための制御を実行する。この制御は、例えば、電力会社からの要求、VPP(Virtual Power Plant)からの要求、HEMS(Home Energy Management System)機器からの要求に応じてなされる。この制御には公知の技術が使用されればよいので、ここでは説明を省略する。制御用指令値導出部260は、制御に応じた電力系統制御用指令値を生成して、電力系統制御用指令値を制御値導出部270に出力する。
【0027】
制御値導出部270は、上側導出部252からの電力系統上側安定化用指令値、下側導出部254からの電力系統下側安定化用指令値、制御用指令値導出部260からの電力系統制御用指令値を受けつける。これらの指令値のうちの少なくとも1つが生成されない場合、制御値導出部270は当該指令値を受けつけない。制御値導出部270は、電力系統上側安定化用指令値、電力系統下側安定化用指令値、電力系統制御用指令値をもとに、電力系統制御値を生成する。例えば、制御値導出部270は、電力系統上側安定化用指令値と、電力系統下側安定化用指令値と、電力系統制御用指令値との和を演算することによって、電力系統制御値を生成する。制御値導出部270は、電力系統制御値を指示部280に出力する。指示部280は、電力系統制御値を制御値導出部270から受けつける。指示部280は、電力系統制御値を変換部210に出力することによって、変換部210を制御する。これは、電力系統10の電力制御を実行することに相当する。
【0028】
(2)電力変換装置200が太陽電池用電力変換装置40である場合
変換部210は、DC-DCコンバータである。変換部210は、太陽電池42からの直流電力を、所望の電圧値の直流電力に変換し、変換した直流電力を直流バス14に出力する。変換部210の制御は制御部220によってなされる。
【0029】
安定化用指令値導出部250は、第2計測装置60bからの電圧値、つまり直流バス14の電圧値を受けつける。安定化用指令値導出部250は、予め定められた範囲(以下、「太陽電池用範囲」という)から電圧値が出た場合に、電圧値を太陽電池用範囲内に入れるための太陽電池安定化用指令値を生成する。具体的に説明すると、上側導出部252は、太陽電池用範囲の上側のしきい値(以下、「太陽電池用上側しきい値」という)を設定しており、電圧値が太陽電池用上側しきい値以上である場合に、電圧値を下げるための太陽電池上側安定化用指令値を生成する。上側導出部252は、太陽電池上側安定化用指令値を制御値導出部270に出力する。下側導出部254は、太陽電池用範囲の下側のしきい値(以下、「太陽電池用下側しきい値」という)を設定しており、電圧値が太陽電池用下側しきい値以下である場合に、電圧値を上げるための太陽電池下側安定化用指令値を生成する。下側導出部254は、太陽電池下側安定化用指令値を制御値導出部270に出力する。
【0030】
制御用指令値導出部260は、太陽電池42本来の機能を発揮させるための制御を実行する。この制御は、MPPT制御である。制御用指令値導出部260は、制御に応じた太陽電池制御用指令値を生成して、太陽電池制御用指令値を制御値導出部270に出力する。
【0031】
制御値導出部270は、上側導出部252からの太陽電池上側安定化用指令値、下側導出部254からの太陽電池下側安定化用指令値、制御用指令値導出部260からの太陽電池制御用指令値を受けつける。これらの指令値のうちの少なくとも1つが生成されない場合、制御値導出部270は当該指令値を受けつけない。制御値導出部270は、太陽電池上側安定化用指令値、太陽電池下側安定化用指令値、太陽電池制御用指令値をもとに、太陽電池制御値を生成する。例えば、制御値導出部270は、太陽電池上側安定化用指令値と、太陽電池下側安定化用指令値と、太陽電池制御用指令値との和を演算することによって、太陽電池制御値を生成する。制御値導出部270は、太陽電池制御値を指示部280に出力する。指示部280は、太陽電池制御値を制御値導出部270から受けつける。指示部280は、太陽電池制御値を変換部210に出力することによって、変換部210を制御する。これは、太陽電池42の電力制御を実行することに相当する。
【0032】
(3)電力変換装置200が蓄電池用電力変換装置50である場合
変換部210は、双方向のDC-DCコンバータである。変換部210は、蓄電池52の放電の際に、蓄電池52からの直流電力を、所望の電圧値の直流電力に変換し、変換した直流電力を直流バス14に出力する。また、変換部210は、蓄電池52の充電の際に、直流バス14からの直流電力を、所望の電圧値の直流電力に変換し、変換した直流電力を蓄電池52に出力する。変換部210の制御は制御部220によってなされる。
【0033】
安定化用指令値導出部250は、第3計測装置60cからの電圧値、つまり直流バス14の電圧値を受けつける。安定化用指令値導出部250は、予め定められた範囲(以下、「蓄電池用範囲」という)から電圧値が出た場合に、電圧値を蓄電池用範囲内に入れるための蓄電池安定化用指令値を生成する。具体的に説明すると、上側導出部252は、蓄電池用範囲の上側のしきい値(以下、「蓄電池用上側しきい値」という)を設定しており、電圧値が蓄電池用上側しきい値以上である場合に、電圧値を下げるための蓄電池上側安定化用指令値を生成する。上側導出部252は、蓄電池上側安定化用指令値を制御値導出部270に出力する。下側導出部254は、蓄電池用範囲の下側のしきい値(以下、「蓄電池用下側しきい値」という)を設定しており、電圧値が蓄電池用下側しきい値以下である場合に、電圧値を上げるための蓄電池下側安定化用指令値を生成する。下側導出部254は、蓄電池下側安定化用指令値を制御値導出部270に出力する。
【0034】
制御用指令値導出部260は、蓄電池52本来の機能を発揮させるための制御を実行する。この制御は、例えば、充電要求あるいは放電要求に応じてなされる。この制御には公知の技術が使用されればよいので、ここでは説明を省略する。制御用指令値導出部260は、制御に応じた蓄電池制御用指令値を生成して、蓄電池制御用指令値を制御値導出部270に出力する。
【0035】
制御値導出部270は、上側導出部252からの蓄電池上側安定化用指令値、下側導出部254からの蓄電池下側安定化用指令値、制御用指令値導出部260からの蓄電池制御用指令値を受けつける。これらの指令値のうちの少なくとも1つが生成されない場合、制御値導出部270は当該指令値を受けつけない。制御値導出部270は、蓄電池上側安定化用指令値、蓄電池下側安定化用指令値、蓄電池制御用指令値をもとに、蓄電池制御値を生成する。例えば、制御値導出部270は、蓄電池上側安定化用指令値と、蓄電池下側安定化用指令値と、蓄電池制御用指令値との和を演算することによって、蓄電池制御値を生成する。制御値導出部270は、蓄電池制御値を指示部280に出力する。指示部280は、蓄電池制御値を制御値導出部270から受けつける。指示部280は、蓄電池制御値を変換部210に出力することによって、変換部210を制御する。これは、蓄電池52の電力制御を実行することに相当する。
【0036】
ここで、第1電力変換装置における範囲、上側のしきい値、下側のしきい値を「第1範囲」、「第1上側しきい値」、「第1下側しきい値」と呼ぶ場合、第2電力変換装置における範囲、上側のしきい値、下側のしきい値は「第2範囲」、「第2上側しきい値」、「第2下側しきい値」と呼ばれる。また、第3電力変換装置における範囲、上側のしきい値、下側のしきい値は「第3範囲」、「第3上側しきい値」、「第3下側しきい値」と呼ばれる。
【0037】
第1電力変換装置における上側安定化用指令値、下側安定化用指令値、制御用指令値、制御値は、「第1上側安定化用指令値」、「第1下側安定化用指令値」、「第1制御用指令値」、「第1制御値」と呼ばれてもよい。第2電力変換装置における上側安定化用指令値、下側安定化用指令値、制御用指令値、制御値は、「第2上側安定化用指令値」、「第2下側安定化用指令値」、「第2制御用指令値」、「第2制御値」と呼ばれてもよい。第3電力変換装置における上側安定化用指令値、下側安定化用指令値、制御用指令値、制御値は、「第3上側安定化用指令値」、「第3下側安定化用指令値」、「第3制御用指令値」、「第3制御値」と呼ばれてもよい。
【0038】
以下では、電力系統用電力変換装置30、太陽電池用電力変換装置40、蓄電池用電力変換装置50において設定される上側のしきい値と下側のしきい値との関係を説明する。これは、電力系統用上側しきい値、電力系統用下側しきい値、太陽電池用上側しきい値、太陽電池用下側しきい値、蓄電池用上側しきい値、蓄電池用下側しきい値の関係に相当する。
【0039】
図3は、安定化用指令値導出部250に記憶されるしきい値を示す。目標とする電圧値を挟むように、電力系統用上側しきい値と電力系統用下側しきい値が配置される。電力系統用上側しきい値よりも大きい蓄電池用上側しきい値が配置され、蓄電池用上側しきい値より大きい太陽電池用上側しきい値が配置される。電力系統用下側しきい値よりも小さい蓄電池用下側しきい値が配置され、蓄電池用下側しきい値よりも小さい太陽電池用下側しきい値が配置される。例えば、目標とする電圧値(以下、「目標値」という)が「350V」である場合、電力系統用上側しきい値は「355V」に設定され、電力系統用下側しきい値は「345V」に設定される。また、太陽電池用上側しきい値は「370V」に設定され、太陽電池用下側しきい値は「330V」に設定され、蓄電池用上側しきい値は「360V」に設定され、蓄電池用下側しきい値は「340V」に設定される。
【0040】
電力系統用上側しきい値と電力系統用下側しきい値との間隔が「電力系統用範囲」を示し、太陽電池用上側しきい値と太陽電池用下側しきい値との間隔が「太陽電池用範囲」を示し、蓄電池用上側しきい値と蓄電池用下側しきい値との間隔が「蓄電池用範囲」を示す。そのため、電力系統用範囲は蓄電池用範囲よりも狭く、蓄電池用範囲は太陽電池用範囲よりも狭い。また、電力系統用範囲は蓄電池用範囲内に規定され、蓄電池用範囲は太陽電池用範囲内に規定される。電力系統用範囲、太陽電池用範囲、蓄電池用範囲の下限は、ゼロボルトよりも大きいと規定される。
【0041】
ここでは、直流バス14の電圧値が目標値よりも大きくなり、電力系統用上側しきい値「355V」以上に到達した場合、電力系統用電力変換装置30は、電力系統上側安定化用指令値が反映された電力系統制御値にしたがって電力制御を実行する。そのため、電力系統用電力変換装置30は、電力会社からの要求等にしたがうよりも、直流バス14の電圧値を目標値に近づけるように動作する。一方、直流バス14の電圧値が蓄電池用上側しきい値「360V」と太陽電池用上側しきい値「370V」に到達していないので、太陽電池用電力変換装置40と蓄電池用電力変換装置50は、上側安定化用指令値が反映されずに制御用指令値が反映された制御値にしたがって電力制御を実行する。そのため、太陽電池用電力変換装置40は、直流バス14の電圧値を目標値に近づけるよりも、MPPT制御により出力電力を最大にするように動作する。これにより、電力制御の効率の低下が抑制される。蓄電池用電力変換装置50も太陽電池用電力変換装置40と同様である。
【0042】
直流バス14の電圧値がさらに大きくなり、蓄電池用上側しきい値「360V」以上に到達した場合、蓄電池用電力変換装置50は、蓄電池上側安定化用指令値が反映された蓄電池制御値にしたがって電力制御を実行する。そのため、蓄電池用電力変換装置50は、充放電の要求等にしたがうよりも、直流バス14の電圧値を目標値に近づけるように動作する。電力系統用電力変換装置30もこれまでと同様に動作する。一方、直流バス14の電圧値が太陽電池用上側しきい値「370V」に到達していないので、太陽電池用電力変換装置40は、上側安定化用指令値が反映されずに制御用指令値が反映された制御値にしたがって電力制御を実行する。
【0043】
直流バス14の電圧値がさらに大きくなり、太陽電池用上側しきい値「370V」以上に到達した場合、太陽電池用電力変換装置40は、太陽電池上側安定化用指令値が反映された太陽電池制御値にしたがって電力制御を実行する。そのため、太陽電池用電力変換装置40は、出力電力を最大にするよりも、直流バス14の電圧値を目標値に近づけるように動作する。電力系統用電力変換装置30と蓄電池用電力変換装置50もこれまでと同様に動作する。このように、電力系統用電力変換装置30、太陽電池用電力変換装置40、蓄電池用電力変換装置50とにおいて、上側しきい値と下側しきい値とが互いに異なるので、電力系統10、太陽電池42、蓄電池52の役割が考慮されるように電力制御が実行される。
【0044】
図4は、安定化用指令値導出部250に記憶される別のしきい値を示す。これは、電力系統用しきい値を示す。電力系統用しきい値は、電力系統用上側しきい値と電力系統用下側しきい値とをまとめたしきい値である。これは、電力系統用範囲が1つの値として規定されることに相当する。その際、太陽電池用上側しきい値、太陽電池用下側しきい値、蓄電池用上側しきい値、蓄電池用下側しきい値はこれまでと同様に設定されればよい。
【0045】
本開示における装置、システム、または方法の主体は、コンピュータを備えている。このコンピュータがプログラムを実行することによって、本開示における装置、システム、または方法の主体の機能が実現される。コンピュータは、プログラムにしたがって動作するプロセッサを主なハードウェア構成として備える。プロセッサは、プログラムを実行することによって機能を実現することができれば、その種類は問わない。プロセッサは、半導体集積回路(IC)、またはLSI(Large Scale Integration)を含む1つまたは複数の電子回路で構成される。複数の電子回路は、1つのチップに集積されてもよいし、複数のチップに設けられてもよい。複数のチップは1つの装置に集約されていてもよいし、複数の装置に備えられていてもよい。プログラムは、コンピュータが読み取り可能なROM、光ディスク、ハードディスクドライブなどの非一時的記録媒体に記録される。プログラムは、記録媒体に予め格納されていてもよいし、インターネット等を含む広域通信網を介して記録媒体に供給されてもよい。
【0046】
本実施例によれば、直流バス14の電圧と比較すべき範囲を電力変換装置200毎に変えるので、安定化用指令値をもとに制御値を導出するタイミングを電力変換装置200毎に変えることができる。また、安定化用指令値をもとに制御値を導出するタイミングが電力変換装置200毎に変えられるので、直流バス14の電圧を安定化させるために動作する電力変換装置200と、本来の目的のために動作する電力変換装置200を共存させることができる。また、直流バス14の電圧を安定化させるために動作する電力変換装置200と、本来の目的のために動作する電力変換装置200とが共存するので、システムを安定化しながら、電力制御の効率の低下を抑制できる。
【0047】
また、各電力変換装置200が自律的に直流バス14を維持する機能を備えるので、直流バス14の電圧を一定範囲に維持しながら安定してシステム動作できる。また、直流バス14の電圧を一定範囲に維持する期間が短いほど、機器を最適制御する時間が長くなるので、電力制御の効率の低下を抑制できる。また、範囲の広さに差を設けるので、システムの動作協調を図ることができる。
【0048】
また、電力系統用範囲は蓄電池用範囲内あるいは太陽電池用範囲内に規定されるので、直流バス14の安定化のために電力系統用電力変換装置30を優先的に動作させることができる。また、電力系統用範囲は蓄電池用範囲内あるいは太陽電池用範囲内に規定されるので、太陽電池用電力変換装置40あるいは蓄電池用電力変換装置50を本来の目的のために動作させることができる。また、電力系統用範囲は、1つの値として規定されるので、直流バス14の電圧の変動を小さくできる。また、直流バス14の電圧の変動が小さくなるので、システムを安定化できる。また、直流バス14の安定化のために電力系統用電力変換装置30を動作させるので、システムを安定化できる。また、本来の目的のために太陽電池用電力変換装置40を動作させるので、電力制御の効率の低下を抑制できる。
【0049】
本開示の一態様の概要は、次の通りである。本開示のある態様の電力システム100は、発電、蓄電、配電のうちの少なくとも1つを実行可能な第1制御対象に接続されるとともに、直流バス14にも接続される第1電力変換装置と、発電、蓄電、配電のうちの少なくとも1つを実行可能な第2制御対象に接続されるとともに、直流バス14にも接続される第2電力変換装置とを備える。第1電力変換装置は、直流バス14の電圧を第1範囲に入れるための第1安定化用指令値と、第1安定化用指令値とは別の第1制御用指令値とをもとに導出した第1制御値により、第1制御対象の電力制御を実行し、第2電力変換装置は、直流バス14の電圧を第2範囲に入れるための第2安定化用指令値と、第2安定化用指令値とは別の第2制御用指令値とをもとに導出した第2制御値により、第2制御対象の電力制御を実行し、第1範囲は第2範囲よりも狭い。
【0050】
第1範囲は、第2範囲内に規定される。
【0051】
第1範囲は、1つの値として規定される。
【0052】
第1制御対象は電力系統10である。
【0053】
第1制御対象は、蓄電池52であり、第2制御対象は、太陽電池42である。
【0054】
本開示の別の態様は、電力システム100である。この電力システム100は、発電、蓄電、配電のうちの少なくとも1つを実行可能な第1制御対象に接続されるとともに、直流バス14にも接続される第1電力変換装置と、発電、蓄電、配電のうちの少なくとも1つを実行可能な第2制御対象に接続されるとともに、直流バス14にも接続される第2電力変換装置とを備える。第1電力変換装置は、直流バス14の電圧を第1範囲に入れるための第1安定化用指令値と、第1安定化用指令値とは別の第1制御用指令値とをもとに導出した第1制御値により、第1制御対象の電力制御を実行し、第2電力変換装置は、直流バス14の電圧を第2範囲に入れるための第2安定化用指令値と、第2安定化用指令値とは別の第2制御用指令値とをもとに導出した第2制御値により、第2制御対象の電力制御を実行し、第1範囲と第2範囲の下限は、ゼロボルトよりも大きい。
【0055】
本開示のさらに別の態様は、電力変換装置200である。この装置は、発電、蓄電、配電のうちの少なくとも1つを実行可能な制御対象に接続されるとともに、直流バス14にも接続される電力変換装置200であって、直流バス14の電圧を設定範囲に入れるための安定化用指令値を導出する安定化用指令値導出部250と、安定化用指令値とは別の制御用指令値を導出する制御用指令値導出部260と、安定化用指令値と制御用指令値とをもとに制御値を導出する制御値導出部270と、制御値により、制御対象の電力制御を実行する指示部280と、を備える。
【0056】
(実施例2)
次に、実施例2を説明する。実施例2は、実施例1と同様に、需要家において、発電装置、蓄電池、電力系統のそれぞれに電力変換装置を接続し、複数の電力変換装置を直流バスに接続する電力システムに関する。特に、実施例2は、電力系統用電力変換装置に関する。実施例2に係る電力システム100は図1と同様のタイプであり、太陽電池用電力変換装置40、蓄電池用電力変換装置50は図2と同様のタイプである。ここでは実施例1との差異を中心に説明する。
【0057】
図5は、電力系統用電力変換装置30の構成を示す。電力系統用電力変換装置30は、変換部210、制御部220、出力電流検出回路300、U相電圧検出回路310、W相電圧検出回路320、計測部350を含む。制御部220は、安定化用指令値導出部250、制御用指令値導出部260、制御値導出部270、指示部280を含み、制御値導出部270は、和演算部360、スイッチ370を含む。
【0058】
変換部210は、これまでと同様に、双方向インバータであり、制御部220によって制御される。出力電流検出回路300はU相の出力電流を検出し、U相電圧検出回路310は、U相の電圧を検出し、W相電圧検出回路320は、W相の電圧を検出する。計測部350は、検出されたU相の出力電流、U相の電圧、W相の電圧をもとに、出力電力値を計測する。これらには公知の技術が使用されればよいので、ここでは説明を省略する。計測部350は、出力電力値を制御用指令値導出部260に出力する。
【0059】
制御用指令値導出部260は、計測部350からの出力電力値を受けつける。また、制御用指令値導出部260は、電力系統用電力変換装置30の固有の値である定格電力値、例えば、5.5kWを保持する。定格電力値とは、電力系統用電力変換装置30において許容可能な最大定格(最大電流/最大電力)である。制御用指令値導出部260は、出力電力値と定格電力値とを比較して、出力電力値が定格電力値以上になる場合に、出力電力値が定格電力値より小さくなるような電力系統制御用指令値を制御値導出部270に出力する。つまり、制御用指令値導出部260は、電力系統用電力変換装置30内の状態が規定範囲以上になる場合に、電力系統制御用指令値を導出する。
【0060】
制御値導出部270は、安定化用指令値導出部250からの電力系統上側安定化用指令値、電力系統下側安定化用指令値、制御用指令値導出部260からの電力系統制御用指令値のうちの少なくとも1つを受けつける。和演算部360は、電力系統上側安定化用指令値と電力系統下側安定化用指令値との和(以下、「和指令値」という)を演算する。スイッチ370は、電力系統制御用指令値が存在しない場合、和指令値を電力系統制御値として指示部280に出力する。一方、スイッチ370は、電力系統制御用指令値が存在する場合、電力系統制御用指令値を電力系統制御値として指示部280に出力する。つまり、制御値導出部270は、和指令値と電力系統制御用指令値とを選択的に切りかえることによって、電力系統制御値を導出する。
【0061】
図6は、電力系統用電力変換装置30の別の構成を示す。電力系統用電力変換装置30は、変換部210、制御部220、U相電圧検出回路310、W相電圧検出回路320、計測部350を含む。制御部220は、安定化用指令値導出部250、制御用指令値導出部260、制御値導出部270、指示部280を含み、制御値導出部270は、和演算部360、スイッチ370を含む。
【0062】
U相電圧検出回路310は、U相の電圧を検出し、W相電圧検出回路320は、W相の電圧を検出する。計測部350は、U相の電圧値、W相の電圧値(以下、「電圧値」と総称する)を計測する。これらには公知の技術が使用されればよいので、ここでは説明を省略する。計測部350は、電圧値を制御用指令値導出部260に出力する。
【0063】
制御用指令値導出部260は、計測部350からの電圧値を受けつける。また、制御用指令値導出部260は、電力系統用電力変換装置30の固有の値である系統電圧上昇抑制値を保持する。制御用指令値導出部260は、電圧値と系統電圧上昇抑制値とを比較して、電圧値が系統電圧上昇抑制値以上になる場合に、電圧値が系統電圧上昇抑制値より小さくなるような電力系統制御用指令値を制御値導出部270に出力する。つまり、制御用指令値導出部260は、電力系統用電力変換装置30内の状態が規定範囲以上になる場合に、電力系統制御用指令値を導出する。
【0064】
図7は、電力系統用電力変換装置30のさらに別の構成を示す。電力系統用電力変換装置30は、変換部210、制御部220を含む。変換部210は、温度計380を含み、制御部220は、安定化用指令値導出部250、制御用指令値導出部260、制御値導出部270、指示部280を含み、制御値導出部270は、和演算部360、スイッチ370を含む。
【0065】
温度計380は、変換部210の温度、例えば、変換部210に備えられたパワー半導体の温度を測定する。制御用指令値導出部260は、温度計380からの温度を受けつける。また、制御用指令値導出部260は、電力系統用電力変換装置30の固有の値である温度抑制値を保持する。制御用指令値導出部260は、温度と温度抑制値とを比較して、温度が温度抑制値以上になる場合に、温度が温度抑制値より小さくなるような電力系統制御用指令値を制御値導出部270に出力する。つまり、制御用指令値導出部260は、電力系統用電力変換装置30内の状態が規定範囲以上になる場合に、電力系統制御用指令値を導出する。
【0066】
これまでは、電力系統用電力変換装置30の固有の値以上となる状態が検出された場合に、制御用指令値導出部260は電力系統制御用指令値を出力している。しかしながら、実施例1のように、制御用指令値導出部260は、電力会社からの要求、VPPからの要求、HEMS機器からの要求を受けつけた場合に、電力系統制御用指令値を出力してもよい。これらは、出力電流検出回路300の外部からの入力を受けつけた場合に、当該入力に対応した電力系統制御用指令値を導出することに相当する。さらに、電力系統用電力変換装置30の固有の値以上となる状態が検出された場合と、外部からの入力を受けつけた場合とが組み合わされてもよい。これは、複数種類の電力系統制御用指令値を導出可能である場合に相当する。
【0067】
図8は、制御用指令値導出部260の構成を示す。制御用指令値導出部260は、第1受付部400、第2受付部402、第3受付部404、第1選択部410、第2選択部420、第3選択部430を含む。また、制御用指令値導出部260は、計測部350、温度計380に接続される。
【0068】
第1受付部400は、電力会社からの要求を外部から受付可能である。第2受付部402は、VPPからの要求を外部から受付可能である。第3受付部404は、HEMS機器からの要求を外部から受付可能である。第1選択部410は、第1受付部400から第3受付部404のうちの少なくとも1つが要求を受けつけた場合、最も小さい値となる制御用指令値の候補(以下、「第1候補」という)を選択する。最も小さい値となるとは、制御用指令値の候補にしたがって制御を実行した場合に、直流バス14から変換部210に入力される電力、あるいは変換部210から直流バス14に出力される電力が最も小さくなることを示す。
【0069】
第2選択部420は、図5から図7における制御用指令値導出部260の処理を実行し、1つ以上の固定の値以上になる場合に、最も小さい値となる制御用指令値の候補(以下、「第2候補」という)を選択する。第3選択部430は、第1選択部410からの第1候補と、第2選択部420からの第2候補のうち、最も小さい値となるものを制御用指令値として選択する。第3選択部430は、電力系統制御用指令値を制御値導出部270に出力する。
【0070】
以上の構成による電力系統用電力変換装置30の動作を説明する。図9は、電力系統用電力変換装置30の出力手順を示すフローチャートである。制御用指令値導出部260からの電力系統制御用指令値がある場合(S10のY)、制御値導出部270は、電力系統制御指令値を電力系統制御値として出力する(S12)。制御用指令値導出部260からの電力系統制御用指令値がない場合(S10のN)、制御値導出部270は、和指令値を電力系統制御値として出力する(S14)。
【0071】
本実施例によれば、電力系統制御用指令値と電力系統安定化用指令値とを選択的に切りかえるので、直流バス14の電圧を安定化させるために動作する場合であっても、本来の目的に応じた動作を実行できる。また、電力系統制御用指令値と電力系統安定化用指令値とを選択的に切りかえるので、直流バス14の電圧を安定化させるために動作する場合であっても、出力制御、電圧上昇抑制、逆潮制御などを実行できる。また、電力系統制御用指令値が存在しない場合、電力系統安定化用指令値を電力系統制御値とするので、直流バス14の電圧を安定化させることができる。また、電力系統制御用指令値が存在する場合、電力系統制御用指令値を電力系統制御値とするので、本来の目的に応じた動作を実行できる。
【0072】
また、外部からの入力を受けつけた場合に、当該入力に対応した電力系統制御用指令値を導出するので、外部からの入力に応じた動作を実行できる。また、電力系統用電力変換装置30内の状態が規定範囲以上になる場合に、電力系統制御用指令値を導出するので、状態を規定範囲内にするような動作を実行できる。また、複数種類の電力系統制御用指令値を導出可能である場合、直流バス14から変換部210に入力される電力、あるいは変換部210から直流バス14に出力される電力が小さくなる電力系統制御用指令値を選択するので、システムへの影響を小さくできる。
【0073】
本開示の一態様の概要は、次の通りである。第1電力変換装置は、第1制御用指令値と第1安定化用指令値とを選択的に切りかえることによって、第1制御値を導出する。
【0074】
第1電力変換装置は、第1制御用指令値が非存在である場合、第1安定化用指令値を第1制御値とし、第1制御用指令値が存在する場合、第1制御用指令値を第1制御値とする。
【0075】
第1電力変換装置は、外部からの入力を受けつけた場合に、当該入力に対応した第1制御用指令値を導出する。
【0076】
第1電力変換装置は、第1電力変換装置内の状態が規定範囲以上になる場合に、第1制御用指令値を導出する。
【0077】
第1電力変換装置は、複数種類の第1制御用指令値を導出可能である場合、直流バス14から第1電力変換装置に入力される電力、あるいは第1電力変換装置から直流バス14に出力される電力が小さくなる第1制御用指令値を導出する。
【0078】
以上、本開示を実施例をもとに説明した。この実施例は例示であり、それらの各構成要素あるいは各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本開示の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【符号の説明】
【0079】
10 電力系統(第1制御対象)、 12 配電線、 14 直流バス、 16 分岐点、 30 電力系統用電力変換装置(第1電力変換装置)、 40 太陽電池用電力変換装置(第2電力変換装置)、 42 太陽電池(第2制御対象)、 50 蓄電池用電力変換装置(第1電力変換装置、第2電力変換装置)、 52 蓄電池(第1制御対象、第2制御対象)、 60 計測装置、 100 電力システム、 200 電力変換装置(第1電力変換装置、第2電力変換装置)、 210 変換部、 220 制御部、 250 安定化用指令値導出部、 252 上側導出部、 254 下側導出部、 260 制御用指令値導出部、 270 制御値導出部、 280 指示部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9