(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-28
(45)【発行日】2023-10-06
(54)【発明の名称】車両用ステップ装置
(51)【国際特許分類】
B60R 3/02 20060101AFI20230929BHJP
B60J 5/06 20060101ALI20230929BHJP
【FI】
B60R3/02
B60J5/06 A
B60J5/06 G
(21)【出願番号】P 2019164028
(22)【出願日】2019-09-09
【審査請求日】2022-07-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(73)【特許権者】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】尾子 禎宏
(72)【発明者】
【氏名】野村 啓介
(72)【発明者】
【氏名】風間 真司
(72)【発明者】
【氏名】日比 和宏
(72)【発明者】
【氏名】池田 和弘
【審査官】久保田 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-137385(JP,A)
【文献】実開昭62-180170(JP,U)
【文献】特開2004-003329(JP,A)
【文献】特開2007-269086(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0174138(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 3/02
B60J 5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドア開口部の下方に支持される可動ステップと、
車幅方向の変位区間を有して車両前後方向に移動するスライドドアに支持された状態で前記可動ステップに係合することにより前記スライドドアの開閉動作に連動して前記可動ステップを車幅方向に移動させる連結部材と、を備え、
前記可動ステップには、前記スライドドアと一体に移動する前記連結部材の係合部を内側に配置して車両前後方向に延びるガイドレールが設けられ、
前記連結部材は、前記係合部が車幅方向外側に位置する前記ガイドレールの側壁部に摺接して該側壁部を押圧しつつ前記ガイドレール内を前記スライドドアの開動作方向に移動することにより前記可動ステップを格納位置から展開位置に移動させるとともに、
前記係合部が車幅方向内側に位置する前記ガイドレールの側壁部に摺接して該側壁部を押圧しつつ前記ガイドレール内を前記スライドドアの閉動作方向に移動することにより前記可動ステップを前記展開位置から前記格納位置に移動させるものであって、
前記ガイドレールは、前記スライドドアが全閉状態にある場合に前記係合部が配置される端末位置を含んだ閉側の端末領域が、前記係合部が前記両側壁部を前記押圧しない閉側空走区間としての構成を有
し、
前記閉側空走区間は、前記ガイドレール内を車両前後方向に移動する前記係合部が、前記ガイドレールのレール幅方向に変位しつつ前記両側壁部に摺接することなく車幅方向に移動する非摺接区間である車両用ステップ装置。
【請求項2】
請求項
1に記載の車両用ステップ装置において、
前記非摺接区間においては、前記ガイドレール内を車幅方向に移動しつつ車両前後方向に移動する前記係合部の移動軌跡に設定された変化勾配よりも、前記係合部の車幅方向外側に位置する前記側壁部に小さな前記変化勾配が設定されること、
を特徴とする車両用ステップ装置。
【請求項3】
請求項
1又は請求項
2に記載の車両用ステップ装置において、
前記非摺接区間においては、前記ガイドレール内を車幅方向に移動しつつ車両前後方向に移動する前記係合部の移動軌跡に設定された変化勾配よりも、前記係合部の車幅方向内側に位置する前記側壁部に大きな前記変化勾配が設定されること、
を特徴とする車両用ステップ装置。
【請求項4】
請求項1~請求項
3の何れか一項に記載の車両用ステップ装置において、
前記ガイドレールは、前記可動ステップが前記展開位置に到達した時点における前記係合部の移動位置よりも開側の移動領域が、前記係合部が前記両側壁部を前記押圧しない開側空走区間としての構成を有すること、を特徴とする車両用ステップ装置。
【請求項5】
請求項
4に記載の車両用ステップ装置において、
前記開側空走区間は、前記係合部の移動軌跡に対して前記両側壁部が平行に延在する平行区間であること、を特徴とする車両用ステップ装置。
【請求項6】
請求項
4又は請求項
5に記載の車両用ステップ装置において、
前記スライドドアの開動作時、車幅方向外側に向かう該スライドドアの変位が完了する前に、前記可動ステップが前記展開位置に到達すること、
を特徴とする車両用ステップ装置。
【請求項7】
請求項1~請求項
6の何れか一項に記載の車両用ステップ装置において、
前記ガイドレールは、車幅方向に対向する前記両側壁部が互いに独立した異なる壁部材により構成されてなること、を特徴とする車両用ステップ装置。
【請求項8】
請求項1~請求項
7の何れか一項に記載の車両用ステップ装置において、
前記スライドドアには、該スライドドアの開閉に要する力の変化に基づいて、前記スライドドアに生じた挟み込みを検出する挟み込み検出装置が設けられること、
を特徴とする車両用ステップ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ステップ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、スライドドアの開閉動作に連動してドア開口部の下方に設けられた可動ステップを車幅方向に移動させる車両用のステップ装置がある。例えば、特許文献1に記載のステップ装置において、可動ステップは、その下面に設けられたガイド部材、及びこのガイド部材に案内される摺動部材を有する連結部材を介してスライドドアと連結されている。そして、これにより、車幅方向外側に変位しつつ車両後方に開動作するスライドドアに連動して、その可動ステップを車幅方向外側の展開位置に移動させるとともに、車幅方向内側に変位しつつ車両前方に閉動作するスライドドアに連動して、その可動ステップを車幅方向内側の格納位置に移動させる構成になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のようにスライドドアと可動ステップとが連結された構成では、その可動ステップがスライドドアの負荷となる。そして、これにより、スライドドアの開閉に要する力が増大するという問題があることから、この点において、なお改善の余地を残すものとなっていた。
【0005】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、スライドドアの開閉に要する力を低減することのできる車両用ステップ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する車両用ステップ装置は、ドア開口部の下方に支持される可動ステップと、車幅方向の変位区間を有して車両前後方向に移動するスライドドアに支持された状態で前記可動ステップに係合することにより前記スライドドアの開閉動作に連動して前記可動ステップを車幅方向に移動させる連結部材と、を備え、前記可動ステップには、前記スライドドアと一体に移動する前記連結部材の係合部を内側に配置して車両前後方向に延びるガイドレールが設けられ、前記連結部材は、前記係合部が車幅方向外側に位置する前記ガイドレールの側壁部に摺接して該側壁部を押圧しつつ前記ガイドレール内を前記スライドドアの開動作方向に移動することにより前記可動ステップを格納位置から展開位置に移動させるとともに、前記係合部が車幅方向内側に位置する前記ガイドレールの側壁部に摺接して該側壁部を押圧しつつ前記ガイドレール内を前記スライドドアの閉動作方向に移動することにより前記可動ステップを前記展開位置から前記格納位置に移動させるものであって、前記ガイドレールは、前記スライドドアが全閉状態にある場合に前記係合部が配置される端末位置を含んだ閉側の端末領域が、前記係合部が前記両側壁部を前記押圧しない閉側空走区間としての構成を有する。
【0007】
即ち、通常、車両のスライドドアは、その全閉位置近傍に車幅方向の変位区間を有する。更に、全閉位置からの開動作時には、その停止状態にあるスライドドアを動かすために大きな力が必要であり、全閉動作時には、そのスライドドアにウェザストリップ等のシール部材を押し潰させる力が必要となる。このため、全閉位置近傍においては、そのスライドドアに連結された可動ステップが負荷となることによる当該スライドドアの開閉に要する力の増大が顕著になりやすい傾向がある。
【0008】
しかしながら、上記構成によれば、ガイドレールに設定された閉側空走区間としての閉側の端末領域を連結部材の係合部が移動する間、その可動ステップがスライドドアの負荷にならない。そして、これにより、スライドドアの開閉に要する力を低減することができる。
【0009】
上記課題を解決する車両用ステップ装置において、前記閉側空走区間は、前記ガイドレール内を車両前後方向に移動する前記係合部が、前記ガイドレールのレール幅方向に変位しつつ前記両側壁部に摺接することなく車幅方向に移動する非摺接区間であることが好ましい。
【0010】
即ち、連結部材の連結部がガイドレールの両側壁部に摺接しないようにすることで、より確実に、その空走区間を形成することができる。そして、これにより、より効果的に、そのスライドドアの開閉に要する力を低減することができる。
【0011】
上記課題を解決する車両用ステップ装置は、前記非摺接区間においては、前記ガイドレール内を車幅方向に移動しつつ車両前後方向に移動する前記係合部の移動軌跡に設定された変化勾配よりも、前記係合部の車幅方向外側に位置する前記側壁部に小さな前記変化勾配が設定されることが好ましい。
【0012】
上記構成によれば、スライドドアの開動作時、例えば、そのガイドレール内を車両後方側に移動する連結部材の係合部が、その車幅方向外側に位置する側壁部に対して徐々に近づくようにレール幅方向に変位する。そして、これにより、閉側空走区間を通過した連結部材の係合部が、速やかに、その車幅方向外側に位置する側壁部に摺接して、この側壁部を押圧することで、円滑に、その格納位置から展開位置に向かって可動ステップを移動させることができる。
【0013】
上記課題を解決する車両用ステップ装置は、前記非摺接区間においては、前記ガイドレール内を車幅方向に移動しつつ車両前後方向に移動する前記係合部の移動軌跡に設定された変化勾配よりも、前記係合部の車幅方向内側に位置する前記側壁部に大きな前記変化勾配が設定されることが好ましい。
【0014】
上記構成によれば、スライドドアの閉動作時、例えば、そのガイドレール内を車両前方側に移動する連結部材の係合部が、その車幅方向内側に位置する側壁部から徐々に離れるようにレール幅方向に変位する。そして、これにより、閉側空走区間に進入した連結部材の係合部が、速やかに、その車幅方向内側に位置する側壁部から離間することで、円滑に、その格納位置に到達した可動ステップを停止させることができる。
【0015】
上記課題を解決する車両用ステップ装置において、前記ガイドレールは、前記可動ステップが前記展開位置に到達した時点における前記係合部の移動位置よりも開側の移動領域が、前記係合部が前記両側壁部を前記押圧しない開側空走区間としての構成を有することが好ましい。
【0016】
即ち、スライドドアが開閉動作中であっても、その乗員が、可動ステップに足を載せる可能性がある。そして、これにより、そのスライドドアに連結された可動ステップが大きな負荷になるという問題がある。
【0017】
しかしながら、上記構成によれば、ガイドレールに設定された開側空走区間としての開側の移動領域を連結部材の係合部が移動する間、その可動ステップがスライドドアの負荷にならない。そして、これにより、スライドドアの開閉に要する力を低減することができる。
【0018】
上記課題を解決する車両用ステップ装置において、前記開側空走区間は、前記係合部の移動軌跡に対して前記両側壁部が平行に延在する平行区間であることが好ましい。
即ち、通常、スライドドアは、その全閉位置近傍に車幅方向の変位区間を有する。このため、多くの場合、スライドドアの開動作時、その車幅方向外側に向かうスライドドアの変位が完了した後は、このスライドドアと一体に移動する連結部材の係合部もまた、略直線的に、その車両前後方向に移動することになる。従って、上記構成によれば、簡素な構成にて、容易に、その開側の移動領域を開側空走区間とすることができる。
【0019】
上記課題を解決する車両用ステップ装置は、前記スライドドアの開動作時、車幅方向外側に向かう該スライドドアの変位が完了する前に、前記可動ステップが前記展開位置に到達することが好ましい。
【0020】
即ち、車幅方向外側に向かうスライドドアの変位が完了することで、このスライドドアが開動作中であっても、車両の乗員が、その乗降を開始する可能性がある。しかしながら、上記構成によれば、このとき、可動ステップについては、既に、その展開位置に到達した状態にある。そして、これにより、その乗員が車幅方向外側に移動中の可動ステップに足を載せる可能性を低減することができる。
【0021】
更に、車幅方向外側に向かうスライドドアの変位が完了した時点における連結部材の係合部の移動位置は、既に、そのガイドレールに設定された開側の移動領域、つまりは開側空走区間となっている。このため、その車幅方向外側に向かうスライドドアの変位が完了する前に、車両の乗員が可動ステップに足を載せた場合であっても、その可動ステップがスライドドアの負荷になり難いという利点がある。
【0022】
上記課題を解決する車両用ステップ装置において、前記ガイドレールは、車幅方向に対向する前記両側壁部が互いに独立した異なる壁部材により構成されてなることが好ましい。
【0023】
上記構成によれば、ガイドレールの設計自由度が向上する。そして、これにより、より容易に、そのガイドレールに係合部の空走区間を設定することができる。
上記課題を解決する車両用ステップ装置において、前記スライドドアには、該スライドドアの開閉に要する力の変化に基づいて、前記スライドドアに生じた挟み込みを検出する挟み込み検出装置が設けられることが好ましい。
【0024】
即ち、このような挟み込み検出装置が設けられたスライドドアにおいては、このスライドドアに連結された可動ステップが負荷となることで、その挟み込み検出に誤判定が生ずる可能性がある。従って、このようなスライドドアに対し、そのスライドドアの開閉に要する力を低減可能な空走区間をガイドレールに設ける上記各構成を適用することにより、その挟み込み検出の誤判定を抑制することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、スライドドアの開閉に要する力を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】ドア開口部に設けられたスライドドア及びステップ装置を示す車両の斜視図。
【
図2】ドア開口部に設けられたスライドドア及びステップ装置を示す車両の側面図。
【
図3】(a)(b)は、車幅方向に変位しつつ車両前後方向に移動するスライドドアとその移動経路を示す平面図。
【
図9】可動ステップに設けられたガイドレールに係合する連結部材としてのガイドローラーユニットを示す断面図。
【
図11】ガイドレールに設定された空走区間の説明図。
【
図12】スライドドア開動作時における閉側空走区間の作用説明図。
【
図13】スライドドア閉動作時における閉側空走区間の作用説明図。
【
図16】(a)は、サブステップの平面図、(b)(c)は、サブステップの断面図。
【
図17】(a)(b)は、可動ステップを支持する支持アームの平面図。
【
図18】支持アームを介して連結された可動ステップ及び支持ブラケットの斜視図。
【
図19】支持アーム及び支持ブラケットの分解斜視図。
【
図20】支持ブラケットに対する支持アームの第1連結点近傍の平面図。
【
図21】支持ブラケットに対する支持アームの第1連結点近傍の断面図。
【
図22】(a)は、支持ブラケットに設けられる受圧部材の側面図、(b)は、この受圧部材の下面図。
【
図23】可動ステップに対する支持アームの第2連結点近傍の下面図。
【
図24】可動ステップに対する支持アームの第2連結点近傍の断面図。
【
図25】(a)は、可動ステップとの間に支持アームを挟み込む挟持部材に設けられる受圧部材の下面図、(b)は、この受圧部材の側面図。
【
図26】(a)は、可動ステップを構成する樹脂カバーの下面図、(b)は、可動ステップを構成する可動ベースの下面図。
【
図27】可動ステップが格納位置にある状態におけるステップ装置の断面図。
【
図28】カバー部材、シール部材、及び保持部材の斜視図。
【
図29】(a)は、カバー部材の平面図、(b)は、支持アーム及び支持ブラケットの下方に配置されたカバー部材の平面図。
【
図30】可動ステップが格納位置にある状態におけるステップ装置の断面図。
【
図31】周壁部の先端にシール部材が固定されたカバー部材の斜視図。
【
図32】周壁部の先端にシール部材が固定されたカバー部材の斜視図。
【
図33】周壁部の先端にシール部材が固定されたカバー部材の斜視図。
【
図34】カバー部材の前端部に設けられた車両前方側の周壁部の断面図。
【
図35】(a)(b)は、ガイドローラーユニットの側面図。
【
図36】ガイドレールに対するガイドローラーユニットの挿脱作業の説明図。
【
図37】車両後方側の長手方向端部に設けられた切欠き部を示すガイドレールの下面図。
【
図38】湾曲形状部のコーナー部に設けられた切欠き部を示すガイドレールの下面図。
【
図39】(a)(b)は、カバー部材の底壁部に設けられた保持部材の拡大図。
【
図40】スライドドアの開閉動作に連動した可動ステップの車幅方向移動についての別例を示す説明図。
【
図41】別例のストッパ構造を示す可動ステップ及びサブステップの断面図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、車両用ステップ装置に関する一実施形態を図面に従って説明する。
図1に示すように、本実施形態の車両1は、車両前後方向(
図1中、左右方向)に移動することにより車体2の側面に設けられたドア開口部3を開閉可能なスライドドア4を備えている。
【0028】
詳述すると、
図2に示すように、本実施形態の車両1において、車体2の側面には、車両前後方向に延びる複数のガイドレール10が設けられている。具体的には、本実施形態の車両1には、ドア開口部3の下縁部に配置されたロアレール11、ドア開口部3の後方に配置されたセンターレール12、及びドア開口部3の上縁部に配置されたアッパーレール13が設けられている。更に、これらの各ガイドレール10には、それぞれ、当該各ガイドレール10の延伸方向に沿って摺動可能なガイドローラーユニット20が連結されている。そして、本実施形態の車両1においては、これらの各ガイドローラーユニット20を介して車体2にスライドドア4を支持することにより、その車両前後方向に延びる各ガイドレール10に沿ったスライドドア4の開閉動作が可能となっている。
【0029】
また、
図3(a)(b)に示すように、本実施形態の各ガイドレール10は、それぞれ、その車両前方側の長手方向端部10f、即ちスライドドア4が全閉状態となる側の端部に、車両後方側から前方側に向かって車幅方向内側(
図3中、上側)に湾曲した湾曲形状部30を有している。尚、説明の便宜上、
図3(a)には、ロアレール11及びロアローラーユニット21を、
図3(b)には、センターレール12及びセンターローラーユニット22を図示し、アッパーレール13及びアッパーローラーユニット23については、その図示を省略する。そして、本実施形態のスライドドア4は、これらの各ガイドレール10に設けられた湾曲形状部30に案内される状態で、車幅方向の変位を伴いつつ、そのスライドドア4が車両前後方向に開閉動作する構成になっている。
【0030】
即ち、本実施形態のスライドドア4は、全閉位置Pcにある場合、その外表面4aが車体2の側面2aに対して略面一となるように構成されている。また、このような全閉位置Pcから開動作する場合、スライドドア4は、車幅方向外側に変位しつつ、車両後方側に移動する。つまり、このスライドドア4は、その移動経路Rの全閉位置Pc側に当該スライドドア4が車幅方向に変位する幅方向変位区間Rcを有している。尚、
図3中、一点鎖線は、開閉動作するスライドドア4、詳しくは、その前端部分の軌跡を示している。そして、本実施形態の車両1は、これにより、その開閉動作するスライドドア4が車体2に干渉しない構成になっている。
【0031】
また、
図2に示すように、本実施形態の車両1には、モータ31mを駆動源として、そのスライドドア4を開閉動作させるパワースライドドア装置31が設けられている。即ち、車両1の乗員は、手動操作に限らず、図示しないドアハンドルや車室内に設けられた操作スイッチ、或いは携帯機を操作することにより、そのスライドドア4を開閉動作させることができる。更に、このパワースライドドア装置31は、モータ31mの回転や通電電流量等に基づいて、スライドドア4を開閉させるために必要な駆動力、つまりは、その開閉に要する力の変化を監視する。そして、これにより、そのスライドドア4に生じた挟み込みを検出する挟み込み検出装置32としての機能を有している。
【0032】
具体的には、本実施形態の挟み込み検出装置32は、例えば、スライドドア4の開閉駆動時、モータ31mの電流量が所定の閾値を超えて増大した場合に、そのスライドドア4に挟み込みが発生したものと判定する。そして、本実施形態のパワースライドドア装置31は、これにより、閉駆動中のスライドドア4を開方向に反転駆動する、或いは開駆動中のスライドドア4を停止させる等、その挟み込みを解消し、或いは回避するための駆動制御を実行する構成になっている。
【0033】
また、
図1及び
図2に示すように、本実施形態の車両1には、ドア開口部3の下方に踏み台となるステップ部材40を展開して、その車両1に乗降する乗員の利用に供するステップ装置41が設けられている。
【0034】
詳述すると、
図4(a)(b)、
図5(a)(b)及び
図6に示すように、本実施形態のステップ装置41は、車幅方向に移動可能な状態でドア開口部3の下方に支持される可動ステップ42と、車体2に固定された状態で可動ステップ42とともにドア開口部3の下方に配置されるサブステップ43と、を備えている。尚、
図4及び
図5中においては、各図中、上下方向、
図6中においては、左右方向が、それぞれ、車幅方向となっている。
【0035】
具体的には、
図4~
図7に示すように、本実施形態のステップ装置41は、車体2に対して回動可能に連結されるとともに可動ステップ42に対して回動可能に連結される複数の支持アーム44を備えている。そして、本実施形態の可動ステップ42は、これら各支持アーム44に支持されることにより、略水平な姿勢を維持したまま、そのサブステップ43の下方を車幅方向に移動する構成になっている。
【0036】
さらに詳述すると、本実施形態のステップ装置41は、車体2の下面2bに固定される複数の支持ブラケット45を備えている。更に、本実施形態の各支持アーム44は、これらの各支持ブラケット45を介して車体2に連結されている。そして、本実施形態のステップ装置41は、これにより形成される車体2に対する第1回動連結点M1を支点として、各支持アーム44が略水平方向に回動する構成になっている。
【0037】
また、
図6~
図8に示すように、本実施形態の可動ステップ42は、各支持アーム44に対する連結部46を有した略平板状の可動ベース47と、その上面47a側を覆う状態で可動ベース47に固定される樹脂カバー48と、を備えている。即ち、本実施形態の可動ステップ42は、樹脂カバー48の上面48a側が、その利用者が足を載せるステップ面S1となっている。更に、各支持アーム44に対する連結部46は、それぞれ、その可動ベース47を上下方向に貫通する挿通孔49となっている。そして、本実施形態のステップ装置41は、これにより、これらの各連結部46を用いて形成される第2回動連結点M2を支点として、略水平な可動ステップ42の姿勢を維持したまま、各支持アーム44が可動ステップ42に対して相対回動する構成になっている。
【0038】
尚、本実施形態の可動ステップ42において、可動ベース47は、金属を用いて形成されている。また、樹脂カバー48の上面48aには、滑り止め用の凹凸形状が設けられている。そして、本実施形態のステップ装置41は、これにより、可動ステップ42に足を載せた乗員が、安全に、そのステップ面S1を踏み込むことのできる構成になっている。
【0039】
また、
図4~
図9に示すように、本実施形態の可動ステップ42は、その下面42b側において長手方向に延びるガイドレール50を備えている。そして、本実施形態のステップ装置41は、スライドドア4に支持された状態で、この可動ステップ42のガイドレール50に係合する連結部材としてのガイドローラーユニット52を備えている。
【0040】
図6~
図8に示すように、本実施形態のガイドレール50は、可動ステップ42の下面42bを構成する可動ベース47に対し、その長手方向に延びるレール部材53,54を固定することにより形成されている。具体的には、本実施形態の可動ベース47は、車幅方向外側の周縁部を下面47b側に折り返すかたちで設けられた長手方向に延びる周壁部55を備えている。そして、各レール部材53,54は、この周壁部55に並行する状態で可動ベース47の下面47bに対して一体に固定されている。
【0041】
即ち、
図6及び
図9に示すように、本実施形態のガイドレール50は、可動ベース47の周壁部55が車幅方向外側の側壁部57を構成し、この周壁部55と車幅方向に向かい合う各レール部材53,54が車幅方向内側の側壁部58を構成するかたちで設けられている。更に、車幅方向内側の側壁部58には、その下端部を折り曲げるかたちで車幅方向外側の側壁部57に向かって延びる抜け止めフランジ59が設けられている。尚、本実施形態のステップ装置41において、この抜け止めフランジ59は、その側壁部58を構成するレール部材53に設けられている(
図8参照)。そして、本実施形態のガイドローラーユニット52は、その互いに向かい合うガイドレール50の両側壁部57,58間に配置されるガイドローラー60を備えている。
【0042】
具体的には、
図6、
図9及び
図10に示すように、本実施形態のガイドローラーユニット52は、上下方向に延在する状態でスライドドア4に固定される固定部材61と、この固定部材61の下端に連結された状態で車幅方向内側の延びるアーム部材62と、を備えている。更に、アーム部材62の先端には、上下方向に延びる支軸60xが設けられている。そして、本実施形態のガイドローラーユニット52は、この支軸60xによって、そのガイドローラー60を回転自在に軸支する構成になっている。
【0043】
即ち、本実施形態のガイドローラーユニット52は、スライドドア4の開閉動作に基づいて、このスライドドア4と一体に移動する。また、これにより、そのガイドレール50内に配置されたガイドローラー60もまた、スライドドア4の動作方向に応じて車両前後方向に移動する。尚、本実施形態のガイドレール50は、側壁部58の下端に設けられた抜け止めフランジ59によって、その両側壁部57,58間に位置するガイドローラー60の脱離を防止する。そして、本実施形態のガイドローラーユニット52は、このとき、そのガイドローラー60が、車幅方向外側に位置するガイドレール50の側壁部57、又は車幅方向内側に位置するガイドレール50の側壁部58に摺接して押圧することにより、このガイドレール50が設けられた可動ステップ42を車幅方向に移動させる構成になっている。
【0044】
具体的には、本実施形態のガイドローラーユニット52は、そのガイドローラー60が、車幅方向外側に位置するガイドレール50の側壁部57に摺接して、この側壁部57を押圧しつつガイドレール50内をスライドドア4の開動作方向である車両後方側に向かって移動することにより、その可動ステップ42を車幅方向外側に移動させる。また、そのガイドローラー60が、車幅方向内側に位置するガイドレール50の側壁部58に摺接して、この側壁部58を押圧しつつガイドレール50内をスライドドア4の閉動作方向である車両前方側に向かって移動することにより、その可動ステップ42を車幅方向内側に移動させる。そして、本実施形態のステップ装置41は、これにより、そのスライドドア4の開動作に連動して、可動ステップ42を格納位置P1から展開位置P2に移動させるとともに、そのスライドドア4の閉動作に連動して、可動ステップ42を展開位置P2から格納位置P1に移動させる構成になっている(
図4及び
図5参照)。
【0045】
さらに詳述すると、
図7及び
図11に示すように、本実施形態のガイドレール50は、スライドドア4の各ガイドレール10に設けられた上記湾曲形状部30と同様、車両前方側の長手方向端部50f、即ちスライドドア4が全閉状態となる側の端部に、車両後方側から前方側に向かって車幅方向内側に湾曲した湾曲形状部70を備えている。尚、
図7中においては、同図中、下側が、
図11においては、同図中、上側が、それぞれ、その車幅方向内側となっている。そして、本実施形態のステップ装置41は、これにより、スライドドア4の開閉動作に基づいて、そのガイドレール50内をガイドローラー60が円滑に移動することで、可動ステップ42を穏やかに車幅方向移動させることが可能になっている。
【0046】
(空走区間)
次に、本実施形態のガイドレール50に設定された空走区間について説明する。
図11に示すように、本実施形態のガイドレール50は、車両前方側の長手方向端部50f近傍、及び、上記湾曲形状部70よりも車両後方側に、それぞれ、スライドドア4と一体に移動する連結部材の係合部としてのガイドローラー60が、その車幅方向両側に位置する両側壁部57,58を押圧しない空走区間を有している。具体的には、本実施形態のガイドレール50においては、スライドドア4が全閉状態にある場合にガイドローラー60が配置される端末位置Xcを含んだ閉側の端末領域Lcが、その閉側空走区間αcとしての構成を有している。そして、本実施形態のガイドレール50は、可動ステップ42が展開位置P2に到達した時点におけるガイドローラー60の移動位置X2よりも開側の移動領域Loが、その開側空走区間αoとしての構成を有している。
【0047】
即ち、本実施形態のステップ装置41は、これらの閉側空走区間αcと開側空走区間αoとの間の係合区間βをガイドローラー60が移動する状態において、そのスライドドア4の開閉動作に連動して可動ステップ42が車幅方向に移動する。そして、本実施形態の可動ステップ42は、これにより、その開閉動作に伴うスライドドア4の車幅方向変位量W1よりも小さい車幅方向変位量W2にて(W1>W2)、その格納位置P1から展開位置P2に到達する構成になっている。
【0048】
詳述すると、
図9に示すように、本実施形態のガイドレール50は、その車幅方向に向かい合う両側壁部57,58の間隔、つまりはレール幅Dwが、ガイドローラー60の直径Drよりも大きな値に設定されている(Dw>Dr)。そして、本実施形態の閉側空走区間αcは、この閉側空走区間αcを車両前後方向に移動するガイドローラー60が、ガイドレール50内を、そのレール幅方向に変位しつつ両側壁部57,58に摺接することなく車幅方向に移動する非摺接区間γとしての構成を有している。
【0049】
さらに詳述すると、
図12及び
図13に示すように、閉側空走区間αcにおいては、ガイドレール50内を車幅方向に移動しつつ車両前後方向に移動するガイドローラー60の移動軌跡Qrに設定された変化勾配θrよりも、その車幅方向外側に位置する側壁部57に小さな変化勾配θ1が設定されている(θr>θ1)。尚、
図12及び
図13においては、各図中、下側が、車幅方向外側、左側が車両前方側となっている。そして、ガイドローラー60の車幅方向内側に位置する側壁部58に対しては、ガイドローラー60の移動軌跡Qrに設定された変化勾配θrよりも大きな変化勾配θ2が設定されている(θr<θ2)。
【0050】
即ち、
図12に示すように、本実施形態のガイドレール50において、非摺接区間γとしての閉側空走区間αcは、スライドドア4の開動作時、そのガイドレール50内を車両後方側に移動するガイドローラー60が、その車幅方向外側に位置する側壁部57に対して徐々に近づくようにレール幅方向に変位する構成になっている。そして、本実施形態のガイドレール50は、これにより、閉側空走区間αcを通過したガイドローラー60が、速やかに、その車幅方向外側に位置する側壁部57に摺接して、この側壁部57を押圧するように構成されている。
【0051】
また、
図13に示すように、この非摺接区間γとしての閉側空走区間αcは、スライドドア4の閉動作時、そのガイドレール50内を車両前方側に移動するガイドローラー60が、その車幅方向内側に位置する側壁部58から徐々に離れるようにレール幅方向に変位する構成になっている。そして、本実施形態のガイドレール50は、これにより、係合区間βから閉側空走区間αcに進入したガイドローラー60が、速やかに、その車幅方向内側に位置する側壁部58から離間するように構成されている。
【0052】
図11に示すように、本実施形態のステップ装置41は、このような閉側空走区間αc及び係合区間βの境界となるガイドローラー60の移動位置X1が、その可動ステップ42の格納位置P1に対応する。また、本実施形態のステップ装置41においては、スライドドア4の開動作時、車幅方向外側に向かうスライドドア4の変位が完了すると同時に、その可動ステップ42が展開位置P2に到達する。そして、本実施形態のステップ装置41は、上記のように、この可動ステップ42が展開位置P2に到達した時点におけるガイドローラー60の移動位置X2よりも開側の移動領域Loを開側空走区間αoとすることで、そのドア開口部3の下方に展開された可動ステップ42が、スライドドア4の負荷にならない構成となっている。
【0053】
具体的には、
図11及び
図14に示すように、本実施形態の車両1においては、スライドドア4の車幅方向変位が完了した状態にある場合、このスライドドア4と一体に移動するガイドローラー60もまた、略直線的に、車両前後方向に移動する。この点を踏まえ、本実施形態のガイドレール50は、その開側の移動領域Loに相当する車両後方側の部分が、略直線的に、車両前後方向に延びている。そして、本実施形態のステップ装置41は、これにより、ガイドローラー60の移動軌跡Qrに対してガイドレール50の両側壁部57,58が平行に延在する平行区間εを形成することで、その開側の移動領域Loを開側空走区間αoとする構成になっている。
【0054】
(サブステップ)
次に、本実施形態のステップ装置41におけるサブステップ43の構成について説明する。
【0055】
図6、
図15、及び
図16(a)~(c)に示すように、本実施形態のステップ装置41において、上記可動ステップ42とともにドア開口部3の下方に配置されるサブステップ43は、可動ステップ42の上方において車体2の側面2aに固定される基部71と、上下方向に回動可能な状態で基部71に連結されるステップ部72と、を備えている。
【0056】
本実施形態のステップ装置41において、これらの基部71及びステップ部72は、その長手方向に延びる連結軸73を介して互いに連結されている。また、これらの基部71及びステップ部72は、それぞれ、連結軸73に対する嵌合部75x,76xを有したベース部材75,76に対し、その意匠面71s,72sを構成する樹脂カバー77,78を積層することにより形成されている。そして、本実施形態のサブステップ43は、その連結軸73周りの回動により上下方向に変位するステップ部72が、このサブステップ43の下方に配置された可動ステップ42の上面42a、つまりはステップ面S1に摺接する位置において、その基部71が車体2の側面2aに固定される構成になっている。
【0057】
具体的には、本実施形態のサブステップ43は、ステップ部72の先端部分において、その樹脂カバー78の一部分が下面72b側に突出した構造を有している。そして、本実施形態のステップ装置41においては、この突出部79が、その可動ステップ42の上面42aに摺接する構成となっている。
【0058】
詳述すると、
図4~
図6に示すように、本実施形態の可動ステップ42は、サブステップ43の下方を車幅方向外側に移動することにより、このサブステップ43よりも車幅外側方向に突出した展開位置P2に配置される。また、本実施形態のサブステップ43は、可動ステップ42が展開位置P2にある場合においても、その上面42aに対してステップ部72が摺接する状態を維持する。つまり、このサブステップ43は、可動ステップ42が展開位置P2に配置された状態において、その可動ステップ42の上方を覆う重複領域ηを有している。そして、本実施形態のサブステップ43は、これにより、そのステップ部72の意匠面72sが、可動ステップ42のステップ面S1と一体のステップ面S2を形成する構成になっている。
【0059】
尚、本実施形態のステップ装置41においては、サブステップ43にも、そのステップ部72のステップ面S2を構成する樹脂カバー78に対し、可動ステップ42のステップ面S1と同様、滑り止め用の凹凸が設けられている。そして、本実施形態のステップ装置41は、これにより、サブステップ43に足を載せた乗員が、安全に、そのステップ面S2を踏み込むことのできる構成になっている。
【0060】
更に、本実施形態のサブステップ43は、ステップ部72の回動により、そのステップ面S2に加えられた荷重を可動ステップ42に伝達する。つまり、本実施形態のステップ装置41は、そのサブステップ43に加えられた荷重が可動ステップ42に転嫁される構成になっている。そして、本実施形態のステップ装置41においては、これにより、サブステップ43に求められる耐荷重性能を緩和することで、その軽量化とともに、製造コストの抑制が図られている。
【0061】
また、本実施形態のステップ装置41において、そのサブステップ43が摺接する可動ステップ42の上面42aには、車幅方向に延びる複数の突条部80が設けられている。更に、本実施形態のサブステップ43は、これら各突条部80に対し、そのステップ部72の先端部分に設けられた上記突出部79が摺接する。そして、本実施形態のステップ装置41は、これにより、サブステップ43のステップ部72と可動ステップ42との接触面積を小さくすることで、その可動ステップ42が車幅方向移動する際の摺動抵抗を低減する構成になっている。
【0062】
(可動ステップの支持構造)
次に、本実施形態のステップ装置41における可動ステップ42の支持構造について説明する。
【0063】
図17(a)(b)、
図18及び
図19に示すように、本実施形態のステップ装置41は、可動ステップ42の支持アーム44として、車両前後方向に離間して配置される二本のメインアーム81,81と、これらの両メインアーム18間に配置されるサブアーム82と、を備えている。また、本実施形態のステップ装置41において、サブアーム82は、車体2に連結される基端側アーム83と可動ステップ42に連結される先端側アーム84とを回動可能に連結することにより形成されている。即ち、本実施形態のサブアーム82は、折曲可能な関節M3を有している。尚、各メインアーム81には、このような関節M3は設けられていない。そして、本実施形態のステップ装置41は、支持ブラケット45として、その前方メインアーム81f及びサブアーム82を車体2に連結する前方ブラケット45fと、後方メインアーム81rを車体2に連結する後方ブラケット45rと、を備えている。
【0064】
詳述すると、
図6、及び
図19~
図21に示すように、本実施形態の各支持ブラケット45は、それぞれ、車体2の下面2bに固定されるブラケット本体85と、このブラケット本体85との間に各支持アーム44の基端部44bを挟み込む挟持部材86と、を備えている。具体的には、本実施形態の挟持部材86は、ブラケット本体85の上方において、そのブラケット本体85との間に支持アーム44の基端部44bを挟み込む位置に配置される。更に、本実施形態のステップ装置41においては、これらのブラケット本体85及び挟持部材86に形成された挿通孔87,88、並びに支持アーム44の基端部44bに形成された挿通孔89に対し、軸部材90が挿通される。そして、本実施形態のステップ装置41は、この軸部材90をかしめることにより、その支持ブラケット45が、車体2に対する各支持アーム44の第1回動連結点M1を形成する構成になっている。
【0065】
また、
図19に示すように、本実施形態のステップ装置41においては、ブラケット本体85及び挟持部材86に対し、それぞれ、複数の締結孔85x,86xが形成されている。そして、本実施形態の各支持ブラケット45は、これらの各締結孔85x,86xを用いることにより、そのブラケット本体85及び挟持部材86が車体2の下面2bに対して一体に共締めされる構成になっている。
【0066】
尚、
図20及び
図21には、前方ブラケット45fのブラケット本体85f及び挟持部材86fによる前方メインアーム81fの支持構造を図示するが、この前方ブラケット45fによるサブアーム82の支持構造、詳しくは、そのブラケット本体85f及び挟持部材86fによる基端側アーム83の挟み込み構造も同様である。更に、後方ブラケット45rのブラケット本体85r及び挟持部材86rによる後方メインアーム81rの支持構造もまた、上記前方ブラケット45fの支持構造と同様である。このため、説明の便宜上、これらサブアーム82及び後方メインアーム81rの支持構造については、その拡大図及び断面図の記載を省略するものとする。
【0067】
また、
図6、及び
図17~
図19に示すように、本実施形態のステップ装置41において、各支持アーム44の先端部44aは、その可動ステップ42を構成する可動ベース47の下面47b側に配置される。また、各支持アーム44の先端部44aには、それぞれ、その基端部44bに形成された挿通孔89と同様の挿通孔91が設けられている。更に、本実施形態のステップ装置41においては、この挿通孔91及び可動ステップ42側の連結部46を構成する可動ベース47の挿通孔49に対し、軸部材92が挿通される。そして、本実施形態のステップ装置41は、この軸部材92をかしめることにより、その可動ステップ42に対する各支持アーム44の第2回動連結点M2が形成される構成になっている。
【0068】
尚、
図19に示すように、本実施形態のステップ装置41において、サブアーム82を構成する基端側アーム83には、その車体2に対する第1回動連結点M1を構成する挿通孔89が形成された側とは反対側の端部に同様の挿通孔93が形成されている。また、先端側アーム84にも、その可動ステップ42に対する第2回動連結点M2を構成する挿通孔91が形成された側とは反対側の端部に同様の挿通孔94が形成されている。更に、本実施形態のステップ装置41においては、これらの挿通孔93,94に対し、軸部材95が挿通される。そして、本実施形態のステップ装置41は、この軸部材95をかしめることにより、その折曲可能なサブアーム82の関節M3が形成される構成になっている。
【0069】
図17に示すように、本実施形態のステップ装置41において、各支持アーム44は、それぞれ、可動ステップ42が格納位置P1にある場合に、その基端部44bが車体2に対する第1回動連結点M1から車両前方側に向かって延びるように配置されている。また、これらの各支持アーム44は、スライドドア4の開動作に連動して可動ステップ42が車幅方向外側に移動することにより、その第1回動連結点M1を支点として、
図17中、反時計周り方向に回動し、可動ステップ42が車幅方向内側に移動することにより、
図17中、時計周り方向に回動する。更に、サブアーム82においては、このとき、その「くの字」状をなす折曲形状を拡縮するかたちで、関節M3周りに基端側アーム83及び先端側アーム84が相対回動する。そして、本実施形態のステップ装置41は、これにより、その可動ステップ42に対する各支持アーム44の第2回動連結点M2が、車幅方向に変位しながら車両前後方向に移動することで、可動ステップ42を安定的に支持しつつ、そのスライドドア4の開閉動作に連動した円滑な展開及び格納動作を担保する構成になっている。
【0070】
また、
図6に示すように、本実施形態のステップ装置41は、その車体2に対する第1回動連結点M1と可動ステップ42に対する第2回動連結点M2との間において支持アーム44の下方に設けられることにより、この支持アーム44に摺接して、その荷重を受ける複数の受圧部材100を備えている。
【0071】
詳述すると、
図19~
図21に示すように、本実施形態のステップ装置41は、支持ブラケット45のブラケット本体85に固定されることにより、その支持ブラケット45に支持された支持アーム44の基端部44bに摺接する受圧部材101を備えている。そして、本実施形態のステップ装置41においては、このような受圧部材101が、その前方ブラケット45fに支持された前方メインアーム81f及びサブアーム82、並びに後方ブラケット45rに支持された後方メインアーム81rの各支持アーム44に対応して、それぞれ、一つずつ、設けられている。
【0072】
尚、本実施形態のステップ装置41においては、これらの各受圧部材101が、略同一の形状及び受圧構造を有している。このため、説明の便宜上、前方メインアーム81fに対応して前方ブラケット45fに設けられたものについてのみ、その拡大図及び断面図を、
図20及び
図21中に図示するものとする。
【0073】
具体的には、
図22(a)(b)に示すように、本実施形態のステップ装置41において、これらの各受圧部材101は、略円弧状の平板形状をなしている。また、これらの各受圧部材101は、その裏面101b側に突出する一対の嵌合突部102,102を有している。更に、これらの各受圧部材101は、それぞれ、その各嵌合突部102,102がブラケット本体85側の各取付孔103,103(
図19参照)に嵌合することにより、支持アーム44の下方において、そのブラケット本体85に固定される。そして、本実施形態の各受圧部材101は、これにより、
図21に示すように、その表面101a側が、上方に位置する支持アーム44の基端部44bに対する摺接面101sを形成する構成になっている。
【0074】
さらに詳述すると、
図20に示すように、これらの各受圧部材101は、それぞれ、その円弧形状が周方向に延在する状態で、第1回動連結点M1の径方向外側に配置される。そして、本実施形態のステップ装置41は、これにより、これらの各受圧部材101が、それぞれ、その対応する各支持アーム44に対して交差する方向に延びる摺接面101sを有するものとなっている。
【0075】
また、
図19、
図23及び
図24に示すように、本実施形態のステップ装置41において、可動ステップ42には、その可動ベース47に固定されることにより、この可動ベース47に設けられた各支持アーム44との連結部46において、その下面47bとの間に支持アーム44の先端部44aを挟み込む複数の挟持部材110が設けられている。そして、本実施形態のステップ装置41は、これらの各挟持部材110に設けられることにより、それぞれ、その各挟持部材110に挟持された各支持アーム44の先端部44aに摺接する複数の受圧部材111を備えている。
【0076】
具体的には、
図17及び
図18に示すように、本実施形態の可動ステップ42には、この可動ステップ42を上方に支持する前後一対のメインアーム81,81を、それぞれ、その可動ベース47の下面47bとの間に挟み込む前後一対の挟持部材110,110が設けられている。そして、本実施形態のステップ装置41は、これらの各挟持部材110にそれぞれ一つずつ設けられた一対の受圧部材111,111を備えている。
【0077】
尚、本実施形態のステップ装置41において、これらの各挟持部材110は、同一の形状及び挟持構造を有している。このため、説明の便宜上、後方メインアーム81rに対応するものについてのみ、その拡大図及び断面図を、
図23及び
図24中に図示するものとする。
【0078】
詳述すると、
図19、
図23及び
図24に示すように、本実施形態の各挟持部材110は、可動ベース47に対する固定部112と、この固定部112に対して略平行に延びる挟持部113と、を備えた断面略J字状の湾曲板形状を有している。また、これらの各挟持部材110は、その挟持部113を貫通する挿通孔114を有している。更に、本実施形態のステップ装置41においては、この挿通孔114を介することにより、その可動ステップ42に対する支持アーム44の第2回動連結点M2を構成する軸部材92が、支持アーム44の先端部44aに設けられた挿通孔91及び可動ベース47に設けられた挿通孔49に挿通される。そして、本実施形態の各挟持部材110は、これにより、可動ベース47の連結部46において、その挟持部113と可動ベース47の下面47bとの間に支持アーム44の先端部44aを挟み込む構成になっている。
【0079】
尚、本実施形態のステップ装置41において、これらの各挟持部材110は、その固定部112が可動ベース47の上面47a側に溶接されることにより可動ステップ42に固定される。また、各挟持部材110の挟持部113は、これにより、その可動ベース47の周縁部を回り込むかたちで可動ベース47の下面47b側に配置される。そして、本実施形態のステップ装置41は、これにより、その各支持アーム44による可動ステップ42の支持力、詳しくは、その可動ステップ42に対する第2回動連結点M2に対し、これらの各挟持部材110が設けられた各メインアーム81の支持力を強化する構成になっている。
【0080】
また、
図25(a)(b)に示すように、本実施形態の各受圧部材111は、一端に折曲部111xを有した略矩形平板形状を有している。また、これらの各受圧部材111は、その裏面111b側に突出する嵌合突部115を有している。更に、これらの各受圧部材111は、それぞれ、その各嵌合突部115が上記挟持部材110の挟持部113に設けられた取付孔116に嵌合することにより(
図19参照)、支持アーム44の下方において、その挟持部材110に固定される。そして、本実施形態の各受圧部材111は、これにより、
図24に示すように、その表面111a側が、上方に位置する支持アーム44の先端部44aに対する摺接面111sを形成する構成になっている。
【0081】
さらに詳述すると、
図19及び
図23に示すように、本実施形態の各メインアーム81は、それぞれ、その受圧部材111が摺接する部分に略扇状の平板部117を有している。そして、本実施形態のステップ装置41は、これにより、各メインアーム81と受圧部材111との接触面積を増やすことで、その各メインアーム81による可動ステップ42の支持力を強化する構成になっている。
【0082】
更に、本実施形態のステップ装置41において、上記各受圧部材100、即ち支持ブラケット45に設けられた第1回動連結点M1側の受圧部材101、及び挟持部材110に設けられた第2回動連結点M2側の受圧部材111は、何れも、衝撃吸収性及び自己潤滑性を有した樹脂により構成されている。尚、このような特性を有する樹脂材料としては、例えば、ポリアセタール(POM)等を用いることができる。そして、本実施形態のステップ装置41は、これにより、各支持アーム44の円滑な回動を担保するとともに、併せて、その摺動音の発生を抑制する構成になっている。
【0083】
また、
図26(a)(b)及び
図27に示すように、本実施形態のステップ装置41において、可動ステップ42の下面42bには、その下方に位置する支持アーム44に交差する方向に延在して、この支持アーム44に摺接する複数の突条部118が設けられている。
【0084】
図7に示すように、本実施形態の可動ステップ42は、その前方メインアーム81f、サブアーム82、及び後方メインアーム81rに対して、それぞれ対応する3つの突条部118を備えている。そして、これらの各突条部118は、それぞれ、車両前後方向に延在する可動ステップ42の長手方向に延設されている。
【0085】
また、
図26及び
図27に示すように、本実施形態の可動ステップ42において、これらの各突条部118は、その樹脂カバー48の下面48bに設けられている。更に、可動ベース47には、これらの各突条部118の下方となる位置に、それぞれ、長孔状の孔部119が形成されている。そして、本実施形態の可動ステップ42は、これらの各孔部119に挿通された各突条部118が、その可動ステップ42の下面42bを構成する可動ベース47の下面47b側に突出する構成になっている。
【0086】
即ち、本実施形態の可動ステップ42は、上記各突条部118が下方に位置する各支持アーム44に摺接することで、これらの各支持アーム44が、安定的に、その可動ステップ42の荷重を支えることが可能となっている。また、本実施形態のステップ装置41においては、これらの各突条部118が各支持アーム44に交差する方向に延在することで、その接触面積の低減が図られている。そして、本実施形態の可動ステップ42は、これにより、各支持アーム44の円滑な回動を担保するとともに、併せて、その摺動音の発生を抑制する構成になっている。
【0087】
また、
図17に示すように、本実施形態のステップ装置41は、その支持アーム44に当接することにより可動ステップ42の移動範囲を規定するストッパ120を備えている。具体的には、本実施形態のステップ装置41は、そのストッパ120として、前方ブラケット45fに設けられた第1ストッパ121と、後方ブラケット45rに設けられた第2ストッパ122と、を備えている。第1ストッパ121は、可動ステップ42が車幅方向内側に移動して格納位置P1に到達することにより前方メインアーム81fに当接して、その回動を規制する。また、第2ストッパ122は、可動ステップ42が車幅方向外側に移動して展開位置P2に到達することにより後方メインアーム81rに当接して、その回動を規制する。そして、本実施形態のステップ装置41は、これにより、可動ステップ42の移動範囲を規定することで、その「くの字」状をなすサブアーム82の折曲形状が反転しないように構成されている。
【0088】
(保護カバー)
次に、本実施形態のステップ装置41に設けられた支持カバーの構成について説明する。
【0089】
図6、
図27~
図30に示すように、本実施形態のステップ装置41は、車体2の下面2bに固定されることにより上記各支持アーム44の下方を覆うカバー部材130を備えている。
【0090】
詳述すると、本実施形態のカバー部材130は、各支持アーム44の下方に配置される底壁部131と、この底壁部131の縁部に立設されることにより車体2の下面2bに向かって上方に延びる周壁部132と、を備えている。本実施形態のカバー部材130において、底壁部131は、可動ステップ42が格納位置P1にある場合に、その各支持アーム44の下方に覆う大きさに形成されている。更に、周壁部132は、その車両前方側、車幅方向内側、及び後方側に延在するかたちで、その底壁部131の縁部に立設されている。そして、本実施形態のカバー部材130は、これにより、車体2の下面2bよりも下方の位置に、その車幅方向外側に開口する収容空間133を形成する構成になっている。
【0091】
具体的には、本実施形態のカバー部材130は、周壁部132と一体に形成された締結部134を利用することにより、各支持アーム44の支持ブラケット45とともに車体2の下面2bに共締めされる。また、本実施形態の車両1において、このカバー部材130は、上方に位置する車体2の下面2b及びサブステップ43の下面43bとの間に収容空間133を形成する。そして、本実施形態のステップ装置41は、これにより、可動ステップ42が格納位置P1にある場合において、この可動ステップ42が略全体的に、各支持アーム44とともに、そのカバー部材130が形成する収容空間133内に収容される構成になっている。
【0092】
さらに詳述すると、
図27~
図30に示すように、本実施形態のカバー部材130は、その周壁部132と車体2との間に介在されるシール部材135を備えている。具体的には、本実施形態のシール部材135は、断面略四角紐状の外形を有している。そして、本実施形態のカバー部材130は、このような外形を有するシール部材135が、複数に分割された状態で、その底壁部131の縁部に立設された周壁部132の先端に固着されている。
【0093】
具体的には、
図31及び
図32に示すように、本実施形態のカバー部材130は、各支持アーム44の支持ブラケット45と干渉しないように、その車幅方向内側の周壁部132iに設けられた複数の切欠き部132xを有している。本実施形態のカバー部材130においては、これらの各切欠き部132xについてもまた、その紐形状を略コ字状に折り曲げるかたちで、周壁部132iから連続して、その底壁部131の縁部に沿うようにシール部材135が延設されている。そして、本実施形態のカバー部材130は、これにより、
図27及び
図30に示すように、支持ブラケット45と周壁部132iとの間にも、そのシール部材135が介在される構成になっている。
【0094】
また、
図33に示すように、本実施形態のカバー部材130において、シール部材135は、その車幅方向内側の周壁部132iとの車両前方側の周壁部132fとのコーナー部においても、その紐形状を略L字状に折り曲げるかたちで、底壁部131の縁部に沿って延設されている。そして、本実施形態のステップ装置41は、これにより、カバー部材130の周壁部132と車体2の下面2bとの間の隙間から、そのカバー部材130が形成する収容空間133内に、例えば、埃や泥水等の異物が侵入しないように構成されている。
【0095】
更に、
図33及び
図34に示すように、本実施形態のカバー部材130において、その前端部130fに設けられた車両前方側の周壁部132fには、車両前方側から後方側に向かって下方に傾斜した斜面140が設けられている。尚、
図34中の二点鎖線は、締結部134が設けられていない部分における斜面140の形状を示している。そして、本実施形態のカバー部材130は、この斜面140の形状に基づいて、車両走行時、例えば、車両1のタイヤが跳ね上げる小石等、その前端部130fに設けられた周壁部132fに対して車両前方側から衝突する異物の影響を緩和する構成になっている。
【0096】
尚、本実施形態の車両1においては、可動ステップ42が格納位置P1にある場合、その車幅方向外側に臨む収容空間133の開口部141が、スライドドア4の下端に設けられた意匠部材142(
図6参照)により遮蔽される。そして、本実施形態のステップ装置41は、これにより、車両1の走行時、その車幅方向外側の開口部分を介した収容空間133内への異物の侵入を防ぐ構成になっている。
【0097】
また、
図28に示すように、本実施形態のカバー部材130は、その車幅方向内側の周壁部132iに設けられた窓部143に嵌合することにより、この窓部143を閉塞する状態で周壁部132iと一体化する嵌合部材144を備えている。そして、本実施形態のステップ装置41は、この嵌合部材144を取り外すことにより、その窓部143を介して、収容空間133内に配置された各支持アーム44を整備することが可能になっている。
【0098】
更に、
図6、
図21、
図27及び
図30に示すように、本実施形態のステップ装置41は、その各支持アーム44の支持ブラケット45を構成するブラケット本体85と挟持部材86との間に介在されるシール部材145を備えている。具体的には、本実施形態のステップ装置41において、このシール部材145は、上記カバー部材130の周壁部132と車体2の下面2bとの間に介在されるシール部材135と同様、断面略四角紐状の外形を有している。そして、本実施形態のステップ装置41は、そのブラケット本体85と挟持部材86との間に挟み込まれた各支持アーム44の基端部44bを囲むように、このシール部材145を配置することで、その支持ブラケット45に対する各支持アーム44の第1回動連結点M1に異物が侵入しないように構成されている。
【0099】
また、
図6に示すように、本実施形態のステップ装置41においては、カバー部材130は、車体2の下面2bに設けられたロッカーフランジ150の下端150bよりも上方に配置される。そして、本実施形態のステップ装置41は、これにより、このロッカーフランジ150を利用して車両1をリフトアップする際、そのカバー部材130が邪魔にならないように構成されている。
【0100】
(ガイドローラーユニットの連結構造)
次に、本実施形態のステップ装置41におけるガイドレール50に対するガイドローラーユニット52の連結構造について説明する。
【0101】
図10及び
図35に示すように、本実施形態のステップ装置41における連結部材としてのガイドローラーユニット52は、そのスライドドア4に対する固定部材61と、先端にガイドレール50に対する係合部としてのガイドローラー60を支持するアーム部材62とが、軸状部材160を介して回動可能に連結された構造を有している。
【0102】
具体的には、本実施形態のガイドローラーユニット52において、その固定部材61は、上下方向に延在する状態でスライドドア4に固定される本体部161と、この本体部161の下端部に設けられた互いに対向する一対の対向壁163,163と、を備えている。また、アーム部材62は、略平板状の外形を有する本体部164と、この本体部164の基端側に設けられた互いに対向する一対の対向壁166,166と、を備えている。更に、本実施形態のガイドローラーユニット52において、その固定部材61側の各対向壁163、及びアーム部材62側の各対向壁166には、それぞれ、互いに対向する位置に、挿通孔167,168が形成されている。そして、本実施形態のガイドローラーユニット52は、これらの各挿通孔167,168に軸状部材160を挿通することにより、その固定部材61とアーム部材62とが回動可能に連結される構成になっている。
【0103】
また、本実施形態のガイドローラーユニット52には、その軸状部材160に外挿された状態で固定部材61とアーム部材62との間に介在される捩りコイルバネ170が設けられている。そして、本実施形態のガイドローラーユニット52は、この付勢部材としての捩りコイルバネ170の弾性力に基づいて、その固定部材61がスライドドア4に固定された状態で、そのアーム部材62の先端に支持されたガイドローラー60を上方に持ち上げる方向の付勢力が、このアーム部材62に付与される構成になっている。
【0104】
即ち、
図35(a)に示すように、本実施形態のガイドローラーユニット52は、可動ステップ42に設けられたガイドレール50に対する連結状態においては、捩りコイルバネ170の付勢力に基づきアーム部材62の先端側を上方に持ち上げるかたちで、そのガイドレール50内にガイドローラー60を支持する構成になっている。
【0105】
また、
図35(b)に示すように、本実施形態のガイドローラーユニット52は、ガイドレール50からガイドローラー60が脱離した非連結状態においては、捩りコイルバネ170の付勢力に基づいて、そのガイドローラー60を支持する先端側を固定部材61の本体部161に近づける形で更にアーム部材62が回動する。そして、本実施形態のステップ装置41においては、これにより、そのガイドローラーユニット52をコンパクトに折り畳むことで、その非連結状態における作業性の向上を図るとともに、併せて、このガイドローラーユニット52が、そのスライドドア4を利用する乗員の邪魔にならない構成になっている。
【0106】
尚、
図10及び
図35に示すように、本実施形態のガイドローラーユニット52は、アーム部材62の対向壁166aと一体に設けられたストッパ部171を有している。更に、このストッパ部171は、ガイドローラーユニット52が非連結状態にある場合、その捩りコイルバネ170の付勢力に基づいたアーム部材62の回動によって、固定部材61の本体部161に当接する。そして、本実施形態のガイドローラーユニット52は、これにより、アーム部材62の回動量を制限することで、その捩りコイルバネ170に付勢されたアーム部材62、及び、このアーム部材62に支持されたガイドローラー60が、スライドドア4に干渉しないように構成されている。
【0107】
また、
図7、
図8、
図18、及び
図36に示すように、本実施形態のガイドレール50は、その側壁部58の下端に設けられた抜け止めフランジ59の一部が切り欠かれた切欠き部180を有している。そして、本実施形態のステップ装置41は、この切欠き部180を利用することにより、可動ステップ42の下面42b側に設けられたガイドレール50に対し、そのスライドドア4に支持されたガイドローラーユニット52のガイドローラー60を挿脱することが可能になっている。
【0108】
即ち、
図36に示すように、本実施形態のガイドレール50は、この切欠き部180が設けられた長手方向位置において、その側壁部58の下端に設けられた抜け止めフランジ59を越えるガイドローラー60の上下方向移動を許容する。更に、本実施形態のガイドローラーユニット52は、アーム部材62を下方に押し下げることにより、その捩りコイルバネ170の付勢力に抗してアーム部材62を回動させることができる。尚、本実施形態のガイドローラーユニット52においては、このとき、アーム部材62の対向壁166aと一体に設けられたストッパ部172(
図10参照)が固定部材61の本体部161に当接することで、その押し下げ方向におけるアーム部材62の回動量が制限される。そして、本実施形態のガイドローラーユニット52は、この押し下げ力を開放することで、再び、その捩りコイルバネ170の付勢力に基づいてアーム部材62を回動させることができる。
【0109】
つまり、本実施形態のステップ装置41は、ガイドレール50に設けられた切欠き部180を利用することで、その捩りコイルバネ170の付勢力に基づくアーム部材62の回動により、このアーム部材62の先端に設けられたガイドローラー60を、その下方からガイドレール50内に挿入することができる。また、捩りコイルバネ170の付勢力に抗したアーム部材62の回動により、そのガイドレール50内に支持されたガイドローラー60を、このガイドレール50の下方に脱離させることができる。そして、本実施形態のステップ装置41は、これにより、容易に、そのガイドローラーユニット52を支持するスライドドア4と、そのガイドレール50が設けられた可動ステップ42との連結、及びその解除を行うことが可能になっている。
【0110】
詳述すると、
図7、
図8、
図18、及び
図37に示すように、本実施形態のガイドレール50は、スライドドア4が全開状態にある場合にガイドローラー60が配置される車両後方側の長手方向端部50rに設けられた切欠き部181を備えている。そして、本実施形態のステップ装置41は、これにより、可動ステップ42が車幅方向外側の展開位置P2に配置されるとともにスライドドア4が全開状態にあることにより十分な作業スペースを確保しやすい状態で、これらの連結作業、及び、その解除作業を行うことができるようになっている。
【0111】
また、
図7、
図8、
図18、及び
図38に示すように、本実施形態のガイドレール50は、この切欠き部181よりも車両前方側の長手方向位置に設けられた切欠き部182を有している。具体的には、この切欠き部182は、その車両前方側の長手方向端部50fに設けられた湾曲形状部70における最も車両後方側に設けられたコーナー部70cに形成されている。そして、本実施形態のステップ装置41は、これにより、スライドドア4が全閉位置Pc近傍にある場合にも、その開動作によりスライドドア4が車幅外側方向に変位し、及び可動ステップ42が車幅方向外側に移動した作業スペースを確保しやすい状態で、これらの連結作業、及び、その解除作業を行うことができるようになっている。
【0112】
更に、本実施形態のステップ装置41は、ガイドレール50からガイドローラー60が脱離した状態、つまりはスライドドア4と可動ステップ42との連結が解除された状態において、この可動ステップ42を車幅方向内側の格納位置P1に保持する保持部材190を備えている。
【0113】
図28、
図29(a)(b)、及び
図33に示すように、本実施形態のステップ装置41において、この保持部材190は、可動ステップ42が格納位置P1にある場合の収容空間133を形成するカバー部材130に設けられている。具体的には、本実施形態の保持部材190は、カバー部材130の前端部130f近傍において、その底壁部131に設けられている。また、この保持部材190は、鉤状の係合突部191を有している。そして、本実施形態の保持部材190は、この係合突部191が可動ステップ42に係合することにより、その可動ステップ42を格納位置P1に保持する構成になっている。
【0114】
詳述すると、
図39(a)(b)に示すように、本実施形態の保持部材190は、カバー部材130の底壁部131に対して回動可能に連結されている。そして、本実施形態のステップ装置41は、このカバー部材130を支軸190x周りに回動させることにより、その係合突部191が可動ステップ42に係合しない使用状態と、その係合突部191が格納位置P1に配置された可動ステップ42に係合する保持状態と、を切り替えることが可能になっている。
【0115】
具体的には、
図39(a)に示すように、本実施形態の保持部材190は、スライドドア4に連動して可動ステップ42を車幅方向に移動させる使用状態にある場合、その係合突部191が車幅方向外側を向いた状態に保持される。そして、本実施形態のステップ装置41は、これにより、この保持部材190の係合突部191が、車幅方向に移動する可動ステップ42に干渉しない構成になっている。
【0116】
また、
図39(b)に示すように、本実施形態のステップ装置41は、スライドドア4との連結が解除された状態の可動ステップ42を格納位置P1に保持する場合には、
図39中、反時計回り方向に保持部材190を回動させることで、その係合突部191が、可動ステップ42が配置された車両後方側を向くように構成されている。そして、本実施形態のステップ装置41は、この保持部材190の回動により、その係合突部191が可動ステップ42の前端部42fに設けられた係合凹部192に挿入される構成になっている。
【0117】
尚、本実施形態のステップ装置41においては、このように可動ステップ42の係合凹部192内に挿入された保持部材190の係合突部191が、その車両前方側の長手方向端部50fにおいてガイドレール50内に配置される。そして、本実施形態のステップ装置41は、これにより、その保持部材190が可動ステップ42に係合することで、この可動ステップ42を格納位置P1に保持することが可能になっている。
【0118】
次に、本実施形態の効果について説明する。
(1)ステップ装置41は、ドア開口部3の下方に支持される可動ステップ42と、スライドドア4に支持された状態で可動ステップ42に係合することによりスライドドア4の開閉動作に連動して可動ステップ42を車幅方向に移動させる連結部材としてのガイドローラーユニット52と、を備える。可動ステップ42には、スライドドア4と一体に移動するガイドローラーユニット52に設けられた係合部としてのガイドローラー60を内側に配置して車両前後方向に延びるガイドレール50が設けられる。また、ガイドローラーユニット52は、そのガイドローラー60が車幅方向外側に位置するガイドレール50の側壁部57に摺接して、この側壁部57を押圧しつつ、ガイドレール50内をスライドドア4の開動作方向に移動することにより、可動ステップ42を格納位置P1から展開位置P2に移動させる。更に、ガイドローラーユニット52は、そのガイドローラー60が車幅方向内側に位置するガイドレール50の側壁部58に摺接して、この側壁部58を押圧しつつ、ガイドレール50内をスライドドア4の閉動作方向に移動することにより、可動ステップ42を展開位置P2から格納位置P1に移動させる。そして、ガイドレール50は、スライドドア4が全閉状態にある場合にガイドローラー60が配置される端末位置Xcを含んだ閉側の端末領域Lcが、そのガイドローラー60が両側壁部57,58を押圧しない閉側空走区間αcとしての構成を有する。
【0119】
即ち、スライドドア4は、その全閉位置Pc近傍に幅方向変位区間Rcを有する。更に、全閉位置Pcからの開動作時には、停止状態にあるスライドドア4を動かすために大きな力が必要であり、全閉動作時には、そのスライドドア4にウェザストリップ等のシール部材を押し潰させる力が必要となる。このため、全閉位置Pc近傍においては、そのスライドドア4に連結された可動ステップ42が負荷となることによる当該スライドドア4の開閉に要する力の増大が顕著になりやすい傾向がある。
【0120】
しかしながら、上記構成によれば、ガイドレール50に設定された閉側空走区間αcとしての閉側の端末領域Lcをガイドローラー60が移動する間、その可動ステップ42がスライドドア4の負荷にならない。そして、これにより、スライドドア4の開閉に要する力を低減することができる。
【0121】
(2)閉側空走区間αcは、ガイドレール50内を車両前後方向に移動するガイドローラー60が、そのガイドレール50のレール幅方向に変位しつつ両側壁部57,58に摺接することなく車幅方向に移動する非摺接区間γとして構成される。
【0122】
即ち、ガイドローラーユニット52のガイドローラー60がガイドレール50の両側壁部57,58に摺接しないようにすることで、より確実に、その空走区間を形成することができる。そして、これにより、より効果的に、そのスライドドア4の開閉に要する力を低減することができる。
【0123】
(3)非摺接区間γにおいては、ガイドレール50内を車幅方向に移動しつつ車両前後方向に移動するガイドローラー60の移動軌跡Qrに設定された変化勾配θrよりも、そのガイドローラー60の車幅方向外側に位置する側壁部57に小さな変化勾配θ1が設定される。
【0124】
上記構成によれば、スライドドア4の開動作時、そのガイドレール50内を車両後方側に移動するガイドローラー60が、その車幅方向外側に位置する側壁部57に対して徐々に近づくようにレール幅方向に変位する。そして、これにより、閉側空走区間αcを通過したガイドローラー60が、速やかに、その車幅方向外側に位置する側壁部57に摺接して、この側壁部57を押圧することで、円滑に、その格納位置P1から展開位置P2に向かって可動ステップ42を移動させることができる。
【0125】
(4)非摺接区間γにおいては、ガイドレール50内を車幅方向に移動しつつ車両前後方向に移動するガイドローラー60の移動軌跡Qrに設定された変化勾配θrよりも、そのガイドローラー60の車幅方向内側に位置する側壁部58に大きな変化勾配θ2が設定される。
【0126】
上記構成によれば、スライドドア4の閉動作時、そのガイドレール50内を車両前方側に移動するガイドローラー60が、その車幅方向内側に位置する側壁部58から徐々に離れるようにレール幅方向に変位する。そして、これにより、閉側空走区間αcに進入したガイドローラー60が、速やかに、その車幅方向内側に位置する側壁部58から離間することで、円滑に、その格納位置P1に到達した可動ステップ42を停止させることができる。
【0127】
(5)ガイドレール50は、可動ステップ42が展開位置P2に到達した時点におけるガイドローラー60の移動位置X2よりも開側の移動領域Loが、そのガイドローラー60が両側壁部57,58を押圧しない開側空走区間αoとしての構成を有する。
【0128】
即ち、スライドドア4が開閉動作中であっても、乗員が、その可動ステップ42に足を載せる可能性がある。そして、これにより、そのスライドドア4に連結された可動ステップ42が大きな負荷になるという問題がある。
【0129】
しかしながら、上記構成によれば、ガイドレール50に設定された開側空走区間αoとしての開側の移動領域Loをガイドローラー60が移動する間、その可動ステップ42がスライドドア4の負荷にならない。そして、これにより、スライドドア4の開閉に要する力を低減することができる。
【0130】
(6)開側空走区間αoは、ガイドローラー60の移動軌跡Qrに対してガイドレール50の両側壁部57,58が平行に延在する平行区間εとして構成される。
即ち、スライドドア4は、その全閉位置Pc近傍に幅方向変位区間Rcを有する。このため、スライドドア4の開動作時、その車幅方向外側に向かうスライドドア4の変位が完了した後は、このスライドドア4と一体に移動するガイドローラー60もまた、略直線的に、その車両前後方向に移動することになる。従って、上記構成によれば、簡素な構成にて、容易に、その開側の移動領域Loを開側空走区間αoとすることができる。
【0131】
(7)ガイドレール50は、可動ステップ42の下面42bを構成する可動ベース47の周壁部55を車幅方向外側の側壁部57とし、この周壁部55と車幅方向に向かい合う各レール部材53,54が車幅方向内側の側壁部58を構成する。
【0132】
即ち、上記のように、互いに独立した異なる壁部材を用いて両側壁部57,58を形成することにより、そのガイドレール50の設計自由度が向上する。そして、これにより、より容易に、そのガイドローラー60の空走区間をガイドレール50に設定することができる。
【0133】
(8)スライドドア4には、その開閉に要する力の変化に基づいて、このスライドドアに生じた挟み込みを検出する挟み込み検出装置32が設けられる。
即ち、このような挟み込み検出装置32が設けられたスライドドア4においては、このスライドドア4に連結された可動ステップ42が負荷となることで、その挟み込み検出に誤判定が生ずる可能性がある。従って、このようなスライドドア4に対して上記(1)~(7)の構成を適用することにより、その挟み込み検出の誤判定を抑制することができる。
【0134】
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0135】
・上記実施形態では、車両後方側に開動作する後開き型のスライドドア4に連動するステップ装置41に具体化したが、車両前方側に開動作する前開き型のスライドドア4に適用してもよい。
【0136】
・上記実施形態では、スライドドア4は、パワースライドドア装置31に駆動されることにより開閉動作することとしたが、このようなパワースライドドア装置31を有しないスライドドア4に適用してもよい。
【0137】
・また、上記実施形態では、パワースライドドア装置31は、スライドドア4の開閉に要する力の変化に基づいて、そのスライドドア4に生じた挟み込みを検出する挟み込み検出装置32としての機能をする。そして、その挟み込み検出の一例として、スライドドア4の開閉駆動時、モータ31mの電流量が所定の閾値を超えて増大した場合に、そのスライドドア4に挟み込みが発生したものと判定することとした。しかし、これに限らず、挟み込み検出は、モータ31mの回転変化に基づくものであってもよい。更に、スライドドア4の開閉に要する力の変化に基づく挟み込み検出を実行する挟み込み検出装置32であれば、そのパワースライドドア装置31から独立した挟み込み検出装置32が設けられたスライドドア4に適用してもよい。そして、このような挟み込み検出装置32が設けられていないスライドドア4に適用してもよい。
【0138】
・上記実施形態では、可動ステップ42は、略水平な姿勢を維持したまま車幅方向に移動することとしたが、例えば、車幅方向外側に向かって下方に傾斜する等、必ずしも水平でなくともよい。
【0139】
・上記実施形態では、ガイドレール50は、可動ステップ42の下面42bを構成する可動ベース47の周壁部55を車幅方向外側の側壁部57とし、この周壁部55と車幅方向に向かい合う各レール部材53,54が車幅方向内側の側壁部58を構成することとした。しかし、これに限らず、可動ステップ42とは別体に形成された独立した2つの壁部材を可動ステップ42の下面42bに固定することにより、ガイドレール50の両側壁部57、58を形成する構成であってもよい。また、例えば、下方に開口する断面略コ字状のレール部材を可動ステップ42の下面42bに固定することにより、そのガイドレール50を形成してもよい。そして、そのガイドレール50が可動ステップ42と一体に形成される構成であってもよい。
【0140】
・上記実施形態では、閉側空走区間αcは、ガイドレール50内を車両前後方向に移動するガイドローラー60が、そのガイドレール50のレール幅方向に変位しつつ両側壁部57,58に摺接することなく車幅方向に移動する非摺接区間γとして構成される。そして、開側空走区間αoは、ガイドローラー60の移動軌跡Qrに対してガイドレール50の両側壁部57,58が平行に延在する平行区間εとして構成されることとした。しかし、これに限らず、閉側空走区間αcが平行区間εとしての構成を有していてもよい。そして、開側空走区間αoが非摺接区間γとしての構成を有していてもよい。
【0141】
・上記実施形態では、非摺接区間γにおいては、ガイドローラー60の移動軌跡Qrに設定された変化勾配θrよりも、車幅方向外側の側壁部57に小さな変化勾配θ1が設定され、車幅方向内側の側壁部58に大きな変化勾配θ2が設定されることとした。しかし、これに限らず、ガイドレール50内を車両前後方向に移動するガイドローラー60が、そのガイドレール50のレール幅方向に変位しつつ両側壁部57,58に摺接することなく車幅方向に移動可能であればよく、例えば、単純に、大きなレール幅を設定する等の構成であってもよい。
【0142】
・上記実施形態では、スライドドア4の開動作時、車幅方向外側に向かうスライドドア4の変位が完了すると同時に可動ステップ42が展開位置P2に到達することとした。
しかし、これに限らず、
図40に示すように、スライドドア4の開動作時、車幅方向外側に向かうスライドドア4の変位が完了する前に、その可動ステップ42が展開位置P2に到達する構成としてもよい。
【0143】
即ち、車幅方向外側に向かうスライドドア4の変位が完了することで、このスライドドア4が開動作中であっても、車両1の乗員が、その乗降を開始する可能性がある。しかしながら、上記構成によれば、このとき、可動ステップ42については、既に、その展開位置P2に到達した状態にある。そして、これにより、その乗員が車幅方向外側に移動中の可動ステップ42に足を載せる可能性を低減することができる。
【0144】
更に、車幅方向外側に向かうスライドドア4の変位が完了した時点におけるガイドローラー60の移動位置X3は、既に、そのガイドレールに設定された開側の移動領域Lo、つまりは、開側空走区間αoとなっている。このため、その車幅方向外側に向かうスライドドア4の変位が完了する前に、車両1の乗員が可動ステップ42に足を載せた場合であっても、その可動ステップ42がスライドドア4の負荷になり難いという利点がある。
【0145】
・上記実施形態では、サブステップ43は、車体2に固定される基部71に対してステップ面S2を形成するステップ部72を回動可能に連結してなることとした。しかし、これに限らず、その基部71とステップ部72とが略L字形状に固定された構成であってもよい。
【0146】
・また、上記実施形態では、ベース部材75,76に対して樹脂カバー77,78を積層することにより、そのサブステップ43の基部71及びステップ部72が形成されることとしたが、基部71及びステップ部72の両方又は一方が、一つの部品からなる構成であってもよい。そして、その基部71及びステップ部72が一体に形成される構成であってもよい。
【0147】
・上記実施形態では、サブステップ43は、ステップ部72の先端部分において、その下面72b側に突出するかたちで樹脂カバー78に設けられた突出部79が、可動ステップ42の上面42aに対して摺接することとした。しかし、これに限らず、可動ステップ42の上面42aに対してサブステップ43のステップ部72が摺接する部分は、必ずしも、その先端部分でなくともよく、より基端側で摺接する構成であってもよい。
【0148】
・また、必ずしもサブステップ43のステップ部72と可動ステップ42の上面42aとが直接的に摺接しなくともよく、例えば、ブラシやリップシール等のような弾力性を有した付加物を介して摺接する構成であってもよい。そして、サブステップ43側のステップ部72の下面72bと可動ステップ42の上面42aとが摺接することなく、両者の間に隙間が形成される構成であってもよい。
【0149】
・また、
図41に示すステップ装置41Bのように、可動ステップ42Bが展開位置P2に移動することにより、この可動ステップ42Bに設けられた第1係合部201とサブステップ43Bに設けられた第2係合部202とが互いに係合して、その車幅方向外側に向かう可動ステップ42Bの移動を規制する構成としてもよい。
【0150】
例えば、このステップ装置41Bにおいて、可動ステップ42Bの基端部203には、この可動ステップ42Bの上方側に突出する係合突部205が設けられている。また、サブステップ43Bのステップ部72Bには、その先端部206において、このステップ部72Bの下方に突出する係合突部208が設けられている。更に、このステップ装置41Bにおいては、可動ステップ42Bが車幅方向外側に移動して展開位置P2に到達することにより、その係合突部205が、サブステップ43B側の係合突部208に係合する。そして、このステップ装置41Bは、これらの係合突部205,208を第1係合部201及び第2係合部202として、その車幅方向外側に向かう可動ステップ42Bの移動を規制する構成になっている。
【0151】
上記構成によれば、可動ステップ42Bが展開位置P2にある場合に、これらの可動ステップ42Bとサブステップ43Bとの位置関係を一定にすることができる。そして、これにより、例えば、可動ステップ42及びサブステップ43のステップ面S1,S2において、その意匠形状の境界が目立たないように連続させる等、より一層、その可動ステップ42のステップ面S1とサブステップ43のステップ面S2との一体性を高めることができる。
【0152】
尚、第1係合部201及び第2係合部202の形状は、任意に変更してもよい。例えば、第1係合部201及び第2係合部202の一方が凹部形状を有する構成であってもよい。更に、第1係合部201の形成位置は、必ずしも可動ステップ42Bの基端部203でなくともよい。そして、第2係合部202の形成位置についてもまた、必ずしもステップ部72Bの先端部206でなくともよい。
【0153】
・上記実施形態では、受圧部材100は、衝撃吸収性及び自己潤滑性を有した樹脂により構成されることとしたが、受圧部材100の材質については、任意に変更してもよい。支持アーム44に摺接して荷重を受けることが可能であれば、支持ブラケット45に設けられた受圧部材101と挟持部材110に設けられた可動ステップ42側の受圧部材111とが異なる材質であってもよい。例えば、これらの受圧部材101,111の一方が樹脂、他方が金属であってもよい。そして、これらの受圧部材101,111が、ともに樹脂以外の素材を用いて形成される構成についてもまた、これを排除しない。
【0154】
・また、受圧部材100の形状は、任意に変更してもよい。例えば、可動ステップ42側の受圧部材111が、支持ブラケット45側の受圧部材101と同様、略円弧状の平板形状を有していてもよい。更に、これらの受圧部材101,111の少なくとも一方が、円弧形状に限らず、支持アーム44に交差する方向に延在する摺接面を形成する構成であってもよい。そして、支持ブラケット45側の受圧部材101が、可動ステップ42側の受圧部材111と同様、略矩形平板形状を有する構成であってもよい。
【0155】
・更に、受圧部材100の数及び配置についてもまた、任意に変更してもよい。例えば、支持ブラケット45側の受圧部材101又は可動ステップ42側の受圧部材111の何れか一方のみを備える構成であってもよい。また、上記実施形態では、各メインアーム81についてのみ、その挟持部材110及び受圧部材111を設けることとしたが、サブアーム82についても、同様の挟持部材110及び受圧部材111を設ける構成であってもよい。更に、サブアーム82についてのみ、或いは何れか一方のメインアーム81とサブアーム82についてのみ、その挟持部材110及び受圧部材111を設ける構成としてもよい。そして、上記実施形態では、全ての支持アーム44について、その支持ブラケット45側の受圧部材101を設けることとしたが、例えば、各メインアーム81についてのみ、その支持ブラケット45に受圧部材101を設ける等、選択的に、支持ブラケット45側の受圧部材101を設ける構成としてもよい。
【0156】
・上記実施形態では、樹脂カバー48の下面48bに設けられた突条部118が、可動ベース47に設けられた孔部119を介して可動ステップ42の下面42b側に突出することとした。しかし、これに限らず、突条部118の構造及び材質については、任意に変更してもよい。例えば、突条部118が金属により構成されていてもよい。そして、可動ステップ42の下面42bを構成する部材に突条部118が設けられていてもよい。
【0157】
・上記実施形態では、ステップ装置41は、その支持アーム44として、二本のメインアーム81と、これらの間に設けられた一本のサブアーム82と、を備えることとした。しかし、これに限らず、サブアーム82の数及び配置は、任意に変更してもよい。例えば、二本以上のサブアーム82を備える構成としてもよい。また、各メインアーム81よりも車両前方側又は後方側に設けられたサブアーム82を備える構成であってもよい。そして、サブアーム82を有することなく、二本のメインアーム81,81によって、その可動ステップ42を支持する構成であってもよい。
【0158】
・更に、例えば、レール&スライダ等、車体2に対して回動可能に連結されるとともに可動ステップ42に対して回動可能に連結される支持アーム44以外の支持構造を併用する構成に適用してもよい。
【0159】
・上記実施形態では、ストッパ120として、可動ステップ42が格納位置P1に到達することにより前方メインアーム81fに当接して、その回動を規制する第1ストッパ121と、可動ステップ42が展開位置P2に到達することにより後方メインアーム81rに当接して、その回動を規制する第2ストッパ122と、を備えることとした。しかし、これに限らず、支持アーム44に当接することにより可動ステップ42の移動範囲を規定するものであれば、ストッパ120の構成及び配置は任意に変更してもよい。
【0160】
・カバー部材130の材質は、任意に変更してもよい。樹脂でもよく、金属でもよい。
・上記実施形態では、カバー部材130は、支持アーム44の下方に配置される底壁部131と、この底壁部131の縁部に設けられた周壁部132と、を備えることとしたが、その形状は、任意に変更してもよい。例えば、ドーム形状等、上記のような底壁部131と周壁部132との区別がない形状であってもよい。また、その周壁部132との間にシール部材135が介在されなくともよい。そして、そのカバー部材130と車体2の下面2bとの間に隙間がある構成についてもまた、これを排除しない。
【0161】
・上記実施形態では、車体2の下面2b及びサブステップ43の下面43bとの間に収容空間133を形成することとしたが、そのカバー部材130が、車体2の下面2bのみとの間に収容空間133を形成する構成でもよい。
【0162】
・また、可動ステップ42が格納位置P1にある状態において、そのステップ面S1の少なくとも一部が上方に露出した構成であってもよい。そして、可動ステップ42の下面42bが、部分的に、そのカバー部材130の下方に露出した構成であってもよい。
【0163】
・上記実施形態では、ガイドローラー60が持ち上がる方向の付勢力をアーム部材62に付与する付勢部材として、捩りコイルバネ170を用いることとしたが、例えば、引張バネや圧縮バネ等、その他の弾性部材を付勢部材に用いてもよい。
【0164】
・上記実施形態では、ガイドレール50は、その切欠き部180として、車両後方側の長手方向端部50rに設けられた切欠き部181と、車両前方側の長手方向端部50fに設けられた湾曲形状部70における最も車両後方側のコーナー部70cに形成された切欠き部182と、を有することとした。しかし、これに限らず、切欠き部180の数、及びその配置については、任意に変更してもよい。例えば、車両後方側の長手方向端部50rにのみ、その切欠き部181を有する等、切欠き部180の数は、一つでもよい。そして、ガイドレール50の長手方向に離間した3つ以上の切欠き部180を備える構成であってもよい。
【0165】
・上記実施形態では、抜け止めフランジ59は、車幅方向内側の側壁部58の下端部に設けられることとしたが、車幅方向外側の側壁部57の下端部に設けられる構成であってもよい。
【0166】
・上記実施形態では、保持部材190は、鉤状の係合突部191を有してカバー部材130の底壁部131に連結される。そして、この保持部材190を支軸190x周りに回動させることにより、その係合突部191が可動ステップ42に係合しない使用状態と、その係合突部191が可動ステップ42に係合する保持状態と、を切替可能であることとした。しかし、これに限らず、保持部材190による可動ステップ42の保持構造については、任意に変更してもよい。そして、例えば、サブステップ43や支持ブラケット45等、その保持部材190の配置についてもまた、任意に変更してもよい。
【符号の説明】
【0167】
1…車両、2…車体、2a…側面、2b…下面、3…ドア開口部、4…スライドドア、4a…外表面、10…ガイドレール、10f…長手方向端部、11…ロアレール、12…センターレール、13…アッパーレール、20…ガイドローラーユニット、21…ロアローラーユニット、22…センターローラーユニット、23…アッパーローラーユニット、30…湾曲形状部、31…パワースライドドア装置、31m…モータ、32…挟み込み検出装置、40…ステップ部材、41,42B…可動ステップ、41B…ステップ装置、42,42B…可動ステップ、42a…上面、42b…下面、42f…前端部、43,43B…サブステップ、43b…下面、44…支持アーム、44a…先端部、44b…基端部、45…支持ブラケット、45f…前方ブラケット、45r…後方ブラケット、46…連結部、47…可動ベース、47a…上面、47b…下面、48…樹脂カバー、48a…上面、48b…下面、49…挿通孔、50…ガイドレール、50f,50r…長手方向端部、52…ガイドローラーユニット、53,54…レール部材、55…周壁部、57,58…側壁部、59…抜け止めフランジ、60…ガイドローラー、60x…支軸、61…固定部材、62…アーム部材、70…湾曲形状部、70c…コーナー部、71…基部、71s…意匠面、72,72B…ステップ部、72b…下面、72s…意匠面、73…連結軸、75,76…ベース部材、75x,76x…嵌合部、77,78…樹脂カバー、79…突出部、80…突条部、81…メインアーム、81f…前方メインアーム、81r…後方メインアーム、82…サブアーム、83…基端側アーム、84…先端側アーム、85,85f,85r…ブラケット本体、86,86f,86r…挟持部材、85x,86x…締結孔、87,88,89…挿通孔、90…軸部材、91…挿通孔、92…軸部材、93,94…挿通孔、95…軸部材、100…受圧部材、101…受圧部材、101a…表面、101b…裏面、101s…摺接面、102…嵌合突部、103…取付孔、110…挟持部材、111…受圧部材、111a…表面、111b…裏面、111s…摺接面、111x…折曲部、112…固定部、113…挟持部、114…挿通孔、115…嵌合突部、116…取付孔、117…平板部、118…突条部、119…孔部、120…ストッパ、121…第1ストッパ、122…第2ストッパ、130…カバー部材、130f…前端部、131…底壁部、132,132f,132i…周壁部、132x…切欠き部、133…収容空間、134…締結部、135…シール部材、140…斜面、141…開口部、142…意匠部材、143…窓部、144…嵌合部材、145…シール部材、150…ロッカーフランジ、150b…下端、160…軸状部材、161…本体部、163…対向壁、164…本体部、166,166a…対向壁、167,168…挿通孔、170…コイルバネ、171,172…ストッパ部、180,181,182…切欠き部、190…保持部材、190x…支軸、191…係合突部、192…係合凹部、201…第1係合部、202…第2係合部、203…基端部、205…係合突部、206…先端部、208…係合突部、β…係合区間、γ…非摺接区間、ε…平行区間、η…重複領域、αc…閉側空走区間、αo…開側空走区間、θ1,θ2,θr…変化勾配、Dr…直径、Dw…レール幅、Lc…端末領域、Lo…移動領域、M1…第1回動連結点、M2…第2回動連結点、M3…関節、P1…格納位置、P2…展開位置、Pc…全閉位置、Qr…移動軌跡、R…移動経路、Rc…幅方向変位区間、S1,S2…ステップ面、W1,W2…車幅方向変位量、X1,X2,X3…移動位置、Xc…端末位置。