(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-28
(45)【発行日】2023-10-06
(54)【発明の名称】センサ処理システム、及びセンサシステム
(51)【国際特許分類】
G01D 3/032 20060101AFI20230929BHJP
G01D 3/00 20060101ALI20230929BHJP
【FI】
G01D3/032
G01D3/00 B
(21)【出願番号】P 2020078598
(22)【出願日】2020-04-27
【審査請求日】2022-10-27
(32)【優先日】2019-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 浩平
【審査官】細見 斉子
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-169672(JP,A)
【文献】特開2003-289692(JP,A)
【文献】特表2017-502271(JP,A)
【文献】特開2007-245898(JP,A)
【文献】特開2013-036812(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0025820(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 3/00-3/10
G01D 5/00-5/62
G01P 3/00-3/80
G01P 15/00-15/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のセンサに一対一に対応し、対応するセンサの出力端に電気的に接続されて前記センサのセンサ出力のうちの低周波成分を低減させる複数の低減回路
と、
加算器と、を備
え、
前記複数の低減回路は、対応する前記センサの出力経路から分岐して設けられており、
前記加算器は、前記複数のセンサのセンサ出力を加算して加算結果を出力する、
センサ処理システム。
【請求項2】
前記複数のセンサは、角速度センサである、
請求項1に記載のセンサ処理システム。
【請求項3】
前記複数のセンサは、加速度センサである、
請求項1に記載のセンサ処理システム。
【請求項4】
前記複数の低減回路のうちの2つの低減回路の出力を比較して比較結果を出力する比較器と、
前記比較結果を用いて前記センサが正常であるか否かを判定する制御回路と、を更に備える、
請求項1~
3のいずれか1項に記載のセンサ処理システム。
【請求項5】
前記加算器は、前記複数のセンサの各々について個別に重み付けを行う、
請求項
1~4のいずれか1項に記載のセンサ処理システム。
【請求項6】
前記複数の低減回路のうちの2つの低減回路の出力を比較して比較結果を出力する比較器を更に備え、
前記加算器は、前記比較器の前記比較結果に基づいて、前記複数のセンサのうち、異常なセンサに対する重みを下げる、
請求項
5に記載のセンサ処理システム。
【請求項7】
前記複数の低減回路は、ハイパスフィルタを含む、
請求項1~
6のいずれか1項に記載のセンサ処理システム。
【請求項8】
請求項1~
7のいずれか1項に記載のセンサ処理システムと、
前記複数のセンサと、を備える、
センサシステム
。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般にセンサ処理システム、及びセンサシステムに関し、より詳細には、複数のセンサの出力を用いるセンサ処理システム、及び、センサ処理システムを備えるセンサシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、センサ部(センサ)及び制御回路を備える検出装置(センサ処理システム)が開示されている。特許文献1に記載された検出装置は、センサ部の検出結果を用いて、あらかじめ決められた物理量を検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された検出装置では、断線故障などによる比較的大きな感度変化を検出することはできても比較的小さな感度変化を検出することが難しかった。
【0005】
本開示は上記の点に鑑みてなされた発明であり、本開示の目的は、センサの故障検出精度及びセンサの検出精度を高めやすいセンサ処理システム、及びセンサシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係るセンサ処理システムは、複数の低減回路と、加算器と、を備える。前記複数の低減回路は、複数のセンサに一対一に対応する。前記複数の低減回路は、対応するセンサの出力端に電気的に接続されて前記センサのセンサ出力のうちの低周波成分を低減させる。前記複数の低減回路は、対応する前記センサの出力経路から分岐して設けられている。前記加算器は、前記複数のセンサのセンサ出力を加算して加算結果を出力する。
【0007】
本開示の一態様に係るセンサシステムは、前記センサ処理システムと、前記複数のセンサとを備える。
【発明の効果】
【0009】
本開示の上記態様に係るセンサ処理システム、及びセンサシステムによれば、センサの故障検出精度及びセンサの検出精度を高めやすい。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、実施形態1に係るセンサシステムの構成図である。
【
図2】
図2は、同上のセンサシステムにおける加算器の出力特性図である。
【
図3】
図3は、同上のセンサシステムの動作を示すフローチャートである。
【
図4】
図4は、実施形態2に係るセンサシステムの構成図である。
【
図5】
図5は、実施形態2の変形例に係るセンサシステムの構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施形態1,2に係るセンサシステムについて、図面を参照して説明する。下記の実施形態等において参照する各図は、模式的な図であり、図中の各構成要素の大きさや厚さそれぞれの比が、必ずしも実際の寸法比を反映しているとは限らない。
【0012】
(実施形態1)
(1)センサシステム
実施形態1に係るセンサシステム1の構成について、
図1を参照して説明する。
【0013】
センサシステム1は、
図1に示すように、センサ処理システム2と、複数(図示例では3つ)のセンサ3とを備える。
【0014】
センサシステム1は、例えば、自動車等の車両、自走ロボットに搭載されて用いられる。例えば、センサシステム1は、車両の制御システムに用いられる。複数のセンサ3が車両に取り付けられ、複数のセンサ3が所定の物理量を検出することにより、センサシステム1は、複数のセンサ3の検出結果を用いて、車両の位置、向き、及び傾きを正しく認識する。センサシステム1は、例えば、車両を自動運転する自動運転装置と共に用いられる。
【0015】
(2)センサシステムの各構成要素
以下、センサシステム1の各構成要素について、図面を参照して説明する。
【0016】
(2.1)センサ
複数のセンサ3は、
図1に示すように、第1センサ31と、第2センサ32と、第3センサ33とを含む。複数のセンサ3の各々は、例えば慣性センサであり、所定の物理量を検出し、検出結果をセンサ出力A1(センサ信号)として出力する。
【0017】
所定の物理量は、例えば、角速度、角加速度、速度、加速度、振動、荷重、気圧、電磁気量、温度等である。所定の物理量が角速度である場合、各センサ3は角速度センサである。所定の物理量が加速度である場合、各センサ3は加速度センサである。
【0018】
複数のセンサ3は、例えば同一の物理量を検出するために用いられる。言い換えると、第1センサ31、第2センサ32、及び第3センサは、全て同一の物理量を検出する。これにより、冗長性を向上させることができる。例えば、第1センサ31が故障した場合であっても、第2センサ32及び第3センサが上記物理量を検出することができる。要するに、第1センサ31、第2センサ32、及び第3センサ33の少なくとも2つが故障した場合であっても、残りのセンサ3が上記物理量を検出することができる。
【0019】
(2.2)センサ処理システム
センサ処理システム2は、
図1に示すように、複数(図示例では3つ)のフィルタ4(低減回路)と、加算器5と、除算器6と、複数(図示例では3つ)の比較器7と、制御回路8とを備える。
【0020】
(2.2.1)フィルタ
複数のフィルタ4は、
図1に示すように、複数のセンサ3に一対一に対応し、対応するセンサ3の出力経路に挿入されている。複数のフィルタ4は、対応するセンサ3の出力端に接続されている。より詳細には、複数のフィルタ4は、第1フィルタ41と、第2フィルタ42と、第3フィルタ43とを含む。第1フィルタ41は、第1センサ31に対応し、第1センサ31の第1経路G11に挿入されている。第1経路G11は、第1センサ31と比較器7との間の経路である。
図1の例では、第1経路G11は、第1センサ31と加算器5との間の第1出力経路F11から分岐している。第2フィルタ42は、第2センサ32に対応し、第2センサ32の第2経路G12に挿入されている。第2経路G12は、第2センサ32と比較器7との間の経路である。
図1の例では、第2経路G12は、第2センサ32と加算器5との間の第2出力経路F12から分岐している。第3フィルタ43は、第3センサ33に対応し、第3センサ33の第3経路G13に挿入されている。第3経路G13は、第3センサ33と比較器7との間の経路であり、
図1の例では、第3経路G13は、第3センサ33と加算器5との間の第3出力経路F13から分岐している。
【0021】
複数のフィルタ4は、対応するセンサ3のセンサ出力A1のうちの低周波成分を低減させる。ここで、「センサ出力の低周波成分」とは、センサ3の検出対象を検出したときの変動成分の周波数よりも低い周波数成分をいう。「センサ出力の低周波成分」は、センサ出力A1の直流成分(DC成分)を含む。
【0022】
実施形態では、複数のフィルタ4は、ハイパスフィルタである。各センサ3は、センサ出力A1の直流成分をカットする。なお、複数のフィルタ4は、ハイパスフィルタに限定されず、他のフィルタであってもよい。複数のフィルタ4は、例えばバンドパスフィルタであってもよい。
【0023】
例えば、第1フィルタ41は、第1センサ31の第1センサ出力A11のうちの低周波成分を低減(除去)させる。第1フィルタ41によって低周波成分が低減(除去)されたセンサ出力は、第1フィルタ出力B11として第1フィルタ41から出力される。第2フィルタ42は、第2センサ32の第2センサ出力A12のうちの低周波成分を低減(除去)させる。第2フィルタ42によって低周波成分が低減(除去)されたセンサ出力は、第2フィルタ出力B12として第2フィルタ42から出力される。第3フィルタ43は、第3センサ33の第3センサ出力A13のうちの低周波成分を低減(除去)させる。第3フィルタ43によって低周波成分が低減(除去)されたセンサ出力は、第3フィルタ出力B13として第3フィルタ43から出力される。
【0024】
上記より、複数のフィルタ4が、対応するセンサ3のセンサ出力A1の直流成分を低減(除去)する。直流成分が低減(除去)されたセンサ出力は、フィルタ出力B1として各フィルタ4から出力される。これにより、例えば各センサ3が角速度センサである場合、各センサ3において、角速度の入力がない状態のセンサ出力A1を低減させることができる。つまり、各センサ3のバイアスエラーを低減させることができる。
【0025】
(2.2.2)加算器
加算器5は、
図1に示すように、複数のセンサ3のセンサ出力A1を加算する。より詳細には、加算器5は、第1センサ31の第1センサ出力A11と、第2センサ32の第2センサ出力A12と、第3センサ33の第3センサ出力A13とを加算する。
【0026】
加算器5は、複数のセンサ3のセンサ出力A1を加算することによって得られる加算結果を出力する。例えば、加算器5は、加算結果を制御回路8に出力する。
図1の例では、加算器5は、除算器6を介して制御回路8に加算結果を出力する。
【0027】
上述したように加算器5が複数のセンサ3のセンサ出力A1を加算することによって、1つのセンサのセンサ出力のみを用いる場合よりも、センサ3による検出結果の精度を高めやすい。
【0028】
複数のセンサ3のセンサ出力A1を用いると、アングル・ランダム・ウォーク(Angle Random Walk:ARW)が下がる。これについて、以下に詳細を説明する。ここでは、3つのセンサ出力A1の場合について説明する。
【0029】
第1センサ31の第1センサ出力A11は、平均値μ1、分散σ1の正規分布となる。同様に、第2センサ32の第2センサ出力A12は、平均値μ2、分散σ2の正規分布となる。同様に、第3センサ33の第3センサ出力A13は、平均値μ3、分散σ3の正規分布となる。各センサ3の感度をTとする。
【0030】
第1センサ31の第1センサ出力A11のみを用いた場合、感度T、分散σ1であるから、S/N比は、感度Tを分散σ1で割って得られる値、つまり感度T/分散σ1である。
【0031】
一方、第1センサ31の第1センサ出力A11と第2センサ32の第2センサ出力A12とを用いた場合、感度は2Tとなる。第1センサ出力A11の正規分布と第2センサ出力A12の正規分布とを重ね合わせた場合、平均値(μ1+μ2)、分散(σ12+σ22)1/2の正規分布となる。したがって、S/N比は、感度2Tを分散(σ12+σ22)1/2で割って得られる値、つまり感度2T/分散(σ12+σ22)1/2である。
【0032】
分散σ1と分散σ2とが等しいとき、センサ出力A1が2つの場合の分散は、センサ出力A1が1つの場合の分散の21/2分の1倍となる。S/N比は、21/2T/σ1となる。
【0033】
また、第1センサ31の第1センサ出力A11と第2センサ32の第2センサ出力A12と第3センサ33の第3センサ出力A13とを用いた場合、感度は3Tとなる。第1センサ出力A11の正規分布と第2センサ出力A12の正規分布と第3センサ出力A13の正規分布とを重ね合わせた場合、平均値(μ1+μ2+μ3)、分散(σ12+σ22+σ32)1/2の正規分布となる。したがって、S/N比は、感度3Tを分散(σ12+σ22+σ32)1/2で割って得られる値、つまり感度3T/分散(σ12+σ22+σ32)1/2である。
【0034】
分散σ1と分散σ2と分散σ3とが等しいとき、センサ出力A1が3つの場合の分散は、センサ出力A1が1つの場合の分散の31/2分の1倍となる。S/N比は、31/2T/σ1となる。
【0035】
上記より、各センサ3の分散が全て等しいとき、複数のセンサ3の場合の分散は、センサ3の数つまりセンサ出力A1の数の平方根に反比例する。S/N比は、センサ3の数つまりセンサ出力A1の数の平方根に比例する。
【0036】
図2に示すように、3つのセンサ3のセンサ出力A1が加算されたときの特性P1のほうが、1つのセンサのセンサ出力のみの特性P2よりも、アラン分散(Allan Variance)が低くなる。また、バイアス安定性(BIAS Instability:BI)も向上する。
【0037】
ところで、加算器5は、複数のセンサ3について個別に重み付けを行う機能を有する。より詳細には、加算器5は、複数のセンサ出力A1を同じ重みで加算してもよいし、複数のセンサ出力A1を互いに異なる重みで加算してもよい。例えば、初期状態では、全てのセンサ3の重み係数を1とし、異常なセンサ3(故障したセンサ3)の重み係数を1よりも低くしたり、又は、0にしたりする。これにより、加算結果の出力(以下「加算出力C1」という)において、異常なセンサ3のセンサ出力A1の影響を低減させることができる。
【0038】
(2.2.3)除算器
上述したように、加算器5が複数のセンサ3のセンサ出力A1を加算するため、加算器5に入力されるセンサ出力A1の数によって、加算器5からの加算出力C1の振幅が異なる。加算器5に入力されるセンサ出力A1の数が多くなるにつれて、加算出力C1の振幅が大きくなる。このような加算出力C1がそのまま制御回路8に入力されると、制御回路8は誤認識を起こすおそれがある。このため、加算器5に入力されるセンサ出力A1の数に関係なく、制御回路8に入力される加算出力D1の振幅を一定の範囲内にする必要がある。
【0039】
そこで、除算器6は、
図1に示すように、加算器5の加算出力C1の振幅を小さくする。より詳細には、除算器6のゲインは、例えば、加算器5に入力されるセンサ出力A1の数の逆数である。除算器6は、加算出力C1の振幅を、加算器5に入力されるセンサ出力A1の数の逆数倍にする。例えば、3つのセンサ出力A1が加算器5に入力される場合、加算器5の加算出力C1の振幅は、1つのセンサ出力のみが加算器5に入力される場合に比べて、3倍となる。このため、除算器6は、加算器5の加算出力C1の振幅を3分の1にする。これにより、加算器5に入力されるセンサ出力A1の数に関係なく、加算出力C1のレンジを一定にすることができる。除算器6により増幅された加算出力D1は、制御回路8に出力される。
【0040】
なお、除算器6のゲインは、加算器5に入力されるセンサ出力A1の数の逆数に限定されず、上記以外であってもよい。要するに、加算器5に入力されるセンサ出力A1の数が変わっても、制御回路8に入力される加算出力D1の振幅の変化が小さくなるように、除算器6のゲインが設定されればよい。
【0041】
(2.2.4)比較器
複数の比較器7の各々は、
図1に示すように、複数のフィルタ4のうちの2つのフィルタ出力B1を比較する。そして、各比較器7は、比較結果E1を出力する。複数の比較器7は、第1比較器71と、第2比較器72と、第3比較器73とを含む。
【0042】
第1比較器71は、第1フィルタ41の第1フィルタ出力B11と第2フィルタ42の第2フィルタ出力B12とを比較する。そして、第1比較器71は、第1フィルタ出力B11と第2フィルタ出力B12との比較結果を第1比較結果E11として出力する。
【0043】
より詳細には、第1比較器71には、第1フィルタ41の第1フィルタ出力B11と第2フィルタ42の第2フィルタ出力B12とが入力される。第1比較器71の非反転入力端子(
図1では「+」の記号で示す)に第1フィルタ出力B11が入力され、第1比較器71の反転入力端子(
図1では「-」の記号で示す)に第2フィルタ出力B12が入力される。第1比較器71は、第1フィルタ出力B11と第2フィルタ出力B12とを比較し、第1フィルタ出力B11と第2フィルタ出力B12とが同じである場合、第1比較結果E11として「0」を出力する。一方、第1フィルタ出力B11と第2フィルタ出力B12とが異なる場合、第1比較器71は、第1比較結果E11として「1」を出力する。第1比較器71は、第1比較結果E11を制御回路8に出力する。
【0044】
第1比較器71は、第1閾値設定部711を有する。第1閾値設定部711は、第1フィルタ出力B11と第2フィルタ出力B12との差分の絶対値と比較するための第1閾値を設定する。上記の例では、第1閾値は0である。
【0045】
なお、第1閾値設定部711は、第1閾値を0よりも大きくしてもよい。第1閾値が0よりも大きい場合であっても、第1フィルタ出力B11と第2フィルタ出力B12との差分の絶対値が第1閾値以下であるとき、第1比較器71は、第1比較結果E11として「0」を出力する。第1フィルタ出力B11と第2フィルタ出力B12との差分の絶対値が第1閾値より大きい場合、第1比較器71は、第1比較結果E11として「1」を出力する。
【0046】
第2比較器72は、第1フィルタ41の第1フィルタ出力B11と第3フィルタ43の第3フィルタ出力B13とを比較する。そして、第2比較器72は、第1フィルタ出力B11と第3フィルタ出力B13との比較結果を第2比較結果E12として出力する。
【0047】
より詳細には、第2比較器72には、第1フィルタ41の第1フィルタ出力B11と第3フィルタ43の第3フィルタ出力B13とが入力される。第2比較器72の非反転入力端子(
図1では「+」の記号で示す)に第1フィルタ出力B11が入力され、第2比較器72の反転入力端子(
図1では「-」の記号で示す)に第3フィルタ出力B13が入力される。第2比較器72は、第1フィルタ出力B11と第3フィルタ出力B13とを比較し、第1フィルタ出力B11と第3フィルタ出力B13とが同じである場合、第2比較結果E12として「0」を出力する。一方、第1フィルタ出力B11と第3フィルタ出力B13とが異なる場合、第2比較器72は、第2比較結果E12として「1」を出力する。第2比較器72は、第2比較結果E12を制御回路8に出力する。
【0048】
第2比較器72は、第2閾値設定部721を有する。第2閾値設定部721は、第1フィルタ出力B11と第3フィルタ出力B13との差分の絶対値と比較するための第2閾値を設定する。上記の例では、第2閾値は0である。
【0049】
なお、第2閾値設定部721は、第2閾値を0よりも大きくしてもよい。第2閾値が0よりも大きい場合であっても、第1フィルタ出力B11と第3フィルタ出力B13との差分の絶対値が第2閾値以下であるとき、第2比較器72は、第2比較結果E12として「0」を出力する。第1フィルタ出力B11と第3フィルタ出力B13との差分の絶対値が第2閾値より大きい場合、第2比較器72は、第2比較結果E12として「1」を出力する。
【0050】
第3比較器73は、第2フィルタ42の第2フィルタ出力B12と第3フィルタ43の第3フィルタ出力B13とを比較する。そして、第3比較器73は、第2フィルタ出力B12と第3フィルタ出力B13との比較結果を第3比較結果E13として出力する。
【0051】
より詳細には、第3比較器73には、第2フィルタ42の第2フィルタ出力B12と第3フィルタ43の第3フィルタ出力B13とが入力される。第3比較器73の非反転入力端子(
図1では「+」の記号で示す)に第2フィルタ出力B12が入力され、第3比較器73の反転入力端子(
図1では「-」の記号で示す)に第3フィルタ出力B13が入力される。第3比較器73は、第2フィルタ出力B12と第3フィルタ出力B13とを比較し、第2フィルタ出力B12と第3フィルタ出力B13とが同じである場合、第3比較結果E13として「0」を出力する。一方、第2フィルタ出力B12と第3フィルタ出力B13とが異なる場合、第3比較器73は、第3比較結果E13として「1」を出力する。第3比較器73は、第3比較結果E13を制御回路8に出力する。
【0052】
第3比較器73は、第3閾値設定部731を有する。第3閾値設定部731は、第2フィルタ出力B12と第3フィルタ出力B13との差分の絶対値と比較するための第3閾値を設定する。上記の例では、第3閾値は0である。
【0053】
なお、第3閾値設定部731は、第3閾値を0よりも大きくしてもよい。第3閾値が0よりも大きい場合であっても、第2フィルタ出力B12と第3フィルタ出力B13との差分の絶対値が第3閾値以下であるとき、第3比較器73は、第3比較結果E13として「0」を出力する。第2フィルタ出力B12と第3フィルタ出力B13との差分の絶対値が第3閾値より大きい場合、第3比較器73は、第3比較結果E13として「1」を出力する。
【0054】
(2.2.5)制御回路
制御回路8は、
図1に示すように、加算器5の加算結果を取得する。より詳細には、制御回路8は、除算器6で振幅が調整された加算結果(加算出力D1)を取得する。そして、制御回路8は、取得した加算結果を、例えば外部装置に出力する。
【0055】
また、制御回路8は、複数の比較器7の各々から比較結果E1を取得する。より詳細には、制御回路8は、第1比較器71から第1比較結果E11を取得し、第2比較器72から第2比較結果E12を取得し、第3比較器73から第3比較結果E13を取得する。
【0056】
制御回路8は、複数の比較器7から取得した比較結果E1を用いて、複数のセンサ3が正常であるか否かを判定する機能を有する。上述したように、複数のセンサ3は、同一の物理量を検出する。このため、複数のセンサ3の全てが正常である場合、複数のセンサ3は、同じセンサ出力A1を出力する。これにより、複数の比較器7は、同じフィルタ出力B1(センサ出力A1)を比較するから、比較結果として「0」を出力する。一方、複数のセンサ3に異常なセンサ3が含まれている場合、正常なセンサ3と異常なセンサ3は、互いに異なるセンサ出力A1を出力する。これにより、複数の比較器7の少なくとも1つは、異なるフィルタ出力B1(センサ出力A1)を比較するから、比較結果として「1」を出力する。本開示でいう「異常なセンサ」とは、何らかの異常が有るセンサ3を意味する。「正常なセンサ」とは、異常が無いセンサ3を意味する。
【0057】
例えば、第1比較結果E11と第2比較結果E12とが「1」である場合、第1比較器71及び第2比較器72の両方にフィルタ出力B1が入力されるフィルタ4は第1フィルタ41であり、第1フィルタ41に対応するセンサ3は第1センサ31である。したがって、制御回路8は、第1センサ31が異常であると判定する。第1比較結果E11と第3比較結果E13とが「1」である場合、第1比較器71及び第3比較器73の両方にフィルタ出力B1が入力されるフィルタ4は第2フィルタ42であり、第2フィルタ42に対応するセンサ3は第2センサ32である。したがって、制御回路8は、第2センサ32が異常であると判定する。第2比較結果E12と第3比較結果E13とが「1」である場合、第2比較器72及び第3比較器73の両方にフィルタ出力B1が入力されるフィルタ4は第3フィルタ43であり、第3フィルタ43に対応するセンサ3は第3センサ33である。したがって、制御回路8は、第3センサ33が異常であると判定する。
【0058】
上記より、複数のセンサ3のいずれかに異常があった場合に、異常なセンサ3を精度よく特定することができる。
【0059】
また、制御回路8は、複数の比較器7が正常であるか否かを判定する機能を有する。上述したように、複数の比較器7の各々には、複数のフィルタ4のうちの2つのフィルタ出力B1が入力される。つまり、各比較器7には、複数のセンサ3のうちの2つのセンサ出力A1が入力される。言い換えると、複数のセンサ3のセンサ出力A1(複数のフィルタ4のフィルタ出力B1)の各々は、2つの比較器7に入力される。このため、複数のセンサ3に異常なセンサ3が含まれている場合、2つの比較器7の比較結果E1が「1」となり、1つの比較器7の比較結果E1のみが「1」となることはない。そこで、1つの比較器7の比較結果E1のみが「1」となる場合、制御回路8は、比較結果E1が「1」である比較器7が異常であると判定する。一方、複数の比較器7の比較結果E1の全てが「0」である場合、制御回路8は、全ての比較器7が正常であると判定する。
【0060】
例えば、第1比較結果E11のみが「1」である場合、制御回路8は、第1比較器71が異常であると判定する。第2比較結果E12のみが「1」である場合、制御回路8は、第2比較器72が異常であると判定する。第3比較結果E13のみが「1」である場合、制御回路8は、第3比較器73が異常であると判定する。
【0061】
また、各比較器7にフィルタ出力B1が入力されるのではなく、各比較器7にリファレンス信号が入力され、このときの比較結果E1により、複数の比較器7が異常であるか否かを判定することが可能である。リファレンス信号は、比較器7の非反転入力端子(+端子)に入力される第1リファレンス信号と、比較器7の反転入力端子(-端子)に入力される第2リファレンス信号との組合せである。第1リファレンス信号は、「0」,「1」,「0」となるパルス信号である。一方、第2リファレンス信号は、「0」,「0」,「0」となる信号である。上記のような第1リファレンス信号及び第2リファレンス信号が比較器7に入力された場合、比較結果E1が「0」,「1」,「0」となると、制御回路8は、比較器7が正常であると判定する。一方、比較結果E1が「0」,「1」,「0」以外となると、制御回路8は、比較器7が異常であると判定する。
【0062】
さらに、制御回路8は、加算器5を制御する機能を有する。より詳細には、制御回路8は、複数の比較器7から取得した複数の比較結果E1を用いて、加算器5を制御する。より詳細には、制御回路8は、センサ3の異常を判定した場合に、異常なセンサ3に対応するフィルタ4のフィルタ出力B1に対する重みを下げるように、加算器5を制御する。制御回路8による制御に従い、加算器5は、複数のセンサ3のうち、異常なセンサ3に対応するフィルタ4のフィルタ出力B1に対する重みを下げる。ここで、「重みを下げる」とは、重みを0にする場合も含む。異常なセンサ3に対応するフィルタ4のフィルタ出力B1に対する重みを0にした場合、制御回路8は、異常なセンサ3に対応するフィルタ4のフィルタ出力B1を用いずに、残りのフィルタ4のフィルタ出力B1だけを加算するように、加算器5を制御する。つまり、制御回路8は、正常なセンサ3に対応するフィルタ4のフィルタ出力B1だけを加算するように、加算器5を制御する。制御回路8による制御に従い、加算器5は、残りのフィルタ4のフィルタ出力B1だけを加算し、加算結果を出力する。
【0063】
また、制御回路8は、除算器6を制御する機能を有する。異常なセンサ3の重みを下げる等、複数のフィルタ4のフィルタ出力B1に対する重み付けを変更した場合、加算器5の加算出力C1の振幅が変動する。このため、複数のフィルタ4のフィルタ出力B1に対する重み付けを変更した場合、制御回路8に入力される加算結果(加算出力D1)の振幅レベルが一定の範囲内になるように、制御回路8は、除算器6のゲインを変更させるように、除算器6を制御する。
【0064】
(3)センサ処理システムの動作
以下、実施形態1に係るセンサ処理システム2の通常動作(センサ処理方法)について、
図1を参照して説明する。
【0065】
まず、複数のセンサ3の各々がセンサ出力A1を出力する。その後、複数のセンサ出力A1が加算器5に出力される。
【0066】
加算器5は、複数のセンサ出力A1を加算する。この際、各センサ3のセンサ出力A1に重みを付けてから、複数のセンサ出力A1(重み付けを行った後の出力)を加算し、加算結果(加算出力C1)を出力する。その後、除算器6が、加算器5の加算出力C1の振幅を調整する。加算器5に入力されるセンサ出力A1の数に関係なく、制御回路8に入力される加算出力D1の振幅が略一定になるように、除算器6は、加算出力C1の振幅を調整する。その後、制御回路8は、除算器6で調整された加算出力D1を取得する。
【0067】
次に、センサ処理システム2における異常を判定する動作(センサ処理方法)について
図1及び
図3を用いて説明する。
【0068】
ステップS1では、複数のセンサ3の各々がセンサ出力A1を出力する。その後、ステップS2では、複数のフィルタ4が、複数のセンサ3のセンサ出力A1のうちの低周波成分を個別に低減(除去)させる。つまり、各フィルタ4が、対応するセンサ3のセンサ出力A1の低周波成分を低減(除去)させる。その後、ステップS3では、複数の比較器7のうち、対応する2つのフィルタ出力B1(センサ出力A1)を比較する。
【0069】
ステップS4では、制御回路8は、第1比較結果E11(
図3では「第1出力」)と第2比較結果E12(
図3では「第2出力」)とが「1」であるか否かを判定する。第1比較結果E11と第2比較結果E12との少なくとも一方が「1」でない場合(ステップS4の「No」)、ステップS6に進む。一方、第1比較結果E11と第2比較結果E12とが「1」である場合(ステップS4の「Yes」)、制御回路8は、第1センサ31が異常であると判定する(ステップS5)。
【0070】
ステップS6では、制御回路8は、第1比較結果E11(
図3では「第1出力」)と第3比較結果E13(
図3では「第3出力」)とが「1」であるか否かを判定する。第1比較結果E11と第3比較結果E13との少なくとも一方が「1」でない場合(ステップS6の「No」)、ステップS8に進む。一方、第1比較結果E11と第3比較結果E13とが「1」である場合(ステップS6の「Yes」)、制御回路8は、第2センサ32が異常であると判定する(ステップS7)。
【0071】
ステップS8では、制御回路8は、第2比較結果E12(
図3では「第2出力」)と第3比較結果E13(
図3では「第3出力」)とが「1」であるか否かを判定する。第2比較結果E12と第3比較結果E13との少なくとも一方が「1」でない場合(ステップS8の「No」)、ステップS11に進む。一方、第2比較結果E12と第3比較結果E13とが「1」である場合(ステップS8の「Yes」)、制御回路8は、第3センサ33が異常であると判定する(ステップS9)。
【0072】
ステップS10では、ステップS5において第1センサ31が異常であると判定した場合、ステップS7において第2センサ32が異常であると判定した場合、ステップS9において第3センサ33が異常であると判定した場合、制御回路8は、異常なセンサ3の重みを低減させる。
【0073】
その後、ステップS11では、制御回路8は、第1比較結果E11(
図3では「第1出力」)、第2比較結果E12(
図3では「第2出力」)、及び第3比較結果E13(
図3では「第3出力」)のうちのいずれか1つが「1」であるか否かを判定する。第1比較結果E11、第2比較結果E12、及び第3比較結果E13のうちのいずれか1つが「1」である場合(ステップS11の「Yes」)、制御回路8は、複数の比較器7のいずれかが異常であると判定する(ステップS12)。一方、第1比較結果E11、第2比較結果E12、及び第3比較結果E13のうちのいずれか1つのみが「1」ではない場合(ステップS11の「No」)、制御回路8は、複数の比較器7が正常であると判定する。
【0074】
(4)効果
実施形態1に係るセンサ処理システム2では、複数のセンサ3に一対一に対応する複数のフィルタ4(低減回路)の各々が、対応するセンサ3のセンサ出力A1のうちの低周波成分を低減させる。これにより、複数のセンサ3のセンサ出力A1の低周波成分を個別に低減させることができるので、センサ3の故障検出精度及びセンサ3の検出精度を高めやすい。
【0075】
実施形態1に係るセンサ処理システム2では、複数のセンサ3が角速度センサである。これにより、角速度に対する検出精度を高めやすい。
【0076】
実施形態1に係るセンサ処理システム2では、複数のセンサ3が加速度センサである。これにより、加速度に対する検出精度を高めやすい。
【0077】
実施形態1に係るセンサ処理システム2では、複数のフィルタ4(低減回路)が、対応するセンサ3の出力経路F1から分岐して設けられている。これにより、低周波成分を低減させていないセンサ出力A1に基づく結果を、出力経路F1を介して出力することができる。
【0078】
実施形態1に係るセンサ処理システム2では、加算器5が複数のセンサ3のセンサ出力A1を加算して加算結果を出力する。これにより、複数のセンサ3のセンサ出力A1を加算して検出対象を検出することができるので、1つのセンサ出力を用いて検出対象を検出する場合に比べて、センサ3の故障検出精度及びセンサ3の検出精度を高めやすい。
【0079】
実施形態1に係るセンサ処理システム2では、複数のフィルタ4(低減回路)のうちの2つのフィルタ出力B1すなわち複数のセンサ3のうちの2つのセンサ出力A1を比較した際の比較結果E1を用いて、センサ3が正常であるか否かを判定する。これにより、複数のセンサ3のセンサ出力A1を有効に活用して、センサ3の状態を判定することができる。
【0080】
実施形態1に係るセンサ処理システム2では、加算器5が複数のセンサ3の各々について個別に重み付けを行う。これにより、例えば、異常なセンサ3の重みを低くした状態で、複数のセンサ3のセンサ出力A1を加算することができる。その結果、センサ3の故障検出精度及びセンサ3の検出精度を更に高めやすい。
【0081】
実施形態1に係るセンサ処理システム2では、複数のフィルタ4(低減回路)のうちの2つのフィルタ出力B1すなわち複数のセンサ3のうちの2つのセンサ出力A1を比較した際の比較結果E1を用いて、センサ3が正常であるか否かを判定し、異常なセンサ3に対する重みを下げる。これにより、異常なセンサ3の重みを低くした状態で、複数のフィルタ4のフィルタ出力B1を加算することができるので、センサ3の故障検出精度及びセンサ3の検出精度を更に高めやすい。
【0082】
実施形態1に係るセンサ処理システム2では、複数のフィルタ4(低減回路)がハイパスフィルタである。これにより、センサ出力A1の低周波成分を確実に低減させることができる。
【0083】
(実施形態2)
実施形態2に係るセンサシステム1aは、
図4に示すように、複数のフィルタ4のフィルタ出力B1が加算器5に出力される点で、実施形態1に係るセンサシステム1(
図1参照)と相違する。なお、実施形態2に係るセンサシステム1aに関し、実施形態1に係るセンサシステム1と同様の構成要素については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0084】
(1)構成
実施形態2に係るセンサシステム1aは、
図4に示すように、センサ処理システム2aを備える。
【0085】
センサ処理システム2aの複数のフィルタ4は、複数のセンサ3に一対一に対応し、対応するセンサ3の出力経路F1(センサ3と加算器5との間の経路)に挿入されている。より詳細には、複数のフィルタ4は、第1フィルタ41と、第2フィルタ42と、第3フィルタ43とを含む。第1フィルタ41は、第1センサ31に対応し、第1センサ31の第1出力経路F11(第1センサ31と加算器5との間の経路)に挿入されている。同時に、第1フィルタ41は、第1センサ31の第1経路G11(第1センサ31と比較器7との間の経路)に挿入されている。第2フィルタ42は、第2センサ32に対応し、第2センサ32の第2出力経路F12(第2センサ32と加算器5との間の経路)に挿入されている。同時に、第2フィルタ42は、第2センサ32の第2経路G12(第2センサ32と比較器7との間の経路)に挿入されている。第3フィルタ43は、第3センサ33に対応し、第3センサ33の第3出力経路F13(第3センサ33と加算器5との間の経路)に挿入されている。同時に、第3フィルタ43は、第3センサ33の第3経路G13(第3センサ33と比較器7との間の経路)に挿入されている。
【0086】
実施形態2の加算器5は、複数のフィルタ4のフィルタ出力B1を加算する。より詳細には、加算器5は、第1フィルタ41の第1フィルタ出力B11と、第2フィルタ42の第2フィルタ出力B12と、第3フィルタ43の第3フィルタ出力B13とを加算する。
【0087】
加算器5は、複数のフィルタ4のフィルタ出力B1を加算することによって得られる加算結果を出力する。例えば、加算器5は、加算結果を制御回路8に出力する。
図4の例では、加算器5は、除算器6を介して制御回路8に加算結果を出力する。
【0088】
実施形態2においても、実施形態1と同様、加算器5は、複数のセンサ3について個別に重み付けを行う機能を有してもよい。より詳細には、加算器5は、複数のセンサ3に対応する複数のフィルタ4のフィルタ出力B1を同じ重みで加算してもよいし、複数のセンサ3に対応する複数のフィルタ4のフィルタ出力B1を互いに異なる重みで加算してもよい。これにより、加算出力C1において、異常なセンサ3に対応するフィルタ4のフィルタ出力B1の影響を低減させることができる。
【0089】
加算器5が複数のフィルタ4のフィルタ出力B1を加算するため、加算器5に入力されるフィルタ出力B1の数によって、加算器5からの加算出力C1の振幅が異なる。加算器5に入力されるフィルタ出力B1の数が多くなるにつれて、加算出力C1の振幅が大きくなる。このような加算出力C1がそのまま制御回路8に入力されると、制御回路8は誤認識を起こすおそれがある。このため、加算器5に入力されるフィルタ出力B1の数に関係なく、制御回路8に入力される加算出力D1の振幅を一定の範囲内にする必要がある。
【0090】
そこで、実施形態1と同様、除算器6は、
図4に示すように、加算器5の加算出力C1の振幅を小さくする。より詳細には、除算器6のゲインは、例えば、加算器5に入力されるフィルタ出力B1の数の逆数である。除算器6は、加算出力C1の振幅を、加算器5に入力されるフィルタ出力B1の数の逆数倍にする。例えば、3つのフィルタ出力B1が加算器5に入力される場合、加算器5の加算出力C1の振幅は、1つのフィルタ出力のみが加算器5に入力される場合に比べて、3倍となる。このため、除算器6は、加算器5の加算出力C1の振幅を3分の1にする。これにより、加算器5に入力されるフィルタ出力B1の数に関係なく、加算出力C1のレンジを一定にすることができる。除算器6により増幅された加算出力D1は、制御回路8に出力される。
【0091】
なお、実施形態1と同様、除算器6のゲインは、加算器5に入力されるセンサ出力A1の数の逆数に限定されず、上記以外であってもよい。要するに、加算器5に入力されるセンサ出力A1の数が変わっても、制御回路8に入力される加算出力D1の振幅の変化が小さくなるように、除算器6のゲインが設定されればよい。
【0092】
(2)センサ処理システムの動作
以下、実施形態2に係るセンサ処理システム2aの通常動作(センサ処理方法)について、
図4を参照して説明する。
【0093】
まず、複数のセンサ3の各々がセンサ出力A1を出力する。その後、複数のフィルタ4が、複数のセンサ3のセンサ出力A1のうちの低周波成分を個別に低減(除去)させる。つまり、各フィルタ4が、対応するセンサ3のセンサ出力A1の低周波成分を低減させる。その後、各フィルタ4のフィルタ出力B1が加算器5に出力される。
【0094】
加算器5は、複数のフィルタ4のフィルタ出力B1を加算する。この際、各フィルタ4のフィルタ出力B1に重みを付けてから、複数のフィルタ4のフィルタ出力B1(重み付けを行った後の出力)を加算し、加算結果(加算出力C1)を出力する。その後、除算器6が、加算器5の加算出力C1の振幅を調整する。加算器5に入力されるフィルタ出力B1の数に関係なく、制御回路8に入力される加算出力D1の振幅が略一定になるように、除算器6は、加算出力C1の振幅を調整する。その後、制御回路8は、除算器6で調整された加算出力D1を取得する。
【0095】
なお、実施形態2に係るセンサ処理システム2aにおける異常を判定する動作(センサ処理方法)については、実施形態1に係るセンサ処理システム2と同様であるため、説明を省略する。
【0096】
(3)効果
実施形態2に係るセンサ処理システム2aでは、複数のフィルタ4(低減回路)が、対応するセンサ3の出力経路F1に挿入されて設けられている。これにより、フィルタ出力B1(低周波成分を低減させたセンサ出力)に基づく結果を、出力経路F1を介して出力することができる。
【0097】
実施形態2に係るセンサ処理システム2aでは、加算器5が複数のフィルタ4(低減回路)のフィルタ出力B1を加算して加算出力C1を出力する。これにより、複数のフィルタ4のフィルタ出力B1を加算して検出対象を検出することができる。その結果、1つのフィルタ(低減回路)の出力を用いて検出対象を検出する場合に比べて、センサ3の故障検出精度及びセンサ3の検出精度を高めやすい。
【0098】
実施形態2に係るセンサ処理システム2aでは、加算器5が複数のセンサ3の各々について個別に重み付けを行う。これにより、例えば、異常なセンサ3の重みを低くした状態で、複数のフィルタ4のフィルタ出力B1を加算することができる。その結果、センサ3の故障検出精度及びセンサ3の検出精度を更に高めやすい。
【0099】
(変形例)
以下、実施形態1,2の変形例について説明する。
【0100】
センサ3の数は、3つに限定されず、4つであってもよいし、5つであってもよい。あるいは、センサ3の数は、2つであってもよい。要するに、センサシステム1は、複数のセンサ3を備えていればよい。
【0101】
同様に、フィルタ4の数は、3つに限定されず、4つであってもよいし、5つであってもよい。あるいは、フィルタ4の数は、2つであってもよい。要するに、センサ処理システム2は、複数のフィルタ4を備えていればよい。
【0102】
実施形態2の変形例に係るセンサシステム1bは、
図5に示すように、センサ処理システム2bと、4つのセンサ3とを備える。4つのセンサ3は、第1センサ31と、第2センサ32と、第3センサ33と、第4センサ34とを備える。センサ処理システム2bは、4つのフィルタ4と、加算器5と、除算器6と、4つの比較器7と、制御回路8とを備える。
【0103】
4つのフィルタ4は、4つのセンサ3に一対一に対応し、対応するセンサ3の出力経路F1に挿入されている。第4フィルタ44は、第4センサ34に対応し、第4センサ34の第4センサ出力A14の低周波成分を低減(除去)する。
【0104】
4つの比較器7は、4つのフィルタ4のうちの2つのフィルタ出力B1を比較する。4つの比較器7は、第1比較器71と、第2比較器72と、第3比較器73と、第4比較器74とを含む。
【0105】
第1比較器71は、第1フィルタ41の第1フィルタ出力B11と第2フィルタ42の第2フィルタ出力B12とを比較する。そして、第1比較器71は、第1フィルタ出力B11と第2フィルタ出力B12との比較結果を第1比較結果E11として出力する。第1比較器71は、第1閾値を設定するための第1閾値設定部711を有する。
【0106】
第2比較器72は、第2フィルタ42の第2フィルタ出力B12と第3フィルタ43の第3フィルタ出力B13とを比較する。そして、第2比較器72は、第2フィルタ出力B12と第3フィルタ出力B13との比較結果を第2比較結果E12として出力する。第2比較器72は、第2閾値を設定するための第2閾値設定部721を有する。
【0107】
第3比較器73は、第3フィルタ43の第3フィルタ出力B13と第4フィルタ44の第4フィルタ出力B14とを比較する。そして、第3比較器73は、第3フィルタ出力B13と第4フィルタ出力B14との比較結果を第3比較結果E13として出力する。第3比較器73は、第3閾値を設定するための第3閾値設定部731を有する。
【0108】
第4比較器74は、第4フィルタ44の第4フィルタ出力B14と第1フィルタ41の第1フィルタ出力B11とを比較する。そして、第4比較器74は、第4フィルタ出力B14と第1フィルタ出力B11との比較結果を第4比較結果E14として出力する。第4比較器74は、第4閾値を設定するための第4閾値設定部741を有する。
【0109】
要するに、N個のフィルタ4のフィルタ出力B1すなわちN個のセンサ3のセンサ出力A1を比較することで、異常なセンサ3(故障したセンサ3)を特定することができる。また、1つのセンサ3が故障しても、故障したセンサ3を除く(N-1)個のセンサ3のセンサ出力A1(フィルタ出力B1)を加算することで、センサ出力A1のノイズ低減効果を継続して得ることができる。
【0110】
なお、センサ処理システム2,2a,2bの各構成要素及び複数のセンサ3の実装形態は限定されない。センサ処理システム2,2a,2bの各構成要素及び複数のセンサ3がシリコンウェハ上に集積されている形態であってもよい。あるいは、複数のセンサ3の各々がディスクリート素子としてプリント回路板(Printed Circuit Board:PCB)上に実装され、マイクロコントロールユニット(Micro Control Unit:MCU)で信号処理が行われる形態であってもよい。
【0111】
フィルタ4は、デジタルフィルタであってもよいし、アナログフィルタであってもよい。
【0112】
上記の変形例に係るセンサシステム及びセンサ処理システム2bにおいても、実施形態1に係るセンサシステム1及びセンサ処理システム2並びに実施形態2に係るセンサシステム1a及びセンサ処理システム2aと同様の効果を奏する。
【0113】
以上説明した実施形態及び変形例は、本開示の様々な実施形態及び変形例の一部に過ぎない。また、実施形態及び変形例は、本開示の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
【0114】
(態様)
本明細書には、以下の態様が開示されている。
【0115】
第1の態様に係るセンサ処理システム(2;2a;2b)は、複数の低減回路(フィルタ4)を備える。複数の低減回路は、複数のセンサ(3)に一対一に対応する。複数の低減回路は、対応するセンサ(3)の出力端に電気的に接続されてセンサ(3)のセンサ出力(A1)のうちの低周波成分を低減させる。
【0116】
第1の態様に係るセンサ処理システム(2;2a;2b)によれば、複数のセンサ(3)のセンサ出力(A1)の低周波成分を個別に低減させることができるので、センサ(3)の故障検出精度及びセンサ(3)の検出精度を高めやすい。
【0117】
第2の態様に係るセンサ処理システム(2;2a;2b)では、第1の態様において、複数のセンサ(3)は、角速度センサである。
【0118】
第2の態様に係るセンサ処理システム(2;2a;2b)によれば、角速度に対する検出精度を高めやすい。
【0119】
第3の態様に係るセンサ処理システム(2;2a;2b)では、第1の態様において、複数のセンサ(3)は、加速度センサである。
【0120】
第3の態様に係るセンサ処理システム(2;2a;2b)によれば、加速度に対する検出精度を高めやすい。
【0121】
第4の態様に係るセンサ処理システム(2)では、第1~3の態様のいずれか1つにおいて、複数の低減回路(フィルタ4)は、対応するセンサ(3)の出力経路(F1)から分岐して設けられている。
【0122】
第4の態様に係るセンサ処理システム(2)によれば、低周波成分を低減させていないセンサ出力(A1)に基づく結果を、出力経路(F1)を介して出力することができる。
【0123】
第5の態様に係るセンサ処理システム(2)は、第4の態様において、加算器(5)を更に備える。加算器(5)は、複数のセンサ(3)のセンサ出力(A1)を加算して加算結果(加算出力C1)を出力する。
【0124】
第5の態様に係るセンサ処理システム(2)によれば、複数のセンサ(3)のセンサ出力(A1)を加算して検出対象を検出することができる。その結果、1つのセンサ出力を用いて検出対象を検出する場合に比べて、センサ(3)の故障検出精度及びセンサ(3)の検出精度を高めやすい。
【0125】
第6の態様に係るセンサ処理システム(2a;2b)では、第1~3の態様のいずれか1つにおいて、複数の低減回路(フィルタ4)は、対応するセンサ(3)の出力経路(F1)に挿入されて設けられている。
【0126】
第6の態様に係るセンサ処理システム(2a;2b)によれば、低周波成分を低減させたセンサ出力(フィルタ出力B1)に基づく結果を、出力経路(F1)を介して出力することができる。
【0127】
第7の態様に係るセンサ処理システム(2a;2b)は、第6の態様において、加算器(5)を更に備える。加算器(5)は、複数の低減回路(フィルタ4)の出力(フィルタ出力B1)を加算して加算結果(加算出力C1)を出力する。
【0128】
第7の態様に係るセンサ処理システム(2a;2b)によれば、複数の低減回路(フィルタ4)の出力(フィルタ出力B1)を加算して検出対象を検出することができる。その結果、1つの低減回路の出力を用いて検出対象を検出する場合に比べて、センサ(3)の故障検出精度及びセンサ(3)の検出精度を高めやすい。
【0129】
第8の態様に係るセンサ処理システム(2;2a;2b)は、第1~7の態様のいずれか1つにおいて、比較器(7)と、制御回路(8)とを更に備える。比較器(7)は、複数の低減回路(フィルタ4)のうちの2つの低減回路の出力(フィルタ出力B1)を比較して比較結果(E1)を出力する。制御回路(8)は、比較結果(E1)を用いてセンサ(3)が正常であるか否かを判定する。
【0130】
第8の態様に係るセンサ処理システム(2;2a;2b)によれば、複数のセンサ(3)のセンサ出力(A1)を有効に活用して、センサ(3)の状態を判定することができる。
【0131】
第9の態様に係るセンサ処理システム(2;2a;2b)では、第5又は7の態様において、加算器(5)は、複数のセンサ(3)の各々について個別に重み付けを行う。
【0132】
第9の態様に係るセンサ処理システム(2;2a;2b)によれば、例えば、異常なセンサ(3)の重みを低くした状態で、複数のセンサ(3)のセンサ出力(A1)又は複数の低減回路(フィルタ4)の出力(フィルタ出力B1)を加算することができる。その結果、センサ(3)の故障検出精度及びセンサ(3)の検出精度を更に高めやすい。
【0133】
第10の態様に係るセンサ処理システム(2;2a;2b)は、第9の態様において、比較器(7)を更に備える。比較器(7)は、複数の低減回路(フィルタ4)のうちの2つの低減回路の出力(フィルタ出力B1)を比較して比較結果(E1)を出力する。加算器(5)は、比較器(7)の比較結果(E1)に基づいて、複数のセンサ(3)のうち、異常なセンサ(3)に対する重みを下げる。
【0134】
第10の態様に係るセンサ処理システム(2;2a;2b)によれば、異常なセンサ(3)に対する重みを低くした状態で、複数のセンサ(3)のセンサ出力(A1)又は複数の低減回路(フィルタ4)の出力(フィルタ出力B1)を加算することができる。その結果、センサ(3)の故障検出精度及びセンサ(3)の検出精度を更に高めやすい。
【0135】
第11の態様に係るセンサ処理システム(2;2a;2b)では、第1~10の態様のいずれか1つにおいて、複数の低減回路(フィルタ4)は、ハイパスフィルタを含む。
【0136】
第11の態様に係るセンサ処理システム(2;2a;2b)によれば、センサ出力(A1)の低周波成分を確実に低減させることができる。
【0137】
第12の態様に係るセンサシステム(1;1a;1b)は、第1~11の態様のいずれか1つのセンサ処理システム(2;2a;2b)と、複数のセンサ(3)とを備える。
【0138】
第12の態様に係るセンサシステム(1;1a;1b)によれば、センサ処理システム(2;2a;2b)において、複数のセンサ(3)のセンサ出力(A1)の低周波成分を個別に低減させることができる。その結果、センサ(3)の故障検出精度及びセンサ(3)の検出精度を高めやすい。
【0139】
第13の態様に係るセンサ処理方法は、複数のセンサ(3)のセンサ出力(A1)のうちの低周波成分を個別に低減させる。
【0140】
第13の態様に係るセンサ処理方法によれば、複数のセンサ(3)のセンサ出力(A1)の低周波成分を個別に低減させることができるので、センサ(3)の故障検出精度及びセンサ(3)の検出精度を高めやすい。
【符号の説明】
【0141】
1,1a,1b センサシステム
2,2a,2b センサ処理システム
3 センサ
4 フィルタ(低減回路)
5 加算器
7 比較器
8 制御回路
A1 センサ出力
B1 フィルタ出力(出力)
C1 加算出力(加算結果)
E1 比較結果
F1 出力経路