(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-28
(45)【発行日】2023-10-06
(54)【発明の名称】積層体の製造方法
(51)【国際特許分類】
C03C 27/06 20060101AFI20230929BHJP
E06B 3/677 20060101ALI20230929BHJP
【FI】
C03C27/06 101Z
E06B3/677
(21)【出願番号】P 2021554210
(86)(22)【出願日】2020-09-29
(86)【国際出願番号】 JP2020036963
(87)【国際公開番号】W WO2021085013
(87)【国際公開日】2021-05-06
【審査請求日】2022-04-20
(31)【優先権主張番号】P 2019200258
(32)【優先日】2019-11-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020094970
(32)【優先日】2020-05-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】瓜生 英一
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 賢治
(72)【発明者】
【氏名】石橋 将
(72)【発明者】
【氏名】阿部 裕之
【審査官】玉井 一輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-323317(JP,A)
【文献】国際公開第2005/000762(WO,A1)
【文献】特開2002-321948(JP,A)
【文献】特開2013-047007(JP,A)
【文献】国際公開第2018/043376(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/019925(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 27/06
E06B 3/677
B29C 65/50
B32B 17/06
B32B 17/10
C03C 27/12
E06B 3/66
E06B 3/663
E06B 3/67
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層体の製造方法であって、
前記積層体は、
ガラスパネルユニットと、
中間膜と、
前記ガラスパネルユニットに前記中間膜を介して貼り合わせられた透明板とを備え、
前記ガラスパネルユニットは、
第一ガラスパネルと、
第二ガラスパネルと、
前記第一ガラスパネルと前記第二ガラスパネルとの間に位置する減圧空間とを有し、
前記ガラスパネルユニット、前記中間膜及び前記透明板を有する積層物をチャンバーに配置した後、前記チャンバーを減圧し、
続いて、ヒーターで前記積層物を挟んで圧縮することにより、減圧された前記チャンバーの内部において、前記ガラスパネルユニットと前記透明板とを前記中間膜を介して貼り合わせる、
積層体の製造方法。
【請求項2】
減圧された前記チャンバーの内部において、前記ガラスパネルユニットと前記透明板とを、加熱により軟化させた前記中間膜を介して貼り合わせ、この後、前記ガラスパネルユニット、前記中間膜及び前記透明板を前記チャンバーの内部に配置したまま、前記中間膜が硬化するまで、前記チャンバーの内部が減圧された状態を維持する、
請求項1に記載の積層体の製造方法。
【請求項3】
前記透明板の剛性は、前記第一ガラスパネル及び前記第二ガラスパネルの2枚のガラスパネルのうち、少なくとも前記透明板が前記中間膜を介して貼り付けられる一方のガラスパネルの剛性よりも、大きい、
請求項1又は請求項2に記載の積層体の製造方法。
【請求項4】
前記第一ガラスパネル及び前記第二ガラスパネルの2枚のガラスパネルのうち、少なくとも前記透明板が前記中間膜を介して貼り合わされる一方のガラスパネルの厚みが3mm以下である、
請求項1~3のいずれか1項に記載の積層体の製造方法。
【請求項5】
積層体の製造方法であって、
前記積層体は、
ガラスパネルユニットと、
中間膜と、
前記ガラスパネルユニットに前記中間膜を介して貼り合わせられた透明板とを備え、
前記ガラスパネルユニットは、
第一ガラスパネルと、
第二ガラスパネルと、
前記第一ガラスパネルと前記第二ガラスパネルとの間に位置する減圧空間とを有し、
前記積層体の製造方法は、
前記ガラスパネルユニットと前記透明板とが前記中間膜を介して貼り合わせられた積層物を準備し、
次に、前記積層物を減圧されたチャンバーの内部において加熱して前記中間膜を軟化させ
、
この後、前記積層物を前記チャンバーの内部に配置したまま、前記中間膜が冷却して硬化するまで、前記チャンバーの内部が減圧された状態を維持する、
積層体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般には、積層体の製造方法に関する。本開示は、詳細には、ガラスパネルユニットと、透明板と、中間膜とを備える積層体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、対向するガラスパネルの間に減圧空間を設けることで断熱性を向上させたガラスパネルユニットがある。例えば特許文献1には、二枚のガラス基板の間に空間が設けられた真空断熱ガラス窓ユニットが開示されている。
【0003】
ガラスパネルユニットは、断熱性及び強度を向上させることが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【0005】
本開示の目的は、優れた断熱性及び強度を有する積層体の製造方法を提供することにある。
【0006】
本開示の一態様に係る積層体の製造方法は、以下に示す構成を有する。前記積層体は、ガラスパネルユニットと、中間膜と、透明板とを備える。前記透明板は、前記ガラスパネルユニットに前記中間膜を介して貼り合わせられる。前記ガラスパネルユニットは、第一ガラスパネルと、第二ガラスパネルと、減圧空間とを有する。前記減圧空間は、前記第一ガラスパネルと前記第二ガラスパネルとの間に位置する。減圧されたチャンバーの内部において、前記ガラスパネルユニットと前記透明板とを前記中間膜を介して貼り合わせる。
【0007】
本開示の他の一態様に係る積層体の製造方法は、以下に示す構成を有する。前記積層体は、ガラスパネルユニットと、中間膜と、透明板とを備える。前記透明板は、前記ガラスパネルユニットに前記中間膜を介して貼り合わせられる。前記ガラスパネルユニットは、第一ガラスパネルと、第二ガラスパネルと、減圧空間とを有する。前記減圧空間は、前記第一ガラスパネルと前記第二ガラスパネルとの間に位置する。前記積層体の製造方法は、前記ガラスパネルユニットと、前記中間膜と、前記ガラスパネルユニットに前記中間膜を介して貼り合わせられた前記透明板とを含む積層物を減圧されたチャンバーの内部において加熱して前記中間膜を軟化させ、この後、前記積層物を前記チャンバーの内部に配置したまま、前記中間膜が冷却して硬化するまで、前記チャンバーの内部が減圧された状態を維持する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1Aは、第一実施形態に係る積層体の一例を示す概略の断面図である。
図1Bは、
図1Aに示す積層体が備えるガラスパネルユニットを示す概略の斜視図である。
【
図2】
図2は、同上の積層体の製造方法の一例を示す概略の断面図である。
【
図3】
図3は、同上の積層体の製造方法を示し、チャンバーの内部に積層物を配置した状態を示した概略の断面図である。
【
図4】
図4は、
図3に示すチャンバーを減圧した状態を示した概略の断面図である。
【
図5】
図5は、
図4に示す積層物を加熱した状態を示した概略の断面図である。
【
図6】
図6は、同上の積層体の製造方法に用いる貼合装置の斜視図である。
【
図7】
図7は、同上の貼合装置に透明板及び中間膜をセットした状態を示した斜視図である。
【
図8】
図8は、同上の貼合装置が有する一対の支持部材を第二位置に配置した状態を示した斜視図である。
【
図9】
図9は、同上の貼合装置にガラスパネルユニットをセットした状態を示した斜視図である。
【
図10】
図10は、同上の一対の支持部材を第三位置に配置した状態を示した斜視図である。
【
図11】
図11は、同上の一対の支持部材を第四位置に配置した状態を示した斜視図である。
【
図12】
図12は、同上の貼合装置で、透明板、中間膜及びガラスパネルユニットをプレスした状態を示した斜視図である。
【
図13】
図13は、第二実施形態の積層体の製造方法を示し、チャンバーの内部に積層物を配置した状態を示した概略の断面図である。
【
図14】
図14は、同上の積層物を加熱した状態を示した概略の断面図である。
【
図15】
図15は、第三実施形態に係る積層体の一例を示す概略の断面図である。
【
図16】
図16は、同上の積層体の製造方法の一例を示す概略の断面図である。
【
図17】
図17は、同上の積層体の製造方法を示し、チャンバーの内部に積層物を配置した状態を示した概略の断面図である。
【
図20】
図20は、第四実施形態の積層体の製造方法を示し、チャンバーの内部に積層物を配置した状態を示した概略の断面図である。
【
図21】
図21は、同上の積層物を加熱した状態を示した概略の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
1.第一実施形態
1-1.第一実施形態の概要
本開示の第一実施形態に係る積層体100の製造方法では、
図1Aに示す積層体100を製造する。積層体100は、ガラスパネルユニット10、中間膜30及び透明板20を備える。透明板20は、ガラスパネルユニット10に中間膜30を介して貼り合わされる。ガラスパネルユニット10は、第一ガラスパネル1、第二ガラスパネル2及び減圧空間3を有する。減圧空間3は、第一ガラスパネル1と第二ガラスパネル2との間に位置する。減圧されたチャンバー8(
図3参照)の内部において、ガラスパネルユニット10と透明板20とを中間膜30を介して貼り合わせる。
【0010】
この製造方法によれば、ガラスパネルユニット10と透明板20とが貼り合わされることで、積層体100の断熱性及び強度が向上する。また、ガラスパネルユニット10と透明板20との貼り合わせの際には、ガラスパネルユニット10がチャンバー8内の減圧された環境に配置される。このため、大気圧に起因するガラスパネルユニット10の撓みを低減し、この状態で、ガラスパネルユニット10と透明板20とを貼り合わせることができる。このため、撓みの小さい積層体100を製造することができる。
【0011】
1-2.第一実施形態の詳細
本実施形態の積層体100の製造方法では、
図1A及び
図2に示すように、ガラスパネルユニット10の第一ガラスパネル1の外面11と第二ガラスパネル2の外面12とのうち少なくとも一方と、透明板20とを、中間膜30を介して貼り合わせる。
【0012】
本開示における第一ガラスパネル1の外面11とは、第一ガラスパネル1における第二ガラスパネル2とは反対側に臨む面であり、ガラスパネルユニット10の第一ガラスパネル1側の面である。本開示における第二ガラスパネル2の外面12とは、第二ガラスパネル2における第一ガラスパネル1とは反対側に臨む面であり、ガラスパネルユニット10の第二ガラスパネル2側の面である。
【0013】
積層体100は、複数のスペーサ4を更に備える。複数のスペーサ4は、減圧空間3において第一ガラスパネル1と第二ガラスパネル2との間に設けられている。ガラスパネルユニット10と透明板20とを貼り合わせる際の圧力は、複数のスペーサ4の圧縮強度よりも小さい。本開示における「圧縮強度」とは、圧力(圧縮力)を受けて破壊するまでの最大強さを単位面積当たりの力で表した値である。
【0014】
本実施形態の製造方法によって得られる積層体100では、第一ガラスパネル1と第二ガラスパネル2との間に減圧空間3が設けられたガラスパネルユニット10(
図1B参照)に、中間膜30を介して透明板20が貼り付けられている(
図1A参照)。そのため、積層体100は、ガラスパネルユニット10と比べて、優れた断熱性及び強度を有する。
【0015】
また、本実施形態では、ガラスパネルユニット10と透明板20とを貼り合わせる際の圧力がスペーサ4の圧縮強度よりも小さい。このため、ガラスパネルユニット10と透明板20とを貼り合わせる際に、スペーサ4が押し潰されることを抑制することができる。
【0016】
スペーサ4が押し潰されると、減圧空間3が圧縮されて積層体100の断熱性が低下してしまう。また、スペーサ4が押し潰されると、積層体100の強度が低下してしまう。そのため、スペーサ4が押し潰されることを抑制することにより、積層体100の断熱性及び強度が低下することを抑制することができる。
【0017】
例えば、スペーサ4がステンレス材料などの金属製であって、スペーサ4の圧縮強度がガラス(第一ガラスパネル1又は第二ガラスパネル2)の圧縮強度以上である場合を想定する。この場合、ガラスパネルユニット10と透明板20とを貼り合わる際の圧力が必要以上に上がった際には、金属製のスペーサ4が第一ガラスパネル1又は第二ガラスパネル2を破壊してしまう恐れがある。しかし、本実施形態のスペーサ4は樹脂製であり、スペーサ4の圧縮強度が、ガラスの圧縮強度よりも小さい。このため、仮にガラスパネルユニット10と透明板20とを貼り合わせる際の圧力が必要以上に上がってしまったとしても、第一ガラスパネル1又は第二ガラスパネル2が破壊することが抑制される。なお、スペーサ4は樹脂製に限られず、例えば、セラミック製又は金属製等であってもよい。
【0018】
1-2-1.積層体
本実施形態に係る積層体100は、
図1Aに示すように、ガラスパネルユニット10と、透明板20と、中間膜30とを備える。これらの構成について以下に説明する。
【0019】
(1)ガラスパネルユニット
ガラスパネルユニット10は、
図1Bに示すように、第一ガラスパネル1と、第二ガラスパネル2とを有している。第一ガラスパネル1と第二ガラスパネル2とは、対向している。第一ガラスパネル1と第二ガラスパネル2とは、重なっている。
【0020】
ガラスパネルユニット10は、シール材5を更に有している。シール材5は、第一ガラスパネル1と第二ガラスパネル2との間に設けられている。本実施形態のシール材5は枠状であり、このシール材5によって、第一ガラスパネル1と第二ガラスパネル2とが気密に接合されている。そのため、ガラスパネルユニット10では、第一ガラスパネル1、シール材5及び第二ガラスパネル2が、この順に積み重なっている。シール材5は、例えば、後述する熱接着剤が硬化したものである。
【0021】
ガラスパネルユニット10は、減圧空間3を更に有している。減圧空間3は、第一ガラスパネル1と第二ガラスパネル2とシール材5とによって囲まれた空間である。
【0022】
ガラスパネルユニット10は、複数のスペーサ(ピラー)4を更に有している。複数のスペーサ4は、減圧空間3において、第一ガラスパネル1と第二ガラスパネル2との間に設けられている。これら複数のスペーサ4によって、第一ガラスパネル1と第二ガラスパネル2との間隔(隙間)が維持されている。なお、複数のスペーサ4は、省略可能である。
【0023】
ガラスパネルユニット10は、ガス吸着体6を更に有している。ガス吸着体6は、減圧空間3内に設けられている。このガス吸着体6によって、減圧空間3内の気体(ガス)を吸着することができる。なお、ガス吸着体6は、省略可能である。
【0024】
以下、ガラスパネルユニット10に含まれる第一ガラスパネル1、第二ガラスパネル2、シール材5、減圧空間3、スペーサ4及びガス吸着体6についてより詳しく説明する。
【0025】
(i)第一ガラスパネル
第一ガラスパネル1はガラス製の板材である。第一ガラスパネル1の平面視の形状は、矩形状である。第一ガラスパネル1の平面視の形状は、矩形状に限定されず、三角形以上の多角形状であってもよく、円形状でもよく、楕円形状であってもよい。第一ガラスパネル1は、ガラスパネルユニット10の外部空間に露出する面である外面11と、第二ガラスパネル2と対向する面である内面110(
図1A参照)とを含む。
【0026】
第一ガラスパネル1は、平坦な板状であってもよく、曲がった板状であってもよい。すなわち、第一ガラスパネル1の外面11は、平坦であってもよく、曲がっていてもよい。
【0027】
第一ガラスパネル1の材料の例には、ソーダライムガラス、高歪点ガラス、化学強化ガラス、無アルカリガラス、石英ガラス、ネオセラム及び物理強化ガラスが含まれる。第一ガラスパネル1の厚みは、特に限定されないが、例えば、1mm以上10mm以下である。
【0028】
第一ガラスパネル1の内面110には、低放射膜が設けられてもよい。その場合、低放射膜が減圧空間3内に位置する。低放射膜は、低放射性を有する金属を含む膜である。低放射膜は放射による伝熱を抑制する機能を有する。このため、第一ガラスパネル1の外面11に放射された光による熱が、減圧空間3に伝わることを抑制することができる。低放射性を有する金属の例には、銀が含まれる。
【0029】
(ii)第二ガラスパネル
第二ガラスパネル2は、ガラス製の板材である。第二ガラスパネル2の平面視の形状は、第一ガラスパネル1の平面視の形状と同じである。第二ガラスパネル2は、ガラスパネルユニット10の外部空間に露出する面である外面12と、第一ガラスパネル1と対向する面である内面120とを含む(
図1A参照)。
【0030】
第二ガラスパネル2は、平坦な板状であってもよく、曲がった板状であってもよい。すなわち、ガラスパネルユニット10は、平坦な板状であってもよく、曲がった板状であってもよい。ガラスパネルユニット10の第二ガラスパネル2の外面12は、平坦であってもよく、曲がっていてもよい。
【0031】
第二ガラスパネル2の材料の例には、ソーダライムガラス、高歪点ガラス、化学強化ガラス、無アルカリガラス、石英ガラス、ネオセラム、及び物理強化ガラスが含まれる。第二ガラスパネル2の材料は、第一ガラスパネル1の材料と同じであってもよく、異なっていてもよい。第二ガラスパネル2の厚みは、特に限定されないが、例えば、1mm以上10mm以下である。第二ガラスパネル2の厚みは、第一ガラスパネル1の厚みと同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0032】
(iii)シール材
シール材5は枠状の部材である(
図1B参照)。本実施形態では、第一ガラスパネル1及び第二ガラスパネル2が平面視矩形状であるため、シール材5は矩形の枠状の部材である。シール材5は、第一ガラスパネル1と第二ガラスパネル2との間に位置し、第一ガラスパネル1と第二ガラスパネル2とを気密に接合している。
【0033】
シール材5は、熱接着剤で形成される。熱接着剤としては、例えば、低融点ガラスフリット等のガラスフリットが挙げられる。低融点ガラスフリットの例には、ビスマス系ガラスフリット、鉛系ガラスフリット及びバナジウム系ガラスフリットが含まれる。シール材5は、これらの低融点ガラスフリットのうち一種以上を含有することができる。
【0034】
(iv)減圧空間
減圧空間3は、第一ガラスパネル1と、第二ガラスパネル2と、シール材5とで囲まれた空間である(
図1B参照)。詳細には、減圧空間3は、第一ガラスパネル1の内面110と、第二ガラスパネル2の内面120と、シール材5とで囲まれた、減圧された空間である。
【0035】
減圧空間3は、例えば、真空空間であることが好ましい。具体的には、減圧空間3は、真空度が0.1Pa以下に至るまで減圧された空間であることが好ましい。この場合、ガラスパネルユニット10の断熱性を向上させることができる。
【0036】
(v)スペーサ
スペーサ4は、
図1Bに示すように、減圧空間3において、複数設けられている。すなわち、複数のスペーサ4が、第一ガラスパネル1と第二ガラスパネル2との間に配置されている。複数のスペーサ4によって、第一ガラスパネル1と第二ガラスパネル2との間隔を維持することができる。このため、第一ガラスパネル1と第二ガラスパネル2との間隔を確実に確保することができ、減圧空間3の厚みを確保することができる。
【0037】
スペーサ4は円柱状の部材である。スペーサ4の高さ(厚み方向の長さ)は、第一ガラスパネル1及び第二ガラスパネル2間の間隔に応じて適宜設定される。すなわち、第一ガラスパネル1と第二ガラスパネル2間の間隔(減圧空間3の厚み)は、スペーサ4の高さによって規定される。スペーサ4の高さは、例えば、10μm以上1000μm以下である。スペーサ4の直径は、例えば、0.1mm以上10mm以下である。スペーサ4の一例として、直径が0.5mmであり、高さが100μmのスペーサ4が挙げられる。スペーサ4の形状は、円柱状に限定されず、角柱状であってもよく、球状であってもよい。
【0038】
スペーサ4は透明であることが好ましい。この場合、積層体100において、スペーサ4が目立つことを抑制することができ、積層体100の外観を向上させることができる。
【0039】
本実施形態のスペーサ4は、樹脂製であり、例えばポリイミド樹脂製であることが好ましい。この場合、スペーサ4の熱伝導率を抑えることができ、スペーサ4と接触している第一ガラスパネル1及び第二ガラスパネル2間で熱が伝わりにくくすることができる。
【0040】
(vi)ガス吸着体
ガス吸着体6は、気体分子を吸着する機能を有する。ガス吸着体6は、減圧空間3内に配置されている。そのため、ガス吸着体6によって、減圧空間3内のガスを吸着することができ、減圧空間3の真空度を向上させ、ガラスパネルユニット10の断熱性を向上させることができる。
【0041】
ガス吸着体6は、例えば金属ゲッタ材又は非金属ゲッタ材を含むことができる。金属ゲッタ材は、気体分子を化学的に吸着できる金属表面を有する金属製のゲッタ材である。金属ゲッタ材の例には、ジルコニウム系(Zr-Al、Zr-V-Fe等)のゲッタ材又はチタン系のゲッタ材等が含まれる。これらの金属ゲッタ材は、例えば、H2O、N2、O2、H2又はCO2等の気体分子を吸着することができる。また、これらの金属ゲッタ材を加熱して活性化させることにより、金属ゲッタ材の金属表面に吸着(化学吸着)していた気体分子を、金属ゲッタ材の内部に拡散させることができる。このため、ガス吸着体6が金属ゲッタ材を含むことにより、減圧空間3内のH2O、N2、O2、H2又はCO2等の気体分子を吸着することができる。
【0042】
非金属ゲッタ材は、気体分子を吸着することのできる多孔質構造を有する非金属製のゲッタ材である。非金属ゲッタ材の例には、ゼオライト系、活性炭素、酸化マグネシウム等が含まれる。ゼオライト系のゲッタ材は、イオン交換されたゼオライトを含み得る。この場合のイオン交換物質の例には、K、NH4、Ba、Sr、Na、Ca、Fe、Al、Mg、Li、H又はCu等が含まれる。これらの非金属ゲッタ材は、例えば、炭化水素系ガス(CH4又はC2H6等)、アンモニアガス(NH3)等の金属ゲッタ材が吸着できない気体分子を吸着することができる。また、これらの非金属ゲッタ材を加熱して活性化させることにより、非金属ゲッタ材の多孔質構造に吸着していた気体分子を、脱離させることができる。
【0043】
(vii)ガラスパネルユニットの製造方法
ガラスパネルユニット10は、例えば、以下の方法で製造することができる。
【0044】
まず、第二ガラスパネル2の内面120上に熱接着剤を枠状に配置する。次に、枠状の熱接着剤を挟むように、第一ガラスパネル1と第二ガラスパネル2とを重ねる。次に、第一ガラスパネル1と第二ガラスパネル2と枠状の熱接着剤で囲まれた空間を加熱する。この加熱は、例えば、第一ガラスパネル1と第二ガラスパネル2とが熱接着剤を介して配置された積層物を加熱炉によって加熱することで行われる。これにより、枠状の熱接着剤からシール材5が形成される。さらに第一ガラスパネル1、第二ガラスパネル2及び熱接着剤で囲まれた空間から気体を排出する。これにより、減圧空間3が形成され、ガラスパネルユニット10を製造することができる。なお、複数のスペーサ4及びガス吸着体6は、例えば、熱接着剤を挟んで第一ガラスパネル1と第二ガラスパネル2とを重ねる前において、第二ガラスパネル2の内面120に沿って配される。
【0045】
(2)透明板
図1Aに示す透明板20は、透光性を有する透明の板材である。透明板20によって積層体100の強度、断熱性及び遮音性等を向上できると共に、透明板20の形状又は機能等に応じて、積層体100に種々の機能を付与することができる。透明板20は、上述の通り、ガラスパネルユニット10の第一ガラスパネル1の外面11及び第二ガラスパネル2の外面12のうち少なくとも一方に設けられている。本実施形態の積層体100では、
図1Aに示すように、第一ガラスパネル1の外面11に透明板20が設けられている。そのため、透明板20とガラスパネルユニット10とは対向しており、また、透明板20と第一ガラスパネル1とは対向している。
【0046】
透明板20の平面視の形状は、例えばガラスパネルユニット10の平面視の形状と同じである。本実施形態の積層体100においては、透明板20の平面視の形状は、第一ガラスパネル1と同じである。上述の通り、ガラスパネルユニット10は、平坦であってもよく、曲がっていてもよいことから、透明板20も、平坦であってもよく、曲がっていてもよい。
【0047】
透明板20の厚みは、特に限定されないが、例えば0.5mm以上12mm以下であることが好ましく、1mm以上6mm以下であることがより好ましい。この場合、積層体100の強度を確保しながら、積層体100を軽量化することができる。
【0048】
透明板20の材質は、透光性を有する材料製であれば特に限定されない。透明板20は、例えば、ポリカーボネート製であることが好ましい。すなわち、透明板20がポリカーボネート板であることが好ましい。この場合、透明板20を軽量化することができ、それにより積層体100を軽量化することができる。
【0049】
透明板20は、例えば、ガラス製であることが好ましい。すなわち、透明板20がガラス板であることが好ましい。この場合、透明板20の強度を向上させることができ、それにより、積層体100の強度を向上させることができる。透明板20がガラス製である場合、透明板20の例には、アニールガラス、化学強化ガラス、及び物理強化ガラス等が含まれる。
【0050】
(3)中間膜
中間膜30は、上述の通り、ガラスパネルユニット10と透明板20との間に介在している。本実施形態の積層体100では、中間膜30は、第一ガラスパネル1と透明板20との間に介在している。
【0051】
積層体100においては、中間膜30によってガラスパネルユニット10と透明板20とが接着されている。本実施形態の積層体100では、第一ガラスパネル1と透明板20とが中間膜30によって接着されている。そのため、中間膜30は、ガラスパネルユニット10(第一ガラスパネル1)の全面に設けられていることが好ましく、また、透明板20の全面に設けられていることが好ましい。また、中間膜30の平面視の形状は、ガラスパネルユニット10(第一ガラスパネル1)と同じであることが好ましく、透明板20と同じであることも好ましい。
【0052】
中間膜30の厚みは、ガラスパネルユニット10(第一ガラスパネル1)と透明板20とを接着することができれば特に限定されないが、例えば0.3mm以上4mm以下であることが好ましく、0.3mm以上2mm以下であることがより好ましい。この場合、ガラスパネルユニット10で透明板20を保持しやすく、また、積層体100の透光性を維持しやすい。
【0053】
中間膜30の材質は、ガラスパネルユニット10(第一ガラスパネル1)と透明板20とを接着することができ、透光性を有していれば、特に限定されない。中間膜30は、例えば、透光性を有し、かつ、シート状の樹脂であることが好ましく、熱可塑性樹脂製のシートであることが好ましい。中間膜30は、単一のシート状の樹脂で構成されていてもよく、複数のシート状の樹脂の積層体で構成されていてもよい。中間膜30が複数のシート状の樹脂の積層体で構成されている場合、意匠性・デザイン性の向上のために、複数のシート状の樹脂の間に介在物が挟まれていてもよい。この介在物の例には、PET(Polyethylene Terephthalate)フィルム、金属箔、植物等が含まれる。
【0054】
中間膜30は、例えば、PVB(ポリビニルブチラール)樹脂製であることが好ましい。PVB樹脂は、ガラスパネルユニット10と透明板20との接着性に優れると共に、透明性に優れる。また、積層体100の強度を向上させることができる。また、積層体100の貫通防止性を向上させることができる。そのため、積層体100に高い強度が要求される場合には、中間膜30がPVB樹脂製であることが好ましい。
【0055】
中間膜30は、例えば、EVA(エチレン酢酸ビニル共重合)樹脂製であることが好ましい。EVA樹脂は、透明性及び柔軟性に優れる。また、積層体100の飛散防止性を向上させることができる。また、ガラスパネルユニット10と透明板20とを中間膜30によって比較的低温で、接着することができる。また、積層体100の搬送性を向上させることができる。そのため本実施形態では、中間膜30が、PVB樹脂及びEVA樹脂のうち少なくとも一つを含むことが好ましい。
【0056】
中間膜30は、例えば、液状の硬化性樹脂製であることも好ましい。液状の硬化性樹脂は、熱硬化性樹脂又は紫外線硬化性樹脂であることが好ましい。中間膜30が熱硬化性樹脂製である場合には、熱硬化性樹脂に加えて、中間膜30は硬化剤を含むことが好ましい。中間膜30が紫外線硬化性樹脂製である場合には、紫外線硬化性樹脂に加えて、光重合開始剤を含むことが好ましい。このような硬化性樹脂の例として、アクリル樹脂があげられる。すなわち、中間膜30はアクリル樹脂製であることも好ましい。
【0057】
本実施形態の積層体100は、例えば、以下の工程によって製造することができる。なお、積層体100を製造する方法は、以下の方法に限定されない。
【0058】
まず、上述のガラスパネルユニット10、透明板20及び中間膜30を用意する。次に、ガラスパネルユニット10と透明板20とを中間膜30を介して貼り合わせる(
図2参照)。詳細には、ガラスパネルユニット10の第一ガラスパネル1の外面11と第二ガラスパネル2の外面12とのうち少なくとも一方と、透明板20とを、中間膜30を介して貼り合わせる。
【0059】
本実施形態では、
図2に示すように、第一ガラスパネル1の外面11と、透明板20とを、シート状樹脂である中間膜30を介して貼り合わせる。それにより、
図1Aに示す積層体100が得られる。
【0060】
ガラスパネルユニット10と透明板20とを貼り合わせる際の圧力が大きすぎると、ガラスパネルユニット10が備える複数の樹脂製のスペーサ4が押し潰されてしまう。これにより、ガラスパネルユニット10が破損したり、ガラスパネルユニット10の断熱性、強度等が低下したりすることがある。
【0061】
この点、本実施形態の製造方法では、ガラスパネルユニット10と透明板20とを貼り合わせる際の圧力が、例えば0.1MPa以下であり、複数のスペーサ4の圧縮強度よりも小さい。そのため、複数のスペーサ4が押し潰されることを抑制することができる。本開示における「ガラスパネルユニット10と透明板20とを貼り合わせる圧力」とは、ガラスパネルユニット10と透明板20とを貼り合わせる際に、ガラスパネルユニット10及び透明板20に加えられる圧力である。
【0062】
本実施形態では、ガラスパネルユニット10と透明板20とを貼り合わせる際の圧力が、3気圧(約0.3Mpa)以下であることが好ましく、1気圧(約0.1Mpa)以下であることがより好ましい。貼り合わせの際の圧力の下限値は貼り合わせることができる限り特に限定しないが、例えば0.2気圧(約0.02Mpa)以上であることが好ましい。更に好ましくは0.3気圧(約0.03Mpa)以上である。この場合、複数の樹脂製のスペーサ4が押し潰されることをより抑制することができ、特にスペーサ4がポリイミド樹脂製である場合に、スペーサ4が押し潰されることを抑制することができる。すなわち、貼り合わせの際の圧力は、0.2気圧以上3気圧以下が好ましく、0.2気圧以上1気圧以下が更に好ましい。なお、ガラスパネルユニット10と透明板20とを貼り合わせる際の圧力は、限定されない。
【0063】
一般的に、PVB樹脂製の中間膜30を用いて接着するためには、オートクレーブ装置を用いた加熱及び加圧が必要となる。例えば、前記加圧時の圧力は通常13気圧(約1.3MPa)である。しかしながら、加熱及び加圧の条件によっては、ガラスパネルユニット10が備えるスペーサ4に変形が生じたり、第一ガラスパネル1又は第二ガラスパネル2等に破損又は変形等が生じたりする可能性がある。
【0064】
これに対して、PVB樹脂は、含水率を低減させることにより、オートクレーブ装置を用いず、加熱のみで接着することができる。そのため、PVB樹脂製の中間膜30を乾燥させてから、この中間膜30を介してガラスパネルユニット10と透明板20とを接着させることにより、加熱のみでガラスパネルユニット10と透明板20とを接着させることができる。
【0065】
中間膜30を乾燥させる方法としては、例えば、次に示す方法がある。この方法では、真空ポンプを接続し、内部にシリカゲルなどの乾燥材を入れた大型チャンバー内に、中間膜30のみをロール状又はフラットにした状態で設置し、大型チャンバー内を真空ポンプで排気して所定の真空度を保持する。この方法により、中間膜30を乾燥させることができ、中間膜30の含水率を低下させることができる。乾燥したPVB樹脂製の中間膜30は、ガラスパネルユニット10及び透明板20で挟まれた状態で加熱されることにより、ガラスパネルユニット10と透明板20とが、中間膜30によって接着される。
【0066】
中間膜30を乾燥させる他の方法としては、例えば、次に示す方法もある。この方法では、例えば、真空ポンプが接続された大型チャンバーの内部であってシリカゲル等の乾燥材が入れられた低湿環境に、中間膜30をガラスパネルユニット10及び透明板20で挟んだ状態で配置し、この後、低湿環境を真空ポンプで排気して所定の真空度を保持する。この方法により、例えば、PVB樹脂製の中間膜30を乾燥させることができ、中間膜30の含水率を低下させることができる。
【0067】
上記中間膜30単体及びガラスパネルユニット10と透明板20で挟んだ状態における中間膜30の各々の乾燥条件は、中間膜30の大きさや厚み等に応じて適宜設定されるが、例えばチャンバー内の圧力が0.1気圧(約0.01MPa)以下になった状態で、12時間以上、好ましくは48時間以上乾燥させることが好ましい。
【0068】
ガラスパネルユニット10及び透明板20に挟まれた中間膜30の乾燥を促進するためには、透明板20(又はガラスパネルユニット10)と、この透明板20が載せられる載置台との間に空間を設けることが好ましい。この場合、例えば、透明板20(又はガラスパネルユニット10)の四隅に板状のスペーサを設けることが好ましい。また、このスペーサの厚みは、例えば中間膜30の厚み以上であることが好ましい。すなわち、透明板20(又はガラスパネルユニット10)と載置台との間の空間は、中間膜30の厚み以上であることが好ましい。
【0069】
本実施形態では、ガラスパネルユニット10と透明板20とを貼り合わせる前に、中間膜30の含水率を、0.1重量%以上0.5重量%以下、好ましくは0.15重量%以上0.3重量%以下に乾燥させることが好ましい。上述の通り、中間膜30を乾燥させて含水率を低下させることにより、オートクレーブ装置を用いずに加熱のみで接着可能である。このため、中間膜30の含水率を0.1重量%以上0.5重量%以下にすることで、スペーサ4の変形や、第一ガラスパネル1及び第二ガラスパネル2の破損及び変形を抑制しながら、ガラスパネルユニット10と透明板20とをPVB樹脂製の中間膜30で貼り合わせることができる。
【0070】
中間膜30がPVB樹脂製である場合、中間膜30の含水率が0.1重量%より小さいと接着力が高くなり膜の貫通防止性が悪くなり、中間膜30の含水率が0.5重量%より大きいと、貼り合わせ後の中間膜30に濁りや気泡が生じることがある。したがって、PVB樹脂シート製の中間膜30の含水率を0.1重量%以上0.5重量%以下、好ましくは0.15重量%以上0.3重量%以下にすることで、中間膜30の貫通防止性を悪くすることや、濁りや気泡が生じることを抑制することができる。
【0071】
PVB樹脂製の中間膜30を用いてガラスパネルユニット10と透明板20とを貼り合わせる際、中間膜30に不均一な圧力が掛かることも中間膜30に濁りや気泡が生じる原因となり得る。そのため、ガラスパネルユニット10と透明板20とを貼り合わせる際には、中間膜30に均一に圧力が掛かるようにプレスすることが好ましい。
【0072】
一般的に、EVA樹脂製の中間膜30を用いる場合、PVB樹脂と比べて低い加熱温度であっても接着することができる。そのため、EVA樹脂製の中間膜30によってガラスパネルユニット10と透明板20とを接着することにより、ガラスパネルユニット10が備えるスペーサ4の変形、第一ガラスパネル1及び第二ガラスパネル2の変形及び破損等を抑制することができる。
【0073】
ガラスパネルユニット10の減圧空間3の気圧と、外部の大気圧との間には、気圧差が生じる。例えば、ガラスパネルユニット10の第一ガラスパネル1及び第二ガラスパネル2として、厚みの薄いもの(例えば3mm以下、さらに2mm以下)を適用した場合、前記気圧差により第一ガラスパネル1及び第二ガラスパネル2が、
図3に示すように大きく撓む現象が発生する場合がある。すなわち、スペーサ4間において、第一ガラスパネル1と第二ガラスパネル2とが減圧空間3側に凹状に撓む現象が発生することがある。
【0074】
そして、第一ガラスパネル1と第二ガラスパネル2とが撓んだガラスパネルユニット10の場合、ガラスパネルユニット10を通して見える像(透過像)及びガラスパネルユニット10で反射して見える像(反射像)が歪んで見える現象が発生する。また、第一ガラスパネル1と第二ガラスパネル2とが撓んだガラスパネルユニット10に透明板20を貼り合わせて積層体100にした際には、このガラスパネルユニット10の第一ガラスパネル1と第二ガラスパネル2の撓みが原因で中間膜30の層にも凹凸が生じることになり、積層体100の透明板20表面がフラットであったとしても、第一ガラスパネル1と第二ガラスパネル2との撓み及び中間膜30の凹凸に起因して積層体100として透過像、反射像ともに歪んで見える可能性がある。
【0075】
そこで、本実施形態では、例えば、以下に述べる真空チャンバー方式の貼り合わせ方法により、ガラスパネルユニット10と透明板20とを貼り合わせる。真空チャンバー方式の貼り合わせ方法では、ガラスパネルユニット10と透明板20とを貼り合わせるプロセスを、減圧されたチャンバー(真空チャンバー)8の内部で行う。真空チャンバー方式の貼り合わせ方法では、第一ガラスパネル1と第二ガラスパネル2がスペーサ4間で撓みがない、あるいは撓みが少ない状態で、中間膜30を介してガラスパネルユニット10と透明板20とを貼り合わせることができる。なお、ガラスパネルユニット10と透明板20とを貼り合わせる際におけるチャンバー8の内部は、少なくとも大気圧よりも小さい圧力まで減圧されればよく、ガラスパネルユニット10と透明板20とを貼り合わせる際におけるチャンバー8の内部の圧力は限定されない。
【0076】
真空チャンバー方式のプロセスは、例えば、
図3~
図5に示すように、チャンバー8内に、ガラスパネルユニット10、中間膜30及び透明板20を配置し、このチャンバー8の内部を排気しながら、ガラスパネルユニット10と透明板20とを中間膜30を介して貼り合わせることで行われる。
【0077】
図3~
図5に示す真空チャンバー方式のプロセスでは、チャンバー8と、チャンバー8の内部に設置されたヒーター装置75とを用いる。ヒーター装置75は、上下方向に間隔をあけて配置された一対のヒーター76を有している。
【0078】
図3~
図5に示す真空チャンバー方式のプロセスでは、まず、
図3に示すように、ガラスパネルユニット10、中間膜30及び透明板20を有する積層物41をチャンバー8に配置する。このとき、積層物41は、ガラスパネルユニット10が透明板20に中間膜30を介して積層された状態である。
【0079】
次に、ロータリーポンプ等でチャンバー8を減圧することで、
図4に示すように、第一ガラスパネル1及び第二ガラスパネル2の撓みを低減させる。この場合、チャンバー8の内部は、例えば、0.2気圧(約0.02MPa)に減圧される。
【0080】
続いて、
図5に示すように、積層物41の上下に位置する一対のヒーター76で積層物41を挟み込んで積層物41を加熱する。これにより、中間膜30が溶けて軟化する。また、積層物41が圧縮されて中間膜30内にある気泡が排出される。この場合、積層物41は、一対のヒーター76により、スペーサ4の圧縮強度より小さい力、例えば1気圧(約0.1MPa)の力で押される。
【0081】
続いて、一対のヒーター76により積層物41を圧縮した状態で、各ヒーター76の電源を切って積層物41の加熱を停止し、積層物41を冷却する。これにより、積層物41の温度が下がり、中間膜30が硬化し、ガラスパネルユニット10と透明板20とが中間膜30を介して一体化された積層体100が形成される。
【0082】
続いて、チャンバー8の内部の圧力を大気圧に戻して積層体100を取り出す。なお、チャンバー8の内部は、少なくとも、第一ガラスパネル1及び第二ガラスパネル2の撓みを低減させてから中間膜30が硬化するまで、減圧された状態が維持される。また、積層物41を加熱する手段は、ヒーター装置75に限定されない。例えば、積層物41は、赤外線により加熱されてもよい。
【0083】
真空チャンバー方式のプロセスは、
図6に示す貼合装置7を用いて実施することができる。貼合装置7は、減圧可能なチャンバー8内に設置される。貼合装置7は、プレス装置70を有している。プレス装置70は、積層物41(
図11参照)をプレスする。積層物41は、ガラスパネルユニット10と、透明板20と、これらガラスパネルユニット10と透明板20との間に挟まれた中間膜30とを備える。
【0084】
プレス装置70は、積層物41を支持する受台71と、受台71の上方において昇降し、受台71との間に積層物41を挟み込むプレス部材72とを有している。受台71は、例えば、板状に形成され、水平な上面で形成された支持面710を有している。プレス部材72は、例えば、板状に形成され、水平な下面で形成されたプレス面720を有している。
【0085】
貼合装置7は、昇降装置73を更に有している。昇降装置73は、受台71の上方においてガラスパネルユニット10を支持し、この状態でガラスパネルユニット10を昇降させる。昇降装置73は、一対の支持部材730を有している。一対の支持部材730は、左右方向に間隔をあけて位置している。ここで、左右方向は、
図7に示すように透明板20が受台71によって支持された状態において、透明板20の幅方向と平行な方向である。
【0086】
各支持部材730は、ベース731と、ベース731から他方の支持部材730に向かって突出した複数の支持部732とを有している。各支持部材730は、上下方向及び左右方向に移動可能である。各支持部材730は、例えば、ボールねじ、リニアアクチュエーター及びモーター等を備えた駆動部によって上下方向及び左右方向に駆動される。
【0087】
図6に示すプレス装置70のプレス部材72は、例えば、モーター等の原動機で発生した動力により昇降する。受台71及びプレス部材72の各々はヒーターを有している。プレス装置70は、受台71及びプレス部材72の各々がヒーターにより加熱された状態で、受台71の支持面710に載せられた積層物41をプレスする。
【0088】
貼合装置7を用いたガラスパネルユニット10と透明板20との貼り合わせは、例えば、以下に示すように行われる。なお、以下では、中間膜30としてPVB樹脂製の中間膜30を用いた場合について説明する。
【0089】
まず、
図7に示すように、受台71の支持面710に透明板20がその厚み方向の一方の面を下に向けた状態で載せられ、かつ、透明板20の上に中間膜30がその厚み方向の一方の面を下に向けた状態で載せられる。このとき、昇降装置73の各支持部材730は、中間膜30の上方から左右方向の外側に離れた第一位置に配される。
【0090】
次に、昇降装置73の各支持部材730が左右方向に駆動され、
図8に示す第二位置に配される。各支持部材730が第二位置に配された状態では、各支持部材730の複数の支持部732の先端部が、中間膜30の上方に位置する。
【0091】
次に、
図9に示すように、ガラスパネルユニット10がその厚み方向の一方の面を下に向けた状態で、各支持部材730の複数の支持部732の先端部に載せられる。このとき、ガラスパネルユニット10の下面となる第一ガラスパネル1の外面11又は第二ガラスパネル2の外面12は、中間膜30の上面から所定距離だけ上方に離れて位置し、ガラスパネルユニット10と中間膜30との間には、隙間74が形成される。このような隙間74が形成された状態で、チャンバー8の内部が減圧された状態にされることで、中間膜30の乾燥が促進される。なお、所定距離は、中間膜30の乾燥を促進させるため、1mm以上7mm以下が好ましく、3mm以上5mm以下がより好ましい。また、チャンバー8の内部は、隙間74が形成される以前から、減圧状態にされてもよいし、隙間74が形成された後から減圧状態にされてもよい。ただし、チャンバー8の内部は、少なくとも、後述の中間膜30が硬化するときまで減圧状態とされる。
【0092】
上述した中間膜30の乾燥が所定時間行われた後、昇降装置73の各支持部材730が下方に駆動され、
図10に示す第三位置に配される。各支持部材730が第三位置に配されたとき、各支持部材730の複数の支持部732の先端部は、中間膜30の上面に接する、又は中間膜30の上面の近傍に位置する。この場合、昇降装置73で支持されたガラスパネルユニット10が下降し、ガラスパネルユニット10の下面が中間膜30の上面の近傍に配される、又は中間膜30の上面に接する。
【0093】
次に、昇降装置73の各支持部材730が左右方向に駆動され、各支持部材730が
図11に示すように中間膜30の上方から左右方向の外側に離れた第四位置に配される。これにより、ガラスパネルユニット10は、中間膜30を介して透明板20だけで支持された状態になる。
【0094】
次に、プレス装置70のプレス部材72が下方に駆動され、
図12に示すようにプレス部材72のプレス面720と、受台71の支持面710とで、透明板20、中間膜30及びガラスパネルユニット10を備えた積層物41がプレスされる。この際、プレス部材72は、プレス部材72が有するヒーターによって加熱される。また、受台71は、受台71が有するヒーターによって加熱される。すなわち、積層物41は、加熱されたプレス部材72及び受台71によってプレスされる。このため、プレス部材72及び受台71の熱により中間膜30が軟化し、この中間膜30を介してガラスパネルユニット10と透明板20とが貼り合わされる。なお、中間膜30の軟化には、溶融も含まれる。
【0095】
プレス部材72及び受台71の各々のヒーターによる加熱は、プレス装置70による積層物41のプレスが開始される以前に開始されてもよいし、プレス装置70による積層物41のプレスが開始された後に開始されてもよい。また、ガラスパネルユニット10の熱伝導率は透明板20の熱伝導率よりも小さいため、プレス部材72及び受台71のうち、受台71だけがヒーターによって加熱されてもよい。
【0096】
上述したプレス装置70による積層物41のプレスの後、プレス部材72及び受台71の各々のヒーターによる加熱が停止される。これにより、中間膜30が冷却されて硬化し、ガラスパネルユニット10と透明板20とが中間膜30を介して一体化した積層体100が形成される。
【0097】
上述した真空チャンバー方式のプロセスにより、ガラスパネルユニット10の減圧空間3内と貼り合わせの際の外部雰囲気の気圧差を小さくすることができ、貼り合わせの際のガラスパネルユニット10の撓みを抑制することができる。
【0098】
特に、透明板20として、第一ガラスパネル1及び第二ガラスパネル2のうち少なくとも透明板20が貼り合わされるガラスパネルよりも剛性の大きいもの(例えばフロートガラス)を用いた場合に有利である。この場合、ガラスパネルユニット10と透明板20とが貼り合わされた後、積層体100を大気中に開放しても、積層体100に含まれるガラスパネルユニット10は透明板20の剛性によりスペーサ4間の撓みが抑制される。このため、積層体100として透過像、反射像ともに歪んで見えるという現象を改善することができる。なお、透明板20の剛性は、第一ガラスパネル1の剛性よりも大きく、かつ、第二ガラスパネル2の剛性よりも大きくてもよい。また、透明板20は、第一ガラスパネル1及び第二ガラスパネル2のうち透明板20が貼り合わされるガラスパネルと剛性が同じであってもよいし、このガラスパネルよりも剛性が小さくてもよい。
【0099】
また、上述した真空チャンバー方式のプロセスでは、チャンバー8内の湿度を低下させることができる。このため、中間膜30に濁りや気泡が生じることを抑制することができる。なお、中間膜30をチャンバー8内に入れる前に中間膜30を乾燥させてもよく、中間膜30をチャンバー8内に入れてから中間膜30を乾燥させてもよい。
【0100】
真空チャンバー方式で積層体100を作製する時のチャンバー8の内部の真空度は、例えば0.7気圧(約0.07MPa)以下、好ましくは0.5気圧(約0.05MPa)以下の減圧下で加熱して積層体100を作製する。
【0101】
なお、中間膜30としては、例えば、紫外線硬化性樹脂を使用することもできる。この場合、例えば、積層物41を減圧されたチャンバー8に入れた状態で、ガラスパネルユニット10と透明板20との間に配置された紫外線硬化性樹脂製の中間膜30に対して紫外線を照射することで、撓みの小さい積層体100を形成することができる。
【0102】
また、ガラスパネルユニット10と透明板20とを貼り合わせた後に、低温でオートクレーブ養生を行ってもよい。
【0103】
1-2-2.積層体の用途
積層体100の用途は、特に限定されないが、強度及び断熱性が要求される分野に適用することができる。例えば、自動車、鉄道車両、船舶、宇宙船、宇宙ステーション等の移動体に適用することができる。例えば積層体100を自動車に適用する場合には、フロントウインドウ、サイドウインドウ、リアウインドウ等に適用することができる。
【0104】
2.第二実施形態
次に
図13及び
図14に基づき、第二実施形態の積層体100の製造方法について説明する。なお、以下の第二実施形態の説明では、第一実施形態と共通する事項については、説明を省略する。
【0105】
本実施形態の積層体100の製造方法では、まず、ガラスパネルユニット10と透明板20とが中間膜30を介して貼り合わされた積層物41を準備する。次に、この積層物41を減圧されたチャンバー8の内部において加熱して中間膜30を軟化させる。そして、積層物41をチャンバー8の内部に配置したまま、中間膜30が冷却して硬化するまで、チャンバー8の内部が減圧された状態を維持する。
【0106】
本実施形態の積層体100の製造方法は、例えば、積層物41を、その表裏面に透明板20と略同じサイズのラバーヒーターを接触させた後にチャンバー8に入れ、ラバーヒーターのスイッチを入れて加熱を開始し、チャンバー8を減圧することで実施される。この時、チャンバー8内の圧力が例えば0.5気圧(0.05MPa)であればスペーサ4周りの撓み量は略半減し、更に中間膜30が軟化して第一ガラスパネル1及び第二ガラスパネル2の表面形状に追従するので、積層体100の撓み量も半減すると考えられる。この後、チャンバー8内の圧力を維持した状態でラバーヒーターをオフにして中間膜30を冷却すると撓みが改善された積層体100となる。その後、チャンバー8を大気圧に戻して積層体100を取り出す。
【0107】
本実施形態の積層体100の製造方法は、以下に示す第一工程、第二工程及び第三工程を含む。第一工程では、
図13に示すように、ガラスパネルユニット10と、中間膜30と、ガラスパネルユニット10に中間膜30を介して貼り合わせられた透明板20とを含む積層物41を準備する。この積層物41は、ガラスパネルユニット10と透明板20とが、第一実施形態の真空チャンバー方式以外のプロセスで貼り合わされた積層物である。例えば、この積層物41は、袋体を用いた真空バッグ方式のプロセスによって形成される。
【0108】
真空バッグ方式のプロセスでは、まず、袋体内に、ガラスパネルユニット10、中間膜30及び透明板20を配置する。次に袋体を排気する。これにより、収縮する袋体によって、ガラスパネルユニット10、中間膜30及び透明板20がプレスされ、ガラスパネルユニット10と透明板20とが中間膜30を介して貼り合わせられて、積層物41が形成される。なお、第一工程で準備される積層物41は、袋体を用いずに形成されてもよい。また、第一工程で準備される積層物41は、第一実施形態の真空チャンバー方式のプロセスで貼り合わされた積層物41(積層体100)であってもよい。
【0109】
第二工程は、第一工程の後に実行される。第二工程では、第一工程で準備した積層物41を、減圧されたチャンバー8の内部において加熱して、中間膜30を軟化させる。例えば、中間膜30がPVB樹脂製である場合、中間膜30は140℃以上30分程度加熱されることで、軟化する。第二工程では、チャンバー8の内部が減圧されることで、
図14に示すように、積層物41の第一ガラスパネル1及び第二ガラスパネル2の撓みが低減する。
【0110】
第三工程は、第二工程に続いて実行される。第三工程では、積層物41をチャンバー8の内部に配置したまま、積層物41の加熱を停止し、積層物41を冷却する。この際、チャンバー8の内部は、第二工程において軟化した中間膜30が硬化するまで、減圧された状態が維持される。このため、第一ガラスパネル1及び第二ガラスパネル2の撓みが低減した状態で、積層物41の中間膜30が硬化する。これにより、積層物41は、撓みの小さい積層体100になる。
【0111】
本実施形態の積層体100の製造方法は、例えば、
図13に示すチャンバー8と、このチャンバー8内に設置されたヒーター装置75とを用いて実施することができる。ヒーター装置75は、上下方向に間隔をあけて配置された一対のヒーター76を備えている。各ヒーター76は、例えば、ラバーヒーターである。
【0112】
ヒーター装置75は、例えば、以下に示すように用いられる。まず、
図13に示すように、チャンバー8の内部において、一対のヒーター76が配置され、これら一対のヒーター76の間に積層物41が配置される。このとき、一対のヒーター76のうちの一方のヒーター76が積層物41の厚み方向の一方の外面(透明板20の外面)に接し、かつ、他方のヒーター76が、積層物41の厚み方向の他方の外面(第二ガラスパネル2の外面12又は第一ガラスパネル1の外面11)に接した状態にされる。
【0113】
次に、チャンバー8の内部が減圧され、この状態で、一対のヒーター76により、中間膜30が軟化するまで積層物41が加熱される。これにより、
図14に示すように、大気圧に起因するガラスパネルユニット10の撓みが低減する。また、これに伴ってガラスパネルユニット10の表面に沿う透明板20の撓みが低減する。
【0114】
このように積層物41の撓みが低減した後、一対のヒーター76による積層物41の加熱が停止され、積層物41が冷却される。この積層物41の冷却は、チャンバー8の内部が減圧された状態を維持したまま、中間膜30が硬化するまで行われる。このように中間膜30が硬化することで、ガラスパネルユニット10と透明板20とが、各々の撓みが低減した状態で中間膜30を介して貼り合わされ、撓みの小さい積層体100が形成される。
【0115】
3.第三実施形態
3-1.第三実施形態の概要
次に第三実施形態の積層体100の製造方法について説明する。本実施形態では、
図15に示す積層体100を製造する。積層体100は、ガラスパネルユニット10、第一透明板21、第一中間膜31、第二透明板22及び第二中間膜32含む。本実施形態では、第一実施形態と同様の真空チャンバー方式のプロセスを経て、積層体100を製造する。なお、以下の説明では、第一実施形態と共通する事項については、説明を省略する。
【0116】
第一透明板21は、ガラスパネルユニット10の第一ガラスパネル1の外面11に設けられている。第一中間膜31は、第一ガラスパネル1と第一透明板21との間に介在している。すなわち、第一透明板21は、第一ガラスパネル1の外面11に沿って設けられ、第一中間膜31は、第一ガラスパネル1と第一透明板21との間に介在している。
【0117】
第二透明板22は、ガラスパネルユニット10の第二ガラスパネル2の外面12に設けられている。第二中間膜32は、第二ガラスパネル2と第二透明板22との間に介在している。すなわち、第二透明板22は、第二ガラスパネル2の外面12に沿って設けられ、第二中間膜32は、第二ガラスパネル2と第二透明板22との間に介在している。
【0118】
本実施形態の積層体100では、第一ガラスパネル1の外面11と、第二ガラスパネル2の外面12とに、それぞれ第一透明板21及び第二透明板22が設けられている。そのため、ガラスパネルユニット10単体よりも、強度、断熱性及び遮音性を向上させることができる。また、第一ガラスパネル1の外面11又は第二ガラスパネル2の外面12のどちらか一方のみに透明板20を設けている積層体100よりも、強度、断熱性及び遮音性を向上させることができる。
【0119】
本実施形態の積層体100を製造する場合、
図16に示すように、ガラスパネルユニット10の第一ガラスパネル1の外面11と第一透明板21とを、第一中間膜31を介して貼り合わせる。また、それと共に、ガラスパネルユニット10の第二ガラスパネル2の外面12と第二透明板22とを、第二中間膜32を介して貼り合わせる。それにより、強度、断熱性及び遮音性に優れた積層体100が得られる。
【0120】
3-2.第三実施形態の詳細
以下、第三実施形態に係る積層体100と、その製造方法とについて詳細に説明する。
【0121】
3-2-1.積層体
本実施形態の積層体100では、透明板20が上述の第一透明板21及び第二透明板22を含み、また、中間膜30が上述の第一中間膜31及び第二中間膜32を含む。これらの構成について詳しく説明する。なお、第三実施形態の積層体100における第一実施形態に係る積層体100と同一の構成については、同一の符号を付すことにより、説明を省略することがある。
【0122】
(1)ガラスパネルユニット
本実施形態のガラスパネルユニット10は、第一実施形態に係るガラスパネルユニット10と同一の構成を備える。そのため、ガラスパネルユニット10は、第一ガラスパネル1と、第二ガラスパネル2と、第一ガラスパネル1と第二ガラスパネル2との間に位置する減圧空間3とを備える。また、減圧空間3では、第一ガラスパネル1と第二ガラスパネル2との間に複数の樹脂製のスペーサ4が設けられている。
【0123】
(2)透明板
本実施形態の透明板20は、上述の通り、第一透明板21及び第二透明板22を含む。
【0124】
(i)第一透明板
第一透明板21は、透光性を有する板材である。第一透明板21の材質は、第一実施形態に係る透明板20と同じであってよい。
【0125】
本実施形態の積層体100では、第一透明板21は、ガラスパネルユニット10の第一ガラスパネル1の外面11に設けられている。そのため、第一透明板21は、ガラスパネルユニット10と対向しており、また、第一ガラスパネル1と対向している。
【0126】
(ii)第二透明板
第二透明板22は、透光性を有する板材である。第二透明板22の材質は、第一実施形態に係る透明板20と同じであってもよい。なお、本実施形態では、第一透明板21の材質と、第二透明板22の材質とが、同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0127】
例えば、第一透明板21及び第二透明板22の両方がポリカーボネート製であってもよい。例えば、第一透明板21及び第二透明板22の両方がガラス製であってもよい。例えば、第一透明板21及び第二透明板22のうち、一方がポリカーボネート製で、かつ、他方がガラス製であってもよい。
【0128】
すなわち、第一透明板21及び第二透明板22の少なくとも一方が、ガラス板を含むことが好ましい。また第一透明板21及び第二透明板22の少なくとも一方が、ポリカーボネート板を含むことが好ましい。
【0129】
本実施形態の積層体100では、第二透明板22は、ガラスパネルユニット10の第二ガラスパネル2の外面12に設けられている。そのため、第二透明板22は、ガラスパネルユニット10と対向しており、また、第二ガラスパネル2と対向している。
【0130】
(3)中間膜
本実施形態の中間膜30は、上述の通り、第一中間膜31及び第二中間膜32を含む。
【0131】
(i)第一中間膜
第一中間膜31は、第一実施形態に係る中間膜30と同様の構成を有し得る。本実施形態の積層体100では、第一中間膜31は、ガラスパネルユニット10の第一ガラスパネル1の外面11と、第一透明板21との間に介在している。そのため、第一中間膜31によって、ガラスパネルユニット10と第一透明板21とを接着することができ、詳細には、第一ガラスパネル1と第一透明板21とを接着することができる。
【0132】
(ii)第二中間膜
第二中間膜32は、第一実施形態に係る中間膜30と同様の構成を有し得る。本実施形態の積層体100では、第二中間膜32は、ガラスパネルユニット10の第二ガラスパネル2の外面12と、第二透明板22との間に介在している。そのため、第二中間膜32によって、ガラスパネルユニット10と第二透明板22とを接着することができ、詳細には、第二ガラスパネル2と第二透明板22とを接着することができる。
【0133】
(iii)第一中間膜及び第二中間膜の材質
上述の通り、第一中間膜31は、第一実施形態に係る中間膜30と同様の構成を有し得ることから、第一中間膜31の材質も第一実施形態に係る中間膜30と同じであってよい。
【0134】
また第二中間膜32は、第一実施形態に係る中間膜30と同様の構成を有し得ることから、第二中間膜32の材質も第一実施形態に係る中間膜30と同じであってよい。
【0135】
本実施形態の積層体100では、第一中間膜31と第二中間膜32とが異なる材料製であることが好ましい。この場合、積層体100の性能及び製造しやすさを両立させやすい。
【0136】
例えば、第一中間膜31及び第二中間膜32のうち少なくとも一方がPVB樹脂製であることが好ましい。この場合、少なくとも積層体100の強度を確保することができる。また積層体100の貫通防止性を向上させることができる。
【0137】
また、例えば、第一中間膜31及び第二中間膜32のうち少なくとも一方がEVA樹脂製であることが好ましい。この場合、積層体100の飛散防止性を向上させることができる。また、EVA樹脂製は、比較的低温で接着が可能であるため、積層体100の製造を容易とすることができる。また、積層体100のハンドリング性を向上させることができる。
【0138】
また、第一中間膜31と第二中間膜32とが異なる材料製である場合、第一中間膜31の材質による効果と、第二中間膜32の材質による効果との両方を積層体100に付与することができる。
【0139】
例えば、第一中間膜31がPVB樹脂製であると共に、第二中間膜32がEVA樹脂製であることが好ましい。また、第一中間膜31がEVA製であると共に、第二中間膜32がPVB樹脂製であることも好ましい。これらの場合、積層体100の強度を確保しながら積層体100の製造を容易にすることができる。すなわち、積層体100の強度と製造しやすさとを両立させることができる。また、これらの積層体100によれば、貫通防止性と飛散防止性とを両立させることができる。例えば、第一中間膜31と第二中間膜32のうち、貫通防止性が要求される側をPVB樹脂製とし、飛散防止性を要求される側をEVA樹脂製とすることが好ましい。
【0140】
また、本実施形態では、第一中間膜31と第二中間膜32とが同じ材料製であってもよい。この場合、第一中間膜31及び第二中間膜32の材質による効果を特に発揮させることができる。
【0141】
例えば、第一中間膜31及び第二中間膜32の両方がPVB樹脂製であることが好ましい。この場合、積層体100の強度を特に向上させることができる。また、積層体100の貫通防止性を特に向上させることができる。また、例えば、第一中間膜31及び第二中間膜32の両方がEVA樹脂製であることが好ましい。この場合、積層体100の製造が特に容易とすることができる。また、積層体100の飛散防止性を特に向上させることができる。
【0142】
3-2-2.積層体の製造方法
本実施形態の積層体100は、例えば、以下の工程によって製造することができる。なお、積層体100を製造する方法は、以下の方法に限定されない。
【0143】
まず、
図16に示すように、上述のガラスパネルユニット10、透明板20及び中間膜30を用意する。本実施形態の積層体100では、透明板20が第一透明板21及び第二透明板22を含み、中間膜30が第一中間膜31及び第二中間膜32を含む。そのため、透明板20として、第一透明板21及び第二透明板22を用意し、また、中間膜30として、第一中間膜31及び第二中間膜32を用意する。
【0144】
次に、ガラスパネルユニット10と透明板20とを中間膜30を介して貼り合わせる。本実施形態では、ガラスパネルユニット10の第一ガラスパネル1の外面11と、第一透明板21とを、第一中間膜31を介して貼り合わせる。更に、ガラスパネルユニット10の第二ガラスパネル2の外面12と、第二透明板22とを、第二中間膜32を介して貼り合わせる。ガラスパネルユニット10と第一透明板21とを貼り合わせる工程、及びガラスパネルユニット10と第二透明板22とを貼り合わせる工程の両方において、貼り合わせる際の圧力はガラスパネルユニット10が備える複数の樹脂製のスペーサ4の圧縮強度よりも小さい。この場合、ガラスパネルユニット10に含まれる複数の樹脂製のスペーサ4が押し潰されることを抑制することができる。
【0145】
ガラスパネルユニット10と第一透明板21との貼り合わせと、ガラスパネルユニット10と第二透明板22との貼り合わせとは、一方ずつ行ってもよく、同時に行ってもよい。
【0146】
例えば、第一中間膜31と第二中間膜32とが同じ材料製である場合には、ガラスパネルユニット10と第一透明板21との貼り合わせと、ガラスパネルユニット10と第二透明板22との貼り合わせとを、同時に行うことが好ましい。この場合、積層体100を効率良く製造することができる。
【0147】
例えば、第一中間膜31及び第二中間膜32は、いずれもPVB樹脂製であることが好ましい。その場合、相対湿度10%以下の状態で、ガラスパネルユニット10と第一透明板21と第二透明板22とを貼り合わせることが好ましい。それにより、加熱のみでガラスパネルユニット10と第一透明板21とを接着することができ、かつ、ガラスパネルユニット10と第二透明板22とを接着することができる。さらに、PVB樹脂製の第一中間膜31及び第二中間膜32に濁りや気泡が生じることを抑制することができる。また、例えば、第一中間膜31及び第二中間膜32が、いずれもEVA樹脂製であることが好ましい。また、例えば、第一中間膜31及び第二中間膜32が、いずれも熱硬化性樹脂製であってもよく、いずれも紫外線硬化性樹脂製であってもよい。
【0148】
特に第一中間膜31及び第二中間膜32が、いずれもPVB樹脂製である場合には、ガラスパネルユニット10と透明板20の間にシート状樹脂である中間膜30を挟んで重ねた状態で、ガラスパネルユニット10、透明板20及び中間膜30をチャンバーの内部に配置する。そして、このチャンバーの内部をチャンバーに接続された真空ポンプで負圧にして乾燥させることにより、中間膜30の含水率を低減させることができる。この場合、含水率を0.5重量%以下にすることが好ましい。第一中間膜31及び第二中間膜32の含水率を低減させることで、加熱のみで第一中間膜31及び第二中間膜32を用いた接着が可能となる。そのため、ガラスパネルユニット10が備えるスペーサ4の変形や、第一ガラスパネル1及び第二ガラスパネル2の破損、変形を抑制しながら、中間膜30に濁りや気泡が生じることを抑制することができる。
【0149】
本実施形態では、ガラスパネルユニット10と第一透明板20との貼り合わせと、ガラスパネルユニット10と第一透明板20との貼り合わせとの各々を、第一実施形態に係る積層体100の製造方法と同様の真空チャンバー方式で行う。すなわち、チャンバーの内部に、ガラスパネルユニット10、中間膜30、及び透明板20を配置し、このチャンバーの内部を排気しながら、ガラスパネルユニット10と透明板20とを中間膜30を介して貼り合わせる。
【0150】
もちろん、第一中間膜31及び第二中間膜32が、いずれもEVA樹脂製である場合にも、ガラスパネルユニット10と、第一透明板21と、第二透明板22とを、真空チャンバー方式で接着してもよい。
【0151】
例えば、第一中間膜31と第二中間膜32とが異なる材料製である場合には、ガラスパネルユニット10と第一透明板21との真空チャンバー方式による貼り合わせと、ガラスパネルユニット10と第二透明板22との真空チャンバー方式による貼り合わせとを、片方ずつ行うことが好ましい。第一中間膜31と第二中間膜32とが異なる材料製であると、第一中間膜31を用いた接着に必要な加熱温度と、第二中間膜32を用いた接着に必要な加熱温度とに差が生じることがある。そのため、第一中間膜31と第二中間膜32とが異なる材料製である場合に、第一中間膜31と第二中間膜32とを同時に加熱すると、接着が不十分となったり、中間膜30に変形等が生じたりすることがある。その点、ガラスパネルユニット10と第一透明板21との貼り合わせと、ガラスパネルユニット10と第二透明板22との貼り合わせとを、片方ずつ行うことにより、接着が不十分となったり、中間膜30に変形等が生じたりすることを抑制することができる。
【0152】
具体的には、第一中間膜31及び第二中間膜32のうち、接着に必要な加熱温度が高い方から接着することが好ましい。例えば、第一中間膜31の加熱温度の方が、第二中間膜32の加熱温度よりも高い場合、ガラスパネルユニット10と第一透明板21とを第一中間膜31を介して貼り合わせた後に、ガラスパネルユニット10と第二透明板22とを第二中間膜32を介して貼り合わせることが好ましい。また、例えば、第二中間膜32の加熱温度の方が、第一中間膜31の加熱温度よりも高い場合、ガラスパネルユニット10と第二透明板22とを第二中間膜32を介して貼り合わせた後に、ガラスパネルユニット10と第一透明板21とを第一中間膜31を介して貼り合わせることが好ましい。
【0153】
例えば、第一中間膜31がPVB樹脂製であり、第二中間膜32がEVA樹脂製である場合、PVB樹脂製の第一中間膜31を用いた接着に必要な加熱温度の方が、EVA樹脂製の第二中間膜32を用いた接着に必要な加熱温度よりも高い場合がある。その時は、ガラスパネルユニット10と第一透明板21とをPVB樹脂製の第一中間膜31を介して貼り合わせた後に、ガラスパネルユニット10と第二透明板22とをEVA樹脂製の第二中間膜32を介して貼り合わせることが好ましい。
【0154】
本実施形態の真空チャンバー方式のプロセスでは、例えば、
図17に示すチャンバー8と、チャンバー8内に設置されたヒーター装置75とを用いて実施することができる。ヒーター装置75は、上下方向に間隔をあけて配置された一対のヒーター76を備えている。
【0155】
本実施形態の真空チャンバー方式のプロセスでは、まず、
図17に示すように、ガラスパネルユニット10、中間膜30及び透明板20を有する積層物41を真空チャンバー8に配置する。このとき、積層物41は、第一透明板21、第一中間膜31、ガラスパネルユニット10、第二中間膜32及び第二透明板22が順に積層された状態にある。
【0156】
次に、ロータリーポンプ等で真空チャンバー8を減圧することで、
図18に示すように、第一ガラスパネル1及び第二ガラスパネル2の撓みを低減させる。この後、
図19に示すように、積層物41の上下に配置された一対のヒーター76で、積層物41を挟み込んで積層物41を加熱する。これにより、中間膜30が溶けて軟化する。また、積層物41が圧縮されて中間膜30内にある気泡が排出される。この場合、積層物41は、スペーサ4の圧縮強度より小さい力、例えば1気圧(約0.1MPa)の力で押される。
【0157】
続いて、一対のヒーター76により積層物41を圧縮した状態で、各ヒーター76の電源を切って積層物41の加熱を停止し、積層物41を冷却する。これにより、積層物41の温度が下がり、中間膜30が硬化し、ガラスパネルユニット10、中間膜30及び透明板20が一体化した積層体100が形成される。
【0158】
続いて、真空チャンバー8の内部の圧力を大気圧に戻して積層体100を取り出す。なお、チャンバー8の内部は、少なくとも、第一ガラスパネル1及び第二ガラスパネル2の撓みを低減させてから中間膜30が硬化するまで、減圧された状態が維持される。
【0159】
なお、ガラスパネルユニット10と第一透明板21との貼り合わせと、ガラスパネルユニット10と第二透明板22との貼り合わせとを、一方ずつ行う場合、
図6に示す貼合装置7を用いて行ってもよい。すなわち、ガラスパネルユニット10と第一透明板21との貼り合わせを、貼合装置7を用いて第一実施形態と同様に行い、ガラスパネルユニット10と第二透明板22との貼り合わせを、貼合装置7を用いて第一実施形態と同様に行ってもよい。
【0160】
4.第四実施形態
次に
図20及び
図21に基づいて第四実施形態の積層体100の製造方法について説明する。本実施形態では、第三実施形態の積層体100と同じ構成を有する積層体100を製造する。すなわち、
図15に示す積層体100を製造する。
【0161】
本実施形態では、第二実施形態と同様の製造方法により、積層体100を製造する。すなわち、減圧されたチャンバー8の内部において、ガラスパネルユニット10と透明板20とが中間膜30を介して貼り合わされた積層物41を加熱して中間膜30を軟化させる。そして、積層物41をチャンバー8の内部に配置したまま、中間膜30が冷却して硬化するまで、チャンバー8の内部が減圧された状態を維持する。なお、以下の第四実施形態の説明では、第二実施形態及び第三実施形態と共通する事項については、説明を省略する。
【0162】
具体的に本実施形態の積層体100の製造方法では、まず、第一工程を実行する。第一工程では、積層物41を準備する。この積層物41は、ガラスパネルユニット10と、第一中間膜31と、ガラスパネルユニット10に第一中間膜31を介して貼り合わされた第一透明板21と、第二中間膜32と、ガラスパネルユニット10に第二中間膜32を介して貼り合わされた第二透明板22とを備える。この積層物41は、真空チャンバー方式以外のプロセスで貼り合わされた積層物である。
【0163】
第一工程の次に第二工程が実行される。第二工程では、第一工程で準備した積層物41を、減圧されたチャンバー8の内部において加熱して、第一中間膜31及び第二中間膜32を軟化させる。第二工程では、チャンバー8の内部が減圧されることで、積層物41の第一ガラスパネル1及び第二ガラスパネル2の撓みが低減する。
【0164】
第二工程に続いて第三工程が実行される。第三工程では、積層物41をチャンバー8の内部に配置したまま、積層物41の加熱を停止し、積層物41を冷却する。この際、チャンバー8の内部は、第二工程において軟化した第一中間膜31及び第二中間膜32が硬化するまで、減圧された状態が維持される。このため、第一ガラスパネル1及び第二ガラスパネル2の撓みが低減した状態で、第一中間膜31及び第二中間膜32が硬化する。これにより、積層物41は、撓みの小さい積層体100になる。
【0165】
本実施形態の積層体100の製造方法は、例えば、
図20に示すチャンバー8と、このチャンバー8内に設置されたヒーター装置75を用いて実施することができる。ヒーター装置75は、上下方向に間隔をあけて配置された一対のヒーター76を備えている。各ヒーター76は、例えば、ラバーヒーターである。
【0166】
ヒーター装置75は、例えば、以下に示すように用いられる。まず、
図20に示すように、チャンバー8の内部において、一対のヒーター76が配置され、これら一対のヒーター76の間に積層物41が配置される。このとき、一対のヒーター76のうちの一方のヒーター76が積層物41の厚み方向の一方の外面(第一透明板21の外面)に接し、かつ、他方のヒーター76が、積層物41の厚み方向の他方の外面(第二透明板22の外面)に接した状態にされる。
【0167】
次に、チャンバー8の内部が減圧され、この状態で、一対のヒーター76により、第一中間膜31及び第二中間膜32が軟化するまで積層物41が加熱される。これにより、
図21に示すように、大気圧に起因するガラスパネルユニット10の撓みが低減する。また、これに伴ってガラスパネルユニット10の表面に沿う第一透明板21及び第二透明板22の撓みが低減する。
【0168】
このように積層物41の撓みが低減した後、一対のヒーター76による積層物41の加熱が停止され、積層物41が冷却される。この積層物41の冷却は、チャンバー8の内部が減圧された状態を維持したまま、中間膜30が硬化するまで行われる。このように中間膜30が硬化することで、撓みの小さい積層体100が形成される。
【0169】
5.まとめ
以上説明した第一実施形態及び第三実施形態から明らかなように、第一の態様に係る積層体(100)の製造方法は、以下に示す構成を有する。積層体(100)は、ガラスパネルユニット(10)と、中間膜(30)と、ガラスパネルユニット(10)に中間膜(30)を介して貼り合わされた透明板(20)とを備える。ガラスパネルユニット(10)は、第一ガラスパネル(1)と、第二ガラスパネル(2)と、第一ガラスパネル(1)と第二ガラスパネル(2)との間に位置する減圧空間(3)とを有する。減圧されたチャンバー(8)の内部において、ガラスパネルユニット(10)と透明板(20)とを中間膜(30)を介して貼り合わせる。
【0170】
この場合、ガラスパネルユニット(10)に透明板(20)が貼り付けられた、断熱性及び強度の優れた積層体(100)を製造することができる。また、ガラスパネルユニット(10)と透明板(20)との貼り合わせの際には、ガラスパネルユニット(10)がチャンバー(8)内の減圧された環境に配置される。この場合、ガラスパネルユニット(10)の大気圧に起因する撓みを低減した状態で、ガラスパネルユニット(10)と透明板(20)とを貼り合わせることができる。このため、撓みの小さい積層体(100)を製造することができる。
【0171】
第二の態様に係る積層体(100)の製造方法は、第一の態様との組み合わせにより実現され得る。第二の態様では、減圧されたチャンバー(8)の内部において、ガラスパネルユニット(10)と透明板(20)とを、加熱により軟化させた中間膜(30)を介して貼り合わせる。この後、ガラスパネルユニット(10)、中間膜(30)及び透明板(20)をチャンバー(8)の内部に配置したまま、中間膜(30)が硬化するまでチャンバー(8)の内部が減圧された状態を維持する。
【0172】
この場合、ガラスパネルユニット(10)と透明板(20)とが貼り合わされた後、中間膜(30)が硬化するまで、ガラスパネルユニット(10)が撓むことが抑制される。このため、より一層撓みの小さい積層体(100)を製造することができる。
【0173】
第三の態様に係る積層体(100)の製造方法は、第一又は第二の態様との組み合わせにより実現され得る。第三の態様では、透明板(20)の剛性は、第一ガラスパネル(1)及び第二ガラスパネル(2)の2枚のガラスパネルのうち、少なくとも透明板(20)が中間膜(30)を介して貼り付けられる一方のガラスパネルの剛性よりも、大きい。
【0174】
この場合、ガラスパネルユニット(10)と透明板(20)とが貼り合わされた後、ガラスパネルユニット(10)が撓むことが抑制される。このため、より一層撓みの小さい積層体(100)を製造することができる。
【0175】
第四の態様に係る積層体(100)の製造方法は、第一~第三のいずれか一つの態様との組み合わせにより実現され得る。第一ガラスパネル(1)及び第二ガラスパネル(2)の2枚のガラスパネルのうち、少なくとも透明板(20)が中間膜(30)を介して貼り合わされる一方のガラスパネルの厚みが3mm以下である。
【0176】
この態様によれば、ガラスパネルの厚みが3mm以下であって、撓みの小さい積層体(100)を製造することができる。
【0177】
第二実施形態及び第四実施形態から明らかなように、第五の態様に係る積層体(100)の製造方法は、以下に示す構成を有する。積層体(100)は、ガラスパネルユニット(10)と、中間膜(30)と、ガラスパネルユニット(10)に中間膜(30)を介して貼り合わせられた透明板(20)とを備える。ガラスパネルユニット(10)は、第一ガラスパネル(1)と、第二ガラスパネル(2)と、第一ガラスパネル(1)と第二ガラスパネル(2)との間に位置する減圧空間(3)を有する。ガラスパネルユニット(10)と、中間膜(30)と、ガラスパネルユニット(10)に中間膜を(30)介して貼り合わせられた透明板(20)とを含む積層物(41)を減圧されたチャンバー(8)の内部において加熱して中間膜(30)を軟化させ、この後、積層物(41)をチャンバー(8)の内部に配置したまま、中間膜(30)が冷却して硬化するまで、チャンバー(8)の内部が減圧された状態を維持する。
【0178】
この場合、ガラスパネルユニット(10)に透明板(20)が貼り付けられた、断熱性及び強度の優れた積層体(100)を製造することができる。また、積層物(41)は、チャンバー(8)が減圧されることで、大気圧に起因する撓みが低減し、この状態で中間膜(30)が硬化する。このため、撓みの小さい積層体(100)を製造することができる。
【0179】
第六の態様に係る積層体(100)の製造方法は、第一~第五のいずれか一つの態様との組み合わせにより実現され得る。第六の態様では、ガラスパネルユニット(10)は、複数のスペーサ(4)を有する。複数のスペーサ(4)は、減圧空間(3)において第一ガラスパネル(1)と第二ガラスパネル(2)との間に設けられる。ガラスパネルユニット(10)と透明板(20)とを貼り合わせる際の圧力は、複数のスペーサ(4)の圧縮強度よりも小さい。
【0180】
この場合、ガラスパネルユニット(10)と透明板(20)とを貼り合わせる際に、ガラスパネルユニット(10)が備えるスペーサ(4)が押し潰されることを抑制することができる。
【0181】
第七の態様に係る積層体(100)の製造方法は、第六の態様において、ガラスパネルユニット(10)と透明板(20)とを貼り合わせる際の圧力が3気圧(約0.3MPa)以下である。
【0182】
この場合、ガラスパネルユニット(10)が備えるスペーサ(4)が押し潰されることを特に抑制することができる。
【0183】
第八の態様に係る積層体(100)の製造方法は、第一~第七のいずれか一つの態様において、中間膜(30)が、PVB樹脂及びEVA樹脂のうち少なくとも一つを含む。
【0184】
この場合、中間膜(30)がPVB樹脂製である場合には、積層体(100)の強度及び貫通防止性を向上させることができる。また、中間膜(30)がEVA樹脂製である場合には、積層体(100)のハンドリング性及び飛散防止性を向上させることができる。
【0185】
第九の態様に係る積層体(100)の製造方法は、第八の態様において、中間膜(30)がPVB樹脂を含み、ガラスパネルユニット(10)と透明板(20)を貼り合わせる前に、中間膜(30)の含水率を0.5重量%以下に乾燥させる。
【0186】
この場合、加熱のみで、ガラスパネルユニット(10)と透明板(20)とを中間膜(30)で接着することができ、ガラスパネルユニット(10)が備えるスペーサ(4)の変形等を抑制することができる。また、中間膜(30)に濁りや気泡が生じることを抑制することができる。
【0187】
第十の態様に係る積層体(100)の製造方法は、第一~第九のいずれか一つの態様において、透明板(20)は、第一透明板(21)及び第二透明板(22)を含む。中間膜(30)は、第一中間膜(31)及び第二中間膜(32)を含む。ガラスパネルユニット(10)の第一ガラスパネル(1)の外面(11)と第一透明板(21)とを、第一中間膜(31)を介して貼り合わせる。それと共に、第二ガラスパネル(2)の外面(12)と第二透明板(22)とを、第二中間膜(32)を介して貼り合わせる。
【0188】
この場合、強度及び断熱性が特に優れた積層体(100)が得られる。
【0189】
第十一の態様に係る積層体(100)の製造方法は、第十の態様において、第一中間膜(31)と第二中間膜(32)とが異なる材料製である。
【0190】
この場合、積層体(100)の性能及び製造しやすさを両立させやすい。
【0191】
第十二の態様に係る積層体(100)の製造方法は、第十又は第十一の態様において、第一中間膜(31)及び第二中間膜(32)のうち少なくとも一方がEVA樹脂製である。
【0192】
この場合、積層体(100)のハンドリング性及び飛散防止性を向上させることができる。
【0193】
第十三の態様に係る積層体(100)の製造方法は、第十~第十二のいずれか一つの態様において、第一透明板(21)及び第二透明板(22)のうち少なくとも一方が、ガラス板を含む。
【0194】
この場合、強度及び断熱性に優れた積層体(100)が得られる。
【0195】
第十四の態様に係る積層体(100)の製造方法は、第十~第十三のいずれか一つの態様において、第一透明板(21)及び第二透明板(22)のうち少なくとも一方が、ポリカーボネート板を含む。
【0196】
この場合、強度及び断熱性に優れた積層体(100)が得られる。
【0197】
なお、第二~第十四の態様に係る構成については、積層体(100)の製造方法に必須の構成ではなく、適宜省略可能である。
【符号の説明】
【0198】
1 第一ガラスパネル
2 第二ガラスパネル
3 減圧空間
10 ガラスパネルユニット
11 外面
12 外面
20 透明板
30 中間膜
100 積層体