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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-28
(45)【発行日】2023-10-06
(54)【発明の名称】ドラム式洗濯機
(51)【国際特許分類】
   D06F 33/52 20200101AFI20230929BHJP
   D06F 33/34 20200101ALI20230929BHJP
【FI】
D06F33/52
D06F33/34
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019231464
(22)【出願日】2019-12-23
(65)【公開番号】P2021097905
(43)【公開日】2021-07-01
【審査請求日】2022-11-25
(73)【特許権者】
【識別番号】512128645
【氏名又は名称】青島海爾洗衣机有限公司
【氏名又は名称原語表記】QINGDAO HAIER WASHING MACHINE CO.,LTD.
(73)【特許権者】
【識別番号】307036856
【氏名又は名称】アクア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137486
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 雅直
(72)【発明者】
【氏名】山本 正和
【審査官】大内 康裕
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-150399(JP,A)
【文献】特開2017-029248(JP,A)
【文献】特開2012-090829(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06F 33/00~33/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
布団の洗い行程、濯ぎ行程及び脱水行程を実施可能なドラム式洗濯機であって、
筐体内に配置された外槽と、
前記外槽内に配置され、水平軸または水平方向に対して傾く傾斜軸を中心に回転可能なドラムと、
前記ドラムを回転させるための駆動モータと、
前記外槽内に水を供給及び前記外槽内から水を排水する給排水手段と、
前記洗い行程を開始するまでに布団洗い予備行程を実施するように前記駆動モータ及び前記給排水手段を制御する制御手段とを備え、
前記布団洗い予備行程では、
前記外槽内に水を供給して布団を濡らす布団給水動作と、
前記布団給水動作の後で前記ドラムを45~55rpmで回転させて水分を布団に浸透させる布団撹拌動作と、
前記布団撹拌動作の後で前記ドラムを回転させて布団の膨らみを抑えることで体積を小さくする布団脱水動作と、
が実施されることを特徴とするドラム式洗濯機。
【請求項2】
前記布団脱水動作では、布団を前記ドラム内の外周側に押し付けながら、前記ドラムを500~600rpmで回転させることを特徴とする請求項1に記載のドラム式洗濯機。
【請求項3】
衣類を洗濯する際に使用される標準洗浄コースと、布団を洗濯する際に使用される布団専用洗浄コースとを選択可能であり、
前記布団専用洗浄コースが選択された場合に、前記布団洗い予備行程が実施されることを特徴とする請求項1または2に記載のドラム式洗濯機。
【請求項4】
前記布団は、羽毛布団であることを特徴とする請求項1~3の何れかに記載のドラム式洗濯機。
【請求項5】
前記布団洗い予備行程では、
前記布団撹拌動作と前記布団脱水動作との間において前記外槽内から水を排水する排水動作が実施されることを特徴とする請求項1~4の何れかに記載のドラム式洗濯機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドラム式洗濯機に関する。
【背景技術】
【0002】
ドラム式洗濯機で洗濯物を洗濯する場合、洗濯物がドラム内に投入された後、洗い行程、濯ぎ行程、脱水行程の順に運転が行われるのが一般的である。その洗い行程では、ドラム内に水を給水する給水動作、ドラムを回転させる洗浄動作、ドラム内から水を排水する排水動作が順に行われた後で脱水動作が行われる。
【0003】
洗浄動作の際には、底部に水を溜めた外槽内で横軸型のドラムを回転させ、ドラム内に設けたバッフルにより洗濯物を持ち上げては落下させて、洗濯物をドラムの内周面に叩き付ける、いわゆるたたき洗いにより洗濯物を洗濯する(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-33512
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来から、ドラム式洗濯機において衣類などの洗濯物の他に、布団の洗濯が行われる場合がある。この場合も衣類などの洗濯物と同様に、布団がドラム内に投入された後、洗い行程、濯ぎ行程、脱水行程の順に運転が行われる。
【0006】
しかしながら、布団(特に羽毛布団)は、内部に充填される綿が乾いて膨らんでいる状態では、体積が大きく、また、水に浮きやすい。そのため、ドラム内に布団を投入すると、ドラム内の空間は、ほとんど隙間なく布団が収容された状態となる。また、ドラム内に給水すると、布団が浮いてしまいバッフルに接触しにくくなる。この状態で、洗い行程の洗浄動作が行われた場合、ドラムを回転させてもドラム内にほとんど隙間がなく、布団も浮いているため、バッフルにより布団を持ち上げることができない。よって、ドラム内の布団は、ほとんど回転しない状態で維持される。
【0007】
そのため、洗い行程の洗浄動作を行うためにドラムが回転しているにもかかわらず、ドラム内の布団は回転することはない。よって、布団の外周部には洗濯水が掛けられるが、布団の中央部分には、洗濯水が行きわたらず、また布団を持ち上げることができないので、布団をドラム内でほぐすこともできず、たたき洗いも効果的に行うことができない。このことから従来技術のドラム式洗濯機では、洗いムラが発生し、布団の全体を十分に洗浄することが難しいという問題がある。
【0008】
従来のドラム式洗濯機において布団の洗濯が行われた場合、洗い行程において、ドラムは、右回転と左回転とが所定時間ずつ交互に繰り返されるように回転する。図15では、布団の状態変化が分かりやすいように、布団に形成されたシワに丸印をつけている。図15において、洗い行程でのドラムの回転数は、40rpmである。
【0009】
布団がドラム内に投入されて、ドラムが右回転すると、図15(a)に示すように、ドラム内に隙間なく収容された布団は、右回転方向に少し動く。引き続き、ドラムが左回転すると、図15(b)に示すように、ドラム内に隙間なく収容された布団は、左回転方向に少し動く。その後、ドラムが右回転すると、図15(c)に示すように、ドラム内に隙間なく収容された布団は、右回転方向に少し動く。
【0010】
このように、ドラムの右回転と左回転とが交互に繰り返されることにより、ドラム内に収容された布団は、右回転方向への僅かな移動と、左回転方向への僅かな移動とを繰り返す。そのため、ドラム内において布団が回転することはなく、布団の中央部分には、洗濯水がほとんど行きわたらない。
【0011】
そこで、本発明は、布団を洗いムラなく、十分に洗浄することが可能なドラム式洗濯機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
すなわち、本発明のドラム式洗濯機は、布団の洗い行程、濯ぎ行程及び脱水行程を実施可能なドラム式洗濯機であって、筐体内に配置された外槽と、前記外槽内に配置され、水平軸または水平方向に対して傾く傾斜軸を中心に回転可能なドラムと、前記ドラムを回転させるための駆動モータと、前記外槽内に水を供給及び前記外槽内から水を排水する給排水手段と、前記洗い行程を開始するまでに布団洗い予備行程を実施するように前記駆動モータ及び前記給排水手段を制御する制御手段とを備え、前記布団洗い予備行程では、前記外槽内に水を供給して布団を濡らす布団給水動作と、前記布団給水動作の後で前記ドラムを45~55rpmで回転させて水分を布団に浸透させる布団撹拌動作と、前記布団撹拌動作の後で前記ドラムを回転させて布団の膨らみを抑えることで体積を小さくする布団脱水動作と、が実施されることを特徴とする。
【0013】
本発明のドラム式洗濯機において、前記布団脱水動作では、布団を前記ドラム内の外周側に押し付けながら、前記ドラムを500~600rpmで回転させることが好適である。
本発明のドラム式洗濯機において、衣類を洗濯する際に使用される標準洗浄コースと、布団を洗濯する際に使用される布団専用洗浄コースとを選択可能であり、前記布団専用洗浄コースが選択された場合に、前記布団洗い予備行程が実施されることが好適である。
本発明のドラム式洗濯機において、前記布団は、羽毛布団であることが好適である。
【0014】
本発明のドラム式洗濯機において、前記洗い予備行程では、前記撹拌動作と前記脱水動作との間において前記外槽内から水を排水する排水動作が実施されることが好適である。
【発明の効果】
【0015】
本発明のドラム式洗濯機では、洗い行程を開始するまでに洗い予備行程を実施して、羽毛布団などの布団を濡らした状態で遠心力を加えることで、水分を布団の内部に短時間で浸透させるとともに綿の膨らみを押さえることができるので、布団の体積を短時間で小さくすることができる。そのため、布団を収容したドラム内に隙間が形成されて、布団がドラム内で移動しやすくなり、また、布団内部に水分が浸透して布団が浮きにくくなることで、バッフルによって布団を持ち上げることができる。これにより、たたき洗いを実行して、布団の中央部分まで洗浄することができ、洗浄力が向上して洗いムラも抑制される。
【0016】
本発明のドラム式洗濯機では、洗い予備行程において、給水動作の後、ドラムを回転させる撹拌動作を実施することにより、布団の内部に水分を素早く浸透させることができる。
【0017】
本発明のドラム式洗濯機では、洗い予備行程において、外槽内から水を排水した後で脱水動作が開始されるため、脱水動作を短縮できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施形態に係るドラム式洗濯機1の斜視図である。
図2図1のドラム式洗濯機1の構成を示す側面断面図である。
図3】ドラム式洗濯機1の制御ブロック図である
図4】ドラム式洗濯機1の運転方法を示すフローチャートである。
図5】標準洗浄コースの洗い行程の動作を示すフローチャートである。
図6】布団専用洗浄コースの洗い予備行程の動作を示すフローチャートである。
図7】洗い予備行程でのドラム4内の布団の状態変化を示す図である。
図8】洗い予備行程でのドラム4内の布団の状態変化を示す図である。
図9】洗い予備行程でのドラム4内の布団の状態変化を示す図である。
図10】布団専用洗浄コースの洗い行程の動作を示すフローチャートである。
図11】洗い行程でのドラム4内の布団の状態変化を示す図である。
図12】洗い行程でのドラム4内の布団の状態変化を示す図である。
図13】洗い予備行程が行われないで、ドラム4を50rpmで回転させて洗浄動作が行われた場合のドラム4内の布団の状態変化を示す図である。
図14】洗い予備行程が行われた後において、ドラム4を40rpmで回転させて洗浄動作が行われた場合のドラム4内の布団の状態変化を示す図である。
図15】従来のドラム式洗濯機で布団を洗濯した場合のドラム内の布団の状態変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態であるドラム式洗濯機1について、図面を参照して説明する。図1は、本発明の実施形態のドラム式洗濯機1の斜視図である。図2は、図1のドラム式洗濯機1の構成を示す側面断面図である。
【0020】
本実施形態のドラム式洗濯機1(以下、洗濯機1と称する場合がある)は、図1及び図2に示すように、箱形状の筐体2を有しており、筐体2の内部には、略円筒形状の内周面を有する外槽3が配置され、外槽3の内部には、洗濯物を収容するための略円筒形状の内周面を有するドラム4が前後方向に延伸する主軸5により軸支されている。ドラム4は、水平軸を中心に回転可能である。
【0021】
筐体2の前面には、使用者が操作するための操作部2aと、ドラム4の前端に形成された開口4aと対向する衣類投入口6が形成される。筐体2には、衣類投入口6を開閉するドア8が設けられており、衣類投入口6は、ドア8により開閉され、ドア8が開放された状態でドラム4内に洗濯物の出し入れが可能となっている。
【0022】
ドラム4の内周面には、ドラム4内に突出するように複数のバッフル4bが設けられている。バッフル4bは、ドラム4に収容された洗濯物を持ち上げるための突起であり、例えば、洗い行程時において、ドラム4が後述するモータ11の駆動力によって回転されると、ドラム4内の水を含んだ洗濯物がバッフル4bにより持ち上げられ自然落下される、いわゆる叩き洗いが行われる。
【0023】
ドラム4の内周面には、多数の通水孔4cが穿設されており、洗浄やすすぎ時に外槽3内に供給された水は、通水孔4cを通してドラム4内へ流入し、遠心脱水時にドラム4内で洗濯物から吐き出された水は、この通水孔4cを通して外槽3側へと飛散する。なお、本実施形態のドラム式洗濯機1としては、例えば衣類洗濯容量(ドラム容積)は17kgでもよいし、衣類洗濯容量は27kgでもよい。
【0024】
主軸5は、外槽3の背面壁に装着された軸受5aによって回転自在に支承され、さらに後方に突出した主軸5の先端には、主プーリ10が取り付けられている。筐体2の底部には、モータ11が設置され、モータ11の回転軸には、モータプーリ12が取り付けられており、モータプーリ12の回転動力は、タイミングベルト16を介して主プーリ10に伝達される。これにより、モータ11が駆動されると、ドラム4が主軸5を中心に回転する。
【0025】
外槽3の背面壁の上部には、途中に給水バルブ30aが設けられた給水管30が接続されており、給水バルブ30aが開放されると、外部から供給される水が給水管30を介して外槽3へと供給される。外槽3の底部に設けられた排水口には、途中に排水バルブ31aが設けられた排水管31が接続されており、排水バルブ31aが開放されると、外槽3内の水が排水管31を通して機外へと排出される。
【0026】
図3は、ドラム式洗濯機1の制御ブロック図である。ドラム式洗濯機1の制御部50は、図3に示すように、例えば、マイクロコンピュータなどで構成されており、CPUと、ドラム式洗濯機1の動作を制御するプログラムが格納されたROMと、上記プログラムを実行する際に用いられるデータ等が一時的に記憶されるRAMとを備えている。ドラム式洗濯機1の運転動作は、この制御部50によって制御される。制御部50には、操作部2aと、給水バルブ30aと、排水バルブ31aと、モータ11とが接続されている。
【0027】
洗濯機1では、使用者が、筐体2の操作部2aを操作することにより、標準洗浄コースと、布団専用洗浄コースとを選択可能になっている。なお、洗濯機1において、筐体2の操作部2aを操作することにより種々の運転コースを選択可能であるが、以下の説明では、標準洗浄コース及び布団専用洗浄コースについてのみ説明する。
【0028】
標準洗浄コースは、衣類などを洗濯する際に使用される標準的なコースであり、洗い行程、濯ぎ行程及び脱水行程の順に運転が実施される。
【0029】
布団専用洗浄コースは、羽毛布団などの布団を洗濯する際に使用されるコースであり、洗い予備行程、洗い行程、濯ぎ行程及び脱水行程の順に運転が実施される。
【0030】
ドラム式洗濯機1の運転方法について、図4に基づいて説明する。図4は、ドラム式洗濯機1の運転方法を示すフローチャートである。
【0031】
<ステップS1>
ステップS1において、制御部50は、操作部2aに対して行われた操作内容に基づいて、標準洗浄コース及び布団専用洗浄コースの何れが選択されたか否かを判定する。
【0032】
(標準洗浄コース)
<ステップS2:洗い行程>
ステップS1で制御部50により標準洗浄コースが選択されたと判定された場合、ステップS2において、標準洗浄コースの洗い行程が実施される。
【0033】
標準洗浄コースの洗い行程の具体的な動作について、図5に基づいて説明する。図5は、標準洗浄コースの洗い行程の動作を示すフローチャートである。
【0034】
<ステップS201:給水動作>
使用者によってドア8が開けられ、衣類などの洗濯物がドラム4内に収容された後、ドア8が閉じられた状態で、制御部50は、給水バルブ30aを開いて、外槽3に水を供給する。この際、制御部50は、排水バルブ31aを閉じていて、供給された水は、外槽3内に溜められ、通水孔4cを通ってドラム4内にも溜められる。そして、所定量の水が供給されると、制御部50は、給水バルブ30aを閉じる。
【0035】
<ステップS202:洗浄動作>
給水動作が終了すると、制御部50は、モータ11を駆動する。モータ11が駆動されると、その駆動力が、モータプーリ12、タイミングベルト16及び主プーリ10を介して、ドラム4に伝達される。洗浄動作では、制御部50は、ドラム4を、例えば40rpmで、右回転と左回転とを交互に繰り返すように回転させて、ドラム4内の水を含んだ洗濯物を、バッフル4bにより持ち上げて自然落下させる、たたき洗いを所定時間(例えば4分)行う。
【0036】
<ステップS203:排水動作>
そして洗浄動作が終了すると、制御部50は、排水バルブ31aを開いて、外槽3内の洗濯水を、排水管31を介して機外へ排水する。
【0037】
<ステップS204:脱水動作>
排水動作が終了すると、制御部50は、モータ11を駆動する。モータ11が駆動されると、ドラム4が例えば600rpmで高速回転して、洗濯物に含まれる洗濯水が脱水される。洗濯物から脱水された洗濯水は、通水孔4cを通って、外槽3内に放出され、排水口31から機外へ排水される。
【0038】
<ステップS3:濯ぎ行程>
洗浄行程が終了すると、制御部50は、排水バルブ31を閉じた後で給水バルブ30aを開いて、外槽3に所定量のすすぎ水を供給する。そして、所定量の水が供給されると、制御部50は、給水バルブ30aを閉じて、モータ11を駆動してドラム4を回転させて、ドラム4内の洗濯物のすすぎを所定時間行う。すすぎが終了すると、制御部50は、排水バルブ31aを開いて、外槽3内のすすぎ水を、排水管31を介して機外へ排水する。
【0039】
<ステップS4:脱水行程>
濯ぎ行程が終了すると、制御部50は、モータ11を駆動して、ドラム4を高速で回転して高速脱水を所定時間行う。高速脱水が終了すると、制御部50は、ドラム4の回転を停止して、標準洗浄コースの運転を終了する。高速脱水で脱水された水も上記同様に排水口31から機外に排水される。
【0040】
(布団専用洗浄コース)
<ステップS5:洗い予備行程>
ステップS1で制御部50により布団専用洗浄コースが選択されたと判定された場合、ステップS5において、洗い予備行程が実施される。
【0041】
洗い予備行程の具体的な動作について、図6に基づいて説明する。図6は、布団専用洗浄コースの洗い予備行程の動作を示すフローチャートである。
【0042】
<ステップS501:給水動作>
使用者によってドア8が開けられ、羽毛布団などの布団がドラム4内に投入された後で、ドア8が閉じられた状態で、制御部50は、給水バルブ30aを開いて、外槽3に水を供給する、給水動作を行う。この際、制御部50は、排水バルブ31aを閉じていて、供給された水は、外槽3内に溜められ、通水孔4cを通ってドラム4内にも溜められる。そして、所定量の水が供給されると、制御部50は、給水バルブ30aを閉じる。
【0043】
なお、布団がドラム4内に投入されて給水動作が開始される状態では、布団(特に羽毛布団)は体積が大きいため、図7(a)に示すように、ドラム4内の空間は、布団がほとんど隙間なく収容された状態である。
【0044】
その後、給水動作により布団に洗濯水が掛けられると、布団の外周部には、水分が浸透するが、布団の中央部分までは、洗濯水が行きわたらない。このとき、ドラム4内の空間にほとんど隙間がない状態は変わらない。
【0045】
<ステップS502:撹拌動作>
給水動作が終了すると、制御部50は、モータ11を駆動して、攪拌動作を行う。攪拌動作において、制御部50がモータ11を駆動すると、その駆動力が、モータプーリ12、タイミングベルト16及び主プーリ10を介してドラム4に伝達される。攪拌動作では、制御部50は、ドラム4を、例えば45~55rpm(本実施形態では50rpm)で、右回転と左回転とを交互に繰り返すように回転させて、攪拌動作を所定時間(例えば1分)行う。
【0046】
攪拌動作において、ドラム4が右回転を開始すると、その直後に、ドラム4内の布団は、図7(b)に示すように、右回転に回転し、その後も、布団は、ほぐれながら右回転に回転する。図7(a)及び図7(b)では、布団の状態変化が分かりやすいように、布団に形成されたシワに丸印をつけている。図7(c)は、ドラム4が右回転から左回転に切り替わる際の状態であるが、ドラム4内の布団は、攪拌動作の開始時から回転して、攪拌動作開始時の状態から大きく変化している。
【0047】
ドラム4が左回転を開始した直後には、図8(a)に示すように、ドラム4内の布団は、左回転に回転しながら、そのとき、布団の隙間に水が入り込む。図8(b)は、ドラム4が左回転から右回転に切り替わる際の状態であり、ドラム4が右回転を開始すると、その直後に、ドラム4内の布団は、図8(c)に示すように、右回転に回転する。
【0048】
このように、攪拌動作において、ドラム4の右回転と左回転とが交互に繰り返されることにより、ドラム4内に収容された布団は、水のなかでほぐされながら回転することで、図9(a)に示すように、水分が布団の大部分に浸透する。そのとき、ドラム4内の布団の中央部分までは、水分が浸透していない。
【0049】
撹拌動作として、ドラム4を50rpmで1分回転させることで、水分を布団の大部分に素早く浸透させることができる。攪拌動作におけるドラム4の回転数は、45rpm以上が好ましく、また、55rpm以下が好ましく、より好ましくは50rpm前後である。
【0050】
撹拌動作として、ドラム4を単純に回転すればよいというわけではなく、例えば45rpmよりも小さい回転数で回転させたとしても、ドラム4内で布団が回転しないため、水分を布団の大部分に素早く浸透させることは困難である。そのため、洗い予備行程の撹拌動作でのドラム4の回転数としては、45~55rpmが適正と考えられる。
【0051】
より詳細には、攪拌動作において、ドラム4を40rpmで回転させたとしても、バッフル4bは、膨らんだ状態の布団の表面を凹ますのみで布団を回転させることはできない。これに対して、ドラム4を45~55rpmで回転させた場合、バッフル4bは、膨らんだ状態の布団を回転させることができる。
【0052】
このように、攪拌動作において、ドラム4を45~55rpmで回転させた場合に布団を回転させることが可能であり、ドラム4を45rpmより小さい回転数で回転させた場合に布団を回転させることができない点は、ドラム容積にかかわらず同様であると考えられる。
【0053】
<ステップS503:排水動作>
そして撹拌動作が終了すると、制御部50は、排水バルブ31aを開いて、外槽3内の水を、排水管31を介して機外へ排水する。
【0054】
<ステップS504:脱水動作>
排水動作が終了すると、制御部50は、モータ11を駆動して、ドラム4を例えば600rpmで2分高速回転させて脱水動作を行う。布団から脱水された水は、通水孔4cを通って、外槽3内に放出され、排水口31から機外へ排水される。
【0055】
脱水動作として、ドラム4を600rpmで2分回転させることで、水分を布団の全域に浸透させて、布団の体積を減らすことができる。
【0056】
詳細には、脱水動作において、ドラム4を600rpmで回転させることで、ドラム4内の水は遠心力によって外周側に存在する。このとき、図9(b)に示すように、ドラム4内の布団Aにも遠心力が作用し、布団Aは外周側に押し付けられながら回転して、ドラム4内の回転中心近傍に隙間が形成される。そのとき、水分を十分に浸透させた布団の内側から外側に水分が抜けていくため、水分を布団内に十分に浸透させて絞ることにより、布団の綿を圧縮して、布団の体積を減らすことができる。
【0057】
その後、脱水動作終了時には、当初ドラム4内に隙間なく存在していた布団の体積は小さくなり、図9(c)に示すように、脱水された布団は、ドラム4の内周面に張り付いた状態になる。このように、洗い予備行程の脱水動作が終了すると、ドラム4内の布団の体積は小さくなり、布団を収容したドラム4内に大きい隙間が形成される。
【0058】
脱水動作におけるドラム4の回転数は、500~600rpmが好ましい。脱水動作として、ドラム4を例えば500rpmよりも小さい回転数で回転させたとしても、ドラム4内で布団が外周側に押し付けられながら回転しないため、布団の体積が小さくすることは困難である。また、脱水動作として、ドラム4を1分回転させたとしても、ドラム4内の布団の体積が十分に減らない。
【0059】
<ステップS6:洗い行程>
ステップS5で制御部50により布団専用洗浄コースの洗い予備行程が終了した後、ステップS6において、布団専用洗浄コースの洗い行程が実施される。
【0060】
布団専用洗浄コースの洗い行程の具体的な動作について、図10に基づいて説明する。図10は、布団専用洗浄コースの洗い行程の動作を示すフローチャートである。
【0061】
<ステップS601:給水動作>
給水動作では、制御部50は、給水バルブ30aを開いて、外槽3に水を供給する、給水動作を行う。この際、制御部50は、排水バルブ31aを閉じていて、供給された水は、外槽3内に溜められ、通水孔4cを通ってドラム4内にも溜められる。そして、所定量の水が供給されると、制御部50は、給水バルブ30aを閉じる。
【0062】
洗い行程の給水動作の際には、上述したように、洗い予備行程によりドラム4内の布団の体積は小さくなり、布団を収容したドラム4内に大きい隙間が形成された状態である。
【0063】
<ステップS602:洗浄動作>
給水動作が終了すると、制御部50は、モータ11を駆動して、洗浄動作に移行する。モータ11が駆動されると、その駆動力が、モータプーリ12、タイミングベルト16及び主プーリ10を介して、ドラム4に伝達される。洗浄動作では、制御部50は、ドラム4を例えば45~55rpm(本実施形態では50rpm)で、右回転と左回転とを交互に繰り返すように回転させて、ドラム4内の圧縮され且つ水を含んだ布団をバッフル4bにより持ち上げ自然落下させる、たたき洗いを所定時間(例えば4分)行う。
【0064】
洗浄動作開始時において、ドラム4内の布団は、図11(a)に示すように、圧縮されているため、ドラム4が右回転と左回転とを交互に繰り返すことにより、図11(b)及び図11(c)に示すように、ドラム4内の布団は、バッフル4bで持ち上げられた後で落下して、たたきつけられるように洗浄される。そのとき、たたき洗いによる洗浄効果のほか、回転による擦り洗いや、もみ洗いによる洗浄効果も得られて、洗浄力が向上する。
【0065】
洗浄動作において、図12(a)に示すように、布団が膨らんで布団の体積が多少大きくなるが、洗い予備行程により布団の体積を減らしているため、布団の膨れ量を抑制することができる。図12(b)は、洗浄動作が終了する際の状態であるが、洗浄動作が終了するまで、布団の膨れ量が抑制されていることが分かる。
【0066】
洗浄動作として、ドラム4を50rpmで4分回転させることで、布団を回転させてほぐしながら洗浄することができる。洗浄動作におけるドラム4の回転数は、45rpm以上が好ましく、また、55rpm以下が好ましく、より好ましくは50rpm前後である。
【0067】
洗浄動作において、布団が膨らんで布団の体積が多少大きくなる場合があるが、ドラム4を45~55rpmで回転させることで、布団を回転させてほぐしながら洗浄することができる。
【0068】
洗い予備行程が行われないで、ドラム4を50rpmで回転させて洗浄動作が行われた場合について、図13に基づいて説明する。図13(a)は、洗い予備行程が行われないで洗浄動作が開始される際の状態である。図13(b)は、ドラム4を50rpmで回転させて洗浄動作が行われている際の状態である。
【0069】
洗浄動作が開始される際には、図13(a)に示すように、洗い予備行程が行われておらず、ドラム4内の布団の体積は大きく、布団を収容したドラム4内にほとんど隙間がない状態である。
【0070】
その後、ドラム4を50rpmで回転させて洗浄動作を行うと、図13(b)に示すように、洗浄動作が行われているときに、布団は回転しながら大きく膨らんでいる。そのため、布団は、ドラム4内において回転はするが、ドラム4内に布団をほぐせる空間が少なく布団をほぐすことができず、布団の全体を適正に洗浄することができない。そのため、洗い予備行程が行われた後で、ドラム4を50rpmで回転させて洗浄動作を行う場合と比べて、洗浄力が低く、洗いムラとなる。
【0071】
洗い予備行程が行われた後において、ドラム4を40rpmで回転させて洗浄動作が行われた場合について、図14に基づいて説明する。図14(a)は、洗い予備行程が行われた後で洗浄動作が開始される際の状態である。図14(b)は、ドラム4を40rpmで回転させて洗浄動作が行われている際の状態である。
【0072】
洗浄動作が開始される際には、図14(a)に示すように、洗い予備行程によりドラム4内の布団の体積は小さくなり、布団を収容したドラム4内に大きい隙間が形成された状態である。
【0073】
洗浄動作でのドラム4の回転数が40rpmの場合、図14(b)に示すように、洗浄動作が行われているときに、布団が膨らむ量は、洗い予備行程が行われない場合と比べて抑制される。
【0074】
しかしながら、洗浄動作でのドラム4の回転数が40rpmの場合、ドラム4内で布団を回転させてほぐすことができず、布団の全体を適正に洗浄することができない。そのため、洗浄動作でのドラム4の回転数が45~55rpmの場合と比べて、洗浄力が低く、洗いムラとなる。
【0075】
また、ドラム4を60rpmで回転させたとしても、ドラム4内で布団が跳ねて洗いムラが発生しやすい。そのため、洗い予備行程の洗浄動作でのドラム4の回転数としては、45~55rpmが適正と考えられる。
【0076】
この点は、洗い予備行程の攪拌動作と同様であり、洗い行程の洗浄動作において、ドラム4を40rpmで回転させたとしても、バッフル4bは、膨らんだ状態の布団の表面を凹ますのみで布団を回転させることはできない。
【0077】
また、ドラム4の回転数を上げすぎると、布団が痛みやすくなると共に、バッフル4bが勢いよく布団を持ち上げて、布団が回転せずに飛び跳ねるため、布団があまりほぐされなくなり、洗いムラとなる。これに対して、ドラム4を45~55rpmで回転させた場合、バッフル4bは、膨らんだ状態の布団を回転させることができる。
【0078】
このように、洗い行程の洗浄動作において、ドラム4を45~55rpmで回転させた場合に布団を回転させることが可能であり、ドラム4を45rpmより小さい回転数で回転させた場合に布団を回転させることができない点は、ドラム容積にかかわらず同様であると考えられる。
【0079】
なお、上述したように、洗浄動作において、布団の体積が多少大きくなる場合があるが、洗い予備行程を行った後で洗い行程の洗浄動作を行った場合に、布団体積の増加量は、洗い予備行程を行わないで洗い行程の洗浄動作を行った場合よりも小さい。そのため、洗い予備行程を行うことにより、洗い行程の洗浄動作時に布団体積が増加するのが抑制され、布団がほぐれやすくなる。
【0080】
<ステップS603:排水動作>
そして洗浄動作が終了すると、制御部50は、排水バルブ31aを開いて、外槽3内の洗浄水を、排水管31を介して機外へ排水する。
【0081】
<ステップS604:脱水動作>
排水後、制御部50は、モータ11を駆動する。モータ11が駆動されると、ドラム4が高速回転され、洗濯物に含まれる洗濯水が脱水される。脱水によって洗濯物から脱水された洗濯水は、通水孔4cを通って、外槽3内に放出され、排水口31から機外へ排水される。
【0082】
<ステップS7:濯ぎ行程>
洗浄行程が終了すると、制御部50は、排水バルブ31を閉じて、給水バルブ30aを開いて、外槽3に所定量のすすぎ水を供給する。そして、所定量の水が供給されると、給水バルブ30aを閉じて、モータ11によってドラム4が回転されて、ドラム4内の洗濯物のすすぎが所定時間行なわれる。
【0083】
すすぎが終了すると、制御部50は、排水バルブ31aを開いて、外槽3内のすすぎ水を、排水管31を介して機外へ排水する。
【0084】
<ステップS8:脱水行程>
濯ぎ行程が終了すると、制御部50は、モータ11を駆動して、ドラム4を高速で回転して高速脱水を所定時間行う。高速脱水が終了すると、制御部50は、ドラム4の回転を停止して、標準洗浄コースの運転を終了する。高速脱水で脱水された水も上記同様に排水口31から機外に排水される。
【0085】
本実施形態のドラム式洗濯機1は、洗い行程、濯ぎ行程及び脱水行程を実施可能なドラム式洗濯機であって、筐体2内に配置された外槽3と、外槽3内に配置され、水平軸を中心に回転可能なドラム4と、ドラム4を回転させるための駆動モータ11と、外槽3内に水を供給及び外槽3内から水を排水する給排水手段である給水管30、給水バルブ30a、排水管31及び排水バルブ31aと、洗い行程を開始するまでに洗い予備行程を実施するように駆動モータ11及び給水バルブ30a、排水バルブ31aを制御する制御手段である制御部50とを備え、洗い予備行程では、外槽3内に水を供給する給水動作と、給水動作の後でドラム4を回転させる脱水動作とが実施される。
【0086】
これにより、本実施形態のドラム式洗濯機1では、洗い行程を開始するまでに洗い予備行程を実施して、羽毛布団などの布団を濡らした状態で遠心力を加えることで、水分を布団の内部に短時間で浸透させるとともに綿の膨らみを押さえることができるので、布団の体積を短時間で小さくすることができる。そのため、布団を収容したドラム4内に隙間が形成されて、布団がドラム4内で移動しやすくなり、また、布団内部に水分が浸透して布団が浮きにくくなることで、バッフル4bによって布団を持ち上げることができる。これにより、たたき洗いを実行して、布団の中央部分まで洗浄することができ、洗浄力が向上して洗いムラも抑制される。
【0087】
本実施形態のドラム式洗濯機1において、洗い予備行程では、給水動作と脱水動作との間において脱水動作時の回転数より小さい回転数である45~55rpmでドラム4を回転させる撹拌動作が実施される。
【0088】
これにより、本実施形態のドラム式洗濯機1では、洗い予備行程において、給水動作の後、ドラム4を回転させる撹拌動作を実施することにより、布団の内部に水分を素早く浸透させることができる。
【0089】
本実施形態のドラム式洗濯機1において、洗い予備行程では、撹拌動作と脱水動作との間において外槽3内から水を排水する排水動作が実施される。
【0090】
これにより、本実施形態のドラム式洗濯機1では、洗い予備行程において、外槽3内から水を排水した後で脱水動作が開始されるため、脱水動作を短縮できる。
【0091】
以上、本発明の実施形態について説明したが、各部の具体的な構成は上述した実施形態のみに限定されるものではない。
【0092】
例えば上記実施形態では、洗い予備行程において、給水動作と撹拌動作と排水動作と脱水動作とが実施されるが、本発明の洗い予備行程は、少なくとも給水動作と脱水動作とが実施されるものであればよい。
【0093】
上記実施形態では、洗い予備行程の撹拌動作及び脱水動作が実施される場合のドラム4の回転数及び動作時間の例を示したが、それに限られない。上記実施形態では、ドラム式洗濯機1のドラム4が水平軸を中心に回転可能であるが、ドラム4が水平方向に対して傾く傾斜軸を中心に回転可能でもよい。
【0094】
本発明が適用されるドラム式洗濯機の衣類洗濯容量は、任意である。すなわち、本発明は、布団を収容可能なドラム容積(例えば12kg以上のドラム容積)を有するドラム式洗濯機に適用可能である。また、本発明は、洗い行程、濯ぎ行程及び脱水行程を実施可能なドラム式洗濯機1に限られず、洗い行程、濯ぎ行程及び脱水行程と共に乾燥行程を実施可能なドラム式洗濯乾燥機にも適用可能である。
【符号の説明】
【0095】
1 ドラム式洗濯機
2 筐体
3 外槽
4 ドラム
11 モータ
30 給水管(給排水手段)
30a 給水バルブ(給排水手段)
31 排水管(給排水手段)
31a 排水バルブ(給排水手段)
50 制御部(制御手段)
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