(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-28
(45)【発行日】2023-10-06
(54)【発明の名称】冷感生地、それを有する紡織品、及び冷感生地の製造方法
(51)【国際特許分類】
A41D 31/04 20190101AFI20230929BHJP
A41D 31/00 20190101ALI20230929BHJP
A41D 31/30 20190101ALI20230929BHJP
A41D 31/02 20190101ALI20230929BHJP
A47G 9/02 20060101ALI20230929BHJP
A47G 9/10 20060101ALI20230929BHJP
B32B 27/12 20060101ALI20230929BHJP
B32B 27/18 20060101ALI20230929BHJP
D06M 15/564 20060101ALI20230929BHJP
D06M 11/45 20060101ALI20230929BHJP
D06M 15/643 20060101ALI20230929BHJP
【FI】
A41D31/04 Z
A41D31/00 502B
A41D31/00 502E
A41D31/30
A41D31/00 502Q
A41D31/02 D
A47G9/02 G
A47G9/10 R
A47G9/02 K
B32B27/12
B32B27/18 Z
D06M15/564
D06M11/45
D06M15/643
(21)【出願番号】P 2021047001
(22)【出願日】2021-03-22
【審査請求日】2021-07-02
(73)【特許権者】
【識別番号】503247791
【氏名又は名称】アクトインテリア株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】519381458
【氏名又は名称】青島拜倫湾科技有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】荒川 康之
(72)【発明者】
【氏名】孫 石林
【審査官】岡崎 克彦
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3224649(JP,U)
【文献】特開2002-180308(JP,A)
【文献】特開2018-172845(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D 31/04
A41D 31/00
A41D 31/30
A41D 31/02
A47G 9/02
A47G 9/10
B32B 27/12
B32B 27/18
D06M 15/564
D06M 11/45
D06M 15/643
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
織布又は、不織布からなる生地と、前記生地の片面又は、両面に配された冷感材料層と、を有する冷感生地において、
前記冷感材料層は、接触冷感材料と、有機バインダと、を含有し、
前記有機バインダはポリウレタン、前記接触冷感材料はアルミナ、
前記有機バインダはシリコーン樹脂、前記接触冷感材料はコラーゲン及びメントール、
ないし前記有機バインダはアクリル樹脂、前記接触冷感材料はヒアルロン酸、デンプングラフトアクリル酸塩、及びポリエーテル改質シリコーンオイルであることを特徴とする冷感生地。
【請求項2】
前記冷感材料層は、更に消臭剤、柔軟剤、防カビ剤及び抗菌剤から選ばれた少なくとも1種を含有する、請求項1に記載の冷感生地。
【請求項3】
前記生地が前記織布からなり、
前記冷感材料層を5~200g/m
2含む、請求項1又は2に記載の冷感生地。
【請求項4】
前記生地が前記不織布からなり、
前記冷感材料層を5~300g/m
2含む、請求項1
又は2に記載の冷感生地。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載された冷感生地を有する紡織品。
【請求項6】
前記紡織品は、寝具用カバー、シーツ、布団、敷きパッド、枕、ラグ、クッション、ソファーカバー、タオル、カーテン、帽子、襟巻き、靴底シート、靴下、バンダナ、リストバンド、椅子シート、椅子カバー及び衣服から選ばれた1種である、請求項5に記載の紡織品。
【請求項7】
前記生地は、前記織布であり、
前記冷感生地は、前記紡織品の表生地として使用され、
前記冷感材料層は、前記表生地の裏面に塗布されている、請求項5又は6に記載の紡織品。
【請求項8】
前記冷感生地は、前記紡織品の表生地の内側に配置されており、
前記冷感材料層は、前記表生地に接する面に配されている、請求項5又
は6に記載の紡織品。
【請求項9】
織布又は、不織布からなる生地の片面又は、両面に、接触冷感材料と、有機バインダとを含有する混合液を塗布する塗布工程と、
前記生地に塗布された前記混合液を乾燥させて、前記生地に付着した冷感材料層を形成する乾燥工程と、を含み、
前記有機バインダはポリウレタン、前記接触冷感材料はアルミナ、
前記有機バインダはシリコーン樹脂、前記接触冷感材料はコラーゲン及びメントール、
ないし前記有機バインダはアクリル樹脂、前記接触冷感材料はヒアルロン酸、デンプングラフトアクリル酸塩、及びポリエーテル改質シリコーンオイルであることを特徴とする冷感生地の製造方法。
【請求項10】
前記混合液は、前記接触冷感材料を1~80質量%、前記有機バインダを1~80質量%含有する、請求項9に記載の冷感生地の製造方法。
【請求項11】
前記塗布工程は、前記乾燥工程後の前記冷感材料層の塗布量が5~300g/m
2となる量で、前記混合液を塗布する、請求項9又は10に記載の冷感生地の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷感材料層が塗布された冷感生地、それを有する紡織品、及び冷感生地の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
生地に身体が接触した時、冷感を感じるのは、皮膚から生地へ熱移動が生じるからであり、この熱移動量が多いほど冷感を良く感じることができる。
【0003】
冷感が得られる素材として、相転移物質を封入したマイクロカプセル(「PCM」と呼ばれている)を繊維に付着させてなるものがある。相転移物質は、固体状態から液体状態へ相転移する際に吸熱反応が生じるので、マイクロカプセル中の相転移物質が、体温によって温められて溶融すると、吸熱反応が生じて皮膚から生地へ熱移動が生じ、冷感を得ることができる。
【0004】
上記のような冷感を感じるものとして、例えば、下記特許文献1には、接触冷感評価値(Q-max)が0.2W/cm2以上である布からなる表生地と、前記表生地の裏側に配置された、融点が20~37℃である相転移物質を封入したマイクロカプセルを含有する相転移物質含有シートと、相転移物質含有シートの裏側に配置された中綿層と、中綿層の裏側に配置された布からなる裏生地とを備えた、繊維積層体が記載されている。また、前記中綿層は、例えば、ナイロン繊維やポリエステル繊維等の、クッション性を有する比較的肉厚のものが好ましいことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記繊維積層体によれば、就寝時など繊維積層体が身体と接触した際、マイクロカプセル中の相転移物質が、体温によって温められて溶融し、吸熱反応が生じて皮膚から生地へ熱移動が生じ、冷感を得ることができる。また、身体との接触により相転移物質が溶解して冷感が低下しても、寝返り等によって身体の接触位置が変化して、身体が接触しない状態になったときに、速やかに冷却して凝固するので、次に身体が接触したときに再び吸熱反応を生じさせることが可能となる。
【0007】
しかしながら、マイクロカプセルに封入された相転移物質は、相転移物質が溶解してしまうと、その部分の冷感は持続しないので、冷感の持続性を更に高めたいという要望があった。
【0008】
したがって、本発明の目的は、シンプルな構成であり、かつ冷感作用がより長く持続できるようにした冷感生地、それを有する紡織品、及び冷感生地の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の冷感生地は、織布又は、不織布からなる生地と、前記生地の片面又は、両面に配された冷感材料層と、を有する冷感生地において、前記冷感材料層は、接触冷感材料と、有機バインダと、を含有し、前記接触冷感材料は、吸水性樹脂、ジェル状物質、シリコーン樹脂、熱伝導性無機化合物、シリコーンオイル、メントール、キシリトール及び、シルクプロテインから選ばれた少なくとも1種を含有し、前記有機バインダは、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、及びシリコーン樹脂から選ばれた少なくとも1種を含有することを特徴とする。
【0010】
本発明の冷感生地によれば、冷感材料層として、吸水性樹脂、ジェル状物質、シリコーン樹脂、熱伝導性無機化合物、シリコーンオイル、メントール、及びキシリトールから選ばれた少なくとも1種からなる接触冷感材料を含有するものが使用される。このため、使用者の身体が冷感生地に接触したときに、接触冷感材料による吸熱が作用する。また、有機バインダは、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、及びシリコーン樹脂から選ばれた少なくとも1種を含有するものを使用することにより、冷感材料層が剥がれにくくなり、耐洗濯性に優れた冷感生地を得ることができる。
【0011】
本発明の冷感生地においては、前記吸水性樹脂は、ポリアクリル酸ナトリウム、メチルセルロース、エチルセルロース、セルロース・プロピレン・グラフト・コポリマー等のセルロースグラフト共重合体、澱粉・アクリル酸・グラフト・コポリマー、澱粉・アミド・グラフト・コポリマー等のデンプングラフト共重合体(淀粉接枝共聚物:Starch Graft Copolymer)から選ばれたものからなり、前記ジェル状物質は、キサンタンガム、ペクチン、澱粉類、セルロース、セルロース誘導体、ペクチン、寒天、コラーゲン、ヒアルロン酸、アルギン酸、キトサン等の天然高分子類又は、ポリビニルアルコール類、ポリプロピレン酸塩類、ポリ塩化ビニル類、ポリアクリルアミド類、ポリウレタン類、及びそれらの誘導体の合成樹脂から選ばれたものからなり、前記シリコーン樹脂は、熱伝導性シリコーン樹脂、メチルビニルポリシロキサンから選ばれたものからなる、前記熱伝導性無機化合物は、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、窒化アルミニウム、炭化ケイ素、二酸化ケイ素、炭酸カルシウム、酸化ナトリウムから選ばれたものからなり、前記シリコーンオイルは、メチルシリコーンオイル(methyl silicone)及び、改質シリコーンオイル(modified silicone)を用いることができ、前記改質シリコーンオイルは、アミノ改質シリコーンオイル(Amino modified silicone oil)、エポキシ改質シリコーンオイル(Epoxy modified silicone oil)、ポリエーテル改質シリコーンオイル(Polyether modified silicone oil)、カルボキシ改質シリコーンオイル(Carboxyl modified silicone oil)、ヒドロキシ改質シリコーンオイル(Hydroxyl modified silicone oil)から選ばれたものからなり、前記アルコール類は、メントール、キシリトールから選ばれたものからなることが好ましく、それによって接触冷感材料の冷感をより効果的に得ることができる。
【0012】
また、本発明の冷感生地においては、前記冷感材料層は、更に消臭剤、柔軟剤、防カビ剤及び抗菌剤から選ばれた少なくとも1種を含有することが好ましく、それによって、生地の消臭効果、柔軟性、防カビ効果を高めることができる。
【0013】
また、本発明の冷感生地においては、前記生地が織布からなり、前記冷感材料層を5~200g/m2含むことが好ましく、それによって、冷感作用を有する表生地として好適な冷感生地を提供することができる。
【0014】
また、本発明の冷感生地においては、前記生地が不織布からなり、前記冷感材料層を5~300g/m2含むことが好ましく、それによって、表生地の内側に配置するのに好適な冷感生地を提供することができる。
【0015】
一方、本発明の紡織品は、上記いずれかの冷感生地を有することを特徴とする。
【0016】
本発明の紡織品によれば、上記いずれかの冷感生地を有することにより、身体が接触したとき、冷感作用を長く持続させることができる。
【0017】
本発明の紡織品は、寝具用カバー、シーツ、布団、敷きパッド、枕、ラグ、クッション、ソファーカバー、タオル、カーテン、帽子、襟巻き、靴底シート、靴下、バンダナ、リストバンド、椅子シート、椅子カバー及び衣服から選ばれた1種であることが好ましく、それによって、それぞれの紡織品に持続性に優れた冷感作用を付与することができる。
【0018】
本発明の紡織品の一つの態様においては、前記冷感生地は、前記紡織品の表生地として使用され、前記冷感材料層は、前記表生地の裏面に塗布されていることが好ましく、それによって、冷感材料層による冷感作用を、身体と接触する表生地に直接付与することができ、冷感効果を高めることができる。
【0019】
本発明の紡織品の別の態様においては、前記冷感生地は、前記紡織品の表生地の内側に配置されており、前記冷感材料層は、前記表生地に接する面に塗布されていることが好ましく、それによって、冷感生地が表生地で覆われるので、冷感生地に冷感材料層を比較的多量に塗布した場合でも、相転移物質が表面に染み出すことを抑制できる。
【0020】
また、本発明の冷感生地の製造方法は、織布又は不織布からなる生地の片面又は両面に、接触冷感材料と、有機バインダとを含有する混合液を塗布する塗布工程と、前記塗布された混合液を乾燥させて、前記生地に付着した冷感材料層を形成する乾燥工程とを含み、前記接触冷感材料は、吸水性樹脂、ジェル状物質、シリコーン樹脂、熱伝導性無機化合物、シリコーンオイル、メントール、キシリトール及び、シルクプロテインから選ばれた少なくとも1種を含有し、前記有機バインダは、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、及びシリコーン樹脂から選ばれた少なくとも1種を含有することを特徴とする。
【0021】
本発明の冷感生地の製造方法によれば、接触冷感材料と、有機バインダとを含有する混合液を塗布して冷感材料層を形成することにより、冷感作用の持続性に優れた冷感生地を得ることができる。また、有機バインダとして、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、及びシリコーン樹脂から選ばれた少なくとも1種を含有するものを用いることにより、洗濯耐性に優れた冷感生地を得ることができる。
【0022】
本発明の冷感生地の製造方法においては、前記混合液は、前記接触冷感材料を1~80質量%、前記有機バインダを1~80質量%含有することが好ましく、それによって、生地に対して、冷感材料層を適切に塗布できると共に、冷感作用に優れた冷感材料層を形成できる。
【0023】
また、本発明の冷感生地の製造方法においては、前記塗布工程は、前記乾燥工程後の前記冷感材料層の塗布量が5~300g/m2となる量で、前記混合液を塗布することが好ましく、それによって、剥がれにくく、冷感作用に優れた冷感材料層を形成できる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、冷感材料層として、吸水性樹脂、ジェル状物質、シリコーン樹脂、熱伝導性無機化合物、シリコーンオイル、メントール、及びキシリトールから選ばれた少なくとも1種からなる接触冷感材料を含有する冷感生地を使用するので、冷感の持続時間を長くすることができる。また、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、及びシリコーン樹脂から選ばれた少なくとも1種を含有する有機バインダを使用することにより、冷感材料層が剥がれにくくなり、耐洗濯性に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明を敷きパッドに適用した一実施形態を示す部分断面図である。
【
図2】本発明を敷きパッドに適用した他の実施形態を示す部分断面図である。
【
図3】本発明を敷きパッドに適用した更に他の実施形態を示す部分断面図である。
【
図4】本発明を布団カバーに適用した一実施形態を示す部分断面図である。
【
図5】本発明を布団に適用した一実施形態を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の冷感生地は、織布又は、不織布からなる生地と、該生地の片面又は、両面に塗布された冷感材料層とを有する。
【0027】
上記織布としては、例えば、綿、麻、絹、ウールなどの天然繊維や、レーヨン、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリ乳酸などの化学繊維、及びそれらの混成物からなる生地が用いられ、生地の種類としては、例えば編地(knitted fabric)や織地(woven fabric)が挙げられる。
【0028】
上記不織布としては、例えば、綿、麻、絹、ウールなどの天然繊維や、レーヨン、ナイロン、ポリエチレン、ポリエステルなどの化学繊維、及びそれらの混成物からなる不織布が用いられる。上記不織布は、乾式法、湿式法、スパンボンド法、スパンレース法、サーマルボンド法、ニードルパンチ法等の、周知の方法で製造することができる。
【0029】
織布又は、不織布からなる生地の目付量としては、10~500g/m2であることが好ましく、20~300g/m2であることがより好ましい。
【0030】
冷感材料層は、接触冷感材料と、有機バインダとを含有する。
【0031】
接触冷感材料としては、吸水性樹脂、ジェル状物質、シリコーン樹脂、熱伝導性無機化合物、シリコーンオイル、メントール、キシリトール及び、シルクプロテインから選ばれた少なくとも1種を含有するものが用いられる。
【0032】
吸水性樹脂としては、例えば、ポリアクリル酸ナトリウム、メチルセルロース、エチルセルロース、セルロース・プロピレン・グラフト・コポリマー、澱粉・アクリル酸・グラフト・コポリマーなどが好ましく用いられる。
【0033】
ジェル状物質としては、例えば、キサンタンガム、ペクチン、澱粉、セルロース、セルロース誘導体、ペクチン、寒天、コラーゲン、ヒアルロン酸、アルギン酸、キトサン等の天然高分子類や、例えば、ポリビニルアルコール、ポリプロピレン酸塩、ポリ塩化ビニル、ポリアクリルアミド類、ポリウレタン、及びそれらの誘導体等の合成樹脂が好ましく用いられる。
【0034】
シリコーン樹脂としては、例えば、熱伝導性シリコーン樹脂、メチルビニルポリシロキサンなどが好ましく用いられる。熱伝導性シリコーン樹脂は、例えば、シリコーン樹脂にカーボンブラック、アルミナ等の熱伝導材料が分散されたものである。
【0035】
熱伝導性無機物質は、例えば、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、窒化アルミニウム、炭化ケイ素、二酸化ケイ素、炭酸カルシウム、酸化ナトリウム等が好ましく用いられる。
【0036】
シリコーンオイルは、例えば、液状のポリシロキサン(polysiloxane)である。シリコーンオイルは、メチルシリコーンオイル(methyl silicone)と改質シリコーンオイル(modified silicone)を用いることができる。
【0037】
改質シリコーンオイルは、アミノ改質シリコーンオイル(Amino modified silicone oil)、エポキシ改質シリコーンオイル(Epoxy modified silicone oil)、ポリエーテル改質シリコーンオイル(Polyether modified silicone oil)、カルボキシ改質シリコーンオイル(Carboxyl modified silicone oil)、ヒドロキシ改質シリコーンオイル(Hydroxyl modified silicone oil)などが挙げられる。
【0038】
シリコーンオイルは、例えば、改質ヒドロキシポリシロキサン(Modified hydroxypolysiloxane)とエポキシポリエーテルシリコーンオイル(Epoxy polyether silicone oil)との混合物に、乳化剤(Emullsifeier)を加えて作成することもできる。
【0039】
有機バインダとしては、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、及びシリコーン樹脂から選ばれた少なくとも1種が好ましく用いられる。これによって、冷感材料層が生地から剥がれにくくすることができ、耐洗濯性を高めることができる。
【0040】
本発明の冷感生地において、前記冷感材料層は、更に消臭剤、柔軟剤、防カビ剤及び抗菌剤から選ばれた少なくとも1種を含有することが好ましい。消臭剤としては、例えば珪酸塩類などを用いることができる。柔軟剤としては、例えばシリコーン樹脂類などを用いることができる。防カビ剤としては、例えば、ビフェニル、OPP(o-phenylphenol,)などの有機防カビ剤や、過硫酸アンモニウム、リン酸カルシウム、銀イオン化合物などの無機防カビ剤や、マスタードエクストラクト(Mustard extract)、ヨモギなどの天然防カビを用いることができる。
【0041】
抗菌剤としては、天然抗菌剤、有機抗菌剤及び、無機抗菌剤を用いることができる。天然抗菌剤としては、例えば、キトサン類等が挙げられる。有機抗菌剤としては、第4級アンモニウム塩類(Quaternary ammonium salt)、有機金属類、ビグアニド類(Biguanide)、ピリジン類、イミダゾール類、チアゾール類、ハロゲン、エステル等が挙げられる。無機抗菌剤としては、例えば、金属イオンを含む抗菌剤等が挙げられる。
【0042】
また、本発明の冷感生地の製造方法は、織布又は、不織布からなる生地の片面又は、両面に、接触冷感材料と、有機バインダとを含有する混合液を塗布する塗布工程と、塗布された混合液を乾燥させて、生地に付着した冷感材料層を形成する乾燥工程とを含んでいる。
【0043】
混合液は、接触冷感材料を、好ましくは1~80質量%、より好ましくは5~40質量%含んでいる。更に、有機バインダを、好ましくは1~80質量%、より好ましくは5~50質量%含んでいる。
【0044】
更に、混合液は、消臭剤を1~5質量%、柔軟剤を1~5質量%、防カビ剤を0.5~2質量%含有することが好ましい。
【0045】
混合液の調製方法は、特に限定されないが、例えば下記の工程が採用できる。
(1)有機バインダを、調整桶にいれて、約300~500回転/分のスピードで混合する。
(2)有機バインダが入っている調整桶に接触冷感材料を入れて約5分間混合する。
(3)有機バインダ及び接触冷感材料が入っている調整桶に、消臭剤、防カビ剤、柔軟剤、抗菌剤等を入れて、約3分間混合する。
(4)必要により、水、増粘剤、目詰まり防止剤を適量添加する。
【0046】
混合液の塗布は、浸漬、噴霧、コーティング、印刷、射出成形などの方法で行うことができる。
【0047】
印刷は、例えばシルクスクリーン印刷機を用いて行うことできる。生地の布面に対する混合液の印刷面積は、例えば20~100%にすることができる。シルクスクリーンの孔サイズ(スクリーン・メッシュ・ナンバー)は、20~300網目が好ましく用いられる(網目とは、1インチ(2.54cm)の中に何本の網目が通っているかを表す値)。
【0048】
混合液の塗布量は、後の乾燥工程を経た乾燥重量として、生地として織布を用いる場合は、5~200g/m2の量で塗布することが好ましく、5~120g/m2の量で塗布することがより好ましい。それによって、冷感作用を有する表生地として好適な冷感生地を提供することができる。
【0049】
また、生地として不織布を用いる場合は、5~300g/m2の量で塗布することが好ましく、5~200g/m2の量で塗布することがより好ましい。それによって、表生地の内側に配置するのに好適な冷感生地を提供することができる。
【0050】
生地の布面に混合液を塗布した後、例えば熱風乾燥、ホットプレス、超音波、蒸気乾燥、遠赤外線加熱、真空乾燥加熱などの方法で、好ましくは50~180℃にて乾燥を行う。これによって、接触冷感材料が、有機バインダを介して結合して、生地表面に接合された冷感材料層が形成される。
【0051】
こうして得られた本発明の冷感生地は、身体が接触したとき、接触冷感材料による吸熱が作用する。また、有機バインダとして、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、及びシリコーン樹脂から選ばれた少なくとも1種を含有するものを使用することにより、冷感材料層が剥がれにくくなり、耐洗濯性に優れた冷感生地を得ることができる。
【0052】
次に、上記冷感生地を用いた本発明の紡織品について説明する。本発明の紡織品としては、例えば、寝具用カバー、シーツ、布団、敷きパッド、枕、ラグ、クッション、ソファーカバー、タオル、カーテン、帽子、襟巻き、靴底シート、靴下、バンダナ、リストバンド、椅子シート、椅子カバー、衣服、座布団、インナーなどが挙げられる。これらの紡織品に上記冷感生地を配置する層構造としては、例えば
図1~5に示す構造が採用できる。
【0053】
図1は、敷きパッドに適用した一実施例を示し、この敷きパッド10は、表生地11と、裏生地12との間に、中わた13が配置され、各層がキルティング、接着等の方法で一体化された構造をなしている。そして、表生地11の裏面に、冷感材料層14が形成されており、この表生地11が、本発明の冷感生地を構成している。なお、表生地11は織布で構成されている。この敷きパッド10によれば、表生地11の裏面に冷感材料層14が形成されているので、表生地11を通して冷感材料層14に熱が伝達されやすくなり、冷感効果を高めることができる。
【0054】
図2は、敷きパッドに適用した他の実施例を示している。なお、以下の実施例においては、実質的に同じ部分には同じ符号を付して、その説明を省略することにする。この敷きパッド20は、
図1の実施例とほぼ同じ構造をなしているが、冷感材料層14が表生地11の表面側に形成されている点が、
図1の実施例と相違している。この敷きパッド20では、冷感材料層14が表生地11の表面側に形成されている身体が冷感材料層14に直接接触することになるので、冷感効果をより高めることができる。
【0055】
図3は、敷きパッドに適用した更に他の実施例を示している。この敷きパッド30は、表生地11の内側に、不織布15が配置され、この不織布15の表生地11側の面に、冷感材料層14が形成されている。そして、不織布15と裏生地12との間に中わた13が配置されている。この敷きパッド30では、表生地11の表面に身体が接触したとき、表生地11を通して、不織布15の表生地11側の面に形成された冷感材料層14に熱が伝わり、冷感効果を得ることができる。そして、表生地11の内側に配置された不織布15に冷感材料層14を形成することにより、表生地11の肌触りを損なうことがなく、冷感
材料層14を比較的多量に塗布形成しても、相転移物質の表生地11表面への染み出しなどを抑制できる。
【0056】
図4は、布団カバーに適用した他の実施例を示している。この布団カバー40は、表生地11と、裏生地12とが袋状に形成されており、裏生地12の内側に冷感材料層14が形成されている。この布団カバー40で布団を包んで使用することにより、身体が布団カバー40の裏生地12の表面に接触すると、裏生地12を通して冷感材料層14に熱が伝わり、冷感作用がもたらされる。
【0057】
図5は、布団に適用した他の実施例を示している。この布団50は、表生地11と裏生地12との間に、中わた13が配置されている。そして、裏生地12の内面に冷感材料層14が形成されている。使用者の身体が布団50の裏生地12に直接又は、図示しない布団カバーを介して接触すると、裏生地12(又は、布団カバーの裏生地及び布団50の裏生地12)を介して冷感材料層14に熱が伝わり、冷感作用がもたらされる。
【0058】
尚、本発明の冷感生地は、冷感材料層14に相転移物質が含まれていてもよい。相転移物質は、たとえば、融点が20~39℃とするとよい。相転移物質は、たとえば、マイクロカプセルに封入して冷感材料層14に設けるとよい。相転移物質は、たとえば、混合液に10質量%以下添加して生地に塗布とすることによって設けるとよい。このように、相転移物質を設けることにより、より接触冷感の効果を向上させることができる。
【実施例】
【0059】
<試験例1>
[実施例1]
生地として、綿を100%含む織地を用いた。当該織地の目付量は、140g/m2であった。この生地を比較例1とした。
【0060】
混合液を高分子ポリウレタン20%、PCMマイクロカプセル3%、アルミナ15%、ポリウレタンバインダー40%、シリコーンオイル系柔軟剤2%、水20%の割合で調製した。生地への混合液の塗布は、生地を混合液にプリントにより行った。尚、冷感材料層の塗布量は、乾燥後の重量で30g/m2とした。このようにして実施例1の生地を得た。
【0061】
上記実施例1及び比較例1の冷感生地について、接触冷感評価値(Q-max)を測定した。ここで、接触冷感評価値(Q-max)とは、人がものに触れた瞬間の冷たさを移動した熱量で数値化したものであって、数値が大きいほど冷感を強く感じることができる。本発明において、接触冷感評価値(Q-max)は、温度20℃の環境下で、温度差20℃のセンサーにサンプルを接触させたときの熱の移動量を測定した値を意味する。
【0062】
接触冷感評価値(Q-max)は、比較例1では、0.35であり、実施例1では0.40であった。
<試験例2>
[実施例2]
生地として、ポリエチレンを50%、ポリアミドを50%含むニット生地を用いた。当該ニット生地の目付量は、200g/m2であった。この生地を比較例2とした。
【0063】
混合液をコラーゲン30%、ペパーミントオイル(メントール)5%、シリコーン樹脂バインダー10%、抗菌剤3%、水52%の割合で調製した。混合液は、増粘剤を添加し、粘度を調整した。生地への混合液の塗布は、生地を混合液にパディング(浸漬)することにより行った。この生地を乾燥することにより、冷感材料層を形成した。尚、冷感材料層の塗布量は、乾燥後の重量で15g/m2とした。このようにして実施例2の生地を得た。
【0064】
接触冷感評価値(Q-max)は、比較例1では、0.40であり、実施例1では0.45であった。
【0065】
<試験例3>
[実施例3]
生地として、再生セルロース繊維(レーヨン)を50%、ポリアミドを50%含むニット生地を用いた。当該ニット生地の目付量は、200g/m2であった。この生地を比較例3とした。
【0066】
混合液をデンプングラフト共重合体(デンプングラフトアクリル酸塩:Starch graft acrylate)20%、ヒアルロン酸5%、シロキサン改質化合物(三元共重合体エーテルブロックシリコーンオイル(ポリエーテル改質シリコーンオイル):Terpolyether block silicone oil)5%,アクリル酸バインダー20%、消臭剤としてケイ酸塩5%、水45%の割合で調製した。混合液は、増粘剤を添加し、粘度を調整した。生地への混合液の塗布は、混合液を生地にコーティングすることにより行った。この生地を乾燥することにより、冷感材料層を形成した。尚、冷感材料層の塗布量は、乾燥後の重量で35g/m2とした。このようにして実施例3の生地を得た。
【0067】
接触冷感評価値(Q-max)は、比較例1では、0.385であり、実施例1では0.430であった。
【符号の説明】
【0068】
10、20、30 敷きパッド
40 布団カバー
50 布団
11 表生地
12 裏生地
13 中わた
14 冷感材料層
15 不織布