(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-28
(45)【発行日】2023-10-06
(54)【発明の名称】固定部材
(51)【国際特許分類】
E04H 12/22 20060101AFI20230929BHJP
E04B 1/24 20060101ALI20230929BHJP
E04B 1/58 20060101ALI20230929BHJP
【FI】
E04H12/22
E04B1/24 R
E04B1/58 511H
(21)【出願番号】P 2021052819
(22)【出願日】2021-03-26
【審査請求日】2023-04-18
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000115360
【氏名又は名称】ヨシモトポール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122183
【氏名又は名称】小澤 一郎
(72)【発明者】
【氏名】北村 仁司
(72)【発明者】
【氏名】大坂 将人
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 直紀
【審査官】須永 聡
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-008493(JP,A)
【文献】特開2006-233444(JP,A)
【文献】特開2005-016213(JP,A)
【文献】特開2005-016212(JP,A)
【文献】特開平10-025759(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 12/22
E04B 1/24
E04B 1/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物を支持する支柱の下端が接合される接合部と、
基礎に対して載置されるベース部と、を備え、
前記ベース部は、前記接合部から径方向外側に向かって張り出しており、基礎から突出したボルトが通る貫通孔が形成されたフランジ部を有し、
前記ベース部は、前記フランジ部の下面の一部と前記基礎との間にスペースが形成されており、
前記スペースは、前記フランジ部の外縁から前記貫通孔の下部までつながって
おり、
前記接合部から前記貫通孔に向かってなだらかな表面で構成されたフレア状の補強部を更に備え、
前記補強部は、前記貫通孔を囲むように形成された厚肉部を有することを特徴とする固定部材。
【請求項2】
前記スペースは、高さが3~50[mm]の範囲であることを特徴とする請求項1に記載の固定部材。
【請求項3】
前記厚肉部は、前記貫通孔の周囲に円弧状に設けられていることを特徴とする請求項
1又は2に記載の固定部材。
【請求項4】
前記ベース部は、前記基礎に接する第1の下面と、前記第1の下面より径方向外側であって、前記基礎との間に前記スペースが形成されている第2の下面と、を有し、
前記スペースの高さがH[mm]の場合、前記第1の下面と前記第2の下面とが曲率半径r[mm](H-3<R≦H)の曲面でつながっていることを特徴とする請求項1乃至
3のいずれか1項に記載の固定部材。
【請求項5】
前記ベース部は、前記基礎に接する第1の下面の面積が、前記基礎との間に前記スペースが形成されている第2の下面の面積の3倍以上であることを特徴とする請求項1乃至
3のいずれか1項に記載の固定部材。
【請求項6】
鋳鉄からなる一部品であることを特徴とする請求項1乃至
5のいずれか1項に記載の固定部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、支柱を基礎に対して固定するための固定部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、外灯や道路標識などに用いられる支柱は、地面に対して固定するためのベースプレートが下端に接合されている。ベースプレートは、地面に埋設されたコンクリートの基礎から突出するアンカーボルトが通る貫通孔が設けられており、貫通孔を通ったアンカーボルトにナットを締め付けることにより、ベースプレートがコンクリートの基礎に対して強固に固定される(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前述のベースプレートがコンクリートの基礎に対して固定された状態では、アンカーボルトのうちコンクリートから突出した部分の状態を外部から確認することはできない。そのため、仮にアンカーボルトの強度が低下する状況になっても、すぐにそのことを把握することは困難である。
【0005】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その例示的な目的のひとつは、固定部材を固定するボルト等の点検がしやすい新たな構造の固定部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の固定部材は、構造物を支持する支柱の下端が接合される接合部と、基礎に対して載置されるベース部と、を備える。ベース部は、接合部から径方向外側に向かって張り出しており、基礎から突出したボルトが通る貫通孔が形成されたフランジ部を有する。ベース部は、フランジ部の下面の一部と基礎との間にスペースが形成されており、スペースは、フランジ部の外縁から貫通孔の下部までつながっている。
【0007】
この態様によると、固定部材が貫通孔を通るボルトを介して基礎に固定された状態で、固定部材のフランジ部の下部にある基礎から突出しているボルトの一部を外部から点検できる。
【0008】
スペースは、高さが3~50[mm]の範囲であってもよい。これにより、スペースをそれほど大きくせずにファイバースコープといった点検器具や目視でボルトの状態を点検できる。
【0009】
接合部から貫通孔に向かってなだらかな表面で構成されたフレア状の補強部を更に備えてもよい。補強部は、貫通孔を囲むように形成された厚肉部を有してもよい。これにより、スペースによって基礎から浮いた状態のフランジ部の強度を高めることができる。
【0010】
厚肉部は、貫通孔の周囲に円弧状に設けられていてもよい。これにより、貫通孔の周囲に水が溜まりにくくなる。
【0011】
ベース部は、基礎に接する第1の下面と、第1の下面より径方向外側であって、基礎との間にスペースが形成されている第2の下面と、を有してもよい。スペースの高さがH[mm]の場合、第1の下面と第2の下面とが曲率半径r[mm](H-3<R≦H)の曲面でつながっていてもよい。これにより、フランジ部のうち、基礎との間にスペースが形成されている第2の下面を有する部分に荷重がかかった場合に、第1の下面と第2の下面との境界での応力集中を緩和できる。
【0012】
ベース部は、基礎に接する第1の下面の面積が、基礎との間にスペースが形成されている第2の下面の面積の3倍以上であってもよい。これにより、ベース部の第1の下面の部分の強度を確保しつつ、第2の下面と基礎との間のスペースを利用した点検も可能となる。
【0013】
固定部材は、鋳鉄からなる一部品であってもよい。これにより、複雑な形状や部分的に厚みが異なる部材を簡易に製造できる。
【0014】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法、装置、システム、などの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、固定部材を固定するボルト等の点検がしやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本実施の形態に係る固定部材を含む支柱の要部を示す模式図である。
【
図2】本実施の形態に係る固定部材の斜視図である。
【
図3】
図2に示す固定部材をD1方向から見た上面図である。
【
図4】
図2に示す固定部材をD2方向から見た下面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一又は同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述される全ての特徴やその組合せは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0018】
(支柱)
本実施の形態に係る支柱は、構造物を支持するためのものであり、例えば、案内標識や規制標識、信号、情報板等の道路交通分野に用いられる構造物、カメラ、アンテナ、通信等の情報通信分野に用いられる構造物、車道照明や歩道照明等の照明分野に用いられる構造物、を高所に配置するために用いられる。また、支柱は、基礎から突出したアンカーボルトが通る貫通孔が形成された柱脚部を備えており、本実施の形態では、後述する固定部材が柱脚部に相当する。
【0019】
図1は、本実施の形態に係る固定部材を含む支柱の要部を示す模式図である。本実施の形態に係る支柱10は、支柱本体12と、固定部材14とを備える。支柱本体12は、例えば、直径が100~500mm、長さ(高さ)が1000~10000mm程度の鋼管である。固定部材14は、耐食性に優れたダクタイル鋳鉄を用いた部材である。固定部材14と支柱本体12とは摩擦圧接接合により互いに強固に接合されている。また、固定部材14は、構造物を支持する支柱10の下端12aが接合される接合部16と、コンクリート等の基礎18に対して載置されるベース部20と、を備える。
【0020】
図2は、本実施の形態に係る固定部材の斜視図である。
図3は、
図2に示す固定部材をD1方向から見た上面図である。
図4は、
図2に示す固定部材をD2方向から見た下面図である。
図5は、
図3に示す固定部材のA-A断面図である。
図6は、
図3に示す固定部材のB-B断面図である。
図7は、
図3に示す固定部材の領域Rの拡大図である。
【0021】
固定部材14のベース部20は、筒状の接合部16から径方向外側に向かって張り出しており、基礎18から突出したボルト22(
図1参照)が通る4つの貫通孔24が形成されたフランジ部20aを有する。ボルト22と貫通孔24との位置を合わせて固定部材14を基礎18に設置し、ボルト22にナット23を締結することで、基礎18に対して固定部材14を介して支柱10が固定される。ベース部20は、フランジ部20aの下面の一部と基礎18との間にスペースSが形成されており、スペースSは、フランジ部20aの外縁20cから貫通孔24の下部までつながっている。
【0022】
これにより、固定部材14が貫通孔24を通るボルト22を介して基礎18に固定された状態で、固定部材14のフランジ部20aの下部にある基礎18から突出しているボルト22の一部22aの近傍を外部から点検できる。
【0023】
本実施の形態に係るスペースSは、高さHが3~50[mm]の範囲である。高さHは5mm以上であってもよく、また、高さHは25mm以下であってもよい。これにより、スペースSをそれほど大きくせずにファイバースコープといった点検器具でボルト22の状態を点検できる。
【0024】
また、固定部材14は、接合部16から各貫通孔24に向かって滑らかで連続した(段差のない)表面で構成されたフレア状の補強部26が4箇所に設けられている。これにより、固定部材14の各部に外力が加わった場合であっても、補強部26に応力集中が生じにくくなる。なお、補強部26は、フランジ部20aの表面からの高さが100~200mm程度であり、幅W(
図3参照)が100~150mm程度である。また、補強部26は、貫通孔24を囲むように形成された厚肉部26aを有している。厚肉部26aの一部は、フランジ部20aのうちスペースSが下部に形成されている領域R1まで延びている。これにより、スペースSによって基礎18から浮いた部分のフランジ部20aの強度を高めることができる。
【0025】
また、厚肉部26aは、貫通孔24の周囲に円弧状に設けられている。還元すると、厚肉部26aは、貫通孔24の周囲を完全に囲まないように設けられている。これにより、貫通孔24にボルト22が挿入された状態で貫通孔24から水が抜けない状況であっても、貫通孔24の周囲の厚肉部26aがない部分26bから水が抜けるため、貫通孔24の周囲に水が溜まりにくくなり、ボルト22やナット23の劣化を低減できる。
【0026】
また、円弧状の厚肉部26aは、
図3、
図7に示すように、筒状の接合部16の中心O1と貫通孔24の中心O2とを結ぶ直線L1に直交する直線L2より、外側まで延びている。円弧状の厚肉部26aの先端26cと、貫通孔24の中心O2と、接合部16の中心O1とが成す角αは90°より大きく、100°以上が好ましい。また、前述のように貫通孔24の周囲に水が溜まらないように、成す角αは180°未満であり、135°以下が好ましい。これにより、ボルト22やナット23を囲むように厚肉部26aが設けられているため、貫通孔24から突き出ているボルト22やナット23に歩行者や自転車等が直接触れにくくなる。
【0027】
また、ベース部20は、基礎18に接する第1の下面20bと、第1の下面20bより径方向外側であって、基礎18との間にスペースSが形成されている第2の下面20dと、を有している。スペースの高さがH[mm]の場合、第1の下面20bと第2の下面20dとが曲率半径r[mm](H-3<r≦H)の曲面20gでつながっている。つまり、スペースSの高さHが12mmの場合、曲率半径rは9mmより大きく12mm以下が好ましい。これにより、フランジ部20aのうち、基礎18との間にスペースSが形成されている第2の下面20dを有する部分に荷重がかかった場合に、第1の下面20bと第2の下面20dとの境界での応力集中を緩和できる。
【0028】
また、本実施の形態に係るベース部20においては、第2の下面20dが形成されている部分のフランジ部20aの厚みtが、スペースSの高さHの0.8~1.5倍程度である。
【0029】
また、
図2に示すように、フランジ部20aのうち補強部26同士の間の平坦部20eは、基礎18に接する第1の下面20bと、第1の下面20bと連続した側面20fと、を有する。側面20fは、接合部16の中心O1に向かって凹んだ円弧状の曲面で有り、その曲率半径は200~300mmである。
【0030】
また、本実施の形態に係る固定部材14において、面積S1が一定以上であることで支柱10を強固に接地面に固定できるが、一方で面積S1が広すぎると、基礎18との間でスペースSが形成されている第2の下面20dの面積S2が相対的に狭くなり、スペースSを介したボルト22の点検が難しくなる。そこで、ベース部20は、基礎18に接する第1の下面20bの面積S1が、基礎18との間にスペースSが形成されている第2の下面20dの面積S2の3倍以上6倍以下であるとよい。面積S1は、例えば、14500~29000mm2の範囲であり、面積S2は、例えば、4400~7600mm2の範囲である。これにより、ベース部20の第1の下面20bの部分の強度を確保しつつ、第2の下面20dと基礎18との間のスペースSを利用した点検も可能となる。
【0031】
また、本実施の形態に係る固定部材14は、鋳鉄からなる一部品であるため、なだらかな曲面で構成された複雑な形状や部分的に厚みが異なる形状であっても精度良く簡易に製造できる。また、スペースSを分割構造(複数部品)の固定部材で構成すると強度が十分に確保できないおそれがあるが、固定部材を一体構造(一部品)で構成することで十分な強度が確保できる。また、分割構造の固定部材では、部品同士の隙間が腐食劣化を促進する可能性があるが、固定部材を一体構造で構成することで腐食劣化を抑制できる。
【0032】
以上、本発明を上述の実施の形態を参照して説明したが、本発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、実施の形態の構成を適宜組み合わせたものや置換したものについても本発明に含まれるものである。また、当業者の知識に基づいて実施の形態における組合せや処理の順番を適宜組み替えることや各種の設計変更等の変形を実施の形態に対して加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施の形態も本発明の範囲に含まれうる。
【符号の説明】
【0033】
10 支柱、 12 支柱本体、 12a 下端、 14 固定部材、 16 接合部、 18 基礎、 20 ベース部、 20a フランジ部、 20b 第1の下面、 20c 外縁、 20d 第2の下面、 20e 平坦部、 20f 側面、 22 ボルト、 23 ナット、 24 貫通孔、 26 補強部、 26a 厚肉部、 26b 部分、 26c 先端、 H 高さ、 L1 直線、 L2 直線、 O1 中心、 O2 中心、 R 領域、 R1 領域、 S スペース、 S1 面積、 S2 面積、 W 幅、 r 曲率半径、 t 厚み。