(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-28
(45)【発行日】2023-10-06
(54)【発明の名称】油除去フィルタ
(51)【国際特許分類】
F24F 7/06 20060101AFI20230929BHJP
B01D 45/14 20060101ALI20230929BHJP
F24F 13/28 20060101ALN20230929BHJP
【FI】
F24F7/06 101A
B01D45/14
F24F13/28
(21)【出願番号】P 2020102999
(22)【出願日】2020-06-15
【審査請求日】2022-06-17
(73)【特許権者】
【識別番号】599094990
【氏名又は名称】サンタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100210295
【氏名又は名称】宮田 誠心
(74)【代理人】
【識別番号】100088133
【氏名又は名称】宮田 正道
(72)【発明者】
【氏名】三浦 貴博
【審査官】▲高▼藤 啓
(56)【参考文献】
【文献】特開昭58-180214(JP,A)
【文献】特開2012-082973(JP,A)
【文献】特開2012-120947(JP,A)
【文献】特開平07-061399(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2018-0122273(KR,A)
【文献】中国実用新案第210164687(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 7/06
F24F 13/28
B01D 45/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気経路の途中に設けられている油除去フィルタであって、
排気経路内の気流によって回転し、その回転軸が気流方向と略平行となっている複数の回転体を有し、
回転軸方向に隣り合う回転体は、気流による回転方向が逆となっており
、
回転体は、回転軸を中心として放射方向に延びる複数の翼を有し、
翼は、回転軸と平行な法線を有する延出部と、気流が衝突することによって回転体が回転する力が発生する回転力発生部と、翼表面に付着した油を回転の遠心力を利用して回転軸から遠ざかる方向に案内する案内部とを有し、
回転力発生部は、延出部の回転方向前方側の端から、延出部に対して気流方向の上流側に折れ曲がっており、
案内部は、延出部の回転方向後方側の端から、延出部に対して気流方向の上流側に折れ曲がっていることを特徴とする油除去フィルタ。
【請求項2】
回転体の気流方向の上流側に、回転体に向かって固体が侵入することを防止する固体侵入防止体が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の油除去フィルタ。
【請求項3】
回転体は、軸受を介して回転軸に回転可能に支持されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の油除去フィルタ。
【請求項4】
回転体は、その表面に親水コーティング層を有することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の油除去フィルタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気経路の途中に設けられている油除去フィルタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
焼肉店や焼き鳥店等の飲食店において、加熱調理器具で肉等の食材を加熱すると油煙が発生する。排気ダクト等を通してこの油煙を店外に排出する場合、排気に含まれる油が排気ダクト内に付着してしまう。この排気ダクト内に付着した油は、排気ダクト内火災の原因や排気ダクトの洗浄等のメンテナンス作業の増大の原因となってしまう。
【0003】
そのため、排気経路の途中にフィルタを設けて、排気に含まれる油を除去する。このようなフィルタの一例として、特許文献1に示すレンジフードのフィルタがある。このレンジフードは、空気の流れを発生させるファンと、その空気の流れの流路上であってそのファンより上流側に存在し、その空気の流れを通過させる孔を有するフィルタと、そのフィルタを回転させる電動機とを有する。フィルタが回転することで油の除去率を向上させることができるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、フィルタを回転させるために電動機が必要となるため、その分、消費電力が増大してしまうという問題がある。
【0006】
また、フィルタとそのフィルタを回転させる電動機とを有する装置は構成が複雑化し、メンテナンスの手間が増大する問題もある。
【0007】
フィルタとそのフィルタを回転させる電動機とを有する装置は、構成が複雑化して部品点数の増加するため、製品寿命に悪影響を及ぼすという問題がある。
【0008】
そこで、上記問題を解決すべく、本発明は、稼働中の消費電力を抑制すること、メンテナンスの手間を抑制すること、及び、製品寿命の長期化を実現することを両立した油除去フィルタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の油除去フィルタは、排気経路の途中に設けられている油除去フィルタであって、排気経路内の気流によって回転し、その回転軸が気流方向と略平行となっている複数の回転体を有し、回転軸方向に隣り合う回転体は、気流による回転方向が逆となっており、回転体は、回転軸を中心として放射方向に延びる複数の翼を有し、翼は、回転軸と平行な法線を有する延出部と、気流が衝突することによって回転体が回転する力が発生する回転力発生部と、翼表面に付着した油を回転の遠心力を利用して回転軸から遠ざかる方向に案内する案内部とを有し、回転力発生部は、延出部の回転方向前方側の端から、延出部に対して気流方向の上流側に折れ曲がっており、案内部は、延出部の回転方向後方側の端から、延出部に対して気流方向の上流側に折れ曲がっている。
【0010】
請求項1の油除去フィルタによれば、回転体が排気経路内の気流によって回転するようになっている。そのため、回転体を回転させるための電動機を必要とすることなく、排気経路内で回転体を回転させて、排気に含まれる油を除去することができる。
【0011】
請求項1の油除去フィルタによれば、回転軸が気流方向と略平行となっている複数の回転体を有している。そのため、回転体は、排気経路内の気流を必要以上に妨げることなく回転可能となっている。
【0012】
また、請求項1の油除去フィルタによれば、回転体は、その回転軸周りに回転軸周りに回転可能に支持されていることとなる。回転体の形状によっては、回転軸に周期的なトルクが発生する場合がある。請求項1の油除去フィルタによれば、回転軸方向に隣り合う回転体は、気流による回転方向が逆となっている。そのため、それぞれの回転体によって回転軸に発生するトルクの一部が相殺されるように調整しやすくなる。特に、回転軸方向に隣り合う回転体の慣性モーメントが同一である場合は、その調整がより容易になる。回転軸に発生するトルクの一部が相殺されれば、気流方向と略平行に回転軸を固定しておくため構成を簡素化できる。また、回転軸に発生するトルクの一部が相殺されれば、回転軸を固定するための構成において、疲労破壊の原因となる応力振幅を抑制することができるので、油除去フィルタの製品寿命の長寿命化を実現することができる。
【0013】
請求項1の油除去フィルタによれば、翼が排気経路内の気流を必要以上に妨げることない。また、排気経路内で翼が回転する空間領域に到達した排気に含まれる油を効率よく除去することができる。さらに翼に付着した油の一部を、遠心力によって翼から強制的に分離することができる。
【0014】
請求項1の油除去フィルタによれば、延出部に対する回転力発生部の傾斜角度を容易に変更可能となっている。この傾斜角度を変化させることで、回転体が回転する力も変化し、回転体の回転数や油除去フィルタの排気抵抗を容易に調整することができる。
【0015】
請求項1の油除去フィルタによれば、案内部が翼表面に付着した油を回転の遠心力を利用して回転軸から遠ざかる方向に案内する。これにより、排気経路内で翼が回転する空間領域外に油を飛ばすことができる。したがって、回転中に翼から翼へと油が移ってしまうことを抑制することができる。
【0016】
請求項2の油除去フィルタは、請求項1の油除去フィルタにおいて、回転体の気流方向の上流側に、回転体に向かって固体が侵入することを防止する固体侵入防止体が設けられている。
【0017】
請求項2の油除去フィルタによれば、請求項1の油除去フィルタと同様の作用に加えて、固体侵入防止体が設けられていることによって、回転体に固体が衝突して回転体が破損することや、回転体に固体が絡みついて回転体の回転が妨げられることを抑制できる。
【0018】
請求項3の油除去フィルタは、請求項1又は2の油除去フィルタにおいて、回転体は、軸受を介して回転軸に回転可能に支持されている。
【0019】
請求項3の油除去フィルタによれば、請求項1又は2の油除去フィルタと同様の作用に加えて、回転体は、軸受を介して回転軸に回転可能に支持されているので、回転体が排気経路内の気流によって回転可能となるとともに、回転体の安定した高速回転が可能となる。
【0020】
請求項4の油除去フィルタは、請求項1から3のいずれかの油除去フィルタにおいて、回転体は、その表面に親水コーティング層を有する。
【0021】
請求項4の油除去フィルタによれば、請求項1から3のいずれかの油除去フィルタと同様の作用に加えて、回転体は、その表面に親水コーティング層を有するので、回転体の洗浄時に、回転体に付着した油と親水コーティング層との間に水が浸入して、油を回転体から容易に分離させることができる。
【発明の効果】
【0022】
請求項1から4の油除去フィルタは、稼働中の消費電力を抑制すること、メンテナンスの手間を抑制すること、及び、製品寿命の長期化を実現することを両立することを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の一実施形態の油除去フィルタを取り付ける過程を示す排気装置の正面図である。
【
図2】本発明の一実施形態の油除去フィルタの筐体の一部を切り欠いた斜視図である。
【
図3】本発明の一実施形態の油除去フィルタの筐体の一部を切り欠いた正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の一実施形態の油除去フィルタ1を各図面に基づいて説明する。
【0025】
油除去フィルタ1が設けられる排気装置10は、例えば、
図1に示すように、加熱調理器具100の上方に配設され、排気用ダクト11に接続されている垂下管12を有している。図示を省略した排気ファンによって、垂下管12の先端から加熱調理器具100で発生して上昇する油煙を吸引し、排気用ダクト11を通して店外に排気できるようになっている。
【0026】
垂下管12及び排気用ダクト11の内部は、吸引された油煙を含む排気が流れる排気経路となる。
【0027】
垂下管12及び排気用ダクト11の内部には、排気ファンによって、気流が生じるようになっている。
【0028】
この垂下管12の途中に油除去フィルタ1が配設されている。つまり排気経路の途中に油除去フィルタ1が設けられている。
図1に示すように、垂下管12は、途中で分割できるようになっている。油除去フィルタ1は、
図1の(a)(b)(c)の順で垂下管12に内蔵することが可能となっている。
【0029】
油除去フィルタ1は、
図2及び
図3に示すように、筐体20と、筐体20内部に配設されている回転軸21と、排気経路内の気流によって回転する4個の回転体2~5と、回転体2~5に向かって固体が侵入することを防止する固体侵入防止体22とを有する。
【0030】
筐体20は、横断面が円形の筒体である。排気ファンによって生じる気流方向は、
図2及び
図3の矢印Aの方向となっている。
【0031】
回転軸21は、筐体20の横断面において、円の中心に位置となるように筐体20内部に固定用治具23を介して固定されている。
【0032】
回転軸21は、筐体20の縦断面において、気流方向と略平行となっている。
【0033】
回転体2~5は、共通する一本の回転軸21周りに回転するようになっている。
【0034】
回転体2~5は、それぞれ独立した軸受を介して回転軸21に回転可能に支持されている。
【0035】
回転体2~5に気流が当たることによって、回転体2~5は、動力源がなくても回転するようになっている。
【0036】
回転軸21の方向に隣り合う回転体2と回転体3は、気流による回転方向が逆となっている。同様に、回転軸21の方向に隣り合う回転体3と回転体4、及び、回転体4と回転体5も、それぞれ気流による回転方向が逆となっている。回転体2,4は、
図4に示すように矢印B方向に回転し、回転体3,5は、
図5に示すように矢印C方向に回転する。
【0037】
回転体2~5は、その表面に親水コーティング層を有する。
【0038】
回転体2~5の気流方向の上流側と下流側にそれぞれ、固体侵入防止体22が回転軸21に固定されている。固体侵入防止体22は、網からなる。
【0039】
回転体2は、回転軸21を中心として放射方向に延びる複数の翼6を有し、回転体3は、回転軸21を中心として放射方向に延びる複数の翼7を有し、回転体4は、回転軸21を中心として放射方向に延びる複数の翼8を有し、回転体5は、回転軸21を中心として放射方向に延びる複数の翼9を有する。
【0040】
翼6は、延出部61と、回転力発生部62と、案内部63とを有する。
【0041】
延出部61は、回転軸21と平行な法線を有する。
【0042】
回転力発生部62は、延出部61の回転方向前方側の端から、延出部61に対して気流方向の上流側に折れ曲がった状態となっている。
【0043】
回転力発生部62は、延出部61の法線と非平行な法線を有する。
【0044】
つまり、気流方向に対して、回転発生部62は傾斜している。そのため、回転発生部62は、気流が衝突することによって回転体2が回転する力が発生する。
【0045】
案内部63は、延出部61の回転方向後方側の端から、延出部61に対して気流方向の上流側に折れ曲がった状態となっている。
【0046】
案内部63は、延出部61の法線と非平行な法線を有する。
【0047】
本実施形態では、案内部63の法線は、回転軸21と直角となっている。
【0048】
翼6の気流方向の上流側の面には油が付着する。回転体2の回転によって、この油が翼6の回転方向後方側の端から飛んでしまうと、隣の翼6に再付着する可能性がある。
【0049】
延出部61の気流方向の上流側の面で回転方向後方側の端に到達した油は、案内部63と、回転体2の回転によって生じる遠心力とによって、回転軸21から遠ざかる方向に案内されていく。
【0050】
回転軸21から最も遠い案内部63の端に油が到達すると、回転体2の周囲にある筐体20の内周面に向かって飛ぶ可能性が高くなる。よって、案内部63によって、隣の翼6に油が飛んで再付着することを抑制できる。
【0051】
図4及び
図5に示すように、回転体3の翼7、回転体4の翼8及び回転体5の翼9も回転体2の翼6と同じ構成となっている。つまり、回転体2~5の慣性モーメントは同一となっている。
【0052】
以下、本発明の一実施形態の油除去フィルタ1の油除去作用について説明する。
【0053】
排気装置10の排気ファンが稼働すると、垂下管12の先端から加熱調理器具100から発生して上昇する油煙が吸引される。それと同時に、排気経路に油煙を含む排気による気流が生じる。
【0054】
この気流によって、油除去フィルタ1の回転体2~5はそれぞれ回転する。
【0055】
油除去フィルタ1内において、油煙を含む排気が存在する空間で回転体2~5が回転することとなる。排気中の油が回転体2~5に衝突して、回転体2~5の表面に付着する。
【0056】
回転体2~5表面に付着した油は、さらに回転体2~5の回転の遠心力によって、筐体20の内周面に向かって飛散することとなる。
【0057】
これにより、油除去フィルタ1は、通過する排気から油を除去することができるようになっている。
【0058】
上記実施形態では、いわゆる上引きの排気装置10に油除去フィルタが設けられている場合について説明したが、これに限定されることはない。油除去フィルタ1は、下引きの排気装置において、油を含む排気が流れる排気経路の途中に配設されていてもよい。
【0059】
上記実施形態では、垂下管12の途中に油除去フィルタ1が配設されている場合について説明したが、これに限定されることはない。油除去フィルタ1は、例えば、排気ダクト等の垂下管の途中以外の位置であって排気経路の途中に配設されていてもよい。
【0060】
上記実施形態では、筐体20の横断面が円形の筒体である場合について説明したが、これに限定されることはない。例えば、筐体の横断面が多角形の筒体であってもよい。
【0061】
上記実施形態では、回転軸21は、筐体20の横断面において、円の中心に位置となるように筐体20内部に固定されており、その回転軸21は一本である場合について説明したが、これに限定されることはない。回転軸は、回転体2~5が回転可能であれば、筐体20の横断面において、円の中心からずれた位置であってもよく、回転軸が複数本であってもよい。
【0062】
上記実施形態では、回転体2~5の気流方向の上流側と下流側にそれぞれ、固体侵入防止体22が設けられている場合について説明したが、これに限定されることはない。固体侵入防止体は、回転体の気流方向の少なくとも上流側に設けられていればよい。
【0063】
上記実施形態では、固体侵入防止体22が回転軸21に固定されている場合について説明したが、これに限定されることはない。固体侵入防止体は直接筐体に固定されていてもよい。
【0064】
上記実施形態では、固体侵入防止体22は、網からなる場合について説明したが、これに限定されることはない。例えば、通気可能となっているスリット型や多数孔型の固体侵入防止体であってもよい。
【0065】
上記実施形態では、回転体2の翼6は、延出部61と、回転力発生部62と、案内部63とを有する場合について説明したが、これに限定されることはない。例えば、回転体は、一般的なプロペラの形状の翼であり、排気経路内の気流によって回転すればよい。
【符号の説明】
【0066】
1 油除去フィルタ
2 回転体
3 回転体
4 回転体
5 回転体
6 翼
7 翼
8 翼
9 翼
10 排気装置
11 排気用ダクト
12 垂下管
20 筐体
21 回転軸
22 固体侵入防止体
23 固定用治具
61 延出部
62 回転力発生部
63 案内部
71 延出部
72 回転力発生部
73 案内部
81 延出部
82 回転力発生部
83 案内部
91 延出部
92 回転力発生部
93 案内部
100 加熱調理器具