(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-28
(45)【発行日】2023-10-06
(54)【発明の名称】細胞分類方法、分類装置及びプログラム。
(51)【国際特許分類】
G01N 33/48 20060101AFI20230929BHJP
G01N 33/49 20060101ALI20230929BHJP
G01N 21/64 20060101ALI20230929BHJP
C12Q 1/04 20060101ALI20230929BHJP
C12M 1/34 20060101ALI20230929BHJP
【FI】
G01N33/48 M
G01N33/49 A
G01N33/49 K
G01N21/64 Z
C12Q1/04
C12M1/34 B
(21)【出願番号】P 2020049794
(22)【出願日】2020-03-19
【審査請求日】2022-12-05
(73)【特許権者】
【識別番号】390014960
【氏名又は名称】シスメックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100140431
【氏名又は名称】大石 幸雄
(72)【発明者】
【氏名】志田 友樹
(72)【発明者】
【氏名】中村 祐貴子
(72)【発明者】
【氏名】西川 健
(72)【発明者】
【氏名】三澤 浩太
(72)【発明者】
【氏名】尾上 ひかる
(72)【発明者】
【氏名】長井 孝明
(72)【発明者】
【氏名】安部 壮紀
(72)【発明者】
【氏名】三原 崇仁
(72)【発明者】
【氏名】芝田 正治
(72)【発明者】
【氏名】木村 考伸
【審査官】草川 貴史
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-008786(JP,A)
【文献】国際公開第2009/136570(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48-33/98
G01N 21/64
C12Q 1/04
C12M 1/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分析装置が実行する、検体に含まれる細胞を分類する細胞分類方法であって、
検体を、第1の調製条件で処理して第3の測定試料を調製することと、
調製した前記第3の測定試料から第3の信号を取得することと、
前記第3の信号を用いて前記第3の測定試料に含まれる細胞を分類することと、
前記検体を、
前記第1の調製条件で処理して第1の測定試料を調製することと、
調製した前記第1の測定試料から第1の信号を取得することと、
前記第1の信号を用いて前記第1の測定試料に含まれる細胞を分類することと、
前記検体を、前記第1の調製条件とは異なる第2の調製条件で処理して第2の測定試料を調製することと、
調製した前記第2の測定試料から第2の信号を取得することと、
前記第2の信号を用いて前記第2の測定試料に含まれる細胞を分類することと、
前記第1の信号を用いた細胞の分類結果と、前記第2の信号を用いた細胞の分類結果と、を比較し、比較結果に基づいて細胞数を含む分析結果を出力することと、
を含
み、
前記第3の信号を用いた細胞の分類結果の評価において細胞が分類できていないと判定されるとき、前記第1の測定試料を調製することと、前記第1の信号を取得することと、前記第1の測定試料に含まれる細胞を分類することと、前記第2の測定試料を調製することと、前記第2の信号を取得することと、前記第2の測定試料に含まれる細胞を分類することと、前記分析結果を出力することと、を実行する、
細胞分類方法。
【請求項2】
前記分析結果を出力することは、
前記比較結果が所定の範囲にある場合、前記第1の信号に基づく細胞数を出力することと、
前記比較結果が所定の範囲を超える場合、前記第1の信号に基づく細胞数と、当該細胞数の信頼性
が低いことを示す情報と、を出力することと、を含む、
請求項1に記載の細胞分類方法。
【請求項3】
前記分析結果を出力することは、
前記比較結果が所定の範囲にある場合、前記第1の信号に基づく細胞数を出力することと、
前記比較結果が所定の範囲を超える場合、前記第2の信号に基づく細胞数を出力することと、を含む、
請求項1に記載の細胞分類方法。
【請求項4】
検体の測定指示を受け付けることをさらに含み、
前記測定指示を受け付けると、
前記第1の測定試料を調製することと、前記第1の信号を取得することと、前記第1の信号を用いて細胞を分類することと、前記第2の測定試料を調製することと、前記第2の信号を取得することと、前記第2の信号を用いて細胞を分類することと、前記分析結果を出力することが実行される、
請求項1~3のいずれか一項に記載の細胞分類方法。
【請求項5】
前記第1および第2の調製条件は、前記検体に試薬を反応させる時間の長さに関する条件、前記検体に試薬を反応させる際の温度に関する条件、及び、前記検体と試薬の混合比率に関する条件のうち、少なくともいずれか1つの条件である、
請求項1~
4のいずれか一項に記載の細胞分類方法。
【請求項6】
前記第1の信号は第1の光信号であり、
前記第1の信号を取得することは、前記第1の測定試料に光を照射して前記第1の光信号を取得することを含み、
前記第2の信号は第2の光信号であり、
前記第2の信号を取得することは、前記第2の測定試料に光を照射して前記第2の光信号を取得することを含む、
請求項1~
5のいずれか一項に記載の細胞分類方法。
【請求項7】
前記第1の光信号は、前記第1の測定試料から発せられた蛍光及び角度の異なる2種類の散乱光のうち少なくとも2つの光信号を含み、
前記第2の光信号は、前記第2の測定試料から発せられた蛍光及び角度の異なる2種類の散乱光のうち少なくとも2つの光信号を含み、
前記第1の光信号を用いた細胞の分類結果は、前記第1の光信号に含まれる前記少なくとも2つの光信号を異なる軸にプロットすることで得られる第1の分布図に基づいて取得され、
前記第2の光信号を用いた細胞の分類結果は、前記第2の光信号に含まれる前記少なくとも2つの光信号を異なる軸にプロットすることで得られる第2の分布図に基づいて取得される、
請求項
6に記載の細胞分類方法。
【請求項8】
前記第1の光信号を用いた細胞の分類結果は、
前記第1の分布図に含まれる複数のクラスタのうちいずれか1つのクラスタに属する細胞の数、
前記第1の分布図に含まれる複数のクラスタの数、
前記第1の分布図に含まれる2つのクラスタ間の距離、
前記第1の分布図に含まれる2つのクラスタの境界が接している度合い、および
前記第1の分布図に含まれる複数のクラスタのうち所定クラスタの幅、
の少なくとも1つであり、
前記第2の光信号を用いた細胞の分類結果は、
前記第2の分布図に含まれる複数のクラスタのうちいずれか1つのクラスタに属する細胞の数、
前記第2の分布図に含まれる複数のクラスタの数、
前記第2の分布図に含まれる2つのクラスタ間の距離、
前記第2の分布図に含まれる2つのクラスタの境界が接している度合い、および
前記第2の分布図に含まれる複数のクラスタのうち所定クラスタの幅、
の少なくとも1つであり、
前記比較結果は、
前記第1の分布図に含まれる複数のクラスタのうちいずれか1つのクラスタに属する細胞の数と、前記第2の分布図に含まれる複数のクラスタのうちいずれか1つのクラスタに属する細胞の数との比較結果、
前記第1の分布図に含まれる複数のクラスタの数と、前記第2の分布図に含まれる複数のクラスタの数との比較結果、
前記第1の分布図に含まれる2つのクラスタ間の距離と、前記第2の分布図に含まれる2つのクラスタ間の距離との比較結果、
前記第1の分布図に含まれる2つのクラスタの境界が接している度合いと、前記第2の分布図に含まれる2つのクラスタの境界が接している度合いとの比較結果、および
前記第1の分布図に含まれる複数のクラスタのうち所定クラスタの幅と、前記第2の分布図に含まれる複数のクラスタのうち所定クラスタの幅との比較結果、
の少なくとも1つである、
請求項
7に記載の細胞分類方法。
【請求項9】
前記検体は血液であり、
分類される前記細胞には、少なくともリンパ球、単球、好中球及び好酸球が含まれる、
請求項1~
8のいずれか一項に記載の分類方法。
【請求項10】
分析装置が実行する、検体に含まれる細胞を分類する細胞分類方法であって、
検体を、第1の調製条件で処理して第1の測定試料を調製することと、
調製した前記第1の測定試料から第1の信号を取得することと、
前記第1の信号を用いて前記第1の測定試料に含まれる細胞を分類することと、
前記第1の信号を用いた細
胞の分類
結果を評価することと、
前記分
類結果
の評価において細胞が分類できていないと判定されるとき、前記検体を、前記第1の調製条件とは異なる第2の調製条件で処理して第2の測定試料を調製することと、
調製した前記第2の測定試料から第2の信号を取得することと、
前記第2の信号を用いて前記第2の測定試料に含まれる細胞を分類することと、
前記第2の信号に基づく細胞数を出力することと、
を含む細胞分類方法。
【請求項11】
検体に含まれる細胞を分類する分析装置であって、
検体を試薬で調製して測定試料を生成する試料調製部と、
測定試料から信号を取得する検出部と、
制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記試料調製部に、
検体を、第1の調製条件で処理して第3の測定試料を調製することと、前記検体を、
前記第1の調製条件で処理して第1の測定試料を調製することと、前記検体を、前記第1の調製条件とは異なる第2の調製条件で処理して第2の測定試料を調製することと、を実行させ、
前記検出部に、
調製した前記第3の測定試料から第3の信号を取得することと、調製した前記第1の測定試料から第1の信号を取得することと、調製した前記第2の測定試料から第2の信号を取得することと、を実行させ、
前記第3の信号を用いて前記検体に含まれる細胞を分類することと、
前記第1の信号を用いて前記検体に含まれる細胞を分類することと、
前記第2の信号を用いて前記検体に含まれる細胞を分類することと、
前記第1の信号を用いた細胞の分類結果と、前記第2の信号を用いた細胞の分類結果と、を比較し、比較結果に基づいて分析結果を出力することと、を実行し、
前記第3の信号を用いた細胞の分類結果の評価において細胞が分類できていないと判定されるとき、前記試料調製部に、前記第1の測定試料を調製することと、前記第2の測定試料を調製することと、を実行させ、前記検出部に、前記第1の信号を取得することと、前記第2の信号を取得することと、を実行させ、前記第1の信号を用いて前記検体に含まれる細胞を分類することと、前記第2の信号を用いて前記検体に含まれる細胞を分類することと、前記分析結果を出力することと、を実行する、
分析装置。
【請求項12】
検体に含まれる細胞を分類する分析装置であって、
検体を試薬で調製して測定試料を生成する試料調製部と、
測定試料から信号を取得する検出部と、
制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記試料調製部に、検体を、第1の調製条件で処理して第1の測定試料を調製することと、前記検体を、前記第1の調製条件とは異なる第2の調製条件で処理して第2の測定試料を調製することと、を実行させることと、
前記検出部に、調製した前記第1の測定試料から第1の信号を取得すること、を実行させることと、
前記第1の信号を用いて前記検体に含まれる細胞を分類することと、
前記第1の信号を用いた細
胞の分類
結果を評価することと、
前記分
類結果
の評価において細胞が分類できていないと判定されるとき、
前記試料調製部に、前記検体を、前記第1の調製条件とは異なる第2の調製条件で処理して第2の測定試料を調製すること、を実行させることと、
前記検出部に、調製した前記第2の測定試料から第2の信号を取得すること、を実行させることと、
前記第2の信号を用いて前記第2の測定試料に含まれる細胞を分類することと、
前記第2の信号に基づく細胞数を出力することと、を実行する、
分析装置。
【請求項13】
コンピュータに、
検体を試薬で調製して測定試料を生成する試料調製部に、
検体を、第1の調製条件で処理して第3の測定試料を調製することと、前記検体を、
前記第1の調製条件で処理して第1の測定試料を調製することと、前記検体を、前記第1の調製条件とは異なる第2の調製条件で処理して第2の測定試料を調製することと、を実行させることと、
測定試料から信号を取得する検出部に、
調製した前記第3の測定試料から第3の信号を取得することと、調製した前記第1の測定試料から第1の信号を取得することと、調製した前記第2の測定試料から第2の信号を取得することと、を実行させることと、
前記第3の信号を用いて前記検体に含まれる細胞を分類することと、
前記第1の信号を用いて前記検体に含まれる細胞を分類することと、
前記第2の信号を用いて前記検体に含まれる細胞を分類することと、
前記第1の信号を用いた細胞の分類結果と、前記第2の信号を用いた細胞の分類結果と、を比較し、比較結果に基づいて分析結果を出力することと、
を実行させ
、
前記第3の信号を用いた細胞の分類結果の評価において細胞が分類できていないと判定されるとき、前記第1の測定試料を調製することと、前記第2の測定試料を調製することと、前記第1の信号を取得することと、前記第2の信号を取得することと、前記第1の信号を用いて前記検体に含まれる細胞を分類することと、前記第2の信号を用いて前記検体に含まれる細胞を分類することと、前記分析結果を出力することと、を実行させる、
プログラム。
【請求項14】
コンピュータに、
検体を試薬で調製して測定試料を生成する試料調製部に、検体を、第1の調製条件で処理して第1の測定試料を調製することと、前記検体を、前記第1の調製条件とは異なる第2の調製条件で処理して第2の測定試料を調製することと、を実行させることと、
測定試料から信号を取得する検出部に、調製した前記第1の測定試料から第1の信号を取得すること、を実行させることと、
前記第1の信号を用いた細
胞の分類
結果を評価することと、
前記分
類結果
の評価において細胞が分類できていないと判定されるとき、
前記試料調製部に、前記検体を、前記第1の調製条件とは異なる第2の調製条件で処理して第2の測定試料を調製すること、を実行させることと、
前記検出部に、調製した前記第2の測定試料から第2の信号を取得すること、を実行させることと、
前記第2の信号を用いて前記第2の測定試料に含まれる細胞を分類することと、
前記第2の信号に基づく細胞数を出力することと、
を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞分類方法、分類装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
血液を溶血させた試料に光を照射することで取得した情報を用いて、血液中の白血球を複数の種別に分類する技術が知られている。例えば特許文献1には、所定の調製条件に従って調製された測定試料内の白血球及び白血球の亜集団を識別、分類、及び/または定量するように全血の試料を分析するシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のシステムによると、血液中の白血球を複数の種別に分類する際、所定の調製条件に従って調製された測定試料について分析を行うが、検体の性質によっては、白血球を精度よく分類することができない場合がある。例えば、検体によっては、好中球と単球とが、同程度の大きさと、同程度の染色液の膜透過性とを持つ場合があり、このような場合には、好中球と単球とを精度よく分類することができない。しかしながら、特許文献1に記載のシステムは、所定の調製条件に従って調製された測定試料について分析を行うことから、検体の性質によっては、精度が不十分な分析結果が出力されてしまう。
【0005】
そこで、本発明は、検体の性質によって精度が不十分な分析結果が出力されてしまうことを抑止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る細胞分類方法は、分析装置(1)が実行する、検体に含まれる細胞を分類する細胞分類方法であって、検体を、第1の調製条件で処理して第1の測定試料を調製することと、調製した前記第1の測定試料から第1の信号を取得することと、前記第1の信号を用いて前記第1の測定試料に含まれる細胞を分類することと、前記検体を、前記第1の調製条件とは異なる第2の調製条件で処理して第2の測定試料を調製することと、調製した前記第2の測定試料から第2の信号を取得することと、前記第2の信号を用いて前記第2の測定試料に含まれる細胞を分類することと、前記第1の信号を用いた細胞の分類結果と、前記第2の信号を用いた細胞の分類結果と、を比較し、比較結果に基づいて細胞数を含む分析結果を出力することと、を含む。これにより、検体の性質によって精度が不十分な分析結果が出力されてしまうことを抑止することが可能になる。
【0007】
本発明の他の態様に係る細胞分類方法は、分析装置(1)が実行する、検体に含まれる細胞を分類する細胞分類方法であって、検体を、第1の調製条件で処理して第1の測定試料を調製することと、調製した前記第1の測定試料から第1の信号を取得することと、前記第1の信号を用いて前記第1の測定試料に含まれる細胞を分類することと、前記第1の信号を用いた細胞分類の分類能を評価することと、前記分類能の評価結果が所定の条件を満たすとき、前記検体を、前記第1の調製条件とは異なる第2の調製条件で処理して第2の測定試料を調製することと、調製した前記第2の測定試料から第2の信号を取得することと、前記第2の信号を用いて前記第2の測定試料に含まれる細胞を分類することと、前記第2の信号に基づく細胞数を出力することと、を含む。これにより、検体の性質によって精度が不十分な分析結果が出力されてしまうことを抑止することが可能になる。
【0008】
本発明の他の態様に係る細胞分類方法は、分析装置(1)が実行する、検体に含まれる細胞を分類する細胞分類方法であって、検体を、第1の調製条件で処理して第1の測定試料を調製することと、調製した前記第1の測定試料から第1の信号を取得することと、前記第1の信号を用いて前記第1の測定試料に含まれる細胞を分類することと、前記検体を、前記第1の調製条件とは異なる第2の調製条件で処理して第2の測定試料を調製することと、調製した前記第2の測定試料から第2の信号を取得することと、前記第2の信号を用いて前記第2の測定試料に含まれる細胞を分類することと、前記第1の信号を用いた細胞分類における分類能を評価することと、前記分類能の評価結果に基づき、前記第1の信号に基づく細胞数を含む分析結果又は前記第2の信号に基づく細胞数を含む分析結果を出力することと、を含む。これにより、検体の性質によって精度が不十分な分析結果が出力されてしまうことを抑止することが可能になる。
【0009】
本発明の他の態様に係る分析装置(1)は、検体に含まれる細胞を分類する分析装置(1)であって、検体を試薬で調製して測定試料を生成する試料調製部(25)と、測定試料から信号を取得する検出部(26)と、制御部(500)と、を備え、前記制御部(500)は、前記試料調製部(25)に、検体を、第1の調製条件で処理して第1の測定試料を調製することと、前記検体を、前記第1の調製条件とは異なる第2の調製条件で処理して第2の測定試料を調製することと、を実行させ、前記検出部(26)に、調製した前記第1の測定試料から第1の信号を取得することと、調製した前記第2の測定試料から第2の信号を取得することと、を実行させ、前記第1の信号を用いて前記検体に含まれる細胞を分類することと、前記第2の信号を用いて前記検体に含まれる細胞を分類することと、前記第1の信号を用いた細胞の分類結果と、前記第2の信号を用いた細胞の分類結果と、を比較し、比較結果に基づいて分析結果を出力することと、を実行する。これにより、検体の性質によって精度が不十分な分析結果が出力されてしまうことを抑止することが可能になる。
【0010】
本発明の他の態様に係る分析装置(1)は、検体に含まれる細胞を分類する分析装置(1)であって、検体を試薬で調製して測定試料を生成する試料調製部(25)と、測定試料から信号を取得する検出部(26)と、制御部(500)と、を備え、前記制御部(500)は、前記試料調製部(25)に、検体を、第1の調製条件で処理して第1の測定試料を調製することと、前記検体を、前記第1の調製条件とは異なる第2の調製条件で処理して第2の測定試料を調製することと、を実行させることと、前記検出部(26)に、調製した前記第1の測定試料から第1の信号を取得すること、を実行させることと、前記第1の信号を用いて前記検体に含まれる細胞を分類することと、前記第1の信号を用いた細胞分類の分類能を評価することと、前記分類能の評価結果が所定の条件を満たすとき、前記試料調製部(25)に、前記検体を、前記第1の調製条件とは異なる第2の調製条件で処理して第2の測定試料を調製すること、を実行させることと、前記検出部(26)に、調製した前記第2の測定試料から第2の信号を取得すること、を実行させることと、前記第2の信号を用いて前記第2の測定試料に含まれる細胞を分類することと、前記第2の信号に基づく細胞数を出力することと、を実行する。これにより、検体の性質によって精度が不十分な分析結果が出力されてしまうことを抑止することが可能になる。
【0011】
本発明の他の態様に係る分析装置(1)は、検体に含まれる細胞を分類する分析装置(1)であって、検体を試薬で調製して測定試料を生成する試料調製部(25)と、測定試料から信号を取得する検出部(26)と、制御部(500)と、を備え、前記制御部(500)は、前記試料調製部(25)に、検体を、第1の調製条件で処理して第1の測定試料を調製することと、前記検体を、前記第1の調製条件とは異なる第2の調製条件で処理して第2の測定試料を調製することと、を実行させ、前記検出部(26)に、調製した前記第1の測定試料から第1の信号を取得することと、調製した前記第2の測定試料から第2の信号を取得することと、を実行させ、前記第1の信号を用いて前記検体に含まれる細胞を分類することと、前記第2の信号を用いて前記検体に含まれる細胞を分類することと、前記第1の信号を用いた細胞分類における分類能を評価することと、前記分類能の評価結果に基づき、前記第1の信号に基づく細胞数を含む分析結果又は前記第2の信号に基づく細胞数を含む分析結果を出力することと、を実行する。これにより、検体の性質によって精度が不十分な分析結果が出力されてしまうことを抑止することが可能になる。
【0012】
本発明の他の態様に係るプログラムは、コンピュータに、検体を試薬で調製して測定試料を生成する試料調製部(25)に、検体を、第1の調製条件で処理して第1の測定試料を調製することと、前記検体を、前記第1の調製条件とは異なる第2の調製条件で処理して第2の測定試料を調製することと、を実行させることと、測定試料から信号を取得する検出部(26)に、調製した前記第1の測定試料から第1の信号を取得することと、調製した前記第2の測定試料から第2の信号を取得することと、を実行させることと、前記第1の信号を用いて前記検体に含まれる細胞を分類することと、前記第2の信号を用いて前記検体に含まれる細胞を分類することと、前記第1の信号を用いた細胞の分類結果と、前記第2の信号を用いた細胞の分類結果と、を比較し、比較結果に基づいて分析結果を出力することと、を実行させる。これにより、検体の性質によって精度が不十分な分析結果が出力されてしまうことを抑止することが可能になる。
【0013】
本発明の他の態様に係るプログラムは、コンピュータに、検体を試薬で調製して測定試料を生成する試料調製部(25)に、検体を、第1の調製条件で処理して第1の測定試料を調製することと、前記検体を、前記第1の調製条件とは異なる第2の調製条件で処理して第2の測定試料を調製することと、を実行させることと、測定試料から信号を取得する検出部(26)に、調製した前記第1の測定試料から第1の信号を取得すること、を実行させることと、前記第1の信号を用いた細胞分類の分類能を評価することと、前記分類能の評価結果が所定の条件を満たすとき、前記試料調製部(25)に、前記検体を、前記第1の調製条件とは異なる第2の調製条件で処理して第2の測定試料を調製すること、を実行させることと、前記検出部(26)に、調製した前記第2の測定試料から第2の信号を取得すること、を実行させることと、前記第2の信号を用いて前記第2の測定試料に含まれる細胞を分類することと、前記第2の信号に基づく細胞数を出力することと、を実行させる。これにより、検体の性質によって精度が不十分な分析結果が出力されてしまうことを抑止することが可能になる。
【0014】
本発明の他の態様に係るプログラムは、コンピュータに、検体を試薬で調製して測定試料を生成する試料調製部(25)に、検体を、第1の調製条件で処理して第1の測定試料を調製することと、前記検体を、前記第1の調製条件とは異なる第2の調製条件で処理して第2の測定試料を調製することと、を実行させ、測定試料から信号を取得する検出部(26)に、調製した前記第1の測定試料から第1の信号を取得することと、調製した前記第2の測定試料から第2の信号を取得することと、を実行させ、前記第1の信号を用いて前記検体に含まれる細胞を分類することと、前記第2の信号を用いて前記検体に含まれる細胞を分類することと、前記第1の信号を用いた細胞分類における分類能を評価することと、前記分類能の評価結果に基づき、前記第1の信号に基づく細胞数を含む分析結果又は前記第2の信号に基づく細胞数を含む分析結果を出力することと、を実行させる。これにより、検体の性質によって精度が不十分な分析結果が出力されてしまうことを抑止することが可能になる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、検体の性質によって精度が不十分な分析結果が出力されてしまうことを抑止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本実施形態に係る分析装置の外観を示す斜視図である。
【
図2】測定ユニットの構成例を模式的に示す図である。
【
図3】光学検出器の構成例を模式的に示す図である。
【
図5】情報処理ユニットの機能構成例を示す図である。
【
図7】スキャッタグラムにおける血球の分布例を示す図である。
【
図8】各血球をいずれかのクラスタに割り当てる処理の一例を示すフローチャートである。
【
図9】分析装置が行う処理手順の一例を示すフローチャートである。
【
図10】調製条件A及び調製条件Bによる分類結果の一例を示す図である。
【
図11】調製条件A及び調製条件Bによる分類結果の一例を示す図である。
【
図12】調製条件A及び調製条件Bによる分類結果の一例を示す図である。
【
図13】2つクラスタの境界が接している度合いの算出例を説明するための図である。
【
図14】調製条件A及び調製条件Bによる分類結果の一例を示す図である。
【
図15】調製条件A及び調製条件Bによる分類結果の一例を示す図である。
【
図16】調製条件A及び調製条件Bによる分類結果の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。なお、各図において、同一の符号を付したものは、同一又は同様の構成を有する。
【0018】
<検体測定システムの構成>
図1は、本実施形態に係る分析装置1の外観を示す斜視図である。分析装置1は、血液検体に含まれる白血球の血球を計数する多項目血球分析装置である。分析装置1は、測定ユニット2と、測定ユニット2の前面側に配置された搬送ユニット3と、情報処理ユニット4とを備えている。患者から採取された末梢血である血液検体は、検体容器(採血管)Tに収容される。複数の検体容器TがサンプルラックLに支持され、このサンプルラックLが搬送ユニット3により搬送されて、血液検体が測定ユニット2へ供給される。
【0019】
情報処理ユニット4は、表示部41と入力部42を備えており、測定ユニット2と、搬送ユニット3と、ホストコンピュータ5(
図2参照)に対して、通信可能に接続されている。情報処理ユニット4は、測定ユニット2と搬送ユニット3の動作を制御し、測定ユニット2で行われた測定結果に基づいて解析を行い、解析結果をホストコンピュータ5(
図2参照)に送信する。
【0020】
図2は、測定ユニット2の構成例を模式的に示す図である。
【0021】
測定ユニット2は、ハンド部21と、検体容器セット部22と、バーコードユニット23と、検体吸引部24と、試料調製部25と、検出部26とを備えている。検体吸引部24は、ピアサ24aを備えており、検体容器Tから検体を吸引する。試料調製部25は、混合チャンバMCとヒータHを備えており、検体に試薬を混和することにより測定に用いられる測定試料を調製する。検出部26は、光学検出器Dを備えており、測定試料から血球を検出する。測定ユニット2の各部は、情報処理ユニット4により制御される。
【0022】
搬送ユニット3により位置P1に位置付けられた検体容器Tは、ハンド部21により把持され、サンプルラックLから上方向に抜き出される。そして、ハンド部21が揺動されることにより、検体容器T内の検体が撹拌される。攪拌が終了した検体容器Tは、ハンド部21により、位置P1に位置付けられた検体容器セット部22にセットされる。しかる後、この検体容器Tは、検体容器セット部22により位置P2まで搬送される。
【0023】
検体容器Tが位置P2に位置付けられると、位置P2の近傍に設置されたバーコードユニット23により、検体容器Tに貼付されたバーコードラベルから検体番号が読み取られる。しかる後、この検体容器Tは、検体容器セット部22により位置P3まで搬送される。検体容器Tが位置P3に位置付けられると、検体吸引部24によりピアサ24aを介して検体容器Tから所定量の検体が吸引される。検体の吸引が終了すると、この検体容器Tは、検体容器セット部22により前方に搬送され、ハンド部21により元のサンプルラックLの支持位置に戻される。ピアサ24aを介して吸引された検体は、ピアサ24aが混合チャンバMCの位置へ移送された後、検体吸引部24により混合チャンバMCに所定量だけ吐出される。
【0024】
試料調製部25は、血液検体と試薬とを所定の調製条件に従って混合することで、測定試料を調製する。試薬には、溶血剤(第1試薬)と蛍光物質(第2試薬)とが含まれている。溶血剤によって血液中の赤血球及び血小板が溶血され、蛍光物質によって白血球が染色される。
【0025】
試料調製部25で調製された測定試料は、検出部26の光学検出器Dに供給される。
【0026】
図3は、光学検出器Dの構成例を模式的に示す図である。光学検出器Dは、フローセルD1と、シースフロー系D2、ビームスポット形成系D3、前方散乱光受光系D4、側方散乱光受光系D5、蛍光受光系D6を有している。
【0027】
シースフロー系D2は、フローセルD1内に測定試料を送り込み、フローセルD1中に液流を発生させるように構成されている。ビームスポット形成系D3は、半導体レーザD31から照射された光が、コリメータレンズD32とコンデンサレンズD33とを通って、フローセルD1に照射されるよう構成されている。これにより、フローセルD1内を通過する液流に含まれる血球にレーザ光が照射される。また、ビームスポット形成系D3は、ビームストッパD34も備えている。
【0028】
前方散乱光受光系D4は、前方への散乱光(前方散乱光)を前方集光レンズD41によ
って集光し、ピンホールD42を通った光をフォトダイオードD43で受光するように構成されている。フォトダイオードD43は、受光した前方散乱光のピーク値に基づいて前方散乱光信号(FSC)を出力する。側方散乱光受光系D5は、側方への散乱光(側方散
乱光)を側方集光レンズD51にて集光するとともに、一部の光をダイクロイックミラーD52で反射させ、フォトダイオードD53で受光するよう構成されている。フォトダイオードD53は、受光した側方散乱光のピーク値に基づいて側方散乱光信号(SSC)を出力する。
【0029】
光散乱は、光の進行方向に血球のような粒子が障害物として存在すると、粒子により光がその進行方向を変えることによって生じる現象である。この散乱光を検出することによって、粒子の大きさと材質に関する情報を得ることができる。特に、前方散乱光からは、粒子(血球)の大きさに関する情報を得ることができる。また、側方散乱光からは、粒子内部の情報を得ることができる。血球粒子にレーザ光が照射された場合、側方散乱光強度は細胞内部の複雑さ(核の形状、大きさ、密度および顆粒の量)に依存する。
【0030】
蛍光受光系D6は、側方散乱光のうちダイクロイックミラーD52を透過した光(蛍光)をさらに分光フィルタD61に通し、アバランシェフォトダイオードD62で受光するよう構成されている。アバランシェフォトダイオードD62は、受光した蛍光のピーク値に基づいて側方蛍光信号(SFL)を出力する。
【0031】
蛍光物質により染色された血球に光を照射すると、照射した光の波長より長い波長の蛍光を発する。蛍光の強度はよく染色されていれば強くなり、この蛍光強度を測定することによって血球の染色度合いに関する情報を得ることができる。
【0032】
光学検出器Dにより血球ごとに取得された、前方散乱光信号(FSC)と、側方散乱光信号(SSC)と、側方蛍光信号(SFL)は、情報処理ユニット4に送信される。
【0033】
図4は、情報処理ユニット4の構成例を示す図である。
【0034】
情報処理ユニット4は、パーソナルコンピュータからなり、本体40と、表示部41と、入力部42から構成されている。本体40は、CPU401と、ROM402と、RAM403と、ハードディスク404と、読出装置405と、画像出力インターフェース406と、入出力インターフェース407と、通信インターフェース408を有する。
【0035】
CPU401は、ROM402に記憶されているコンピュータプログラムおよびRAM403にロードされたコンピュータプログラムを実行する。RAM403は、ROM402およびハードディスク404に記録されているコンピュータプログラムの読み出しに用いられる。また、RAM403は、これらのコンピュータプログラムを実行するときに、CPU401の作業領域としても利用される。
【0036】
ハードディスク404には、オペレーティングシステム、CPU401に実行させるためのコンピュータプログラム、およびコンピュータプログラムの実行に用いるデータが記憶されている。また、ハードディスク404には、情報処理ユニット4の処理を実行させるためのプログラム404aが記憶されている。読出装置405は、CDドライブまたはDVDドライブ等によって構成されており、コンピュータ読み取り可能な非一時的な記録媒体(Non-transitory computer readable medium)405aに記録されたコンピュータプログラムおよびデータを読み出すことができる。なお、上記プログラム404aが記録媒体405aに記録されている場合には、読出装置405により記録媒体405aから読み出されたプログラム404aが、ハードディスク404に記憶される。
【0037】
画像出力インターフェース406は、画像データに応じた映像信号を表示部41に出力し、表示部41は、画像出力インターフェース406から出力された映像信号に基づいて画像を表示する。ユーザは入力部42を介して指示を入力し、入出力インターフェース407は、入力部42を介して入力された信号を受け付ける。通信インターフェース408は、測定ユニット2と、搬送ユニット3と、ホストコンピュータ5に接続されており、CPU401は、通信インターフェース408を介して、これら装置との間で指示信号およびデータの送受信を行う。
【0038】
図5は、情報処理ユニット4の機能構成例を示す図である。制御部500は、CPU401がコンピュータプログラムを読出して実行することで実現される。記憶部505は、RAM403又はハードディスク404を用いて実現される。
【0039】
制御部500は、測定ユニット2と搬送ユニット3の動作を制御することで検体の測定を行う測定制御部501、測定ユニット2の検出部26で測定された前方散乱光信号(FSC)、側方散乱光信号(SSC)及び側方蛍光信号(SFL)に基づいて白血球の分類及び血球数のカウント等を行う解析処理部502、測定された白血球の種別ごとの血球数やスキャッタグラム(分布図)などを表示部41に表示させる処理を行う表示制御部503、及びユーザから入力部42を介して入力を受け付ける入力処理部504を含む。
【0040】
記憶部505は、測定ユニット2から受信した、前方散乱光信号(FSC)のレベル、側方散乱光信号(SSC)のレベル及び側方蛍光信号(SFL)のレベルを示す測定情報を、血球ごとに格納する。当該測定情報は、前方散乱光信号(FSC)のレベル、側方散乱光信号(SSC)のレベル及び側方蛍光信号(SFL)のレベル、それぞれ「チャンネル」と呼ばれる量子化された値で表現した情報である。チャンネルについては後述する。
【0041】
解析処理部502は、記憶部505に格納された測定情報に基づいて、血液検体中に存在する白血球を、リンパ球(LYMPH)と、単球(MONO)と、好中球(NEUT)と、好塩基球(BASO)と、好酸球(EO)とに分類し、各々の血球数をカウントする。
【0042】
解析処理部502は、測定情報に基づいてスキャッタグラム(分布図)を作成することで、血液検体中に存在する白血球を分類する。
【0043】
ここで、スキャッタグラムは、フォトダイオードD43から出力される前方散乱光信号(FSC)、フォトダイオードD53から出力される側方散乱光信号(SSC)、アバランシェフォトダイオードD62から出力される側方蛍光信号(SFL)のうち、2種類の信号を縦軸及び横軸とする2次元の分布図である。
【0044】
前方散乱光信号(FSC)、側方散乱光信号(SSC)及び側方蛍光信号(SFL)のうち、どの2種類の信号を用いるのかによって、分類可能な白血球の種別が異なる。本実施形態では、側方蛍光信号(SFL)及び側方散乱光信号(SSC)を用いて、好中球、リンパ球、単球および好酸球の4種類の白血球を分類する。また、前方散乱光信号(FSC)及び側方蛍光信号(SFL)を用いて、好塩基球および好塩基球以外の白血球(好中球、リンパ球、単球および好酸球)を分類することができる。
【0045】
図6に示すスキャッタグラムは、横軸を側方散乱光信号(SSC)とし縦軸を側方蛍光信号(SFL)とする2次元の分布図上に、個々の血球に対応する点をプロットした場合の例である。前方散乱光信号(FSC)及び側方蛍光信号(SFL)を2軸として好塩基球および好塩基球以外の白血球を分類する場合も、以下と同様の方法で血球を分類することができる。
【0046】
解析処理部502は、スキャッタグラム上の点を、白血球の4つのサブクラスにそれぞれ対応する4つのクラスタ(リンパ球のクラスタA11、単球のクラスタA12、好中球のクラスタA13、および好酸球のクラスタA14)の何れかに分類する。具体的には、例えば、スキャッタグラム上にプロットされた各血球に対応する点と、あらかじめ設定された各クラスタの重心位置との距離から、各血球の各クラスタへの帰属度が得られる。そして、これらの帰属度に応じて、各血球が各クラスタに割り当てられる。
【0047】
ここで、各血球を各クラスタに割り当てる手順の一例をより具体的に説明する。スキャッタグラムの作成に用いられる2種類の信号は、増幅器で増幅された後、A/D変換器でディジタル信号に変換される。即ち、量子化が行われる。この量子化によって、各々の信号は、例えば、0から255までの合計256個のチャンネルのいずれかに分類される。
【0048】
情報処理ユニット4は、これらディジタル信号に基づいて、
図7に示すように、iチャンネルをX軸とし、jチャンネルをY軸とするスキャッタグラムを得る。このスキャッタグラムは、X軸、Y軸が共に256のチャンネルを持つので、合計256×256の血球の状態を表す基本要素からなり、各基本要素には、その基本要素に該当する血球の数が記憶されている。例えばX軸が1チャンネルで、Y軸が2チャンネルの基本要素の値が6であるとすると、血球の細胞質の大きさの信号が1で、核や顆粒の密度と大きさを総合した信号の大きさが2である血球が6個存在することを表している。
【0049】
図8は、各血球をいずれかのクラスタに割り当てる処理の一例を示すフローチャートである。まず、情報処理ユニット4は、初期分割を行う(S2)。この初期分割では、
図7に示したスキャッタグラムのうち各基本要素における血球数を無視して、基本要素の分布を、リンパ球であれば、明らかにそこに分布すると想定される固定領域、単球であれば明らかにそこに分布すると想定される固定領域、好中球であれば明らかにそこに分布すると想定される固定領域、好酸球であれば明らかにそこに分布すると想定される固定領域、血小板や赤血球からなるゴーストであれば明らかにそこに分布すると想定される固定領域で分割する。各固定領域は予め設定されている。各固定領域内に存在する血球は、帰属度を1とする。
【0050】
続いて、情報処理ユニット4は、以下の数1及び数2を用いて、リンパ球のクラスタの初期重心の計算を行う(S4)。
【数1】
【数2】
ここで、N
ijは、基本要素i、jにおける血球数である。単球、好中球、好酸球及びゴーストのクラスタについても同様にして重心位置を求める。
【0051】
続いて、情報処理ユニット4は、いずれの固定領域にも属さない各血球について、各クラスタへの帰属度を算出する(S6)。より詳細には、情報処理ユニット4は、各血球の位置から各クラスタの重心位置までの距離に基づいて、各クラスタへの帰属度を算出する。ここで、各血球の各クラスタの重心位置までの距離は、各血球の位置と各クラスタとの間の距離(ユークリッド距離)ではなく、所定の楕円における短径長を、各血球の位置と各クラスタとの間の距離とする。なお、所定の楕円とは、クラスタの重心位置を中心とし、予めそのクラスタに応じて定められた特定の傾きを持ち、対象となる血球がその弧上に位置し、短径をaとすると、長径はak(kは比例定数)で表される楕円である。
【0052】
各血球の各クラスタへの距離L
x(x=1~N(Nはクラスタ数))が求められると、この血球の各クラスタへの帰属度は、数3によって求められる。無論、これら帰属度は、いずれも1より小さい値になる。
【数3】
このようにして、情報処理ユニット4は、いずれの固定領域にも属さない各血球について各クラスタへの帰属度を算出する。
【0053】
続いて、各クラスタについて、各血球の各クラスタへの帰属度を重みとして、重み付き重心の計算を行う(S8)。この重み付き重心は、例えば数4、数5によって求められる。
【数4】
【数5】
ここで、U
ijは、基本要素i、jにある血球の、あるクラスタG1への帰属度を表している。
【0054】
このようにして各クラスタの重み付き重心を求めた後、ステップS4で求めた各クラスタの初期重心位置のうち対応するものと比較し、その変化量が所定量、例えば0であるか判断する(S10)。所定量でない場合、今回求めた各クラスタの重み付き重心の位置を、各クラスタの初期重心に置き換えて、ステップS6、S8及びS10の処理手順を繰り返す。即ち、各血球の各クラスタの重み付き重心の位置までの距離を求め、この距離に基づいて各血球の各クラスタへの帰属度を求め、これら帰属度を基に新たに各クラスタの重み付き重心位置を求め、これら新たな各クラスタの重み付き重心位置と先の各クラスタの重み付き重心位置との変化量が所定量であるか判断し、再び所定量でなければ、今回求めた各クラスタの重み付き重心位置を初期重心位置としてステップS6、S8、S10の処理手順を繰り返す。
【0055】
ただし、予め定めた回数だけステップS6、S8、S10を繰り返しても、所定量にならない場合が想定される。従って、ステップS10の判断がノーの場合、情報処理ユニット4は、ステップS6、S8、S10の実行回数が所定回数か判断し(S12)、所定回数になった場合、解析不能を表示部41に表示し(S14)、処理を終了する。
【0056】
また、各クラスタの重心の変化がいずれも所定量となると、情報処理ユニット4は、各血球の各クラスタへの最終的な帰属を決定することで、各クラスタの血球数を決定する(ステップS16)。
【0057】
各血球の最終的な帰属は、最終的に得られた帰属度のうち、最大の値を示すクラスタに属することとしてもよい。例えば、或る基本要素に10個の血球があり、これら血球のリンパ球のクラスタに対する帰属度が0.95、単球のクラスタに対する帰属度が0.03、好中球のクラスタへの帰属度が0.03、好酸球へのクラスタへの帰属度が0.02、ゴーストのクラスタに対する帰属度が0となったような場合、これら10個の血球は、全て、最大の帰属度を示すリンパ球のクラスタに属することになる。
【0058】
以上の処理を行うことで、スキャッタグラム内に存在する各血球は、いずれかのクラスタに割り当てられる。
【0059】
<分析装置の動作>
分析装置1は、最初に、予め定められた調製条件に従って調製された測定試料を用いて、白血球の分類及び血球数のカウントを行い、分析結果を出力する処理を行う。当該処理を本実施形態では、「通常モード」と称する。また、分析装置1は、通常モードにおいて白血球の分類が十分にできていない可能性があると判定した場合、調製条件を変更して測定試料を調製し、再度白血球の分類及び血球数のカウントを行い、分析結果を出力する処理を行う。当該処理を本実施形態では、「拡張モード」と称する。
【0060】
図9は、分析装置1が行う処理手順の一例を示すフローチャートである。
【0061】
ステップS100で、測定ユニット2の試料調製部25は、血液検体と試薬とを、既定の調製条件に従って混合することで、測定試料を調製する。以下、既定の調製条件を、調製条件Aと称する。
【0062】
調製条件A(以下で説明する調製条件Bも同様)は、血液検体に試薬を反応させる時間の長さに関する条件である。調製条件A(以下で説明する調製条件Bも同様)は、血液検体に試薬を反応させる際の温度に関する条件、及び、血液検体と試薬の混合比率に関する条件のうち、少なくともいずれか1つの条件であってもよい。なお、血液検体に試薬を反応させる時間の長さに関する条件は、血液検体と試薬を調合してヒータで加熱する際の加熱時間の長さに関する条件であってもよい。
【0063】
調製条件Aにおける反応時間、温度及び混合比率は、健常な血液検体であれば、白血球を、リンパ球と、単球と、好中球と、好塩基球と、好酸球とに分類することができる値に予め定められている。
【0064】
続いて、測定ユニット2の検出部26は、調製された測定試料に光(レーザ光)を照射することで、光信号を取得する。続いて、情報処理ユニット4の制御部500は、光信号に基づいて、血液検体に含まれる白血球を分類し、白血球の種別ごとに各血球の数をカウントする。
【0065】
ステップS101で、情報処理ユニット4の制御部500は、白血球を分類した結果として、スキャッタグラム及び/又は各白血球の血球数を出力する。
【0066】
ステップS102で、制御部500は、調製条件Aで調製した測定試料について、白血球の分類(細胞分類)に関する分類能を評価することで、各白血球が十分に分離できているか否かを判定する。分類能とは、複数種別の細胞をどの程度正しく分類できているかを示す指標を意味する。より具体的には、光信号を分析することで、血液検体を、白血球の種別(リンパ球、単球、好中球、好塩基球及び好酸球)ごとに正しく分類できていることを示す指標を意味する。例えば、制御部500は、白血球を分類した結果、リンパ球、単球、好中球、好塩基球及び好酸球のうち、少なくともいずれか2種類の白血球が十分に分離されていない場合、各白血球が十分に分類できていないと判定する。
【0067】
制御部500は、各白血球が十分に分類できていると判定した場合(「分類能が所定の条件を満たさない場合」と称してもよい)、拡張モードに移行せずに処理を終了する。一方、各白血球が十分に分類できていない可能性があると判定した場合(「分類能が所定の条件を満たす場合」と称してもよい)、制御部500は、拡張モードに移行するために、ステップS103の処理手順に進む。各白血球が十分に分類できていない可能性がある場合とは、例えば、何らかの疾患がある被験者から採取された血液など、健常ではない血液検体を分析した場合等に生じると考えられる。
【0068】
ステップS103で、測定ユニット2の試料調製部25は、血液検体と試薬とを、再度調製条件Aに従って混合することで、測定試料を調製する。続いて、測定ユニット2の検出部26は、調製された測定試料に光を照射することで、光信号を取得する。続いて、情報処理ユニット4の制御部500は、光信号を用いて、血液検体に含まれる白血球を分類するとともに、白血球の種別ごとに各血球の数をカウントする。
【0069】
ステップS104で、測定ユニット2の試料調製部25は、血液検体と試薬とを、調製条件Aとは異なる調製条件Bに従って混合することで、測定試料を調製する。続いて、測定ユニット2の検出部26は、調製された測定試料に光を照射することで、光信号を取得する。続いて、情報処理ユニット4の制御部500は、光信号を用いて、血液検体に含まれる白血球を分類するとともに、白血球の種別ごとに各血球の数をカウントする。
【0070】
ステップS105で、制御部500は、調製条件Aにより得られた光信号を用いた白血球の分類結果と、調製条件Bにより得られた光信号を用いた白血球の分類結果と、を比較する。調製条件Aによる分類結果と調製条件Bによる分類結果との比較結果が所定の範囲にある場合、調製条件Aにおいて各白血球を十分に分類できていると判定し、ステップS106の処理手順に進む。一方、比較結果が所定の範囲を超える場合、調製条件Bにおける分類結果の方が調製条件Aよりも各白血球を適切に分類出来ていると判定し、ステップS107の処理手順に進む。
【0071】
ステップS106で、制御部500は、ステップS105における比較結果に基づいて白血球の種別ごとの血球数を含む分析結果を出力する。より具体的には、制御部500は、調製条件Aにより得られた光信号に基づく各白血球のカウント数及び/又はスキャッタグラムを出力する。
【0072】
ステップS107で、制御部500は、ステップS105における比較結果に基づいて白血球数を含む分析結果を出力する。例えば、制御部500は、調製条件Aにより得られた光信号に基づく各白血球のカウント数及び/又はスキャッタグラムと、各白血球のカウント数の信頼性に関する情報とを表示部41に出力する。当該信頼性に関する情報とは、例えば、各白血球のカウント数及び/又はスキャッタグラムについては信頼性が低いことを示すフラグや文字列であってもよい。
【0073】
以上説明した、ステップS100、ステップS103及びステップS104の処理手順の各々において、制御部500は、測定試料A(又は測定試料B)から発せられた側方蛍光(SFL)及び側方散乱光信号(SSC)の2つの光信号を用いて白血球を分類する。なお、白血球の分類には、角度の異なる2種類の散乱光(つまり、前方散乱光信号(FSC)、側方散乱光信号(SSC)及び側方蛍光信号(SFL))のうち少なくとも2つの光信号を用いるようにしてもよい。
【0074】
また、制御部500は、側方蛍光(SFL)及び側方散乱光信号(SSC)の2つの光信号を異なる軸にプロットすることで得られるスキャッタグラムに基づいて、白血球の分類結果を取得する。
【0075】
また、制御部500は、側方蛍光信号(SFL)及び側方散乱光信号(SSC)を用いることで、血液検体をリンパ球、単球、好中球及び好酸球の4種類に分類した分類結果を取得する。
【0076】
なお、制御部500は、前方散乱光信号(FSC)、側方散乱光信号(SSC)及び側方蛍光信号(SFL)の全てを用いることで、血液検体を、リンパ球、単球、好中球、好塩基球及び好酸球の5種類に分類した分類結果を取得することとしてもよい。
【0077】
以上説明したステップS103の処理手順における調製条件A、測定試料、光信号を、それぞれ、第1の調製条件、第1の測定試料及び第1の光信号と呼ぶ。また、ステップS104の処理手順における調製条件B、測定試料、光信号を、それぞれ、第2の調製条件、第2の測定試料及び第2の光信号と呼ぶ。また、ステップS100の処理手順における調製条件A、測定試料、光信号を、それぞれ、第3の調製条件、第3の測定試料及び第3の光信号と呼ぶ。
【0078】
また、他の例として、ステップS100の処理手順における調製条件A、測定試料、光信号を、それぞれ、第1の調製条件、第1の測定試料及び第1の光信号と呼ぶ。また、ステップS104の処理手順における調製条件B、測定試料、光信号を、それぞれ、第2の調製条件、第2の測定試料及び第2の光信号と呼ぶ。
【0079】
上記の実施形態においては、調製条件Aによる試料の調製、光信号測定および分類を、ステップS100およびステップS103において実行する。これにより、ステップS100における試料の調製から、ステップS103における試料の調製までに長時間が経過した場合であっても、ステップS104において調製条件Bによって調製される試料と近い状態の試料を用いて、調製条件Aによる試料の調製がなされる。従って、ステップS106又はステップS107において出力する分析結果の精度を高めることができる。
【0080】
(分析装置の動作に関する変形例1)
制御部500は、ステップS107の処理手順において、調製条件Bにより得られた光信号に基づく各白血球のカウント数及び/又はスキャッタグラムを出力する。
【0081】
(分析装置の動作に関する変形例2)
制御部500は、
図9に示す処理手順のうち、ステップS103及びステップS105の処理手順を省略するようにしてもよい。すなわち、制御部500は、調製条件Aにより得られた光信号を用いた白血球の分類能を評価した評価結果が所定の条件を満たすとき、ステップS103の処理手順を実行せずに、ステップS104の処理手順を実行する。また、制御部500は、ステップS104の処理手順で取得した、調製条件Bにより得られた光信号を用いて、血液検体に含まれる白血球を分類するとともに、各血球の数をカウントし、各白血球のカウント数及び/又はスキャッタグラムを表示部41に出力する。
【0082】
変形例2において、ステップS100の処理手順における調製条件A、測定試料、光信号を、それぞれ、第1の調製条件、第1の測定試料及び第1の光信号と呼ぶ。また、ステップS104の処理手順における調製条件B、測定試料、光信号を、それぞれ、第2の調製条件、第2の測定試料及び第2の光信号と呼ぶ。
【0083】
(分析装置の動作に関する変形例3)
制御部500は、入力部42を介して、血液検体を標準モードではなく拡張モードで測定するとの測定指示をユーザから受け付ける。この場合、制御部500は、当該測定指示を受けた場合、
図9に示す処理手順のうち、ステップS100~ステップS102の処理手順を省略する(つまり、標準モードを省略する)。
【0084】
(分析装置の動作に関する変形例4)
制御部500は、以上説明した変形例1と変形例3とを組み合わせた処理を行う。すなわち、制御部500は、血液検体を標準モードではなく拡張モードで測定するとの測定指示をユーザから受け付けた場合、
図9に示す処理手順のうち、ステップS100~ステップS102の処理手順を省略する(つまり、標準モードを省略する)。また、ステップS107の処理手順において、調製条件Bにより得られた光信号に基づく各白血球のカウント数及び/又はスキャッタグラムを出力する。
【0085】
<調製条件A及び調製条件Bの例>
調製条件Bは、血液検体に試薬を反応させる時間を、調製条件Aよりも延長した条件である。なお、調製条件Bは、血液検体に試薬を反応させる際の温度を、調製条件Aよりも高くした条件であってもよい。また、調製条件Bは、血液検体と試薬の混合比率について、試薬の割合を調製条件Aよりも高めた条件であってもよい。
【0086】
<白血球の分類結果を判定又は分析する処理の具体例>
通常モードから拡張モードへ移行するか否かを判定する処理において、各白血球を十分に分類できているか否かを判定する処理(S102)と、拡張モードにおいて、調製条件Aにおける白血球の分類結果と、調製条件Bにおける白血球の分類結果とを比較して分析結果を出力する処理(S105~S107)について具体的に説明する。
【0087】
(パターンA)
パターンAは、スキャッタグラムに存在する複数のクラスタのうちいずれか1つのクラスタに属する細胞の数を用いて、各白血球の分類結果を判定又は比較する方法である。
【0088】
[通常モードから拡張モードへの移行要否を判定する処理]
制御部500は、白血球を分類した結果、いずれか1つのクラスタに属する白血球のカウント数が所定の値(例えば0)又は所定の値以下(例えば5や10など)である場合、各白血球が十分に分類できていない可能性があると判定(すなわち、分類能が所定の条件を満たすと判定)する。一方、全ての白血球のカウント数が所定の値(例えば0)ではない又は所定の値以上である場合、各白血球が十分に分類できていると判定(すなわち、分類能が所定の条件を満たさないと判定)する。
【0089】
一例として、光信号として側方蛍光信号(SFL)及び側方散乱光信号(SSC)を用いて、白血球を好中球、リンパ球、単球および好酸球の4種類の白血球に分類した結果、好酸球のカウント数が所定の値(例えば0)であった場合、各白血球を十分に分類できていないと判定する。
【0090】
[調製条件A及び調製条件Bの分類結果を比較する処理]
制御部500は、調製条件Aにより得られたスキャッタグラムに含まれる複数のクラスタのうちいずれか1つのクラスタに属する細胞の数と、調製条件Bにより得られたスキャッタグラムに含まれる複数のクラスタのうちいずれか1つのクラスタに属する細胞の数との比較結果に基づいて、白血球数を含む分析結果を出力する。
【0091】
より詳細には、制御部500は、調製条件Aにより得られたスキャッタグラムに含まれる複数のクラスタのうちいずれか1つのクラスタに属する白血球の数と、調製条件Bにより得られたスキャッタグラムに含まれる複数のクラスタのうちいずれか1つのクラスタに属する白血球の数との差が所定の範囲内である場合、調製条件Aにおいて各白血球を十分に分類できていると判定し、ステップS106の処理手順に進む。一方、当該差が所定の範囲を超える場合、調製条件Bにおける分類結果の方が調製条件Aよりも各白血球を適切に分類出来ていると判定し、ステップS107の処理手順に進む。
【0092】
図10は、調製条件Aによる分類結果と調製条件Bによる分類結果の一例を示す図である。
図10の例では、調製条件Aの分類結果には好酸球クラスタが存在しない(好酸球の数は0個)が、調製条件Bの分類結果には好酸球クラスタ(好酸球の数は100個以上)が存在している。従って、制御部500は、調製条件Bにおける分類結果の方が調製条件Aよりも白血球を適切に分類出来ていると判定する。
【0093】
(パターンB)
パターンBは、スキャッタグラムに存在するクラスタ数を用いて、各白血球の分類結果を判定又は比較する方法である。
【0094】
[通常モードから拡張モードへの移行要否を判定する処理]
制御部500は、白血球を分類した結果、スキャッタグラムに存在するクラスタ数が所定の値以下である場合、各白血球が十分に分類できていない可能性があると判定(すなわち、分類能が所定の条件を満たすと判定)する。一方、クラスタ数が所定の値である場合、各白血球が十分に分類できていると判定(すなわち、分類能が所定の条件を満たさないと判定)する。所定の値は、スキャッタグラムの種類によって予め定められている。例えば、側方蛍光信号(SFL)をY軸とし、側方散乱光信号(SSC)をX軸とするスキャッタグラムの場合、所定の値は4種類(好中球、リンパ球、単球および好酸球)である。
【0095】
[調製条件A及び調製条件Bにおける白血球の分類結果を比較する処理]
制御部500は、調製条件Aにより得られたスキャッタグラムに存在するクラスタ数と、調製条件Bにより得られたスキャッタグラムに存在するクラスタ数との比較結果に基づいて、白血球数を含む分析結果を出力する。
【0096】
より詳細には、制御部500は、調製条件Aにより得られたスキャッタグラムに存在するクラスタ数と、調製条件Bにより得られたスキャッタグラムに存在するクラスタ数との差が所定の範囲内(例えば、差が0)である場合、調製条件Aにおいて各白血球を十分に分類できていると判定し、ステップS106の処理手順に進む。一方、当該差が所定の範囲を超える場合(例えば、差が1以上)、調製条件Bにおける分類結果の方が調製条件Aよりも各白血球を適切に分類出来ていると判定し、ステップS107の処理手順に進む。
【0097】
図10の例では、調製条件Aの分類結果には3つのクラスタしか存在しないが、調製条件Bの分類結果には4つのクラスタが存在している。従って、制御部500は、調製条件Bにおける分類結果の方が調製条件Aよりも白血球を適切に分類出来ていると判定する。
【0098】
(パターンC)
パターンCは、スキャッタグラムに含まれる2つのクラスタ間の距離を用いて、各白血球の分類結果を判定又は比較する方法である。
【0099】
[通常モードから拡張モードへの移行要否を判定する処理]
制御部500は、白血球を分類した結果、スキャッタグラムに存在する2つのクラスタ間の距離が所定の値以下である場合、各白血球が十分に分類できていない可能性があると判定(すなわち、分類能が所定の条件を満たすと判定)する。一方、2つのクラスタ間の距離が所定の値を超える場合、各白血球が十分に分類できていると判定(すなわち、分類能が所定の条件を満たさないと判定)する。
【0100】
一例として、制御部500は、好中球のクラスタと、単球のクラスタとの間の距離が所定の値以下であった場合、各白血球が十分に分類できていないと判定する。
【0101】
[調製条件A及び調製条件Bにおける白血球の分類結果を比較する処理]
制御部500は、調製条件Aにより得られたスキャッタグラムに含まれる2つのクラスタ間の距離と、調製条件Bにより得られたスキャッタグラムに含まれる2つのクラスタ間の距離との比較結果に基づいて、白血球数を含む分析結果を出力する。
【0102】
より詳細には、制御部500は、調製条件Aにより得られたスキャッタグラムに含まれる所定の2つのクラスタ間の距離と、調製条件Bにより得られたスキャッタグラムに含まれる当該所定の2つのクラスタ間の距離との差が所定の範囲内(例えば10チャネル以内等)である場合、調製条件Aにおいて各白血球を十分に分類できていると判定し、ステップS106の処理手順に進む。一方、当該差が所定の範囲を超える場合(例えば10チャネルを超える場合等)、調製条件Bにおける分類結果の方が調製条件Aよりも各白血球を適切に分類出来ていると判定し、ステップS107の処理手順に進む。
【0103】
図11の例では、調製条件Aの分類結果では、好中球クラスタと好酸球クラスタとの間の距離は25チャンネルであるが、調製条件Bの分類結果では、好中球クラスタと好酸球クラスタとの間の距離は50チャンネルである。この場合、クラスタ間距離の差は25チャンネルであり、所定の範囲(10チャネル)を超えている。従って、制御部500は、調製条件Bにおける分類結果の方が調製条件Aよりも白血球を適切に分類出来ていると判定する。
【0104】
なお、クラスタ間の距離は、クラスタに属する各血球位置のX軸の平均値を比較した距離であってもよい。ここで、クラスタに属する各血球位置のX軸の平均値は、各血球のX軸の値(チャンネルの値)の合計値を、血球数で除算することで算出することができる。例えば
図7に示すように、X=0~2及びY=0~3の領域で囲まれたクラスタが存在すると仮定した場合、X軸の平均値は、((3+6)×1+(1+10+8)×2)÷(3+6+1+10+8)≒1.68になる。これに限定されず、クラスタ間の距離は、クラスタに属する各血球位置のY軸の平均値を比較した距離であってもよい。
【0105】
パターンCにおいて、距離を比較する2つのクラスタは、スキャッタグラムの種類によって予め定められていてもよい。例えば、側方蛍光信号(SFL)をY軸とし、側方散乱光信号(SSC)をX軸とするスキャッタグラムの場合、リンパ球クラスタと単球クラスタとの間の距離を比較するように定められていてもよいし、単球クラスタと好中球クラスタとの間の距離を比較するように定められていてもよいし、好中球クラスタと好酸球クラスタとの間の距離を比較するように定められていてもよい。
【0106】
(パターンD)
パターンDは、スキャッタグラムに存在する2つのクラスタの境界が接している度合いを用いて、各白血球の分類結果を判定又は比較する方法である。
【0107】
[通常モードから拡張モードへの移行要否を判定する処理]
制御部500は、白血球を分類した結果、スキャッタグラムに存在する2つのクラスタの境界が接している度合いが所定の値以下である場合、各白血球が十分に分類できていない可能性があると判定(すなわち、分類能が所定の条件を満たすと判定)する。一方、2つのクラスタの境界が接している度合いが所定の値を超える場合、各白血球が十分に分類できていると判定(すなわち、分類能が所定の条件を満たさないと判定)する。
【0108】
[調製条件A及び調製条件Bの分類結果を比較する処理]
制御部500は、調製条件Aにより得られたスキャッタグラムに含まれる2つクラスタの境界が接している度合いと、調製条件Bにより得られたスキャッタグラムに含まれる2つクラスタの境界が接している度合いとの比較結果に基づいて、白血球数を含む分析結果を出力する。
【0109】
より詳細には、制御部500は、調製条件Aにより得られたスキャッタグラムに含まれる2つクラスタの境界が接している度合いと、調製条件Bにより得られたスキャッタグラムに含まれる2つクラスタの境界が接している度合いとの差が所定の範囲内である場合、調製条件Aにおいて各白血球を十分に分類できていると判定し、ステップS106の処理手順に進む。一方、当該差が所定の範囲を超える場合、調製条件Bにおける分類結果の方が調製条件Aよりも各白血球を適切に分類出来ていると判定し、ステップS107の処理手順に進む。
【0110】
図12は、調製条件Aによる分類結果と調製条件Bによる分類結果の一例を示す図である。
図12の例では、調製条件Aの分類結果では好中球クラスタと好酸球クラスタが接触しているが、調製条件Bの分類結果では好中球クラスタと好酸球クラスタは接触していない。従って、制御部500は、調製条件Bにおける分類結果の方が調製条件Aよりも白血球を適切に分類出来ていると判定する。
【0111】
図13は、2つクラスタの境界が接している度合いの算出例を説明するための図である。
図13は、スキャッタグラムの中で、好中球クラスタと好酸球クラスタが接しているエリアを拡大した図である。縦方向は側方蛍光信号(SFL)の軸(Y軸)であり、横方向は側方散乱光信号(SSC)の軸(X軸)である。
【0112】
2つクラスタの境界が接している度合いは、2つのクラスタのうちいずれか一方のクラスタ境界上の各座標の周囲に存在する座標の中で、もう一方のクラスタに属する血球が存在する座標の数をカウントした値である。例えば
図13(a)の場合、A4の座標の周囲8つの座標のうち、好中球が存在する座標は、A4の座標の左上の座標1つである。同様に、A8の座標の周囲8つの座標のうち、好中球が存在する座標は、A8の座標の左、左上及び上の座標の3つである。このようにカウントすると、
図13(a)の場合、好中球クラスタと好酸球クラスタの境界が接している度合いは、「9」になる。
図13(b)の場合、好中球クラスタと好酸球クラスタの境界が接している度合いは、「1」になる。
【0113】
なお、
図13の例では、好酸球クラスタの周囲の座標のうち好中球が存在する座標をカウントしたが、好中球クラスタを基準に座標の数をカウントする。例えば、好中球クラスタの境界上の座標の周囲に存在する座標の中で、好酸球が存在する座標の数をカウントする。
【0114】
パターンDにおいて、接している度合いを比較する2つのクラスタ間は、スキャッタグラムの種類によって予め定められていてもよい。例えば、側方蛍光信号(SFL)をY軸とし、側方散乱光信号(SSC)をX軸とするスキャッタグラムの場合、リンパ球クラスタと単球クラスタとが接している度合いを比較してもよいし、単球クラスタと好中球クラスタとが接している度合いを比較してもよいし、好中球クラスタと好酸球クラスタとが接している度合いを比較してもよい。
【0115】
(パターンE)
パターンEは、スキャッタグラムに存在するクラスタにおける血球の分布形状を用いて、各白血球の分類結果を判定又は比較する方法である。
【0116】
[通常モードから拡張モードへの移行要否を判定する処理]
制御部500は、白血球を分類した結果、スキャッタグラムに存在する少なくとも1つのクラスタのX軸又はY軸における血球の分布形状が所定の条件に合致する場合、各白血球が十分に分類できていない可能性があると判定(すなわち、分類能が所定の条件を満たすと判定)する。一方、スキャッタグラムに存在する少なくとも1つのクラスタのX軸又はY軸における血球の分布形状が所定の条件に合致しない場合、各白血球が十分に分類できていると判定(すなわち、分類能が所定の条件を満たさないと判定)する。
【0117】
所定の条件は、X軸における各チャネルに存在する血球数をヒストグラムで表した際に、2以上の峰が存在することであってもよい。ここで、X軸における各チャネルに存在する血球数の算出方法を、
図7を用いて説明する。例えば、X=0~2及びY=0~3の領域で囲まれたクラスタが存在すると仮定する。この場合、X=0、1、2の各チャネルにおける血球数は、それぞれ、0、9、19になる。
【0118】
[調製条件A及び調製条件Bの分類結果を比較する処理]
制御部500は、調製条件Aにより得られたスキャッタグラムに存在する所定のクラスタのX軸又はY軸における血球の分布形状と、調製条件Bにより得られたスキャッタグラムに存在する当該所定のクラスタのX軸又はY軸における血球の分布形状との比較結果に基づいて、白血球数を含む分析結果を出力する。
【0119】
より詳細には、制御部500は、調製条件Aにより得られたスキャッタグラムに存在する所定のクラスタのX軸又はY軸における血球の分布形状に含まれる峰の数と、調製条件Bにより得られたスキャッタグラムに存在する所定のクラスタのX軸又はY軸における血球の分布形状に含まれる峰の数とが同一であるか、又は、調製条件Aよりも調製条件Bの方が峰の数が多い場合、調製条件Aにおいて各白血球を十分に分類できていると判定し、ステップS106の処理手順に進む。一方、峰の数が減り、かつ、クラスタ数が増加した場合、調製条件Bにおける分類結果の方が調製条件Aよりも各白血球を適切に分類出来ていると判定し、ステップS107の処理手順に進む。
【0120】
峰の数の判定に用いる所定のクラスタは、リンパ球クラスタ、単球クラスタ、好中球クラスタ、好酸球クラスタ、好塩基球クラスタのうち任意のクラスタであってもよいし、いずれか1つのクラスタ(例えば好中球クラスタ)が予め定められていてもよい。
【0121】
図14は、調製条件Aによる分類結果と調製条件Bによる分類結果の一例を示す図である。
図14(a)の例では、調製条件Aの場合、好中球クラスタには2つの峰が存在するが、調製条件Bの場合、好中球クラスタには1つの峰しか存在しない。また、クラスタ数は、調製条件Aでは3つであるが、調製条件Bでは4つである。従って、制御部500は、調製条件Bにおける分類結果の方が調製条件Aよりも白血球を適切に分類出来ていると判定する。
【0122】
(パターンF)
パターンFは、スキャッタグラムに存在するクラスタ数と、境界粒子数とを用いて、各白血球の分類結果を判定又は比較する方法である。
【0123】
[調製条件A及び調製条件Bの分類結果を比較する処理]
制御部500は、調製条件Aにより得られたスキャッタグラムに存在するクラスタ数と、所定のクラスタにおける境界粒子数と、調製条件Bにより得られたスキャッタグラムに存在するクラスタ数と、当該所定のクラスタにおける境界粒子数との比較結果に基づいて、白血球数を含む分析結果を出力する。
【0124】
より詳細には、制御部500は、調製条件Aにより得られたスキャッタグラムに存在するクラスタ数と、調製条件Bにより得られたスキャッタグラムに存在するクラスタ数とが異なる場合、若しくは、調製条件Bにおける所定のクラスタにおける境界粒子数が、調製条件Aにおける所定のクラスタにおける境界粒子数よりも多い又は同一である場合、調製条件Aにおいて各白血球を十分に分類できていると判定し、ステップS106の処理手順に進む。
【0125】
一方、制御部500は、調製条件Aにより得られたスキャッタグラムに存在するクラスタ数と、調製条件Bにより得られたスキャッタグラムに存在するクラスタ数とが同一であり、かつ、調製条件Bにおける所定のクラスタにおける境界粒子数が、調製条件Aにおける所定のクラスタにおける境界粒子数よりも少ない場合、調製条件Bにおける分類結果の方が調製条件Aよりも各白血球を適切に分類出来ていると判定し、ステップS107の処理手順に進む。
【0126】
なお、パターンFにおける「所定のクラスタにおける境界粒子数」とは、所定のクラスタ内の境界部分に、所定のクラスタとは異なる種別の血球が存在する数を意味する。具体的には、側方蛍光信号(SFL)及び側方散乱光信号(SSC)を用いるスキャッタグラムにおいて、例えば好中球クラスタのうち右側境界部分に存在する血球の中に、前方散乱光信号(FSC)を考慮することで好酸球に分類できる血球が存在する場合がある。このような場合に、好酸球に分類できる血球の数をカウントした数が、「所定のクラスタにおける境界粒子数」に該当する。
【0127】
パターンFにおいて、境界粒子数が減ったのにも関わらず調製条件Bにおける分類結果の方が適切であると判定している理由は、調製条件Aにより得られたカウント数に誤りがある(例えば、好中球なのにも関わらず好酸球とカウントされてしまった)と考えられるためである。
【0128】
(パターンG)
パターンGは、スキャッタグラムに存在する所定のクラスタの幅とクラスタ数とを用いて、各白血球の分類結果を判定又は比較する方法である。
【0129】
[調製条件A及び調製条件Bの分類結果を比較する処理]
制御部500は、調製条件Aにより得られたスキャッタグラムに存在する所定のクラスタの幅及びクラスタ数と、調製条件Bにより得られたスキャッタグラムに存在する所定のクラスタの幅及びクラスタ数との比較結果に基づいて、白血球数を含む分析結果を出力する。
【0130】
より詳細には、制御部500は、調製条件Bにより得られたスキャッタグラムに存在する所定のクラスタの幅が、調製条件Aにより得られたスキャッタグラムに存在する所定のクラスタの幅よりも長い又は同一であるか、若しくは、調製条件Bにおけるクラスタ数が、調製条件Aにおけるクラスタ数よりも少ない又は同一である場合、調製条件Aにおいて各白血球を十分に分類できていると判定し、ステップS106の処理手順に進む。
【0131】
制御部500は、調製条件Bにより得られたスキャッタグラムに存在する所定のクラスタの幅が、調製条件Aにより得られたスキャッタグラムに存在する所定のクラスタの幅よりも短くなっており、かつ、調製条件Bにおけるクラスタ数が、調製条件Aにおけるクラスタ数よりも多い場合、調製条件Bにおける分類結果の方が調製条件Aよりも各白血球を適切に分類出来ていると判定し、ステップS107の処理手順に進む。
【0132】
図16は、調製条件Aによる分類結果と調製条件Bによる分類結果の一例を示す図である。
図16の例では、調製条件Aにおける好中球クラスタの幅は50チャネルであるが、調製条件Bにおける好中球クラスタの幅は40チャネルである。また、調製条件Aにおけるクラスタ数は3つであるが、調製条件Bにおけるクラスタ数は4つである。従って、制御部500は、調製条件Bにおける分類結果の方が調製条件Aよりも白血球を適切に分類出来ていると判定する。
【0133】
なお、クラスタの幅はX軸における幅であってもよいし、Y軸における幅であってもよい。また、クラスタの幅は、X軸(又はY軸)における各チャネルに存在する血球数が所定の数以上であるチャネルの幅であってもよい。
【0134】
以上説明した調製条件Aにおけるスキャッタグラム及び調製条件Bにおけるスキャッタグラムを、それぞれ、第1の分布図及び第2の分布図と呼ぶ。
【0135】
また、ステップS105の処理手順において、調製条件Aにより得られた光信号を用いた白血球の分類結果は、「調製条件Aにおけるスキャッタグラムに含まれる複数のクラスタのうちいずれか1つのクラスタに属する白血球の数」、「調製条件Aにおけるスキャッタグラムに含まれる複数のクラスタの数」、「調製条件Aにおけるスキャッタグラムに含まれる2つのクラスタ間の距離」、「調製条件Aにおけるスキャッタグラムに含まれる2つのクラスタの境界が接している度合い」、及び、「調製条件Aにおけるスキャッタグラムに含まれる複数のクラスタのうち所定クラスタの幅」のうち少なくともいずれか1つであると表現されてもよい。
【0136】
また、ステップS105の処理手順において、調製条件Bにより得られた光信号を用いた白血球の分類結果は、「調製条件Bにおけるスキャッタグラムに含まれる複数のクラスタのうちいずれか1つのクラスタに属する白血球の数」、「調製条件Bにおけるスキャッタグラムに含まれる複数のクラスタの数」、「調製条件Bにおけるスキャッタグラムに含まれる2つのクラスタ間の距離」、「調製条件Bにおけるスキャッタグラムに含まれる2つのクラスタの境界が接している度合い」、及び、「調製条件Bにおけるスキャッタグラムに含まれる複数のクラスタのうち所定クラスタの幅」のうち少なくともいずれか1つであると表現されてもよい。
【0137】
また、ステップS105の処理手順において、調製条件Aによる分類結果と調製条件Bによる分類結果との比較結果は、「調製条件Aにおけるスキャッタグラムに含まれる複数のクラスタのうちいずれか1つのクラスタに属する白血球の数と、調製条件Bにおけるスキャッタグラムに含まれる複数のクラスタのうちいずれか1つのクラスタに属する白血球の数との比較結果」、「調製条件Aにおけるスキャッタグラムに含まれる複数のクラスタの数と、調製条件Bにおけるスキャッタグラムに含まれる複数のクラスタの数との比較結果」、「調製条件Aにおけるスキャッタグラムに含まれる2つのクラスタ間の距離と、調製条件Bにおけるスキャッタグラムに含まれる2つのクラスタ間の距離との比較結果」、「調製条件Aにおけるスキャッタグラムに含まれる2つのクラスタの境界が接している度合いと、調製条件Bにおけるスキャッタグラムに含まれる2つのクラスタの境界が接している度合いとの比較結果」、および、「調製条件Aにおけるスキャッタグラムに含まれる複数のクラスタのうち所定クラスタの幅と、調製条件Bにおけるスキャッタグラムに含まれる複数のクラスタのうち所定クラスタの幅との比較結果」のうち少なくとも1つであると表現されてもよい。
【0138】
<まとめ>
以上説明した実施形態によれば、標準モードにおいて、調製条件Aに基づいて調製した血液検体を測定し、通常モードにおいて白血球の分類が十分にできていない可能性があると判定した場合、拡張モードに移行し、調製条件Aに基づいて調製した血液検体と、調製条件Bに基づいて調製した血液検体の両方について、白血球の分類を行うようにした。また、両方の分類結果を比較し、比較結果を含む分析結果を出力するようにした。これにより、検体の性質によって精度が不十分な分析結果が出力されてしまうことを抑止することが可能になる。
【0139】
以上説明した実施形態は、2種類の調製条件で好中球および好酸球を分類する例を示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、側方蛍光信号(SFL)及び側方散乱光信号(SSC)を用いて、好中球および単球を分類する例に適用してもよい。この場合、
図13に示すステップS103の調製条件における検体と試薬との反応時間より、ステップS104の調製条件における検体と試薬との反応時間を短くするとよい。同様に、ステップS103の調製条件における反応温度より、ステップS104の調製条件における反応温度を低くしてもよいし、ステップS103の調製条件における試薬の混合比率より、ステップS104の調製条件における試薬の混合比率を低くしてもよい。
【0140】
また、血球の分類に用いる光信号の種類は限定されず、上記説明した組み合わせ以外の2種類を組み合わせてもよいし、3種類以上の光信号を組み合わせてもよいし、1種類の光信号を用いてもよい。
【0141】
また、2種類の調製条件によって分類される細胞の種類も、白血球に限定されず、赤血球、血小板、又はその他の血球であってもよい。
【0142】
以上説明した実施形態は、血液検体の分析に限定されず、血液以外の様々な体液や尿の分析にも適用することができる。この場合、上記の説明において、「白血球」の文言を「細胞」の文言に置き換えるようにしてもよい。また、例えば尿を分析する、分析装置1は、尿に含まれる赤血球、白血球、上皮細胞、扁平上皮細胞、円柱及び細菌を分類し、各々の数をカウントするようにしてもよい。
【0143】
以上説明した実施形態は、光を第1の測定試料および第2の測定試料に照射し、光信号を取得する形態に限定されず、例えば、第1の測定試料および第2の測定試料が、電圧を印加した細孔を追加する際に生じる電気信号を取得し、取得した電気信号を用いて細胞を分類する細胞分析装置に本発明を適用してもよい。この場合、上記の説明において、「第1の光信号」を「第1の信号」と称し、「第2の光信号」を「第2の信号」と称し、「第3の光信号」を「第3の信号」と称してもよい。
【0144】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。実施形態で説明したフローチャート、シーケンス、実施形態が備える各要素並びにその配置、材料、条件、形状及びサイズ等は、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、異なる実施形態で示した構成同士を部分的に置換し又は組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0145】
1…分析装置、2…測定ユニット、3…搬送ユニット、4…情報処理ユニット、5…ホストコンピュータ、21…ハンド部、22…検体容器セット部、23…バーコードユニット、24…検体吸引部、24a…ピアサ、25…試料調製部、26…検出部、40…本体、41…表示部、42…入力部、401…CPU、404…ハードディスク、404a…プログラム、405…読出装置、405a…記録媒体、406…画像出力インターフェース、407…入出力インターフェース、408…通信インターフェース、500…制御部、501…測定制御部、502…解析処理部、503…表示制御部、504…入力処理部、505…記憶部