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特許73574581枚ガラス基板投影型タッチスイッチパネル
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  • 特許-1枚ガラス基板投影型タッチスイッチパネル 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-28
(45)【発行日】2023-10-06
(54)【発明の名称】1枚ガラス基板投影型タッチスイッチパネル
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/041 20060101AFI20230929BHJP
【FI】
G06F3/041 430
G06F3/041 450
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019068013
(22)【出願日】2019-03-29
(65)【公開番号】P2020166692
(43)【公開日】2020-10-08
【審査請求日】2022-02-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000004293
【氏名又は名称】株式会社ノリタケカンパニーリミテド
(73)【特許権者】
【識別番号】000117940
【氏名又は名称】ノリタケ伊勢電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100174090
【弁理士】
【氏名又は名称】和気 光
(74)【代理人】
【識別番号】100100251
【弁理士】
【氏名又は名称】和気 操
(74)【代理人】
【識別番号】100205383
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 諭史
(72)【発明者】
【氏名】辻 斉
(72)【発明者】
【氏名】中尾 剛啓
(72)【発明者】
【氏名】奥山 幸一
(72)【発明者】
【氏名】岡井 正典
(72)【発明者】
【氏名】中西 健二
【審査官】田川 泰宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-229241(JP,A)
【文献】特開2012-190087(JP,A)
【文献】特開2012-203628(JP,A)
【文献】特開2015-079338(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/041-3/044
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス基板上に形成された金属薄膜からなる第一の配線と、この第一の配線の上面に形成された絶縁層と、この絶縁層の上面に形成された金属薄膜からなる第二の配線とを備えてなる1枚ガラス基板投影型タッチスイッチパネルであって、
前記第二の配線より引き出される複数の電極端子Bと、前記第一の配線より引き出される複数の電極端子Aと、前記電極端子Aと前記電極端子Bを外部接続回路に接続する異方性導電層とを有し、
前記絶縁層は、その厚みが0.5μm~5μmであり、前記複数の電極端子Bは、前記複数の電極端子Aに対して前記絶縁層厚さの段差を有して形成されており、
前記異方性導電層に含まれる導電粒子の平均粒子径が前記絶縁層の厚さの1.5倍以上であることを特徴とする1枚ガラス基板投影型タッチスイッチパネル。
【請求項2】
前記絶縁層は、前記複数の電極端子Aが配置される領域がエッチング除去されていることを特徴とする請求項1記載の1枚ガラス基板投影型タッチスイッチパネル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は1枚ガラス基板投影型タッチスイッチパネルに関する。
【背景技術】
【0002】
家電機器、AV機器、PC/OA機器、産業機械、その他の電子デバイスにおいて、各機器への入力手段の1つとして静電容量方式のタッチスイッチモジュールが使用されている。この静電容量方式のタッチスイッチモジュールは、スイッチとなる複数のセンサー電極の静電容量の変化量を数値化し、その数値が予め決められた閾値をこえるときに指が接触したと判定するマイコンなどの検出部に接続部を介して接続されている。
【0003】
1枚のガラス基板上に形成されることで、ガラス材料の削減、製品の薄型化・軽量化、製造コストダウンが期待できるタッチスイッチパネルとして、同一ガラス基板上に、金属薄膜からなる、X方向パターン配線とY方向パターン配線とが絶縁層を介して平面視交差することにより、X方向およびY方向に広がるタッチ面におけるタッチ位置を検出するタッチスイッチパネルが知られている(特許文献1、特許文献2)。
従来の1枚ガラス基板投影型タッチスイッチパネルにおいて、X方向パターン配線およびY方向パターン配線より引き出される複数の電極端子は同一平面上で、フレキシブルプリント回路(以下、FPCともいう)やフレキシブルフラットケーブルなどのフレキシブル回路部と同時に接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-163607号公報
【文献】特開2018-165962号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、X方向パターン配線およびY方向パターン配線より引き出される複数の電極端子を同一平面上でFPCと同時に接続しようとすると、接続部において接続不良が発生しやすいという問題があった。特に、ガラス基板上にY方向パターン配線、次いでこのY方向パターン配線上に透明絶縁層を形成し、その後、X方向パターン配線を形成する場合に、X方向パターン配線より引き出される電極端子とFPCとの接続部において接続不良が発生しやすいという問題があった。
【0006】
本発明はこのような問題に対処するためになされたものであり、電極端子とFPCとの接続部において発生しやすい接続不良を無くすことができる1枚ガラス基板投影型タッチスイッチパネルの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の1枚ガラス基板投影型タッチスイッチパネルは、ガラス基板上に形成された金属薄膜からなる第一の配線と、この第一の配線の上面に形成された絶縁層と、この絶縁層の上面に形成された第二の配線とを備えてなる。この1枚ガラス基板投影型タッチスイッチパネルは、上記第二の配線より引き出される複数の電極端子Bが上記第一の配線より引き出される複数の電極端子Aに対して上記絶縁層の厚さの段差を有して形成されており、この段差を有して電極端子Aおよび電極端子Bが異方性導電層を介して外部接続回路に接続されていることを特徴とする。
また、この異方性導電層に含まれる導電粒子の平均粒子径が第一の配線の上面に形成された絶縁層の厚さの1.5倍以上あることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明のタッチスイッチパネルは、第一の配線の上面に形成された絶縁層の厚さの段差を有して電極端子Aおよび電極端子Bが異方性導電層を介して外部接続回路に接続されているので、パターン配線より引き出される電極端子と外部接続回路との間の接続不良の発生を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】タッチスイッチパネルを示す組み立て図である。
図2】タッチスイッチパネルの接続部の構造を示す図である。
図3】異方性導電層を介在させた接続部の拡大断面図である。
図4】従来例の接続部を表す図である。
図5】断線部のSEM写真および断線発生の機構を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
電極端子とFPCなどの外部接続回路との接続不良について検討した。図4に従来例の接続部を表す。図4(a)は平面図を、図4(b)は正面図を、図4(c)は側面図をそれぞれ表す。
ガラス基板1の一主面上にY方向パターン配線となる第一の配線2が形成され、この配線2より引き出される複数の電極端子Aもガラス基板1に形成される。この配線2および電極端子A上に透明絶縁層4が形成され、その後、電極端子Aおよび電極端子Bが配置される領域Pの透明絶縁層4がフォトリソ法で除去される。領域Pが設けられた透明絶縁層4上にX方向パターン配線となる第二の配線3が形成され、この配線3より引き出される複数の電極端子Bは透明絶縁層4の厚さの段差を経てガラス基板1上に形成される。その結果、電極端子Aおよび電極端子Bは同一面となるガラス基板1上に形成される。
【0011】
断線発生について、さらに詳細に解析した。図5は断線部の走査型電子顕微鏡(SEM)の写真および断線発生の機構図をそれぞれ表す。
図5に示すように、電極端子Bの断線は、透明絶縁層4の段差部分4aで発生していた。透明絶縁層4をフォトリソ法で除去するときに生じるエッチング時の不具合により、配線3から電極端子Bへの連続性が維持できないため、電極層の断線が生じたものと考えられる。具体的に、電極端子Aでの断線は見られなかったが、電極端子Bは電極端子B部分全体に対して、50%の断線が見られた。本発明はこのような不具合の解析結果に基づくものである。
【0012】
本発明のタッチスイッチパネルの一例を図1により説明する。図1はタッチスイッチパネルを示す組み立て図である。
タッチスイッチパネルは、ガラス基板1のX方向およびY方向に広がる任意のタッチ位置を検出できる1枚ガラス基板のタッチスイッチパネルである。
ガラス基板1の裏面がタッチ面1aとなり、このタッチ面1aの反対側の面1bに金属薄膜からなるY方向パターン配線(Y配線ともいう)となる第一の配線2と、この第一の配線2に交差する金属薄膜からなるX方向パターン配線(X配線ともいう)となる第二の配線3とが透明絶縁層4を挟んで形成されている。また、第二の配線3の表面には保護膜となる透明絶縁層5が設けられている。
【0013】
なお、図1では、第一の配線2としてY配線を設け、第二の配線3としてX配線を設けた構成としているが、第一の配線2としてX配線を設け、第二の配線3としてY配線を設けた構成としてもよい。
【0014】
タッチスイッチパネルは、第一の配線2より引き出される複数の電極端子Aおよび第二の配線3より引き出される複数の電極端子Bを有し、これらの接続端子に外部接続回路のFPC6が接続され、FPC6を介して図示を省略したコントロール部が接続される。コントロール部は、PCB上にタッチ検出等を行なうコントロール回路が実装されたものである。なお、コントロール部はガラス基板の1b面に直接実装することができる。
【0015】
ガラス基板1は、透光性の絶縁基板であり、ソーダライムガラス、石英ガラス、硼珪酸ガラス、アルカリ成分を含まない無アルカリガラスなどを採用できる。高い透過率を有し、かつ、一般建材の窓ガラスに使用され非常に安価であることから、ソーダライムガラスを用いることが好ましい。 また、ガラス基板1の厚みは、0.3~5mm程度、好ましくは0.5~3mm程度である。
【0016】
第一の配線2、第二の配線3は、金属薄膜で形成されている。金属薄膜としては、導電性金属薄膜であれば使用することができる。導電性、耐蝕性、および製造コスト等に優れることからアルミニウムまたはアルミニウム合金が好ましい。X配線およびY配線の線幅を適切に設定することにより、目視で透明に見える透光部となる。また、アルミニウムまたはアルミニウム合金薄膜は、その上に、少なくとも1つの金属(例えば、Mo)とAlの混合層からなる黒色膜が積層されていることが好ましい。黒色膜を積層しているので、タッチ面からみて黒色に見え、可視光の反射を抑えることができる。アルミニウムまたはアルミニウム合金薄膜の膜厚は、100nm~3000nmが好ましい。また、黒色膜の膜厚は、5nm~500nmが好ましい。
【0017】
透明絶縁層4としては、たとえば、SiOなどのスパッタリングにより形成される絶縁層、有機Si化合物をスリットコート等で塗布して、その後、熱処理することで得られるシロキサン絶縁層等が挙げられる。絶縁層の厚みは、配線の厚みよりも厚く、0.5μm~5μmが好ましく、1μm~5μmがより好ましく、1μm~3μmがさらに好ましい。絶縁層の厚みが0.5μm未満では、絶縁層の欠陥により絶縁不十分になるおそれがあり、絶縁層の厚みが5μmを超えると、フォトレジストでの除去工程で不具合が発生する場合が多くなるからである。また、保護膜となる透明絶縁層5は透明絶縁層4と同様に形成できる。
【0018】
図1に示すタッチスイッチパネルの接続部の構造を図2に示す。図2(a)は平面図であり、図2(b)は正面図である。
ガラス基板1の一主面上に第一の配線2が形成され、この配線2より引き出される複数の電極端子Aもガラス基板1上に形成される。この配線2および電極端子A上に透明絶縁層4が形成され、その後、電極端子Aが配置される領域Pの透明絶縁層4がフォトリソ法で除去される。透明絶縁層4上に第二の配線3が形成され、この配線3より引き出される複数の電極端子Bは透明絶縁層4上に形成される。その結果、電極端子Aおよび電極端子Bは透明絶縁層4の厚さtの段差を有することになる。すなわち、電極端子Aはガラス基板1上に、電極端子Bは透明絶縁層4上に形成される。
電極端子の厚さは、配線と同じ厚さであり、約100nm~3500nmが好ましく、120nm~1000nmがより好ましく、120nm~500nmがさらに好ましい。
【0019】
電極端子Aおよび電極端子Bは、透明絶縁層4の厚さtの段差を有している。電極端子Aおよび電極端子BとFPC6との接続は、厚さtの段差を有したままですることができる。
図3に示すように、異方性導電層を介して電極端子Aおよび電極端子BとFPC6とを接続することができる。図3は接続部の拡大断面図である。ガラス基板1上に形成された電極端子Aおよび透明絶縁層4上に形成された電極端子Bは、異方性導電層7を介在させて圧着することにより、FPC6と電気的に接続することができる。異方性導電層7を電極端子Aおよび電極端子BとFPC6との間に介在させることにより、厚さtの段差がある場合の接合をより完全にすることができる。
【0020】
異方性導電層7は、絶縁性の高い樹脂材料7a中に導電性粒子7bを均一に分散させた層であり、電極端子とFPCとを圧接することにより、導電性粒子7bが電極端子Aおよび電極端子BとFPC6の導電配線8とにそれぞれ接触して電気的接続ができると共に、隣接する電極との絶縁性を保持するものである。
異方性導電層7の形成方法としては、特に制限がなく、たとえば、印刷法、塗装法、フィルム接着法等が挙げられる。
樹脂材料7aとしては、導電性粒子7bのバインダーとなることができる樹脂であれば使用することができ、たとえば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、合成ゴム等が挙げられる。
導電性粒子7bとしては、相対する電極間に安定した導電性を示す粒子であれば使用することができ、たとえば、金属粒子、表面にニッケルや金メッキした複合金属粒子、プラスチックや樹脂粒子の表面に金属メッキした粒子などが使用できる。本発明においては、電極端子BとFPC6との間で圧接により変形しやすい金属メッキプラスチック粒子が好ましい。また、この粒子の平均粒子径は、絶縁層の厚さtの1.5倍以上あることが好ましく、より好ましくは1.5倍以上10倍以下である。1.5倍未満であると、電極端子とFPCとの電気的接続が不十分となり、10倍をこえると、電極端子Bを損傷させる場合があるからである。
【実施例
【0021】
実施例1
厚さ0.7mmのガラス基板1上に黒色層(Al+Mo層)をスパッタリングで形成し、その上にAl配線層を形成し、フォトリソ工程で金属メッシュパターンのY配線2を形成した。Y配線2の線幅は3μmとして目視の透明性を確保した。外部端子との接続用のFPCとの電極端子Aも、同じガラス基板面に形成し、Y配線2のフォトリソ工程で同時に形成した。Y配線2および電極端子Aの厚さは300nmとした。
次に、透明絶縁層4としてポジ型シロキサン樹脂を全面スリットコートで形成し、Y配線2の外部電極端子AとなるFPC接続部分Pのみをフォトリソ法で除去した。その後、熱処理をしてシロキサン透明絶縁層4を得た。透明絶縁層4の層厚さは2μmとした。
次に、透明絶縁層4の上に、Y配線と同様に、黒色層(Al+Mo層)、Al配線層を形成し、フォトリソ工程でY配線に直交するようにX配線3を形成した。X配線3の外部電極端子BもX配線3と同一平面に、同時期に形成した(図1および図2参照)。この状態では、電極端子Aはガラス基板1上に形成され、電極端子Bは透明絶縁層4上に形成されている。
この段差を有する電極端子Aおよび電極端子Bの表面に異方性導電層を形成し、この異方性導電層の上からFPC接続部を圧接して接続した。異方性導電層は異方性導電性接着テープを用いた。この接着テープに含まれる金属メッキ樹脂粒子の平均粒子径は5μmであった。このときのFPC接続部との接続不良は、透明導電層の電極端子A、B共に0%であった。
【0022】
比較例1
厚さ0.7mmのガラス基板1上に黒色層(Al+Mo層)をスパッタリングで形成し、その上にAl配線層を形成し、実施例1と同様の方法でY配線、Y配線の電極端子A、X配線の電極端子Bを同じガラス基板上に、同時期に形成した。これらの厚みは実施例1と同じ300nmとした。次に、実施例と同様に、ポジ型シロキサン透明絶縁層を形成した。透明絶縁層4の厚みは2μmとした。その後、透明絶縁層4の外部電極端子Aおよび外部電極端子BとなるFPC接続部分P(図4参照)をフォトリソ法で除去した。
次に、透明絶縁層上にY配線と同様の材料および方法で、X配線をフォトリソ法で形成した。X配線とその外部電極端子Bは、除去された透明絶縁層4の段差を経て形成され、外部電極端子Aおよび外部電極端子Bは段差のない表面に形成されている。この電極端子Aおよび電極端子Bの表面に異方性導電層を形成し、この異方性導電層の上からFPC接続部を圧接して接続した。このときのFPCとの接続不良は、電極端子Aは0%であったが、電極端子Bの接続不良は電極端子B全体に対して50%であった。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明の1枚ガラス基板投影型タッチスイッチパネルは、電極端子と外部接続回路との間の接続不良の発生を抑えることができるので、信頼性に優れたタッチスイッチパネルが得られる。その結果、タッチスイッチパネル全般に利用できる。
【符号の説明】
【0024】
1 ガラス基板
2 第一の配線
3 第二の配線
4 透明絶縁層
5 保護膜となる透明絶縁層
6 フレキシブルプリント配線板(外部接続回路)
7 異方性導電層
8 導電配線
A 電極端子
B 電極端子
図1
図2
図3
図4
図5