(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-28
(45)【発行日】2023-10-06
(54)【発明の名称】入力装置、及び入力システム
(51)【国際特許分類】
G06F 3/033 20130101AFI20230929BHJP
G06F 3/038 20130101ALI20230929BHJP
H01H 36/00 20060101ALI20230929BHJP
H01H 13/00 20060101ALI20230929BHJP
【FI】
G06F3/033 A
G06F3/038 310Y
H01H36/00 J
H01H13/00 B
(21)【出願番号】P 2020553794
(86)(22)【出願日】2019-10-18
(86)【国際出願番号】 JP2019041222
(87)【国際公開番号】W WO2020090535
(87)【国際公開日】2020-05-07
【審査請求日】2022-08-02
(31)【優先権主張番号】P 2018207690
(32)【優先日】2018-11-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 勇太
(72)【発明者】
【氏名】山林 正明
(72)【発明者】
【氏名】中江 竜
(72)【発明者】
【氏名】松本 賢一
【審査官】菅原 浩二
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-045243(JP,A)
【文献】特開2018-032122(JP,A)
【文献】特開2017-088105(JP,A)
【文献】特開2009-217804(JP,A)
【文献】特開2007-173068(JP,A)
【文献】特開2006-236694(JP,A)
【文献】特開2010-238029(JP,A)
【文献】特開2013-050866(JP,A)
【文献】特開2002-304247(JP,A)
【文献】特表2012-530320(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0364161(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0228111(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0081437(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/033
G06F 3/038
H01H 36/00
H01H 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
押圧面を有して前記押圧面へ押圧を与える操作体にクリック感を作用させるクリック部、及び、前記クリック部の前記押圧面とは反対側に配置される圧力センサ、を有する感圧部と、
前記押圧面の正面から見たときに前記感圧部と並んで配置されて、検知面に対する前記操作体の近接又は接触を検知する検知部と、
を備え
、
前記圧力センサは、静電容量式のセンサであり、
前記圧力センサは、第1電極及び第2電極間における静電容量の変化を含む電気信号を出力し、
前記クリック部は、ドーム状に形成されて、かつ前記押圧面を表面とする導電性のドーム体を有し、
前記第1電極は、前記ドーム体を介して前記押圧を受けて、前記第2電極に近づく方向に移動可能であり、
前記第1電極は、
その厚み方向に貫通する孔部と、
前記孔部の周囲に配置され、かつ前記クリック部に近づく方向に突出する突起部と、
を有し、
前記ドーム体は、
前記突起部に載せ置かれる周縁部と、
前記押圧に応じて前記ドーム体が座屈した時に、前記孔部を通り前記第2電極に近づく頂部と、
を有する、
入力装置。
【請求項2】
前記第2電極は、それぞれが前記第1電極と対向する第1分割部及び第2分割部を含み、
前記第1分割部及び前記第2分割部は、前記押圧面の正面から見たときに、第1領域の面積と第2領域の面積とが不均等となるように規定され、
前記第1領域は、前記押圧面の正面から見たときに、前記第1電極と前記第1分割部とが重なる領域であり、
前記第2領域は、前記押圧面の正面から見たときに、前記第1電極と前記第2分割部とが重なる領域である、
請求項1に記載の入力装置。
【請求項3】
前記検知部は、静電容量式のセンサである、
請求項
1又は2に記載の入力装置。
【請求項4】
前記検知部を、2つ備え、
前記2つの検知部は、前記押圧面の正面から見たときに、前記感圧部を間に挟むように前記感圧部の両側に並んで配置されている、
請求項
1~3のいずれか1項に記載の入力装置。
【請求項5】
前記検知面と交差する方向における前記検知部の位置を前記押圧面の位置に揃えるように前記検知部を支持する壁部を、更に備える、
請求項
1~4のいずれか1項に記載の入力装置。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の入力装置と、
前記感圧部の前記圧力センサから出力される第1信号を取得する第1取得部と、
前記検知部から出力される第2信号を取得する第2取得部と、
前記第1信号及び前記第2信号に基づいて、前記操作体の操作状態を判定する判定部と、
を備える、
入力システム。
【請求項7】
前記操作状態は、前記感圧部に対する前記操作体の移動に関する方向性を含む、
請求項
6に記載の入力システム。
【請求項8】
前記操作状態は、
前記操作体が前記押圧面に近づき前記押圧面に前記押圧が与えられるまでの第1操作過程、及び
前記押圧面に前記押圧が与えられた後に前記操作体が前記押圧面から離れるまでの第2操作過程のうち、少なくとも一方の過程に関する状態を含む、
請求項6
又は7に記載の入力システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、入力装置、及び入力システムに関し、より詳細には、各種電子機器への入力に用いる入力装置、及び当該入力装置を備えた入力システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来例として、特許文献1に記載の入力装置を例示する。この入力装置は、圧力センサと、弾性体とを有している。圧力センサは、弾性体内部に配置されている。そして、入力者は、例えば、捻ったり、引っ張ったりすることによって、弾性体を弾性変形させる。入力装置は、このときの弾性変形を、圧力センサで検出し、圧力センサに基づいた入力信号を出力する。
【0003】
しかしながら、弾性体内の複雑な力学的変動を圧力センサによって検出する特許文献1に記載の入力装置は、クリック感を発生できなかった。またクリック感の発生を阻害することなく、多様な操作にも対応可能な入力装置が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【0005】
本開示は上記事由に鑑みてなされ、クリック感の発生が阻害されることを抑制しつつ、多様な操作にも対応可能な入力装置、及び入力システムを提供することを目的とする。
【0006】
本開示の一態様の入力装置は、感圧部と、検知部と、を備える。前記感圧部は、クリック部、及び圧力センサを有する。前記クリック部は、押圧面を有して前記押圧面へ押圧を与える操作体にクリック感を作用させる。前記圧力センサは、前記クリック部の前記押圧面とは反対側に配置される。前記検知部は、前記押圧面の正面から見たときに前記感圧部と並んで配置されて、検知面に対する前記操作体の近接又は接触を検知する。前記圧力センサは、静電容量式のセンサである。前記圧力センサは、第1電極及び第2電極間における静電容量の変化を含む電気信号を出力する。前記クリック部は、ドーム状に形成されて、かつ前記押圧面を表面とする導電性のドーム体を有する。前記第1電極は、前記ドーム体を介して前記押圧を受けて、前記第2電極に近づく方向に移動可能である。前記第1電極は、その厚み方向に貫通する孔部と、前記孔部の周囲に配置され、かつ前記クリック部に近づく方向に突出する突起部と、を有する。前記ドーム体は、前記突起部に載せ置かれる周縁部と、前記押圧に応じて前記ドーム体が座屈した時に、前記孔部を通り前記第2電極に近づく頂部と、を有する。
【0007】
本開示の一態様の入力システムは、上記入力装置と、第1取得部と、第2取得部と、判定部と、を備える。前記第1取得部は、前記感圧部の前記圧力センサから出力される第1信号を取得する。前記第2取得部は、前記検知部から出力される第2信号を取得する。前記判定部は、前記第1信号及び前記第2信号に基づいて、前記操作体の操作状態を判定する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る入力装置の断面図である。
【
図2】
図2Aは、同上の入力装置の模式的な断面図である。
図2Bは、同上の入力装置におけるクリック部が座屈した時の模式的な断面図である。
図2Cは、
図2Aにおける一点鎖線の円で囲まれた領域の拡大断面図である。
【
図3】
図3は、同上の入力装置の分解斜視図である。
【
図4】
図4は、同上の入力装置におけるカバーが外された状態の平面図である。
【
図5】
図5は、一実施形態に係る入力システムの概略ブロック構成図である。
【
図6】
図6は、同上の入力装置におけるクリック部及び第1電極の斜視図である。
【
図7】
図7A~7Dは、同上の入力装置に対する操作体の操作状態を説明するための模式図である。
【
図8】
図8Aは、同上の入力装置における第2電極を説明するための模式的な要部の平面図である。
図8Bは、同上の入力装置の変形例1における第2電極を説明するための模式的な要部の平面図である。
【
図9】
図9は、同上の入力装置及び変形例1における静電容量に関する特性を示すグラフである。
【
図10】
図10は、同上の入力装置の変形例2を説明するための模式的な断面図である。
【
図11】
図11Aは、同上の入力装置における検知部の変形例を説明するための模式図である。
図11Bは、同上の入力装置における検知部の別の変形例を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(1)概要
以下の実施形態において説明する各図は、模式的な図であり、各図中の各構成要素の大きさ及び厚さそれぞれの比が、必ずしも実際の寸法比を反映しているとは限らない。
【0010】
本実施形態に係る入力装置1は、
図1及び
図3に示すように、感圧部2と、1又は複数の検知部5と、を備えている。ここでは検知部5の数は、一例として、2つである。
【0011】
感圧部2は、
図1及び
図3に示すように、クリック部3、及び圧力センサ4を有している。クリック部3は、押圧面30を有して、押圧面30へ押圧を与える操作体U1(
図7A~
図7D参照)にクリック感(例えばカチっという感触)を作用させる。ここでは操作体U1は、一例として、人の指先(生体の一部)であることを想定するが、特に限定されない。操作体U1は、生体の一部及び当該一部を覆う物(例えば手袋)を含んでもよい。また操作体U1は、生体が保持する物(例えばペン型の操作部材)を含んでもよい。圧力センサ4は、クリック部3の押圧面30とは反対側に配置される。本実施形態の圧力センサ4は、一例として、静電容量式のセンサである。
【0012】
検知部5は、
図4に示すように、押圧面30の正面から見たときに感圧部2と並んで配置されて、検知面に対する操作体U1の近接又は接触を検知する。ここでは、検知面とは、検知部5と対向するカバー(フィルム)11の表面の一部の領域(面)であることを想定する。
【0013】
本実施形態の検知部5は、一例として静電容量式のタッチセンサ(タッチスイッチ)であるが、感度を高めることで物体の近接を検出する静電容量式の近接センサでもよい。また検知部5は、静電容量式のセンサに限定されず、光学式のセンサ、誘導式のセンサ、又は磁気式のセンサ等でもよい。また入力装置1は、操作体U1から、直接押圧を受けるだけに限定されず、カバー11の前方に配置される操作板(操作ハンドル)T1(
図7A~
図7D参照)を介して押圧を受けてもよい。
【0014】
また本実施形態に係る入力システム100は、
図5に示すように、入力装置1と、第1取得部91と、第2取得部92と、判定部93と、を備えている。第1取得部91は、感圧部2の圧力センサ4から出力される第1信号を取得する。第2取得部92は、検知部5から出力される第2信号を取得する。判定部93は、第1信号及び第2信号に基づいて、操作体U1の操作状態を判定する。
【0015】
この構成によれば、感圧部2と検知部5とが並んで配置されているため、クリック感の発生が阻害されることを抑制しつつ、多様な操作にも対応可能にすることができる。多様な操作とは、例えば、検知部5に偏った位置で、感圧部2に押圧が与えられる操作であったり、検知部5から離れた位置で、感圧部2に押圧が与えられる操作であったり、検知部5の側から感圧部2に近づくような操作である。
【0016】
(2)詳細
(2.1)全体構成
以下、本実施形態に係る入力装置1、及び入力システム100の全体構成について、
図1~
図7Dを参照しながら詳しく説明する。
【0017】
入力システム100は、
図5に示すように、入力装置1、及び制御部9等を備えている。入力システム100は、各種電子機器に適用され得る。入力装置1は、電子機器の筐体に保持されてもよい。制御部9は、電子機器の筐体内に収容されてもよい。制御部9は、電子機器の筐体内に収容されている回路モジュールに対して、入力装置1からの入力に基づき、制御信号を出力してもよい。
【0018】
入力装置1は、上述の通り、感圧部2と、2つの検知部5と、備えている。また入力装置1は、
図3に示すように、ハウジング10と、押し子13とを更に備えている。
【0019】
(2.2)ハウジング
入力装置1のハウジング10は、
図1及び
図3に示すように、感圧部2、2つの検知部5及び押し子13を収容する。ハウジング10は、カバー11と、ボディ12とを備えている。ボディ12は、扁平な四角形(例えば方形)の箱状であり、厚み方向の第1面(
図1及び
図3の上面)に開口を有している。カバー11は、四角形(例えば方形)のフィルム状である。カバー11は、ボディ12の第1面の開口を覆うようにしてボディ12の第1面に取り付けられる。
【0020】
カバー11及びボディ12は、電気絶縁性を有している。カバー11及びボディ12は、例えば、電気絶縁性を有する樹脂材料により形成される。特に、カバー11は、可撓性を有している。これにより、操作体U1(
図7A~
図7D参照)が、ハウジング10内に収容された感圧部2を、カバー11を介して押圧することが可能である。
【0021】
カバー11における、感圧部2及び2つの検知部5とは反対側の面(
図3では上面)が、入力装置1の検知面となる。以下では、入力装置1の検知面のうち、感圧部2に対応する領域を、第1検知面S1と呼び、2つの検知部5に対応する2つの領域を、第2検知面S2と呼ぶこともある(
図1及び
図3参照)。
図3の2つの第2検知面S2は、仮想的に一点鎖線で図示している。
【0022】
第1検知面S1は、感圧部2から離れる方向に僅かに凸となるように形成されている。第1検知面S1は、カバー11の正面から見て略正方形状の領域である(
図3参照)。第1検知面S1は、その中央部において、円形状に平坦な領域を有しており、押し子13は、カバー11の裏面における当該中央部に対応する領域で、安定的に位置決めされる。
【0023】
一方、2つの第2検知面S2は、いずれも平坦な領域(面)である。2つの第2検知面S2は、第1検知面S1の両横(例えば左右の両横)に位置する。
【0024】
ボディ12は、
図3に示すように、感圧部2を収容する第1収容凹部121と、2つの検知部5をそれぞれ一対一で収容する2つの第2収容凹部122と、を有している。第1収容凹部121及び2つの第2収容凹部122は、ハウジング10の長手方向に沿って、第2収容凹部122、第1収容凹部121及び第2収容凹部122の順で、並んでいる。言い換えると、各検知部5は、ハウジング10内で、感圧部2の(押圧面30の)正面から見たときに感圧部2と並んで配置されている。さらに言い換えると、2つの検知部5は、感圧部2の(押圧面30の)正面から見たときに、感圧部2を間に挟むように感圧部2の両側に並んで配置されている。
【0025】
(2.3)感圧部
感圧部2は、上述の通り、クリック部3、及び圧力センサ4を有している。
【0026】
圧力センサ4は、静電容量式のセンサである。圧力センサ4は、第1電極6(可動電極)及び第2電極7(固定電極)間における静電容量の変化を含む電気信号を出力するように構成されている。圧力センサ4は、クリック部3の押圧面30とは反対側(
図1ではクリック部3の下側)に配置される。具体的には、圧力センサ4は、
図3に示すように、第1電極6、弾性体14、絶縁シート(15、16)、及び第2電極7を有している。第1電極6、弾性体14、絶縁シート(15、16)、及び第2電極7は、この順で、クリック部3から離れる方向に並んでいる。すなわち、第1電極6が、圧力センサ4の構成要素の中で、クリック部3に最も近い位置にある。
【0027】
第1電極6は、導電性を有する部材(例えば金属の板材)によって矩形の板状に形成されている。第1電極6は、その中央部において厚み方向に貫通する孔部61と、1又は複数の突起部62(図示例では4つ)と、を有している。孔部61は、第1電極6の正面から見て、略円形の開口形状を有している。4つの突起部62は、孔部61の周囲に配置され、かつクリック部3に近づく方向に突出している。4つの突起部62は、矩形の第1電極6の四隅近くに、それぞれ配置されている。4つの突起部62は、例えば、絞り加工によって、クリック部3に向かって扁平な矩形の板状に凸となるように形成されている。
【0028】
第2電極7は、導電性を有する部材(例えば金属の板材)によって、全体として略矩形の平板状に形成されている。ただし、本実施形態の第2電極7は、2つに分割されている。すなわち、第2電極7は、それぞれが(弾性体14、及び絶縁シート15を介して)第1電極6と対向する、第1分割部71及び第2分割部72を含む(
図3参照)。第1分割部71及び第2分割部72は、略同一平面上において並んでいる。
【0029】
第1分割部71は、第2分割部72と対向する縁部が半円弧状に切り欠かれた、矩形の板状である。第1分割部71は、上記縁部とは反対側の縁部に、端子711を有している。端子711は、概ね第2分割部72から離れる方向に突出している。端子711は、ボディ12の第1収容凹部121の底に形成された導出孔からハウジング10の外部に突き出ている(
図4参照)。第1分割部71及び第2分割部72の並び方向は、一例として、ハウジング10の幅方向(長手方向及び厚み方向と直交する方向)に相当する。また上記並び方向は、感圧部2及び検知部5の並び方向と、ハウジング10の厚み方向とに直交する。
【0030】
第1分割部71は、インサート成形等によってボディ12に固定されており、概ねその表面(
図3では上面)のみが、第1収容凹部121の底面から露出する。
【0031】
第2分割部72は、第1分割部71と略同形の板状であり、概ね第1分割部71から離れる方向に突出した端子721を有している。端子721は、ボディ12の第1収容凹部121の底に形成された導出孔からハウジング10の外部に突き出ている(
図4参照)。
【0032】
ただし、第2分割部72は、半円弧状に切り欠かれた縁部に、第1分割部71に近づく方向に突出した舌部722を有している点で、第1分割部71と異なる。言い換えると、舌部722を除けば、第1分割部71及び第2分割部72は、互いに面対称である。
【0033】
舌部722は、略円板状である。第1電極6の厚み方向における舌部722の位置は、第2分割部72における矩形の本体部723の位置と異なる。具体的には、舌部722は、本体部723の縁から僅かにクリック部3に近づく方向に屈曲した上で本体部723の表面と平行となるように延びている。また舌部722は、その中央部に、絞り加工等によってクリック部3に向かって凸となるように僅かに突出した接触部724を有している。接触部724は、舌部722の正面から見て円形状である。接触部724は、その表面が、概ね第1電極6の孔部61内に位置するように規定されている。接触部724は、クリック部3の(後述する)ドーム体31の頂部311が(絶縁シート16を介して)接触する部位である(
図3参照)。
【0034】
第2分割部72は、インサート成形等によってボディ12に固定されており、概ね舌部722の表面と本体部723の表面(
図1では上面)のみが、第1収容凹部121の底面から露出する。
【0035】
このように第2電極7が、第1分割部71と第2分割部72とに2分割されているため、感圧部2の感度をより向上させることができる。例えば、手袋等を着用した状態で、入力装置1が指先(操作体U1)により操作されても、手袋の影響を受け難い。
【0036】
弾性体14は、
図3に示すように、例えば矩形のシート状である。弾性体14は、導電性を有している。弾性体14は、例えば、導電性を有したゴムシートである。弾性体14は、その中央部において、厚み方向に貫通する孔部140を有している。孔部140は、弾性体14の正面から見て、略円形の開口形状を有している。弾性体14の外形は、第1電極6の外形と概ね等しい。弾性体14の厚みは、第1電極6の厚みと概ね等しい。孔部140の径寸法は、第1電極6の孔部61の径寸法よりも僅かに大きい。弾性体14の第1面141(
図3では上面)は、第1電極6の裏面(
図3では下面)と、概ね面接触するように配置されている。
【0037】
絶縁シート15は、
図3に示すように、例えば矩形のシート状の絶縁体(誘電体)である。絶縁シート15は、その中央部において、厚み方向に貫通する孔部150を有している。孔部150は、絶縁シート15の正面から見て、略円形の開口形状を有している。絶縁シート15の外形は、第1電極6の外形と概ね等しい。本実施形態では、絶縁シート15の厚みは、第1電極6の厚みよりも薄い。絶縁シート15は、第1収容凹部121の底面から露出する第1分割部71の表面及び第2分割部72の表面を、概ね覆うように配置されている。なお、舌部722の表面も、絶縁シート16で覆われている。舌部722の表面を覆う絶縁シート16は、絶縁シート15と別体となった円形状の絶縁体(誘電体)であるが(
図3参照)、絶縁シート15と一体となって形成されてもよい。
【0038】
クリック部3は、押圧面30(
図3では上面)を有して、押圧面30へ押圧を与える操作体U1にクリック感を作用させるように構成されている。クリック部3は、弾性変形部である。具体的には、クリック部3は、ドーム形の板状に形成されて、かつ押圧面30を表面とするドーム体31を有している。ドーム体31は、弾性を有する材料(例えば金属板)により形成されている。ドーム体31は、いわゆるメタルドームである。クリック部3は、ドーム体31の周縁に一体となって形成されたフランジ部又は脚部等を更に有してもよい。
【0039】
押圧面30は、凸面である。押圧面30に押圧が与えられると、
図2Bに示すように、クリック部3が弾性変形をし、これによって、クリック感が発生する。より詳細には、この弾性変形によって、ドーム体31の中央部が反転して凸状態から凹状態となる(座屈)。このように、クリック部3は、押圧面30に押圧が与えられると、押圧面30が凹むように弾性変形してクリック感を操作体U1に作用させる。
【0040】
ドーム体31は、
図3に示すように、周縁部310と、頂部311と、を有している。ドーム体31は、圧力センサ4の第1電極6の上に配置されている。具体的には、ドーム体31の周縁部310が、第1電極6の平坦な表面を有する4つの突起部62に載せ置かれている(
図6参照)。
【0041】
もし突起部62が設けられていなければ、頂部311が、第1電極6の縁に接触する可能性があり、当該接触は、電気的な干渉及びクリック感触の低下に繋がり得る。突起部62が設けられていることで、様々な形状、寸法のドーム体31が座屈した時に、頂部311が、第1電極6の孔部61の縁に接触する可能性を低減できる。言い換えると、ドーム体31の種類に依存せずに、第1電極6に関する部材の共通化を図ることができる。この突起部62は、感圧部2自体の構造に関するものである。したがって、突起部62を備える感圧部2にとって、検知部5は、必須の構成ではない。
【0042】
ドーム体31は、操作体U1からの押圧に応じて、周縁部310により、第1電極6を第2電極7側に押し込む。言い換えると、第1電極6は、ドーム体31を介して上記押圧を受けて、弾性体14及び絶縁シート15を押し込みながら、第2電極7に近づく方向に移動可能な可動電極である。また頂部311は、操作体U1からの押圧に応じてドーム体31が座屈した時に、第1電極6の孔部61を通り、第2電極7の舌部722の接触部724に近づいて接触部724上の絶縁シート16に接触する。
【0043】
押し子13は、クリック部3の弾性変形を起こしやすくするための部材である。押し子13は、
図3に示すように、円盤状である。また、押し子13の外形形状は、クリック部3の外形形状よりも小さい。押し子13は、ドーム体31の頂部311とカバー11との間に配置されている(
図1参照)。押し子13は、カバー11又はクリック部3に固定されている。押し子13は、カバー11に固定されると望ましい。押し子13は、電気絶縁性を有している。
【0044】
図2Aは、ドーム体31の中央部が座屈する前の状態における、模式的な回路構成を示している。第1電極6と第2電極7の第1分割部71とによってコンデンサC1が構成され、第1電極6と第2電極7の第2分割部72とによってコンデンサC2が構成され得る。コンデンサC1及びC2は、導電性のドーム体31を介して直列接続されている。
【0045】
操作体U1がカバー11の第1検知面S1(又は操作板T1)に接触してクリック部3が押し込まれることで、弾性体14が圧縮され、当該圧縮による第1電極6と第2電極7との距離及び対向面積が変化する。したがって、コンデンサC1及びC2の合成の静電容量が変化する。そして、その静電容量の変化を含むアナログの電気信号(第1信号)が、端子711、721を介して入力装置1の外部に出力され得る。なお、
図2AにおけるコンデンサC2の一方の電極に接続されるダイオードの記号は、コンデンサC1及びC2に蓄積された静電電荷が上記の接地点側へのみ流れることを視覚的に図示したものであり、実際に存在するものではない。
【0046】
一方、
図2Bは、ドーム体31の中央部が座屈した後の状態における、模式的な回路構成を示している。ドーム体31の中央部が、第2電極7の第2分割部72の舌部722に接触することで(以下、接点の「ON時」と呼ぶこともある)、コンデンサC3が構成され得る。コンデンサC1とコンデンサC3とは、並列接続されている。したがって、接点のON時以降では、更なる追荷重によるコンデンサC1~C3の合成の静電容量の変化を含むアナログの電気信号(第1信号)が、端子711、721を介して出力され得る。なお、
図2BにおけるコンデンサC2の一方の電極に接続されるダイオードの記号は、コンデンサC1~C3に蓄積された静電電荷が上記の接地点側へのみ流れることを視覚的に図示したものであり、実際に存在するものではない。
【0047】
ところで、弾性体14における第1面141は、平坦面である一方で、第1面141とは反対側の第2面142は、粗面である(
図2C参照)。具体的には、弾性体14は、第2面142において、複数の突起143を有している。弾性体14は、複数の突起143のある第2面142を絶縁シート15に向けて、絶縁シート15上に配置されている。そのため、弾性体14がクリック部3で押圧された場合、複数の突起143がつぶれる。これによって、弾性体14の全体的な厚みが減るが、同時に、弾性体14と絶縁シート15との接触面積が増加する。そのため、単純に、弾性体14の厚みが変化する場合に比べれば、感圧部2に加わる押圧力に対する静電容量の変化の線形性が向上する。
【0048】
(2.4)検知部
2つの検知部5は、上述の通り、静電容量式のセンサであり、押圧面30の正面から見たときに感圧部2の両横に配置されている。各検知部5と感圧部2は、隣接して配置されている。ここでは2つの検知部5は、互いに同じ構成を有しているものとするが、互いに異なる構成を有してもよい。各検知部5は、カバー11における対応する第2検知面S2に対する操作体U1の近接又は接触を検知するように構成されている。
【0049】
各検知部5は、
図3及び
図4に示すように、導電性を有する部材(例えば金属の板材)によって矩形の平板状に形成された電極50と、一対の端子51とを有している。すなわち、各検知部5は、単一の電極50を有し、電極50と操作体U1との間における静電容量の変化を検知する、自己容量式のセンサである。一対の端子51は、電極50の長手方向の両端から突出している。具体的には、一対の端子51は、カバー11から離れる方向に突出し、更に互いに離れる方向に延び出ている。各検知部5は、ボディ12における対応する第2収容凹部122に収容されている。各検知部5は、インサート成形等によってボディ12に固定されており、電極50は、概ねその表面(
図3では上面)のみが、ボディ12の天面120(
図1及び
図3参照)から露出する。電極50の表面は、天面120と概ね面一である。
【0050】
カバー11の各第2検知面S2は、対応する電極50の表面と概ね同形で、カバー11の正面から見て、電極50の表面と重なる領域である。操作体U1が、カバー11の第2検知面S2(又は操作板T1)に接触することで、電極50と操作体U1とによって構成されるコンデンサC4(
図1参照)の静電容量の変化を含むアナログの電気信号(第2信号)が、端子51を介して出力され得る。なお、
図1におけるコンデンサC4の一方の電極に接続されるダイオードの記号は、コンデンサC4に蓄積された静電電荷が上記の接地点側へのみ流れることを視覚的に図示したものであり、実際に存在するものではない。
【0051】
ところで、本実施形態の入力装置1は、
図1に示すように、第2検知面S2と交差する方向(ここでは略直交する方向)における一対の検知部5の位置を押圧面30の位置に揃えるように一対の検知部5を支持する、一対の壁部18を更に備えている。一対の壁部18は、ボディ12の一部として形成されている。各壁部18は、第2収容凹部122の底部に対応する。すなわち、各壁部18は、対応する検知部5を下側から持ち上げるように支持する。このように壁部18が設けられていることで、第2検知面S2と略直交する方向における検知部5の位置をハウジング10の表面側に近づけることができる。また感圧部2の厚み寸法が、クリック部3等に依存して、検知部5の厚み寸法よりも大きい場合でも、第2検知面S2と略直交する方向における検知部5の位置と押圧面30の位置とを揃えることができる。したがって、検知部5の感度の低下を抑制することができる。
【0052】
(2.5)制御部
入力システム100の制御部9は、例えば、CPU(Central Processing Unit)及びメモリを主構成とするマイクロコントローラにて構成されている。言い換えれば、制御部9は、CPU及びメモリを有するコンピュータにて実現されており、CPUがメモリに格納されているプログラムを実行することにより、コンピュータが制御部9として機能する。プログラムは、ここではメモリに予め記録されているが、インターネット等の電気通信回線を通じて、又はメモリカード等の記録媒体に記録されて提供されてもよい。
【0053】
制御部9は、入力装置1と電気的に接続されている。制御部9は、
図5に示すように、第1取得部91、第2取得部92、及び判定部93等を備えている。言い換えると、制御部9は、第1取得部91としての機能、第2取得部92としての機能、及び判定部93としての機能等を備えている。
【0054】
第1取得部91は、感圧部2の圧力センサ4から出力される第1信号を取得するように構成されている。第2取得部92は、2つの検知部5から出力される第2信号を、それぞれ個別に取得するように構成されている。判定部93は、入力装置1から取得する第1信号及び第2信号に基づいて、操作体U1の操作状態を判定するように構成されている。
【0055】
感圧部2の圧力センサ4、及び2つの検知部5の静電容量を取得する方法として、様々な方法を採用でき、一例としては、スイッチドキャパシタ方式が利用できる。スイッチドキャパシタ方式では、コンデンサC1~C4に蓄積される電荷の量に基づいて、圧力センサ4及び2つの検知部5の静電容量(の変化)を検出する。制御部9は、例えばスイッチドキャパシタ方式を用いて、所定時間の間、各コンデンサに対して順番に、充電する充電処理と、放電させて蓄えられた電荷で判定用のコンデンサを充電する放電処理とを交互に繰り返し行う。判定用のコンデンサの両端電圧が規定値に達すると、放電処理を終了して充電処理を開始する。つまり、静電容量が大きいほど所定時間内に判定用のコンデンサの両端電圧が規定値に達した回数が増える。したがって、制御部9は、所定時間内に判定用のコンデンサの両端電圧が規定値に達した回数により、静電容量の変化を判定できる。
【0056】
ここで本実施形態の判定部93は、感圧部2、及び2つの検知部5の静電容量の変化に関する検出結果の組み合わせから、操作体U1の様々な操作状態(操作入力)を判定する。検出結果は、例えば、感圧部2へのタッチ、プッシュ、及びクリック、並びに、各検知部5へのタッチを含み得る。感圧部2へのプッシュは、タッチよりも荷重が大きく(静電容量の変化が大きく)、かつ、接点がONに達していないクリック未満を意味する。
【0057】
ここで本実施形態の操作状態は、感圧部2に対する操作体U1の移動に関する方向性を含む。また本実施形態の操作状態は、第1操作過程、及び第2操作過程のうち、少なくとも一方の過程に関する状態を含む。第1操作過程は、操作体U1が押圧面30に近づき押圧面30に押圧(タッチ、プッシュ、又はクリック)が与えられるまでの操作過程である。第2操作過程は、押圧面30に押圧が与えられた後に操作体U1が押圧面30から離れるまでの操作過程である。
【0058】
具体的には、操作状態は、以下の7つの操作状態を含む。以下の操作状態は、単なる一例であり、限定されるものではない。判定部93は、以下の7つの操作状態のうち1つ以上の操作状態について判定可能であってもよい。例えば、判定部93は、操作体U1の操作状態が、第2操作状態であるか否かのみを判定するように設定されてもよいし、第2操作状態と第3操作状態のどちらであるかを判定するように設定されてもよい。
【0059】
第1操作状態は、
図7Aに示すように、操作体U1が、操作板T1を介して、2つの検知部5にほぼ同時にタッチし、かつ感圧部2をクリックする、一連の操作状態である。なお、操作板T1の裏面には突起T10があり、突起T10により第1検知面S1に押圧が与えられる。
【0060】
第2操作状態は、
図7Bに示すように、操作体U1が、操作板T1を介して、左側の検知部5に先にタッチしてから感圧部2をクリックし、さらに操作体U1が弧を描くように右側に移動して右側の検知部5にタッチする、一連の操作状態である。なお、操作体U1が弧を描くように移動することに伴って、操作板T1も、突起T10を支点として弧を描くように僅かに回転する。
【0061】
第3操作状態は、第2操作状態とは逆に、操作体U1が、操作板T1を介して、右側の検知部5から左側の検知部5に弧を描くようにタッチする、一連の操作状態である。
【0062】
第4操作状態は、
図7Cに示すように、操作体U1が、操作板T1を介して、左側の検知部5から、感圧部2、及び右側の検知部5へ、略スライド移動する、一連の操作状態である。要するに、操作体U1が、感圧部2に対してクリック操作を行わずに、タッチ(又はプッシュ)移動するのみの操作状態である。
【0063】
第5操作状態は、第4操作状態とは逆に、操作体U1が、操作板T1を介して、右側の検知部5から左側の検知部5に略スライド移動する、一連の操作状態である。
【0064】
要するに、判定部93は、感圧部2に対する操作の種別(タッチ、プッシュ、クリック)の判定だけでなく、感圧部2に対してどの方向(図示例では右、左、上)から操作を受けて、どの方向に離れていったか、方向性(操作の順番)の判定も行う。そして、制御部9は、その操作の種別と、操作体U1の移動に関する方向性に応じた制御信号を、他の回路モジュール等に送信可能となる。このように判定部93が構成されていることで、多様な操作状態に対応した処理を行うことができる。
【0065】
また判定部93は、上述した各検知部5へのタッチ判定について、規定値等を調整して感度を上げることで近接判定を行えてもよい。以下の第6及び第7操作状態は、近接判定に関する操作状態の例である。
【0066】
第6操作状態は、
図7Dに示すように、操作体U1が、左側の検知部5の頭上から斜めに感圧部2へ向かい、操作板T1を介して感圧部2をクリックし、さらに右側の検知部5の頭上に向かう、一連の操作状態(ホバー操作)である。要するに、操作体U1が、略V字状を描く、操作状態である。
【0067】
第7操作状態は、第6操作状態とは逆に、操作体U1が右側の検知部5の頭上から感圧部2へ向かい、操作板T1を介して感圧部2をクリックし、左側の検知部5の頭上に向かう、一連の操作状態である。
【0068】
要するに、第6及び第7操作状態では、判定部93は、左右どちらの検知部5がタッチされたかではなく、どちらの検知部5の側から近づき、又はどちらの検知部5の側へ遠ざかるかを判定する。このように判定部93が構成されていることで、さらに多様な操作状態に対応した処理を行うことができる。
【0069】
ただし、操作状態は、操作体U1の移動に関する方向性を含まなくてもよい。操作状態は、単に、操作体U1の相対的な位置(操作体U1の傾きでもよい)を含むものでもよい。以下の第8及び第9操作状態は、操作体U1の相対的な位置判定に関する操作状態の例である。
【0070】
第8操作状態は、操作体U1が、左側に傾斜した状態で、左側の検知部5と感圧部2とに位置する、という操作状態である。
【0071】
第9操作状態は、第8操作状態とは逆に、操作体U1が、右側に傾斜した状態で、右側の検知部5と感圧部2とに位置する、という操作状態である。
【0072】
要するに、第8及び第9操作状態に関して、判定部93は、操作体U1が、左右どちらの検知部5に偏った状態で感圧部2に押圧を与えたかを判定する。
【0073】
なお、
図7A~
図7Dは、入力装置1を側方から見た模式図である。
図7A~
図7Dでは、一例として、入力装置1の左右の寸法は、人の指先(操作体U1)の幅よりもやや小さい寸法であることを想定する。入力装置1の左右の寸法は、例えば、9mmである。しかし、この寸法に限定されるものではない。
【0074】
(2.6)動作
以下、入力装置1の動作について簡単に説明する。
【0075】
まず、操作体U1が感圧部2のクリック部3を押圧した場合について説明する。圧力センサ4は、クリック部3を支持しており、クリック部3の押圧面30の中央部分(頂部311付近)を押圧した場合、圧力センサ4に圧力がかかる。よって、クリック部3の押し込み量(ストローク)の増加に伴い、圧力センサ4(コンデンサC1及びC2)の静電容量は増加する。クリック部3の押し込み量(ストローク)が増加して所定値に達すると、クリック部3のドーム体31に弾性変形が生じ、クリック感が発生する。ドーム体31は、弾性変形した際に、第2電極7の接触部724上の絶縁シート16に接触し、コンデンサC3が形成され得る。つまり、クリック部3の頂部311と第2電極7との距離が大きく変化し、このような距離の大きな変化は、圧力センサ4の静電容量の大きな変化として現れる。接点のON後も更に追荷重を受けることで、コンデンサC3も含めた全体の合成静電容量の大きな変化が現れる。
【0076】
次に、操作体U1がいずれかの検知部5に接触(タッチ)した場合について説明する。各検知部5は、カバー11の正面から見て、対応する第2検知面S2と概ね重なるようにカバー11の裏側に配置されている。操作体U1が、例えば人の手指等のようにグランド電位の物体である場合、直接又は操作板T1越しに、第2検知面S2に接触(タッチ)することで、
図1に示すように、擬似的なコンデンサC4が形成される。その結果、検知部5(コンデンサC4)の静電容量の変化として現れる。
【0077】
制御部9は、感圧部2と各検知部5の静電容量の変化を監視して、入力装置1に行われた入力がどの操作状態に対応するか判定し、その操作状態に対応する制御信号を外部(他の回路モジュール等)に出力する。
【0078】
(2.7)使用方法
以下、入力装置1の使用方法について簡単に説明する。
【0079】
入力装置1によれば、感圧部2と一対の検知部5の静電容量の変化のバランスに基づいて、感圧部2を中心とする操作体U1の移動に関する方向性及び操作体U1の相対的な位置(傾き)について判定することができる。静電容量の変化のバランスは、例えば、感圧部2の両側にある一対の検知部5の静電容量の変化の大小関係により評価される。
【0080】
また入力装置1によれば、操作体U1の移動に関する方向性及び操作体U1の相対的な位置に加えて、感圧部2に対する押圧の程度(押し込み量)を判定することもできる。感圧部2の静電容量の変化が大きければ、押し込み量が大きいと考えられる。
【0081】
また、感圧部2の静電容量の変化に基づいて、クリック部3が弾性変形したかどうか(クリック感が発生したかどうか)を判定することができる。
【0082】
そして、本実施形態では、感圧部2と検知部5とが、互いに独立して並んで配置されているため、感圧部2におけるクリック感の発生が阻害されることを抑制しつつ、多様な操作にも対応可能にすることができる。
【0083】
また圧力センサ4が、静電容量式のセンサであるため、例えば光学式のセンサ、誘導式のセンサ、又は磁気式のセンサである場合に比べて、感度の高い入力装置1を提供できる。特に、入力装置1が、人の指先の幅程度の寸法である場合であっても、より精度の高い入力装置1を提供できる。同様に、各検知部5も、静電容量式のセンサであるため、感度の高い入力装置1を提供できる。特に、本実施形態では、圧力センサ4及び各検知部5が全て静電容量式のセンサであるため、圧力センサ4及び各検知部5から出力される信号について、共通する1つの制御部9で処理することができる。要するに、制御部の共通化を図ることができる。
【0084】
また入力装置1によれば、感圧部2と一対の検知部5とが、互いに独立してハウジング10内の第1収容凹部121及び一対の第2収容凹部122にそれぞれ収容されている。したがって、例えば、感圧部2の第1収容凹部121内に検知部5もまとめて収容される場合に比べて、防水性においても優れている。
【0085】
(3)変形例
上記実施形態は、本開示の様々な実施形態の一つに過ぎない。上記実施形態は、本開示の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。また、上記実施形態に係る入力システム100と同様の機能は、入力システム100の制御方法、コンピュータプログラム、又はコンピュータプログラムを記録した非一時的記録媒体等で具現化されてもよい。
【0086】
以下、上記実施形態の変形例を列挙する。以下に説明する変形例は、適宜組み合わせて適用可能である。なお、以下では、上記実施形態を「基本例」と呼ぶこともある。
【0087】
本開示における入力システム100の制御部9は、コンピュータシステムを含んでいる。コンピュータシステムは、ハードウェアとしてのプロセッサ及びメモリを主構成とする。コンピュータシステムのメモリに記録されたプログラムをプロセッサが実行することによって、本開示における入力システム100の制御部9としての機能が実現される。プログラムは、コンピュータシステムのメモリに予め記録されてもよく、電気通信回線を通じて提供されてもよく、コンピュータシステムで読み取り可能なメモリカード、光学ディスク、ハードディスクドライブ等の非一時的記録媒体に記録されて提供されてもよい。コンピュータシステムのプロセッサは、半導体集積回路(IC)又は大規模集積回路(LSI)を含む1ないし複数の電子回路で構成される。ここでいうIC又はLSI等の集積回路は、集積の度合いによって呼び方が異なっており、システムLSI、VLSI(Very Large Scale Integration)、又はULSI(Ultra Large Scale Integration)と呼ばれる集積回路を含む。さらに、LSIの製造後にプログラムされる、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、又はLSI内部の接合関係の再構成若しくはLSI内部の回路区画の再構成が可能な論理デバイスについても、プロセッサとして採用することができる。複数の電子回路は、1つのチップに集約されていてもよいし、複数のチップに分散して設けられていてもよい。複数のチップは、1つの装置に集約されていてもよいし、複数の装置に分散して設けられていてもよい。ここでいうコンピュータシステムは、1以上のプロセッサ及び1以上のメモリを有するマイクロコントローラを含む。したがって、マイクロコントローラについても、半導体集積回路又は大規模集積回路を含む1ないし複数の電子回路で構成される。
【0088】
また、入力システム100の制御部9における複数の機能が、1つの筐体内に集約されていることは入力システム100に必須の構成ではなく、入力システム100の構成要素は、複数の筐体に分散して設けられていてもよい。さらに、入力システム100の少なくとも一部の機能、例えば、入力システム100の一部の機能がクラウド(クラウドコンピューティング)等によって実現されてもよい。反対に、入力システム100の複数の機能が1つの筐体内に集約されていてもよい。
【0089】
(3.1)変形例1
以下、本変形例(変形例1)の入力装置1について、
図8A~
図9を参照しながら説明する。なお、以下では、基本例と共通する構成要素について、同じ参照符号を付して適宜にその説明を省略することもある。
【0090】
図8Aでは、説明の便宜上、基本例の入力装置1における感圧部2のうち、第1電極6と第2電極7(第1分割部71及び第2分割部72)のみを示す。
図8Aは、第1電極6の厚み方向における正面(言い換えると押圧面30の正面)から見た図であり、第1電極6と第2電極7とが重なる領域を、ドットハッチングで示している。
図8Aにおける第1領域R1は、第1電極6と第1分割部71とが重なる領域であり、第2領域R2は、第1電極6と第2分割部72とが重なる領域である。
【0091】
一方、
図8Bは、変形例1の入力装置1における感圧部2Aのうち、第1電極6と第2電極7A(第1分割部71A及び第2分割部72A)のみを示す。
図8Bは、第1電極6の厚み方向における正面から見た図であり、第1電極6と第2電極7Aとが重なる領域を、ドットハッチングで示している。
図8Bにおける第1領域R1は、第1電極6と第1分割部71Aとが重なる領域であり、第2領域R2は、第1電極6と第2分割部72Aとが重なる領域である。
【0092】
基本例では、第1分割部71及び第2分割部72は、第1領域R1の面積と第2領域R2の面積とが互いに概ね「均等」となるように規定されている。一方、変形例1では、第1分割部71A及び第2分割部72Aは、基本例と異なり、第1領域R1の面積と第2領域R2の面積とが「不均等」となるように規定されている。
【0093】
ここでは一例として、第1分割部71Aにおける端子711以外の部位が、略U字形の板状となるように形成されている。第2分割部72Aにおける舌部722、接触部724及び端子721は、基本例と同じ構造である。第2分割部72Aにおける本体部723は、第1分割部71AにおけるU字形の部位の開放された空間に、第1分割部71Aと接触することなく収まるように形成されている。
【0094】
図9は、基本例の入力装置1及び変形例1の入力装置1の、静電容量に関する特性を示すグラフである。点線の特性G1は、ストローク[μm](クリック部3の押し込み量:横軸)に対する荷重[N](左側の縦軸)の特性を示し、参考として図示する。特性G1は、基本例の入力装置1と変形例1の入力装置1とで概ね共通である。実線の特性G2は、基本例の入力装置1のように第1領域R1の面積と第2領域R2の面積とが概ね「均等」である場合における、ストローク[μm]に対する静電容量[pF](右側の縦軸)の特性を示す。一点鎖線の特性G3は、変形例の入力装置1のように第1領域R1の面積と第2領域R2の面積とが「不均等」である場合における、ストローク[μm]に対する静電容量[pF](右側の縦軸)の特性を示す。
【0095】
図9の例では、クリック部3のストロークがL0からL1に到達した時点で、クリック部3のドーム体31の中央部が反転して凸状態から凹状態になる。ストロークがL0からL1までの領域(感圧域)では、特性G1~G3は、緩やかなカーブを描くように漸増する。ドーム体31の中央部が凹状態になり、さらにクリック部3が押し込まれて、ストロークがL2に到達した時点でドーム体31の中央部が、絶縁シート16越しに第2電極7の接触部724に当たる(接点のON)。ストロークがL1からL2までの領域では、特性G1~G3は、漸減し、L2の手前で再び増加を開始する。ストロークがL2以降の領域(過圧域)において、特性G1~G3は、急激に増加する。
【0096】
ここで、次の表1は、「感圧域の感度」、「ON点の傾き」及び「過圧域の感度」の3つの項目について、
図9から読み取れる「均等」と「不均等」における大小関係を示す。
【0097】
【0098】
感圧域の感度について、「不均等」に対応する特性G3よりも、「均等」に対応する特性G2の方が、同じストロークでも静電容量の変化は大きく、感度が高い(高信頼性)ため、基本例では比較的操作力の軽いドーム体31を適宜に選択可能である。
【0099】
ON点の傾きについて、「均等」に対応する特性G2よりも、「不均等」に対応する特性G3の方が、大きいため、基本例よりも変形例1の方が検出精度の向上が図れ、またON点のずれを小さくできる。
【0100】
過圧域の感度について、「均等」に対応する特性G2よりも、「不均等」に対応する特性G3の方が、同じストロークでも静電容量の変化は大きく、感度が高い(高信頼性)ため、オーバーストロークについての信号出力も可能である。
【0101】
変形例1の構成によれば、基本例と同様に、第2電極7が、第1分割部71と第2分割部72とに2分割されているため、感圧部2の感度をより向上させることができる。例えば、手袋等を着用した状態で、入力装置1が指先(操作体U1)により操作されても、手袋の影響を受け難い。
【0102】
また変形例1の構成によれば、基本例と異なり、第1領域R1の面積と第2領域R2の面積とが不均等であるため、過圧域における感圧部2の感度について優れている。なお、不均等に関して、第1領域R1の面積と第2領域R2の面積との比率は、特に限定されないが、第1領域R1の面積は、例えば第2領域R2の面積の2倍以上であることが望ましい。
【0103】
ところで、変形例1における第1分割部71及び第2分割部72の「不均等」は、感圧部2自体の構造に関するものである。したがって、変形例1における入力装置1にとって、検知部5は、必須の構成ではない。すなわち、変形例1の入力装置1は、検知部5を備えてなくてもよい。
【0104】
(3.2)変形例2
以下、本変形例(変形例2)の入力装置1について、
図2B、
図3及び
図10を参照しながら説明する。なお、以下では、基本例と共通する構成要素について、同じ参照符号を付して適宜にその説明を省略することもある。
【0105】
基本例では、
図3に示すように、第2電極7の舌部722の表面を覆う絶縁シート16が設けられている。基本例では、クリック部3の押し込み量が増加して所定値に達すると、クリック部3のドーム体31に弾性変形が生じ、クリック感が発生する。そして、ドーム体31は、弾性変形した際に、ドーム体31の頂部311が絶縁シート16に接触し、コンデンサC3が形成され得る(
図2B参照)。
【0106】
一方、変形例2では、絶縁シート16が設けられていない点で、基本例と異なる。ただし、絶縁シート15は、基本例と同様に設けられている。そして、変形例2では、絶縁シート16が設けられていないことに起因して、ドーム体31が弾性変形した際に、頂部311は、直接、舌部722の接触部724に接触する。したがって、
図10が示す模式的な回路構成のように、基本例の
図2Bが示す模式的な回路構成とは異なって、コンデンサC3は形成されない。なお、
図10におけるコンデンサC2の一方の電極に接続されるダイオードの記号は、コンデンサC2及びC1に蓄積された静電電荷が上記の接地点側へのみ流れることを視覚的に図示したものであり、実際に存在するものではない。
【0107】
以下、絶縁シート16の有無によるクリック発生時における静電容量の変化について説明する。
【0108】
まず、基本例において、コンデンサC1の静電容量をCAとし、コンデンサC2の静電容量をCBとし、コンデンサC3の静電容量をCCとする。この場合、コンデンサC1~C3の合成容量CDは、コンデンサC2とC3とが並列であることから、CD=CA×(CB+CC)/(CA+CB+CC)で表される。
【0109】
ここで、説明の便宜上、静電容量CA、静電容量CB、及び静電容量CCが全て同じであると仮定する(すなわちCA=CB=CC)。絶縁シート16が有る基本例において、クリックの発生前では、CCはゼロであるため、合成容量CDは、コンデンサC1の静電容量CAの1/2倍となり、クリックの発生後では、コンデンサC1の静電容量CAの2/3倍となる。
【0110】
一方、絶縁シート16が無い変形例2において、クリックの発生前では、基本例と同様に、合成容量CDは、コンデンサC1の静電容量CAの1/2倍となる。ただし、クリックの発生後では、ドーム体31と第2電極7の舌部722とが導通状態になるため、コンデンサC1のみの回路となり、その結果、合成容量CDは、コンデンサC1の静電容量CAの1倍となる。
【0111】
つまり、クリックの発生前と発生後とにおける合成容量CDの変化は、基本例では静電容量CAの1/6倍であることに対して、変形例2では静電容量CAの静電容量CAの1/2倍である。つまり、変形例2の合成容量CDの変化の方が、基本例の合成容量CDの変化よりも大きい。このように絶縁シート16が無い変形例2では、基本例に比べて、クリックの発生時に合成容量CDの変化が急峻になる。そのため、変形例2では、基本例に比べて、実際にクリック感触が発生するタイミングと、制御部9でクリックを判定するタイミングと間の時間差を小さく抑えることができる。
【0112】
ところで合成容量CDは、静電容量CAと静電容量CBとのうち小さい方に対して支配的となる。そのため、例えば、コンデンサC1の電極が大きくコンデンサC2の電極が小さくなるほど(変形例1で言えば第1領域R1の面積が大きく第2領域R2の面積が小さくなるほど)、絶縁シート16の有無による合成容量CDの差は、大きくなることになる。要するに、変形例1と変形例2とを組み合わせれば、より基本例よりも、上記の時間差を小さく抑えることができる。
【0113】
(3.3)その他の変形例
基本例では、弾性体14と第2電極7との間に絶縁シート15が配置されていて、この場合、第2電極7に対する絶縁シート15の積層工程(ラミネーション)が容易となる。しかし、この限りではなく、例えば、弾性体14と絶縁シート15とが入れ替わって、絶縁シート15と第2電極7との間に、弾性体14が配置されてもよい。この場合、第2電極7に対する弾性体14の成形が容易となる。
【0114】
基本例では、絶縁シート15は、ボディ12とは別体で、シート状の1つの部材であり、弾性体14と第2電極7という他の2部材の間に配置される。しかし、絶縁シート15は、ボディ12と一体となって形成されてもよい。具体的には、弾性体14と対向するボディ12の天壁が、第2電極7の表面を覆い尽くすように成形された薄膜状の壁であり、その薄膜状の壁が、絶縁シートに相当してもよい。
【0115】
基本例では、検知部5の数は、2つであり、2つの検知部5が、感圧部2の左右の両側に配置されている。しかし、検知部5の数は、1つでもよいし、3つ以上でもよい。また2つの検知部5が、感圧部2の奥行き方向(前後方向)の両側に配置されてもよいし、3つ以上の検知部5が、感圧部2の周囲を囲むように配置されてもよい。また1又は2つの検知部5が、押圧面30の正面から見て、感圧部2の周囲を囲むようにC字状に形成されてもよい。
【0116】
検知部5の数が1つの場合、入力システム100は、検知部5から感圧部2へ向かう方向、検知部5の範囲外から感圧部2へ向かう方向、感圧部2から検知部5へ向かう方向、及び感圧部2から検知部5の範囲外へ向かう方向について判定可能でもよい。検知部5の範囲外から感圧部2へ向かう方向について、入力システム100は、例えば、検知部5で無検知のまま、感圧部2にてクリックを検知すれば、操作体U1が、検知部5の範囲外から感圧部2へ移動したと判定してもよい。また感圧部2から検知部5の範囲外へ向かう方向について、入力システム100は、例えば、感圧部2にてクリックを検知後、所定時間が経過しても検知部5にて検知が無ければ、操作体U1が、感圧部2から検知部5の範囲外へ移動したと判定してもよい。
【0117】
基本例では、入力システム100は、1つの入力装置1を備えているが、入力装置1を複数備えてもよい。複数の入力装置1が、所定の間隔でアレイ状に配列されてもよい。この場合、各入力装置1が備える検知部5の数は、異なってもよい。
【0118】
基本例では、検知部5の電極50は、矩形の板状に形成されていて、その電極50の表面は、感圧部2の表面(クリック部3の押圧面30)と概ね同一の平面上にある。しかし、例えば、検知部5の電極50は、
図11Aに示すように、電極50の表面が、感圧部2の表面と平行な仮想平面V1に対して交差(図示例では直交)するように配置されてもよい。
図11Aは、入力装置1を側方から見た模式図である。
【0119】
あるいは
図11Bに示すように、
図11Aの変形例と基本例とを組み合わせて、検知部5の電極50は、略L字状となるように形成されてもよい。
図11Bは、入力装置1を側方から見た模式図である。
図11A及び
図11Bの例では、入力装置1のハウジング10の側面に対する操作体U1の移動に関する方向性について検知可能となる。例えば指先(操作体U1)をハウジング10の左側面から上面に沿って移動させて感圧部2をクリックする、という操作状態についても検知可能となる。特に、
図11Bの構成では、入力装置1の全体としてのサイズを変更することなく、検知部5の検知面の面積を増やすことができる。この場合、操作体U1に相当する人差し指と親指とで、入力装置1を左右の両側から「摘む」という操作状態にも対応可能となる。
【0120】
基本例では、入力装置1上に操作板T1が配置されて、入力装置1に対する操作入力は、操作板T1越しに行われる。しかし、操作板T1は、配置されてなくてもよく、入力装置1に対する操作入力は、カバー11に直接的に行われてもよい。
【0121】
基本例における入力装置1では、インサート成形によって検知部5及び第2電極7がハウジング10内に固定されている成形品である。しかし、例えば、入力装置1は、その全体が多層基板によって形成されてもよい。例えば下層側のプリント基板に第2電極7と検知部5の電極50とが、導体パターン(銅箔パターン等)により形成されて、上層側のプリント基板を、下層側のプリント基板に組み合せることで、形成されてもよい。この場合、各電極上には、高誘電率の材質の層が配置されるように形成される。
【0122】
基本例において、弾性体14(導電弾性体)の代わりに、電気絶縁性を有する絶縁弾性体が設けられてもよい。この場合、絶縁弾性体は、例えば、誘電性エラストマのように、比較的高い誘電率を有することが好ましい。導電弾性体に代えて絶縁弾性体を設ける場合、絶縁シート15は省略可能である。
【0123】
(4)まとめ
以上説明したように、第1の態様に係る入力装置(1)は、感圧部(2、2A)と、検知部(5)と、を備える。感圧部(2、2A)は、クリック部(3)、及び圧力センサ(4)を有する。クリック部(3)は、押圧面(30)を有して、押圧面(30)へ押圧を与える操作体(U1)にクリック感を作用させる。圧力センサ(4)は、クリック部(3)の押圧面(30)とは反対側に配置される。検知部(5)は、押圧面(30)の正面から見たときに感圧部(2、2A)と並んで配置されて、検知面(第2検知面S2)に対する操作体(U1)の近接又は接触を検知する。第1の態様によれば、感圧部(2、2A)と検知部(5)とが並んで配置されているため、クリック感の発生が阻害されることを抑制しつつ、多様な操作にも対応可能にすることができる。多様な操作とは、例えば、検知部(5)に偏った位置で感圧部(2、2A)に押圧が与えられる操作であったり、検知部(5)から離れた位置で感圧部(2、2A)に押圧が与えられる操作であったり、検知部(5)の側から感圧部(2、2A)に近づく操作である。
【0124】
第2の態様に係る入力装置(1)に関して、第1の態様において、圧力センサ(4)は、静電容量式のセンサであることが好ましい。第2の態様によれば、圧力センサ(4)が例えば光学式のセンサ、誘導式のセンサ、又は磁気式のセンサである場合に比べて、感度の高い入力装置(1)を提供できる。特に、入力装置(1)が、人の指先の幅程度の寸法である場合であっても、より精度の高い入力装置(1)を提供できる。
【0125】
第3の態様に係る入力装置(1)に関して、第2の態様において、圧力センサ(4)は、第1電極(6)及び第2電極(7、7A)間における静電容量の変化を含む電気信号を出力することが好ましい。クリック部(3)は、ドーム状に形成されて、かつ押圧面(30)を表面とする導電性のドーム体(31)を有することが好ましい。第1電極(6)は、ドーム体(31)を介して上記押圧を受けて、第2電極(7、7A)に近づく方向に移動可能であることが好ましい。第3の態様によれば、ドーム体(31)によって良好なクリック感を作用させることができる。
【0126】
第4の態様に係る入力装置(1)に関して、第3の態様において、第2電極(7A)は、それぞれが第1電極(6)と対向する第1分割部(71A)及び第2分割部(72A)を含むことが好ましい。第1分割部(71A)及び第2分割部(72A)は、押圧面(30)の正面から見たときに、第1領域(R1)の面積と第2領域(R2)の面積とが不均等となるように規定されることが好ましい。第1領域(R1)は、押圧面(30)の正面から見たときに、第1電極(6)と第1分割部(71A)とが重なる領域である。第2領域(R2)は、押圧面(30)の正面から見たときに、第1電極(6)と第2分割部(72A)とが重なる領域である。第4の態様によれば、第2電極(7A)が第1分割部(71A)と第2分割部(72A)とに2分割されているため、感圧部(2A)の感度をより向上させることができる。例えば、手袋等を着用した状態で、入力装置(1)が指先(操作体U1)により操作されても、手袋の影響を受け難い。また第1領域(R1)の面積と第2領域(R2)の面積とが不均等であるため、過圧域を超えた時の感圧部(2A)の感度について優れている。
【0127】
第5の態様に係る入力装置(1)に関して、第3の態様又は第4の態様において、第1電極(6)は、その厚み方向に貫通する孔部(61)と、突起部(62)と、を有することが好ましい。突起部(62)は、孔部(61)の周囲に配置され、かつクリック部(3)に近づく方向に突出する。ドーム体(31)は、突起部(62)に載せ置かれる周縁部(310)と、押圧に応じてドーム体(31)が座屈した時に、孔部(61)を通り第2電極(7、7A)に近づく頂部(311)と、を有することが好ましい。第5の態様によれば、第1電極(6)が突起部(62)を有していることで、様々な形状、寸法のドーム体(31)に対して、座屈した際に、頂部(311)が孔部(61)の縁に接触する可能性を低減できる。言い換えると、ドーム体(31)の種類に依存せずに、第1電極(6)について部材の共通化を図ることができる。
【0128】
第6の態様に係る入力装置(1)に関して、第1~第5の態様のいずれか1つにおいて、検知部(5)は、静電容量式のセンサであることが好ましい。第6の態様によれば、検知部(5)が例えば光学式のセンサ、誘導式のセンサ、又は磁気式のセンサである場合に比べて、感度の高い入力装置(1)を提供できる。特に、入力装置(1)が、人の指先の幅程度の寸法である場合であっても、より精度の高い入力装置(1)を提供できる。さらに、圧力センサ(4)も静電容量式のセンサであれば、圧力センサ(4)及び検知部(5)から出力される信号について、共通する1つの制御部(9)で処理することができる。
【0129】
第7の態様に係る入力装置(1)は、第1~第6の態様のいずれか1つにおいて、検知部(5)を、2つ備えることが好ましい。2つの検知部(5)は、押圧面(30)の正面から見たときに、感圧部(2、2A)を間に挟むように感圧部(2、2A)の両側に並んで配置されていることが好ましい。第7の態様によれば、さらに多様な操作にも対応可能にすることができる。
【0130】
第8の態様に係る入力装置(1)は、第1~第7の態様のいずれか1つにおいて、検知面(第2検知面S2)と交差する方向における検知部(5)の位置を押圧面(30)の位置に揃えるように検知部(5)を支持する壁部(18)を、更に備えることが好ましい。第8の態様によれば、検知部(5)の位置をハウジング(10)の表面側に近づけることができる。また感圧部(2、2A)の厚み寸法が、クリック部(3)等に依存して、検知部(5)の厚み寸法よりも大きい場合でも、検知部(5)の位置と押圧面(30)の位置とを揃えることができる。したがって、検知部(5)の感度の低下を抑制することができる。
【0131】
第9の態様に係る入力システム(100)は、第1~第8の態様のいずれか1つの入力装置(1)と、第1取得部(91)と、第2取得部(92)と、判定部(93)と、を備える。第1取得部(91)は、感圧部(2、2A)の圧力センサ(4)から出力される第1信号を取得する。第2取得部(92)は、検知部(5)から出力される第2信号を取得する。判定部(93)は、第1信号及び第2信号に基づいて、操作体(U1)の操作状態を判定する。第9の態様によれば、クリック感の発生が阻害されることを抑制しつつ、多様な操作にも対応可能な入力装置(1)を備えた入力システム(100)を提供できる。
【0132】
第10の態様に係る入力システム(100)に関して、第9の態様において、操作状態は、感圧部(2、2A)に対する操作体(U1)の移動に関する方向性を含むことが好ましい。第10の態様によれば、多様な操作状態に対応した処理を行うことができる。
【0133】
第11の態様に係る入力システム(100)に関して、第9の態様又は第10の態様において、操作状態は、第1操作過程、及び第2操作過程のうち、少なくとも一方の過程に関する状態を含むことが好ましい。第1操作過程は、操作体(U1)が押圧面(30)に近づき押圧面(30)に押圧が与えられるまでの操作過程である。第2操作過程は、押圧面(30)に押圧が与えられた後に操作体(U1)が押圧面(30)から離れるまでの操作過程である。第11の態様によれば、多様な操作状態に対応した処理を行うことができる。
【0134】
第2~8の態様に係る構成については、入力装置(1)に必須の構成ではなく、適宜省略可能である。また、第10~11の態様に係る構成については、入力システム(100)に必須の構成ではなく、適宜省略可能である。
【符号の説明】
【0135】
1 入力装置
2、2A 感圧部
3 クリック部
30 押圧面
31 ドーム体
310 周縁部
311 頂部
4 圧力センサ
5 検知部
6 第1電極
61 孔部
62 突起部
7、7A 第2電極
71、71A 第1分割部
72、72A 第2分割部
18 壁部
91 第1取得部
92 第2取得部
93 判定部
100 入力システム
S2 第2検知面(検知面)
R1 第1領域
R2 第2領域
U1 操作体