(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-28
(45)【発行日】2023-10-06
(54)【発明の名称】塗布方法及び塗布システム
(51)【国際特許分類】
B05D 1/26 20060101AFI20230929BHJP
B05D 3/00 20060101ALI20230929BHJP
B05C 5/00 20060101ALI20230929BHJP
【FI】
B05D1/26 Z
B05D3/00 B
B05C5/00 101
(21)【出願番号】P 2019106936
(22)【出願日】2019-06-07
【審査請求日】2022-04-15
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】池田 浩二
【審査官】清水 晋治
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-132633(JP,A)
【文献】国際公開第2008/146464(WO,A1)
【文献】特開2018-015741(JP,A)
【文献】特開2000-286274(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第01857405(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05D 1/00-7/26
B05C 5/00-21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を貯留する貯留室と、
前記貯留室内の液体を吐出する吐出孔と、
一端部が前記貯留室に配置された押圧体と、
前記貯留室の容積を増減させるよう前記押圧体を動作させるアクチュエータと、
前記貯留室に連通し、液体を貯蔵するシリンジと、
前記シリンジが貯蔵する液体に対する加圧により前記貯留室に液体を供給する加圧部と、を有する液体吐出ユニットを用いて液体を塗布する塗布方法であって、
前記吐出孔が第1位置上にある状態で前記アクチュエータを動作させて前記貯留室内の液体を前記第1位置へ吐出させる第1吐出工程と、
前記第1吐出工程の後に、前記吐出孔の位置を前記第1位置上から、前記第1位置とは異なる第2位置上に移動させる第1移動工程と、
前記吐出孔が
前記第2位置上にある状態で前記アクチュエータを動作させて前記貯留室内の液体を前記第2位置へ吐出させる第2吐出工程と、
前記第1吐出工程以降であって前記第2吐出工程よりも前に前記加圧部の加圧を開始し、前記第2吐出工程よりも後に前記加圧部の加圧を終了する加圧工程と、を含
み、
前記加圧工程を開始するタイミングは、前記第2吐出工程で吐出される所定量の液体の前記貯留室への貯留の完了に要する時間及び前記第1移動工程の完了に要する時間に基づいて決定される、
塗布方法。
【請求項2】
前記第2吐出工程で吐出される所定量の液体が前記貯留室に溜まるタイミングよりも先に前記第1移動工程が完了する場合、前記第2吐出工程は、前記第2吐出工程で吐出される所定量の液体が前記貯留室に溜まるのを待機して開始される、
請求項1に記載の塗布方法。
【請求項3】
前記第2吐出工程の後に、前記吐出孔が前記第2位置とは異なる第3位置上にある状態で前記アクチュエータを動作させて前記貯留室内の液体を前記第3位置へ吐出させる第3吐出工程をさらに含み、
前記加圧工程では、前記第3吐出工程で吐出される所定量の液体が前記貯留室に溜まるまで前記加圧を継続する、
請求項1
又は2に記載の塗布方法。
【請求項4】
前記第2吐出工程の後に、前記吐出孔の位置を前記第2位置から前記第3位置上に移動させる第2移動工程をさらに含み、
前記第3吐出工程で吐出される所定量の液体が前記貯留室に溜まるタイミングよりも後に前記第2移動工程が完了する場合、前記加圧工程は、前記第3吐出工程で吐出される所定量の液体が前記貯留室に溜まるタイミングに応じて終了する、
請求項
3に記載の塗布方法。
【請求項5】
前記第2吐出工程の後に、前記吐出孔の位置を前記第2位置から前記第3位置上に移動させる第2移動工程をさらに含み、
前記第3吐出工程で吐出される所定量の液体が前記貯留室に溜まるタイミングよりも先に前記第2移動工程が完了する場合、前記第3吐出工程は、前記第3吐出工程で吐出される所定量の液体が前記貯留室に溜まるのを待機して開始される、
請求項
3又は
4に記載の塗布方法。
【請求項6】
前記第2吐出工程の後に、前記吐出孔の位置を前記第2位置から前記第3位置上に移動させる第2移動工程をさらに含み、
前記第1吐出工程と前記第2吐出工程と前記第3吐出工程とは順次実施され、
前記第1位置と前記第2位置との距離は、前記第2位置と前記第3位置との距離より長い、
請求項
3~
5のいずれか1項に記載の塗布方法。
【請求項7】
液体を貯留する貯留室と、
前記貯留室内の液体を吐出する吐出孔と、
一端部が前記貯留室に配置された押圧体と、
前記貯留室の容積を増減させるよう前記押圧体を動作させるアクチュエータと、
前記貯留室に連通し、液体を貯蔵するシリンジと、
前記シリンジが貯蔵する液体に対する加圧により前記貯留室に液体を供給する加圧部と、を有する液体吐出ユニットと、
前記貯留室内の液体が塗布される塗布対象が載置されるステージと、
前記液体吐出ユニットを制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記吐出孔が第1位置上にある状態で前記アクチュエータを動作させて前記貯留室内の液体を前記第1位置へ吐出させ、
前記第1位置への液体の吐出の後に、前記吐出孔が前記第1位置とは異なる第2位置上にある状態で前記アクチュエータを動作させて前記貯留室内の液体を前記第2位置へ吐出させ、
前記第1位置への液体の吐出以降であって前記第2位置への液体の吐出よりも前に前記加圧部の加圧を開始し、前記第2位置への液体の吐出よりも後に前記加圧部の加圧を終了さ
せ、
前記加圧部の加圧を開始するタイミングは、前記吐出孔が前記第2位置上にある状態で吐出される所定量の液体の前記貯留室への貯留の完了に要する時間及び前記吐出孔の位置を前記第1位置上から前記第2位置上へ移動させるのに要する時間に基づいて決定される、
塗布システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、塗布方法及び塗布システムに関する。
【背景技術】
【0002】
非接触方式による塗布を行う塗布装置(ジェットディスペンサと呼ばれる)が開示されている(例えば特許文献1)。このようなジェットディスペンサによれば、高速塗布が可能であり、また、塗布量のばらつきを抑制できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、エアパルス方式又はスクリュー方式の塗布装置では、複数の孔を備えるニードルを用いて一度に複数箇所への塗布が可能である。一方で、上記特許文献1に示すようなジェットディスペンサでは、複数箇所に同時に塗布することは難しい。したがって、複数箇所に塗布を行う場合には、1つ1つ順次塗布していくことになり、ジェットディスペンサの高速塗布の優位性が低下してしまう。
【0005】
そこで、本開示は、複数箇所に順次塗布を行う場合に高速塗布が可能な塗布方法及び塗布システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る液体供給方法は、液体を貯留する貯留室と、前記貯留室内の液体を吐出する吐出孔と、一端部が前記貯留室に配置された押圧体と、前記貯留室の容積を増減させるよう前記押圧体を動作させるアクチュエータと、前記貯留室に連通し、液体を貯蔵するシリンジと、前記シリンジが貯蔵する液体に対する加圧により前記貯留室に液体を供給する加圧部と、を有する液体吐出ユニットを用いて液体を塗布する塗布方法であって、前記吐出孔が第1位置上にある状態で前記アクチュエータを動作させて前記貯留室内の液体を前記第1位置へ吐出させる第1吐出工程と、前記第1吐出工程の後に、前記吐出孔が前記第1位置とは異なる第2位置上にある状態で前記アクチュエータを動作させて前記貯留室内の液体を前記第2位置へ吐出させる第2吐出工程と、前記第1吐出工程以降であって前記第2吐出工程よりも前に前記加圧部の加圧を開始し、前記第2吐出工程よりも後に前記加圧部の加圧を終了する加圧工程と、を含む。
【0007】
なお、これらの包括的又は具体的な側面は、システム、装置、方法、記録媒体、又は、コンピュータプログラムで実現されてもよく、システム、装置、方法、記録媒体、及び、コンピュータプログラムの任意な組み合わせで実現されてもよい。
【発明の効果】
【0008】
本開示に係る塗布方法等によれば、複数箇所に順次塗布を行う場合に高速塗布が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態に係る塗布システムの一例を示す構成図である。
【
図2】実施の形態に係る液体吐出ユニットの吐出ヘッドの一例を示す断面構成図である。
【
図3】実施の形態に係る液体吐出ユニットの吐出ヘッドにおける貯留室の一例を示す断面構成図である。
【
図4】実施の形態に係る液体吐出ユニットを用いて液体を塗布する塗布方法の一例を示すフローチャートである。
【
図5】従来の塗布方法による吐出タイミング及び加圧タイミングの一例を示すタイミングチャートである。
【
図6】実施の形態に係る塗布方法による吐出タイミング及び加圧タイミングの第1例を示すタイミングチャートである。
【
図7】実施の形態に係る塗布方法による吐出タイミング及び加圧タイミングの第2例を示すタイミングチャートである。
【
図8】実施の形態に係る塗布方法による吐出タイミング及び加圧タイミングの第3例を示すタイミングチャートである。
【
図9】実施の形態に係る塗布方法による吐出タイミング及び加圧タイミングの第4例を示すタイミングチャートである。
【
図10】実施の形態に係る塗布方法による吐出タイミング及び加圧タイミングの第5例を示すタイミングチャートである。
【
図11A】第1位置、第2位置、第3位置及び第4位置の一例を示す図である。
【
図11B】第1位置、第2位置、第3位置及び第4位置の他の一例を示す図である。
【
図12】実施の形態に係る塗布方法による吐出タイミング及び加圧タイミングの第6例を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示の塗布方法は、液体を貯留する貯留室と、前記貯留室内の液体を吐出する吐出孔と、一端部が前記貯留室に配置された押圧体と、前記貯留室の容積を増減させるよう前記押圧体を動作させるアクチュエータと、前記貯留室に連通し、液体を貯蔵するシリンジと、前記シリンジが貯蔵する液体に対する加圧により前記貯留室に液体を供給する加圧部と、を有する液体吐出ユニットを用いて液体を塗布する塗布方法であって、前記吐出孔が第1位置上にある状態で前記アクチュエータを動作させて前記貯留室内の液体を前記第1位置へ吐出させる第1吐出工程と、前記第1吐出工程の後に、前記吐出孔が前記第1位置とは異なる第2位置上にある状態で前記アクチュエータを動作させて前記貯留室内の液体を前記第2位置へ吐出させる第2吐出工程と、前記第1吐出工程以降であって前記第2吐出工程よりも前に前記加圧部の加圧を開始し、前記第2吐出工程よりも後に前記加圧部の加圧を終了する加圧工程と、を含む。
【0011】
例えば、従来のジェットディスペンサを用いた塗布方法では、第1吐出工程により貯留室内の液体を第1位置へ吐出させるタイミングで、貯留室へ液体を補充するために加圧部の加圧を開始し、第2吐出工程で吐出される所定量の液体の貯留室への貯留が完了するタイミングに応じて加圧部の加圧を終了する。加圧部の加圧を終了するのは、加圧部の加圧によって吐出孔から貯留室内で所定量貯まった液体が漏れ出さないようにするためである。なお、加圧部の加圧を終了した後シリンジの内圧はすぐには下がらずに時間をかけて徐々に下がっていくため、内圧が徐々に下がっていく期間も貯留室へ液体が供給される。言い換えると、この期間が終了する前に貯留室内に液体が所定量貯まると、吐出孔から液体が漏れ出してしまう。このため、加圧部の加圧の終了は、液体の貯留室への貯留が完了したタイミングで行われるのではなく、シリンジの内圧が徐々に下がっていく期間に貯留室へ液体が供給される分も考慮して、液体の貯留室への貯留が完了するタイミングよりも少し前に終了される。その後、第2吐出工程により液体を第2位置へ吐出させるタイミングで、貯留室へ液体を補充するために加圧部の加圧を開始する。つまり、従来のジェットディスペンサを用いた塗布方法では、複数箇所のそれぞれへの吐出工程を行うごとに加圧の開始及び加圧の終了が行われる。
【0012】
一方で、本態様の加圧工程は、第1吐出工程以降であって第2吐出工程よりも前に加圧部の加圧を開始し、第2吐出工程よりも後に加圧部の加圧を終了する。つまり、複数箇所のそれぞれへの吐出工程を行うごとに加圧工程を行うということをせずに、第2吐出工程の前後で加圧部の加圧が継続して行われる。加圧部の加圧を終了する場合には、上述したようにシリンジの内圧が徐々に下がっていく期間が発生し、この期間において貯留室へ液体が供給される単位時間当たりの量は、加圧部の加圧を行っているときに貯留室へ液体が供給される単位時間当たりの量よりも、シリンジの内圧が小さくなっていく分少ない。したがって、第2吐出工程の前後で加圧部の加圧を継続することで、第2吐出工程の前に加圧部の加圧を終了する場合(言い換えると、複数箇所のそれぞれへの吐出工程を行うごとに加圧の開始及び加圧の終了が行われる場合)よりも貯留室内への液体の貯留が早く完了し、第2吐出工程を早く開始することができる。すなわち、本態様によれば、ジェットディスペンサによって複数箇所に順次塗布を行う場合に高速塗布が可能となる。
【0013】
また、前記第1吐出工程の後に、前記吐出孔の位置を前記第1位置上から前記第2位置上に移動させる第1移動工程をさらに含み、前記第2吐出工程で吐出される所定量の液体が前記貯留室に溜まるタイミングよりも先に前記第1移動工程が完了する場合、前記第2吐出工程は、前記第2吐出工程で吐出される所定量の液体が前記貯留室に溜まるのを待機して開始されるとしてもよい。
【0014】
例えば、第2吐出工程で吐出される所定量の液体が貯留室に溜まるタイミングよりも先に第1移動工程が完了する場合に、第1移動工程が完了したタイミングで第2吐出工程を開始すると、吐出する液体量が不足することになる。このため、この場合に、第2吐出工程は、第2吐出工程で吐出される所定量の液体が貯留室に溜まるのを待機して開始されることで、吐出する液体量が不足することを抑制できる。
【0015】
また、前記第1吐出工程の後に、前記吐出孔の位置を前記第1位置上から前記第2位置上に移動させる第1移動工程をさらに含み、前記加圧工程を開始するタイミングは、前記第2吐出工程で吐出される所定量の液体の前記貯留室への貯留の完了に要する時間及び前記第1移動工程の完了に要する時間に基づいて決定されるとしてもよい。
【0016】
これによれば、第2吐出工程で吐出される所定量の液体の貯留室への貯留の完了に要する時間及び第1移動工程の完了に要する時間に基づいて、第1移動工程が完了するタイミングでちょうど所定量の液体の貯留室への貯留が完了するように、加圧工程を開始するタイミングを決定できる。
【0017】
また、前記第2吐出工程の後に、前記吐出孔が前記第2位置とは異なる第3位置上にある状態で前記アクチュエータを動作させて前記貯留室内の液体を前記第3位置へ吐出させる第3吐出工程をさらに含み、前記加圧工程では、前記第3吐出工程で吐出される所定量の液体が前記貯留室に溜まるまで前記加圧を継続するとしてもよい。
【0018】
これによれば、一度の加圧工程によって、第2吐出工程で吐出される所定量の液体を貯留し、さらに、第3吐出工程で吐出される所定量の液体も貯留することができる。例えば、加圧を終了した後シリンジの内圧が下がり、再度加圧を開始する場合、加圧部の加圧を開始した後シリンジの内圧はすぐには上がらずに時間をかけて徐々に上がっていく。シリンジの内圧が徐々に上がっていく期間において貯留室へ液体が供給される単位時間当たりの量は、加圧部の加圧を継続して行っているときに貯留室へ液体が供給される単位時間当たりの量よりも、シリンジの内圧が上がりきっていない分少ない。したがって、第2吐出工程の前後で加圧部の加圧を継続することで、第2吐出工程の前に加圧部の加圧を終了する場合(言い換えると、複数箇所のそれぞれへの吐出工程を行うごとに加圧の開始及び加圧の終了が行われる場合)よりも貯留室内への液体の貯留が早く完了し、第3吐出工程を早く開始することができる。すなわち、本態様によれば、ジェットディスペンサによって複数箇所に順次塗布を行う場合に高速塗布が可能となる。
【0019】
また、前記第2吐出工程の後に、前記吐出孔の位置を前記第2位置から前記第3位置上に移動させる第2移動工程をさらに含み、前記第3吐出工程で吐出される所定量の液体が前記貯留室に溜まるタイミングよりも後に前記第2移動工程が完了する場合、前記加圧工程は、前記第3吐出工程で吐出される所定量の液体が前記貯留室に溜まるタイミングに応じて終了するとしてもよい。
【0020】
例えば、第3吐出工程で吐出される所定量の液体が貯留室に溜まるタイミングよりも後に第2移動工程が完了する場合に、加圧工程を第3吐出工程で吐出される所定量の液体が貯留室に溜まるタイミングで終了せずに第2移動工程が完了するまで継続すると、貯留室に所定量以上の液体が供給されて吐出孔から液体が漏れ出してしまう。したがって、加圧工程を第3吐出工程で吐出される所定量の液体が貯留室に溜まるタイミングに応じて終了することで、吐出孔から液体が漏れ出してしまうことを抑制できる。
【0021】
また、前記第2吐出工程の後に、前記吐出孔の位置を前記第2位置から前記第3位置上に移動させる第2移動工程をさらに含み、前記第3吐出工程で吐出される所定量の液体が前記貯留室に溜まるタイミングよりも先に前記第2移動工程が完了する場合、前記第3吐出工程は、前記第3吐出工程で吐出される所定量の液体が前記貯留室に溜まるのを待機して開始されるとしてもよい。
【0022】
例えば、第3吐出工程で吐出される所定量の液体が貯留室に溜まるタイミングよりも先に第2移動工程が完了する場合に、第2移動工程が完了したタイミングで第3吐出工程を開始すると、吐出する液体量が不足することになる。このため、この場合に、第3吐出工程は、第3吐出工程で吐出される所定量の液体が貯留室に溜まるのを待機して開始されることで、吐出する液体量が不足することを抑制できる。
【0023】
また、前記第2吐出工程の後に、前記吐出孔の位置を前記第2位置から前記第3位置上に移動させる第2移動工程をさらに含み、前記第1吐出工程と前記第2吐出工程と前記第3吐出工程とは順次実施され、前記第1位置と前記第2位置との距離は、前記第2位置と前記第3位置との距離より長いとしてもよい。
【0024】
例えば、第2吐出工程で吐出される所定量の液体の貯留室への貯留のために加圧工程を開始する際に、加圧部の加圧を開始した後シリンジの内圧はすぐには上がらずに時間をかけて徐々に上がっていくことから、その分貯留に時間がかかる。一方で、加圧工程では、第3吐出工程で吐出される所定量の液体が貯留室に溜まるまで加圧を継続することから、第3吐出工程で吐出される所定量の液体を貯留室へ貯留する際には、加圧工程の開始の際にかかった時間がかからない。このため、第2吐出工程で吐出される所定量の液体の貯留室への貯留の完了に要する時間は、第3吐出工程で吐出される所定量の液体の貯留室への貯留の完了に要する時間よりも長くなる。したがって、各移動工程における移動速度がほぼ一定であり加圧部の加圧の圧力がほぼ一定であるという条件下において、第1位置と第2位置との距離が第2位置と第3位置との距離より長くなっている塗布対象に、本態様を適用した塗布方法を用いて塗布を行うことで、円滑に塗布を行うことができる。
【0025】
本開示の塗布システムは、液体を貯留する貯留室と、前記貯留室内の液体を吐出する吐出孔と、一端部が前記貯留室に配置された押圧体と、前記貯留室の容積を増減させるよう前記押圧体を動作させるアクチュエータと、前記貯留室に連通し、液体を貯蔵するシリンジと、前記シリンジが貯蔵する液体に対する加圧により前記貯留室に液体を供給する加圧部と、を有する液体吐出ユニットと、前記貯留室内の液体が塗布される塗布対象が載置されるステージと、前記液体吐出ユニットを制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記吐出孔が第1位置上にある状態で前記アクチュエータを動作させて前記貯留室内の液体を前記第1位置へ吐出させ、前記第1位置への液体の吐出の後に、前記吐出孔が前記第1位置とは異なる第2位置上にある状態で前記アクチュエータを動作させて前記貯留室内の液体を前記第2位置へ吐出させ、前記第1位置への液体の吐出以降であって前記第2位置への液体の吐出よりも前に前記加圧部の加圧を開始し、前記第2位置への液体の吐出よりも後に前記加圧部の加圧を終了させる。
【0026】
これによれば、複数箇所に順次塗布を行う場合に高速塗布が可能な塗布システムを提供できる。
【0027】
なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的又は具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。
【0028】
(実施の形態)
以下、
図1から
図12を用いて実施の形態について説明する。
【0029】
[塗布システムの構成]
まず、実施の形態に係る塗布システム100の構成について
図1から
図3を用いて説明する。
【0030】
図1は、実施の形態に係る塗布システム100の一例を示す構成図である。
【0031】
図2は、実施の形態に係る液体吐出ユニット1の吐出ヘッド3の一例を示す断面構成図である。
【0032】
図3は、実施の形態に係る液体吐出ユニット1の吐出ヘッド3における貯留室Sの一例を示す断面構成図である。
【0033】
塗布システム100は、液体吐出ユニット1と、ステージ40と、制御部30と、を備える。
【0034】
制御部30は、液体吐出ユニット1を制御する処理部である。制御部30は、プロセッサ、メモリ等を含むコンピュータにより実現される。具体的には、制御部30は、プロセッサがメモリに記憶されたプログラムに従って動作することにより実現される。制御部30は、液体吐出ユニット1が備えるコンピュータにより実現されてもよいし、液体吐出ユニット1を制御するための外部のコンピュータにより実現されてもよい。例えば、制御部30は、サーバ装置等により実現されてもよい。
【0035】
ステージ40は、液体吐出ユニット1の液体(後述する貯留室S内の液体)が塗布される塗布対象41が載置される。塗布対象41は、例えば、基板又は部品等のワークであるが、特に限定されない。例えば、ステージ40は、制御部30によって移動が制御され、塗布対象41における所望の位置に液体を塗布することができる。なお、ステージ40の加速時の加速度はほぼ一定であるとする。
【0036】
液体吐出ユニット1は、液体供給部2と、吐出ヘッド3と、を備える。
【0037】
吐出ヘッド3は、貯留室S(
図2及び
図3参照)内の液体を吐出する機能を有する。液体供給部2は、液体を貯留する貯留室Sに液体を供給する機能を有する。
【0038】
液体供給部2は、液体5を貯蔵するシリンジ4及び加圧部6を備える。シリンジ4は、貯留室Sに連通している。例えば、加圧部6は、空圧供給源であり、電空レギュレータによって所定の圧力に調整された空圧をシリンジ4に送給する。これにより、シリンジ4内の液体5が空圧によって押し出され、供給管7を介して吐出ヘッド3に供給される。このように、加圧部6は、シリンジ4が貯蔵する液体5に対する加圧により貯留室Sに液体5を供給する。なお、加圧部6による液体5への圧力はほぼ一定であるとする。加圧部6の加圧は、制御部30によって制御される。液体5は、例えば、UV硬化樹脂若しくは熱硬化性樹脂等の接着剤又ははんだペースト等である。なお、液体5の種類は、これらに限らず特に限定されない。
【0039】
吐出ヘッド3は、ヘッド本体部10と、押圧体11と、駆動部15と、吐出ノズル18と、を備える。
【0040】
ヘッド本体部10は、吐出ヘッド3の本体を構成する。ヘッド本体部10は、開口部9cが設けられた底板部9aを有し上側(底板部9aと反対側)が開口したコ字形状(U字形状)の吐出ノズル装着部9と、吐出ノズル装着部9の開口側に装着された平板形状のベース部8と、を有する。
【0041】
吐出ノズル18は、スペーサ16と、ノズル部材17と、を有し、吐出ノズル装着部9の底板部9aの下面に、スペーサ16を介してノズル部材17が装着されている。
【0042】
駆動部15は、アクチュエータ12と、環状バネ13と、アクチュエータ制御部14と、を有する。吐出ノズル装着部9には、環状バネ13を介して押圧体11が装着されており、さらに押圧体11とベース部8との間には圧電素子よりなるアクチュエータ12が配設されている。アクチュエータ12はアクチュエータ制御部14によって制御されて上下方向へ伸縮動作を行い、ベース部8はアクチュエータ12の伸張時の上向きの反力を支持する。これにより、アクチュエータ12は、貯留室Sの容積を増減させるよう押圧体11を動作させる。具体的には、アクチュエータ12の下面に配設された押圧体11は往復移動して、供給管7及びノズル部材17を介して貯留室Sに供給された液体5を以下に説明する構成により吐出させる。なお、アクチュエータ12による押圧体11の動作の制御(言い換えると、アクチュエータ制御部14の制御)は、制御部30によって行われる。
【0043】
図2及び
図3を参照して、吐出ヘッド3の詳細構成を説明する。吐出ノズル装着部9は、平板形状の底板部9aの両側端部から側板部9dを上方に延出させた構成となっており、側板部9dの上端部にはベース部8が固定装着されている。ベース部8の下面に上面を当接させたアクチュエータ12の下面には、押圧体11が配設されている。
【0044】
押圧体11は、円板形状の径大部11aから円柱形状の一端部11bを下方に突出させた形状を有している。押圧体11を吐出ノズル装着部9に装着した状態では、吐出ノズル装着部9の底板部9aに設けられた円形の開口部9cに、一端部11bが往復動可能に嵌合する。この状態では、一端部11bの外周面のパッキン溝に装着されたパッキン19Bによって、開口部9cと一端部11bの外周面とが密封される。すなわち押圧体11は、ヘッド本体部10にアクチュエータ12に駆動されて往復動可能に装着され、一端部11bがヘッド本体部10からアクチュエータ12による往復動方向に突出した構成となっている。また底板部9aの上面と径大部11aの下面との間には、環状バネ13が介在している。
【0045】
吐出ノズル装着部9の装着面9bには、ガスケット20Aを介してスペーサ16が装着されている。スペーサ16は、ヘッド本体部10に着脱自在な所定の厚みを有する板状部材であり、スペーサ16には開口部9cと同径若しくはやや小径サイズの開口部16aが、スペーサ16の厚みを貫通して設けられている。押圧体11がヘッド本体部10の吐出ノズル装着部9に装着された状態では、吐出ノズル装着部9から下方へ突出する一端部11bは、開口部16aによって包囲されて貯留室Sに配置された形態となる。
【0046】
この状態でアクチュエータ12を駆動して押圧体11を往復移動させることにより、貯留室Sの容積が増減する。そして貯留室S内に液体5を貯留した状態で貯留室Sの容積を減少させることにより、貯留室S内の液体5を吐出孔24から吐出させる。すなわちアクチュエータ12は、貯留室Sの容積を増減させて吐出孔24から貯留室S内の液体5を吐出させるために、押圧体11を移動させる。
【0047】
図3に示すように、開口部16aの上部にはパッキン19Aを保持するための保持部16bが形成されている。保持部16bにパッキン19Aを保持させることにより、パッキン19Aはスペーサ16と押圧体11の一端部11bの側面の間に位置する。これにより、貯留室Sの液体5が開口部9cの側面と一端部11bの側面との間の隙間に進入するのが防止される。
【0048】
スペーサ16の下面側にはガスケット20Bを介してノズル部材17が装着されている。ノズル部材17は開口部16aを塞ぐ状態でスペーサ16に装着され、この状態では、ノズル部材17の装着面17aと開口部16aの内面とで包囲された空間は貯留室Sを形成し、押圧体11の一端部11bが貯留室S内に配置される。
【0049】
ノズル部材17の一方側の側面には、
図1に示す供給管7が接続され、内部に液体5を導く(矢印a)ための入口部22aを有するジョイント22が植設されている。入口部22aは、ノズル部材17の内部に設けられ貯留室Sに液体5を導入する液体導入孔23と通じている。すなわち液体導入孔23は、ノズル部材17の装着面17aに開口した出口部23aを介して、貯留室Sと連通している。出口部23aは、貯留室Sに吐出対象の液体5を供給する供給孔として機能しており、液体供給部2によって貯留室Sに液体5を供給する際には、貯留室Sに通じる液体導入孔23から液体5を導入する。
【0050】
ここで、液体導入孔23はノズル部材17の側面に開口した入口部22aから出口部23aに向かって傾斜した形状となっている。これにより、液体導入孔23は、ノズル部材17の内部において屈曲部のない直線状に形成される。このため、液体導入孔23の内部において残留した液体5や異物などによる目詰まりが発生しにくい構造とすることができる。さらに、液体の交換時などに必要とされるメンテナンス作業において、クリーニングピンなどのツールを液体導入孔23に挿通させて、容易に液体導入孔23の内部を清掃することが可能となっている。
【0051】
ノズル部材17の下面には、貯留室S内の液体5を外部に吐出する吐出孔24が設けられており、貯留室Sと吐出孔24とは常時開放された吐出流路24aで接続されている。吐出流路24aは下方の径寸法が絞られたテーパ孔形状となっており、貯留室S側にいくに従って径が大きくなっている。ここで、吐出孔24の位置は貯留室S内における中心位置から出口部23aと反対側に隔てた配置となっている。このような配置とすることにより、一端部11bを貯留室S内で往復移動させる液吐出において出口部23aから貯留室S内に供給された液体5は、貯留室S内にエアだまりを形成することなく全体を充填し、貯留室S内にエアだまりが残留することによる吐出不良を防止することができる。
【0052】
液体吐出ユニット1による液体5の吐出に際しては、まず液体供給部2から供給管7及び液体導入孔23を介して貯留室S内に液体5を供給する。次いで、アクチュエータ制御部14によってアクチュエータ12を充電し、環状バネ13による付勢力に抗して押圧体11を所定のストロークだけ伸張させる。これにより貯留室Sの容積が変化して、吐出流路24aを介して吐出孔24から1ショット分の液体5が吐出される。
【0053】
そして、吐出後にはアクチュエータ12を放電することによりアクチュエータ12の伸張を元に戻し、環状バネ13の付勢力により押圧体11が押し上げられて次回の液吐出が可能な状態となる。
【0054】
[塗布方法]
次に、液体吐出ユニット1を用いて液体5を塗布する塗布方法について
図4を用いて説明する。なお、液体吐出ユニット1は制御部30に制御されるため、当該塗布方法は、制御部30により行われる方法ともいえる。
【0055】
図4は、実施の形態に係る液体吐出ユニット1を用いて液体5を塗布する塗布方法の一例を示すフローチャートである。
【0056】
図4に示すように、塗布方法は、第1吐出工程(ステップS11)と、第1移動工程(ステップS12)と、加圧工程(ステップS13)と、第2吐出工程(ステップS14)と、第2移動工程(ステップS15)と、第3吐出工程(ステップS16)と、を含む。例えば、第1吐出工程と第2吐出工程と第3吐出工程とは順次実施される。なお、加圧工程が開始されてから第1移動工程が開始されてもよい。
【0057】
制御部30は、ステップS11において、吐出孔24が第1位置上にある状態でアクチュエータ12を動作させて貯留室S内の液体5を第1位置へ吐出させる第1吐出工程を行う。第1位置は、塗布対象41上の位置である。
【0058】
制御部30は、ステップS12において、第1吐出工程の後に、吐出孔24の位置を第1位置上から第2位置上に移動させる第1移動工程を行う。第2位置は、塗布対象41上の第1位置とは異なる位置である。なお、第1位置と第2位置とは、1つの塗布対象41上の位置でなくてもよい。具体的には、ステージ40上に複数の塗布対象41が載置され、第1位置と第2位置とは、異なる塗布対象41上の位置であってもよい。例えば、制御部30は、ステージ40を移動させることで吐出孔24をステージ40に対して相対的に移動させる。なお、液体吐出ユニット1は、吐出ヘッド3の吐出孔24を移動させるための機構を有していてもよく、制御部30は、当該機構を制御することで吐出孔24の位置を移動させてもよい。
【0059】
制御部30は、ステップS13において、第1吐出工程以降であって第2吐出工程よりも前に加圧部6の加圧を開始し、第2吐出工程よりも後に加圧部6の加圧を終了する加圧工程を行う。つまり、ステップS13は、ステップS14が行わる際も継続して行われる。なお、加圧工程は、第1吐出工程と同時に開始されてもよいし、第1吐出工程の後に開始されてもよい。第1吐出工程によって貯留室S内の液体5が吐出されており、次に第2吐出工程を行うためには貯留室S内に液体5を補充する必要があるため、加圧部6の加圧により貯留室Sに液体5が供給される。
【0060】
制御部30は、ステップS14において、第1吐出工程の後に、吐出孔24が第2位置上にある状態でアクチュエータ12を動作させて貯留室S内の液体5を第2位置へ吐出させる第2吐出工程を行う。
【0061】
制御部30は、ステップS15において、第2吐出工程の後に、吐出孔24の位置を第2位置から第3位置上に移動させる第2移動工程を行う。第3位置は、塗布対象41上の第2位置とは異なる位置である。なお、第2位置と第3位置とは、1つの塗布対象41上の位置でなくてもよい。
【0062】
制御部30は、ステップS16において、第2吐出工程の後に、吐出孔24が第3位置上にある状態でアクチュエータ12を動作させて貯留室S内の液体5を第3位置へ吐出させる第3吐出工程を行う。
【0063】
ここで、液体の吐出タイミング及び加圧タイミングについて、従来例と、第1例から第6例とを示しながら説明する。なお、以下に示す
図5から
図10及び
図12におけるタイミングチャートで、アクチュエータのON及びOFFは、各吐出工程の開始及び終了を示している。また、「S11」は第1吐出工程、「S14」は第2吐出工程、「S16」は第3吐出工程を示している。また、加圧部のON及びOFFは、加圧工程の開始及び終了を示している。また、「S13」は、加圧工程を示している。なお、
図5における「S13a」及び「S13b」は、従来の加圧工程を示している。また、シリンジ内圧の正圧及びOFFは、シリンジ4の内圧を示しており、OFFのときはシリンジ4内の液体5が貯留室Sに供給されない状態を示し、正圧に向けてシリンジ4の内圧が高くなるにつれて貯留室Sに液体5がより多く供給されるようになることを示している。また、「S12完了」は第1移動工程が完了するタイミング、「S15完了」は第2移動工程が完了するタイミングを示している。なお、アクチュエータ12がONされる期間は数十マイクロ秒オーダーであり、加圧部6がONされる期間は数十ミリ秒オーダーである。アクチュエータ12がONされる期間は図面上では実際よりも長く示しているが、実際は加圧部6がONされる期間と比べて微小な期間となる。
【0064】
図5は、従来の塗布方法による吐出タイミング及び加圧タイミングの一例を示すタイミングチャートである。
【0065】
例えば、従来のジェットディスペンサを用いた塗布方法では、第1吐出工程により貯留室S内の液体5を第1位置へ吐出させるタイミングで、貯留室Sへ液体を補充するために加圧部6の加圧を開始し(
図5中の「S13a」のONのタイミング)、第2吐出工程で吐出される所定量の液体の貯留室への貯留が完了するタイミングに応じて加圧部の加圧を終了する(
図5中の「S13a」のOFFのタイミング)。加圧部6の加圧を終了するのは、加圧部6の加圧によって吐出孔24から貯留室S内で所定量貯まった液体5が漏れ出さないようにするためである。なお、加圧部6の加圧を終了した後シリンジ4の内圧はすぐには下がらずに時間をかけて徐々に下がっていくため、内圧が徐々に下がっていく期間t1も貯留室Sへ液体5が供給される。言い換えると、期間t1が終了する前に貯留室S内に液体5が所定量貯まると、吐出孔24から液体5が漏れ出してしまう。このため、加圧部6の加圧の終了は、液体5の貯留室Sへの貯留が完了したタイミングで行われるのではなく、シリンジ4の内圧が徐々に下がっていく期間t1に貯留室Sへ液体5が供給される分も考慮して、液体5の貯留室への貯留が完了するタイミングよりも少し前に終了される。その後、第2吐出工程により液体5を第2位置へ吐出させるタイミングで、貯留室Sへ液体5を補充するために加圧部6の加圧を開始する(
図5中の「S13b」のONのタイミング)。
【0066】
また、例えば、加圧を終了した後シリンジ4の内圧が下がり、再度加圧を開始する場合(
図5中の「S13b」のON)、加圧部6の加圧を開始した後シリンジ4の内圧はすぐには上がらずに、期間t2に示すように、時間をかけて徐々に上がっていく。
【0067】
このように、従来のジェットディスペンサを用いた塗布方法では、複数箇所のそれぞれへの吐出工程を行うごとに加圧の開始及び加圧の終了が行われる。
【0068】
図6は、実施の形態に係る塗布方法による吐出タイミング及び加圧タイミングの第1例を示すタイミングチャートである。
【0069】
本態様の加圧工程は、第1吐出工程以降であって第2吐出工程よりも前に加圧部6の加圧を開始し(
図6中の「S13」のONのタイミング)、第2吐出工程よりも後に加圧部6の加圧を終了する(
図6中の「S13」のOFFのタイミング)。つまり、複数箇所のそれぞれへの吐出工程を行うごとに加圧工程を行うということをせずに、第2吐出工程の前後で加圧部6の加圧が継続して行われる。加圧部6の加圧を終了する場合には、
図5に示すように、シリンジ4の内圧が徐々に下がっていく期間t1が発生し、期間t1において貯留室Sへ液体5が供給される単位時間当たりの量は、加圧部6の加圧を行っているときに貯留室Sへ液体5が供給される単位時間当たりの量よりも、シリンジ4の内圧が小さくなっていく分少ない。したがって、第2吐出工程の前後で加圧部6の加圧を継続することで、第2吐出工程の前に加圧部6の加圧を終了する場合(言い換えると、複数箇所のそれぞれへの吐出工程を行うごとに加圧の開始及び加圧の終了が行われる場合)よりも貯留室S内への液体5の貯留が早く完了し、第2吐出工程を早く開始することができる。
図5と
図6とを比較すると、
図6の第1例の方が従来例よりも期間t1程度早く第2吐出工程を開始できていることがわかる。
【0070】
また、シリンジ4の内圧が徐々に上がっていく期間t2において貯留室Sへ液体5が供給される単位時間当たりの量は、加圧部6の加圧を継続して行っているとき(シリンジ4の内圧が正圧のとき)に貯留室Sへ液体5が供給される単位時間当たりの量よりも、シリンジ4の内圧が上がりきっていない分少ない。したがって、第2吐出工程の前後で加圧部6の加圧を継続することで、第2吐出工程の前に加圧部6の加圧を終了する場合(言い換えると、複数箇所のそれぞれへの吐出工程を行うごとに加圧の開始及び加圧の終了が行われる場合)よりも貯留室S内への液体5の貯留が早く完了し、第3吐出工程を早く開始することができる。
図5と
図6とを比較すると、
図6の第1例の方が従来例よりも期間t2程度早く第3吐出工程を開始できていることがわかる。
【0071】
このように、本態様によれば、ジェットディスペンサによって複数箇所に順次塗布を行う場合に高速塗布が可能となる。
【0072】
図7は、実施の形態に係る塗布方法による吐出タイミング及び加圧タイミングの第2例を示すタイミングチャートである。
【0073】
第2吐出工程で吐出される所定量の液体5が貯留室Sに溜まるタイミングよりも先に第1移動工程が完了する場合(
図7中の「S12完了」のタイミング)、第2吐出工程は、第2吐出工程で吐出される所定量の液体5が貯留室Sに溜まるのを待機して開始される(
図7中の「S14」のONのタイミング)。例えば、第2吐出工程で吐出される所定量の液体5が貯留室Sに溜まるタイミングよりも先に第1移動工程が完了する場合に、第1移動工程が完了したタイミングで第2吐出工程を開始すると、吐出する液体量が不足することになる。このため、この場合に、第2吐出工程は、第2吐出工程で吐出される所定量の液体5が貯留室Sに溜まるのを待機して開始されることで、吐出する液体量が不足することを抑制できる。
【0074】
図8は、実施の形態に係る塗布方法による吐出タイミング及び加圧タイミングの第3例を示すタイミングチャートである。
【0075】
加圧工程を開始するタイミングは、第2吐出工程で吐出される所定量の液体5の貯留室Sへの貯留の完了に要する時間t4及び第1移動工程の完了に要する時間t3に基づいて決定される。例えば、第1位置と第2位置との間の距離が大きい場合に、第1吐出工程の開始と同時に加圧工程を開始すると、吐出孔24が第2位置上に到着する前に第2吐出工程で吐出される所定量の液体5の貯留室Sへの貯留が完了してしまう場合がある。この場合、加圧工程を終了しないと吐出孔24から液体5が漏れ出してしまうため、第2吐出工程の前後で加圧部6の加圧を継続できなくなり、高速塗布が難しくなる。これに対して、本態様では、時間t3及び時間t4に基づいて、第1移動工程が完了するタイミング(
図8中の「S12完了」のタイミング)でちょうど所定量の液体5の貯留室Sへの貯留が完了するように、加圧工程を開始するタイミングを決定できる。したがって、第2吐出工程の前後で加圧部6の加圧を継続でき、高速塗布が可能となる。
【0076】
図9は、実施の形態に係る塗布方法による吐出タイミング及び加圧タイミングの第4例を示すタイミングチャートである。
【0077】
第3吐出工程で吐出される所定量の液体5が貯留室Sに溜まるタイミングよりも後に第2移動工程が完了する場合(
図9中の「S15完了」のタイミング)、加圧工程は、第3吐出工程で吐出される所定量の液体5が貯留室Sに溜まるタイミングに応じて終了する(
図9中の「S13」のタイミング)。例えば、第3吐出工程で吐出される所定量の液体5が貯留室Sに溜まるタイミングよりも後に第2移動工程が完了する場合に、加圧工程を第3吐出工程で吐出される所定量の液体5が貯留室Sに溜まるタイミングで終了せずに第2移動工程が完了するまで継続すると、貯留室Sに所定量以上の液体5が供給されて吐出孔24から液体5が漏れ出してしまう。したがって、加圧工程を第3吐出工程で吐出される所定量の液体5が貯留室Sに溜まるタイミングに応じて終了することで、吐出孔24から液体5が漏れ出してしまうことを抑制できる。
【0078】
図10は、実施の形態に係る塗布方法による吐出タイミング及び加圧タイミングの第5例を示すタイミングチャートである。
【0079】
第3吐出工程で吐出される所定量の液体5が貯留室Sに溜まるタイミングよりも先に第2移動工程が完了する場合(
図10中の「S15完了」のタイミング)、第3吐出工程は、第3吐出工程で吐出される所定量の液体5が貯留室Sに溜まるのを待機して開始される(
図10中の「S16」のONのタイミング)。例えば、第3吐出工程で吐出される所定量の液体5が貯留室Sに溜まるタイミングよりも先に第2移動工程が完了する場合に、第2移動工程が完了したタイミングで第3吐出工程を開始すると、吐出する液体量が不足することになる。このため、この場合に、第3吐出工程は、第3吐出工程で吐出される所定量の液体5が貯留室Sに溜まるのを待機して開始されることで、吐出する液体量が不足することを抑制できる。
【0080】
なお、本態様に係る塗布方法は、予め塗布位置(第2位置等)がわかっているときに適用することができる。例えば第2位置がわかっているため、第2吐出工程の前後で加圧を継続しても、第2位置以外の予期しない位置で吐出孔24から液体5が漏れないようにでき、また、第2位置において所定量の液体を吐出させることができる。言い換えると、第2位置がわかっていなければ、加圧工程の開始タイミングがわからず第1吐出工程の後であって第2吐出工程の前に適当に加圧工程を開始すると、第2吐出工程を開始する前に所定量の液体5が溜まって加圧を継続できなくなる(液体5が漏れ出さないように加圧を終了する必要がある)。
【0081】
例えば、第1位置と第2位置との距離は、第2位置と第3位置との距離より長い。また、第3吐出工程の後に、吐出孔24が第3位置とは異なる第4位置上にある状態でアクチュエータ12を動作させて貯留室S内の液体5を第4位置へ吐出させる第4吐出工程を行う場合(第3吐出工程の後に、吐出孔24の位置を第3位置上から第4位置上に移動させる第3移動工程を行う場合)、第3位置と第4位置との距離は、第2位置と第3位置との距離より長い。第1位置、第2位置、第3位置及び第4位置の位置関係を
図11A及び
図11Bを用いて説明する。
【0082】
図11Aは、第1位置、第2位置、第3位置及び第4位置の一例を示す図である。
【0083】
図11Bは、第1位置、第2位置、第3位置及び第4位置の他の一例を示す図である。
【0084】
図11Aに示すように、例えば、第1位置P1、第2位置P2、第3位置P3及び第4位置P4は、ステージ40に載置された1つの塗布対象41上の位置であってもよい。また、
図11Bに示すように、例えば、第1位置P1、第2位置P2、第3位置P3及び第4位置P4は、ステージ40に載置された複数の異なる塗布対象41上の位置であってもよい。ここでは、複数の塗布対象41を塗布対象41a、41b、41c及び41dとして示しており、第1位置P1は塗布対象41a上の位置とし、第2位置P2は塗布対象41b上の位置とし、第3位置P3は塗布対象41c上の位置とし、第4位置P4は塗布対象41d上の位置としている。
【0085】
第1位置P1、第2位置P2、第3位置P3及び第4位置P4が1つの塗布対象41上の位置である場合、第1位置P1と第2位置P2との距離L1、第2位置P2と第3位置P3との距離L2及び第3位置P3と第4位置P4との距離L3は、1つの塗布対象41上の距離となる。第1位置P1、第2位置P2、第3位置P3及び第4位置P4が複数の異なる塗布対象41上の位置である場合、距離L1、距離L2及び距離L3は、2つの塗布対象41にわたる距離となる。
【0086】
第1位置P1、第2位置P2、第3位置P3及び第4位置P4に液体を吐出するときの、液体の吐出タイミング及び加圧タイミングについて、第6例として説明する。
【0087】
図12は、実施の形態に係る塗布方法による吐出タイミング及び加圧タイミングの第6例を示すタイミングチャートである。
【0088】
第2吐出工程で吐出される所定量の液体5の貯留室Sへの貯留のために加圧工程を開始する際に(
図12中の「S13」のONのタイミング)、加圧部6の加圧を開始した後、期間t5に示すように、シリンジ4の内圧はすぐには上がらずに時間をかけて徐々に上がっていくことから、その分貯留に時間がかかる。このため、第2吐出工程で吐出される所定量の液体5の貯留室Sへの貯留の完了に要する時間は、期間t5に応じて長くなる。第2吐出工程を開始すると(
図12中の「S14」のONのタイミング)、貯留室S内の液体5は吐出されて、第3吐出工程で吐出される液体5の補充が必要となる。加圧工程では、第3吐出工程で吐出される所定量の液体5が貯留室Sに溜まるまで加圧を継続することから、第3吐出工程で吐出される所定量の液体5を貯留室へ貯留する際には、加圧工程の開始の際にかかった時間がかからない(つまり、期間t5のようにシリンジ4の内圧が低い期間が生じない)。このため、第2吐出工程で吐出される所定量の液体5の貯留室Sへの貯留の完了に要する時間は、第3吐出工程で吐出される所定量の液体5の貯留室Sへの貯留の完了に要する時間よりも長くなる。したがって、各移動工程における加速時の加速度がほぼ一定であり加圧部6の加圧の圧力がほぼ一定であるという条件下において、第1位置P1と第2位置P2との距離L1が第2位置P2と第3位置P3との距離L2より長くなっている塗布対象41に、本態様を適用した塗布方法を用いて塗布を行うことで、円滑に塗布を行うことができる。
【0089】
また、第4吐出工程で吐出される所定量の液体5の貯留室Sへの貯留が完了するタイミングに応じて加圧工程を終了する際に(
図12中の「S13」のOFFのタイミング)、加圧部6の加圧を終了した後、期間t6に示すように、シリンジ4の内圧はすぐには下がらず時間をかけて徐々に下がっていくことから、その分貯留に時間がかかる。このため、第4吐出工程で吐出される所定量の液体5の貯留室Sへの貯留の完了に要する時間は、期間t6に応じて長くなる。加圧工程では、第3吐出工程で吐出される所定量の液体5が貯留室Sに溜まるまで加圧を継続することから、第3吐出工程で吐出される所定量の液体5を貯留室へ貯留する際には、加圧工程の終了の際にかかる時間がかからない(つまり、期間t6のようにシリンジ4の内圧が低い期間が生じない)。このため、第4吐出工程で吐出される所定量の液体5の貯留室Sへの貯留の完了に要する時間は、第3吐出工程で吐出される所定量の液体5の貯留室Sへの貯留の完了に要する時間よりも長くなる。したがって、各移動工程における加速時の加速度がほぼ一定であり加圧部6の加圧の圧力がほぼ一定であるという条件下において、第3位置P3と第4位置P4との距離L3が第2位置P2と第3位置P3との距離L2より長くなっている塗布対象41に、本態様を適用した塗布方法を用いて塗布を行うことで、円滑に塗布を行うことができる。
【0090】
(その他の実施の形態)
以上、本開示の塗布方法及び塗布システム100について、実施の形態に基づいて説明したが、本開示は、上記実施の形態に限定されるものではない。本開示の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を本実施の形態に施したもの、及び、異なる実施の形態における構成要素を組み合わせて構築される形態も、本開示の範囲内に含まれる。
【0091】
例えば、上記実施の形態では、ステージ40の加速時の加速度(言い換えると吐出孔24の相対的な加速度)はほぼ一定であるとしたが、当該加速度が制御されてもよい。
【0092】
また、例えば、上記実施の形態では、加圧部6による液体5への圧力はほぼ一定であるとしたが、当該圧力が制御されてもよい。
【0093】
例えば、塗布方法におけるステップは、コンピュータ(コンピュータシステム)によって実行されてもよい。そして、本開示は、塗布方法に含まれるステップを、コンピュータに実行させるためのプログラムとして実現できる。さらに、本開示は、そのプログラムを記録したCD-ROM等である非一時的なコンピュータ読み取り可能な記録媒体として実現できる。
【0094】
例えば、本開示が、プログラム(ソフトウェア)で実現される場合には、コンピュータのCPU、メモリ及び入出力回路等のハードウェア資源を利用してプログラムが実行されることによって、各ステップが実行される。つまり、CPUがデータをメモリ又は入出力回路等から取得して演算したり、演算結果をメモリ又は入出力回路等に出力したりすることによって、各ステップが実行される。
【0095】
また、上記実施の形態の塗布システム100に含まれる各構成要素は、専用又は汎用の回路として実現されてもよい。
【0096】
また、上記実施の形態の塗布システム100に含まれる各構成要素は、集積回路(IC:Integrated Circuit)であるLSI(Large Scale Integration)として実現されてもよい。
【0097】
また、集積回路はLSIに限られず、専用回路又は汎用プロセッサで実現されてもよい。プログラム可能なFPGA(Field Programmable Gate Array)、又は、LSI内部の回路セルの接続及び設定が再構成可能なリコンフィギュラブル・プロセッサが、利用されてもよい。
【0098】
さらに、半導体技術の進歩又は派生する別技術によりLSIに置き換わる集積回路化の技術が登場すれば、当然、その技術を用いて、塗布システム100に含まれる各構成要素の集積回路化が行われてもよい。
【0099】
その他、実施の形態に対して当業者が思いつく各種変形を施して得られる形態や、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で各実施の形態における構成要素及び機能を任意に組み合わせることで実現される形態も本開示に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0100】
本開示は、例えば、接着剤等を基板等の塗布対象に供給するためのシステム等に利用できる。
【符号の説明】
【0101】
1 液体吐出ユニット
2 液体供給部
3 吐出ヘッド
4 シリンジ
5 液体
6 加圧部
7 供給管
8 ベース部
9 吐出ノズル装着部
9a 底板部
9b 装着面
9c 開口部
9d 側板部
10 ヘッド本体部
11 押圧体
11a 径大部
11b 一端部
12 アクチュエータ
13 環状バネ
14 アクチュエータ制御部
15 駆動部
16 スペーサ
16a 開口部
16b 保持部
17 ノズル部材
17a 装着面
18 吐出ノズル
19A、19B パッキン
20A、20B ガスケット
22a 入口部
23 液体導入孔
23a 出口部
24 吐出孔
24a 吐出流路
30 制御部
40 ステージ
41、41a、41b、41c、41d 塗布対象
L1、L2、L3 距離
P1 第1位置
P2 第2位置
P3 第3位置
P4 第4位置
S 貯留室