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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-28
(45)【発行日】2023-10-06
(54)【発明の名称】筋弛緩監視装置及び生体情報モニタ
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/389 20210101AFI20230929BHJP
【FI】
A61B5/389
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019198593
(22)【出願日】2019-10-31
(65)【公開番号】P2021069726
(43)【公開日】2021-05-06
【審査請求日】2022-10-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000230962
【氏名又は名称】日本光電工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】519390335
【氏名又は名称】高木 俊一
(73)【特許権者】
【識別番号】597039984
【氏名又は名称】学校法人 川崎学園
(74)【代理人】
【識別番号】110000383
【氏名又は名称】弁理士法人エビス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉原 弘
(72)【発明者】
【氏名】北村 繁吉
(72)【発明者】
【氏名】永瀬 和哉
(72)【発明者】
【氏名】岩田 俊治
(72)【発明者】
【氏名】高木 俊一
(72)【発明者】
【氏名】中塚 秀輝
【審査官】佐々木 創太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-113085(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0254617(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/00 - 5/01
5/05 - 5/0538
5/06 - 5/398
A61M 3/00 - 9/00
31/00
39/00 -39/28
A61N 1/00 - 1/44
G06Q 50/22
G16H 10/00 -80/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体の神経を刺激する刺激部と、
前記刺激部の刺激に反応した筋から生じる電気信号を検出する信号検出部と、
前記刺激部で前記神経を刺激してから前記信号検出部で前記電気信号が検出されるまでの反応時間を算出する反応時間算出部と、
前記反応時間算出部で算出された前記反応時間の長さに基づいて前記生体の筋弛緩度を判定する弛緩度判定部とを備えた筋弛緩監視装置。
【請求項2】
前記反応時間算出部は、筋弛緩剤の投与前に前記刺激部で前記神経を刺激してから前記電気信号が検出されるまでの投与前反応時間と、筋弛緩剤の投与後に前記刺激部で前記神経を刺激してから前記電気信号が検出されるまでの投与後反応時間とを算出し、
前記反応時間算出部で算出された前記投与前反応時間と前記投与後反応時間に基づいて、前記筋弛緩剤の投与前に対する投与後の前記筋の反応の遅れを算出する遅れ算出部をさらに有し、
前記弛緩度判定部は、前記遅れ算出部で算出された前記筋の反応の遅れに基づいて前記筋弛緩度を判定する請求項1に記載の筋弛緩監視装置。
【請求項3】
前記反応時間算出部は、筋弛緩剤の投与後に前記刺激部で前記神経を刺激してから前記電気信号が検出されるまでの第1の反応時間と、前記第1の反応時間よりも後に前記刺激部で前記神経を刺激してから前記電気信号が検出されるまでの第2の反応時間とを算出し、
前記反応時間算出部で算出された前記第1の反応時間と前記第2の反応時間に基づいて、前記筋弛緩剤の第1の反応時間に対応する筋の反応に対する、第2の反応時間に対応する筋の反応の遅れを算出する遅れ算出部をさらに有し、
前記弛緩度判定部は、前記遅れ算出部で算出された前記筋の反応の遅れに基づいて前記筋弛緩度を判定する請求項1に記載の筋弛緩監視装置。
【請求項4】
前記反応時間算出部で算出された前記投与後反応時間を順次保存する保存部をさらに有し、
前記遅れ算出部は、前記保存部に保存された前回までの前記投与後反応時間を参照して前記筋の反応の遅れを算出する請求項2に記載の筋弛緩監視装置。
【請求項5】
前記反応時間算出部は、前記信号検出部で検出された前記電気信号のピークを検出し、前記ピークの位置に基づいて前記反応時間を算出する請求項1~4のいずれか一項に記載の筋弛緩監視装置。
【請求項6】
前記反応時間算出部は、前記信号検出部で検出された前記電気信号において強度が正を示す正ピークを検出し、前記正ピークの位置に基づいて前記反応時間を算出する請求項5に記載の筋弛緩監視装置。
【請求項7】
前記反応時間算出部は、前記信号検出部で検出された前記電気信号において強度が負を示す負ピークを検出し、前記負ピークの位置に基づいて前記反応時間を算出する請求項5または6に記載の筋弛緩監視装置。
【請求項8】
前記信号検出部で検出された前記電気信号の強度を算出する強度算出部をさらに有し、
前記弛緩度判定部は、前記強度算出部で算出された前記電気信号の強度に基づいてノイズ成分を除去する請求項1~7のいずれか一項に記載の筋弛緩監視装置。
【請求項9】
生体の神経を刺激する刺激部と、
前記刺激部の刺激に反応した筋から生じる電気信号を検出する信号検出部と、
前記刺激部で前記神経を刺激してから前記信号検出部で前記電気信号が検出されるまでの反応時間を算出する反応時間算出部と、
前記反応時間算出部で算出された前記反応時間の長さに基づいて前記生体の筋弛緩度を判定する弛緩度判定部とを備えた生体情報モニタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、筋弛緩監視装置及び生体情報モニタに関する。
【背景技術】
【0002】
生体の所定の筋肉に繋がる神経を電気刺激して、その刺激に反応した筋の電気信号に基づいて筋肉の弛緩度を監視する、いわゆる筋電図方式の筋弛緩監視装置が提案されている。一方、医療現場では、加速度感知方式の筋弛緩監視装置が広く普及しており、筋肉の弛緩度の判定方法が確立されている。筋電図方式の筋弛緩監視装置においても、加速度感知方式と同様の方法で筋肉の弛緩度を判定することが考えられている。
【0003】
加速度感知方式の筋弛緩監視装置で筋肉の弛緩度を判定する技術としては、例えば、特許文献1には、筋弛緩状態の確認および推移の予測を的確に行うことができる筋弛緩状態表示モニタ装置が提案されている。この筋弛緩状態表示モニタ装置は、所定の筋を4回連続的に刺激するTOF刺激により、TOF比およびTOFカウントなどを算出して筋肉の弛緩度を高精度に判定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-326050号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の筋弛緩状態表示モニタ装置は、筋肉の弛緩度を判定するために、所定の筋を4回連続的に刺激する必要がある。筋電図方式の筋弛緩監視装置では、筋の電気信号に基づいて筋肉の弛緩度を算出するため、例えば4回の刺激の途中に電気メスなどの電気機器を使用するとノイズが混入するおそれがあり、少ない刺激回数で筋肉の弛緩度を高精度に判定する技術が求められている。
【0006】
この発明は、このような従来の問題点を解消するためになされたもので、少ない刺激回数で筋弛緩度を高精度に判定する筋弛緩監視装置及び生体情報モニタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係る筋弛緩監視装置は、生体の神経を刺激する刺激部と、刺激部の刺激に反応した筋から生じる電気信号を検出する信号検出部と、刺激部で筋を刺激してから信号検出部で電気信号が検出されるまでの反応時間を算出する反応時間算出部と、反応時間算出部で算出された反応時間の長さに基づいて生体の筋弛緩度を判定する弛緩度判定部とを備えるものである。
【0008】
また、本発明の生体情報モニタは、生体の神経を刺激する刺激部と、前記刺激部の刺激に反応した筋から生じる電気信号を検出する信号検出部と、前記刺激部で前記神経を刺激してから前記信号検出部で前記電気信号が検出されるまでの反応時間を算出する反応時間算出部と、前記反応時間算出部で算出された前記反応時間の長さに基づいて前記生体の筋弛緩度を判定する弛緩度判定部とを備えている。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、弛緩度判定部が、刺激部で筋肉を刺激してから信号検出部で電気信号が検出されるまでの反応時間の長さに基づいて生体の筋弛緩度を算出するので、少ない刺激回数で筋弛緩度を高精度に判定する筋弛緩監視装置及び生体情報モニタを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】この発明の実施の形態1に係る筋弛緩監視装置を備えた筋弛緩表示装置の構成を示すブロック図である。
図2】筋弛緩剤の投与前および投与後において信号検出部で検出される電気信号の波形を示す図である。
図3】投与後反応時間と正ピークの強度の経過時間に対する推移を示す図である。
図4】筋弛緩剤の投与後に経過時間に応じて変化する筋肉の弛緩度を示す図である。
図5】実施の形態2において反応時間を算出する方法を示す図である。
図6】実施の形態3に係る筋弛緩監視装置の要部を示すブロック図である。
図7】実施の形態3において信号検出部で検出された電気信号の波形を示す図である。
図8】実施の形態3において筋肉の反応の遅れを算出する方法を示す図である。
図9】実施の形態4に係る筋弛緩監視装置の要部を示すブロック図である。
図10】実施の形態4において信号検出部で検出された電気信号の振幅を示す図である。
図11】実施の形態1~4の変形例に係る筋弛緩監視装置の要部を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
実施の形態1
図1に、この発明の実施の形態1に係る筋弛緩監視装置を備えた筋弛緩表示装置の構成を示す。筋弛緩測定装置は、一対の刺激用電極1aおよび1bと、一対の検出用電極2aおよび2bと、筋弛緩監視装置3と、表示部4とを有する。
【0012】
刺激用電極1aおよび1bは、生体の所定の筋肉を支配する神経に対応して配置され、その神経に対して電気刺激を出力することにより所定の筋肉を刺激するものである。このため、刺激用電極1aおよび1bのうち、一方が陽極で他方が負極となる。刺激用電極1aおよび1bは、例えば、尺骨神経などに対応して配置することができる。
検出用電極2aおよび2bは、所定の筋肉に対応して配置され、刺激用電極1aおよび1bからの電気刺激に反応した筋から生じる電気信号を検出するものである。このため、検出用電極2aおよび2bのうち、一方が陽極で他方が負極となる。検出用電極2aおよび2bは、例えば、母指内転筋および小指外転筋などに対応して配置することができる。
【0013】
筋弛緩監視装置3は、刺激部5および信号検出部6を有し、信号検出部6に反応時間算出部7、遅れ算出部8、弛緩度判定部9および出力部10が順次接続されている。また、遅れ算出部8には保存部11が接続されている。また、刺激部5、反応時間算出部7、遅れ算出部8、弛緩度判定部9および出力部10に装置制御部12が接続され、この装置制御部12に操作部13および格納部14がそれぞれ接続されている。また、刺激部5は刺激用電極1aおよび1bに接続されると共に、信号検出部6は検出用電極2aおよび2bに接続され、出力部10は表示部4に接続されている。
【0014】
刺激部5は、刺激用電極1aおよび1bに電圧を印加して生体の所定部位の筋とつながる神経を電気刺激するものである。
信号検出部6は、検出用電極2aおよび2bを介して生体からの電気信号を順次受信し、刺激部5の電気刺激に反応した筋から生じる電気信号を検出する。具体的には、検出用電極2aおよび2bから受信される電気信号を差動処理し、これにより生じた電気信号の波形を筋で生じた電気信号として検出する。
【0015】
反応時間算出部7は、装置制御部12から入力される刺激部5で神経を刺激した刺激時間と信号検出部6で電気信号が検出された検出時間とに基づいて、刺激部5で神経を刺激してから信号検出部6で電気信号が検出されるまでの反応時間を算出する。ここで、反応時間算出部7は、筋弛緩剤の投与前に刺激部5で神経が刺激されて、その神経の刺激から信号検出部6で電気信号が検出されるまでの反応時間を投与前反応時間として算出する。また、反応時間算出部7は、筋弛緩剤の投与後に刺激部5で神経が刺激されて、その神経の刺激から信号検出部6で電気信号が検出されるまでの反応時間を投与後反応時間として算出する。
【0016】
保存部11は、反応時間算出部7で算出される投与前反応時間および投与後反応時間を順次保存するものである。
遅れ算出部8は、反応時間算出部7で算出された投与後反応時間と保存部11に保存された投与前反応時間とに基づいて、筋弛緩剤の投与前に対する投与後の筋の反応の遅れ、すなわち筋弛緩剤の投与による筋の反応の遅れを算出する。
【0017】
弛緩度判定部9は、遅れ算出部8で算出された筋弛緩剤の投与による筋の反応の遅れに基づいて筋弛緩度を判定する。ここで、筋弛緩度は、筋の弛緩の度合いを示すものであり、筋の反応の遅れが大きくなるほど筋弛緩度が高くなるように設定される。
【0018】
出力部10は、弛緩度判定部9で判定された筋弛緩度を表示部4に出力する。
装置制御部12は、使用者により操作部13から入力される指示に基づいて筋弛緩監視装置3の各部の制御を行う。
【0019】
操作部13は、使用者からの指令を入力するためのもので、ボタン、タッチパネル、キーボード、マウス、トラックボール等から形成することができる。
格納部14は、動作プログラム等を格納するもので、ハードディスク、フレキシブルディスク、MO、MT、RAM、CD-ROM、DVD-ROM、SDカード、CFカード、USBメモリ等の記録メディア、またはサーバ等を用いることができる。
【0020】
なお、反応時間算出部7、遅れ算出部8、弛緩度判定部9および装置制御部12は、CPUと、CPUに各種の処理を行わせるための動作プログラムから構成されるが、それらをデジタル回路で構成してもよい。
【0021】
表示部4は、ディスプレイ装置を含み、筋弛緩監視装置3の出力部10から出力される筋弛緩度を表示するものである。表示部4は、例えば、生体情報モニタおよび心電図モニタなどの他の医療機器の構成を用いることできる。
【0022】
次に、反応時間算出部7による反応時間の算出方法について詳細に説明する。
反応時間算出部7は、信号検出部6で検出される電気信号に基づいて、その波形のピークを検出し、この検出したピークの位置に基づいて筋肉が刺激されてから反応するまでの反応時間を算出する。
【0023】
例えば、反応時間算出部7は、図2に示すように、筋弛緩剤の投与前に刺激部5で筋肉を刺激して信号検出部6で検出された電気信号に基づいて、その波形W0のピークのうち強度が正を示す正ピークP0を検出する。同様に、反応時間算出部7は、筋弛緩剤の投与後に刺激部5で神経を刺激して信号検出部6で検出された電気信号に基づいて、その波形W1のピークのうち強度が正を示す正ピークP1を検出する。続いて、反応時間算出部7は、正ピークP0の位置に基づいて投与前に筋肉が刺激されてから反応するまでの投与前反応時間t0を算出すると共に、正ピークP1の位置に基づいて投与後に筋肉が刺激されてから反応するまでの投与後反応時間t1を算出する。
これにより、遅れ算出部8が、投与前反応時間t0に対する投与後反応時間t1の長さに基づいて、筋弛緩剤の投与前に対する投与後の筋肉の反応の遅れDを算出する。
【0024】
次に、実施の形態1の動作について説明する。
まず、図1に示すように、生体の表面に刺激用電極1aおよび1bと検出用電極2aおよび2bとが張り付けられる。例えば、尺骨神経に対応する位置に刺激用電極1aおよび1bを張り付け、この尺骨神経に支配される小指外転筋に対応する位置に検出用電極2aおよび2bを張り付けることができる。
【0025】
そして、生体に筋弛緩剤を投与する直前に、使用者により操作部13が操作されて、刺激部5から刺激用電極1aおよび1bを介して生体の尺骨神経に電気刺激が出力される。
尺骨神経が刺激部5により電気刺激されると、尺骨神経に支配される小指外転筋が反応して電気信号を発生し、この電気信号が検出用電極2aおよび2bで受信される。そして、信号検出部6が、検出用電極2aおよび2bで受信された電気信号を差動処理し、これにより生じる波形を小指外転筋で生じた電気信号として検出する。信号検出部6は、その検出結果を反応時間算出部7に出力する。
【0026】
信号検出部6の検出結果が反応時間算出部7に入力されると、反応時間算出部7は、図2に示すように、電気信号の波形W0において正ピークP0を検出し、その正ピークP0の位置に基づいて、筋弛緩剤の投与前において電気刺激から小指外転筋が反応するまでの反応時間を示す投与前反応時間t0を算出する。
この投与前反応時間t0は、反応時間算出部7から遅れ算出部8を介して保存部11に保存される。
【0027】
続いて、生体に筋弛緩剤が投与されると、使用者により操作部13が操作されて、刺激部5から刺激用電極1aおよび1bを介して生体の尺骨神経に電気刺激が出力される。刺激部5は、例えば、1回の電気刺激を15秒間隔で繰り返し出力することができる。
【0028】
尺骨神経が電気刺激されると、尺骨神経に支配される小指外転筋が反応して電気信号を発生し、この電気信号が検出用電極2aおよび2bで受信される。そして、信号検出部6が、検出用電極2aおよび2bで受信された電気信号を差動処理し、これにより生じる波形を小指外転筋で生じた電気信号として検出する。信号検出部6は、その検出結果を反応時間算出部7に出力する。
【0029】
信号検出部6の検出結果が反応時間算出部7に入力されると、反応時間算出部7は、図2に示すように、電気信号の波形W1において正ピークP1を検出する。そして、反応時間算出部7は、正ピークP1の位置に基づいて、筋弛緩剤の投与後において電気刺激から小指外転筋が反応するまでの反応時間を示す投与後反応時間t1を算出する。
【0030】
実際に、筋弛緩剤を投与後に1回の電気刺激を15秒間隔で繰り返し行って算出された投与後反応時間t1と正ピークP1の強度の経過時間に対する推移を図3に示す。ここで、経過時間は、筋弛緩剤を投与してから経過した時間を示す。
図3に示すように、筋弛緩剤の投与開始S0から時間が経過するに従って正ピークP1の強度が小さくなる、すなわち生体の筋弛緩状態が深くなっていることがわかる。そして、生体の筋弛緩状態が深くなるに従って、投与後反応時間t1が大きくなり、電気刺激に対する小指外転筋の反応が遅れていることがわかる。
【0031】
続いて、正ピークP1の強度が極めて小さくなると、投与後反応時間t1の上昇は収まり、経過時間S1を経過して正ピークP1の強度がゼロ、すなわち生体の筋弛緩状態が深い状態となる。この状態は経過時間S1から経過時間S2まで安定して維持された後、経過時間S2を過ぎて正ピークP1の強度が上昇し始めると、投与後反応時間t1は徐々に小さくなる。そして、経過時間S3を過ぎて正ピークP1の強度が大きく上昇すると、投与後反応時間t1は急激に小さくなる。これにより、経過時間S2を過ぎて生体の筋弛緩状態が浅くなり始めると、電気刺激に対する小指外転筋の反応が徐々に回復し、経過時間S3を過ぎて生体の筋弛緩状態と共に小指外転筋の反応が急激に回復していることがわかる。
このように、投与後反応時間t1は、生体の筋弛緩状態の深さに応じて長くなるため、小指外転筋の弛緩の度合いを示す筋弛緩度の指標とすることができる。
【0032】
そこで、反応時間算出部7は、算出された投与後反応時間t1を遅れ算出部8に出力する。
ここで、反応時間算出部7は、ピークの位置に基づいて投与後反応時間t1を算出するため、例えば波形W1の立ち上がり位置などに基づいて算出する場合と比較して、投与後反応時間t1を正確に算出することができる。
また、反応時間算出部7は、正ピークP1の位置に基づいて投与後反応時間t1を算出している。正ピークP1は、一般的に、負ピークと比較して強度が大きく且つ位置ずれも少ないため、投与後反応時間t1をより正確に算出することができる。
【0033】
反応時間算出部7で算出された投与後反応時間t1が遅れ算出部8に入力されると、遅れ算出部8は、投与後反応時間t1を保存部11に保存された投与前反応時間t0と比較する。具体的には、遅れ算出部8は、図2に示すように、投与前反応時間t0に対する投与後反応時間t1の長さに基づいて、筋弛緩剤の投与前に対する投与後の小指外転筋の反応の遅れDを算出する。
この小指外転筋の反応の遅れDは、投与前反応時間t0を基準として算出されるため、投与後反応時間t1の長さのみを筋弛緩度の指標とした場合と比較して、筋弛緩度を正確に算出することができる。算出された小指外転筋の反応の遅れDは、遅れ算出部8から弛緩度判定部9に出力される。
【0034】
弛緩度判定部9は、遅れ算出部8で算出された小指外転筋の反応の遅れDが入力されると、その反応の遅れDに基づいて筋弛緩度を判定する。
例えば、図4に示すように、弛緩度判定部9は、筋弛緩剤の投与開始S0から小指外転筋の反応の遅れDが大きくなるほど筋弛緩度が大きくなるように判定する。続いて、経過時間S1を過ぎて正ピークP1の強度がゼロになると、弛緩度判定部9は、筋弛緩度が最も大きい値、例えば100%として筋弛緩状態が極めて深いと判定する。弛緩度判定部9は、経過時間S1から経過時間S2まで筋弛緩度を100%と判定し、経過時間S2を過ぎたところで小指外転筋の反応の遅れDが徐々に小さくなると、筋弛緩状態が回復し始めたと判断し、筋弛緩度が100%から徐々に小さくなるように判定する。そして、経過時間S3を過ぎて小指外転筋の反応の遅れDが急激に小さくなると、弛緩度判定部9は、筋弛緩状態が回復していると判断し、筋弛緩度を急激に小さくなるように判定する。
【0035】
このとき、弛緩度判定部9は、経過時間S3を過ぎる前に筋弛緩剤を再投与する目安を設定することが好ましく、例えば筋弛緩状態が回復し始める段階の筋弛緩度に目安値Hを設定することができる。これにより、筋弛緩度が目安値Hを超えたところで医療従事者が筋弛緩剤を再投与し、筋弛緩度Rのように筋弛緩状態を再び深めることができる。
【0036】
このように、弛緩度判定部9が、小指外転筋の反応の遅れDに基づいて筋弛緩度を判定するため、小指外転筋を刺激部5で1回刺激すればよく、少ない刺激回数で筋弛緩度を高精度に監視することができる。
また、筋電図方式の筋弛緩監視装置は、生体の指などの加速度に基づいて筋弛緩度を監視する加速度感知方式の筋弛緩監視装置と比較して、小指外転筋の僅かな反応も感知されるため、小指外転筋の反応の遅れDを確実に測定することができ、筋弛緩度を高精度に判定することができる。
【0037】
弛緩度判定部9は、判定された筋弛緩度を出力部10を介して表示部4に出力する。
表示部4は、弛緩度判定部9で判定された筋弛緩度を順次表示し、医療従事者が生体の筋弛緩度を容易に把握することができる。
【0038】
本実施の形態によれば、弛緩度判定部9が、反応時間算出部7で算出された投与後反応時間t1の長さに基づいて生体の筋弛緩度を判定するため、小指外転筋を刺激部5で1回刺激すればよく、少ない刺激回数で筋弛緩度を高精度に監視することができる。このとき、弛緩度判定部9は、遅れ算出部8で算出された小指外転筋の反応の遅れDに基づいて生体の筋弛緩度を判定するため、筋弛緩度をより高精度に判定することができる。
【0039】
実施の形態2
上記の実施の形態1では、反応時間算出部7は、正ピークP1の位置に基づいて投与後反応時間t1を算出したが、ピークの位置に基づいて投与後反応時間を算出できればよく、正ピークP1の位置に限られるものではない。
【0040】
例えば、実施の形態1において、反応時間算出部7は、正ピークの位置と負ピークの位置とに基づいて投与前反応時間および投与後反応時間を算出することができる。具体的には、図5に示すように、反応時間算出部7は、筋弛緩剤の投与前において小指外転筋からの電気信号の波形W0に基づいて、強度が正を示す正ピークP0aと強度が負を示す負ピークP0bをそれぞれ検出する。同様に、反応時間算出部7は、筋弛緩剤の投与後において小指外転筋からの電気信号の波形W1に基づいて、正ピークP1と負ピークP2をそれぞれ検出する。続いて、反応時間算出部7は、正ピークP0aの位置に基づいて投与前反応時間t0aを算出すると共に負ピークP0bの位置に基づいて投与前反応時間t0bを算出し、正ピークP1の位置に基づいて投与後反応時間t1を算出すると共に負ピークP2の位置に基づいて投与後反応時間t2を算出する。
【0041】
これにより、遅れ算出部8が、投与前反応時間t0aに対する投与後反応時間t1の長さに基づいて正ピークP1の遅れD1を算出すると共に、投与前反応時間t0bに対する投与後反応時間t2の長さに基づいて負ピークP2の遅れD2を算出する。そして、遅れ算出部8が、正ピークP1の遅れD1および負ピークP2の遅れD2に基づいて小指外転筋の反応の遅れを算出する。ここで、小指外転筋の反応の遅れは、例えば、正ピークP1の遅れD1と負ピークP2の遅れD2を算術平均および加重平均するなどして算出することができる。
このように、反応時間算出部7が、正ピークP1の位置と負ピークP2の位置とに基づいて投与後反応時間t1およびt2を算出するため、この投与後反応時間t1およびt2に基づいて遅れ算出部8が小指外転筋の反応の遅れをより高精度に算出することができる。
【0042】
なお、反応時間算出部7は、正ピークP0aの位置と負ピークP0bの位置とに基づいて1つの投与前反応時間を算出すると共に、正ピークP1の位置と負ピークP2の位置とに基づいて1つの投与後反応時間を算出し、この投与前反応時間および投与後反応時間に基づいて遅れ算出部8が小指外転筋の反応の遅れを算出してもよい。
【0043】
本実施の形態によれば、反応時間算出部7が、正ピークP1の位置と負ピークP2の位置とに基づいて投与後反応時間を算出するため、この投与後反応時間に基づいて小指外転筋の反応の遅れをより高精度に算出することができる。
なお、本実施の形態では、反応時間算出部7は、投与前反応時間t0aおよびt0bと投与後反応時間t1およびt2を算出したが、投与前反応時間t0bと投与後反応時間t2のみを算出してもよい。これにより、遅れ算出部8が、投与前反応時間t0bおよび投与後反応時間t1に基づいて小指外転筋の反応の遅れを算出する。
【0044】
実施の形態3
上記の実施の形態1および2において、遅れ算出部8は、投与前反応時間および投与後反応時間に基づいて小指外転筋の反応の遅れを算出する際に、前回までに反応時間算出部7で算出された投与後反応時間を参照して算出することが好ましい。
【0045】
例えば、図6に示すように、実施の形態1の遅れ算出部8に換えて遅れ算出部31を配置することができる。
遅れ算出部31は、反応時間算出部7から入力される投与後反応時間を保存部11に順次保存し、保存部11に保存された前回までの投与後反応時間を参照しつつ、投与前反応時間および今回の投与後反応時間に基づいて小指外転筋の反応の遅れを算出する。
【0046】
次に、実施の形態3の動作について説明する。
まず、実施の形態1と同様に、刺激部5が尺骨神経を所定の時間間隔で繰り返し電気刺激し、小指外転筋で発生した電気信号が信号検出部6で順次検出される。続いて、反応時間算出部7が、信号検出部6で検出された電気信号の波形に基づいて正ピークを算出する。
【0047】
例えば、反応時間算出部7は、図7に示すように、信号検出部6で順次検出される電気信号の波形W1,W2およびW3に基づいて正ピークの位置を検出する。ここで、3つの電気信号のうち最初に検出された電気信号の波形W1では1つの正ピークP1aが検出され、続いて検出される電気信号の波形W2およびW3ではそれぞれ2つの正ピークP1aおよびP1bが検出されている。反応時間算出部7は、それぞれの波形W1~W3について、正ピークP1aおよびP1bの位置に基づいて投与後反応時間を算出する。反応時間算出部7は、例えば、波形W1の正ピークP1aの投与後反応時間を5.1ms、波形W2の正ピークP1aおよびP1bの投与後反応時間を5.2msおよび4.0ms、波形W3の正ピークP1aおよびP1bの投与後反応時間を5.3msおよび4.1msと算出する。算出された投与後反応時間は、反応時間算出部7から遅れ算出部31に出力される。
【0048】
遅れ算出部31は、反応時間算出部7から順次入力される投与後反応時間を保存部11に保存すると共に、投与前反応時間に対する投与後反応時間の長さに基づいて小指外転筋の反応の遅れDを算出する。
このとき、遅れ算出部31は、保存部11に保存された前回までの投与後反応時間を参照して小指外転筋の反応の遅れDを算出する。すなわち、遅れ算出部31は、図8に示すように、反応時間算出部7から波形W1の投与後反応時間5.1msが入力されると、投与前の電気信号の波形W0で算出された正ピークP1aの投与前反応時間5.0msと比較して、小指外転筋の反応の遅れDを0.1msと算出する。続いて、遅れ算出部31は、反応時間算出部7から波形W2の正ピークP1aおよびP1bの投与後反応時間5.2msおよび4.0msが入力されると、強度が高い正ピークP1aの投与後反応時間5.2msを選択して投与前反応時間5.0msと比較し、小指外転筋の反応の遅れDを0.2msと算出する。なお、遅れ算出部31は、複数の正ピークがあった場合、強度が高い正ピークを選択し、投与前の電気信号の波形W0で算出された正ピークP1aの投与前反応時間5.0msと比較するものとしているが、複数の正ピークの強度が近似するものであった場合であっても、強度がより高い正ピークを選択するものとなる。
【0049】
さらに、遅れ算出部31は、反応時間算出部7から波形W3の正ピークP1aおよびP1bの投与後反応時間5.3msおよび4.1msが入力されると、強度が高い正ピークP1bの投与後反応時間4.1msを選択して、投与前反応時間5.0msではなく、保存部11に保存された前回の波形W2の正ピークP1bの投与後反応時間4.0msと比較する。これにより、遅れ算出部31は、波形W2に対する波形W3の遅れを0.1msと算出し、この0.1msに波形W2の波形W0に対する遅れDの0.2msを加えて、小指外転筋の反応の遅れDを0.3msと算出する。
このように、遅れ算出部31は、保存部11に保存された前回までの投与後反応時間を参照しつつ、投与前反応時間および今回の投与後反応時間に基づいて小指外転筋の反応の遅れDを算出することにより、その値を高精度に算出することができる。
【0050】
このようにして、算出された小指外転筋の反応の遅れDは、遅れ算出部31から弛緩度判定部9に順次出力され、実施の形態1と同様にして、弛緩度判定部9において生体の筋弛緩度が判定される。
【0051】
本実施の形態によれば、遅れ算出部31が、保存部11に保存された前回までの投与後反応時間参照して小指外転筋の反応の遅れDを算出するため、その値を高精度に算出することができる。
なお、本実施の形態では、遅れ算出部31は、前回の波形W2の投与後反応時間を参照して小指外転筋の反応の遅れDを算出したが、保存部11に保存された前回までの投与後反応時間を参照して算出すればよく、これに限られるものではない。例えば、遅れ算出部31は、保存部11に保存された前回までの全ての投与後反応時間に基づいて小指外転筋の反応の遅れDを修正して算出することもできる。
【0052】
実施の形態4
上記の実施の形態1~3では、弛緩度判定部9は、反応時間算出部7で算出された投与後反応時間の長さのみに基づいて生体の筋弛緩度を判定したが、他の情報を参照して生体の筋弛緩度を高精度に判定することが好ましい。
【0053】
例えば、図9に示すように、実施の形態1において信号検出部6と弛緩度判定部9の間を接続する強度算出部41を新たに配置することができる。
強度算出部41は、信号検出部で検出された電気信号の強度、例えば電気信号の振幅を算出する。
【0054】
次に、実施の形態4の動作について説明する。
まず、実施の形態1と同様に、刺激部5が尺骨神経を所定の時間間隔で繰り返し電気刺激し、小指外転筋で発生した電気信号が信号検出部6で順次検出される。信号検出部6は、検出した電気信号を反応時間算出部7に出力すると共に強度算出部41に出力する。
反応時間算出部7は、実施の形態1と同様に、信号検出部6で検出された電気信号に基づいて投与後反応時間を算出し、この投与後反応時間に基づいて遅れ算出部8が小指外転筋の反応の遅れDを算出して弛緩度判定部9に出力する。
【0055】
一方、強度算出部41は、信号検出部6で検出された電気信号の波形に基づいてピークの位置を検出し、そのピークの強度を算出する。例えば、強度算出部41は、図10に示すように、信号検出部6で検出された電気信号の波形W1に基づいて正ピークP1および負ピークP2を検出し、その正ピークP1および負ピークP2の強度に基づいて波形W1の振幅fを算出する。算出された波形W1の振幅fは、強度算出部41から弛緩度判定部9に出力される。
【0056】
ここで、図3に示すように、電気信号のピークの強度は、生体の筋弛緩状態の深さに応じて小さくなる。このため、遅れ算出部8で算出される小指外転筋の反応の遅れDが大きくなっても、電気信号のピークの強度が小さくなっていない場合には、その遅れDは小指外転筋の弛緩に起因するものではなく、ノイズ成分に起因する遅れDと考えられる。
【0057】
そこで、弛緩度判定部9は、遅れ算出部8で算出された小指外転筋の反応の遅れDに基づいて筋弛緩度を判定する際に、強度算出部41で算出された波形W1の振幅fに基づいてノイズ成分を除去しつつ判定する。例えば、弛緩度判定部9は、波形W1の振幅fが変化していない場合には、その電気信号はノイズ成分と判断して筋弛緩度の判定を停止する。一方、弛緩度判定部9は、小指外転筋の反応の遅れDが生じると共にその遅れDに応じた波形W1の振幅fの変化が生じた場合には、反応の遅れDに基づいて筋弛緩度を判定する。これにより、弛緩度判定部9は、筋弛緩度をより高精度に判定することができる。
【0058】
本実施の形態によれば、弛緩度判定部9が、強度算出部41で算出された電気信号の強度に基づいてノイズ成分を除去するため、筋弛緩度をより高精度に判定することができる。
【0059】
なお、上記の実施の形態1~4では、弛緩度判定部9は、遅れ算出部で算出された筋肉の反応の遅れに基づいて生体の筋弛緩度を判定したが、反応時間算出部7で算出された反応時間の長さに基づいて生体の筋弛緩度を判定すればよく、これに限られるものではない。
例えば、図11に示すように、実施の形態1において反応時間算出部7および弛緩度判定部9に換えて反応時間算出部51および弛緩度判定部52を配置すると共に、遅れ算出部8および保存部11を除くことができる。
【0060】
反応時間算出部51は、信号検出部6で電気信号が検出された検出時間に基づいて、刺激部5で尺骨神経を電気刺激してから信号検出部6で電気信号が検出されるまでの反応時間を算出する。
弛緩度判定部52は、反応時間算出部51で算出された反応時間の長さに基づいて生体の筋弛緩度を判定する。
【0061】
これにより、反応時間算出部51は、筋弛緩剤の投与後に刺激部5で尺骨神経を刺激してから信号検出部6で電気信号が検出されるまでの投与後反応時間を算出する。弛緩度判定部52には、投与後反応時間の長さに応じた生体の筋弛緩度の指標が予め設定されており、この指標に基づいて反応時間算出部51で算出された投与後反応時間の長さに応じた生体の筋弛緩度を算出する。このように、反応時間算出部51は、筋弛緩剤の投与前に投与前反応時間を算出することなく、生体の筋弛緩度を算出することができる。
【0062】
また、上記の実施の形態1~4では、反応時間算出部は、信号検出部6で検出された電気信号のピークの位置に基づいて反応時間を算出したが、反応時間を算出することができればよく、これに限られるものではない。例えば、反応時間算出部は、信号検出部6で検出された電気信号の立ち上がり位置などに基づいて反応時間を算出することもできる。
【0063】
また、上記の実施の形態1~4では、遅れ算出部8は、筋弛緩投与前反応時間に対する投与後反応時間の長さに基づいて、筋弛緩剤の投与前に対する投与後の筋の反応の遅れDを算出するものとしたが、筋弛緩剤の投与後に刺激部5で筋肉神経が刺激されて、その神経筋肉の刺激から信号検出部6で電気信号が検出されるまでの反応時間(第1の反応時間)と、第1の反応時間よりも後に刺激部5で筋肉神経が刺激されて、その神経筋肉の刺激から信号検出部6で電気信号が検出されるまでの反応時間(第2の反応時間)に対する筋の反応の遅れを算出するものとしてもよい。
【0064】
また、上記の実施の形態1~4では、反応時間算出部7は、信号検出部6で電気信号が検出された検出時間に基づいて反応時間を算出したが、信号検出部6で検出された電気信号の検出情報に基づいて刺激部5で神経を刺激してから信号検出部6で電気信号が検出されるまでの反応時間を算出できればよく、これに限られるものではない。例えば、反応時間算出部7は、電気信号の波形W1に基づいて投与後反応時間t1を直接算出することができる。
【0065】
また、上記の実施の形態1~4では、弛緩度判定部9は、尺骨神経を1回刺激して生じた電気信号に基づいて筋弛緩度を判定したが、筋弛緩度を判定できればよく、1回の刺激に限られるものではない。弛緩度判定部9は、例えばノイズで電気信号に歪が生じている場合などには、小指外転筋を複数回刺激して筋弛緩度を判定することができる。
【0066】
また、上記の実施の形態1~4では、刺激部5は、尺骨神経を電気刺激したが、生体の所定の筋と繋がる神経を刺激することができればよく、尺骨神経に限られるものではない。
【0067】
また、上記の実施の形態1~4では、表示部4は、ディスプレイ装置を含み、出力部10から出力される筋弛緩度を表示するものとし、表示部4は、筋弛緩監視装置3に接続したり、あるいは、生体情報モニタおよび心電図モニタなど他の医療機器構成を用いたりしてもよいものとしたが、筋弛緩監視装置3とは別体の表示機器であれば、例えば有機ELディスプレイ、無機ELディスプレイおよび液晶ディスプレイのような表示機器、スマートフォン又はタブレット端末のような携帯端末でもよい。
【0068】
また、上記の実施の形態1~4では、筋弛緩監視装置3として記載したが、筋弛緩監視装置3に備えられる刺激部5および信号検出部6、反応時間算出部7、遅れ算出部8、弛緩度判定部9および出力部10、遅れ算出部8には保存部11、装置制御部12それぞれは、表示部4を備えた生体情報モニタおよび心電図モニタなど他の医療機器に搭載されるものであってもよい。
【符号の説明】
【0069】
1a,1b 刺激用電極
2a,2b 検出用電極
3 筋弛緩監視装置
4 表示部
5 刺激部
6 信号検出部
7,51 反応時間算出部
8,31 遅れ算出部
9,52 弛緩度判定部
10 出力部
11 保存部
12 装置制御部
13 操作部
14 格納部
41 強度算出部
W0,W1,W2,W3 波形
P0,P0a,P1,P1a,P1b 正ピーク
P0b,P2 負ピーク
t0,t0a,t0b 投与前反応時間
t1、t2 投与後反応時間
D,D1,D2 遅れ
S1,S2,S3 経過時間
H 閾値
R 筋弛緩度
f 振幅
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11