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  • 特許-回転シリンダ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-28
(45)【発行日】2023-10-06
(54)【発明の名称】回転シリンダ
(51)【国際特許分類】
   F15B 15/14 20060101AFI20230929BHJP
   B23B 31/30 20060101ALI20230929BHJP
   B23B 31/00 20060101ALI20230929BHJP
【FI】
F15B15/14 380A
B23B31/30 Z
B23B31/00 C
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019027693
(22)【出願日】2019-02-19
(65)【公開番号】P2020133749
(43)【公開日】2020-08-31
【審査請求日】2022-02-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000154901
【氏名又は名称】株式会社北川鉄工所
(72)【発明者】
【氏名】磯久 聡
(72)【発明者】
【氏名】大塚 誠
【審査官】北村 一
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-271610(JP,A)
【文献】特開平08-210574(JP,A)
【文献】特開平05-001792(JP,A)
【文献】実開平04-005587(JP,U)
【文献】特開平08-267339(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F15B 15/00-15/28
B23B 31/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転体であるシリンダ本体と、
前記シリンダ本体内で軸方向に摺動可能に嵌挿されたピストンと、
固定体であり、内部で前記シリンダ本体を回転可能に支持する回転支持体と、
前記回転支持体に固定され、前記シリンダ本体の一端側を覆うカバーと、
を備え、
前記シリンダ本体の中心には、軸方向に延在する流体供給路が穿設されている、回転シリンダであって、
流体を固定体側から回転体側に供給するロータリージョイントを内蔵し
前記ロータリージョイントは、固定側部材と回転側部材とを備え、
固定側部材は、前記カバーの他端側に嵌合され、
回転側部材は、前記シリンダ本体の一端側の前記流体供給路に前記固定側部材に対向して嵌合され、
前記カバーは、前記固定側部材の一端側に流体溜まり室が設けられ、且つ、一端が前記流体溜まり室に開口するとともに他端が前記カバーの外周面に開口する供給流路が設けられ、
前記カバーが前記シリンダ本体の一端側を覆う近傍には、漏れた流体を回収するドレイン室が設けられ、
前記ドレイン室に一端が開口するとともに他端が前記カバーの外周面に開口するドレイン流路が設けられている、
回転シリンダ。
【請求項2】
請求項1に記載の回転シリンダであって、
前記固定側部材は、付勢手段によって常時、回転側部材側に付勢されており、
前記固定側部材と回転側部材は、回転時または非回転時のどちらか一方においても、常時、接した状態で設けられている、回転シリンダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転シリンダに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、中実回転シリンダから図示しないチャックなどに流体を供給する場合、ワークを挿入可能な孔サイズ程(所謂中空回転シリンダ)ではなく、シリンダ中央部に流体を供給させる程度の孔サイズを有する流通経路(特許文献1図1参照)が設けられている。それによって、シリンダの一端(後側)から他端(前側)に流体を流通させることができ、その流体を図示しないチャックなどに供給することができる。
また、そのような中実回転シリンダには、図3に示す、ピストン3の中心に空圧を供給する注空専用の回転シリンダ1がある。この回転シリンダ1は、主にシリンダ本体2と、シリンダ本体2内で軸方向に移動可能なピストン3と、シリンダ本体2を回転可能に支持するスリーブ7と、スリーブ7の一端(後側)に固定され、シリンダ本体2に空圧を供給させるための流路Aが内部に穿設されたスリーブカバー8とで構成されている。これによって、回転シリンダ1は、外部から供給される空圧をスリーブカバー8に接続し、その接続箇所からスリーブカバー8の内部に穿設された流路Aを経由し、エア溜まり部5に空圧を供給し、それによって、シリンダ本体2の流路Cに空圧が供給されることで、ピストンロッド3の中心に空圧を供給することができる構成となっている。
また、中実回転シリンダには、図4に示す、ピストン3の中心に油圧を供給する注油専用の回転シリンダ1もある。この回転シリンダ1は、主にシリンダ本体2と、シリンダ本体2内で軸方向に移動可能なピストン3と、シリンダ本体2を回転可能に支持するスリーブ7と、スリーブ7の一端(後側)に固定され、シリンダ本体2に油圧を供給させるための流路Bが内部に穿設されたスリーブカバー8とで構成されている。このような回転シリンダ1は、外部から供給される油圧をスリーブカバー8に接続し、その接続箇所からスリーブカバー8の内部に穿設された流路Bを経由し、油溜まり部6に油圧を供給し、それによって、シリンダ本体2の流路Cに油圧が供給されることで、ピストン3の中心に油圧を供給することができる構成となっている。また、注油用の場合、内部からの油の漏れを防ぐためにメカニカルシール9がシリンダ本体2の一端側(後側)の外周に設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開昭62-271610号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の回転シリンダは、注空用または注油用と専用の形態になされているため、ラインナップが多くなる。また、回転シリンダ全体で捉えた場合、部品点数が多くなり、組立作業工程も多工程となる。さらに、管理や保管などにも影響をきたす。
また、注油用の場合、メカニカルシールによって、軸方向の長さが長尺化する。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、部品を集約化し、それによってラインナップや部品点数を削減し、また、組立作業も簡素化することができる回転シリンダを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
回転体であるシリンダ本体と、前記シリンダ本体内で軸方向に摺動可能に嵌挿されたピストンと、固定体であり、内部で前記シリンダ本体を回転可能に支持する回転支持体と、前記回転支持体に固定され、前記シリンダ本体の一端側を覆うカバーと、を備え、前記シリンダ本体の中心には、軸方向に延在する流体供給路が穿設されている、回転シリンダであって、流体を固定体側から回転体側に供給するロータリージョイントを備え、前記ロータリージョイントは、固定側部材と回転側部材とを備え、固定側部材は、前記カバーに嵌合され、回転側部材は、前記シリンダ本体の一端側に前記固定側部材に対向して嵌合され、前記カバーは、前記固定側部材の一端側に流体溜まり室が設けられ、且つ、一端が前記流体溜まり室に開口するとともに他端が前記カバーの外周面に開口する供給流路が設けられている、回転シリンダが提供される。
【0007】
本発明に係る回転シリンダでは、空圧または油圧のどちらか一方の流体を1つのロータリージョイントで回転体側に供給できるため、注空用、注油用の各々専用のラインナップを設ける必要がなくなり、ラインナップ数を削減することができる。また部品点数も削減でき、組立作業も簡素化することができるという有利な効果を奏する。
【0008】
好ましくは、前記固定側部材は、弾性体によって常時、回転側部材側に付勢されており、前記固定側部材と回転側部材は、回転時または非回転時においても、常時、接した状態で設けられている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、部品を集約化し、それによってラインナップや部品点数を削減し、また、組立作業も簡素化することができる回転シリンダを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】ピストンが前進端の位置にある回転シリンダの断面図。
図2】ピストンが後退端の位置にある回転シリンダの断面図。
図3】従来の回転シリンダの断面図。
図4】従来の回転シリンダの断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の回転シリンダの好適な実施形態について、図面を用いて具体的に説明する。また、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではないし、本発明の効果を奏する範囲を逸脱しない範囲で、適宜変更は可能である。尚、以下において、説明の便宜上、紙面右側を前、紙面左側を後と呼ぶことがある。また、前側を他端側、後側と一端側と呼ぶことがある。
【0012】
(全体構成)
以下、回転シリンダ100の全体構成を説明する。図1及び図2は、それぞれ回転シリンダ100の断面図であり、図1は、ピストン20の前進端状態を示し、図2は、ピストン20の後退端状態を示している。
本実施形態の回転シリンダ100は、旋盤等の工作機械に取り付けられたチャック(図示せず)と一体に回転し、チャックによるワークの把握又は把握解除の用途に主に使用される。図1及び図2に示されるように、回転シリンダ100は、シリンダ本体10と、ピストン20と、回転支持体60と、ロータリージョイント70と、カバー80などを備えている。
【0013】
シリンダ本体10は、回転体であって、シリンダカバー11と回転バルブ12などで構成されており、シリンダカバー11は、回転バルブ12にボルトで固定されている。
シリンダカバー11は、その内部に油圧空間Rを有する有底円筒状部材となっており、シリンダカバー11の開放端は、回転バルブ12により閉塞されている。油圧空間Rには、ピストン20が軸線Lに平行な方向(以下、軸方向という場合がある)にスライド可能な状態で収容されている。
【0014】
ピストン20は、間仕切り板部21とロッド部22とで構成され、間仕切り板部21は、円柱状の部材からなり、油圧空間Rを第1油圧空間と第2油圧空間とに仕切っている。ロッド部21は、間仕切り板部21の前側中心部から略円柱状に軸方向に延在して一体に設けられている。油圧空間Rから外部に露出する部分には、ロッド部21の先端が常時、突出した状態で設けられている。
【0015】
このため、図2の状態において、油圧空間Rにおける、間仕切り板部21(ピストン20)よりも左側に位置する部分(第2油圧空間)の油圧を高くすると、ピストン20が右側にスライドし、図1に示すようにロッド部21が大きく突出した状態となる。その一方で図1の状態において、油圧空間Rにおける、間仕切り板部21(ピストン20)よりも右側に位置する部分(第1油圧空間)の油圧を高くすると、ピストン20が左側にスライドし、図2に示すようにロッド部21の突出量が小さくなる。油圧空間Rの油圧は、図示省略の油圧制御手段により制御される。
【0016】
また、ピストン20の中心には、後述の回転バルブ12(シリンダ本体10)の連通部12bが常時挿通した状態となる貫通孔23が軸方向に設けられている。
【0017】
回転バルブ12は、独楽状部材となっており、シリンダカバー11を閉塞する円柱状の閉塞部12aと、貫通孔23に常時挿通された状態で設けられる連通部12bと、回転支持体60にベアリングを介して回転可能に支持される支持部12cと、を備えている。
連通部12bは、閉塞部12aの前側中心部から略円柱状に延在して閉塞部12aに一体に設けられ、支持部12cは、閉塞部12aの後側中心部から略円柱状に延在して閉塞部12aに一体に設けられている。
【0018】
また、回転バルブ12は、連通部12bの前側端面から閉塞部12aを経由して支持部12cの後側端面まで流体を流通可能な流体供給路12dが軸方向に延在して穿設されている。これにより、流体供給路12dに供給された流体は、ピストン側の貫通孔23に供給可能となる。
【0019】
また、回転バルブ12の一端側(後側)の流体供給路12dには、後述の回転側部材71(ロータリージョイント70)が嵌合されており、ロータリージョイント70の中心には軸方向に貫通孔が設けられており、それによりロータリージョイント70の一端側から他端側まで流体が供給され、その流体は流体供給路12dに供給されることとなる。
【0020】
回転支持体60は、略円筒状の部材であり、常時旋盤の固定部に固定(非回転)された状態で、内周側でベアリングを介して回転バルブ12(支持部12c)を回転可能に支持している。すなわち、回転支持体60は、シリンダ本体10とその内部に設けられているピストン20とを一体に回転可能に支持している。
【0021】
ロータリージョイント70は、固定側から回転側に流体を供給させる部材であり、固定側部材72と回転側部材71とを備えている。
固定側部材72は、後述のカバー80に嵌合され、回転側部材71は、回転バルブ12(シリンダ本体10)の一端側に固定側部材72に対向して嵌合されている。
また、固定側部材72は、付勢手段によって、常時回転側部材71側に付勢されている。換言すると、カバー80には、コイルバネ(弾性体)が設けられており、その他端側は、固定側部材72を回転側部材71側に軸方向に常時付勢している。それによって、回転側部材71及び固定側部材72は、回転時または非回転時のどちらか一方においても、常時、接した状態で設けられている。
尚、弾性体はコイルバネを用いているが、これに限らずエラストマ部材でも良い。
【0022】
カバー80は、回転支持体60に固定され、他端側(前側)の中心部近傍で支持部12c(回転バルブ12)覆った状態で設けられている。また、カバー80の外径サイズは、回転支持体60の外径サイズと同じサイズで構成され、カバー80と回転支持体60の軸心が一致するように設けられている。
【0023】
また、カバー80の他端側(前側)には、回転側部材71に対向して固定側部材72(ロータリージョイント70)が嵌合されており、その固定側部材72の一端側(後側)には、流体を一時的に蓄える、流体溜まり室mが設けられている。
【0024】
また、その流体溜まり室mに一端が開口するとともに、他端がカバー80の外周面に開口する供給流路Dが設けられている。
また、カバー80が支持部12cの一端側(後側)を覆う近傍には、回転側部材71と固定側部材72との摺接面から漏れた流体を回収するドレイン室nが設けられており、このドレイン室nに一端が開口するとともに、他端がカバー80の外周面に開口するドレイン流路Eが設けられている。
それによって、例えば、外部から流体を供給流路Dを経由して流体溜まり室mに供給し、供給された流体は、ロータリージョイント70の貫通孔を経由して流体供給路12dに供給することが可能となる。したがって、ピストン20の貫通孔23に流体が供給されることとなる。
【0025】
その一方で、回転側部材71と固定側部材72との摺接面から漏れた流体は、ドレイン室nに一時的に格納され、ドレイン流路Eを経由して、外部に排出されることとなる。
【0026】
流体は、お客様の仕様により、空圧、油圧、またはクーラント切削油のいずれか1つを使用することができる。すなわち、1つの回転シリンダで3つの機能をもたすこと(部品の集約化)ができ、それによって、ラインナップや部品点数を削減することができる。また、組立作業も簡素化することができる。
【0027】
以上、本発明を好適な実施形態により説明してきたが、こうした記述は限定事項ではなく、もちろん、種々の改変が可能である。例えば、供給流路Dは、1つに限らず、それぞれの使用条件にあわせて2つ以上設けても良い。
【0028】
また、お客様の仕様によっては、カバー80及びロータリージョイント70を取り除き、直接、回転ユニオン(図示せず)などを回転バルブ12(シリンダ本体10)の一端側に設けるなど簡単にカスタマイズすることも可能である。
【0029】
4.結言
以上のように、本実施形態によれば、部品を集約化し、それによってラインナップや部品点数を削減し、また、組立作業も簡素化することができる回転シリンダを実施することができる。
【0030】
かかる回転シリンダは、回転体であるシリンダ本体と、シリンダ本体内で軸方向に摺動可能に嵌挿されたピストンと、固定体であり、内部でシリンダ本体を回転可能に支持する回転支持体と、回転支持体に固定され、シリンダ本体の一端側を覆うカバーと、を備え、シリンダ本体の中心には、軸方向に延在する流体供給路が穿設されている、回転シリンダであって、流体を固定体側から回転体側に供給するロータリージョイントを備え、ロータリージョイントは、固定側部材と回転側部材とを備え、固定側部材は、カバーに嵌合され、回転側部材は、シリンダ本体の一端側に固定側部材に対向して嵌合され、カバーは、固定側部材の一端側に流体溜まり室が設けられ、且つ、一端が流体溜まり室に開口するとともに他端がカバーの外周面に開口する供給流路が設けられている。
【符号の説明】
【0031】
10 シリンダ本体
12d 流体供給路
20 ピストン
60 回転支持体
70 ロータリージョイント
71 回転側部材
72 固定側部材
80 カバー
100 回転シリンダ
A,B 流路
D 供給流路
E ドレイン流路
m 流体溜まり室
n ドレイン室
図1
図2
図3
図4