(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-28
(45)【発行日】2023-10-06
(54)【発明の名称】回転支持装置、工作機械、および工具状態監視方法
(51)【国際特許分類】
B23Q 1/52 20060101AFI20230929BHJP
B23Q 17/09 20060101ALI20230929BHJP
G05B 19/404 20060101ALI20230929BHJP
【FI】
B23Q1/52
B23Q17/09 A
G05B19/404 G
(21)【出願番号】P 2019198178
(22)【出願日】2019-10-31
【審査請求日】2022-09-02
(73)【特許権者】
【識別番号】596037194
【氏名又は名称】パスカルエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】北浦 太一郎
(72)【発明者】
【氏名】二宮 隆司
【審査官】小川 真
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-079828(JP,A)
【文献】特開2013-006264(JP,A)
【文献】特開2015-087820(JP,A)
【文献】特開平10-337627(JP,A)
【文献】特開平09-076144(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 1/01、1/52
B23Q 15/00
B23Q 17/00、17/09
G05B 19/18、19/404
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サーボモータと、
外周にカム面が形成され、前記サーボモータにより回転駆動される入力軸と、
前記カム面に係合する複数のカムフォロアが周方向に並んで設けられ、前記入力軸の回転動力が前記カム面および複数の前記カムフォロアを介して伝達されて前記入力軸よりも低い回転数で回転する出力軸と、
前記出力軸に接続され、ワークを保持し、前記出力軸と共に回転可能なワーク保持部と、
前記ワークへの加工によって前記ワーク保持部が回転方向の外力を受けている状態で、前記ワーク保持部を回転方向において目標とする位置に回転させるための電流を前記サーボモータに供給する制御部と、
前記ワークの加工時の前記電流に関する値を取得して所定の演算を行う演算部と、を備え
、
前記演算部は、予め記憶している値と前記ワークの加工時の前記電流とを比較し、比較結果を、前記ワークを加工している工具の状態に関する情報として出力する、
回転支持装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記ワークへの加工によって前記ワーク保持部が回転方向の外力を受けている状態で前記ワーク保持部が回転方向における一定の位置に近づくように、前記電流を前記サーボモータに供給する、
請求項1に記載の回転支持装置。
【請求項3】
ワークを加工するための工具と、
請求項1
または2に記載の回転支持装置と、を備える、
工作機械。
【請求項4】
ワーク保持部に保持されたワークを加工する工具の状態を監視する、工具状態監視方法であって、
前記ワーク保持部は、出力軸と共に回転可能であり、前記出力軸においては、サーボモータにより回転駆動される入力軸の外周に形成されたカム面に係合する複数のカムフォロアが周方向に並んで設けられており、前記出力軸は、前記入力軸の回転動力が前記カム面および複数の前記カムフォロアを介して伝達されて前記入力軸よりも低い回転数で回転するものであり、
前記ワークへの加工によって前記ワーク保持部が回転方向の外力を受けている状態で、前記ワーク保持部を回転方向において目標とする位置に回転させるための電流が前記サーボモータに供給され、
前記工具状態監視方法は、所定の値と前記ワークの加工時の前記電流とを比較し、比較結果を、前記工具の状態に関する情報として出力する工程を備える、
工具状態監視方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、回転支持装置、工作機械、および工具状態監視方法に関する。
【背景技術】
【0002】
回転支持装置は、たとえばマシニングセンタなどの工作機械に搭載され、加工対象物であるワークを保持する。一般的な回転支持装置は、動力源、ウォームギヤ等の動力伝達機構、ワークを保持するテーブル(ワーク保持部)、および、ワーク加工時にテーブルの位置を固定するブレーキ等を備える。テーブルの回転時には、負荷を小さくするためにブレーキを解除した後にテーブルを回転させる。ワークを位置決めした後、ブレーキを作動させることによってテーブルおよびワークの位置が固定される。この状態でワークに対して切削、研削や穴開けなどの各種加工が行なわれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
冒頭で述べたようなウォームギアとブレーキ機構とを採用した場合、ワークを位置決めして加工するという一連の動作中にブレーキのON/OFF動作が行われるため、加工に要する時間が長くなる。ワークを載置しているテーブル(ワーク保持部)をブレーキによって固定した状態では、停止しているワークに対して工具が移動しながら加工が行われる。この場合、ブレーキによりテーブルが固定されているため、ワークを回転させながらワークに切削加工等を施すことはできない。また、ブレーキを解除してワークを回転させながらワークに切削加工等を施すこともできるが、ウォームギアの場合にはバックラッシによる位置ずれの影響が少なくないため、ワークを高い位置精度で保持したり移動させたりすることが難しく(特に、回転方向が逆転する際にバックラッシが発生しやすい)、ワークを高精度に加工するという点でウォームギアには改善の余地が存在している。
【0005】
また、サーボ制御時の負荷電流を監視し、負荷電流に基づき所定の演算を行ない(たとえば、工具摩耗の進行度合いを推定し)、演算結果に応じた所定の処理を実施することができる(上記の特許文献1参照)。しかし、冒頭で述べたようなウォームギアとブレーキ機構とを採用した場合、テーブル(ワーク保持部)およびワークの位置決めされた状態をブレーキによって保持することが可能になるが、ブレーキによって固定されたテーブルに対してサーボ制御を実施することはできなくなり、サーボ制御時の負荷電流に関する情報を取得するといったこともできなくなる。
【0006】
本明細書は、ワーク保持部をサーボ制御によって目標とする位置に回転させるための電流を、ブレーキを備えないことにより取得可能とする構成を備えた回転支持装置を開示することを目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書に基づく回転支持装置は、サーボモータと、外周にカム面が形成され、上記サーボモータにより回転駆動される入力軸と、上記カム面に係合する複数のカムフォロアが周方向に並んで設けられ、上記入力軸の回転動力が上記カム面および複数の上記カムフォロアを介して伝達されて上記入力軸よりも低い回転数で回転する出力軸と、上記出力軸に接続され、ワークを保持し、上記出力軸と共に回転可能なワーク保持部と、上記ワークへの加工によって上記ワーク保持部が回転方向の外力を受けている状態で、上記ワーク保持部を回転方向において目標とする位置に回転させるための電流を上記サーボモータに供給する制御部と、上記ワークの加工時の上記電流に関する値を取得して所定の演算を行う演算部と、を備える。
【0008】
上記回転支持装置においては、上記制御部は、上記ワークへの加工によって上記ワーク保持部が回転方向の外力を受けている状態で上記ワーク保持部が回転方向における一定の位置に近づくように、上記電流を上記サーボモータに供給してもよい。
【0009】
上記回転支持装置においては、上記演算部は、予め記憶している値と上記ワークの加工時の上記電流とを比較し、比較結果を、上記ワークを加工している工具の状態に関する情報として出力してもよい。
【0010】
本明細書に基づく工作機械は、ワークを加工するための工具と、本明細書に基づく上記の回転支持装置と、を備える。
【0011】
本明細書に基づく工具状態監視方法は、ワーク保持部に保持されたワークを加工する工具の状態を監視する、工具状態監視方法であって、上記ワーク保持部は、出力軸と共に回転可能であり、上記出力軸においては、サーボモータにより回転駆動される入力軸の外周に形成されたカム面に係合する複数のカムフォロアが周方向に並んで設けられており、上記出力軸は、上記入力軸の回転動力が上記カム面および複数の上記カムフォロアを介して伝達されて上記入力軸よりも低い回転数で回転するものであり、上記ワークへの加工によって上記ワーク保持部が回転方向の外力を受けている状態で、上記ワーク保持部を回転方向において目標とする位置に回転させるための電流が上記サーボモータに供給され、上記工具状態監視方法は、所定の値と上記ワークの加工時の上記電流とを比較し、比較結果を、上記工具の状態に関する情報として出力する工程を備える。
【発明の効果】
【0012】
上記手段によれば、ワーク保持部をサーボ制御によって目標とする位置に回転させるための電流を、ブレーキを備えないことにより取得可能とする構成を備えた回転支持装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】マシニングセンタ1(工作機械)の構成を示す図である。
【
図2】回転支持装置10、主軸4および工具6を示す図である。
【
図3】インデックステーブル20の内部構造を示す図である。
【
図4】回転支持装置10の機能ブロックを示す図である。
【
図5】ワーク保持部40の取付部41が重力方向における下方に配置されている状態を示す図である。
【
図6】ワーク保持部40が
図5に示す状態から時計回り方向に90°回転した状態を示す図である。
【
図7】加工時のA軸周りのトルクの時間的変化を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
発明を実施するための形態について、以下、図面を参照しながら説明する。以下の説明において同一の部品および相当部品には同一の参照番号を付し、重複する説明は繰り返さない場合がある。
【0015】
(マシニングセンタ1)
図1は、マシニングセンタ1(工作機械)の構成を示す図である。マシニングセンタ1は、本体部2、表示部3、主軸4、マガジン5、工具6および回転支持装置10を含む。回転支持装置10は、インデクサ装置とも呼称できるものであり、ワークW(加工対象物)を支持する。主軸4は、工具6や、マガジン5に保持された不図示の工具を保持可能である。工具6は、回転支持装置10に支持されたワークWに切削加工などを施す。
【0016】
(回転支持装置10)
図2は、回転支持装置10、主軸4および工具6を示す図である。回転支持装置10は、インデックステーブル20、サポートテーブル30、および、ワーク保持部40を含む。インデックステーブル20およびサポートテーブル30はベース12上に設けられる。ワーク保持部40は、インデックステーブル20とサポートテーブル30との間に配置され、これらのテーブルによってA軸周りに回転可能に支持される。
【0017】
ワーク保持部40に、ワークWが固定される。ワーク保持部40は、取付部41およびアーム42,43を含み、全体として略ゆりかご状の形状を有している。取付部41に、ワークWが固定される。アーム42は、取付部41から見てインデックステーブル20の側に設けられる。アーム43は、取付部41から見てサポートテーブル30の側に設けられる。インデックステーブル20によって回転させられるアーム42の回転中心軸Aと、サポートテーブル30によって保持されるアーム43の回転中心軸Aとは、略同一直線上に位置する。
【0018】
ワークWは、取付部41に設けられた複数のクランプ装置44,45により取付部41に固定される。クランプ装置44,45には、インデックステーブル20およびサポートテーブル30の各々に設けられたロータリジョイントを介して油圧が供給され、油圧によってクランプ装置44,45はワークWを取付部41に固定する。ワーク保持部40が回転されることで、ワークWはワーク保持部40を介してインデックステーブル20およびサポートテーブル30によってA軸周りに回転可能に支持されることになる。
【0019】
(インデックステーブル20)
図3は、インデックステーブル20の内部構造を示す図である。
図4は、インデックステーブル20を含む、回転支持装置10の機能ブロックを示す図である。
図2~
図4に示すように、インデックステーブル20は、サーボモータ21、位置検出器22、歯車23,24、入力軸25、出力軸27およびロータリジョイント29などを備える。
【0020】
インデックステーブル20は、軸受けによって、ワーク保持部40(アーム42)をA軸周りに回転可能に支持する。サポートテーブル30にもこれらと同様なロータリジョイントおよび軸受けが設けられており、ワーク保持部40(アーム43)をA軸周りに回転可能に支持する。
【0021】
より具体的には、サーボモータ21からの動力は歯車23,24を介して入力軸25に伝達される。歯車24は歯車23よりも低い回転数で入力軸25と一体的に回転する。入力軸25は、歯車23,24を介してサーボモータ21によって間接的に回転駆動される。入力軸25の外面には螺旋状に延在するカム面26が形成されている。
【0022】
出力軸27にはカム面26に係合する複数のカムフォロア28が周方向に並んで設けられている。入力軸25の回転動力がカム面26および複数のカムフォロア28を介して出力軸27に伝達されて、出力軸27は入力軸25よりも低い回転数でワーク保持部40(アーム42)と一体的に回転する。歯車23,24により1つの減速機構が構成され、入力軸25と出力軸27とにより別の1つの減速機構が構成される。サーボモータ21からのトルクはこれらの減速機構によって増大されて出力軸27およびワーク保持部40に伝達され、ワーク保持部40は出力軸27と共に回転する。
【0023】
サーボモータ21の動力が出力軸27に伝達される際、複数のうちのいくつかのカムフォロア28がカム面26に接触している。たとえば、これらいくつかのカムフォロア28のうち、周方向において一端側に位置するカムフォロア28と、周方向において他端側に位置するカムフォロア28とは、矢印AR1,AR2(
図3)に示すように、カム面26を押圧する。カム面26は複数(ここでは2つ)のカムフォロア28からの予圧を受け、これによって、入力軸25と出力軸27との間にガタが生じることや、バックラッシなどが生じることが抑制されている。
【0024】
インデックステーブル20には摩擦ブレーキ等の、アーム42の回転を止めるためのブレーキ手段が設けられていない。インデックステーブル20として、摩擦ブレーキを用いずにサーボモータ21のみでワーク保持部40を回転支持することが可能なローラギア型のインデックステーブルを用いることにより、ブレーキ時間を削減して生産性の向上にも寄与し得る。
【0025】
複数のカムフォロア28の各々は回転可能に設けられており、回転しながら入力軸25からの動力を出力軸27に伝達する。これによりカム面26と複数のカムフォロア28との間の摩擦が低減されている。カム面26と複数のカムフォロア28とを含むローラカム機構は、入力軸25からの動力を高精度に出力軸27に伝達することができ、ワーク保持部40の位置決めを高精度に行なうことができる。
【0026】
図4に示すように、回転支持装置10は、制御部50、演算部51およびアンプ52を機能ブロックとして備える。制御部50にアンプ52が接続されており、アンプ52は、動力ケーブルおよび信号ケーブルを介してサーボモータ21および位置検出器22にそれぞれ接続されている。制御部50は、アンプ52を通して、サーボモータ21の電流値や位置検出器22からの位置情報を採取できる。制御部50および演算部51は、サーボモータ21の採取した電流値から、モータトルク値や外部負荷データ、位置や速度情報を演算する。演算部51は、制御部50から出力されて受け取ったモータトルク値などの情報を演算または比較し、所定の処理を行う。
【0027】
たとえば制御部50は、ワークWへの加工によってワーク保持部40が回転方向の外力を受けている状態で、ワーク保持部40を回転方向において目標とする位置に回転させるための電流をサーボモータ21に供給する。たとえば、ワーク保持部40が回転方向における一定の位置に近づく(停止する)ようにサーボ制御が行われ、これによって必要な電流がサーボモータ21に供給される。より具体的には、たとえばある所定の停止位置からずれないように制御部50およびサーボモータ21がワーク保持部40に対する位置制御または姿勢制御を行なう。位置検出器22などからの信号と制御部50が有している目標値とが比較され、これらの間にずれが生じていると判断された場合に、停止位置(目標位置)に戻そうとするための指令が制御部50(サーボドライバ等)から電流値としてサーボモータ21に供給され、トルクが発生する。停止した位置からずれて初めて負荷としてのトルクが発生することになる。制御部50に接続されたアンプ53、主軸4(送り軸)用のサーボモータ54、および位置検出器55においても、適宜同様な処理が行われる。
【0028】
ワーク保持部40が回転方向における一定の位置に近づくように(換言すると、一定の位置で実質的に停止した状態を保持する)ようにサーボ制御している状態でワークWに加工を施す際には、カムフォロア28とカム面26との間にガタがほとんど発生しないため、ワーク保持部40に不要な微細な変位が生じることを抑制することができ、ワーク保持部40の回転方向における位置が目標位置からずれることを抑制することができる。ワーク保持部40を連続してA軸周りに回転させながら(ワークWを送りながら)ワークWを加工する場合においても、カムフォロア28とカム面26との間にガタがほとんど発生しないため、ワーク保持部40の回転方向における移動が目標の移動経路からずれることを抑制できる。
【0029】
図5に示すように、ワーク保持部40の取付部41が重力方向における下方に配置されている状態では、回転中心軸Aの水平方向における位置と、ワーク保持部40の水平方向における重心位置とは略一致している。ワーク保持部40は安定した姿勢を形成しているといえる。
【0030】
一方で必要に応じて、
図6に示すように、ワーク保持部40が
図5に示す状態から時計回り方向に90°回転する。この状態では、回転中心軸Aの位置と、ワーク保持部40の重心位置とは、水平方向において互いにずれており、回転中心軸Aの周りにはワーク保持部40を回転させようとするモーメントが作用している。
【0031】
上述のローラギア機構を備えた回転支持装置10によれば、ワーク保持部40の回転位置を保持するための摩擦ブレーキ機構を備えていなくても、サーボ制御のみでこのモーメントに対して十分に対抗することが可能であり、たとえばワーク保持部40が回転方向における一定の位置または所定の加工経路に近づくようにサーボ制御している状態でワークWに容易に加工を施すことが可能である。
【0032】
(演算部51)
図4を再び参照して、本実施の形態においては、演算部51が、ワークWの加工時の電流に関する値を取得して所定の演算を行う。たとえば、工具6がワークWを加工していることによって、ワーク保持部40がA軸周りの回転方向の外力を受ける。制御部50は、ワーク保持部40が当該外力を受けている状態で、ワーク保持部40がA軸周りの回転方向における一定の位置または所定の加工経路に近づくように、必要な電流をサーボモータ21に供給する。演算部51は、サーボモータ21に供給される電流に関する値を取得する。
【0033】
図7に示すように、サーボモータ21に供給される電流に関する値を、A軸周りのトルクに換算して時間軸との関係を測定したとすると、その結果は
図7に示すグラフのように表される。工具6によって切削加工が実施されるたびに、A軸周りに発生するトルクが瞬間的に増大していることがわかる。
図7には、摩耗が発生した工具6(摩耗ありの工具)を用いる場合のトルクの時間的変化を点線(破線)で記載し、摩耗が発生していない工具6(摩耗なしの工具)を用いる場合のトルクの時間的変化を実線(連続線)で記載している。
【0034】
図7から読み取れるように、摩耗ありの工具6を用いる場合の方が、摩耗なしの工具6を用いる場合に比べて、A軸周りに発生するトルクが大きくなる。たとえばワークWの加工時において、ワーク保持部40の姿勢制御のためにサーボモータ21に供給される電流を監視することによって、たとえばその電流値が所定範囲から外れた場合には、摩耗の進行度が閾値を超えたと推定することが可能である。
【0035】
加工時において、ワーク保持部40がA軸周りの回転方向における一定の位置に近づく(同一の位置を保つ)ようにサーボモータ21に供給される電流を第1の電流とする。加工時において、ワーク保持部40のA軸周りの回転方向における移動が目標の移動経路になるように(ワークWが所定経路に沿って送られるように)サーボモータ21に供給される電流を第2の電流とする。この場合、ワークWの送り動作に必要となる第2の電流に比べて、ワークWを定位置に保持させるのに必要となる第1の電流は十分に小さい。
【0036】
加工時においてワークWの送り動作に必要となる第2の電流も、摩耗の影響により増大するため、その増大量(通常値からの変化度)に基づいて工具6の摩耗状態などを推定してもよい。一方、加工時において、ワーク保持部40がA軸周りの回転方向における一定の位置に近づく(同一の位置を保つ)ようにサーボモータ21に供給される第1の電流を監視することによって、摩耗の進行度を高い精度で推定することができ、たとえば摩耗の進行度が閾値を超えたことをもってユーザーに交換を促すといったことも高い精度で実施することが可能である。演算部51は、このような監視動作に限られず、予め記憶している値とワークWの加工時の上記電流とを比較し、比較結果を、ワークWを加工している工具の状態に関する任意の情報(たとえば経済性切削条件を判断または決定、考案するための情報)として出力してよい。
【0037】
なお上述の実施の形態は、いわゆるローラギア機構に着目して説明を行ったが、上述の実施の形態の記載は、本明細書による発明の開示範囲からウォームギアの利用を積極的に排除することを意図していない。たとえば、摩擦ブレーキが設けられいなくてもガタやバックラッシュが発生しない(またはほとんど発生しない)機構がローラギア以外の手段で実現可能であれば、そのような構成に上記思想を適用することが可能である。装置大型化などが必要となる可能性があるが、ウォームギアやいわゆるDD(ダイレクトドライブ)モータの構造にも、上記のようなブレーキレス構成でサーボ制御に必要な電流値を監視するという思想はなじみやすいものである。
【0038】
また、上述の実施の形態では、カム面26に係合する複数のカムフォロア28が、出力軸27の外周において周方向に並んで設けられている。複数のカムフォロア28が設けられている周方向における範囲は、図面上では360°(全周)にわたっているが、複数のカムフォロア28が設けられている周方向における範囲は、90°や180°など、出力軸27の外周における一部分であってもよい。
【0039】
また、上述の実施の形態では、複数のカムフォロア28は出力軸27の回転半径方向に沿って放射状に延びるように設けられている。複数のカムフォロア28の回転中心軸は、出力軸27の回転中心軸に対して直交する方向に延びている。このような構成に限られず、複数のカムフォロア28は、出力軸27における他の位置に設けられてもよい。たとえば(特開2008-045662号公報)に開示されているような、バレルカム形式を構成するように、複数のカムフォロア28が出力軸27に設けられていてもよい。この場合、複数のカムフォロア28の回転中心軸は、出力軸27の回転中心軸に対して平行に延びる。また、同公報に開示されているような、ローラギア形式とバレルカム形式との間の形式を構成するように、複数のカムフォロア28が出力軸27に設けられていてもよい。この場合、複数のカムフォロア28の回転中心軸は、出力軸27の回転中心軸に対して、たとえば約45°の角度で交差するように延びる。45°に限られず、45°以外の任意の傾斜角度を取り得るものである。
【0040】
以上、実施の形態について説明したが、上記の開示内容はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0041】
1 マシニングセンタ、2 本体部、3 表示部、4 主軸、5 マガジン、6 工具、10 回転支持装置、12 ベース、20 インデックステーブル、21,54 サーボモータ、22,55 位置検出器、23,24 歯車、25 入力軸、26 カム面、27 出力軸、28 カムフォロア、29 ロータリジョイント、30 サポートテーブル、40 ワーク保持部、41 取付部、42,43 アーム、44,45 クランプ装置、50 制御部、51 演算部、52,53 アンプ、A 回転中心軸、AR1,AR2 矢印、W ワーク。