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  • 特許-アルミニウム溶解炉 図1
  • 特許-アルミニウム溶解炉 図2
  • 特許-アルミニウム溶解炉 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-28
(45)【発行日】2023-10-06
(54)【発明の名称】アルミニウム溶解炉
(51)【国際特許分類】
   F27D 13/00 20060101AFI20230929BHJP
   F27B 3/18 20060101ALI20230929BHJP
   C22B 9/16 20060101ALI20230929BHJP
   C22B 21/00 20060101ALI20230929BHJP
【FI】
F27D13/00 D
F27B3/18
C22B9/16
C22B21/00
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2023063028
(22)【出願日】2023-04-07
【審査請求日】2023-04-07
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521387040
【氏名又は名称】ネクサスジャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129676
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼荒 新一
(72)【発明者】
【氏名】眞畑 進
【審査官】國方 康伸
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-330203(JP,A)
【文献】特開昭51-149808(JP,A)
【文献】特開2012-193922(JP,A)
【文献】中国実用新案第201672799(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F27B 3/00- 3/28
F27D 7/00-15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウムを主とするインゴットを溶解する電気式ヒータによるアルミニウム溶解炉において、
前記アルミニウム溶解炉の溶解室のアルミニウム溶湯の直上に配置され、開閉扉側から奥行き側に向かって高さが低くなるように、底面が傾斜して形成されている前記インゴットを載置するセラミック製の載置台を有し、
前記載置台にインゴットを側方方向に設けられた開閉扉から挿入可能であることを特徴とするアルミニウム溶解炉。
【請求項2】
前記載置台は、溶解室の幅全体設けられていることを特徴とする請求項1に記載のアルミニウム溶解炉。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミニウム溶解炉に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスや重油を利用した燃焼式バーナーを使用したアルミニウム溶解炉においては、加熱出力が大きいためアルミニウムのインゴットを直接アルミニウム溶湯に投入したり、アルミニウムインゴットを直接バーナーで溶融させて、溶湯にした状態で溶湯溶解室内に投入したりするといった手段が採用されている(特許文献1)。
【0003】
しかし、電気ヒータを使用したアルミニウム溶解炉は、出力が弱いため直接冷えたアルミニウムのインゴットを投入すると、溶解室内の溶湯の温度が極端に低下してしまい、再度溶湯温度を復帰させるのに時間がかかる。また、電気代も多くかかるため、予めインゴットを加熱してから投入する必要がある。
【0004】
そこで、従来は別途インゴット予熱装置でインゴットを加熱した後に、溶解室内の溶湯に投入するという手段を採用していた(インゴット予熱装置の例としては、例えば、引用文献2参照)。
【0005】
しかし、別のインゴット予熱装置を使用する場合は、予熱装置の電気代がかかる上、加熱したインゴットを運搬する必要があるため、200℃程度までしか加熱できなかった。また、加熱したインゴットを溶解室に運搬する過程で温度が低下してしまうという問題点、もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平9-176754号公報
【文献】特開2001-131650号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は、かかる課題を解決するためになされたものであり、アルミニウム溶解炉の溶湯の温度の無駄な低下を防止し、電気式ヒータの負荷を軽減して電気使用量の軽減を図ることができるアルミニウム溶解炉を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上述の目的を達成するために以下の手段を採った。
【0009】
本発明にかかるアルミニウム溶解炉は、
アルミニウムを主とするインゴットを溶解する電気式ヒータによるアルミニウム溶解炉において、
前記アルミニウム溶解炉の溶解室のアルミニウム溶湯の上方に前記インゴットを載置するセラミック製の載置台を有し、
前記載置台にインゴットを側方方向に設けられた開閉扉から挿入可能であることを特徴とする。
【0010】
本発明にかかるアルミニウム溶解炉によれば、溶解室のアルミニウム溶湯の上方にインゴットを載置する載置台を設置されている。そのため、載置されるインゴットをアルミニウム溶湯からの輻射熱、対流熱及び伝導熱を利用して予熱することができる。この際に、溶湯の上方に熱せられた空気が流れるような対流に対して載置台が抵抗となるため、アルミニウム溶湯から得た熱が開閉扉に直接到達して放熱させることを低減することができる。
【0011】
また、本発明にかかるアルミニウム溶解炉において、前記載置台は、開閉扉側から反対側に向かって高さが低くなるように傾斜して形成されていることを特徴とするものであってもよい。かかる構成を採用することによって、熱せられた空気が直接に開閉扉に到達することを防止し、確実に載置台を加熱した後に開閉扉側へ移動させることができる。これにより、効率よくインゴットを加熱することができる。
【0012】
さらに、本発明にかかるアルミニウム溶解炉において、前記載置台は、溶解室の幅全体設けられていることを特徴とするものであってもよい。かかる構成を採用することによって、熱せられた空気が載置台の幅方向の隙間から上方へ移動することを防止でき、より効率よくインゴットを加熱することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、実施形態にかかるアルミニウム溶解炉100の一部透視正面図である。
図2図2は、実施形態にかかるアルミニウム溶解炉100の側方視断面図である。
図3図3は、実施形態にかかるアルミニウム溶解炉100の上方視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を用いて、本発明の実施形態にかかるアルミニウム溶解炉100について、図に従って詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態及び図面は、本発明の実施形態の一部を例示するものであり、これらの構成に限定する目的に使用されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更することができる。各図において対応する構成要素には同一又は類似の符号が付されている。なお、本明細書及び特許請求の範囲において、「奥行き方向」とは、図3に示すように、開閉扉30からインゴットを挿入する方向Xをいい、「幅方向」とは、奥行方向に対して水平に90°の方向Wを指す。
【0015】
本実施形態にかかるアルミニウム溶解炉100は、図1に示すように、溶解炉本体80内に設けられるアルミニウムのインゴット90を溶解し、アルミニウム溶湯40が保持される溶解室10と、この溶解室10内に配置される載置台20と、アルミニウムのインゴット90を出し入れするための開閉扉30と、を備えている。なお、インゴット90には、一次合金に加えて、リサイクルの二次合金も含まれる。
【0016】
溶解室10は、アルミニウムのインゴット90を溶解し、アルミニウム溶湯40を貯留するるつぼの機能を有する部分であり、電気式ヒータ15と、電気式ヒータ15の熱を保温する断熱材からなる溶解炉本体80と、アルミニウム溶湯40の温度を制御する温度制御装置(図示しない。)とヒータの電源部(図示しない。)を備えている。任意に、ガス導入口、排気口、真空・雰囲気容器、炉心管、昇降装置等を組み合わせることもできる。
【0017】
電気式ヒータ15は、特に限定するものではなく、ニクロム線や炭化ケイ素などの抵抗体に通電して発熱させる抵抗加熱炉、アークにより加熱するアーク炉,高周波や低周波の誘導電流により加熱する誘導炉、プラズマにより加熱するプラズマ炉等の電気式ヒータ15から選択することができる。
【0018】
載置台20は、溶解室10内にあり、アルミニウム溶湯40の上方に設けられる板で、インゴット90を予熱するために使用される。好ましくは、熱に強いセラミックで作製されることが望ましい。載置台20は、詳細を後述する開閉扉30の底面と段差なく連通しており、開閉扉30の底面に置いたインゴット90を押し込むことで、載置台20上にインゴット90を載置することができる。載置台20は、水平に設置してもよいが、図3に示すように、開閉扉30側から奥行き側に向かって低くなるように傾斜を設けても良い。傾斜を設けることによって、載置台20の下方で加熱された空気は、載置台20の底面に衝突した後、図2の矢印Aのように、載置台20の底面の傾斜を昇るように移動し易くなり、開閉扉30に直接向かうことを低減することができる。そのため、空気は、載置台20を確実に加熱しつつ矢印Bに示すように大きく迂回するように移動して開閉扉30に到達する。したがって、効率よく載置台20に熱を伝達するとともに、開閉扉30に向かう間に載置台20及びインゴットを効率よく予熱することができる。
【0019】
また、載置台20は、好ましくは、図3に示すように溶解室10の幅全体を覆うように形成するとよい。このように載置台20を作製することによって、加熱された空気が幅方向の隙間から上方への移動を防止することができ、確実に空気を図3の矢印Bの方向に移動させることができ、効率的に載置台20に熱を伝え、インゴット90を効率的に予熱にすることができる。
【0020】
開閉扉30は、載置台20の側方に設けられる開閉可能な扉である。開閉の方法は特に限定するものではなく、手動であっても電動であっても構わない。
【0021】
以上のように作製されたアルミニウム溶解炉100は、以下のようにして使用される。まず、開閉扉30を開け、インゴット90を押し込み棒等を利用して載置台20の上に載置する。その状態で所定時間維持し、インゴット90を予熱する。予熱する温度は、200℃以上、より好ましくは、400℃以上に加熱する。所定温度まで加熱したら、インゴット90を押し込み帽等で押し込んで溶湯内に落下させ、インゴット90を溶解させる。
【0022】
本発明にかかるアルミニウム溶解炉100によれば、700℃前後のアルミニウム溶湯40による輻射熱、加熱された空気の伝導熱、対流熱により載置台20を介して、又は直接インゴット90を予熱させることができる。そのため、400℃以上にインゴット90を加熱することができる。これにより、インゴット90を加熱せずに挿入した場合では、700℃に復帰させる時間が40分以上かかるのに対し、10分程度で復帰させることができ、電気代を1/5にすることができる。また、別途インゴット予熱装置でインゴット90を加熱した後に、溶解室10のアルミニウム溶湯40内に投入する場合と比較しても、インゴット90がアルミニウム溶湯40に投入されるときの温度は200℃以下であることから、700℃まで復帰させるのに30分近くかかり、電気代を1/3以下にすることができる。
【0023】
また、本発明にかかるアルミニウム溶解炉100によれば、内部の空気が外気へ放熱されるのは、インゴット90を投入する際に側方の開閉扉30を開ける時のみであり、それ以外に放熱されることが防止される。また、従来のような上方から投入する装置と比較して、側方方向に開口させることで放熱を大きく抑えることができる。また、放熱される空気は、載置台20によって開閉扉30側に直接移動することが防がれており、熱せられた空気の熱を効率よく、載置台20又はインゴット90に伝達することができる。
【0024】
また、400℃以上という高温まで予熱させることで、二次合金の場合、不純物を燃焼させることができ、不純物を除去させることができる。
【0025】
なお、本発明は上述した各実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0026】
上述した実施の形態で示すように、アルミニウム溶湯を作製する溶解装置として産業上利用することができる。
【符号の説明】
【0027】
10…溶解室、15…電気式ヒータ、20…載置台、30…開閉扉、40…アルミニウム溶湯、80…溶解炉本体、90 …インゴット、100…アルミニウム溶解炉



【要約】
【課題】アルミニウム溶解炉の溶湯の温度の無駄な低下を防止して、電気式ヒータの負荷を軽減させて電気使用量の軽減を図ることができるアルミニウム溶解炉を提供する。
【解決手段】本発明にかかるアルミニウム溶解炉100は、アルミニウムを主とするインゴット90を溶解する電気式ヒータ15によるアルミニウム溶解炉100において、前記アルミニウム溶解炉100の溶解室10のアルミニウム溶湯40の上方に前記インゴット90を載置するセラミック製の載置台20を有し、載置台20にインゴット90を側方方向に設けられた開閉扉から挿入可能であることを特徴とする。
【選択図】図2



図1
図2
図3