(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-28
(45)【発行日】2023-10-06
(54)【発明の名称】火災報知システム、情報処理装置、火災報知方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G08B 25/00 20060101AFI20230929BHJP
G08B 25/08 20060101ALI20230929BHJP
G08B 17/00 20060101ALI20230929BHJP
【FI】
G08B25/00 510H
G08B25/08 A
G08B17/00 C
(21)【出願番号】P 2019065033
(22)【出願日】2019-03-28
【審査請求日】2022-02-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】牧口 智弥
【審査官】綿引 隆
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-272143(JP,A)
【文献】特開2015-001816(JP,A)
【文献】特開2006-172410(JP,A)
【文献】特開平11-287453(JP,A)
【文献】特開2017-211929(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62C 2/00 - A62C 99/00
G01N 1/00 - G01N 1/44
G08B 17/00 - G08B 31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
センサユニットと、当該センサユニットとネットワークを介して接続される情報処理装置とを有する火災報知システムであって、
前記センサユニットは、匂いを検出する匂いセンサと、人体の動きを検出する人感センサと、煙又は熱を検出する火災検出センサとを備え、
前記情報処理装置は、
前記センサユニットから、当該センサユニットが設置された設置場所周辺のセンシング結果を取得する取得部と、
前記取得部が取得した前記匂いセンサのセンシング結果に基づいて、火災の疑いがあるか否かを判定する第1判定部と、
前記第1判定部が火災の疑いありと判定した場合に、前記取得部が取得した前記人感センサ又は前記火災検出センサのセンシング結果に基づいて、前記設置場所周辺の火災の発生状況を判定する第2判定部と、
前記
第2判定部の判定結果に応じて、予め設定された通報先に通報を行う通報部と、
を備える火災報知システム。
【請求項2】
前記
第1判定部は、前記匂いセンサで検出された特定の匂い成分の値に基づいて、火災の疑いがあるか否かを判定する請求項
1に記載の火災報知システム。
【請求項3】
前記
第1判定部は、学習データとなる複数種類の匂い成分と、当該匂い成分が火災に由来するものか否かを示す教師データとを用いて作成された学習済みモデルに、前記匂いセンサのセンシング結果に含まれる匂い成分を入力することで得られた推論結果に基づいて、火災の疑いがあるか否かを判定する請求項
1に記載の火災報知システム。
【請求項4】
前記
第2判定部は、
前記第1判定部が火災の疑いありと判定した場合で、且つ前記火災検出センサのセンシング結果から煙又は熱を検出した場合に、火災発生と判定する請求項
1~3の何れか一項に記載の火災報知システム。
【請求項5】
前記
第2判定部は、
前記第1判定部が火災の疑いありと判定した場合であっても、前記人感センサのセンシング結果で表される前記人体の動き量が閾値以上の場合には、火災の疑いなしと判定する請求項
1~3の何れか一項に記載の火災報知システム。
【請求項6】
前記通報部は、前記
第2判定部の判定結果に応じて、通報先を切り替える請求項1~
5の何れか一項に記載の火災報知システム。
【請求項7】
匂いを検出する匂いセンサと、人体の動きを検出する人感センサと、煙又は熱を検出する火災検出センサとを備えるセンサユニットから、当該センサユニットが設置された設置場所周辺のセンシング結果を取得する取得部と、
前記取得部が取得した前記匂いセンサのセンシング結果に基づいて、火災の疑いがあるか否かを判定する第1判定部と、
前記第1判定部が火災の疑いありと判定した場合に、前記取得部が取得した前記人感センサ又は前記火災検出センサのセンシング結果に基づいて、前記設置場所周辺の火災の発生状況を判定する第2判定部と、
前記
第2判定部の判定結果に応じて、予め設定された通報先に通報を行う通報部と、
を備える情報処理装置。
【請求項8】
情報処理装置で実行される火災報知方法であって、
取得部が、匂いを検出する匂いセンサと、人体の動きを検出する人感センサと、煙又は熱を検出する火災検出センサとを備えるセンサユニットから、当該センサユニットが設置された設置場所周辺のセンシング結果を取得し、
第1判定部が、前記取得部が取得した前記匂いセンサのセンシング結果に基づいて、火災の疑いがあるか否かを判定し、
第2判定部は、前記第1判定部が火災の疑いありと判定した場合に、前記取得部が取得した前記人感センサ又は前記火災検出センサのセンシング結果に基づいて、前記設置場所周辺の火災の発生状況を判定し、
通報部は、前記
第2判定部の判定結果に応じて、予め設定された通報先に通報を行う、
ことを含む火災報知方法。
【請求項9】
情報処理装置のコンピュータを、
匂いを検出する匂いセンサと、人体の動きを検出する人感センサと、煙又は熱を検出する火災検出センサとを備えるセンサユニットから、当該センサユニットが設置された設置場所周辺のセンシング結果を取得する取得部と、
前記取得部が取得した前記匂いセンサのセンシング結果に基づいて、火災の疑いがあるか否かを判定する第1判定部と、
前記第1判定部が火災の疑いありと判定した場合に、前記取得部が取得した前記人感センサ又は前記火災検出センサのセンシング結果に基づいて、前記設置場所周辺の火災の発生状況を判定する第2判定部と、
前記
第2判定部の判定結果に応じて、予め設定された通報先に通報を行う通報部と、
して機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火災報知システム、情報処理装置、火災報知方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一般住宅では、キッチン、寝室、階段等に火災報知器を設置することが行われている。かかる、火災報知器としては、煙センサや熱センサ等の火災検出センサを用いたものが一般的に使用されている。また、従来、火災検出センサのセンシング結果から、当該火災検出センサの設置位置近傍での火災の有無を判定し、火災が発生した場合に通知を行うシステムが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述した火災報知器の問題として非火災報がある。具体的には、火災報知器では、煙や熱を指標に火災を検知する火災検出センサを用いているため、火災以外の煙や熱に反応することで非火災報が発生することになる。なお、火災検出センサの感度を調整することで非火災報を低減することが考えられるが、実際の火災兆候を検出できない可能性があり、非火災報の発生とトレードオフの関係がある。また、上述した従来のシステムにおいても、煙や熱を検知する火災検出センサを用いているため、非火災報の発生を根本から低減することは困難である。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、火災兆候の早期発見と非火災報の発生低下との両立を図ることができる火災報知システム、情報処理装置、火災報知方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る火災報知システムは、センサユニットと、当該センサユニットとネットワークを介して接続される情報処理装置とを有する火災報知システムであって、前記センサユニットは、匂いを検出する匂いセンサと、人体の動きを検出する人感センサと、煙又は熱を検出する火災検出センサとを備え、前記情報処理装置は、前記センサユニットから、当該センサユニットが設置された設置場所周辺のセンシング結果を取得する取得部と、前記取得部が取得した前記匂いセンサのセンシング結果に基づいて、火災の疑いがあるか否かを判定する第1判定部と、前記第1判定部が火災の疑いありと判定した場合に、前記取得部が取得した前記人感センサ又は前記火災検出センサのセンシング結果に基づいて、前記設置場所周辺の火災の発生状況を判定する第2判定部と、前記第2判定部の判定結果に応じて、予め設定された通報先に通報を行う通報部と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、火災兆候の早期発見と非火災報の発生低下との両立を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態に係る火災報知システムの構成の一例を示す図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係るクラウドサービス装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係るセンサ管理ファイルのデータ構成の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、実施形態に係る通報先管理ファイルのデータ構成の一例を示す図である。
【
図5】
図5は、実施形態に係る状況判定用データ(学習済みモデル)の動作を模式的に示す図である。
【
図6】
図6は、実施形態に係るクラウドサービス装置の機能構成の一例を示す図である。
【
図7】
図7は、実施形態に係る火災報知システムの動作例を示すシーケンス図である。
【
図8】
図8は、実施形態のクラウドサービス装置が実行する処理の一例を示すフローチャートである。
【
図9】
図9は、変形例に係る状況判定用データ(学習済みモデル)の動作を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら実施形態に係る火災報知システム、情報処理装置、火災報知方法及びプログラムについて説明する。なお、以下に説明する実施形態では、一般住宅に適用した例を説明するが、以下の実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0010】
図1は、実施形態に係る火災報知システムの構成の一例を示す図である。
図1に示すように、火災報知システム1は、センサユニット10と、クラウドサービス装置20とを備える。
【0011】
センサユニット10は、住宅H内での監視対象となるエリアに設置される。例えば、センサユニット10は、キッチン、寝室、階段等のエリアにそれぞれ設置される。なお、センサユニット10が設置される位置は特に問わず、例えば天井等に設置することができる。
【0012】
センサユニット10は、複数種類のセンサを備える。具体的には、センサユニット10は、匂いセンサ11、人感センサ12、及び煙感知センサ13を一組として有する。つまり、一組の匂いセンサ11、人感センサ12、及び煙感知センサ13は、センサユニット10が設置された設置位置周辺をセンシング範囲とする。センサユニット10の各センサは、一体的に構成されてもよいし、別体として構成されてもよい。なお、別体とする場合、各センサを異なる位置に設置してもよいが、各センサのセンシング範囲の一部又は全部が重なるよう設定することが好ましい。
【0013】
匂いセンサ11は、匂いを検出するセンサ装置である。匂いセンサ11は、設置位置周辺をセンシングし、設置位置周辺に存在する匂い成分をセンシング結果として出力する。かかるセンシング結果には、匂いセンサ11を識別可能なセンサ識別子が含まれる。
【0014】
匂いセンサ11の構成は特に問わず、種々の構成を採用することが可能である。一例として、匂いセンサ11は、水晶振動子の表面に、匂いの成分(原因物質)を吸着する膜を設けたQCM(Quartz Crystal Microbalance)センサであってもよい。QCMセンサでは、ATカットされた水晶振動子が質量変化により共振周波数が変化する。QCMセンサは、ATカットされた水晶振動子を振動させて共振周波数の変化量を検出することにより、原因物質の匂いをその原因物質の質量として検出する。なお、検出対象とする原因物質の種類や個数は特に問わないものとするが、例えば、建築材料の延焼時に発生する匂いの原因物質等、火災に関係する匂いの原因物質を少なくとも検出することができるものとする。
【0015】
人感センサ12は、人体の動きを検出するセンサ装置である。人感センサ12は、設置位置周辺をセンシングし、人体の動きを表す動き量をセンシング結果として出力する。かかるセンシング結果には、人感センサ12を識別可能なセンサ識別子が含まれる。人感センサ12の構成は特に問わず、種々の構成を採用することが可能である。例えば、人感センサ12は、赤外線や超音波等を用いた人感センサであってもよい。
【0016】
煙感知センサ13は、火災検知センサの一例であり、煙を検出(感知)するセンサ装置である、煙感知センサ13は、設置位置周辺をセンシングし、設置位置周辺に煙が発生しているか否か示す情報をセンシング結果として出力する。かかるセンシング結果には、煙感知センサ13を識別可能なセンサ識別子が含まれる。煙感知センサ13の構成は特に問わず、種々の構成を採用することが可能である。例えば、煙感知センサ13は、光電式の煙感知センサであってもよい。
【0017】
上述したセンサユニット10(匂いセンサ11、人感センサ12、煙感知センサ13)でのセンシング結果は、住宅H内に設けられたアクセスポイントAPを介して、ネットワークN1に接続されたクラウドサービス装置20に送信される。ここでネットワークN1は、例えばインターネットや移動体通信ネットワーク等である。
【0018】
なお、本実施形態では、センサユニット10のセンシング結果を、アクセスポイントAPを介して、クラウドサービス装置20に送信する形態としたが、これに限らず、センサユニット10がクラウドサービス装置20にセンシング結果を直接送信する形態としてもよい。また、匂いセンサ11、人感センサ12、及び煙感知センサ13のセンシング結果は、センサユニット10のセンシング結果として一度に出力される構成としもよいし、個別に出力される構成としてもよい。
【0019】
クラウドサービス装置20は、情報処理装置の一例である。クラウドサービス装置20は、1以上のサーバ装置によって構成される。クラウドサービス装置20は、ネットワークN1を介して、監視対象となる1又は複数の住宅Hと接続される。
図1では、二つの住宅H(住宅H1、住宅H2)を監視対象として例を示している。クラウドサービス装置20は、住宅Hの各々に設置されたセンサユニット10からセンシング結果を受信し、センシング結果から火災の兆候や火災の発生を検出すると、所定の通報先に通報(報知)を行う。
【0020】
例えば、クラウドサービス装置20を1つの筐体に収納されたサーバ装置として構成する場合、クラウドサービス装置20は、
図2に示すようなハードウェア構成で実現される。ここで、
図2は、クラウドサービス装置20のハードウェア構成の一例を示す図である。
【0021】
クラウドサービス装置20は、CPU(Central Processing Unit)21、ROM(Read Only Memory)22、RAM(Random Access Memory)23、記憶部24、及び通信部25を備えている。これら各部は、バスラインを介して通信可能に相互に接続されている。
【0022】
CPU21は、プロセッサの一例であり、ROM22や記憶部24に記憶されたプログラムを実行することにより、クラウドサービス装置20の各部を統括的に制御する。ROM22は、CPU21によって実行されるプログラム等を記憶する。RAM23は、プログラムの実行に必要な値等を一時的に記憶するワークエリアとして、CPU21に使用される。
【0023】
記憶部24は、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)等の記憶装置である。記憶部24は、CPU21が実行可能なプログラムや各種の設定情報を記憶する。また、記憶部24は、各センサと設置位置との関係を規定したセンサ管理ファイル241と、住宅H毎の通報先を規定した通報先管理ファイル242と、火災状況の判定に係る状況判定用データ243とを記憶する。
【0024】
図3は、センサ管理ファイル241のデータ構成の一例を示す図である。
図3に示すように、センサ管理ファイル241は、各センサ(センサユニット10)が設置されている設置場所と、各センサのセンサ識別子とを対応付けて記憶する。ここで、センサユニット10の設置場所は、例えば、住宅Hを識別する識別子の一例である住宅名と、その住宅H内でのエリアとの組で表される。センサ識別子は、各センサ(匂いセンサ11、人感センサ12及び煙感知センサ13)を識別するための識別子である。
【0025】
クラウドサービス装置20では、センサ管理ファイル241を参照することで、センシング結果に含まれるセンサ識別子から、そのセンシング結果を出力したセンサの設置場所や種別を特定する。例えば、住宅Hから受信したセンシング結果に含まれたセンサ識別子が“匂いセンサ_1011”の場合、クラウドサービス装置20は、住宅名“H1”の“キッチン”で検出された匂いのセンシング結果であると特定する。
【0026】
図4は、通報先管理ファイル242のデータ構成の一例を示す図である。
図4に示すように、通報先管理ファイル242は、各住宅Hの住宅名と通報先とを対応付けて記憶する。ここで、通報先は、通常通報先と緊急通報先とに区分される。通常通報先は、火災兆候を検出した場合等、火災の発生が疑われる場合の通報先を意味し、緊急通報先は火災の発生を検出した場合の通知先を意味する。通常通報先には、例えば、住宅Hの所有者や居住者、住宅Hを管理する管理会社等のアドレス(電話番号、電子メールアドレス等)を登録することができる。また、緊急時通報先には、例えば、住宅Hが所在する区域の消防署等、火災に対処可能な組織のアドレスを登録することが好ましい。
【0027】
クラウドサービス装置20では、センシング結果に基づき火災の発生状況を判定すると、通報先管理ファイル242を参照し、その判定結果に応じた通報先に通報を行う。
【0028】
状況判定用データ243は、火災の発生状況の判定に係るデータである。本実施形態では、匂いセンサ11のセンシング結果から火災の疑いがあるか否かを判定するのに状況判定用データ243を用いる。
【0029】
一例として、状況判定用データ243は、火災時に発生する特定の匂いの成分、例えば、住宅建材の燃焼時に発生する匂いの成分について、判定の指標となる閾値(質量)を定めた閾値データであってもよい。また、他の例として、状況判定用データ243は、匂いセンサ11で検出された匂い成分から、火災が発生している可能性を確率値(以下、火災確率)で推論することが可能な学習済みモデルであってもよい。
【0030】
後者の場合、学習済みモデルは、例えば以下の方法で作成することができる。まず、各種の匂い成分を匂いセンサ11等を用いて採取し、採取した匂い成分のそれぞれを学習用データとする。学習用データは、例えば、火災時に発生する匂い成分や、非火災時の住宅H内で採取された匂い成分を含む。また、匂い成分が火災に由来するものか否かを二値(1、0)で示したデータを教師データとしてそれぞれ用意する。そして、学習済みモデルを作成する作成装置に、学習用データと教師データとを入力し、学習用データと教師データとの関係を機械学習させることで、匂いセンサ11のセンシング結果から、火災確率を推論結果として出力することが可能な学習済みモデルを作成することができる。
【0031】
図5は、状況判定用データ243(学習済みモデル)の動作を模式的に示す図である。上述の作成方法によって作成された学習済みモデルに対して、匂いセンサ11のセンシング結果(匂い成分)を入力すると、学習済みモデルは推論結果として火災確率を出力する。かかる火災確率は、例えば0と1との間の数値で表される。例えば、教師データにおいて、火災由来であることを“1”、火災由来でないことを“0”と定義した場合、火災確率の値が大きいほど、火災の疑いがあることを意味する。
【0032】
図2に戻り、通信部25は、ネットワークN1に接続するための通信インタフェースである。通信部25は、CPU21の制御の下、ネットワークN1に接続されたアクセスポイントAPを介し、センサユニット10との間で通信を行う。
【0033】
また、クラウドサービス装置20は、
図6に示す機能構成を備える。ここで、
図6は、クラウドサービス装置20の機能構成の一例を示す図である。
【0034】
図6に示すように、クラウドサービス装置20は、機能構成として、センシング結果取得部211と、送信元特定部212と、状況判定部213と、通報制御部214とを備える。
【0035】
クラウドサービス装置20の機能構成は、その一部又は全てがソフトウェア(プログラム)で実現されてもよいし、図示しないハードウェア回路で実現されてもよい。一つの様態として、上述した機能構成の各部は、CPU21と記憶部24に記憶されたプログラムとの協働により実現される。なお、プログラムは、例えば、ネットワークN1に接続された他の情報処理装置から、ネットワーク経由でダウンロードされることで提供されてもよいし、持ち運び可能な記憶媒体等に予め組み込んで提供されてもよい。
【0036】
センシング結果取得部211は、取得部の一例である。センシング結果取得部211は、通信部25を介して、センサユニット10の各々から送信されたセンシング結果を取得する。
【0037】
送信元特定部212は、センシング結果取得部211が取得したセンシング結果に含まれるセンサ識別子に基づき、そのセンシング結果を送信した送信元のセンサの設置場所を特定する。具体的には、送信元特定部212は、センサ管理ファイル241を参照し、センシング結果に含まれたセンサ識別子に対応する“住宅名”及び“エリア”の組を、送信元のセンサの設置場所として特定する。
【0038】
状況判定部213は、判定部の一例である。状況判定部213は、センシング結果取得部211が取得したセンシング結果に基づき、送信元特定部212で特定された設置場所周辺の火災の発生状況を判定する。具体的には、状況判定部213は、匂いセンサ11、人感センサ12及び煙感知センサ13のセンシング結果を用いることで、火災の発生状況を複合的に判定する。以下、状況判定部213の動作例について説明する。
【0039】
まず、状況判定部213は、状況判定用データ243を用いることで、匂いセンサ11のセンシング結果から、火災の発生が疑われる状況か否かを判定する。ここで、匂いセンサ11のセンシング結果を最初に判定するのは、火災の発生の初期段階では、火炎や煙よりも匂いの広がりが早いことによるものである。そのため、匂いセンサ11のセンシング結果を基に他のセンサのセンシング結果を複合的に判定することで、火災兆候の早期発見を図ることができる。
【0040】
例えば、状況判定用データ243が閾値データの場合、状況判定部213は、匂いセンサ11で検出された火災時に発生する匂いの成分のセンシング結果と、閾値データの値とを比較する。ここで、状況判定用データ243は、匂いセンサ11のセンシング結果が閾値以上の場合に、火災の疑い(火災兆候)ありと判定し、閾値未満の場合に、火災の疑いなしと判定する。
【0041】
一方、状況判定用データ243が学習済みモデルの場合、状況判定部213は、匂いセンサ11のセンシング結果を学習済みモデルに入力することで得られた推論結果(火災確率)に基づき、火災の疑いがあるか否かを判定する。例えば、状況判定用データ243は、火災確率が40%以上の場合に、火災の疑いありと判定し、火災確率が40%未満の場合に、火災の疑いなしと判定する。ここで、火災確率に係る閾値は特に問わず、任意に設定することが可能である。
【0042】
また、状況判定部213は、上述した匂いセンサ11のセンシング結果を踏まえて、人感センサ12又は煙感知センサ13のセンシング結果から、当該匂いセンサ11が設置された設置場所周辺の火災の発生状況を判定する。
【0043】
具体的には、状況判定部213は、匂いセンサ11と同一の設置場所をセンシングする人感センサ12のセンシング結果に基づいて、人体の動きの活性度が閾値未満か否か等を判定する。例えば、活性度が閾値未満の場合、状況判定部213は、火災の疑いありと判定する。また、活性度が閾値以上の場合、状況判定部213は、火災の疑いなしと判定する。
【0044】
また、状況判定部213は、匂いセンサ11と同一の設置場所をセンシングする煙感知センサ13のセンシング結果に基づいて、煙が発生しているか否かを判定する。ここで、煙が発生していると判定した場合、状況判定部213は、火災が発生していると判定する。また、煙が発生していないと判定した場合、状況判定部213は、火災の疑いありの判定を維持する。
【0045】
このように、状況判定部213では、匂いセンサ11、人感センサ12及び煙感知センサ13のセンシング結果を用いることで、火災の発生状況を複合的に判定する。したがって、煙感知センサ13のみを用いて火災の発生状況を判定する場合と比較し、火災発生に係る指標値を多角的に判定することができるため、誤検知(非火災報)の低下を図ることができる。また、状況判定部213では、匂いセンサ11のセンシング結果を踏まえて、人感センサ12や煙感知センサ13のセンシング結果から火災の発生状況を判定するため、火災兆候の早期発見を図ることができる。
【0046】
なお、人感センサ12及び煙感知センサ13のセンシング結果を用いた判定の実行順序は特に問わず、相互に入れ替るや、並列で実行することも可能である。本実施形態では、煙感知センサ13のセンシング結果で煙が検出されなかった場合に、人感センサ12の
センシング結果を用いた判定を実行するものとする。
【0047】
通報制御部214は、通報部の一例である。通報制御部214は、通報先管理ファイル242に基づき、状況判定部213の判定結果に応じた通報先へ通報を行う。
【0048】
具体的には、通報制御部214は、状況判定部213で火災の疑いありと判定された場合、当該判定に係るセンサユニット10の設置場所(住宅名)に対応付けられた通常通報先のアドレスを、通報先管理ファイル242から読み出す。そして、通報制御部214は、読み出したアドレス宛に、火災兆候が検出されたことを報知するメッセージ等を含んだ情報を通報する。
【0049】
また、通報制御部214は、状況判定部213で火災発生と判定された場合、当該判定に係るセンサユニット10の設置場所(住宅名)に対応付けられた緊急通報先のアドレスを、通報先管理ファイル242から読み出す。そして、通報制御部214は、読み出したアドレス宛に、火災が発生したことを報知するメッセージ等を含んだ情報を通報する。
【0050】
なお、通報先への通報方法は特に問わないものとする。例えば、通報制御部214は、通信部25と協働することで、通報先のアドレス(電子メールアドレス、電話番号等)に電子メールやメッセージを送信してもよい。また、例えば、通報制御部214は、音声合成技術等を用いることで、通報先のアドレス(電話番号)に音声による通報を行う形態としてもよい。
【0051】
また、通報制御部214は、通報先への通報の際に、センサユニット10の設置場所や、住宅Hの住所等をあわせて報知してもよい。また、通報制御部214は、人感センサ12に判定結果に基づき、住宅H内に人が存在するか否かを示す情報等をあわせて報知してもよい。
【0052】
次に、
図7を参照して、上述した火災報知システム1の動作例について説明する。ここで、
図7は、火災報知システム1の動作例を示すシーケンス図である。
【0053】
まず、住宅Hに設置されたセンサユニット10の各々は、センシングにより得られた結果をアクセスポイントAPに送信する(ステップS11)。アクセスポイントAPは、センサユニット10からセンシング結果を受信すると、クラウドサービス装置20へと転送する(ステップS12)。
【0054】
なお、センサユニット10(匂いセンサ11、人感センサ12、煙感知センサ13)が、センシング結果を出力するタイミングは特に問わず、任意に設定することが可能であるとする。例えば、匂いセンサ11、人感センサ12、煙感知センサ13は、所定の時間間隔毎にセンシングを行い、そのセンシング結果を個別又は一度に出力する構成としてもよい。また、例えば、匂いセンサ11、人感センサ12、煙感知センサ13は、クラウドサービス装置20からの要請に応じてセンシング結果を個別又は一度に出力する構成としてもよい。
【0055】
クラウドサービス装置20では、センシング結果取得部211によってセンシング結果が取得されると、送信元特定部212は、送信元のセンサユニット10の設置場所を特定する(ステップS13)。また、状況判定部213は、取得されたセンシング結果に基づいて、送信元特定部212で特定された設置場所周辺の火災の発生状況を判定する(ステップS14)。
【0056】
状況判定部213で火災の疑いありと判定された場合、通報制御部214は、センサユニット10の設置場所に対応付けられた通常通報先のアドレス宛に通報を行う(ステップS15)。また、状況判定部213で火災発生と判定された場合、通報制御部214は、センサユニット10の設置場所に対応付けられた緊急通報先のアドレス宛に通報を行う(ステップS16)。
【0057】
次に、
図8を参照して、クラウドサービス装置20が実行する処理について説明する。
図8は、クラウドサービス装置20が実行する処理の一例を示すフローチャートである。なお、本処理は、
図7のステップS13~S16に対応するものである。
【0058】
まず、センシング結果取得部211は、センサユニット10から送信されたセンシング結果を取得する(ステップS21)。次いで、送信元特定部212は、センサ管理ファイル241を参照し、センシング結果に含まれたセンサ識別子に対応する設置場所を、送信元の設置場所として特定する(ステップS22)。
【0059】
続いて、状況判定部213は、センシング結果取得部211で取得された匂いセンサ11のセンシング結果(匂い成分)と、状況判定用データ243とに基づき、送信元の配置場所周辺の火災の発生状況を判定する(ステップS23)。ここで、火災の疑いがないと判定した場合には(ステップS24;No)、状況判定部213は、本処理を終了する。
【0060】
また、火災の疑いありと判定した場合(ステップS24;Yes)、状況判定部213は、センシング結果取得部211で取得された煙感知センサ13のセンシング結果に基づき、送信元の設置場所周辺で煙が検出されたか否かを判定する(ステップS25)。なお、送信元の設置場所に対応する煙感知センサ13のセンシング結果が存在しない場合には、状況判定部213は、センシング結果取得部211を介して、該当する煙感知センサ13に対し、センシング結果を要求する形態としてもよい。
【0061】
ステップS25で煙が検出されない場合(ステップS25;No)、状況判定部213は、センシング結果取得部211で取得された人感センサ12のセンシング結果に基づき、送信元の設置場所周辺での人体の動きの活性度が閾値未満か否かを判定する(ステップS26)。なお、送信元の設置場所に対応する人感センサ12のセンシング結果が存在しない場合には、状況判定部213は、センシング結果取得部211を介して、該当する人感センサ12に対し、センシング結果を要求する形態としてもよい。
【0062】
ここで、人体の動きの活性度が閾値以上の場合(ステップS26;No)、状況判定部213は、火災の疑いなしと判定し、本処理を終了する。また、人体の動きの活性度が閾値未満の場合(ステップS26;Yes)、通報制御部214は、送信元の設置場所に対応付けられた通常通報先のアドレスを通報先管理ファイル242から読み出し、そのアドレス宛に火災兆候が検出されたことを通報し(ステップS27)、本処理を終了する。
【0063】
一方、ステップS25で煙が検出された場合(ステップS25;Yes)、状況判定部213は、火災発生と判定する(ステップS28)。この場合、通報制御部214は、送信元の設置場所に対応付けられた緊急通報先のアドレスを通報先管理ファイル242から読み出し、そのアドレス宛に火災発生を通報し(ステップS29)、本処理を終了する。
【0064】
以上のように、本実施形態によれば、クラウドサービス装置20は、センサユニット10(匂いセンサ11、人感センサ12及び煙感知センサ13)のセンシング結果を用いて、当該センサユニット10が設置された設置場所周辺の火災の発生状況を複合的に判定する。そして、クラウドサービス装置20は、火災の発生状況の判定結果に応じて、予め定められた通報先に通報を行う。これにより、クラウドサービス装置20では、匂いセンサ11、人感センサ12及び煙感知センサ13のセンシング結果から、火災の発生状況を複合的に判定することができるため、火災兆候の早期発見と非火災報の発生低下との両立を図ることができる。
【0065】
また、クラウドサービス装置20では、火災の発生状況の判定結果、つまり火災兆候又は火災発生の検出に応じて、通報先を切り替えることができる。これにより、クラウドサービス装置20では、火災の発生状況の判定結果に適した通報先に通報することができるため、火災に対する対処を効率的に促すことができる。
【0066】
(変形例1)
上述の実施形態では、状況判定用データ243の一例として、匂いセンサ11で検出された匂い成分から火災確率を推論する学習済みモデルを説明した。但し、学習済みモデルはこれに限定されるものではなく、他の方法で作成された学習済みモデルを用いてもよい。
【0067】
例えば、匂いセンサ11のセンシング結果とともに、人感センサ12及び煙感知センサ13の何れか一方又は両方で検出されるセンシング結果を一組の学習データとし、この組みのセンシング結果が火災に由来するものか否かを二値(1、0)で示したデータを教師データとして用意する。そして、学習済みモデルを作成する作成装置に、学習データと教師データとの組を複数入力し、学習データと教師データとの間の関係を機械学習させることで、匂いセンサ11と、人感センサ12及び煙感知センサ13の何れか一方又は両方のセンシング結果から、火災確率を推論することが可能な学習済みモデルを作成することができる。
【0068】
図9は、本変形例に係る状況判定用データ243b(学習済みモデル)の動作を模式的に示す図である。上述の作成方法によって作成された学習済みモデルに対して、匂いセンサ11のセンシング結果(匂い成分)とともに、人感センサ12のセンシング結果(動きの活性度)、煙感知センサ13のセンシング結果(煙の有無)を入力すると、学習済みモデルは推論結果として火災確率を出力する。
【0069】
つまり、状況判定用データ243bが出力する火災確率は、匂いセンサ11、人感センサ12及び煙感知センサ13のセンシング結果から、住宅Hの火災の発生状況を複合的に判定したものとなる。そのため、状況判定部213は、状況判定用データ243bを用いて火災の発生状況を判定することで、上述の実施形態と同様に、火災兆候の早期発見と非火災報の発生低下との両立を図ることができる。
【0070】
なお、状況判定に係る閾値は特に問わず任意に設定することが可能である。例えば、状況判定部213は、状況判定用データ243bが出力した火災確率が40%未満の場合は、火災の疑いなしと判定し、火災確率が40%以上70%未満の場合は、火災の疑いありと判定し、火災確率が70%以上の場合は、火災発生と判定してもよい。
【0071】
(変形例2)
上述した実施形態では、火災検知センサとして煙感知センサ13を用いたが、これに限らず、熱を感知する熱感知センサを火災検知センサとしてもよい。この場合においても、他のセンサ(匂いセンサ11、人感センサ12)のセンシング結果とともに、火災の反省状況を複合的に判定することができるため、上述の実施形態と同様に、火災兆候の早期発見と非火災報の発生低下との両立を図ることができる。
【0072】
(変形例3)
上述した実施形態では、クラウドサービス装置20が、センサ管理ファイル241、通報先管理ファイル242及び状況判定用データ243を保持する形態としたが、これに限定されるものではない。例えば、クラウドサービス装置20がアクセス可能な外部装置がセンサ管理ファイル241、通報先管理ファイル242及び状況判定用データ243の何れか又は全てを記憶することで、クラウドサービス装置20は、外部装置に記憶されたファイルを用いて上述した処理を行う構成としてよい。
【0073】
以上、本発明の実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。実施形態は、種々の変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0074】
1 火災報知システム
10 センサユニット
11 匂いセンサ
12 人感センサ
13 煙感知センサ
20 クラウドサービス装置
211 センシング結果取得部
212 送信元特定部
213 状況判定部
214 通報制御部