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特許7357240インクジェット印刷装置の制御方法、及び、インクジェット印刷装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-28
(45)【発行日】2023-10-06
(54)【発明の名称】インクジェット印刷装置の制御方法、及び、インクジェット印刷装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20230929BHJP
【FI】
B41J2/01 205
B41J2/01 451
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020029392
(22)【出願日】2020-02-25
(65)【公開番号】P2021133536
(43)【公開日】2021-09-13
【審査請求日】2022-12-12
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】増永 圭二郎
【審査官】佐藤 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-094886(JP,A)
【文献】特開2018-089787(JP,A)
【文献】特開2017-205937(JP,A)
【文献】特開2017-119270(JP,A)
【文献】特開2015-205442(JP,A)
【文献】特開2006-218734(JP,A)
【文献】特開2006-240067(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のノズルを有し、ディスプレイパネルの各別のセルに対して、前記複数のノズルを用いてインクを塗布可能に構成されたインクジェット印刷装置の制御方法であって、
印刷データ保持メモリから、前記複数のノズルにおける、吐出が必要なノズル及び吐出が不必要なノズルそれぞれが1ビット単位で表現された第1ビット列に係るデータを取得する第1工程(a)と、
不吐出ノズル保持メモリから、前記複数のノズルにおける、吐出ノズル及び不吐出ノズルそれぞれが1ビット単位で表現された第2ビット列に係るデータを取得する第2工程(b)と、
前記第1ビット列と前記第2ビット列とのビット毎の論理和により、第3ビット列を生成する第3工程(c)と、
前記第1ビット列と前記第2ビット列とのビット毎の論理積により、第4ビット列を生成する第4工程(d)と、
前記第4ビット列で特定される補完先候補ノズルに係るビットをシフトして、当該補完先候補ノズルを前記複数のノズルのうちの他のノズルに変更するように、前記第4ビット列を更新する第5工程(e)と、
前記第3ビット列と前記第4ビット列とのビット毎の論理和又は論理積により、第5ビット列を生成する第6工程(f、g)と、
を含み、
前記第5工程(e)及び前記第6工程(f、g)をこの順で繰り返し実行し、前記第6工程(f、g)で生成される前記第5ビット列が前記不吐出ノズルの補完が可能であることを示した場合、その時点で設定された前記補完先候補ノズルを、前記不吐出ノズルの補完を行うノズルとして選択する、
インクジェット印刷装置の制御方法。
【請求項2】
前記第5工程(e)及び前記第6工程(f、g)を繰り返し実行する際、前記第5工程(e)の度に、前記第4ビット列で特定される前記補完先候補ノズルに係るビットを1ビットずつシフトする、
請求項1記載のインクジェット印刷装置の制御方法。
【請求項3】
印刷対象のディスプレイパネル内に設けられた前記セルの配置位置であるセル配置と、前記セル内のインク吐出模様であるセル模様を読み込む印刷データ読込工程と、
インクジェット印刷装置の本体内にて、前記セル配置と前記セル模様とに基づいて、印刷データを生成する印刷データ生成工程と、
前記本体側から、前記印刷データをインクジェットヘッド制御部へ転送する転送工程と、
前記複数のノズルを前記ディスプレイパネルと相対的に移動させながら、前記ディスプレイパネルの前記セル内に、前記複数のノズルを用いてインクを塗布する印刷工程と、を含み、
前記印刷工程では、前記第1工程(a)乃至前記第6工程(f、g)を行うことで、前記不吐出ノズルの補完を行いながら、前記複数のノズルを用いてインクを塗布する、
請求項1又は2に記載のインクジェット印刷装置の制御方法。
【請求項4】
前記インクジェットヘッド制御部は、前記本体側から、前記複数のノズルのうち前記不吐出ノズルの位置を示す別のデータを受信した場合、
前記印刷工程では、既に受信済みの前記印刷データと前記別のデータとを用いて、前記第1工程(a)乃至前記第6工程(f、g)を行うことで、前記不吐出ノズルの補完を行いながら、前記複数のノズルを用いてインクを塗布する、
請求項3に記載のインクジェット印刷装置の制御方法。
【請求項5】
複数のノズルを有し、ディスプレイパネルの各別のセルに対して、前記複数のノズルを用いてインクを塗布可能に構成されたインクジェット印刷装置であって、
印刷データ保持メモリから、前記複数のノズルにおける、吐出が必要なノズル及び吐出が不必要なノズルそれぞれが1ビット単位で表現された第1ビット列に係るデータを取得する第1工程(a)と、
不吐出ノズル保持メモリから、前記複数のノズルにおける、吐出ノズル及び不吐出ノズルそれぞれが1ビット単位で表現された第2ビット列に係るデータを取得する第2工程(b)と、
前記第1ビット列と前記第2ビット列とのビット毎の論理和により、第3ビット列を生成する第3工程(c)と、
前記第1ビット列と前記第2ビット列とのビット毎の論理積により、第4ビット列を生成する第4工程(d)と、
前記第4ビット列で特定される補完先候補ノズルに係るビットをシフトして、当該補完先候補ノズルを前記複数のノズルのうちの他のノズルに変更するように、前記第4ビット列を更新する第5工程(e)と、
前記第3ビット列と前記第4ビット列とのビット毎の論理和又は論理積により、第5ビット列を生成する第6工程(f、g)と、
を実行する制御装置を備え、
前記制御装置は、前記第5工程(e)及び前記第6工程(f、g)をこの順で繰り返し実行し、前記第6工程(f、g)で生成される前記第5ビット列が前記不吐出ノズルの補完が可能であることを示した場合、その時点で設定された前記補完先候補ノズルを、前記不吐出ノズルの補完を行うノズルとして選択する、
インクジェット印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機EL(Electro Luminescence)等の表示デバイス用のディスプレイパネルの発光層や封止膜の形成に用いるインクジェット印刷装置の制御方法、及び、インクジェット印刷装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
有機ELディスプレイの製造工程は、現状では蒸着を用いた方式が主流となっているが、コストダウンを図るために真空を必要とせず、材料利用効率の高いインクジェット装置を用いた方法が検討されている。
【0003】
インクジェット装置を用いた有機ELディスプレイの製造方式では、ディスプレイパネルに設けられたバンクと呼ばれる隔壁で区切られたディスプレイセル(以下セルと呼ぶ)に、インクジェットヘッドのノズルからインクを対応するセルに吐出しセル内に機能膜を形成する方法が一般的である。
【0004】
インクジェット印刷装置では、製造効率の観点から、列状に並ぶ複数のノズルを用いるが、表示パネルの高解像度化や大型化に伴って用いるノズルの数は数万個単位となっている。この多数のノズルからは、乾燥したインクや異物などの付着により、インクの塗布位置や塗布量が設計値より大きくずれ、補正不可能となった不良ノズルが発生する場合がある。不良ノズルが発生した場合は、不良ノズルからはインクの吐出を行わず、代わりに近接する他のノズルの吐出回数を増やしてインクの塗布量を補完する方法(特許文献1)や、同一セル内の吐出可能な予備ノズルでインクの塗布量を補完する方法などがある(特許文献2)。
【0005】
近年、表示パネルの高解像度化が進むことにより、同一の塗布領域に対して各ノズルが塗布できる回数は制限される方向に進んでいる。したがって、例えば特許文献1に記載のように、不良ノズルに隣接するノズルの塗布領域への塗布回数を増やす方法では、対応に限界があり、特許文献2の方式が使われるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第5157348号公報
【文献】特許第6387580号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献2の方式では、同一セル内の使用可能な予備ノズルを1ノズルずつ条件分岐処理で探す必要があり、特許文献1の補完処理と比較してデータ処理が複雑になり、計算に時間がかかるという課題があった。
【0008】
インクジェット印刷装置では、不良ノズルが発生するとディスプレイセルに指定の液滴を供給できなくなり、不良品を生産する事になる為、補完処理の間は生産を止める必要があり、補完処理が印刷に間に合わない場合、生産タクトを遅延させる事になり、生産性に直結する。そのため、補完ノズルを選択するための演算処理は、低負荷であることが望まれる。
【0009】
尚、以下では、インクジェット印刷装置(即ち、インクジェットヘッド)が有する複数のノズルのうち、不良ノズルとなっておらず、吐出を実行させるノズルを「吐出ノズル」と称し、不良ノズルとなっており、吐出を実行させないノズルを「不吐出ノズル」と称する。又、不吐出ノズルを補完する吐出ノズルを「補完ノズル」と称する。
【0010】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたもので、演算負荷を抑制しながら、補完処理を行う対象のノズルを選択することを可能とするインクジェット印刷装置の制御方法、及び、インクジェット印刷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前述した課題を解決する主たる本発明は、
複数のノズルを有し、ディスプレイパネルの各別のセルに対して、前記複数のノズルを用いてインクを塗布可能に構成されたインクジェット印刷装置の制御方法であって、
印刷データ保持メモリから、前記複数のノズルにおける、吐出が必要なノズル及び吐出が不必要なノズルそれぞれが1ビット単位で表現された第1ビット列に係るデータを取得する第1工程(a)と、
不吐出ノズル保持メモリから、前記複数のノズルにおける、吐出ノズル及び不吐出ノズルそれぞれが1ビット単位で表現された第2ビット列に係るデータを取得する第2工程(b)と、
前記第1ビット列と前記第2ビット列とのビット毎の論理和により、第3ビット列を生成する第3工程(c)と、
前記第1ビット列と前記第2ビット列とのビット毎の論理積により、第4ビット列を生成する第4工程(d)と、
前記第4ビット列で特定される補完先候補ノズルに係るビットをシフトして、当該補完先候補ノズルを前記複数のノズルのうちの他のノズルに変更するように、前記第4ビット列を更新する第5工程(e)と、
前記第3ビット列と前記第4ビット列とのビット毎の論理和又は論理積により、第5ビット列を生成する第6工程(f、g)と、
を含み、
前記第5工程(e)及び前記第6工程(f、g)をこの順で繰り返し実行し、前記第6工程(f、g)で生成される前記第5ビット列が前記不吐出ノズルの補完が可能であることを示した場合、その時点で設定された前記補完先候補ノズルを、前記不吐出ノズルの補完を行うノズルとして選択する、
インクジェット印刷装置の制御方法である。
【0012】
又、他の局面では、
複数のノズルを有し、ディスプレイパネルの各別のセルに対して、前記複数のノズルを用いてインクを塗布可能に構成されたインクジェット印刷装置であって、
印刷データ保持メモリから、前記複数のノズルにおける、吐出が必要なノズル及び吐出が不必要なノズルそれぞれが1ビット単位で表現された第1ビット列に係るデータを取得する第1工程(a)と、
不吐出ノズル保持メモリから、前記複数のノズルにおける、吐出ノズル及び不吐出ノズルそれぞれが1ビット単位で表現された第2ビット列に係るデータを取得する第2工程(b)と、
前記第1ビット列と前記第2ビット列とのビット毎の論理和により、第3ビット列を生成する第3工程(c)と、
前記第1ビット列と前記第2ビット列とのビット毎の論理積により、第4ビット列を生成する第4工程(d)と、
前記第4ビット列で特定される補完先候補ノズルに係るビットをシフトして、当該補完先候補ノズルを前記複数のノズルのうちの他のノズルに変更するように、前記第4ビット列を更新する第5工程(e)と、
前記第3ビット列と前記第4ビット列とのビット毎の論理和又は論理積により、第5ビット列を生成する第6工程(f、g)と、
を実行する制御装置を備え、
前記制御装置は、前記第5工程(e)及び前記第6工程(f、g)をこの順で繰り返し実行し、前記第6工程(f、g)で生成される前記第5ビット列が前記不吐出ノズルの補完が可能であることを示した場合、その時点で設定された前記補完先候補ノズルを、前記不吐出ノズルの補完を行うノズルとして選択する、
インクジェット印刷装置である。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るインクジェット印刷装置の制御方法によれば、演算負荷を抑制しながら、補完処理を行う対象のノズルを選択することを可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】従来の制御構成におけるインクジェット印刷装置の吐出回路のブロック図
図2】従来の構成を用いた際のインクジェット印刷装置の運用
図3】本発明の制御構成におけるインクジェット印刷装置の吐出回路のブロック図
図4】本発明の構成を用いた際のインクジェット印刷装置の運用
図5】本発明の不吐出補完処理の流れについて説明するフローチャート
図6図5のステップ501の吐出必要画素取得処理について説明する図
図7図5のステップ502の吐出不可能画素取得処理について説明する図
図8】本発明の不吐出補完の処理内容を順番に説明した図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0016】
(実施の形態1)
以下、本実施の形態のヘッド配置及び印刷方式の一実施の形態について、図面を参照しながら説明するが、本実施の形態はこれらの実施の形態により限定されない。
【0017】
(従来の制御構成の説明)
ここでは、本実施の形態の内容を説明する為に、まず従来の制御構成を用いて印刷した際の運用について説明する。図1に従来の制御構成におけるインクジェット印刷装置Uaの吐出回路のブロック図である。
【0018】
まずは図1のブロック図の構成要素について説明する。
【0019】
101は印刷対象の基板(即ち、ディスプレイパネル)であり、101aは基板101上に形成されたセルであり、基板上に印刷走査方向xに対して一定ピッチで配置されている。
【0020】
102はインクジェットヘッドであり、1つ、もしくは複数個のヘッドを印刷走査方向と直行する方向yに並べて配置してある。102aはインクジェットヘッドのノズル穴であり、印刷走査方向と直行する方向yに配置されている。そして、インクジェットヘッド102は、各セル101aに対して、複数個のノズル102aを用いてインクを塗布可能に構成されている。
【0021】
103は印刷データ生成部であり、印刷データ生成部103a、データ送信部103b、セル模様データ103c、セル配置データ103d、不吐出ノズルデータ103eから構成される。
【0022】
104はインクジェットヘッド制御部(本発明の「制御装置」に相当)であり、データ受信部104a、印刷データ保持メモリ104b、位置検出部104c、印刷タイミング発生部104d、駆動信号発生部104e、及び、駆動信号選択部104fから構成される。尚、インクジェットヘッド制御部104は、例えば、CPU、ROM、RAM、入力ポート、及び、出力ポート等を含んで構成されるマイコン(図示せず)を有し、データ受信部104a、印刷データ保持メモリ104b、位置検出部104c、印刷タイミング発生部104d、駆動信号発生部104e、及び、駆動信号選択部104fは、当該マイコンによって統括制御される。
【0023】
尚、印刷データ生成部103は、例えば、インクジェット印刷装置Uaの本体内に配設され、インクジェットヘッド制御部104は、インクジェットヘッド102に付設されている。
【0024】
次に図1のブロック図の動作について説明する。
【0025】
まず初めに印刷データの生成から転送までのデータの流れを説明する。
【0026】
印刷データ生成部103の印刷データ生成部103aでは、印刷対象の基板101上のセル101aの配置位置であるセル配置データ103d、セル101a内のインク吐出模様であるセル模様データ103c、インクジェットヘッド102のノズルの詰まり情報である不吐出ノズルデータ103e、及び、位置ずれ情報に基づいて印刷用の画像データが生成される。
【0027】
データ送信部103bでは、印刷データ生成部103aで生成された画像データをインクジェットヘッド制御部104内のデータ受信部104aに送信する。
【0028】
データ受信部104aでは、データ送信部103bより受信した画像データを印刷データ保持メモリ104bに保存する。
【0029】
次に印刷時のデータの流れを説明する。
【0030】
印刷時は印刷対象の基板101がx方向に移動する、その際、インクジェットヘッド制御部104の位置検出部104cが基板101とインクジェットヘッド102との相対位置の変化を検出し、相対位置変化に合わせたタイミングパルスを発生させる。
【0031】
印刷タイミング発生部104dは、位置検出部104cから出力されるタイミングパルスを印刷解像度Rxに基づいて分周し、インクジェットヘッドのノズルを駆動する電圧波形の発生タイミングを規定する印刷タイミング信号を生成して出力する。
【0032】
駆動信号発生部104eは、印刷タイミング発生部104dにより生成された印刷タイミング信号に基づきインクジェットヘッド102のノズル駆動波形を出力する。
【0033】
駆動信号選択部104fは、駆動信号発生部104eより送られたノズル駆動波形を、印刷データ保持メモリ104bより送られた印刷データを基にノズル毎にオン/オフすることにより、インクジェットヘッド102のインクの吐出の有無を制御する。
【0034】
(従来の制御構成の課題)
図2に、従来の構成を用いた際のインクジェット印刷装置Uaの運用を示す。図2(a)は初回印刷時の運用フローであり、図2(b)は不吐出ノズル変更時の運用である。
【0035】
まず、図2(a)について説明する。
【0036】
図2(a)のステップ201は印刷データ読込処理であり、印刷対象の基板101のセル101aの配置位置であるセル配置データ103dと、セル101a内のインク吐出模様であるセル模様データ103c、及び、インクジェットヘッド102のノズルの詰まり情報である不吐出ノズルデータ103eを読み込む処理である。
【0037】
ステップ202は印刷データ生成処理であり、基板101のセル101aの配置位置であるセル配置データ103dと、セル101a内のインク吐出模様であるセル模様データ103cに応じて印刷データを生成する処理である。
【0038】
ステップ203は不吐出補完処理であり、ノズルの詰まり情報である不吐出ノズルデータ103eに応じて、ステップ202で生成した印刷データに対して不吐出ノズルの補完処理を行うことで不吐出ノズル補完後の印刷データを生成する処理である。
【0039】
ステップ204は転送処理であり不吐出補完後の印刷データを、図1の印刷データ生成部103からインクジェットヘッド制御部104に転送する処理である。
【0040】
ステップ205は印刷処理であり、図1の印刷対象の基板101の移動に合わせて104bに保存された印刷データを逐次印刷を行う処理である。
【0041】
次に図2(b)に不吐出ノズル変更時の処理フローを示す。
【0042】
不吐出ノズル変更を行った場合は、不吐出補完後の印刷データが変化するので再度全データを転送しなおす必要がある。その為、従来の制御構成では、不吐出ノズルを変更した際の処理フローは、図2(a)と同じ運用となる。即ち、従来の制御構成では、不吐出補完後の印刷データの全データの生成及び転送を再度行っている。
【0043】
(本発明の制御方式の説明)
本発明の実施の形態は、上記、従来の制御方式の課題を鑑みて考案したものである。
【0044】
図3に本実施の形態におけるインクジェット印刷装置Uの吐出回路のブロック図を示し、図4に本実施の形態の構成を用いた際のインクジェット印刷装置Uの運用を示す。
【0045】
まずは図3のブロック図の構成要素について説明する。
【0046】
101は印刷対象の基板であり、101aは前記基板上に形成されたセルであり、基板上に印刷走査方向xに対して一定ピッチで配置されている。
【0047】
102はインクジェットヘッドであり、1つ、もしくは複数個のヘッドを印刷走査方向と直行する方向yに並べて配置してある。102aはインクジェットヘッドのノズル穴であり、印刷走査方向と直行する方向yに配置されている。そして、インクジェットヘッド102は、各セル101aに対して、複数個のノズル102aを用いてインクを塗布可能に構成されている。
【0048】
103は印刷データ生成部であり、印刷データ生成部103a、データ送信部103b、セル模様データ103c、セル配置データ103d、不吐出ノズルデータ103eから構成される。
【0049】
104はインクジェットヘッド制御部であり、データ受信部104a、印刷データ保持メモリ104b、位置検出部104c、印刷タイミング発生部104d、駆動信号発生部104e、駆動信号選択部104f、セル配置保持メモリ104h、及び、不吐出ノズル保持メモリ104iから構成される。
【0050】
尚、インクジェットヘッド制御部104は、例えば、CPU、ROM、RAM、入力ポート、及び、出力ポート等を含んで構成されるマイコン(図示せず)を有し、データ受信部104a、印刷データ保持メモリ104b、位置検出部104c、印刷タイミング発生部104d、駆動信号発生部104e、及び、駆動信号選択部104fは、当該マイコンによって統括制御される。
【0051】
尚、印刷データ生成部103は、例えば、インクジェット印刷装置Uの本体内に配設され、インクジェットヘッド制御部104は、インクジェットヘッド102に付設されている。
【0052】
次に図3のブロック図の動作について説明する。
【0053】
まず初めに印刷データの生成から転送までのデータの流れを説明する。
【0054】
印刷データ生成部103の印刷データ生成部103aでは、印刷対象の基板101上のセル101aの配置位置であるセル配置データ103dと、セル101a内のインク吐出模様であるセル模様データ103cに基づいて印刷用の画像データが生成される。
【0055】
データ送信部103bでは、印刷データ生成部103aで生成された画像データ、及び、セル配置データ103d、不吐出ノズルデータ103eをインクジェットヘッド制御部104内のデータ受信部104aに送信する。
【0056】
データ受信部104aでは、データ送信部103bより受信した画像データを印刷データ保持メモリ104bに保存し、セル配置データ103dをセル配置保持メモリ104hに保存し、不吐出ノズルデータ103eを不吐出ノズル保持メモリ104iに保存する。
【0057】
次に印刷時のデータの流れを説明する。
【0058】
印刷時には印刷対象の基板101がx方向に移動する、その際、インクジェットヘッド制御部104の位置検出部104cが基板101との相対位置の変化を検出し、相対位置変化に合わせたタイミングパルスを発生させる。
【0059】
印刷タイミング発生部104dは、位置検出部104cから出力されるタイミングパルスを印刷解像度Rxに基づいて分周し、インクジェットヘッド102のノズルを駆動する電圧波形の発生タイミングを規定する印刷タイミング信号を生成して出力する。
【0060】
不吐出ノズル補完部104gは、印刷タイミング発生部104dにより生成された印刷タイミング信号に基づき印刷データ保持メモリ104bに保存された印刷データを読出し、セル配置保持メモリ104hから読み出したセル配置データ103dと、不吐出ノズル保持メモリ104iから読み出した不吐出ノズルデータ103eを使用して不吐出ノズル補完処理を行う。不吐出ノズル補完処理については図5~8を使って後から説明する。
【0061】
駆動信号発生部104eは、印刷タイミング発生部104dにより生成された印刷タイミング信号に基づきインクジェットヘッドのノズル駆動波形を出力する。
【0062】
駆動信号選択部104fは、駆動信号発生部104eより送られたノズル駆動波形を、不吐出ノズル補完部104gより送られた印刷データを基にノズル毎にオン/オフすることにより、インクジェットヘッド102のインクの吐出の有無を制御する。
【0063】
(本発明の制御構成の利点)
図4に、実施の形態の構成を用いた際のインクジェット印刷装置Uの運用を示す。図4(a)は初回印刷時の運用フローであり、図4(b)は不吐出ノズル変更時の運用である。尚、図4(a)、図4(b)に示す処理は、例えば、インクジェット印刷装置Uの各部がコンピュータプログラムに従って実行する処理である。
【0064】
まず、図4(a)について説明する。図4(a)のステップ201は印刷データ読込処理であり、この処理では、印刷データ生成部103aが、図3の印刷対象の基板101のセル101aの配置位置であるセル配置データ103dと、セル101a内のインク吐出模様であるセル模様データ103cを読み込む。
【0065】
図4のステップ202は印刷データ生成処理であり、図3の基板101のセル101aの配置位置であるセル配置データ103dと、セル101a内のインク吐出模様であるセル模様データ103cに応じて印刷データを生成する。
【0066】
図4のステップ204は転送処理であり、図3の印刷データ及びセル配置データ103dと不吐出ノズルデータ103eを、印刷データ生成部103(即ち、インクジェット印刷装置Uの本体)からインクジェットヘッド制御部104に転送する処理である。
【0067】
図4のステップ206は、不吐出補完&印刷処理であり、図3の印刷対象の基板101の移動に合わせて104bに保存された印刷データを逐次不吐出補完処理を行いながら印刷を行う処理である。
【0068】
次に図4(b)に不吐出ノズル変更時の処理フローを示す。図4の207の不吐出ノズル転送では、データ送信部103bが、図3の不吐出ノズルデータ103eを不吐出ノズル保持メモリ104iに転送する。
【0069】
図4のステップ206は、不吐出補完&印刷処理であり、図3の印刷対象の基板101の移動に合わせて印刷データ保持メモリ104bに保存された印刷データを逐次不吐出補完処理を行いながら印刷を行う処理である。
【0070】
上記の様に本発明の制御構成では、不吐出ノズル変更を行った場合でも、不吐出ノズル転送207を実施すれば、印刷を実施する事が可能であり、図2(b)の様に印刷データの生成・転送をしなおす必要が無い。その為、データ生成と転送にかかる時間を短縮する事が可能となる。
【0071】
(本発明の不吐出補完処理の流れ)
ここでは、図5のフローチャートを用いて本発明の不吐出補完処理の流れについて説明する。
【0072】
ステップ501は、吐出必要画素取得処理であり、この処理では、不吐出ノズル補完部104gが、図3の印刷データ保持メモリ104bからセル配置保持メモリ104hの内容に応じて、セル位置に対応する吐出必要画素を取得する。吐出必要画素の取得方法については、図6を用いて後から説明する。
【0073】
ステップ502は、吐出不可能画素取得処理であり、この処理では、不吐出ノズル補完部104gが、図3の不吐出ノズル保持メモリ104iからセル配置保持メモリ104hの内容に応じて、セル位置に対応する吐出不可能画素を取得する。吐出不可能画素の取得方法については、図7を用いて後から説明する。
【0074】
ステップ503からステップ509までは、補完処理の内容になる詳細は図8を用いて後から説明する。
【0075】
ステップ503は、補完不可能画素算出処理であり、この処理では、不吐出ノズル補完部104gが、印刷画素と吐出不可能画素のORを取ることで、吐出必要画素か吐出不可能画素に指定されており、不吐出補完に使用できない画素を求める。
【0076】
ステップ504は、補完対象画素算出処理であり、この処理では、不吐出ノズル補完部104gが、印刷画素と吐出不可能画素のANDを取ることで、吐出必要画素が吐出不可能画素に指定されおり、不吐出補完が必要な画素を求める。
【0077】
ステップ505は、補完先画素算出処理であり、この処理では、不吐出ノズル補完部104gが、ステップ504で求めた補完対象画素を予め決めたシフト数だけ循環シフトさせる事で補完対象画素をシフトさせる。
【0078】
ステップ506は、補完処理後画素算出処理であり、この処理では、不吐出ノズル補完部104gが、ステップ503で求めた補完不可能画素とステップ505で求めた補完先画素のORを取ることで補完後画素を求める。
【0079】
ステップ507は、補完失敗画素算出処理であり、この処理では、不吐出ノズル補完部104gが、ステップ503で求めた補完不可能画素とステップ505で求めた補完先画素のANDを取ることで補完失敗画素を求める。
【0080】
ステップ508は、繰返し回数の判定処理であり、この処理では、不吐出ノズル補完部104gが、ステップ505、ステップ506、ステップ507の処理をセル内画素-1回分繰返す事でセル内画素すべてに対して補完可能か計算したことになる。
【0081】
ステップ509は、不吐出ノズル除外処理であり、この処理では、不吐出ノズル補完部104gが、ステップ506で計算した最終の補完後画素とステップ502の吐出不可能画素を論理反転した値のANDを取ることで不吐出ノズルを使用しない、不吐出補完後の最終吐出データを求める。
【0082】
(吐出必要画素取得処理)
次に、図6を用いて、図5のステップ501の吐出必要画素取得処理について説明する。図6では、印刷走査方向に配置可能な液滴数が変わった場合のメモリ上の吐出必要画素配置を表している。
【0083】
図6の601は、セル内への吐出に印刷走査方向に1液滴、印刷走査方向と直行するノズル方向に4ノズル割り当て可能な場合のセル内の液滴配置を表している。601のX方向は印刷走査方向を表しており、セル内の画素0~3は印刷走査方向と直行する方向に配置されており、夫々異なるノズルから吐出されるものとする。601の黒丸は吐出した液滴、白丸は吐出しない液滴を表しており、601の場合は0、2の位置に吐出したことになる。
【0084】
602は、601のメモリ上の吐出必要画素であり、1ビット単位で吐出の有無を表しており、1が吐出必要画素、0が吐出不必要画素を表している。また、各ビットは601の画素0~3と対応しており、0番地及び2番地のビットは吐出、1番地及び3番地のビットは吐出不必要画素となっている。
【0085】
603は、セル内への吐出に印刷走査方向に2液滴、印刷走査方向と直行するノズル方向に4ノズル割り当て可能な場合のセル内の液滴配置を表している。
【0086】
603のX方向は印刷走査方向を表しており、セル内の1行目の画素0~3は印刷走査方向と直行する方向に配置されており、夫々異なるノズルから吐出される。セル内の2行目の画素4~7は印刷走査方向と直行する方向に配置されており、夫々異なるノズルから吐出される。また、セル内の画素0と7、1と6、2と5、3と4に対しては、同一ノズルから吐出される。603の黒丸は吐出した液滴、白丸は吐出しない液滴を表しており、603の場合は画素0~7のうち、0、2、4、6の位置に吐出されたことになる。
【0087】
604は、603のメモリ上の吐出必要画素であり、1ビット単位で吐出の有無を表しており、1が吐出必要画素、0が吐出不必要画素を表している。また、各ビットは603の画素0~7と対応しており、0番地、2番地、4番地、及び6番地のビットは吐出、1番地、3番地、5番地,及び7番地のビットは吐出不必要画素となっている。
【0088】
605は、セル内への吐出に印刷走査方向に3液滴、印刷走査方向と直行するノズル方向に4ノズル割り当て可能な場合のセル内の液滴配置を表している。
【0089】
605のX方向は印刷走査方向を表しており、セル内の1行目の画素0~3は印刷走査方向と直行する方向に配置されており、夫々異なるノズルから吐出される。セル内の2行目の画素4~7は印刷走査方向と直行する方向に配置されており、夫々異なるノズルから吐出される。セル内の3行目の画素8~Bは印刷走査方向と直行する方向に配置されており、夫々異なるノズルから吐出される。また、セル内の画素0と7と8、1と6と9、2と5とA、3と4とBに対しては、同一ノズルから吐出される。605の黒丸は吐出した液滴、白丸は吐出しない液滴を表しており、605の場合は、画素0~Bのうち、0、2、4、6、8、Aの位置に吐出されたことになる。
【0090】
606は、605のメモリ上の吐出必要画素であり、1ビット単位で吐出の有無を表しており、1が吐出必要画素、0が吐出不必要画素を表している。また、各ビットは605の0~Bと対応しており、0番地、2番地、4番地、6番地、8番地及びA番地のビットは吐出不必要画素となっており、1番地、3番地、5番地、7番地、9番地及びB番地のビットは吐出必要画素となっている。
【0091】
上記の様にセル内に印刷走査方向に複数行の液滴を配置する場合は、603、605の点線のように、一筆書きのように隣接する液滴を連続して読み出してメモリ上に配置する。このような形式で、メモリ上に配置する事で、後述する補完処理を行った際に不吐出ノズル近傍のノズルで優先的に補完されるようにしている。また、ここではノズル配列方向に4ノズル割り当て可能な場合のセル内の液滴配置を例に説明しているが、セル内への割り当てノズル数は、セル配置データ103dによって任意に変更可能である。
【0092】
(吐出不可能画素取得処理)
次に、図7を用いて、図5のステップ502の吐出不可能画素取得処理について説明する。図7では、印刷走査方向に配置可能な液滴数が変わった場合のメモリ上の吐出必要画素配置を表している。
【0093】
図7の701は、インクジェットヘッドを表しており、0~3はヘッド内のノズルを表しており、黒丸が不吐出ノズル、白丸が吐出ノズルとなっている。701の場合、3番目のノズルは不吐出ノズル、0~2番目のノズルは吐出ノズルとなっている。
【0094】
702は、セル内への吐出に印刷走査方向に1液滴、印刷走査方向と直行するノズル方向に4ノズル割り当て可能な場合のセル内の液滴配置を表している。
【0095】
702のX方向は印刷走査方向を表しており、セル内の画素0~3は印刷走査方向と直行する方向に配置されており、夫々異なるノズルから吐出されるものとする。702の黒丸は不吐出ノズルに対応する液滴、白丸は吐出ノズルに対応する液滴を表している。701の3番ノズルが不吐出ノズルである為に、702のセル内液滴配置では3番目の液滴が不吐出ノズルと対応する液滴(即ち、吐出量が小さい液滴)となる。
【0096】
703は、702のメモリ上の吐出不可能画素配置であり、1ビット単位で吐出不可能画素の有無を表しており、1が吐出不可能画素、0が吐出可能画素を表している。また、各ビットは702の画素0~3と対応しており、0~2番地のビットは吐出可能、3番地のビットは吐出不可能画素となっている。
【0097】
704は、セル内への吐出に印刷走査方向に2液滴、印刷走査方向と直行するノズル方向に4ノズル割り当て可能な場合のセル内の液滴配置を表している。
【0098】
704のX方向は印刷走査方向を表しており、セル内の1行目の画素0~3は印刷走査方向と直行する方向に配置されており、夫々異なるノズルから吐出される。セル内の2行目の画素4~7は印刷走査方向と直行する方向に配置されており、夫々異なるノズルから吐出される。また、セル内の画素0と7、1と6、2と5、3と4は同一ノズルから吐出される。704の黒丸は不吐出ノズルに対応する液滴、白丸は吐出ノズルに対応する液滴を表している。701の3番ノズルが不吐出ノズルである為に、704のセル内液滴配置では3、4番目の液滴が不吐出ノズルと対応する液滴(即ち、吐出量が小さい液滴)となる。
【0099】
705は、704のメモリ上の吐出不可能画素配置であり、1ビット単位で吐出不可能画素の有無を表しており、1が吐出不可能画素、0が吐出可能画素を表している。また、各ビットは705の画素0~7と対応しており、0~2、5~7番地のビットは吐出可能、3、4番地のビットは吐出不可能画素となっている。
【0100】
706は、セル内への吐出に印刷走査方向に3液滴、印刷走査方向と直行するノズル方向に4ノズル割り当て可能な場合のセル内の液滴配置を表している。
【0101】
706のX方向は印刷走査方向を表しており、セル内の1行目の画素0~3は印刷走査方向と直行する方向に配置されており、夫々異なるノズルから吐出される。セル内の2行目の画素4~7は印刷走査方向と直行する方向に配置されており、夫々異なるノズルから吐出される。セル内の3行目の画素8~Bは印刷走査方向と直行する方向に配置されており、夫々異なるノズルから吐出される。また、セル内の画素0と7と8、1と6と9、2と5とA、3と4とBは同一ノズルから吐出される。706の黒丸は不吐出ノズルに対応する液滴、白丸は吐出ノズルに対応する液滴を表している。701の3番ノズルが不吐出ノズルである為に、706のセル内液滴配置では3、4、B番目の液滴が不吐出ノズルと対応する液滴(即ち、吐出量が小さい液滴)となる。
【0102】
707は、705のメモリ上の吐出不可能画素配置であり、1ビット単位で吐出不可能画素の有無を表しており、1が吐出不可能画素、0が吐出可能画素を表している。また、各ビットは706の画素0~Bと対応しており、0~2、5~A番地のビットは吐出可能、3、4、B番地のビットは吐出不可能画素となっている。
【0103】
上記の様に吐出必要画素取得処理(ステップ501)と同様の手順で吐出不可能画素を取得する。また、ここではノズル方向に4ノズル割り当て可能な場合のセル内の液滴配置を例に説明しているが、セル内へのノズル方向の割り当てノズル数は、セル配置データ103dによって任意に変更可能である。
【0104】
(不吐出補完処理の説明)
図8は、本発明の不吐出補完の処理内容を順番に説明したものである。
【0105】
図8の(a)は、図5のステップ501の吐出必要画素取得処理によって、取得された吐出必要画素のデータ(即ち、インクジェットヘッド102のノズル列のうち、印刷のために吐出が必要なノズルの位置を示すビット列)を示している。尚、(a)のビット列は、例えば、インクジェットヘッド102のノズル配列の順に、各ノズルの吐出が必要な位置を、表現している。(a)のビット列では、吐出が必要な位置を1で表現し、吐出が不要な位置を0で表現している。
【0106】
(b)は、ステップ502の吐出不可能画素取得処理によって、取得された吐出不可能画素のデータ(即ち、インクジェットヘッド102のノズル列のうち、不吐出ノズルの位置を示すビット列)を示している。尚、(b)のビット列は、例えば、インクジェットヘッド102のノズル配列の順に、吐出ができない位置を、表現している。(b)のビット列では、吐出ができない位置を1で表現し、吐出ができる位置を0で表現している。
【0107】
(c)は、ステップ503の補完不可能画素算出処理によって、吐出必要画素のデータ(a)と吐出不可能画素のデータ(b)のビット毎のORを取ることで、補完不可能画素のデータ(即ち、インクジェットヘッド102のノズル列のうち、不吐出補完に使用できないノズルの位置を示すビット列)を生成する処理を示している。尚、(c)のビット列では、吐出を補完できない位置を1で表現し、吐出補完ができる位置を0で表現している。
【0108】
(d)は、ステップ504の補完対象画素算出処理によって、吐出必要画素(a)と吐出不可能画素(b)のビット毎のANDを取ることで、補完対象画素のデータ(即ち、インクジェットヘッド102のノズル列のうち、吐出ノズルで補完する必要があるノズルの位置を示すビット列)を生成する処理を示している。尚、(d)のビット列では、補完吐出が必要な位置を1で表現し、補完吐出が必要ではない位置を0で表現している。
【0109】
本発明の制御構成をハードウェアで実現する場合、不吐出ノズル補完部104g内に、セル内画素数-1段の多段回路を構成する事によって、全画素に対して補完検証演算が可能となる。尚、本実施形態に係るインクジェットヘッド102では、1個のセル内に対して、4個のノズルから吐出可能となっているため、不吐出ノズル補完部104gは、以下の3段の検証演算を実行するように構成される。
【0110】
(e)、(f)、(g)は、補完ノズルを探索するための1段目の検証演算となる。
【0111】
(e)は、ステップ505の補完先画素算出処理によって、(d)で生成された補完対象画素のデータを左に1ビット循環シフトすることで、補完先画素のデータ(即ち、インクジェットヘッド102のノズル列のうち、補完候補ノズルの位置を示すビット列)を生成する処理を示している。尚、(e)の補完先画素のデータは、補完先が(d)の補完対象画素のデータから別の場所に変更されたデータである。(e)のビット列では、補完先を1で表現し、0は、補完先ではないことを示している。
【0112】
ここで、循環シフトとはビットシフト処理をした際に桁あふれするビットを循環させる方式で、例えば上位ビット側にビットシフトした場合は最上位ビットの値を最下位ビットに移動させ、下位ビット側にビットシフトした場合は、最下位ビットの値を最上位ビットに移動させる事でビットシフトによる桁あふれで抹消されるデータを無くすビットシフト方式である。
【0113】
(f)は、ステップ506の補完処理後画素算出処理によって、(c)で生成された補完不可能画素のデータと(e)で生成された補完先画素のデータのビット毎のORを取ることで、補完処理後画素のデータ(即ち、(e)の補完ノズルで補完できる位置を示すビット列)を生成する処理を示している。尚、(f)のビット列では、補完した場合に、補完できない場合を1で示し、補完できる場所を0で示す。補完処理が失敗している場合、(f)で生成された補完処理後画素のビット列は、(c)で生成されたビット列と同一のビット列である。
【0114】
(g)は、ステップ507の補完失敗画素算出処理によって、(c)で生成された補完不可能画素のデータと(e)で生成された補完先画素のデータのビット毎のANDを取ることで、補完失敗画素のデータを生成する処理を示している。ここで、(d)が示す補完対象画素のうち、全ての補完対象画素が補完された場合は、(g)の値は全ビット0となる。ここでは、(g)に示すように、3ビット目が1なので補完が完了していない事を示している。尚、(g)のビット列では、1が、補完できなかった失敗を示す。0は、問題ない部分を示す。
【0115】
(h)、(i)、(j)は、補完ノズルを探索するための2段目の検証演算となる。
【0116】
(h)は、ステップ505の補完先画素算出処理によって、(g)で生成された補完失敗画素のデータを左に1ビット循環シフトすることで、(e)のデータとは異なる補完先画素のデータを生成する処理を示している。即ち、この処理によって、補完候補ノズルの変更が行われる。尚、(h)のビット列では、補完先を1で示す。0は補完しない部分である。
【0117】
(i)は、ステップ506の補完処理後画素算出処理によって、(f)で生成された補完処理後画素のデータと(h)で生成された補完先画素のデータのビット毎のORを取ることで、補完処理後画素のデータ(即ち、(h)の補完ノズルで補完できる位置を示すビット列)を生成する処理を示している。尚、(i)のビット列では、補完処理をした場合に、補完できない場合を1で示し、補完できる場所を0で示す。補完処理が失敗している場合、(i)で生成された補完処理後画素のビット列は、(c)で生成されたビット列と同一のビット列である。
【0118】
(j)は、ステップ507の補完失敗画素算出処理によって、(f)で計算した補完処理後画素と(h)で計算した補完先画素のビット毎のANDを取ることで、補完失敗画素のデータを生成する処理を示している。ここで、(d)に示した全ての補完対象画素が補完された場合は、(j)の値は全ビット0となるが(j)の補完失敗画素は、0ビット目が1なので補完が完了していない事を示している。尚、(j)のビット列では、補完処理後、1が、補完できなかった失敗を示す。0は、問題のない部分を示す。この場合、4ビット目に1があるので、失敗である。
【0119】
(k)、(l)、(m)は、補完ノズルを探索するための3段目の検証演算となる。
【0120】
(k)は、ステップ505の補完先画素算出処理によって、(j)で生成された補完失敗画素のデータを左に1ビット循環シフトすることで、(h)のデータとは異なる補完先画素のデータを生成する処理を示している。
【0121】
(l)は、ステップ506の補完処理後画素算出処理によって、(i)で生成された補完処理後画素のデータと(k)で生成された補完先画素のデータのビット毎のORを取ることで、補完処理後画素のデータ(即ち、(k)の補完ノズルで補完できる位置を示すビット列)を生成する処理を示している。
【0122】
(m)は、ステップ507の補完失敗画素算出処理によって、(i)で生成された補完処理後画素のデータと(k)で生成された補完先画素のデータのビット毎のANDを取ることで、補完失敗画素のデータを生成する処理を示している。ここで、(d)に示した全ての補完対象画素が補完された場合は、(j)の値は全ビット0となるが(m)の補完失敗画素は、全ビット0なので補完が完了した事を示している。
【0123】
(n)は、ステップ509の吐出不可能画素除外処理によって、(l)で生成された補完処理後画素のデータと、(b)で取得した吐出不可能画素のデータを論理反転した情報とのANDを取ることで、不吐出画素を使用しない除外後画素のデータを生成する処理を示している。
【0124】
(n)で生成された除外後画素のデータが、不吐出ノズルを使用せずに、吐出ノズルのみで、セル内に必要な吐出量を吐出し得るようにするための最終吐出データとなる。そして、インクジェット印刷装置Uは、印刷実行時には、この最終吐出データを用いて、インクジェットヘッド102の各ノズルに液滴吐出を実行させることになる。なお、図8の態様においては、1番目のノズルを用いて、印刷データから吐出が必要となる2番地の画素を補完することになる。
【0125】
以上のことから、本実施の形態の制御構成では、不吐出補完を単純な論理演算とビットシフト処理の組合せで実現できる。このように、本発明に係るインクジェット印刷装置の制御方法によれば、単純なロジックで補完処理が実行可能で、ハードウェアでの補完処理が可能となる。
加えて、本実施の形態の制御構成では、インクジェットヘッド102のノズル列のうち、不吐出ノズルの位置が変更した場合にも、印刷データの生成・転送をやりなおすことなく、不吐出ノズルの補完が可能である。即ち、本実施の形態の制御構成によれば、不吐出ノズルの位置が変更した場合にも、印刷を継続する事が可能である。
【0126】
なお、(e)、(h)、(k)で使用する循環シフト量は、上記説明では上位ビットへ1ビットずつシフトする処理になっているが、補完先画素が、初期の補完対象画素位置を除く、セル内の全画素を網羅出来ていれば良い。例えば、不吐出ノズルを補完する際になるべく近傍のノズルで補完したい場合、不吐出ノズルの左右の隣接する位置に吐出ノズルが無いか調べながら、徐々に対象ノズルを広げていく方法が考えられる。この場合、(e)の1段目の補完先画素取得処理で上位ビットへ1ビット循環シフトする事で3ビット目が1になり、(h)の2段目の補完先画素取得処理で下位ビットへ2ビット循環シフトする事で1ビット目が1になり、(k)の3段目の補完先画素取得処理で上位ビットへ3ビット循環シフトすることで0ビット目が1になり、初期位置以外のセル内の全画素を網羅出来ているのでこの様なシフト量の与え方をしても良い。
【0127】
又、図8では、ステップ506の補完処理後画素算出処理、及び、ステップ507の補完失敗画素算出処理の両方を行って、ステップ505の補完先画素算出処理で決定した補完先候補ノズルにて、不吐出ノズルの補完が可能か否かを判定する処理を行う態様を示した。しかしながら、ステップ505の補完先画素算出処理で決定した補完先候補ノズルにて、不吐出ノズルの補完が可能か否かは、ステップ506の補完処理後画素算出処理、又は、ステップ507の補完失敗画素算出処理のいずれか一方のみであっても判定可能である。かかる観点から、本発明においては、ステップ506の補完処理後画素算出処理、又は、ステップ507の補完失敗画素算出処理のいずれか一方のみを行う構成であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0128】
本発明の吐出パターン生成方法及び吐出パターン生成装置を用いれば、単純なロジックで不吐出ノズルの補完処理可能となる為、例えば、インクジェット印刷装置Uのノズル状況の変化に応じた印刷画像データの変更を高速に行うことができる。また、そのため、例えば有機ELディスプレイパネルの製造における有機発光材料を塗布形成するための液滴吐出式印刷装置での利用に有用である。
【符号の説明】
【0129】
U インクジェット印刷装置
101 印刷対象の基板(ディスプレイパネル)
101a 印刷対象の基板上に形成されたセル
102 インクジェットヘッド
102a インクジェットヘッドのノズル穴
103 印刷データ生成部
103a 印刷データ生成部
103b データ送信部
103c セル模様データ
103d セル配置データ
103e 不吐出ノズルデータ
104 インクジェットヘッド制御部
104a データ受信部
104b 印刷データ保持メモリ
104c 位置検出部
104d 印刷タイミング発生部
104e 駆動信号発生部
104f 駆動信号選択部
104g 不吐出ノズル補完部
104h セル配置保持メモリ
104i 不吐出ノズル保持メモリ
201 印刷データ読込処理
202 印刷データ生成処理
203 不吐出補完処理
204 転送処理
205 印刷処理
206 不吐出補完処理&印刷
207 不吐出ノズル転送処理
501 吐出必要画素取得処理
502 吐出不可能画素取得処理
503 補完不可能画素算出処理
504 補完対象画素算出処理
505 補完先画素算出処理
506 補完処理後画素算出処理
507 補完失敗画素算出処理
508 繰返回数判定処理
509 吐出不可能画素除外処理
601 印刷走査方向に1液滴配置した際のセル内液滴配置
602 印刷走査方向に1液滴配置した際のメモリ上の吐出必要画素配置
603 印刷走査方向に2液滴配置した際のセル内液滴配置
604 印刷走査方向に2液滴配置した際のメモリ上の吐出必要画素配置
605 印刷走査方向に3液滴配置した際のセル内液滴配置
606 印刷走査方向に3液滴配置した際のメモリ上の吐出必要画素配置
701 インクジェットヘッド上の不吐出ノズル配置
702 印刷走査方向に1液滴配置した際のセル内の不吐出ノズル配置
703 印刷走査方向に1液滴配置した際のメモリ上の吐出不可能画素配置
704 印刷走査方向に2液滴配置した際のセル内の不吐出ノズル配置
705 印刷走査方向に2液滴配置した際のメモリ上の吐出不可能画素配置
706 印刷走査方向に3液滴配置した際のセル内の不吐出ノズル配置
707 印刷走査方向に3液滴配置した際のメモリ上の吐出不可能画素配置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8