(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-28
(45)【発行日】2023-10-06
(54)【発明の名称】揮発性化合物を使用する微生物競合アッセイのための培養チャンバ
(51)【国際特許分類】
C12M 1/20 20060101AFI20230929BHJP
C12M 1/34 20060101ALN20230929BHJP
【FI】
C12M1/20
C12M1/34 A
(21)【出願番号】P 2020565954
(86)(22)【出願日】2019-07-05
(86)【国際出願番号】 ES2019070475
(87)【国際公開番号】W WO2020030835
(87)【国際公開日】2020-02-13
【審査請求日】2022-03-29
(32)【優先日】2018-08-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】ES
(73)【特許権者】
【識別番号】517229707
【氏名又は名称】ウニヴェルシダー デ レオン
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】アルバレス,ガルシア サムエル
(72)【発明者】
【氏名】カスケーロ ルエルモ,ペドロ アントニオ
(72)【発明者】
【氏名】グティエレス マルティン,サンティアゴ
(72)【発明者】
【氏名】マヨ プリエト,サラ
(72)【発明者】
【氏名】ゴンザレス ロペス,オスカル
(72)【発明者】
【氏名】カッロ ウェルガ,グスマン
(72)【発明者】
【氏名】スアレス ビリャヌエバ,ビクトル
(72)【発明者】
【氏名】ロドリゲス ゴンザレス,アルバロ
【審査官】北田 祐介
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第03165450(US,A)
【文献】中国特許出願公開第104689861(CN,A)
【文献】中国実用新案第204874519(CN,U)
【文献】中国実用新案第203144398(CN,U)
【文献】Applied and Environmental Microbiology,2012年,Vol. 78, No. 16,p.5942-5944
【文献】Biotechnology Letters,2008年,Vol. 30, No. 5,p.919-923
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M
C12N
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
揮発性化合物を使用する微生物競合アッセイのための培養チャンバであって、
第1レセプタクル(1)と、
第2レセプタクル(2)と、
上記第1レセプタクル(1)と上記第2レセプタクル(2)との間に位置する中央部(3)と、を備えており、
上記レセプタクル(1,2)は、
外壁(4)と、
上記外壁(4)に垂直な周壁(5)と、を備えており、
上記中央部(3)は、
少なくとも1つの開口(13)を有する中間壁(6)と、
上記中間壁(6)の周縁部から互いに反対方向に延在している2つの側壁(7)と、を備えており、
上記中央部(3)の上記側壁(7)は、上記レセプタクル(1,2)の上記周壁(5)を取り囲んでおり、
上記レセプタクル(1,2)の上記周壁(5)は、上記中央部(3)の上記中間壁(6)によって支持され
、
上記第1レセプタクル(1)および上記第2レセプタクル(2)は、培養のための栄養培地が配置される部材であり、
上記中央部(3)の上記中間壁(6)の上記開口(13)を覆うメンブレンまたはフィルタ(14)を備えており、
上記メンブレンまたは上記フィルタ(14)は、多孔質であり、空気および揮発性化合物の通過を許容するとともに、より大型の要素の通過を阻止し、
上記中央部(3)の上記中間壁(6)は、
上記第1レセプタクル(1)に対向する第1面(8)と、
上記第2レセプタクル(2)に対向する第2面(9)と、を備えており、
上記面(8,9)のうちの少なくとも1つは、複数のフランジ(12)を有しており、
レセプタクル(1,2)の上記周壁(5)が上記複数のフランジ(12)によって支持されることにより、外部とのガスの交換が容易化される、揮発性化合物を使用する微生物競合アッセイのための培養チャンバ。
【請求項2】
上記中央部(3)は、上記中間壁(6)の上記面(8,9)のうちの少なくとも1つに内側リム(10)を備えており、
上記内側リム(10)および上記側壁(7)は、上記レセプタクル(1,2)のうちの一方または両方の上記周壁(5)の端部に応じたハウジング(11)を形成することによって、インターロックされる、請求項
1に記載の揮発性化合物を使用する微生物競合アッセイのための培養チャンバ。
【請求項3】
上記第1レセプタクル(1)の上記外壁(4)に配置されている第1リム(16)と、
上記第2レセプタクル(2)の上記外壁(4)に配置されている第2リム(17)と、を備えており、
互いに対向する第1レセプタクル(1)の上記外壁(4)と第2レセプタクル(2)の上記外壁(4)とにおいて、上記第1リム(16)が上記第2リム(17)に嵌合することによって、積み重ねられた2つの培養プレート間の相対移動が防止される、請求項1
または2に記載の揮発性化合物を使用する微生物競合アッセイのための培養チャンバ。
【請求項4】
少なくとも1つのレセプタクル(1,2)内に、少なくとも1つのパーティション(15)を備えており、
上記パーティション(15)は、上記レセプタクル(1,2)の内部を独立した複数の部分に区分する、請求項1から
3のいずれか1項に記載の揮発性化合物を使用する微生物競合アッセイのための培養チャンバ。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[本発明の分野]
本発明は、揮発性化合物を使用する微生物競合アッセイ(微生物学的競合アッセイ)のための培養チャンバ(培養室)に関する。本発明の目的である培養チャンバは、微生物分析技術の分野、より具体的には培養プレートまたはペトリ皿(シャーレ)の分野において適用可能である。
【0002】
[本発明の背景]
ペトリ皿としても知られている培養プレートは、一般的には、(50mm~150mmの様々な直径を伴う)様々なサイズを備えた浅い円形のレセプタクル(容器)である。但し、培養プレートは、他の形状および/またはサイズを有しうる。
【0003】
ペトリ皿は、固体培地中において微生物を培養する場合に使用される基本的な部材(要素)である。
【0004】
現在、これらのプレートの製造において最も一般的な材料は、プラスチック材料である。但し、ガラスまたは他の材料によって製造されたペトリ皿が存在している。
【0005】
ペトリ皿は、2つの基礎的な部材であるベース(基部)とリッド(蓋)とによって構成されている。ベース上には、対応する培養培地が配置される。リッドは、ベース(先行する部材)を覆う。
【0006】
これらの2つの部材が調整または嵌合される様々な方法が存在している。一方の部材は、(i)他方の部材に対して緩く保持されてもよいし、あるいは、(ii)様々な固定部材(アンカー部材)(回転またはフッキングによる機械的締付または機械的インターロック)によって互いに固定されてもよい。後者のケースでは、偶発的な落下または開放による培養物の汚染を避けることができる。さらに、完全な閉鎖が実現されうる。従って、内部に密閉空間を生じさせ、プレートの外側とのガスの交換を防止または制限できる(非通気プレート)。あるいは、2つの部材のうちのいずれかに、複数の突起または突出部が存在していてもよい。当該複数の突起または突出部は、2つの部材の間に十分な空間を生じさせる。このため、プレートの内側と外側との間においてガスの特定の交換またはフローが生じる(通気プレート)。
【0007】
微生物を培養するためには、以下の事項を含む、ガス流およびその供給の管理が最も重要である。
【0008】
-好気性微生物のために必要な酸素濃度を提供すること、または、嫌気性微生物のために酸素濃度を制限すること;
-培地がペトリ皿に置かれた後に、当該培地の乾燥を調整し、換気プレートにおける湿気の凝縮を避ける、または、非通気プレート上における長期培養物に対する過剰な乾燥を防止すること;
-培養物中の微生物によって生成される揮発性化合物の外部への放出を調整すること。
【0009】
微生物間の競合アッセイは、生物学的制御能力を有する株に対するインビトロ(in vitro)での特性決定(characterisation)、および、当該株によって生成される生物活性化合物を検出するための必須のツールとなっている。これらの実験は、固体培地中(通常はペトリ皿中)において、または(他の技術および材料を用いて)液体培地中において、行われうる。一般的には、固体培地中の微生物間には、以下の3タイプのインビトロ競合アッセイが存在している。
【0010】
-微生物株が直接的に接触する直接競合実験;
-可溶性化合物を用いた競合実験。当該実験では、微生物の菌株は、他の菌株と直接的かつ物理的に接触することなく、当該他の菌株によって生成された可溶性化合物に直面するだけである;
-揮発性化合物を用いた競合実験。当該実験では、微生物の菌株は、他の菌株と直接的かつ物理的に接触することなく、当該他の菌株によって生成された揮発性化合物に直面するだけである。
【0011】
科学文献には、揮発性化合物を用いたこのタイプの競合実験を行うための、以下の培地が記載されている。
【0012】
-細分化されたペトリ皿。当該ペトリ皿は、1つ以上のパーティション(仕切り,隔壁)を有するプレートである。パーティションは、接触することなく微生物を培養できる複数の部分に、ペトリ皿の表面を区分(分割)する。これらのシステム(系)では、各株の増殖面積が制限され、当該各株をプレートの中央において個別に培養することが妨げられる。加えて、これらのシステムは、微生物コロニーの半径方向の増殖(成長)を測定するには適していない。胞子を介しての、または、菌糸体がパーティションを超える可能性があることによる、クロスコンタミネーション(交差汚染)のリスクも存在している。
【0013】
-より大型のレセプタクル内へ、開放されたペトリ皿を導入すること。このシステムは、複雑であり、追加のコストを伴い、実験が行われる期間中のハンドリング(取扱い)および測定が非常に困難となる。
【0014】
-互いに反対側に位置する(対向する)2つのペトリ皿を配置すること。この場合、株の各々は、ペトリ皿の中央において培養される(ルーチン)。続いて、ペトリ皿のリッドを取り除いた後、互いに反対側に位置する両方のプレートの上端は、何らかのタイプのプラスチック接着剤によって接合される。このようにして、両方の培養物は、閉鎖空間(2つのプレートの体積によって形成されるチャンバのタイプ)において互いに反対側に位置する。一方の培養物(一般的には、揮発性物質を生成する微生物)は、底部内側部分において増殖する。他方の培養物(一般的には、化合物の作用が評価される微生物)は、チャンバの頂部内側部分において増殖する。これは、生物学的制御菌類によって生成される揮発性物質の活性を評価するために最も広く使用されているシステムの1つである。これにより、一旦実験が開始された後に、コロニーの増殖を測定し、かつ、当該コロニーの写真を撮影するという、物質に対する所定のハンドリングが可能となる。
【0015】
しかしながら、互いに反対側に位置する2つのペトリ皿を配置するオプションは、以下の一連の問題を提起する。これらの問題は全て、このタイプの実験を行うために設計された特定の市販のデバイスが存在していないことに起因する。
【0016】
-クロスコンタミネーションの存在:(対向する培養物の汚染を招く)胞子、プレートの壁上における菌糸体の増殖、または、菌糸体の気中部分間の接触によって生じる。微生物学的分析における平均的な当業者であれば、この汚染によって実験の結果が歪曲されることを理解している。汚染を防止するために、中間メンブレン(中間膜)が配置されうる。但し、特定の固定構造または保持構造が存在ないため、中間メンブレンの配置は、複雑であり、体系化することが困難である。
【0017】
-この機能のために設計されたペトリ皿が存在しないことによる、プレートの対向配置における困難性。このため、プレートは適切にフィット(嵌合)しない。これにより、実験のハンドリングが妨げられ、実験の再現性すらも妨げられる。加えて、フィットが完全であることを保証する方法がない。あるいは逆に、両方のプレートのエッジ(端部)の間に接触のない小さい空間が存在することを保証する方法もない。
【0018】
-空気の流入を調整できないこと、または、外部とのガスの交換ができないこと;対向プレートを用いたこれらの実験では、リッドを廃棄しなければならず、ベースのエッジを何らかのタイプの接着剤によって接合しなければならない。このため、これらの異なる配置を利用できない。
【0019】
-このタイプの実験では使用されなかったゆえに使用済みプレートのリッドを廃棄することによる、不必要な物質の浪費。
【0020】
本特許/実用新案は、揮発性化合物を用いた微生物間における競合実験の設計および開発において生じる上述の諸問題を解決することを目的としている。これらの実験を行うために特に設計された、新規な培養チャンバについて説明する。
【0021】
[本発明の説明]
本発明の目的は、揮発性化合物を使用する微生物競合アッセイのための培養チャンバである。当該培養チャンバは、(i)第1レセプタクルと、(ii)第2レセプタクルと、(iii)上記第1レセプタクルと上記第2レセプタクルとの間に位置する中央部と、を備えている。
【0022】
上記レセプタクルは、(i)外壁と、(ii)上記外壁に垂直な周壁(周囲壁)と、を備えている。上記中央部は、(i)少なくとも1つの開口を有する中間壁と、(ii)上記中間壁の周縁部から互いに反対方向に延在している2つの側壁と、を備えている。本発明の目的であるプレートでは、上記中央部の上記側壁は、上記レセプタクルの周壁を取り囲んでいる。そして、上記レセプタクルの上記周壁は、上記中間壁によって支持されている。
【0023】
本発明の目的である揮発性化合物を使用する微生物競合アッセイのための培養チャンバでは、上記中央部の中間壁は、(i)上記第1レセプタクルに対向する第1面と、(ii)上記第2レセプタクルに対向する第2面と、を備えている。上記第1面および上記第2面は、平坦(平滑,滑らか)である。
【0024】
本発明の目的である揮発性化合物を使用する微生物競合アッセイのための培養チャンバの別の実施形態では、上記中央部は、上記中間壁の上記面のうちの少なくとも1つに内側リム(インナーリム)を備えている。この場合、上記内側リムおよび上記側壁は、レセプタクルの上記外壁の端部に応じたハウジングを形成する。
【0025】
本発明の目的である揮発性化合物を使用する微生物競合アッセイのための培養チャンバの別の実施形態では、上記中間壁は、上記第1面および/または上記第2面に複数のフランジを備えている。レセプタクルの上記外壁は、上記複数のフランジによって支持されている。
【0026】
別の実施形態では、揮発性化合物を使用する微生物競合アッセイのための培養チャンバは、上記中央部の上記中間壁の上記開口を覆うメンブレン(膜)またはフィルタを備えている。上記メンブレンまたは上記フィルタは、多孔質であり、空気および揮発性化合物の通過を許容するとともに、より大型の要素の通過を阻止(ブロック)する。
【0027】
本発明の目的である揮発性化合物を使用する微生物競合アッセイのための培養チャンバは、(i)上記第1レセプタクルの上記外壁に配置されている第1リムと、(ii)わずかに異なる直径を有しており、かつ、上記第2レセプタクルの上記外壁に配置されている第2リムと、を備えている。第1レセプタクルおよび第2レセプタクルの上記外壁において、上記第1リムが上記第2リムに嵌合することによって、積み重ねられた2つの培養プレート間の相対運動が防止される。
【0028】
別の実施形態では、本発明の目的である揮発性化合物を使用する微生物競合アッセイのための培養チャンバは、少なくとも1つのレセプタクル内に、少なくとも1つのパーティションを備えている。上記パーティションは、上記レセプタクルの内部を独立した複数の部分に区分する。
【0029】
[図面の簡単な説明]
以下に提供される説明の補足として、かつ、本発明の構成をより容易に理解させることを助成するために、本発明の目的であるデバイスの革新的な点(イノベーション)および利点がより容易に理解されるように、本明細書には図面のセットが添付されている。
【0030】
図1は、本発明の目的である培養チャンバの分解立体図を示す。
【0031】
図2は、本発明の目的である組み立てられた培養チャンバの断面図を示す。
【0032】
図3は、(i)2つのレセプタクルと中央部との間の接合手段に関する2つの実施形態についての断面図と、(ii)通気を伴う培養チャンバを提供するためのフランジを示す第3の断面図と、を示す。
【0033】
図4は、中間部材の水平中間壁の中央の開口についての詳細図を示す。ある変形例では、開口は開放されている。別の変形例では、開口はメンブレンまたはフィルタによって覆われている。
【0034】
【0035】
各図面において示されている異なる参照番号は、以下の各部材に対応する:
1. 第1レセプタクル、
2. 第2レセプタクル、
3. 中央部、
4. 外壁、
5. 周壁、
6. 中間壁、
7. 側壁、
8. 第1面、
9. 第2面、
10. 内側リム、
11. ハウジング、
12. フランジ、
13. 開口、
14. メンブレンまたはフィルタ、
15. パーティション、
16. 第1リム、
17. 第2リム。
【0036】
[本発明の詳細な説明]
本発明の目的である培養チャンバは、第1レセプタクル(1)と第2レセプタクル(2)と中央部(3)と、を備えている。中央部は、第1レセプタクルと第2レセプタクルとの間に配置されている。
【0037】
本発明の好ましい実施形態におけるレセプタクル(1,2)は、軸対称形状を有している。当該レセプタクルは、培養のための栄養培地が配置される部材である。また、本発明の好ましい実施形態における中央部(3)は、軸対称形状を有しているとともに、レセプタクル(1,2)の直径よりもわずかに大きい直径を有している。
【0038】
レセプタクル(1,2)は、外壁(4)を備えている。本発明の好ましい実施形態では、当該外壁の形状は円形であり、かつ、当該外壁の内面は平坦である。上記レセプタクルは、外壁(4)に垂直に突出している周壁(5)をも備えている。
【0039】
中央部(3)は、中間壁(6)を備えている。そして、当該中央部は、中間壁(6)の周縁部から互いに反対方向に延在している2つの側壁(7)を備えている。中間壁(6)は、(i)第1レセプタクル(1)と向き合う第1面(8)と、(ii)第2レセプタクル(2)と向き合う第2面(9)と、を備えている。
【0040】
中央部(3)およびレセプタクル(1,2)を固定するために、中央部(3)は、中間壁(6)の面(8,9)のうちの少なくとも一方に、内側リム(10)を備えていてもよい。この場合、内側リム(10)および側壁(7)は、レセプタクル(1,2)の周壁(5)の端部に応じたハウジング(11)を形成する。このため、両部材がインターロックされる。
【0041】
さらに、中間壁(6)は、開口(13)を収容する。本発明の好ましい実施形態では、当該開口は円形である。本発明の好ましい実施形態では、開口(13)の直径は、中間壁(6)の直径の約1/3である。但し、単一の開口(13)を収容する替わりに、中間壁(6)は、培養チャンバの両方のレセプタクル(1,2)の間における気体の自由な交換を許容するとともに、培養時における微生物のクロスコンタミネーションの可能性を制限しつつ、好ましい実施形態において提案されたものとは異なる形状およびサイズを有する2つ以上の開口(13)を収容することが可能である。
【0042】
本発明の目的である培養チャンバの開口(13)は、メンブレンまたはフィルタ(14)によって覆われていてもよい。当該メンブレンまたはフィルタは、多孔質である。このため、当該メンブレンまたはフィルタは、空気および揮発性化合物の通過を許容するが、真菌胞子などのより大型の要素の通過を阻止する。これらの部材、すなわちメンブレンまたはフィルタ(14)は、開口(13)の輪郭部に、中央部の中間壁(6)の面(8,9)の一部または全部に工業的に接着されてよい。あるいは、これらの部材は、中間壁(6)の面(8,9)のいずれかに機械的手段によって固定されてもよい。
【0043】
本発明の好ましい実施形態では、両方のレセプタクル(1,2)の周壁(5)の寸法は同一である。但し、各レセプタクル(1,2)の周壁(5)の寸法が互いに異なる代替的な実施形態も存在する。
【0044】
本発明の好ましい実施形態では、レセプタクル(1,2)の外壁(4)の寸法は同一である。但し、2つの外壁(4)の寸法が異なる代替的な実施形態も存在する。
【0045】
本発明の好ましい実施形態では、中央部(3)の2つの側壁(7)の寸法は同一である。但し、2つの側壁(7)の寸法が異なる代替的な実施形態も存在する。
【0046】
中央部(3)の中間壁(6)の寸法は、レセプタクル(1,2)の外壁(4)の寸法よりもわずかに大きい。従って、本発明の好ましい実施形態では、当該壁(4,6)が円形であることを考慮すると、中間壁(6)の直径は、外壁(4)の直径よりも大きい。同様に、本発明の好ましい実施形態では、レセプタクル(1,2)の周壁(5)は、中間部の側壁(7)よりも大きい高さを有する。
【0047】
本発明の目的である培養チャンバでは、第1レセプタクル(1)が中央部(3)に嵌合し、かつ、当該中央部の上に載置されることを許容しつつ、中央部(3)が第2レセプタクル(2)に嵌合し、かつ、当該第2レセプタクル上に載置される。これにより、各レセプタクル(1,2)の周壁(5)が、中央部(3)の側壁(7)のうちの1つに嵌合する。加えて、レセプタクル(1,2)の周壁(5)は、中央部(3)の中間壁(6)によって支持される。この場合、レセプタクル(1,2)は、互いに反対側に位置する。そして、レセプタクル(1,2)は、中央部(3)の中間壁(6)の開口(13)を通じて、対称的かつ部分的に連通された両方のレセプタクル(1,2)の体積(空間)によって生じた内部チャンバを形成する。
【0048】
中央部(3)とレセプタクル(1,2)との嵌合は、培養チャンバ全体に安定性を与え、かつ、培養チャンバがハンドリングされていないときに各コンポーネントを一体的に保持する。
【0049】
中央部(3)の中間壁(6)は、レセプタクル(1,2)の外壁(4)と平行である。
【0050】
本発明の好ましい実施形態では、本培養チャンバは、他の培養プレートの製造において既知である透明なプラスチック材料によって製造されている。但し、代替的な実施形態では、培養チャンバは、ガラス、または、機能に適した任意の他の材料によって製造されている。
【0051】
本発明の好ましい実施形態では、両方のレセプタクル(1,2)の寸法は同一であり、当該レセプタクルは軸対称形状を有しており、かつ、浅い。但し、レセプタクル(1,2)および中央部(3)の両方は、正方形、矩形などであってもよい。このため、レセプタクル(1,2)の寸法が同一ではなく、形状が異なりうる代替的な実施形態が存在する。
【0052】
本発明の好ましい実施形態では、中央部(3)の中間壁(6)の第1面(8)および第2面(9)の両方が平坦である。それゆえ、レセプタクル(1,2)の周壁(5)の端部との連続的な接触が生じる。その結果、培養チャンバの外側とのガスの交換が制限される(非通気プレート)。但し、代替的な実施形態では、第1面(8)および/または第2面(9)は、フランジ(12)を有していてもよい。当該フランジは、連続的な接触を防止する。このため、当該フランジは、外部とのガスの特定の交換が生じるギャップを形成する(通気プレート)。2つのレセプタクル(1,2)のいずれかが独立して通気されるように、平坦な面およびフランジ(12)を有する面が組み合わせられる実施形態が存在する。このことは、本発明に多大な汎用性を与える。このため、培養条件を変化させ、各特定の実験に最も適した条件を選択することが可能となる。
【0053】
本発明の好ましい実施形態では、両方のレセプタクル(1,2)の内面は、平坦である。但し、代替的な実施形態では、1つ以上のパーティション(15)が現れうる。当該パーティションは、レセプタクル(1,2)の一方または両方の内部を、複数(2つ以上)の独立した部分に区分する。これにより、同じレセプタクル(1,2)内において、複数の独立した培養が可能となる。
【0054】
本発明の目的である培養チャンバは、スタック手段(積み重ね手段)を有している。当該スタック手段は、2つ以上の培養プレートを積み重ねる(スタックする)ことを可能とする。当該スタック手段は、(i)第1レセプタクル(1)の外壁(4)に配置されている第1リム(16)と、(ii)第2レセプタクル(2)の外壁(4)に配置されている第2リム(17)と、を有している。第2リム(17)は、第1リム(16)とはわずかに異なる直径を有している。この場合、第1レセプタクル(1)および第2レセプタクル(2)の対向する外壁(4)において、第1リム(16)が第2リム(17)に嵌合し、積み重ねられた2つの培養プレート間の相対運動が防止される。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【
図1】本発明の目的である培養チャンバの分解立体図を示す。
【
図2】本発明の目的である組み立てられた培養チャンバの断面図を示す。
【
図3】(i)2つのレセプタクルと中央部との間の接合手段に関する2つの実施形態についての断面図と、(ii)通気を伴う培養チャンバを提供するためのフランジを示す第3の断面図と、を示す。
【
図4】中間部材の水平中間壁の中央の開口についての詳細図を示す。ある変形例では、開口は開放されている。別の変形例では、開口はメンブレンまたはフィルタによって覆われている。