(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-28
(45)【発行日】2023-10-06
(54)【発明の名称】有害物質検査用のサンプル採取キット、及び有害物質検査用のサンプル採取方法
(51)【国際特許分類】
G01N 1/04 20060101AFI20230929BHJP
【FI】
G01N1/04 F
G01N1/04 X
(21)【出願番号】P 2022212890
(22)【出願日】2022-12-31
【審査請求日】2023-01-18
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】523003803
【氏名又は名称】日本環境分析センター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129986
【氏名又は名称】森田 拓生
(72)【発明者】
【氏名】中元 章博
(72)【発明者】
【氏名】中元 美香
(72)【発明者】
【氏名】松井 円
【審査官】外川 敬之
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第06379408(US,B1)
【文献】特開2017-082571(JP,A)
【文献】特表2013-518259(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上辺開口を封着可能な縦長形状の採取袋と、前記採取袋と同じかまたはこれよりも小さい/大きいサイズの工具把持用シートとを、両面粘着剤つきの補強材を介して所定位置の重ね貼り部で重ね貼りしてなる、有害物質検査用のサンプル採取キットであって、
前記採取袋の背面の上半部に、
採取後に折り畳んで自己封着可能な粘着面領域からなる一体型の貼り付け口を成形し、
この粘着面領域の略中央に、上下・左右対称形状からなる環状の採取口を形成してなり、
採取後に採取対象面から剥離させた採取袋の貼り付け口を、採取口が上下左右又は斜め方向へ略対称に折り重なるように折り畳んで、貼り付け面同士を接着して自己封着させることを特徴とする、有害物質検査用のサンプル採取キット。
【請求項2】
前記工具把持用シートが内部透過できるシート材からなる、請求項1に記載の有害物質検査用のサンプル採取キット。
【請求項3】
前記工具把持用シートは、下辺を繰り返し封着可能な開口として倒立配置されるとともに、袋体の上半部を重ね張り部とした、工具を内部収容可能な工具収納袋からなり、
前記重ね貼り部の内部領域に、前記採取袋の表面、前記補強材、及び前記
工具収納袋の裏面を同位置貫通させた、工具先部貫通用のスリットを形成したことを特徴とする、請求項1に記載の有害物質検査用のサンプル採取キット。
【請求項4】
前記工具把持用シートに、緩衝材を付設したことを特徴とする、請求項2に記載の有害物質検査用のサンプル採取キット。
【請求項5】
採取後に採取対象面から剥離させた貼り付け後の貼り付け口を、前記採取口の対称折り返し線である第一折り返し線で折り返したのち、第一折り返し線よりも下部にて互いに略平行に設けた第二、第三の折り返し線にて繰り返し折り返すことで、略棒状の折り畳み状態に変形し得る、請求項1に記載の有害物質検査用のサンプル採取キット。
【請求項6】
上辺開口を封着可能な縦長形状の採取袋と、前記採取袋と同じかまたはこれよりも小さい/大きいサイズの袋状の工具把持用シートとを、両面粘着剤つきの補強材を介して所定位置の重ね貼り部で重ね貼りしてなる、有害物質検査用のサンプル採取キットであって、
前記採取袋の背面の上半部に、採取後に折り畳んで自己封着可能な粘着面領域からなる一体型の貼り付け口を成形し、この粘着面領域の略中央に形成された上下・左右対称形状からなる環状の採取口を形成してなる採取袋キットを用いて、
構造物の対象面からサンプルを切削又は打突によって採取する有害物質検査用のサンプル採取方法であって、
対象面貼り付けステップ:採取袋の裏面の貼り付け口を、貼り付け口中央の採取口が採取対象面に位置するよう、構造物等の壁面に貼り付けた貼り付け状態とするステップと、
工具収容ステップ:前記袋状の工具把持用シートの周囲の一部に設けた袋口から、工具把持用シートの袋の内部に、採取のために必要な切削又は打突等の採取用工具を収容するステップと、
サンプル採取ステップ:貼り付け面を対象面に貼り付けた貼り付け状態のまま、工具収容袋を袋の外側から握って、内部収容した採取用工具の先部の切削部または打突部が採取口に接するように操作し、採取用工具の切削部で採取対象面を切削するか、採取用工具の打突部で採取対象面を打突させて、採取袋内にサンプルを採取するステップと、
工具回収ステップ:工具収容袋内の工具を袋口から袋外へ回収するステップと、
剥離ステップ:水または粘着液からなる飛散防止液を剥離部とその周囲に散布又は散霧しながら、貼り付け状態の貼り付け口を対象面から剥離させ、採取袋を対象面から脱離させるステップと、
封着ステップ:対象面から剥離させた、粘着面領域からなる貼り付け口を、採取口が上下左右又は斜め方向へ略対称に折り重なるように折り畳んで、貼り付け面同士を接着して自己封着させるステップと、
を具備することを特徴とする、有害物質検査用のサンプル採取方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
有害材の混入を検査するために壁・天井等の建築構造物のサンプルを採取するためのキット、特に、アスベストを隔離状態で安定採取するための外壁材サンプルの採取キットに関する。また、前記有害物質検査用サンプル採取キットを用いた有害物質検査用サンプルの採取方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の有害物質の撤去方法の例として、周囲に周縁鍔部が形成された収容口と手挿入口を備えた袋本体部と、前記手挿入口から前記袋本体部の内部に延びる手袋部とを備えた撤去用袋体を用いて、筐体の内部にどれくらいの有害物質が付着しているか検査すべく、内部に有害物質が付着した筺体から前記有害物質を撤去して収容する撤去方法が開示される(特許文献1参照)。この方法は、筺体の開口部の周縁部の表面側平面部分に、前記周縁鍔部を前記開口部と面一の平面状に密着して前記開口部を覆うように前記撤去用袋体の前記収容口を連結する連結工程と、前記手袋部を介して前記開口部から前記筺体の内部に手を入れ、前記開口部の周縁部の裏面側に付着した前記有害物質を手作業で撤去する撤去工程と、撤去された前記有害物質を前記袋本体部内に収容する収容工程と、前記撤去用袋体の下部の有害物質収容部を気密状態で切り取る取外工程と、前記撤去用袋体の上部の残部を気密状態で回収する回収工程とを備える。
【0003】
特許文献1における袋本体部10の内側には、工具ポケット13が設けられている。工具ポケット13は、シート部材を袋本体部10の内側に当てて、シート部材の下部と両側面を袋本体部10に溶着することで形成されており、上部が開口したポケット状になっている(
図3参照)。工具ポケット13には、有害物質2を剥がすための工具(図示せず)が収容されており、袋本体部10および煙突3の外部に工具を出すことなく撤去作業を行える、とされる。
【0004】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の方法を含め、回収対象から採取時にサンプルが飛散しにくい構造にしようとすると採取する部品点数が多くなり、これによって手順が煩雑となり、採取の際に不便であるとともに、部品点数が多く、サンプル採取後の用具回収時にサンプルが飛散するなど、回収後の漏れ防止機能を果たすものではなかった。
【0007】
そこで本発明は、サンプルの採取用キットの部品点数を少なくして煩雑さを抑え、サンプル採取中から採取後にかけてサンプルが飛散しないようにより確実に回収することができ、さらに回収後に漏れ防止機能を果たしながら安全にかつ容易に運搬できる採取キット、或いはその採取方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決すべく下記の解決手段を講じている。
【0009】
(1)本発明の有害物質検査用のサンプル採取キットは、採取サンプルを採取可能な採取袋(1)の背面材(12)の上半部に、
採取後に折り畳んで自己封着可能な粘着面領域からなる一体型の貼り付け口(13)を成形し、
この粘着面領域の略中央に形成された上下・左右対称形状からなる環状の採取口(1H)を形成してなる採取袋キットであって、
採取面への貼り付け状態で採取口から採取サンプルを採取した採取袋において、
採取面から取り外した採取口(1H)を、上下左右又は斜め方向へ(略対称に)折り畳むように貼り付け面同士を(谷折りで1回又は2回)折り重ねて自己接着させ、折り畳んだ採取口(1H)の周囲を貼り付け口の自己接着領域で囲んで封着することを特徴とする。
【0010】
この貼り付け口と重なる一体型の第二貼り付けテープを付加してもよい。また、収容袋の面材又は貼り付け口には。正面から視認可能な折り畳みガイドマークを表示してもよい。
【0011】
このような構成であれば、貼り付け口は左右対称形状なので、左右方向、上下方向、又は斜め方向に対称に折畳むことができる。また、貼り付け口が途切れず輪状に繋がる一体成形なので粉塵漏れがなく確実に封止できる。
【0012】
また、採取面に接着する貼り付け面や第二貼り付けテープが一体形状からなり、は各辺の分割構成ではなく「口」の字に連続構成された一体型のテープからなるので隙間がない。
【0013】
(2)前記いずれかの有害物質検査用のサンプル採取キットにおいて、
上辺開口を封着可能な縦長形状の採取袋(1)と、前記採取袋と同じかまたはこれよりも小さい、或いは大きいサイズの、内部透過材製の工具把持用シート(2)とを、両面粘着剤つき補強材(3)を介して所定位置の重ね張り部で重ね貼りしたことを特徴とする。
【0014】
このような構成であれば、袋を2枚使用し、採取工具を専用袋内に隔離しているので採取工具周囲からの飛散がない。また、工具把持用シートが内部透過できるシート材からなるため、工具によって対象面の切削作業を安全に確実に行うことができる。
【0015】
なお、補強材は干渉機能を有するとともに下辺が略水平直線からなり、この水平直線上またはその近傍を通る線を第二折り畳み線(FL2)とすることが好ましい。
【0016】
(3)前記いずれかの有害物質検査用のサンプル採取キットにおいて、
前記工具把持用シート(2)は、下辺を繰り返し封着可能な開口として倒立配置されるとともに、袋体の上半部ないし上端部を張り付け部とした、工具を内部収容可能な工具収納袋からなり、
前記重ね貼り部の内部領域に、採取袋の表面(11)、補強材(3)、工具把持用袋(2)の裏面(21)を同位置貫通させた、工具先部貫通用のスリット(1S、2S、3S)を形成したことを特徴とする。
【0017】
このような構成であれば、補強材を介して工具貫通用のスリットを工具収納袋内に内部形成しており、このスリットを収納工具が貫通した状態でも、袋シートで作業者を隔離することができる。
【0018】
(4)前記いずれかの有害物質検査用のサンプル採取キットにおいて、
前記工具把持用シート(2)の構成面の上面または下面であって打突工具を打突させるための打突位置に、打突緩衝材(4)を付設したことを特徴とする。
【0019】
このような構成であれば、打突干渉補強材を介して工具貫通用のスリットを工具収納袋内に内部形成しており、このスリットを収納工具が貫通した状態でも、袋シートで作業者を隔離することができる。
【0020】
(5)前記の有害物質検査用のサンプル採取キットにおいて、採取後の採取袋を、前記採取口の対称折り返し線である第一折り返し線(FL1)で折り返したのち、第一折り返し線よりも下部にて互いに略平行に設けた第二、第三の折り返し線(FL2、3)にて繰り返し折り返すことで、略棒状の折り畳み状態に変形し得ることを特徴とする。
【0021】
このような構成であれば、採取後の採取袋を繰り返し折り畳んで略棒状の折り畳み状態にすることで、採取口を巻回封止し、かつサンプル採取部を保護した状態となる(例えば
図10、
図13)。棒状の折り畳み状態にすることで運搬が容易であり、サンプル粉の漏洩などの事故を防ぐことができる。
【0022】
(6)前記いずれかの有害物質検査用のサンプル採取キットを用いた採取方法は、以下のステップからなる。
・対象面貼り付けステップ:採取袋の裏面の貼り付け口を、貼り付け口中央の採取口が採取対象面に位置するよう、構造物等の壁面に張り付ける。
・工具収容ステップ:工具収容袋の周囲の一部に設けた袋口から、工具収容袋の内部に、採取のために必要な切削又は打突等の採取用工具を収容する。このとき、収容した採取用工具の先部の切削部または打突部が、スリット2S,3S,1Sを貫通ないし近接する向きに収容する。
・サンプル採取ステップ:貼り付け面を対象壁面に貼り付けた貼り付け状態のまま、工具収容袋を袋の外側から握って、内部収容した採取用工具の先部の切削部または打突部がスリット2S,3S,1Sを通って採取口に接するように操作し、採取用工具の切削部で採取対象面を切削するか、採取用工具の打突部で採取対象面を打突する等して、採取袋内にサンプルを採取する。
・工具回収ステップ:工具収容袋内の工具を袋口から袋外へ回収する。この回収時の袋口は、採取口よりも鉛直上方に位置させることが好ましい。
・剥離ステップ:水または粘着液からなる飛散防止液を剥離部とその周囲に散布又は散霧しながら、貼り付け口を対象壁面から剥離させる。
・封着ステップ:壁面から剥離させた、粘着面領域からなる貼り付け口を、採取口(1H)が上下左右又は斜め方向へ略対称に折り重なるように折り畳んで、貼り付け面同士を接着して自己封着させる。
【発明の効果】
【0023】
本発明は、サンプルの採取用キットの部品点数を少なくして煩雑さを抑え、サンプル採取中から採取後にかけてサンプルが飛散しないようにより確実に回収することができ、さらに回収後に漏れ防止機能を果たしながら安全にかつ容易に運搬できる採取キットを提供することができるものとなった。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の実施例1の採取キットの構成を示す分解斜視図
【
図2】実施例1の採取キットの正面図(a)、右側面図(b)、背面図(c)、平面図(d)及び底面図(e)
【
図3】
図2のA-A線断面図(a)及びそのB-B部分拡大図(b)
【
図4】実施例1の採取キットの使用状態1(対象面貼付ステップ)を示す説明図
【
図5】実施例1の採取キットの使用状態2(工具収容ステップ)を示す説明図
【
図6】実施例1の採取キットの使用状態3(サンプル採取ステップ)を示す説明図
【
図7】実施例1の採取キットの使用状態4(工具取出しステップ)を示す説明図
【
図8】実施例1の採取キットの使用状態5(対象面剥離ステップ)を示す説明図
【
図9】実施例1の採取キットの折畳みステップ第一状態の正面図(a)、側面図(b)、背面図(c)
【
図10】実施例1の採取キットの折畳みステップ第一状態(a)、第二状態(b)、最終状態(c)の各正面図
【
図11】本発明の実施例2の採取キットの正面図(a)、右側面図(b)、背面図(c)
【
図12】実施例2の採取キットの折畳みステップ前状態(a)、第一状態(b)の各背面図
【
図13】本発明の実施例3の採取キットの正面図(a)、右側面図(b)、背面図(c)
【
図14】実施例3の採取キットの折畳みステップ前状態(a)、第一状態(b)の各背面図
【
図15】実施例3の採取キットの折畳みステップ第ニ状態(c)、最終状態(d)の各背面図
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
図1~10は実施例1の採取キットの説明図と使用状態図、
図11~12は実施例2の採取キットの説明図、
図13~
図15は実施例3の採取キットの説明図である。いずれの実施例においても、本発明の採取キットは少なくとも、構造物の壁面等に張り付けて採取物を袋内に採取するための貼り付け口付きの採取袋1と、採取袋の表面側に、小片からなる補強材3を介して張り付けられる工具収納袋2と、を具備して構成される。
【0026】
採取袋は裏面の貼り付け口が粘着剤層で貼り付け可能に構成されるとともに、貼り付け口の外形の中央が、円形ないし多角形の形状で開口した採取口1Hとなっている。この採取口は、貼り付け口の外周に接することなく、矩形形状の貼り付け口の矩形内部において、採取口の形状の周囲が開放することのない、いわゆる「閉じた形状」で刳り抜き形成される。実施例1の採取口は、貼り付け口の外形と略相似形状である小型横長矩形の閉じた形状からなる(
図1、
図4、
図9)。実施例2の採取口は、貼り付け口の外形の図心を中心とした円形の閉じた形状からなる(
図11、
図12)。実施例3の採取口1Hは、横長扁平六角形の閉じた形状からなる(
図13、
図14)。
【0027】
また本発明の貼り付け口及び採取口は、所定の対称折り返し線、又は並行折り返し線で折り返して畳み綴じ可能な、線対称又は点対称の幾何形状となっている。つまり、
図9の左から右図、
図12の左図から右図、
図14の上図から下図、さらに
図15の上図までに示すように、貼り付け口を、貼り付け口の接着面同士が接するように、採取口の中央や中心線を対称点ないし対称線とした、所定の対称折り返し線、又は並行折り返し線で谷折りに折り返し可能な形状に設定しており、ガイド表示した折り返し線にて貼り付け面を折り畳むことで、採取口を封止した状態に折り畳んで封着可能としている。
【0028】
本発明の採取キットを用いて構造物の壁面のサンプルを採取する際は。
図4に示すように、採取袋1の貼り付け口1Hを構造物壁面等の採取対象面FCに張り付けた状態とする。この張り付け状態のまま、
図5に示すように工具収納袋2内に工具を収納し、
図6に示すように、採取袋の壁面への張り付け状態において、採取口で連通した採取対象面FCへ採取用の工具先部を押し当てるか削ることで、構造物の採取サンプルFSを収納袋内に採取する。
【0029】
採取サンプルを削るか打突するときは、採取口1Hの周りが貼り付け口13で壁面に仮接着されているため。採取サンプルが採取口から周囲へ飛散することがない。また、採取用の工具の先部は採取口1Hから採取対象面FCに直接接触するものの、工具全体が工具収容袋内に収容されているため、工具の使用者が工具の使用によって採取サンプルに触れたり、壁面から削られた採取サンプルが周囲へ飛散したりすることがない(
図6)。
【0030】
サンプルの採取後には、工具収納袋から工具を取り出す。この際、
図7に示すように、工具収納袋の取り出し口が採取面FCやその周囲の接着面FGよりも上方に位置するように持ち上げて取り出すことが、採取サンプルの飛散防止のために好ましい。
【0031】
そして
図8に示すように採取袋の貼り付け面を構造物等の対象壁面から飛散防止スプレーSGを噴霧しながら剥がして取り外す。その後
図9(実施例1).
図12(実施例2)、あるいは
図14ないし
図15(実施例3)に示すように、壁面等からはがして露出した採取済みの採取袋の貼り付け口13を、あらかじめ規定された折り返し線に沿って貼り付け面を谷折りで折り畳むことで、貼り付け面の粘着面同士を接着させ、採取口を折り畳んだ状態に自己封着する。この自己封着によって、採取したサンプルが採取口から飛散したりこぼれたりすることがなく、採取状態野採取袋を安全に運搬することができる。
【0032】
採取後の採取口1Hを自己封着する際の目安として、採取袋の裏面や貼り付け面の周縁に、折り返し線や折り返し点のガイドを表示した形態(
図1、
図2、
図9の符号FG,FL1,)、或いは切り欠きや溝部又は段差部を形成した形態(
図11の13Sや
図13の補強材3の傾斜辺)とすることが好ましい。
【0033】
採取口1Hを自己封着したのちは、そのままの状態で採取袋を運搬してもよいが、
図9の右図や
図10(実施例1)、
図12の右図の一点鎖線矢印(実施例2)、或いは
図15(実施例3)に示すように、自己封着した採取口1Hを囲うように採取袋の残り部分を巻き付けるように繰り返し折り返してもよい。例えば第二、第三の折り返し線で繰り返し略平行に折り返すことで、採取後の採取袋をコンパクトな形態とすることができる。
【0034】
<実施例1>
実施例1の採取キットは、
図1~
図3等に示すように、採取袋の裏面上部に、大型横長矩形の内部を略相似形状の小形横長矩形の採取口形状にくり抜いた「ロ」型の粘着層からなる貼り付け口(13)を有する。
【0035】
この貼り付け口(13)は、使用前状態では大型横長矩形の貼り付け形状全体を離型紙(14)によって覆われてなる。貼り付け口(13)を壁面に張り付ける際は、この離型紙(14)を捲ってはがすことで、背面側に露出させる(
図4)。
【0036】
また貼り付け口の下方であって採取袋の表面中央部に、工具先部貫通用の「水平直線」形状のスリット1Sを有している。この表面中央のスリット1Sの表側を覆うように、略同一形状のスリット3Sを有した横長矩形の両面テープからなる補強材3が貼り付けられる。さらにこの補強材3の表側を覆うように、略同一形状のスリット2Sを有した縦長矩形の工具収容袋2が貼り付けてある。
【0037】
つまり、採取袋の中央部の表側に、両面テープ材からなる補強材3を介して工具収納袋が貼り付けられており、この張り付けられた採取袋、補強材、工具収納袋のそれぞれの貼り付け重畳部には同位置、長さのスリット3S,2S、1Sが重複形成されている(
図1、
図3b参照)。
【0038】
収容袋2内の工具を取り出した後、水平ラインで表示された折り畳み線(FL1)(FL2)(FL3)で順に同一方向へ折り返すことで貼り付け口が自己封着され、且つ、巻回状態の回収済み保存袋(
図10)となる。
【0039】
実施例1の採取キットを用いた採取方法は、以下のステップからなる。
【0040】
・事前ステップ(
図4):採取口が封着されていることを確認し、貼り付け面に覆設されている離形紙を取り外す。
【0041】
・対象面貼り付けステップ(
図4):折り曲げ位置表示FGを貼り付け面への貼り付け位置調整の目安として採取袋の貼り付け口を対象面に貼り付ける。
【0042】
・工具収容ステップ(
図5):工具収容袋に工具を収容して密封する。
【0043】
・サンプル採取ステップ(
図6):工具収容袋内の工具を袋の外側から把持して操作し、貼り付け面で囲われた採取領域から工具によって採取サンプルを削り落として採取袋内に回収する。
【0044】
・工具回収ステップ(
図7):工具収容袋の袋口を採取領域よりも上方へ持ち上げた状態として、工具を収容袋内から取り出して回収する。
【0045】
・対象面剥離ステップ(
図8):スプレーのりを対象面に散霧しながら貼り付け面を上部から順に剥離させ、採取袋を対象面から脱離させる。
【0046】
・封着ステップ(
図9、
図10):採取袋の袋口が封止された状態のまま、折り曲げ位置表示FG、或いは貼り付け面や補強材の上辺、下辺を折り曲げ位置の目安として、貼り付け面が貼り付け面形状の対称線を折り線として互いに折り重なるよう貼り付け面と共に採取袋及び工具収容袋を折り曲げる。実施例1では略水平な第一折り曲げ線、これと略平行な第二折り曲げ線、これらと略平行な第三折り曲げ線の順に巻き回すように繰り返してコンパクトな折り曲げ形態とすることができる。なお、採取袋に空気が密封されている場合は、第一折り曲げ線でのみ折り返した状態を最終の折り曲げ形態としてもよい。
【0047】
<実施例2>
実施例2は採取袋の裏面上部に、横長方形の内部を小形の丸形の採取口形状にくり抜いた「長方形外形及び丸形刳り貫き」型の貼り付け口を有している。また貼り付け口の下半部と重なる位置であって採取袋の全幅方向に亘って両面粘着性の補強材3が貼り付けられると共に、この補強材3の中央にスリット1S、2S,3Sを有している。
【0048】
表面のスリット1Sは袋表上に補強材3を介して工具収容袋2が貼り付けてあり、同位置、長さのスリット3S,2Sが重複形成されている。実施例2の工具収容袋2は採取袋1よりも大きい幅、大きい高さに設定され、下辺を操作片20FS付きの密封可能な袋口20としている。
【0049】
<実施例3>
実施例3は採取袋の裏面上部に、横長方形の内部を小形の横長六角形の採取口形状にくり抜いた「長方形外形及びダイヤ刳り貫き」型の貼り付け口を有している。また貼り付け口の下方であって採取袋の表裏面中央部にスリット1Sを有している。
【0050】
表面のスリット1Sは袋表上に補強材3を介して工具収容袋2が貼り付けてあり、同位置、長さのスリット3S,2Sが重複形成されている。
【0051】
収容袋2内の工具を取り出した後、採取口形状の上斜辺に沿う斜めラインで表示された折り畳み線(FL1)(FL2)の斜めへの折り畳みと、工具収容袋の側辺に沿う水平折り畳み線(FL3)、これと平行な水平折り畳み線(FL4)で順に同一方向へ折り返すことで貼り付け口が自己封着され、且つ、巻回状態の回収済み保存袋(
図10)となる。また工具収容袋の表面には、打突緩衝材4が貼り付けられている。
【0052】
上記実施形態の採取キットや採取方法によれば、サンプリング方法で分析結果が変わってしまうことがなく、根本的に採取もしやすい。かつ飛散をさせない、の2点の両立が可能な採取袋を提供することができる。
【0053】
特に実施例では、「口」の字形状テープの折り畳みによって封止状態の維持と、封止状態の採取袋の補強とが同時に行えるものとなった。
【0054】
また、一時密封可能な壁貼り付け式採取袋の採取口をいわゆる閉じた形状とし、その全周を、途中で分離しない一体の環形状からなる上下対称の一体型貼り付け口の環状の粘着面で枠囲してなり、切削によるサンプル回収時の飛散防止効果をより確実にすることができる。さらに、貼り付け口のテープは、サンプル採取後に折り返し線に沿って上下に折りたたむことで採取口を自己封着で封止できる。特に左右対称又は点対称に折りたたむことで、容易に再剥離しない均等な自己封着状態とすることができる。
【0055】
採取面に接着する面は分離テープで4枚貼る等ではなく、例えば1枚のガムテープを口の字形状といった、所定幅を確保した環状形状として一体構成しており、サンプル漏洩の部分的な隙間がない。
【0056】
工具収容袋を表側に取り付けることで、密閉式外接着袋による「三重」のシート遮蔽の効果もある。また、補強材3や工具緩衝材によって補強されることで、採取袋や採取したサンプルの保護を行うことができる。
【0057】
また、一時密封可能な壁貼り付け式採取袋と、一時密封可能な工具袋とを外接着して一体化させたことで、運搬や取り扱いが容易であり、採取後にも採取場所ごとのコンパクトな形態にまとめた保護状態とすることができる。特に、袋を2枚一体にして使用しているので採取道具からの飛散がない。
【0058】
工具との間を二重シートで遮蔽し、袋の間の補強材とあわせて、作業員の作業手との間を三重に遮蔽した状態となる。これにより、採取しやすい、かつ飛散をさせないといった採取手順の効率化と飛散防止の両立が可能となった。
【0059】
その他、本発明は上記の実施形態に限らず種々の変形が可能である。要素ごとの組合せ、一部要素の抽出、部品ごとへの分解構成或いは一体構成も可能である。
【符号の説明】
【0060】
1 採取袋
12 背面材
13 貼り付け口
1H 採取口
1S,2S,3S スリット
2 工具把持用シート(工具収納袋)
3 補強材
4 打突緩衝材
FA 対象貼り付け面
FS 採取サンプル
FL1、FL11,FL12 対称折り返し線
FL2,FL3,FL4 平行折り返し線
【要約】
【課題】サンプルの採取後にサンプルが飛散せず安全に回収し運搬できる有害物質検査用のサンプル採取キットを提供する。
【解決手段】
採取袋1の背面(12)の上半部に、採取後に折り畳んで自己封着可能な粘着面領域からなる一体型の貼り付け口(13)を成形し、この粘着面領域の略中央に形成された上下・左右対称形状からなる環状の採取口(1H)を形成してなる採取袋キット。採取後に封着した採取袋を、採取口(1H)が上下左右又は斜め方向へ略対称に折り重なるように折り畳んで、貼り付け面同士を接着して自己封着させる。
【選択図】
図4