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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-28
(45)【発行日】2023-10-06
(54)【発明の名称】廃油回収容器および廃油回収方法
(51)【国際特許分類】
   A47J 37/12 20060101AFI20230929BHJP
【FI】
A47J37/12 321
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019141424
(22)【出願日】2019-07-31
(65)【公開番号】P2021023416
(43)【公開日】2021-02-22
【審査請求日】2022-07-15
(73)【特許権者】
【識別番号】519279948
【氏名又は名称】株式会社油人
(74)【代理人】
【識別番号】110001184
【氏名又は名称】弁理士法人むつきパートナーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100104396
【弁理士】
【氏名又は名称】新井 信昭
(72)【発明者】
【氏名】林 育生
【審査官】河内 誠
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-24767(JP,A)
【文献】特開2012-10941(JP,A)
【文献】実開昭59-34732(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 37/10~37/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
食用油を貯留する油槽を有するフライヤーの下に設置される廃油回収容器であって、
当該廃油回収容器は、当該油槽から高温廃油として排出される食用油を受け取る容器本体と、冷却液を貯留する冷却液槽と、を備え、
当該容器本体は、底部と、当該底部の周辺から起立する側壁部と、を備え、
当該冷却液槽は、外壁部を備えるとともに、当該側壁部の内側もしくは外側に配され、当該外壁の少なくとも一部を介し高温廃油と冷却液とを熱接触可能に構成されている、
ことを特徴とする廃油回収容器。
【請求項2】
前記冷却液槽は、冷却液供給源から供給される冷却液を注入するための注入構造と、当該注入構造により注入された冷却液をかけ流し式に排出するための排出構造と、を備えている
ことを特徴とする請求項1記載の廃油回収容器。
【請求項3】
前記冷却液槽が前記側壁部の内側に配され、
前記注入構造と前記排出構造が一体となった入出構造が形成され、
当該入出構造は、前記側壁部に設けられた貫通孔に水密結合されている、
ことを特徴とする請求項2記載の廃油回収容器。
【請求項4】
前記冷却液槽は、一端が底部で他端が開口の筒体と、当該筒体の開口に一端を水密連結し他端を前記貫通孔に水密連結した内側エルボーと、を含む略逆L字状に構成され、
前記入出構造は、当該貫通孔に臨む当該内側エルボーの開口により構成されている、
ことを特徴とする請求項3記載の廃油回収容器。
【請求項5】
連結端と入出端を有する略L字状の外側エルボーが設けられ、
当該外側エルボーの連結端は、当該入出端を上向きにして前記側壁部の外側から前記貫通孔に水密連結され、
当該外側エルボーの入出端は、冷却液を入出可能に上方に向かって開口している、
ことを特徴とする請求項4記載の廃油回収容器。
【請求項6】
前記冷却液は水道水であることを特徴とする、
請求項1ないし5いずれか記載の廃油回収容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用済み食用油すなわち廃油を回収するための廃油回収容器および廃油回収方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
レストラン、飲食店、学校、病院などの調理室や惣菜店やコンビニなどの店舗から排出される廃油は、フライヤーとよばれる揚げ物機で使用されたものがほとんどである。廃油はフライヤーの油槽に入っていてその底部の排油バルブを介して抜き取られる。具体的には、排油バルブを開くことで廃油が自重落下してフライヤー下の取っ手付き廃油容器に受け取られる。レストラン等の従業員は廃油容器の取っ手を一方の手で持ち上げ、他方の手で底を押し上げて廃油容器を傾け廃油をペール缶や合成樹脂製の運搬袋などに注ぎ入れる。
【0003】
この際、十分に冷えた廃油であればよいが、そのためには、たとえば昼間使っていたフライヤーであればその加熱を止め一晩放置しなければならない。使用中の食用油(のちに廃油となる)は、170℃~200℃程度の高温であるところ、冷えるまで一晩も待ちきれないとか、コンビニエンスストアのように夜も稼働させなければならないという事情があるため、抜き取られる廃油は高温のままであることが現状である。
【0004】
こうした現状のなか、作業マニュアルなどで高温廃油の扱いを定めているが、それでも不注意により作業員が火傷する事故が発生している。冷えるまで待てれば火傷事故は防げるが、廃油を冷却する時間を取りづらいことは前述したとおりである。
【0005】
容器に入れた食用油を冷却する技術として、次のものがある。特許文献1が示すのは、天ぷら鍋の過熱防止用冷却装置である。この装置は、天ぷら鍋に入っている食用油の中または外に、食用油と熱接触する水槽を設けたものである。暖められた水は、水槽内で循環するように構成されている。水槽の中には水が入れられ、熱し続ける天ぷら鍋の食用油と熱接触する水との接触により過熱防止と適温維持を図ろうとするものである。
【0006】
次は、フライヤーの油槽(容器)内の高温食用油を部分的に冷却する技術である。これは、食用油に温度差を生じさせて油槽内で対流させ、油槽の底上に揚げカスが沈殿しないようにすることを目的とする。特許文献2記載の技術は空冷により、特許文献3および4記載の技術は水冷ジャケットと水槽により、油槽内の食用油を冷却するようになっている。
【0007】
特許文献5は、フライヤーの油槽から廃油回収容器が受け取った高温廃油の蓄熱エネルギーを、新たに使用する食用油の加熱に使用する技術を開示する。高温廃油が入った廃油回収容器は、新しい食用油が入った新油対貯槽と熱接触するように配され、この熱接触により廃油の蓄熱エネルギーが新しい食用油に移動するように構成されている。この技術を廃油中心に観察すると、新しい食用油によって廃油回収容器内の高温廃油が冷却される技術、とみることもできる。
【0008】
特許文献6は、フライヤーの油槽の下に置かれ、油槽から排出される廃油を受け取る廃油回収容器を開示する。この廃油回収容器には、そこに貯留された廃油を容器外に注ぎ出すためのバルブが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】実開平2-18347号公報
【文献】実開昭58-154736号公報
【文献】特許第5901624号公報
【文献】特許第6252810号公報
【文献】特許3923381号公報
【文献】実用新案登録第3220359号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1ないし6は、いずれも受け取った廃油を冷却液のかけ流しにより冷却するという技術的思想を含まない。後述するように、かけ流し冷却は、シンプルな構造でありながら、効果の高い冷却方法である。その技術的思想の開示も示唆も含まれない。したがって、特許文献1ないし6に記載された技術では、フライヤーの油槽から受け取った高温廃油を効果的に冷却することで、廃油を扱う廃油作業者の安全を図ることができない。
【0011】
すなわち、特許文献1記載の先行技術は、そもそも天ぷら鍋に関するものであって廃油を扱う容器とは無関係であるうえに、背景技術の欄で述べたように天ぷら鍋に入っている食用油の加熱防止と適温維持を目的とするものであって、廃油回収容器の排油を冷却しようとするものではない。だからこそ、天ぷら鍋の上に載せられる程度の水槽に貯留された水で足りるのであり、後述する冷却液かけ流し方式にはなっていない。
【0012】
特許文献2ないし4記載の先行技術は、背景技術の欄で述べたように、フライヤーの油槽の中にある食用油を部分的に冷却するもので、廃油回収容器内の廃油冷却に流用できる技術ではない。特許文献5は、高温廃油を冷却する技術的思想を示すが、新しい食用油を冷却に使用しており、この食用油は、その後に使用するものであるから、後述する冷却液かけ流しを発想する動機づけにはならない。特許文献6は、廃油回収容器に関するものであるが、廃油冷却の技術的思想を示すものではない。
【0013】
そこで、本発明が解決する課題は、フライヤーの油槽から受け取った高温廃油を効果的に冷却することで、廃油を扱う作業者の安全を図ることである。その課題を解決するための手段は、項を改めて説明する。なお、いずれかの請求項記載の発明を説明するにあたり行う用語の定義等は、その記載順や発明のカテゴリーに関わらず、その性質上可能な範囲において他の請求項記載の発明にも適用されるものとする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
(請求項1記載の発明の特徴)
請求項1記載の発明に係る廃油回収容器(以下、適宜「請求項1の容器」という)は、食用油を貯留する油槽を有するフライヤーの下に設置される廃油回収容器である。ここで当該廃油回収容器は、当該油槽から高温廃油として排出される食用油を受け取る容器本体と、冷却液を貯留する冷却液槽と、を備え、当該容器本体は、底部と、当該底部の周辺から起立する側壁部と、を備え、当該冷却液槽は、外壁部を備えるとともに、当該側壁部の内側もしくは外側に配され、当該外壁の少なくとも一部を介し高温廃油と冷却液とを熱接触可能に構成されている、ことを特徴とする。廃油の温度は200℃ほどまで上がるので、それに耐えられる冷却液であれば、その種類は問わない。冷却液を冷却する熱交換構造を、必要に応じて別途に設けることを妨げない。
【0015】
請求項1の容器によれば、フライヤーの油槽から高温廃油を受け取った廃油回収容器は、これを底部と側壁部によって形成される空間に貯留する。貯留された高温廃油が持つ熱エネルギーは、温度勾配により冷却液槽の外壁の少なくとも一部を介してこれと熱接触する冷却液に移動する。すなわち、冷却液によって高温廃油が冷却される。冷却によって廃油の温度が下がるから、下がった分だけ廃油作業者が火傷する可能性を低くすることができるし、作業効率がよくなるから作業時間も短縮できる。
【0016】
(請求項2記載の発明の特徴)
請求項2記載の発明に係る廃油回収容器(以下、適宜「請求項2の容器」という)は、請求項1の容器であって、前記冷却液槽は、冷却液供給源から供給される冷却液を注入するための注入構造(冷却液の入り口)と、当該注入構造により注入された冷却液をかけ流し式に排出するための排出構造(冷却液の出口)と、を備えている ことを特徴とする。かけ流しとは、新しい冷却液を冷却液槽に注入構造から注入し、注入された分だけの冷却液が排出構造から冷却液槽の外にあふれ出すこと、すなわち、冷却液槽の冷却液の量が変化しないことをいう。
【0017】
請求項2の容器によれば、冷却液供給源から供給される冷却液をかけ流すことにより、廃油と熱接触する冷却液が連続して入れ替わるので冷却液の温度が上がりづらい。すなわち、ある瞬間において熱吸収による温度上昇した冷却液は移動し、その次の瞬間に新しい冷却液が来て熱吸収するので、高温廃油と冷却液との間に常に大きな温度勾配が保たれる。このため、熱移動を生じやすく、このため効率よい廃油冷却が可能になる。
【0018】
(請求項3記載の発明の特徴)
請求項3記載の発明に係る廃油回収容器(以下、適宜「請求項3の容器」という)は、請求項2の容器であって、前記冷却液槽が前記側壁部の内側に配され(すなわち、冷却液槽の少なくとも一部が高温廃油に浸される)、前記注入構造と前記排出構造が一体となった入出構造が形成され、当該入出構造は、前記側壁部に設けられた貫通孔に水密結合されている、ことを特徴とする。注入構造と排出構造が一体となった入出構造とは、たとえばコップに注いだ水があふれるときのコップの開口に似た構造のことをいう。
【0019】
請求項3によれば、冷却液槽が側壁部の内側に配されることで、冷却液槽の好ましくは大部分もしくは全部を高温廃油の中にどっぷりと浸すことができる。このことは、同じ冷却液槽であっても、側壁部の外に配する場合に比べて高温廃油と外壁との接触面積が大きくなる。大きくなる分、冷却効率を高くすることをできる。
【0020】
(請求項4記載の発明の特徴)
請求項4記載の発明に係る廃油回収容器(以下、適宜「請求項4の容器」という)は、請求項3の容器であって、前記冷却液槽は、一端が底部で他端が開口の筒体と、当該筒体の開口に一端を水密連結し他端を前記貫通孔に水密連結した内側エルボーと、を含む略逆L字状に構成され、前記入出構造は、当該貫通孔に臨む当該内側エルボーの開口により構成されている、ことを特徴とする。この場合において、筒体の底部は、容器本体の底部になるべく近づけることが好ましい。底部に近い高温廃油を冷却して対流させることで、廃油全体の冷却効率を高くするためである。
【0021】
請求項4によれば、連結構造を貫通孔に連結されることで、少なくとも筒体の一部または全部が、場合によっては内側エルボー高温廃油の中に浸された状態で、貫通孔に臨む内側エルボーの開口(入出構造)を介して冷却水が入出する。この構造により冷却液槽全体と高温廃液との接触面積を可及的拡大する。
【0022】
(請求項5記載の発明の特徴)
請求項5記載の発明に係る廃油回収容器(以下、適宜「請求項5の容器」という)は、請求項4の容器であって、連結端と入出端を有する略L字状の外側エルボーが設けられ、当該外側エルボーの連結端は、当該入出端を上向きにして前記側壁部の外側から前記貫通孔に水密連結され、当該外側エルボーの入出端は、冷却液を入出可能に上方に向かって開口していることを特徴とする。
【0023】
請求項5の容器によれば、L字状の外側エルボーの入出端は、側壁部から一端側方に突き出し、その後上方に折れ曲がって入出端が上方に開口する。このため、作業者による冷却液注入は、入出端に冷却液を滴下すればよいので簡単である。冷却液の注入ができれば、排出も可能になる。
【0024】
(請求項6記載の発明の特徴)
請求項6記載の発明に係る廃油回収容器(以下、適宜「請求項6の容器」という)は、請求項1ないし5いずれかの容器であって、前記冷却液は水道水であることを特徴とする。
【0025】
請求項6の容器によれば、冷却水を水道水としたので、入手と廃棄が非常に簡単である。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、高温廃油を冷却してから回収できるので、作業員が火傷する可能性を抑えるとともに、低温化によって扱いやすくなるから廃油回収時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】下方に廃油回収容器が設置されたフライヤーの正面図である。
図2図1に示すフライヤーの一部断面図である。
図3】本実施形態に係る廃油回収装置の平面図である
図4図3に示す廃油回収容器のA-A断面図である。
図5図3に示す廃油回収容器の背面図である。
図6】本実施形態の第1変形例に係る廃油回収容器の平面図である。
図7図6に示す廃油回収容器のB-B断面図である
図8図6に示す廃油回収容器のC-C断面図である。
図9】本実施形態の第2変形例に係る縦断面図である。
図10】長尺の冷却液槽を備える廃油回収容器の側面図である。
図11】第3変形例に係る冷却液槽の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
(フライヤーの概略構成)
図1および2に示すフライヤー1は、フライヤー本体3と、脚部5と、コントロールパネル7と、廃油回収容器31、とを有している。フライヤー本体3は、その内部に油Oiを貯めておく上部開口の油槽11を有する。油槽11の底部には廃油を自重で抜き取るための排油路13が設けられている。油槽11の底部11bは、廃油の残りを少なくするために排油路13に向かって緩やかに傾斜するように形成されている。廃油路13には、流下する廃油を制御する排油バルブ15.が設けられている。油槽11の中にはヒーター17が設置され、ヒーター17はコントロールパネル7によって制御される。脚部5は、上から見ると矩形のフライヤー本体3の四隅それぞれに設けられた4本の細長い断面L字の棒材であり、フライヤー本体3を床F上に起立させている。これにより廃油路3の真下に廃油回収容器31が配置される空間が形成される。
【0029】
(廃油回収容器と容器本体の構成)
図1ないし5に示す廃油回収容器30は、スチール等の金属製である容器本体31と、同じくスチール等金属製である冷却液槽40と、から概略構成される。容器本体30は、底部31aと、底部31aの周辺から起立する側壁部を有する上部開口の直方体形状の容器である。側壁部は、前面部31bと、前面部31bと対向する後面部31cと、前面部31bと後面部31cとをつなぐ両側面部31d,31dと、から構成されている。容器本体30を金属製としたのは、200℃前後の廃油温と30キログラムの重量に耐えられるようにするためである。容器本体30の内外の表面には、さび止めの耐熱塗料を塗ってある。容器本体30の両側面部31d,31dにまたがって、バケツの取っ手のように揺動する取っ手33が揺動自在に設けられている。取っ手33は、作業員がこれを持って廃油容器31全体を持ち上げるためのものである。
【0030】
(冷却水槽の構成)
冷却液槽40は、冷却液を貯留するための容器である。図3に示す冷却水槽40は、外壁41によって四方が囲まれた有底の上部開口容器である。外壁41の高さは、容器本体31と同じ高さに形成されているが、これを異ならせることは構わない。容器本体31の後面部31dは、共通部材として外壁41の一部を構成する。冷却水槽40の製造方法には、少なくとも3種類ある。一つは図3に示す構造を最初から製造する方法である。二つ目は既存の廃油回収容器30の中に仕切り版を入れることで、容器本体31と冷却水槽40に区分けする方法である。三つめは既存の廃油回収容器30の外側に冷却水層40を後付けする方法である。本実施形態の冷却液槽40は容器本体30の一辺に設置する形式のであるが、これに限るものではない。たとえば、城周りを囲む堀のように、容器本体31の周りを囲む冷却液槽(図示を省略)の形式もある。
【0031】
前述のように冷却液槽40(外壁41)は金属製であるから熱伝導率が高い。これにより容器本体31内にある高温廃油と冷却液槽40内にある冷却水とが熱接触し、両者間にある温度勾配により高温廃油の熱エネルギーが冷却液に効率よく移動できるようになっている。すなわち、効率よく高温廃油を冷却可能な構成である。この冷却により高温廃油の温度が下がり、下がった分だけ廃油作業者が火傷する可能性を低くすることができる。
【0032】
フライヤー1の油槽11内から抜き取った廃油Oiは、通常は揚げ物をした直後のものであることが多く、そのときの排油温は160℃~200℃である。このため容器本体31内の廃油Oiは触れないほど熱い。したがって廃油の作業者は、きわめて慎重に、おそるおそる廃油を扱わなければならない。このため作業効率はきわめて低くならざるを得ないが、これとは逆に廃油温度が下がれば下がるほど作業を迅速に行えるので作業時間を短縮することができる。作業上好ましい廃油温は、少なくとも80℃以下、より好ましくは60℃以下である。ここまで下げれば扱いやすい温度と言えるからである。
【0033】
(かけ流し冷却の構造)
冷却の好ましい形態は、かけ流し冷却である。つまり、フライヤーの油槽から高温廃油として排出される食用油に、かけ流しの冷却液を熱接触させて冷却したのちに回収する。かけ流しとは、温泉の湯が常に湯舟に注がれる一方、注がれた分だけ湯舟から流れ出るイメージと似ている。すなわち、新しい冷却液を冷却液槽に注入構造から注入し、注入された分だけの冷却液が排出構造から冷却液槽40の外にあふれ出すことである。換言すると、冷却液槽40の冷却液の量が変化しないことをいう。冷却液として好ましいものは、水道水である。飲料水である必要はなく、工業用水などでもよい。水道水以外の水、たとえば、井戸水なども使用可能である。これら水道水を選択したのは、入手と廃棄が非常に簡単であり、比較的安価であるからである。以下の説明は、水道水を前提にしている。
【0034】
廃油回収容器で受け取った高温廃油を、かけ流し冷却で冷却したのちに回収するので、作業員が火傷する恐れが減り、作業効率がよくなるので回収時間も短縮できる。冷却液をかけ流すことにより、廃油と熱接触する冷却液が連続して入れ替わるので冷却液の温度が上がりづらい。すなわち、ある瞬間において熱吸収による温度上昇した冷却液は移動し、その次の瞬間に新しい冷却液が来て熱吸収するので、高温廃油と冷却液との間に常に大きな温度勾配が保たれる。このため、熱移動を生じやすく、このため効率よい廃油冷却が可能になる。
【0035】
かけ流し冷却を行うため本実施形態では、冷却液を供給する冷却液供給源43と、冷却液供給源43から供給された冷却液を冷却液槽40に注入する注入構造45と、冷却液槽40から溢れる冷却水を排出する排出構造47と、を採用する。本実施形態における冷却液供給源43は、水道である。水道から得た水道水を貯留した容器(たとえば、バケツややかん)を冷却液供給源43としてもよい。
【0036】
注入構造43は、冷却液を注入端から排出する注入パイプ43aと、注入パイプ43aを冷却液槽40の上に取り外し可能に固定する固定リング43bとから構成されている。固定リング43bは、注入パイプ43aが注入時に暴れないように仮固定する部材なので、不要であれば省略してよい。注入パイプ43aを水道ホースで構成し、この水道ホースの一端を水道の蛇口(冷却液供給源)に直接接続するようにしてもよい。この場合、水道ホースを作業者が手で支えるのであれば、固定リング43bは不要となろう。
【0037】
排出構造47は、冷却液槽40の外壁41の容器本体31と面していない部位、具体的には対向部位に形成された複数(本実施形態では二つ)の排出孔により構成されている。それぞれの排出孔の形状は任意であるし数の増減もできるが、外壁41の最大高さに対し、十分に低い位置そして大きさ(孔の総面積)に形成することが好ましい。なぜなら、冷却水の供給量とも関係するが、排出孔から排出しきれず冷却液槽40内に溢れると、高温廃油と接触した冷却水が飛び散るなどの危険があるから、これを避けるためである。
【0038】
冷却液をかけ流すことにより、廃油と熱接触する冷却液が連続して入れ替わるので冷却液の温度が上がりづらい。すなわち、ある瞬間において熱吸収による温度上昇した冷却液は熱対流や後続注入される冷却水の注入圧力などを受けて移動し、その次の瞬間に新しい冷却液が来て熱吸収するので、高温廃油と冷却液との間に常に大きな温度勾配が保たれる。このため、熱移動を生じやすくなり、結果として効率のよい廃油冷却が可能になる。
【0039】
外壁41の排出孔に近い部位には、作業者が下から手をひっかけるL字の取っ手35が取り付けられている。取っ手35は、容器本体31の後面側を持ち上げて前のめりさせて廃油を注ぎ出すためのものである。また、好ましい態様として、前面部31aの下のほうに温度シール37が張り付けられている。廃油容器31に貯留された廃油Oiの温度を確認できるようにするためである。符号51は、正面から見た図1における前面部31bの左下に取り付けられた回収バルブを指す。回収バルブ51は、容器本体31内の廃油を外部に注ぎ出すときに開放し、廃油を貯留するとき閉鎖するバルブである。
【0040】
(本実施形態の第1変形例)
図6ないし8を参照しながら、本実施形態の変形例を説明する。本実施形態とその変形例との違いは、主として冷却液槽の形状である。したがって、本欄以下では、この相違点を中心に説明し、それ以外については、本実施例に係る図3ないし5で用いた符号と同じ符号を変形例に係る図に付するに止め、それらの説明を省略する(後述する第2変形例以下でも同じ)。
【0041】
図6ないし8に示す廃油回収装置50は、廃油を受け取る容器本体51と、廃油と熱接触する冷却液を貯留する冷却液槽60と、から概略構成されている。容器本体51の側壁部には、貫通孔(図では後述する内側エルボー62に隠れて見えない)が形成されている。貫通孔の機能については後述する。冷却液槽60は、容器本体50の中に配され、高温廃油の量が多ければ全体が、少なければ一部が高温廃油に浸るように配される。
【0042】
冷却液槽60は、金属製である。冷却液槽60内に貯留される冷却水が高温廃油と効率よく熱接触できるようにするため、高熱伝導率が必要だからである。冷却液槽60は、一端が底部で他端が開口の筒体61と、筒体61の開口に一端を水密にネジ連結し他端を貫通孔に差し込み連結した内側エルボー62と、を含む略逆L字状に構成されている。内側エルボーの他端側には、開口端より僅か内側の位置にフランジ部63が形成され、フランジ部63から開口端までの外周には、ナット64と螺合するネジ部(図ではナット64に隠れて見えない)が切られている。冷却液槽60の直径や長さは、容器本体51が受け取る高温廃油の量(すなわち、熱エネルギー量)や、容器本体51の形状により適宜設定してよい。ここでは、なるべく大量の冷却水を貯留できるように、容器本体51の底部に届く程度の長さに設定されている。これより容量の大きい冷却液槽が必要であれば、図10に示すように筒体61を底部に対して斜めとなるように設置してもよい
【0043】
容器本体51の内側からフランジ部63との間にパッキン(図示を省略)を挟んでからネジ部を貫通孔に差し込み、容器本体51の外側に突き出たネジ部にパッキン(図示を省略)をはめてナット64で締め付ける。このとき、フランジ部63と容器本体51内側との間がパッキンにより水密になり、容器本体51の外側とナットの間が別のパッキンにより水密になる。こうしたナット64の締め付けにより、冷却液槽60が容器本体51に片持ち保持可能に水密連結される。このとき内側エルボー62の開口は貫通孔に臨み外部に露出するので、そこから冷却水を注入パイプ(図示を省略)等を用いて注入し、また、溢れた冷却水をかけ流し方式で排出することできる。すなわち、貫通孔に臨む当該内側エルボー62の開口は、冷却水の入出を司る入出構造となる。
【0044】
(本実施形態の第2変形例)
第1変形例に対する第2変形例の特徴は、図7に示す基本構造に加え、図9に示す外側エルボー68のみである。図9では、図7に示す部材と同じ部材については、図7に示す符号を付すだけで、それらの部材の説明は省略する。外側エルボー68は、連結端68aと入出端68bを有する略L字状の形状をしている。外側エルボー68の連結端aは、入出端68bを上向きにして内側エルボー62の開口に水密連結されている。外側エルボー68が貫通孔に水密連結されていると言い換えることもできる。こうすると、入出端68bが上向き開口することになるので、冷却液供給源71(たとえば、やかん、水道蛇口)から直接注入できるし、あふれた冷却液をかけ流し方式で排出することができる便利である。
【0045】
(本実施形態の第3変形例)
図11に基づいて、本実施形態の第3変形例を説明する。第3変形例は、冷却水槽60の変形である。その特徴は、筒体61の外側に複数枚の放熱板を設けたことである。これにより、高温廃液と冷却水とが熱接触面積が増えるので、効率のよい冷却が期待できる。
【符号の説明】
【0046】
1 フライヤー
3 フライヤー本体
5 脚部
7 コントロールパネル
11 油槽
11b 底部
13 排油路
15 排油バルブ
17 ヒーター
30 廃油回収容器
31 容器本体
31a 底部
31b 前面部
31c 後面部
31d 側面部
33 取っ手
35 引手
37 シール温度計
40 冷却液槽
41 外壁
43 冷却液供給源
45 注入構造
47 排出構造
50 廃油回収容器
51 容器本体
60 冷却液槽
61 筒体
62 内側エルボー
63 フランジ部
64 ナット
67 入出構造
68 外側エルボー
71 冷却水供給源
73 放熱板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11