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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-28
(45)【発行日】2023-10-06
(54)【発明の名称】電波強度モニタリングシステム
(51)【国際特許分類】
   G16H 40/20 20180101AFI20230929BHJP
   G01S 1/68 20060101ALI20230929BHJP
   G01R 29/08 20060101ALI20230929BHJP
   G01S 5/02 20100101ALI20230929BHJP
【FI】
G16H40/20
G01S1/68
G01R29/08 B
G01S5/02 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019091417
(22)【出願日】2019-05-14
(65)【公開番号】P2020187534
(43)【公開日】2020-11-19
【審査請求日】2022-04-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504013775
【氏名又は名称】学校法人 埼玉医科大学
(74)【代理人】
【識別番号】100082418
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 朔生
(74)【代理人】
【識別番号】100167601
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 信之
(74)【代理人】
【識別番号】100201329
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 真二郎
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 哲夫
(72)【発明者】
【氏名】石島 透
(72)【発明者】
【氏名】川邉 学
(72)【発明者】
【氏名】加納 隆
(72)【発明者】
【氏名】本塚 旭
(72)【発明者】
【氏名】榎本 幸佑
(72)【発明者】
【氏名】小川 凌太
【審査官】吉田 誠
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-015562(JP,A)
【文献】特開平08-189943(JP,A)
【文献】特開2017-090171(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H 10/00 - 80/00
G01S 1/68
G01R 29/08
G01S 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療施設での医療用テレメータ信号の電波強度をモニタリングするためのシステムであって、
各測定箇所に設置してBeaconIDからなる識別信号を発信する、識別信号発信手段と、
前記識別信号を受信する、識別信号受信手段と、
前記受信した識別信号と、該識別信号の受信時刻とを少なくとも含む受信情報を送信する、受信情報送信手段と、
前記医療用テレメータ信号を送信する、医療用テレメータ信号送信手段と、
前記医療用テレメータ信号送信手段から送信された前記医療用テレメータ信号を分配する、分配器と、
前記分配器によって分配された前記医療用テレメータ信号を受信する、セントラルモニタと、
前記分配器によって分配された前記医療用テレメータ信号を受信して、該医療用テレメータ信号の受信時刻における医療用テレメータ信号の強度情報を求める、強度情報生成手段と、
前記受信情報と、前記医療用テレメータ信号の受信時刻における該医療用テレメータ信号の強度情報を受信して蓄積する、蓄積手段と、
前記蓄積手段に蓄積してある、前記識別信号の受信時刻と、前記医療用テレメータ信号の受信時刻とを紐付けることによって、各測定箇所における該医療用テレメータ信号の電波強度を求め、医療施設の建屋図面に、各測定箇所における医療用テレメータ信号の電波強度を色分けして可視化した第1の計測結果画面を生成する、画面表示手段と、を少なくとも具備したことを特徴とする、
医療施設用の電波強度モニタリングシステム。
【請求項2】
前記画面表示手段による、前記測定箇所の特定が、
(方法1)1つの前記識別信号発信手段から前記識別信号受信手段が受信した識別信号の電波強度の値から推定した距離情報に基づいて特定した座標情報、
(方法2)複数の前記識別信号発信手段から前記識別信号受信手段が受信したそれぞれの識別信号の電波強度の値から推定した複数の距離情報に基づいて特定した座標情報、
(方法3)複数の前記識別信号発信手段から前記識別信号受信手段が受信した識別信号の電波強度の値を比較して最も近い距離にあると推定した前記識別信号発信手段について予め保存されてある座標情報、
の中から何れかの方法を用いることを特徴とする、
請求項に記載の、医療施設用の電波強度モニタリングシステム。
【請求項3】
前記識別信号受信手段および前記医療用テレメータ信号送信手段を、医療施設内を巡回可能な台車に搭載してあることを特徴とする、
請求項1または2に記載の医療施設用の電波強度モニタリングシステム。
【請求項4】
前記受信情報送信手段において、測定箇所毎に電波強度の閾値が予め設定されており、当該閾値を超えた電波強度の識別信号を受信した際に、前記受信情報を送信することを特徴とする、
請求項1乃至3のうち何れか1項に記載の、医療施設用の電波強度モニタリングシステム。
【請求項5】
少なくとも前記識別信号受信手段が静止しているか否かを検知可能な静止検知手段を更に具備することを特徴とする、
請求項1乃至4のうち何れか1項に記載の医療施設用の電波強度モニタリングシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療施設などの各種の施設または現場において、医療用テレメータ、無線LAN、その他の通信機器で使用する電波の強度をモニタリングするためのシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、利便性やコスト削減などの観点から様々な機材のワイヤレス化が進んでいる。しかし、これらの電波を利用した通信機器(電波利用機器)が盛んに使用されることで、混信や干渉による通信速度の低下や通信停止などの不具合が発生している現状がある。
このような状況を改善するためには、通信機器を利用する場所の電磁環境の情報を把握し、不具合が発生しない環境を整える必要がある。
【0003】
通信機器を利用する場所として、例えば医療機関内では、電子カルテシステムをはじめとする医療情報用無線LANや、患者呼び出しシステム、医療用テレメータ、患者見守りシステム、業務用PHSや携帯電話など、非接触カードリーダによる入退室管理システムなど、施設のあらゆる場所で電波利用機器が使用されている。
一方で、これらの通信機器同士の電波干渉、電気設備や通信設備などから放射される電磁ノイズによって無線通信の不具合が発生している現状がある。医療ではこのような不具合が、患者の容態の変化を見逃しなどの事故につながる可能性があるため、医療施設内で電波利用機器を利用するすべてのエリアにおいて無線通信を確実に行える電波環境をつくる必要がある。
【0004】
上記の必要性から、医療施設に設置された医療機器の管理や監視を行う発明として、以下の特許文献に記載の発明がある。
特許文献1に記載の発明は、医療機器に装着したRFIDタグと、当該RFIDタグからのデータ受信時に別途計測した電波強度と、固有の中継器IDデータとを転送する中継器と、これらの転送データから医療機器の位置と使用状況とを解析する情報処理装置を有して構成した、医療機器管理システムが開示されている。
特許文献2に記載の発明は、複数の医療機器からそれぞれ出力された稼働情報やアラート情報を、統一化されたフォーマットに変換したのち、監視サーバが変換データを用いて異常事象の判定を行い、判定結果に基づいて監視端末に対しアラーム出力を行う、医療器機監視システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2012-27628号公報
【文献】特開2018-124913号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記特許文献に記載のシステムでは、以下の問題を有する。
(1)特許文献1に記載のシステムでは、位置情報の記録・管理が無い為、場所毎に電波強度の影響を自動的に記録することができない。
(2)特許文献2に記載のシステムでは、監視の対象となる装置の時間波形をモニタリングしているに過ぎず、場所の特定に関する情報を得ることができなかった。
【0007】
本発明は、測定箇所での位置情報と電波強度情報を関連付けることで、電波強度を可視化した計測結果を表示可能な手段の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決すべくなされた本願の第1発明は、医療施設での医療用テレメータ信号の電波強度をモニタリングするためのシステムであって、各測定箇所に設置してBeaconIDからなる識別信号を発信する、識別信号発信手段と、前記識別信号を受信する、識別信号受信手段と、前記受信した識別信号と、該識別信号の受信時刻とを少なくとも含む受信情報を送信する、受信情報送信手段と、前記医療用テレメータ信号を送信する、医療用テレメータ信号送信手段と、前記医療用テレメータ信号送信手段から送信された前記医療用テレメータ信号を分配する、分配器と、前記分配器によって分配された前記医療用テレメータ信号を受信する、セントラルモニタと、前記分配器によって分配された前記医療用テレメータ信号を受信して、該医療用テレメータ信号の受信時刻における医療用テレメータ信号の強度情報を求める、強度情報生成手段と、前記受信情報と、前記医療用テレメータ信号の受信時刻における該医療用テレメータ信号の強度情報を受信して蓄積する、蓄積手段と、前記蓄積手段に蓄積してある、前記識別信号の受信時刻と、前記医療用テレメータ信号の受信時刻とを紐付けることによって、各測定箇所における該医療用テレメータ信号の電波強度を求め、医療施設の建屋図面に、各測定箇所における医療用テレメータ信号の電波強度を色分けして可視化した第1の計測結果画面を生成する、画面表示手段と、を少なくとも具備したことを特徴とする。
また、本願の第2発明は、前記第1発明において、前記画面表示手段による、前記測定箇所の特定が、(方法1)1つの前記識別信号発信手段から前記識別信号受信手段が受信した識別信号の電波強度の値から推定した距離情報に基づいて特定した座標情報、(方法2)複数の前記識別信号発信手段から前記識別信号受信手段が受信したそれぞれの識別信号の電波強度の値から推定した複数の距離情報に基づいて特定した座標情報、(方法3)複数の前記識別信号発信手段から前記識別信号受信手段が受信した識別信号の電波強度の値を比較して最も近い距離にあると推定した前記識別信号発信手段について予め保存されてある座標情報、の中から何れかの方法を用いることを特徴とする。
また、本願の第発明は、前記第1発明または第2発明において、前記識別信号受信手段および前記医療用テレメータ信号送信手段を、医療施設内を巡回可能な台車に搭載してあることを特徴とする。
また、本願の第発明は、前記第1発明乃至第3発明のうち何れか1つの発明において、前記受信情報送信手段において、測定箇所毎に電波強度の閾値が予め設定されており、当該閾値を超えた電波強度の識別信号を受信した際に、前記受信情報を送信することを特徴とする
また、本願の第5発明は、前記第1発明乃至第4発明のうち何れか1つの発明において、少なくとも前記識別信号受信手段が静止しているか否かを検知可能な静止検知手段を更に具備することを特徴とする

【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、以下に記載する効果を奏する。
(1)BeaconIDからなる識別信号の受信によって得た測定箇所の位置情報および時刻情報と、識別信号の受信時における医療用テレメータ信号または無線LAN信号の強度情報を紐付けることで、医療施設の建屋図面に、各測定箇所における医療用テレメータ信号または無線LAN信号の電波強度を可視化した計測結果画面を生成することができ、電波強度の弱いエリアを視覚的に判断することができる。
(2)測定台車でもって医療施設内を巡回する作業のみで、自動的にデータの蓄積を行うことができ、測定作業が簡単である。
(3)測定箇所毎に電波強度の閾値を予め設定しておくことで、測定箇所の什器レイアウトなどの相違に伴う位置検出の誤差を小さくすることができる。
(4)蓄積する受信情報に、複数の識別信号発信手段からそれぞれ受信した識別信号に基づき推測した位置情報を含めることで、より細かく可視化した計測画面を表示することできる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】医療用テレメータ信号をモニタリングする場合の機能ブロック図。
図2】無線LAN信号をモニタリングする場合の機能ブロック図。
図3】実施例1に係る電波強度モニタリングシステムの概略構成図。
図4】第1の計測結果画面のイメージ図。
図5】実施例2に係る電波強度モニタリングシステムの概略構成図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に係る医療施設用の電波強度モニタリングシステムの概要について、医療用テレメータ信号をモニタリングする場合(基本例1)と、無線LAN信号をモニタリングする場合(基本例2)について、図1,2に示す機能ブロック図を参照しながら説明する。
【0012】
[基本構成1]医療用テレメータ信号のモニタリング(図1
<1>全体構成
図1に、医療用テレメータ信号をモニタリングする場合の電波強度モニタリングシステムの機能ブロック図を示す。
本構成に係る医療施設用の電波強度モニタリングシステムは、医療用テレメータの電波強度を求める手段として、識別信号発信手段10、識別信号受信手段20、受信情報送信手段30、医療用テレメータ信号送信手段40、強度情報生成手段50、蓄積手段60、画面表示手段70、を少なくとも具備する。
また、医療施設内の無線LANに用いる無線LAN信号の強度を求める場合には、上記した医療用テレメータ信号送信手段40に代えて、無線LAN信号測定手段を具備する。
これらの各手段は、公知の測定機器や、PC、タブレット端末、スマートフォンなどの情報処理装置に各手段が受け持つ機能を実現するためのプログラムをインストールするなどして実現することができる。
また、各手段は、それぞれ独立した装置で構成しても良いし、1つの装置で複数の手段を兼用した構成としても良い。
以下、各手段の詳細について説明する。
【0013】
<2>識別信号発信手段
識別信号発信手段10は、各測定箇所Xに設置してBeaconIDを含んだ信号(BLE信号)を識別信号として発信するための手段である。
Beacon(ビーコン)は、低消費電力の近距離無線技術であるBluetooth(登録商標) Low Energy(BLE)を利用して位置特定を可能とする技術である。
識別信号発信手段10は、このBeacon本体の識別情報(BeaconID)を含んだ信号(BLE信号)の発信機に相当する。
【0014】
<3>識別信号受信手段
識別信号受信手段20は、少なくとも各測定箇所Xに設置された前記識別信号発信手段10からの識別信号を受信するための手段である。
識別信号発信手段10は、前記したBLE信号を受信可能な装置を利用するものとし、専用のBeacon受信機や、BLE機能を備えるPCなどの情報処理装置や、タブレット、スマートフォンなどの携帯情報端末などを用いることができる。
【0015】
<4>受信情報送信手段
受信情報送信手段30は、識別信号受信手段20で受信した識別信号と、該識別信号の受信時刻とを少なくとも含む受信情報を、後述する蓄積手段60に送信するための手段である。
識別信号の受信時刻の情報は、識別信号にあらかじめ含んだ態様であってもよいし、識別信号受信手段20で識別信号を受信した時刻であってもよい。
【0016】
<4.1>位置情報の追加
受信情報送信手段30は、受信した識別信号の電波強度から識別信号発信手段10と識別信号受信手段20との間の距離情報を推測して得た位置情報を、受信信号に含めることもできる。
識別信号(BLE信号)を用いた位置検出や送信対象の検出には、以下の方法を採用することができる。
【0017】
(方法1)識別信号の電波強度による距離換算
識別信号発信手段10は、定期的に識別信号を発信しており、識別信号発信手段10と識別信号受信手段20との間の距離の長短によって、識別信号の電波強度が変動するため、受信した識別信号の電波強度の値で求められる、識別信号発信手段10と識別信号受信手段20との間の距離によって、識別信号受信手段20の座標を特定する方法が考えられる
なお、識別信号(BLE信号)の電波強度は逐一変化するため、強度を用いた距離換算を行う際に、識別信号を複数回受信し、それらの中から電波強度の代表値を求めた上で距離換算を行うと、検出精度の向上が期待できる。
【0018】
(方法2)複数の識別信号発信手段10からの電波強度による距離換算
各測定箇所Xに設置された識別信号発信手段10同士が、比較的接近した関係にある場合、識別信号受信手段20が、同時に複数の識別信号を受信する場合も考えられる。この場合、各識別信号発信手段10に対し、前記した(方法1)による距離換算を行い、それぞれ求めた距離からより精度良く識別信号受信手段20の座標を特定する方法が考えられる。
【0019】
(方法3)電波強度の比較による選択
識別信号受信手段20が複数の識別信号を受信している場合、識別信号受信手段20は、各識別信号の電波強度から得られる距離情報を比較して、最も近い距離にある識別信号発信手段10からの受信情報を、後述する受信情報送信手段30での送信対象にする方法が考えられる。
【0020】
(方法4)電波強度の閾値設定によるフィルタリング
各識別信号発信手段10に対し、予め電波強度の閾値を設定しておき、当該閾値を超える電波強度で識別信号を受信した際に、識別信号受信手段20が、対象の測定箇所Xがある場所に存在している状態とみなして、この状態で取得した受信情報を、後述する受信情報送信手段30での送信対象にする方法が考えられる。
これは、異なる測定箇所X間において、識別信号発信手段10と識別信号受信手段20との距離が等長であっても、測定箇所Xでの什器レイアウトの違いなどによって、識別信号の電波強度が異なり、位置検出にも誤差が生ずる場合があるためである。
【0021】
<5>医療用テレメータ信号送信手段
医療用テレメータ信号送信手段40は、医療用テレメータ信号を送信するための手段である。
一般的に、医療用テレメータ信号は、各病室の入院患者から取得した心電図などの生体情報に関する信号であり、ナースステーションYなどに設置したセントラルモニタY3(生体モニタ)へと送信するための信号であるが、本発明では上記信号に限定するものではなく、これらの信号に類する点検用の信号などを用いても良い。
医療用テレメータ信号送信手段40は、一般的な医療用テレメータの送信機、すなわち、据え置き型や携帯型の医療機器に内蔵されているタイプや、これらの医療機器に別途外付けするタイプの医療用テレメータなどを用いることができる。
医療用テレメータ信号送信手段40から送信されたテレメータ信号は、医療施設内に配線された通信ケーブルを通じて、強度情報生成手段50へと送られる。
なお、本発明に係る医療用テレメータ信号を、ナースステーションYなどに設置してあるセントラルモニタY3にも送る必要がある場合には、途中で信号を二つに分配して両者に送信するように構成してもよい。
【0022】
<6>強度情報生成手段
強度情報生成手段50は、医療用テレメータ信号送信手段40からの医療用テレメータ信号を受信して、医療用テレメータ信号の強度情報を求めるための手段である。
強度情報生成手段50は、スペクトラムアナライザCと、スペクトラムアナライザCで解析した情報を強度情報として蓄積手段60へと送信可能な情報処理装置の組み合わせによって構成することができる。
【0023】
<7>蓄積手段
蓄積手段60は、受信情報送信手段30からの受信情報および強度情報生成手段50からの医療用テレメータ信号の強度情報を、受信・蓄積するための手段である。
蓄積手段60は、医療施設内に設置されたサーバや、医療施設外に設置されたクラウドサーバに、データベースを組み込んだ装置を用いることができる。
【0024】
<8>画面表示手段
画面表示手段70は、蓄積手段60で蓄積した受信情報および医療用テレメータ信号の強度情報を用いて、医療施設の建屋図面に、各測定箇所Xにおける医療用テレメータ信号の電波強度を可視化した画面(第1の計測結果画面)を生成するための手段である。
画面表示手段70は、蓄積手段60を設けた情報処理装置、または当該情報処理装置との間で情報の送受信が可能な外部端末などで動作するアプリケーションによって構成することができる。
【0025】
<8.1>位置情報の利用態様
なお、画面表示手段70で利用する位置情報は、蓄積手段60で予め識別信号発信手段10の位置情報をデータベース化している場合には、受信情報から得られる識別信号に紐付く位置情報を利用する方法や、蓄積手段60で蓄積する受信情報に位置情報が含まれている場合には、当該位置情報を利用する方法がある。
【0026】
[基本構成2]無線LAN信号のモニタリング(図2
<1>全体構成
図2に、無線LAN信号をモニタリングする場合の電波強度モニタリングシステムの機能ブロック図を示す。
本構成に係る医療施設用の電波強度モニタリングシステムは、無線LANに用いる無線LAN信号の電波強度を求める手段として、識別信号発信手段10、識別信号受信手段20、無線LAN信号受信手段80、強度情報生成手段50、測定情報送信手段、蓄積手段60、画面表示手段70、を少なくとも具備する。
これらの各手段は、公知の測定機器や、PC、タブレット端末、スマートフォンなどの情報処理装置に各手段が受け持つ機能を実現するためのプログラムをインストールするなどして実現することができる。
また、各手段は、それぞれ独立した装置で構成しても良いし、1つの装置で複数の手段を兼用した構成としても良い。
識別信号発信手段10、識別信号受信手段20および測定情報送信手段については、前記した基本例1で説明した内容と同一であるため、詳細な説明を省略する。
以下、その他の各手段の詳細について説明する。
【0027】
<2>無線LAN信号受信手段
無線LAN信号受信手段80は、医療施設に設置された無線LANのアクセスポイントからの無線LAN信号を受信するための手段である。
無線LAN信号受信手段80は、PCやタブレット、スマートフォンなどの情報処理装置に設けた無線LANインターフェースを用いることができる。
【0028】
<3>強度情報生成手段
強度情報生成手段50は、前記無線LAN信号受信手段80で受信した無線LAN信号について、受信時刻における無線LAN信号の強度情報を求めるための手段である。
強度情報生成手段50は、PCやタブレット、スマートフォンなどの情報処理装置にインストールした解析ソフトなどを用いることができる。
【0029】
<4>蓄積手段
蓄積手段60は、受信情報送信手段30から送信された受信情報および強度情報生成手段50から送信された無線LAN信号の強度情報を受信して蓄積するための手段である。
蓄積手段60には、医療施設内に設置されたサーバEや、医療施設外に設置されたクラウドサーバEに、データベースを組み込んだ装置を用いることができる。
【0030】
<5>画面表示手段
画面表示手段70は、蓄積手段60で蓄積した受信情報および無線LAN信号の強度情報を用いて、医療施設の建屋図面に、各測定箇所Xにおける無線LAN信号の電波強度を可視化した画面(第2の計測結果画面)を生成するための手段である。
画面表示手段70は、蓄積手段60を設けた情報処理装置上または、当該情報処理装置との間で情報の送受信が可能な外部端末で動作するアプリケーションによって構成することができる。
【0031】
上記した基本構成に示す各手段を適宜組み合わせて構成した、医療施設用の電波強度モニタリングシステムの実施例について、以下説明する。
【実施例1】
【0032】
<1>全体構成(図3
図3に、医療用テレメータ信号のモニタリングシステムの構成図を示す。
本実施例では、前記基本構成1に示した各手段を、Beacon発信機Aと、測定台車Bと、スペクトラムアナライザCと、施設内端末Dと、サーバEと、閲覧用端末Fと、に分けて構成している。
【0033】
<2>Beacon発信機
Beacon発信機Aは、医療施設内の各部屋や廊下などの測定箇所Xに設置する装置であり、前記した識別信号発信手段10に相当する装置である。
【0034】
<3>測定台車
測定台車Bは、各測定箇所Xを巡回して、Beacon発信機Aからの識別信号A1の受信と、巡回場所での医療用テレメータ信号B3の送信を行う装置である。
測定台車Bは、台車本体に、BLE機能と通信機能を備えた情報処理端末B1と、テレメータ発信機B2を搭載して構成する。
【0035】
本実施例では、情報処理端末B1を、IoT機器として使用される小型のシングルボードコンピュータに、モバイルバッテリーなどの電源供給装置(図示せず)と、モバイルルータなどの通信装置(図示せず)を接続して構成している。
この情報処理端末B1が、前記した識別信号受信手段20および受信情報送信手段30に相当する。
【0036】
また、テレメータ発信機B2は、医療施設の職員が携帯する携帯型の装置を用いており、前記した医療用テレメータ信号送信手段40に相当する。
発信した医療用テレメータ信号B3は、医療施設に予め配線してあるアンテナケーブルX1を通じて、ナースステーションYのアンテナコンセントY1へと送られ、分配器Y2によってセントラルモニタY3とスペクトラムアナライザCの両方に分配されている。
【0037】
<3.1>静止検知手段の追加
本実施例では、さらに、測定台車Bを構成する情報処理端末B1に三軸加速度センサなどを用いた静止検知手段(図示せず)を設けておき、測定台車Bが静止中(すなわち識別信号受信手段20が静止中)である場合に測定作業を実施するか、あるいは静止中に取得した結果のみを測定結果としてフィルタリングする構成としている。
これは、測定台車Bが走行中の状態にBeacon発信機Aからの識別信号A1の受信作業を行うと、各手段で行う情報処理による遅延等によって測位誤差が生じやすいためである。
【0038】
<4>スペクトラムアナライザおよび施設内端末
スペクトラムアナライザCは、テレメータ発信機B2から送信された医療用テレメータ信号B3の電波解析を行う装置であり、公知の装置を用いることができる。
施設内端末Dは、スペクトラムアナライザCによる解析結果に基づく医療用テレメータ信号B3の強度情報をサーバEに送信する装置であり、施設内端末DをスペクトラムアナライザCとの接続インターフェースを有するPCで構成している。
従って、本実施例におけるスペクトラムアナライザCおよび施設内端末Dは、前記した強度情報生成手段50に相当する。
【0039】
<5>サーバ
サーバEは、測定台車Bに搭載した情報処理端末B1から送信される受信情報と、施設内端末Dから送信される医療用テレメータ信号B3の強度情報を受信して蓄積する装置であり、後述する閲覧用端末Fの求めに応じて、各測定箇所Xにおける医療用テレメータ信号B3の電波強度を可視化した第1の計測結果画面を閲覧用端末Fのディスプレイに表示する装置である。
従って、本実施例におけるサーバEは、前記した蓄積手段60および画面表示手段70に相当する。
本実施例では、サーバEに、医療施設外のデータセンターに設置してあるクラウド型のサーバを用いている。
【0040】
<6>閲覧用端末
閲覧用端末Fは、サーバEに蓄積されている受信情報および強度情報に基づいて各測定箇所Xにおける医療用テレメータ信号B3の電波強度を可視化した第1の計測結果画面を閲覧するための端末である。
閲覧用端末Fは、PC、タブレット端末、スマートフォンなどの公知の情報処理装置を用いることができる。
閲覧用端末Fは、医療施設の担当職員や、医療施設から委託された設備管理業者などが使用する端末を想定する。
【0041】
<7>使用手順の一例
上記構成における電波強度のモニタリング方法の一例について説明する。
【0042】
(1)事前準備
Beacon発信機Aを医療施設内の各所に設置し、Beacon発信機Aの識別情報と設置箇所を、サーバEのデータベース上で紐づけておく。
【0043】
(2)測定台車による巡回
測定台車Bを、Beacon発信機Aを設置した各所に移動させ、静止検知手段によって測定台車Bが静止中であることを確認してから測定作業を行う。
測定台車Bに搭載した情報処理装置は、Beacon発信機Aから受信した識別信号A1と、該識別信号A1の受信時刻を、モバイルルータを介してサーバEに送信する。
さらに、測定台車Bに搭載したテレメータ発信機B2から医療用テレメータ信号B3を送信し、医療施設に予め配線してあるアンテナケーブルX1を通じて、ナースステーションY内のアンテナコンセントY1を介して、スペクトラムアナライザCへと送られる。
【0044】
(3)医療用テレメータ信号の強度情報の蓄積
スペクトラムアナライザCと接続してある施設内端末Dでは、医療用テレメータ信号B3の受信時刻および強度情報をサーバEに送信する。
【0045】
(4)計測結果の可視化(図4
サーバEでは、識別信号A1と該識別信号A1の受信時刻、および医療用テレメータ信号B3の受信時刻および強度情報が蓄積されている。
これらの情報を時刻で紐付けることによって、測定箇所X毎の医療用テレメータ信号B3の強度情報を可視化した画面(第1の計測結果画面)を生成・表示し、閲覧用端末Fでの閲覧を可能とする。
図4(a)は、第1の計測結果画面の基礎となる医療施設の建屋図面に、Beacon発信機Aの設置位置を表した図面である。
本図では、医療施設の建屋図面Zに示す廊下部分において、所定間隔を空けてBeacon発信機Aが設置されている状態を、設置位置にそれぞれ番号を付したマークZ1で表している。
図4(b)は、第1の計測結果画面Z2のイメージ図であり、図4(a)で表した建屋図面のデータに、各測定箇所Xの周辺領域毎に医療用テレメータ信号B3の電波強度を色分けして表示している。
この第1の計測結果画面Z2によれば、電波強度の弱い場所を視覚的に把握することができ、対策を施す際の参考にすることができる。
【実施例2】
【0046】
<1>全体構成(図5
図5に、無線LAN信号のモニタリングシステムの構成図を示す。
本実施例では、基本構成2に示す各手段を、Beacon発信機Aと、測定台車Bと、サーバEと、閲覧用端末Fに分けて構成している。
Beacon発信機Aは、前記した実施例1で説明した内容と同一であるため、詳細な説明を省略する。
【0047】
<2>測定台車
測定台車Bは、各測定箇所Xを巡回して、Beacon発信機Aからの識別信号A1の受信と、巡回場所での無線LAN信号G1の受信と強度測定を行う装置である。
測定台車Bは、台車本体に、BLE機能、無線LANモジュール、WiFiアナライザ機能、および通信機能を備えた情報処理端末B1を搭載して構成する。
【0048】
本実施例では、情報処理端末B1を、IoT機器として使用される小型のシングルボードコンピュータに、モバイルバッテリーなどの電源供給装置と、モバイルルータなどの通信装置を接続して構成している。この情報処理端末B1が、前記した識別信号受信手段20、無線LAN信号受信手段80、および強度情報生成手段50に相当する。
【0049】
<3>サーバ
サーバEは、測定台車Bに搭載した情報処理端末B1から送信される受信情報および無線LAN信号G1の強度情報を受信して蓄積する装置であり、後述する閲覧用端末Fの求めに応じて、各測定箇所Xにおける無線LAN信号G1の電波強度を可視化した第2の計測結果画面を閲覧用端末Fのディスプレイに表示する装置である。
従って、本実施例におけるサーバEは、前記した蓄積手段60および画面表示手段70に相当する。
本実施例では、サーバEに、医療施設外のデータセンターに設置してあるクラウド型のサーバEを用いている。
【0050】
<4>閲覧用端末
閲覧用端末Fは、サーバEに蓄積されている受信情報および強度情報に基づいて各測定箇所Xにおける医療用テレメータ信号B3の電波強度を可視化した第2の計測結果画面を閲覧するための端末である。
閲覧用端末Fは、PC、タブレット端末、スマートフォンなどの公知の情報処理装置を用いることができる。
閲覧用端末Fは、医療施設の担当職員や、医療施設から委託された設備管理業者などが使用する端末を想定する。
【0051】
<5>使用手順の一例
上記構成における電波強度のモニタリング方法の手順について説明する。
【0052】
(1)事前準備
Beacon発信機Aを医療施設内の各所に設置し、Beacon発信機Aの識別情報と設置箇所を、サーバEのデータベース上で紐づけておく。
【0053】
(2)測定台車による巡回
測定台車Bを、Beacon発信機Aを設置した各所に移動させ、静止検知手段によって測定台車Bが静止中であることを確認してから測定作業を行う。
測定台車Bに搭載した情報処理装置は、Beacon発信機Aから受信した識別信号A1と該識別信号A1の受信時刻、ならびに周囲の無線LAN機器から受信した無線LAN信号G1の強度情報を、モバイルルータを介してサーバEに送信する。
【0054】
(3)計測結果の可視化
サーバEでは、識別信号A1と該識別信号A1の受信時刻、および無線LAN信号G1の受信時刻および強度情報が蓄積されている。
これらの情報を時刻で紐付けることによって、測定箇所X毎の無線LAN信号G1の強度情報を可視化した画面(第2の計測結果画面)を生成・表示し、閲覧用端末Fでの閲覧を可能とする。
第2の計測結果画面のイメージは、前記した実施例1における第1の計測結果画面と同じように、医療施設の建屋図面に、各測定箇所Xにおける無線LAN信号G1の電波強度を各測定箇所Xの周辺領域毎に色分けして表示近似したものとすればよく、図示を省略する。
この第2の計測結果画面によれば、無線LANの電波強度の弱い場所を視覚的に把握することができ、対策を施す際の参考にすることができる。
また、無線LAN情報を取得した日時も記録しておけば、時系的な変化を確認することができる。
さらに、これらの通信モジュールを設けた情報処理装置では、周囲にあるその他の無線LAN機器の使用チャネルやMACアドレス等の情報を取得することができるため、医療情報用の無線LAN通信の妨げとなる無線LAN機器の存在をモニタすることもできる。
【実施例3】
【0055】
本発明に係る医療施設用の電波強度モニタリングシステムは、実施例1,2に係る構成を全て具備して、医療用テレメータ信号と無線LAN信号の電波強度を同時にモニタリングするよう構成してもよい。
また、その他の通信装置(携帯電話やPHS等の音声・データ通信機器など)をモニタリングできるデバイスを別途測定台車Bに取り付けることで、位置情報付きの複数の電波環境測定も可能となる。
【符号の説明】
【0056】
10 識別信号発信手段
20 識別信号受信手段
30 受信情報送信手段
40 医療用テレメータ信号送信手段
50 強度情報生成手段
60 蓄積手段
70 画面表示手段
80 無線LAN信号受信手段
A Beacon発信機
A1 識別信号
B 測定台車
B1 情報処理端末
B2 テレメータ発信機
B3 医療用テレメータ信号
C スペクトラムアナライザ
D 施設内端末
E サーバ
F 閲覧用端末
G アクセスポイント
G1 無線LAN信号
X 測定箇所
X1 アンテナケーブル
Y ナースステーション
Y1 アンテナコンセント
Y2 分配器
Y3 セントラルモニタ
Z 建屋図面
Z1 マーク
Z2 第1の計測結果画面
図1
図2
図3
図4
図5