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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-28
(45)【発行日】2023-10-06
(54)【発明の名称】固形燃料燃焼器
(51)【国際特許分類】
   F23B 20/00 20060101AFI20230929BHJP
   F23B 60/00 20060101ALI20230929BHJP
   F23Q 7/02 20060101ALI20230929BHJP
   A61L 9/01 20060101ALN20230929BHJP
   A61L 9/03 20060101ALN20230929BHJP
【FI】
F23B20/00
F23B60/00
F23Q7/02
A61L9/01 Q
A61L9/03
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019130843
(22)【出願日】2019-07-16
(65)【公開番号】P2021014964
(43)【公開日】2021-02-12
【審査請求日】2022-06-06
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和1年7月3日にに、ウェブサイトkibidango(きびだんご)(URL:https://kibidango.com/,https://kibidango.com/1086)にて公開
(73)【特許権者】
【識別番号】000003229
【氏名又は名称】株式会社トヨトミ
(72)【発明者】
【氏名】藤川 義仁
【審査官】大谷 光司
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-217569(JP,A)
【文献】特開2004-138257(JP,A)
【文献】特開2005-274076(JP,A)
【文献】実開平05-096756(JP,U)
【文献】特開昭60-130324(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23B 20/00
F23B 60/00
F23Q 7/02
A61L 9/01
A61L 9/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルコールを主成分とする固形燃料を燃焼させる固形燃料燃焼器であって、
枠体内に前記固形燃料を収容する有底筒状の燃料収容部を備え、前記燃料収容部の側壁には前記固形燃料の側面の一部を露出させる切欠き部を形成し、前記燃料収容部の上端部には外側方に連続して形成されるフランジ部を備え、前記フランジ部には前記切欠き部と連続する開口部を形成し、
前記開口部に配置されて前記切欠き部から露出した前記固形燃料の側面にのぞませた点火ヒータと、前記枠体側面に配置された点火操作を行なうための点火操作手段と前記点火ヒータ前記固形燃料の側面に向かって進退可能にする駆動手段を設け、
前記点火操作手段の点火操作によって前記点火ヒータ前記固形燃料の側面に当接する点火位置に駆動すると共にヒータ部に通電し、前記固形燃料の側面を加熱して着火し、
点火操作時以外は前記点火ヒータ前記固形燃料から離れる方向に駆動して待機位置に保持と共に、前記固形燃料の燃焼中に前記点火ヒータの周囲を通過して前記開口部から前記固形燃料に向かう空気流が形成されることを特徴とする固形燃料燃焼器。
【請求項2】
前記燃料収容部の切欠き部の上端に前記点火ヒータが当接し、前記ヒータ部の高さ方向の位置が前記固形燃料の上面から所定の寸法範囲内となるように位置決めすることを特徴とする請求項1に記載の固形燃料燃焼器。
【請求項3】
前記点火操作手段は枠体側面の左右方向に並んだ2個のスイッチで構成し、前記スイッチを2個同時に操作したときにのみ前記点火ヒータが駆動すると共に前記ヒータ部への通電が行われるように構成し、前記スイッチを枠体の周方向の片側半周内に所定の間隔をあけて配置し、前記スイッチを配置した片側半周を枠体背面側とすることを特徴とする請求項1または2に記載の固形燃料燃焼器。
【請求項4】
前記燃料収容部の前記フランジ部に芳香剤を収容する芳香剤収容部を設け、
前記燃料収容部の上部を開口し前記フランジ部の上部を覆うリング状カバーを設け、
前記リング状カバーには前記燃料収容部の上部空間と前記芳香剤収容部の上部空間とを仕切る仕切部材を形成し、前記芳香剤収容部の上方に通気口を設け、
前記芳香剤収容部は前記固形燃料が燃焼するときの熱によって加熱され、芳香剤収容部に収容された芳香剤の芳香成分が蒸発し、前記リング状カバーの通気口を通過して前記固形燃料の上方に形成される燃焼炎の側方を上昇することを特徴とする請求項1または2に記載の固形燃料燃焼器。
【請求項5】
前記芳香剤収容部には芳香剤を含浸させた含浸材を収容し、前記芳香剤収容部の底面の一部を他の部分よりも低くする段部を形成し、前記芳香剤収容部に収容された前記含浸材は段部を支点に傾斜し、芳香剤収容部の載置面から離れるように持ち上げることができる請求項に記載の固形燃料燃焼器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、炎の揺らぎによる癒し効果が期待できる照明装置と、アロマの香りによるリラックス効果が期待できる芳香装置を、アルコールを主成分とする固形燃料を燃焼させる固形燃料燃焼器によって実現したものである。
【背景技術】
【0002】
アロマオイル等の芳香剤を加熱して香りを放出させ、心身のリラックス効果を得るために使用する芳香装置がある。
【0003】
このような芳香装置として、ろうそくの炎によってアロマオイルを加熱するアロマポットがある。アロマポットは、容器の内部にろうそくを収納するろうそく収納部が形成され、ろうそく収納部の上方にアロマオイルを収納するオイル収納皿を配置したものである。ろうそく収納部に収納されたろうそくに点火すると、ろうそくの炎によってオイル収納皿のアロマオイルが加熱され、アロマオイルが気化することで香りが放出されるものであり、アロマオイルの香りによるリラックス効果が期待できる。さらに、ろうそくの炎の揺らぎによる癒し効果も期待できるものである。
【0004】
また、ろうそくに代わる熱源として電球を備えたアロマランプと呼ばれる芳香装置もある。アロマランプは本体内部に電球を設置し、電球の上方にアロマオイルを収納するオイル収納皿を配置したものである。電球に通電すると電球の熱によってオイル収納皿に収納されたアロマオイルが加熱され、アロマオイルが気化することで香りが放出されるものであり、アロマオイルの香りによるリラックス効果が期待できる(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】実用新案登録第3086670号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
アロマポットはろうそくとオイル収納皿との距離が近いときや炎が大きいときは、アロマオイルの気化量が多くなって香りが強くなりすぎてしまうことがあり、逆にろうそくとオイル収納皿との距離が離れたときや炎が小さくなったときは、アロマオイルの気化量が少なくなって香りが弱くなってしまうことがあり、香りの調整が難しいものであった。また、ろうそくに火をつけるためにマッチやライターが必要であり、アロマオイルが途中でなくなってしまうとオイル収納皿が高温になってしまう問題があり、火の取扱いに十分に注意しながら使用する必要がある。
【0007】
一方、アロマランプは電球によって加熱するため、ろうそくのように炎の位置や強さが変化することがなく、比較的安定して香りを放出させることができる。また、火を使わないため、アロマポットに比べて取扱性に優れてはいるが、ろうそくのような炎の揺らぎによる癒し効果は得ることができないものであった。また、交流電源を必要とするため使用場所が限定されてしまうという問題もある。
【0008】
この発明は、アロマランプのような取扱性の良さを備えながら、炎の揺らぎによる癒し効果とアロマの香りによるリラックス効果が期待できる照明装置を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は上記の課題を解決するもので、アルコールを主成分とする固形燃料を燃焼させる固形燃料燃焼器であって、枠体2内に前記固形燃料Fを収容する有底筒状の燃料収容部3を備え、前記燃料収容部3の側壁には前記固形燃料Fの側面の一部を露出させる切欠き部3aを形成し、前記燃料収容部3の上端部には外側方に連続して形成されるフランジ部3bを備え、前記フランジ部3bには前記切欠き部3aと連続する開口部3cを形成し、前記開口部3cに配置されて前記切欠き部3aから露出した前記固形燃料Fの側面にのぞませた点火ヒータ4と、前記枠体2側面に配置された点火操作を行なうための点火操作手段7と前記点火ヒータ4前記固形燃料Fの側面に向かって進退可能にする駆動手段5を設け、前記点火操作手段7の点火操作によって前記点火ヒータ4前記固形燃料Fの側面に当接する点火位置に駆動すると共にヒータ部4aに通電し、前記固形燃料Fの側面を加熱して着火し、点火操作時以外は前記点火ヒータ4前記固形燃料Fから離れる方向に駆動して待機位置に保持と共に、前記固形燃料Fの燃焼中に前記点火ヒータ4の周囲を通過して前記開口部3cから前記固形燃料Fに向かう空気流が形成されることを特徴とする固形燃料燃焼器であり、前記点火ヒータ4は空気流によって冷却され、点火ヒータ4の温度上昇を防止することができる。
【0010】
また、前記燃料収容部3の切欠き部3aの上端に前記点火ヒータ4が当接し、前記ヒータ部4aの高さ方向の位置が前記固形燃料Fの上面から所定の寸法範囲内となるように位置決めすることにより、ヒータ部4aが固形燃料Fの側面と対向して確実に固形燃料Fを加熱することができ、固形燃料Fの着火がスムーズに行われるものとなった。
【0011】
また、前記点火操作手段7は枠体2側面の左右方向に並んだ2個のスイッチ7aで構成し、前記スイッチ7aを2個同時に操作したときにのみ前記点火ヒータ4が駆動すると共に前記ヒータ部4aへの通電が行われるように構成し、前記スイッチ7aを枠体2の周方向の片側半周内に所定の間隔をあけて配置し、前記スイッチ7aを配置した片側半周を枠体背面側とすることにより、一方のスイッチ7aに触れてもそれだけで点火することがないものとなった
【0012】
また、前記燃料収容部3の前記フランジ部3bに芳香剤11を収容する芳香剤収容部10を設け、前記燃料収容部3の上部を開口し前記フランジ部3bの上部を覆うリング状カバー9を設け、前記リング状カバー9には前記燃料収容部3の上部空間と前記芳香剤収容部10の上部空間とを仕切る仕切部材9aを形成し、前記芳香剤収容部3の上方に通気口9bを設け、前記芳香剤収容部10は前記固形燃料Fが燃焼するときの熱によって加熱され、芳香剤収容部10に収容された芳香剤11の芳香成分が蒸発し、前記リング状カバー9の通気口9bを通過して前記固形燃料Fの上方に形成される燃焼炎の側方を上昇することにより、芳香剤11の香りが燃焼炎と混合することなく放出させることができるものとなった。
【0013】
また、前記芳香剤収容部10には芳香剤11を含浸させた含浸材11aを収容し、前記芳香剤収容部10の底面の一部を他の部分よりも低くする段部10aを形成し、前記芳香剤収容部10に収容された前記含浸材11aは段部10aを支点に傾斜し、芳香剤収容部10の載置面10bから離れるように持ち上げることができるので、芳香剤収納部10から含浸材11aを容易に取り出すことができるものである。
【発明の効果】
【0014】
この発明は、固形燃料Fを燃焼する固形燃料燃焼器1によって、炎の揺らぎによる癒し効果が期待できるリラックス用の照明装置を実現したものであり、固形燃料燃焼器1は枠体2内の燃料収容部3に収容された固形燃料Fの側面にのぞませて点火ヒータ4を取り付け、枠体2側面に設けた点火操作手段7の点火操作によって点火ヒータ4に通電して固形燃料Fに着火することができるので、マッチやライターを必要とせず、安全で簡単に使用することができるものとなった。また、点火ヒータ4は乾電池12を電源とし、点火時のみ電源を必要とするものであるから交流電源は不要であり、使用できる場所の限定がなくなり、使い勝手が向上できたものである。
【0015】
さらに、点火ヒータ4は駆動手段5を備えており、点火ヒータ4は点火操作時以外は駆動手段5によって固形燃料Fから離れた待機位置に保持されており、点火操作時は駆動手段5によって固形燃料Fの側面に当接する点火位置に駆動すると共にヒータ部4aへの通電が行われて固形燃料Fに着火することができる。このようにすることで、固形燃料Fが燃焼中に燃焼炎に点火ヒータ4が触れることはなく、点火ヒータ4のヒータ部4aが熱によって変形や断線を起こすことがないものである。
【0016】
また、点火ヒータ4が点火操作時に駆動手段5によって駆動するときに、点火ヒータ4が燃料収容部3の切欠き部3aの上端位置に当接して移動が止められ、ヒータ部4aの高さ方向の位置が固形燃料Fの上面から所定の寸法範囲内となるように位置決めするから、点火ヒータ4のヒータ部4aを固形燃料Fの側面に対向させることができるものとなり、ヒータ部4aによって固形燃料Fの側面を加熱して確実に固形燃料Fに着火することができるものとなる。
【0017】
また、点火操作手段7は枠体2側面の左右方向に並んだ2個のスイッチ7aで構成して、枠体2の周方向の片側半周内で所定の間隔をあけて配置し、スイッチ7aを2個同時に操作したときだけ点火ヒータ4を駆動してヒータ部4aへの通電を行なうようにしたものである。点火操作手段7のスイッチ7aが配置された片側半周を枠体2の背面側とすることで、スイッチ7aが枠体2の正面側にないため、容易にスイッチ7aに触れてしまうことはなくなり、また、移動の際などに誤って片方のスイッチ7aに触れても点火ヒータ4に通電されることはなく、意図せず燃焼を開始させてしまう恐れがないから、安全性を高めることができた。
【0018】
また、燃料収容部3の上端部から外側方に連続するフランジ部3bを形成し、燃料収容部3の切欠き部3aの部分にはフランジ部3bのない開口部3cを形成し、固形燃料Fを燃焼中に燃焼のドラフトによって枠体2内の空気が開口部3cを通過して固形燃料Fの上方に供給されるようにしたものである。点火ヒータ4が開口部3cに位置しており、点火ヒータ4の周囲に空気流が形成されることによって点火ヒータ4の温度上昇を抑えることができ、点火ヒータ4のヒータ部4aの熱による変形をより確実に防ぐことができるものとなった。
【0019】
また、燃料収容部3のフランジ部3bには芳香剤11を収容するための芳香剤収容部10を設け、フランジ部3bの上方を覆うようにリング状カバー9を設け、リング状カバー9は燃料収容部3の上部空間と芳香剤収容部10の上部空間とを仕切る仕切部材9aと、芳香剤収容部10の上方に形成した通気口9bを備えている。固形燃料Fが燃焼すると燃料収容部3が高温となり、その熱がフランジ部3bを介して芳香剤収容部10に伝わって芳香剤11が加熱され、芳香剤11の芳香成分が蒸発する。蒸発した芳香成分は仕切部材9aによって固形燃料Fの燃焼炎との接触や混合を避けながら通気口9bから放出され、燃焼炎の側方を上昇して室内に拡散されるので、芳香成分の変質が起こらず、本来の香りが変化してしまうことがない。
【0020】
さらに、芳香剤収容部10は固形燃料Fの燃焼炎で直接加熱される構成ではないから、芳香剤収容部10の異常加熱の心配はなくなり、芳香剤収容部10に芳香剤11がない状態でも使用することができるので、リラックス用の照明装置だけでも使用することができるものとなった。
【0021】
また、芳香剤収容部10に芳香剤11を含浸させた含浸材11aを収容してもよく、芳香剤収容部10には底面の一部を他の部分よりも低くする段部10aを形成したから、芳香剤11の補充や交換が必要となり含浸材11aを芳香剤収容部10から取り出すときは、含浸材11aを上から押すことで含浸材11aが段部10aを支点に傾斜して芳香剤収容部10の載置面10bから離れるので、含浸材11aを簡単に取り出すことができ、芳香剤11の補充や交換が容易にできるものとなった。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】この発明の実施例を示す固形燃料燃焼器の要部断面図である。
図2】この発明の実施例の点火操作時の点火ヒータの状態を説明する要部断面図である。
図3】この発明の実施例を示す固形燃料燃焼器の要部の斜視図である。
図4】この発明の実施例の芳香剤の交換時の状態を説明する要部断面図である。
図5】この発明品である固形燃料燃焼器の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図に示す実施例によってこの発明を説明すると、固形燃料燃焼器1の枠体2内に有底筒状の燃料収容部3が取り付けられており、燃料収容部3には固形燃料Fが収容される。固形燃料Fはアルコールを主成分として、アルコールに石鹸成分など配合して固化させて円柱状に成形したものであり、固形燃料Fの周囲が樹脂フィルムで密閉されている。また固形燃料Fの底面と側面を覆うアルミ箔を備えているものもある。
【0024】
枠体2の上部には透明もしくは半透明のガラスで構成したガラス外筒8が配置されており、固形燃料Fに着火して固形燃料Fの上方に燃焼炎が形成されると、ガラス外筒8の全体が発光する。固形燃料Fは燃焼炎の揺らぎが発生し、ガラス外筒を通して炎の揺らぎを見ることができるので、炎の揺らぎによる癒し効果の期待できる、リラックス用の照明装置として構成することができる。
【0025】
燃料収容部3の側方には固形燃料Fに点火するための点火ヒータ4を備えており、燃料収容部3の側壁には固形燃料Fの側面の一部を露出させる切欠き部3aが形成され、点火ヒータ4の先端部を切欠き部3aによって露出した固形燃料Fの側面にのぞませている。実施例の点火ヒータ4はヒータ部4aがコイル状のフィラメントで構成されたものであり、点火ヒータ4への通電時にヒータ部4aが赤熱して高温となる。
【0026】
燃料収容部3の周囲には中央が開口したリング状カバー9を備えており、リング状カバー9の中央開口部に燃料収容部3が位置し、燃料収容部3の周囲はリング状カバー9によって覆われて、点火ヒータ4などの部品が見えないようにしている。ガラス外筒8を取り外すだけで固形燃料Fを燃料収容部3に収容することができる。
【0027】
枠体2内には支軸5aを中心に回転する駆動板5を取り付け、駆動板5に点火ヒータ4を取り付けている。駆動板5は点火ヒータ4の先端部を固形燃料Fの側面に接触する点火位置と、点火ヒータ4の先端部を固形燃料Fの側面から離れた待機位置との間で駆動するものであり、駆動板5には点火ヒータ4を待機位置に保持するバネ5bと、点火ヒータ4を点火位置に駆動するためのソレノイド6を備えている。ソレノイド6が非通電時は駆動板5がバネ5bによって待機位置に保持されており、ソレノイド6の通電時にバネ5bの力に抗して駆動板5を点火位置に駆動する。
【0028】
枠体2の下部には点火ヒータ4とソレノイド6の電源となる乾電池12を装着し、枠体2の側面には点火操作手段7を構成するスイッチ7aを設けている。固形燃料燃焼器1を使用するためにスイッチ7aを押すと、点火ヒータ4とソレノイド6への通電が行われ、スイッチ7aが押されている間は点火ヒータ4とソレノイド6への通電が維持され、スイッチ7aから手を離すと通電が停止する。この発明の実施例では、図3に示すようにスイッチ7aを枠体2の周方向の片側半周内で、左右方向に2個並べて配置しており、スイッチ7aを2個同時に押さないと点火ヒータ4とソレノイド6への通電が行われない構成となっている。
【0029】
スイッチ7aを2個同時に押すと点火ヒータ4とソレノイド6への通電が行われ、駆動アーム5が駆動して点火ヒータ4が点火位置に移動し、点火ヒータ4の先端部が固形燃料Fの側面に当接し、点火ヒータ4のヒータ部4aが赤熱しているので固形燃料Fの側面が加熱され、固形燃料Fの樹脂フィルムが溶けて燃料に着火する。
【0030】
固形燃料Fへの着火を確認してスイッチ7aから手を離すと、点火ヒータ4とソレノイド6への通電が停止し、駆動アーム5がバネ5bの力で駆動して点火ヒータ4が待機位置に移動する。点火ヒータ4を固形燃料Fの側面に接触させたままにするとヒータ部4aが燃焼炎で加熱されて変形や断線の心配があるが、燃焼中は点火ヒータ4が固形燃料Fの側面から離れ、固形燃料Fの上方に形成される燃焼炎が点火ヒータ4のヒータ部4aに直接あたらないようにしたから、ヒータ部4aの変形や断線を起こす心配がない。
【0031】
このように固形燃料燃焼器1はスイッチ7aの操作によって固形燃料Fへ着火することができるから、マッチやライターなどの点火用の器具を用意する必要はなく、簡単な操作で安全に着火させて使用することができるものとなった。
【0032】
また、スイッチ7aを配置した片側半周を枠体2の背面側することで、スイッチ7aに触れにくくなっており、さらにスイッチ7aを2個同時に押さないと点火ヒータ4とソレノイド6への通電が行われないから、固形燃料燃焼器1を移動する際や固形燃料Fのセット時などにどちらか一方のスイッチ7aだけに触れても点火ヒータ4への通電は行われず、誤って燃焼を開始させてしまう恐れがなく、安全性の高い構造を実現できた。
【0033】
また、点火操作時に点火ヒータ4がソレノイド6によって点火位置に駆動するときに、点火ヒータ4の先端部分が燃料収容部3の切欠き部3aの上端に当接して移動を止め、点火ヒータ4がそれ以上下方に移動しないようにしている。この位置で点火ヒータ4のヒータ部4aが固形燃料Fの上端位置よりも低く、上端から所定の寸法範囲内に位置するように切欠き部3aの上端位置が設定されている。
【0034】
点火ヒータ4の位置決めを固形燃料Fに近い位置で行なうから、ヒータ部4aを固形燃料Fの側面に対向させることができ、ヒータ部4aが固形燃料Fの側面を加熱して、固形燃料Fへの着火が確実に行なえるようになった。また、固形燃料Fの側面と底面がアルミ箔で覆われているものもあるが、ヒータ部4aの位置を固形燃料Fの上面から所定の寸法範囲内に位置するように設定したから、アルミ箔のない側面と対向させることができる。
【0035】
また、燃料収容部3の上端部にはフランジ部3bが形成されており、フランジ部3bは燃料収容部3の上端部から連続して燃料収容部3と一体に構成され、フランジ部3bの外周端は枠体2の内壁付近に届いている。燃料収容部3の切欠き部3aを設けた部分はフランジ部3bがなく、切欠き部3aと連続する開口部3cを形成しており、燃料収容部3は切欠き部3aと開口部3cを点火ヒータ4が配置されている位置にあわせて設置する。このため枠体2の内部空間と燃料収容部3の上方の空間はフランジ部3bによって仕切られており、開口部3cでは連通している。
【0036】
固形燃料Fが燃焼すると燃料収容部3の上方に燃焼によるドラフトが発生し、このドラフトによって枠体2の内部空間の空気が引っ張られ、燃料収容部3の周囲にはフランジ部3bが形成されているから、開口部3cを通過して燃料収容部3の上方に向かい、固形燃料Fの燃焼空気として供給される。枠体2の内部空間の空気は点火ヒータ4の周囲を通過して開口部3cに向かうので、点火ヒータ4がこの空気流で冷却されて温度上昇を防止することができる。
【0037】
また、この発明の他の実施例では、燃料収容部3のフランジ部3bにはアロマオイル等の芳香剤11を収容するための芳香剤収容部10を形成しており、芳香剤収容部10はフランジ部3bに形成した凹部によって構成している。芳香剤収納部10にはアロマオイル等の液体をそのまま入れるのではなく、芳香剤11を多孔質のセラミックプレートやスポンジや布などで構成した含浸材11aに含浸させて、その含浸材11aを芳香剤収容部10に収容することで、液体がこぼれる心配がなく取扱性が良いものとなる。実施例の含浸材11aは多孔質のセラミックプレートであり、セラミックプレートに芳香剤11であるアロマオイルを染み込ませてから芳香剤収容部10に収容する。
【0038】
リング状カバー9の中央開口部には円筒状に形成された仕切部材9aを備えており、仕切部材9aの下端はフランジ部3cの上面に接触しており、燃料収容部3の周囲が仕切部材9aによって囲まれている。仕切部材9aは燃料収容部3と芳香剤収容部10との間に位置して、燃料収容部3の上部空間と芳香剤収容部10の上部空間とが仕切られている。芳香剤収容部10の上部空間はリング状カバー9の上面と仕切部材9aによって囲まれて閉ざされた空間になっている。リング状カバー9には複数個のスリット状の長孔で構成した通気口9bを形成し、芳香剤収容部10の上部空間とガラス外筒8の内部空間とを連通している。
【0039】
芳香剤11を使用するときは、図3のようにガラス外筒8とリング状カバー9を取り外して芳香剤収容部10を露出させ、芳香剤収容部10に含浸材11aであるセラミックプレートを収容した後、リング状カバー9とガラス外筒8を取り付ける。
【0040】
点火操作手段7であるスイッチ7aを押すとソレノイド6と点火ヒータ4への通電が行われ、固形燃料Fに着火して燃焼を開始する。固形燃料Fが燃焼すると燃料収容部3が加熱されて燃料収容部3の温度が上昇する。燃料収容部3と連続するフランジ部3bと芳香剤収容部10に熱が伝わり、フランジ部3bと芳香剤収容部10も加熱される。芳香剤収容部10の熱で含浸材11aが温められ、含浸材11aに染み込ませた芳香剤11が蒸発する。芳香剤収容部10の上部空間に放出された芳香剤11は通気口9bを通過してガラス外筒8の内部空間に送られ、固形燃料Fの上方に形成された燃焼炎の側方をガラス外筒8の内壁面に沿って上昇し、ガラス外筒8の上部開口から室内に拡散する。
【0041】
芳香剤11が燃焼炎に接触したり混合したりすると芳香成分の変質が起こり香りに変化が生じ、臭気となってしまうことがあるが、この構成では含浸材11aから蒸発して芳香剤収容部10の上部空間に放出された芳香剤11はリング状カバー9の仕切部材9aの働きによって固形燃料Fの燃焼炎と接触したり混合したりすることがなく、ガラス外筒8の上部開口から室内に拡散させることができるので、芳香剤11の香りによる癒し効果を得ることができる。
【0042】
また、固形燃料Fの燃焼炎で芳香剤収容部10を直接加熱する構成ではないから、燃焼炎の大きさや強さによる影響を受けにくく、芳香剤収容部10を安定した温度に維持しやすいものであり、芳香剤11の香りを安定して発生させることができるものとなった。
【0043】
さらに、この構成では芳香剤11の有無に関係なく使用することができ、香りが必要ないときは燃料収容部3に固形燃料Fだけをセットして使用することで、炎の揺らぎによる視覚的な癒し効果だけを楽しむことができる。一方、香りを楽しみたいときは、燃料収容部3に固形燃料Fをセットし、芳香剤収容部10に含浸材11aをセットして使用することで、炎の揺らぎによる視覚的な癒し効果とアロマの香りによる癒し効果の両方を楽しむことができるものとなった。
【0044】
また、芳香剤11の補充や交換を行なうときは芳香剤収容部10から含浸材11aを取り出すが、含浸材11aがスポンジや布のように柔らかい素材であれば簡単に取り出すことができるが、含浸材11aがセラミックプレートのような固形物であった場合、含浸材11aと芳香剤収容部10との間に隙間がないと含浸材11が取り出しにくくなってしまう。
【0045】
この発明では芳香剤収容部10には底面の一部が他の部分より低くなるように段部10aを設け、芳香剤収容部10にセットされた含浸材11aは載置面10bの上に載り、段部10aによって載置面10bのない部分では含浸材11aの下方に隙間ができるようにしている。含浸材11aがセラミックプレートのような固形物の場合には、含浸材11aを芳香剤収容部10から取り出すときは、載置面10bがない部分の含浸材11aの上面を押すと、含浸材11aが段部10aを支点に傾き、芳香剤収容部10の載置面10bから浮かせることができ、含浸材11aの端部をつまんで取り出すことができる。このようにすると含浸材11aがセラミックプレートのような固形物で芳香剤収容部10との間に隙間がほとんどない場合でも、含浸材11aを容易に取り出すことができ、芳香剤11の補充や交換を容易に行なうことができるものとなる。
【符号の説明】
【0046】
1 固形燃料燃焼器
2 枠体
3 燃料収容部
3a 切欠き部
3b フランジ部
3c 開口部
4 点火ヒータ
4a ヒータ部
7 点火操作手段
9 リング状カバー
9a 仕切部材
9b 通気口
10 芳香剤収容部
11 芳香剤
11a 含浸材
図1
図2
図3
図4
図5