IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社吉野工業所の特許一覧

特許7357473扁平ボトル、および扁平ボトルの製造方法
<>
  • 特許-扁平ボトル、および扁平ボトルの製造方法 図1
  • 特許-扁平ボトル、および扁平ボトルの製造方法 図2
  • 特許-扁平ボトル、および扁平ボトルの製造方法 図3
  • 特許-扁平ボトル、および扁平ボトルの製造方法 図4
  • 特許-扁平ボトル、および扁平ボトルの製造方法 図5
  • 特許-扁平ボトル、および扁平ボトルの製造方法 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-28
(45)【発行日】2023-10-06
(54)【発明の名称】扁平ボトル、および扁平ボトルの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B65D 1/02 20060101AFI20230929BHJP
   B65D 1/42 20060101ALI20230929BHJP
   B29C 49/04 20060101ALI20230929BHJP
【FI】
B65D1/02 221
B65D1/42
B29C49/04
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019121456
(22)【出願日】2019-06-28
(65)【公開番号】P2021008273
(43)【公開日】2021-01-28
【審査請求日】2022-01-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【氏名又は名称】鈴木 三義
(74)【代理人】
【識別番号】100140718
【弁理士】
【氏名又は名称】仁内 宏紀
(72)【発明者】
【氏名】津田 直毅
(72)【発明者】
【氏名】宇佐美 哲郎
【審査官】矢澤 周一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-046574(JP,A)
【文献】特開2016-137918(JP,A)
【文献】特開2002-037230(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 1/02
B65D 1/42
B29C 49/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボトル軸に直交する横断面視で、一対の短辺部分と一対の長辺部分とを有した長方形状を呈する弾性変形可能な胴部を備え、
前記長辺部分が、前記横断面視で径方向の外側に向けて膨出した突曲面状を呈し、
前記胴部において、ボトル軸方向の同じ位置における肉厚が、周方向の全長にわたって同等とされ、
前記一対の長辺部分の外周面に、径方向の内側に向けて窪み、かつ周方向の大きさが、ボトル軸方向の大きさより大きい横長のパネル面部が各別に設けられ
前記短辺部分と前記長辺部分とは、角部を介して周方向に接続され、
前記胴部におけるボトル軸方向の同じ位置において、前記短辺部分および前記長辺部分の各肉厚が、互いにほぼ同じで、前記角部の肉厚は、前記短辺部分および前記長辺部分の各肉厚より薄くなっている、扁平ボトル。
【請求項2】
前記パネル面部における周方向の両端縁は、前記長辺部分における周方向の両端縁に近接している、請求項1に記載の扁平ボトル。
【請求項3】
前記パネル面部におけるボトル軸方向の中央部は、前記胴部におけるボトル軸方向の中央部に位置している、請求項1または2に記載の扁平ボトル。
【請求項4】
前記横断面視で、前記パネル面部の表面は、周方向の全長にわたって、径方向の外側に向けて突の曲面状を呈する、請求項1から3のいずれか1項に記載の扁平ボトル。
【請求項5】
押出成形により上下方向に延びるパリソンを形成するパリソン形成工程と、
一対の成形金型により前記パリソンを径方向に挟み込み、前記パリソンの上端開口を開放した状態で前記パリソンの下端開口を閉塞し、前記パリソンを、一対の前記成形金型間のキャビティ内に位置させる型締め工程と、
前記パリソン内に加圧エアを供給し、前記パリソンを延伸させることによって、請求項1から4のいずれか1項に記載の扁平ボトルを形成するブロー工程と、を有し、
前記パリソンは、周方向の位置を互いに異ならせて設けられた薄肉部分および厚肉部分を備え、
前記ブロー工程時に、前記薄肉部分を前記長辺部分に成形し、前記厚肉部分を前記短辺部分に成形する、扁平ボトルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、扁平ボトル、および扁平ボトルの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば下記特許文献1に示されるように、ボトル軸に直交する横断面視で、一対の短辺部分と一対の長辺部分とを有する長方形状を呈する弾性変形可能な胴部を備えた扁平ボトルが知られている。
この種の扁平ボトルとして、押出成形により形成されたパリソンをブロー成形することで形成される押出しブロー容器が知られている。一般に、パリソンの肉厚は、ボトル軸方向の同じ位置で、周方向の全長にわたって同じになっているので、ブロー工程時の延伸量の差に起因して、短辺部分の肉厚が長辺部分の肉厚より薄くなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第3992988号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の扁平ボトルでは、減圧状態になると、一対の長辺部分のうちのいずれか一方のみにおいて、径方向の内側に向けた変形が進行し、いずれか他方の変形が開始、若しくは進行する前に、扁平ボトル内の減圧状態が解消、若しくは緩和されていた。これにより、扁平ボトル内の減圧時に、一対の長辺部分がそれぞれ、径方向の内側に向けて同等の量変形することはなく、一対の長辺部分のうちのいずれか一方のみが、径方向の内側に向けて大きく変形する、いわゆる片引きが発生するという問題があった。
【0005】
本発明は、このような事情を考慮してなされたもので、減圧時に、一対の長辺部分をそれぞれ、径方向の内側に向けて同等の量変形させることができる扁平ボトル、および扁平ボトルの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決して、このような目的を達成するために、本発明の扁平ボトルは、ボトル軸に直交する横断面視で、一対の短辺部分と一対の長辺部分とを有した長方形状を呈する弾性変形可能な胴部を備え、前記長辺部分が、前記横断面視で径方向の外側に向けて膨出した突曲面状を呈し、前記胴部において、ボトル軸方向の同じ位置における肉厚が、周方向の全長にわたって同等とされ、前記一対の長辺部分の外周面に、径方向の内側に向けて窪み、かつ周方向の大きさが、ボトル軸方向の大きさより大きい横長のパネル面部が各別に設けられ、前記短辺部分と前記長辺部分とは、角部を介して周方向に接続され、前記胴部におけるボトル軸方向の同じ位置において、前記短辺部分および前記長辺部分の各肉厚が、互いにほぼ同じで、前記角部の肉厚は、前記短辺部分および前記長辺部分の各肉厚より薄くなっている
【0007】
この発明によれば、胴部において、ボトル軸方向の同じ位置における肉厚が、周方向の全長にわたって同等になっているので、短辺部分の肉厚が長辺部分の肉厚より薄くなっている従来と比べて、長辺部分における周方向の両端部の剛性を向上させることができる。したがって、扁平ボトル内の減圧時に、一対の長辺部分のうちのいずれか一方のみが、径方向の内側に向けて変形しても、この変形の進行が従来と比べて抑止されることとなり、扁平ボトル内の減圧状態が解消、若しくは緩和される前に、いずれか他方の変形を開始、若しくは進行させることができる。これにより、扁平ボトル内の減圧時に、一対の長辺部分をそれぞれ、径方向の内側に向けて同等の量変形させることが可能になり、片引きが発生するのを抑制することができる。
【0008】
一対の長辺部分の外周面に、径方向の内側に向けて窪むパネル面部が各別に設けられているので、扁平ボトル内の減圧時に、パネル面部を起点に、長辺部分を広範囲にわたって均等に、径方向の内側に向けて変形させることができる。これにより、扁平ボトル内の減圧時に、一対の長辺部分のうちのいずれか一方のみが、径方向の内側に向けて変形しても、その変形の進行が緩められることとなり、扁平ボトル内の減圧状態が解消、若しくは緩和される前に、いずれか他方の変形を開始、若しくは進行させることができるとともに、一対の長辺部分それぞれの、径方向の内側に向けた変形量を容易に同等にすることができる。
【0009】
パネル面部が、周方向の大きさがボトル軸方向の大きさより大きい横長に形成されているので、パネル面部の周方向の端部を、長辺部分の周方向の端部に、周方向に近付けることができる。したがって、前記横断面視で、径方向の外側に向けて膨出した突曲面状を呈する長辺部分の外周面と、パネル面部の周方向の端部と、の間の段差を、パネル面部の深さを確保しても低く抑えることができる。これにより、扁平ボトル内の減圧時に、パネル面部の周方向の端部と、長辺部分の外周面と、の接続部分に応力が集中するのを抑制することが可能になり、扁平ボトル内の減圧時に、この接続部分が径方向の内側に向けて反転変形するのを抑制することができる。
【0010】
前記パネル面部における周方向の両端縁は、前記長辺部分における周方向の両端縁に近接してもよい。
【0011】
この場合、パネル面部における周方向の両端縁が、長辺部分における周方向の両端縁に近接しているので、パネル面部の周方向の端部と、長辺部分の外周面と、の間の段差を確実に低く抑えることができる。
【0012】
前記パネル面部におけるボトル軸方向の中央部は、前記胴部におけるボトル軸方向の中央部に位置してもよい。
【0013】
この場合、パネル面部におけるボトル軸方向の中央部が、胴部におけるボトル軸方向の中央部に位置しているので、扁平ボトル内の減圧時に、長辺部分を広範囲にわたって均等に、径方向の内側に向けて確実に変形させることができる。
【0014】
前記横断面視で、前記パネル面部の表面は、周方向の全長にわたって、径方向の外側に向けて突の曲面状を呈してもよい。
【0015】
この場合、前記横断面視で、パネル面部の表面が、周方向の全長にわたって、長辺部分と同様に、径方向の外側に向けて突の曲面状を呈するので、前述したように、パネル面部の周方向の端部と、長辺部分の周方向の端部と、が周方向に互いに近付けられていることと相俟って、パネル面部の深さを確保しても、パネル面部の周方向の端部と、長辺部分の外周面と、の間の段差が高くなるのを確実に抑えることができる。
【0016】
本発明の扁平ボトルの製造方法は、押出成形により上下方向に延びるパリソンを形成するパリソン形成工程と、一対の成形金型により前記パリソンを径方向に挟み込み、前記パリソンの上端開口を開放した状態で前記パリソンの下端開口を閉塞し、前記パリソンを、一対の前記成形金型間のキャビティ内に位置させる型締め工程と、前記パリソン内に加圧エアを供給し、前記パリソンを延伸させることによって、本発明の扁平ボトルを形成するブロー工程と、を有し、前記パリソンは、周方向の位置を互いに異ならせて設けられた薄肉部分および厚肉部分を備え、前記ブロー工程時に、前記薄肉部分を前記長辺部分に成形し、前記厚肉部分を前記短辺部分に成形してもよい。
【0017】
この発明によれば、パリソンが、周方向の位置を互いに異ならせて設けられた薄肉部分および厚肉部分を備え、ブロー工程時に、薄肉部分を長辺部分に成形し、厚肉部分を短辺部分に成形する。すなわち、ブロー工程時の延伸量が大きい短辺部分が、パリソンの厚肉部分から成形され、ブロー工程時の延伸量が小さい長辺部分が、パリソンの薄肉部分から成形されるので、胴部において、ボトル軸方向の同じ位置における肉厚が、周方向の全長にわたって同等となっている扁平ボトルを確実に形成することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、扁平ボトル内の減圧時に、一対の長辺部分をそれぞれ、径方向の内側に向けて同等の量変形させることができるとともに、このような扁平ボトルを確実に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明に係る一実施形態として示した扁平ボトルの、短軸方向から見た側面図である。
図2】本発明に係る一実施形態として示した扁平ボトルの、長軸方向から見た側面図である。
図3図1のIII-III線矢視断面図である。
図4図1のIV-IV線矢視断面図である。
図5】パリソンの横断面図である。
図6】胴部のボトル軸方向の中央部における肉厚分布を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照し、本発明の一実施形態に係る扁平ボトル1について説明する。
扁平ボトル1は、図1および図2に示されるように、口部11、肩部12、胴部13、および底部14が、ボトル軸O方向に沿って上方から下方に向けてこの順に連設されて構成されている。口部11、および肩部12それぞれのボトル軸Oに直交する横断面視形状は円形状となっている。胴部13、および底部14それぞれの前記横断面視形状は長方形状となっている。
以下、ボトル軸O方向から見て、ボトル軸Oに交差する方向を径方向といい、ボトル軸O回りに周回する方向を周方向という。
【0021】
扁平ボトル1は、押出成形により形成されたパリソンをブロー成形することで形成された、押出しブロー容器となっている。扁平ボトル1は、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PP(ポリプロピレン)、PE(ポリエチレン)、ナイロン(ポリアミド)、およびEVOH(エチレン-ビニルアルコール共重合体)等の合成樹脂材料で形成されている。
【0022】
扁平ボトル1に充填される内容物としては、例えば、固体および液体の混合物、粉チーズ、洗剤、クラッシュゼリー、並びに果肉入りジャム等が挙げられる。
扁平ボトル1の内容積は、例えば100ml以上4000ml以下の内容物が充填される大きさとなっている。図示の例では、扁平ボトル1は、約200mlの内容物が充填されるのに用いられる大きさとなっている。
【0023】
胴部13の前記横断面視形状は、図3に示されるように、一対の短辺部分15と一対の長辺部分16とを有する長方形状とされ、胴部13は弾性変形可能に形成されている。一対の長辺部分16を、径方向の内側に向けて押し込んで弾性変形させることで、内容物が口部11から円滑に吐出される。短辺部分15と長辺部分16とが、角部18を介して周方向に接続されている。一対の短辺部分15における周方向の中央部同士を結ぶ直線(長軸La)と、一対の長辺部分16における周方向の中央部同士を結ぶ直線(短軸Lb)と、が、ボトル軸O上で交差している。
【0024】
胴部13の、長軸Laに沿う長軸方向の大きさW1は、短軸Lbに沿う短軸方向W2の大きさの、例えば1.15倍以上2倍以下となっている。短辺部分15の短軸方向に沿う大きさW4は、例えば10mm以上30mm以下(図示の例では、約19.2mm)となっている。長辺部分16の長軸方向に沿う大きさW3は、例えば50mm以上70mm以下(図示の例では、約60.8mm)となっている。
【0025】
短辺部分15および長辺部分16のうちの少なくとも一方が、ボトル軸O方向の全長にわたって真直ぐ延びている。図2に示されるように、長辺部分16が、ボトル軸O方向の全長にわたって、ボトル軸O方向に沿って真直ぐ延びている。図1に示されるように、短辺部分15のうち、上端部は、上方に向かうに従い、径方向の内側に向けて延び、上端部より下方に位置する部分は、ボトル軸O方向に沿って真直ぐ延びている。
【0026】
なお、短辺部分15は、ボトル軸O方向の全長にわたって、ボトル軸O方向に沿って真直ぐ延びてもよい。長辺部分16のうち、上端部が、上方に向かうに従い、径方向の内側に向けて延び、上端部より下方に位置する部分が、ボトル軸O方向に沿って真直ぐ延びてもよい。
ここで、底部14は、扁平なカップ状に形成され、底部14の外周面は、下方に向かうに従い、径方向の内側に向けて延びている。
【0027】
胴部13の肉厚は、例えば0.2mm以上0.8mm以下、好ましくは0.4mm以上0.6mm以下となっている。胴部13において、ボトル軸O方向の同じ位置における肉厚が、周方向の全長にわたって同等になっている。すなわち、胴部13におけるボトル軸O方向の同じ位置において、肉厚の最小値は、肉厚の最大値の、例えば80%以上100%以下となっている。
【0028】
図6に実線で示されるように、胴部13のボトル軸O方向の中央部において、肉厚の最小値が約0.46mmとされ、肉厚の最大値が約0.63mmとされていて、肉厚の最小値が、肉厚の最大値の約73%となっている。図6に示されるA~Hは、図3に示される周方向の位置と対応している。短辺部分15(C、G)および長辺部分16(A、E)の各肉厚は、互いにほぼ同じで、角部18(B、D、F、H)の肉厚は、短辺部分15および長辺部分16の各肉厚よりわずかに薄くなっている。なお、角部18の肉厚を、短辺部分15および長辺部分16の各肉厚以上としてもよい。
【0029】
図3に示されるように、短辺部分15、長辺部分16、および角部18の前記横断面視形状は、径方向の外側に向けて膨出した突曲面状となっている。なお、短辺部分15の前記横断面視形状は、短軸方向に沿って真直ぐ延びてもよい。
前記横断面視において、短辺部分15、長辺部分16、および角部18のなかで、長辺部分16の曲率半径が最大で、角部18の曲率半径が最小となっている。前記横断面視で、長辺部分16の曲率半径は、例えば50mm以上200mm以下となっている。
【0030】
一対の長辺部分16の外周面に、径方向の内側に向けて窪み、かつ周方向の大きさが、ボトル軸O方向の大きさより大きい横長のパネル面部17が各別に設けられている。パネル面部17における周方向の両端縁17aは、長辺部分16における周方向の両端縁16aに近接している。パネル面部17における周方向の端縁17aと、長辺部分16における周方向の端縁16aと、の長軸方向に沿う間隔Xは、例えば5.0mm以下(図示の例では、約1.5mm)となっている。この間隔Xは、長辺部分16における長軸方向の大きさW3の、例えば12%以下、好ましくは8%以下、さらに好ましくは3%以下(図示の例では、約2.5%)となっている。
【0031】
図1に示されるように、パネル面部17は、短軸方向から見て、横長の楕円形状を呈する。なお、パネル面部17の、短軸方向から見た形状は、例えば横長の長方形状、若しくは円形状等であってもよい。パネル面部17の長軸方向の大きさは、パネル面部17のボトル軸O方向の大きさの、例えば1倍以上6倍以下となっている。
【0032】
パネル面部17におけるボトル軸O方向の中央部は、胴部13におけるボトル軸O方向の中央部に位置している。図示の例では、短軸方向から見て、パネル面部17の中央部は、長辺部分16の中央部と一致している。なお、短軸方向から見て、パネル面部17の中央部は、長辺部分16の中央部に対して、周方向にずれてもよいし、ボトル軸O方向にずれてもよい。
【0033】
図3に示されるように、ボトル軸Oに直交する横断面視で、径方向の外側を向くパネル面部17の表面は、周方向の全長にわたって、径方向の外側に向けて突の曲面状を呈する。前記横断面視において、パネル面部17における周方向の端縁17aは、長辺部分16の外周面における周方向の端部に段差なく連なっている。前記横断面視において、パネル面部17の表面の曲率半径は、長辺部分16の外周面の曲率半径より大きくなっている。
図4に示されるように、ボトル軸Oに沿う縦断面視で、パネル面部17の表面は、ボトル軸O方向の全長にわたって、径方向の内側に向けて窪む曲面状を呈する。
【0034】
次に、以上のように構成された扁平ボトル1の製造方法について説明する。
【0035】
まず、押出成形によりパリソンWを形成する(パリソン形成工程)。この際、パリソンWは、ダイスヘッドから下方に向けて押出され、上下方向に延びている。以下、パリソンWの中心軸線を前述したボトル軸Oという。
図5に示されるように、パリソンWは、周方向の位置を互いに異ならせて設けられた薄肉部分W1および厚肉部分W2を備えている。薄肉部分W1は、パリソンWのなかで最も厚さが薄い部分とされ、厚肉部分W2は、パリソンWのなかで最も厚さが厚い部分となっている。薄肉部分W1および厚肉部分W2は、ボトル軸Oを中心に約90°離れて位置している。ボトル軸O方向から見て、パリソンWの外周面は円形状を呈し、パリソンWの内周面は楕円形状を呈する。パリソンWの肉厚は、周方向に沿って薄肉部分W1から厚肉部分W2に向かうに従い厚くなっている。
なお、パリソンWに代えて、ボトル軸O方向から見て、外周面が楕円形状を呈し、内周面が円形状を呈するパリソンを採用してもよい。
【0036】
次に、ダイスヘッドから押出されたパリソンWを、一対の成形金型により径方向に挟み込み、パリソンWの上端開口を開放した状態でパリソンWの下端開口を閉塞し、パリソンWを、一対の成形金型間のキャビティ内に位置させる(型締め工程)。
この際、薄肉部分W1を、キャビティ内面のうち、長辺部分16を成形する部分に対向させ、厚肉部分W2を、キャビティ内面のうち、短辺部分15を成形する部分に対向させる。これにより、薄肉部分W1の外周面と、キャビティ内面のうち、長辺部分16を成形する部分と、の間の間隔は、厚肉部分W2の外周面と、キャビティ内面のうち、短辺部分15を成形する部分と、の間の間隔より狭くなっている。
【0037】
次に、パリソンW内に加圧エアを供給し、パリソンWを延伸させて、キャビティ内面に押し当てる。この際、薄肉部分W1が、キャビティ内面のうち、長辺部分16を成形する部分に押し当てられて長辺部分16に成形され、厚肉部分W2が、キャビティ内面のうち、短辺部分15を成形する部分に押し当てられて短辺部分15が成形される(ブロー工程)。以上より、扁平ボトル1が形成される。
なお、型締め工程時に、パリソンW内に、その上端開口からプラグを進入させて嵌合し、パリソンWの上部を、プラグの外周面とキャビティ内面とにより挟み込み、扁平ボトル1の口部11を成形し、その後、ブロー工程時に、プラグに形成された供給孔からパリソンW内に加圧エアを供給してもよい。
【0038】
以上説明したように、本実施形態による扁平ボトル1によれば、胴部13において、ボトル軸O方向の同じ位置における肉厚が、周方向の全長にわたって同等になっているので、短辺部分15の肉厚が長辺部分16の肉厚より薄くなっている従来と比べて、長辺部分16における周方向の両端部の剛性を向上させることができる。したがって、扁平ボトル1内の減圧時に、一対の長辺部分16のうちのいずれか一方のみが、径方向の内側に向けて変形しても、この変形の進行が従来と比べて抑止されることとなり、扁平ボトル1内の減圧状態が解消、若しくは緩和される前に、いずれか他方の変形を開始、若しくは進行させることができる。これにより、扁平ボトル1内の減圧時に、一対の長辺部分16をそれぞれ、径方向の内側に向けて同等の量変形させることが可能になり、片引きが発生するのを抑制することができる。
【0039】
一対の長辺部分16の外周面に、径方向の内側に向けて窪むパネル面部17が各別に設けられているので、扁平ボトル1内の減圧時に、パネル面部17を起点に、長辺部分16を広範囲にわたって均等に、径方向の内側に向けて変形させることができる。これにより、扁平ボトル1内の減圧時に、一対の長辺部分16のうちのいずれか一方のみが、径方向の内側に向けて変形しても、その変形の進行が緩められることとなり、扁平ボトル1内の減圧状態が解消、若しくは緩和される前に、いずれか他方の変形を開始、若しくは進行させることができるとともに、一対の長辺部分16それぞれの、径方向の内側に向けた変形量を容易に同等にすることができる。
【0040】
パネル面部17が、周方向の大きさがボトル軸O方向の大きさより大きい横長に形成されているので、パネル面部17の周方向の端部を、長辺部分16の周方向の端部に、周方向に近付けることができる。したがって、前記横断面視で、径方向の外側に向けて膨出した突曲面状を呈する長辺部分16の外周面と、パネル面部17の周方向の端部と、の間の段差を、パネル面部17の深さを確保しても低く抑えることができる。これにより、扁平ボトル1内の減圧時に、パネル面部17の周方向の端部と、長辺部分16の外周面と、の接続部分に応力が集中するのを抑制することが可能になり、扁平ボトル1内の減圧時に、この接続部分が径方向の内側に向けて反転変形するのを抑制することができる。
【0041】
パネル面部17における周方向の両端縁17aが、長辺部分16における周方向の両端縁16aに近接しているので、パネル面部17の周方向の端部と、長辺部分16の外周面と、の間の段差を確実に低く抑えることができる。
【0042】
パネル面部17におけるボトル軸O方向の中央部が、胴部13におけるボトル軸O方向の中央部に位置しているので、扁平ボトル1内の減圧時に、長辺部分16を広範囲にわたって均等に、径方向の内側に向けて確実に変形させることができる。
【0043】
前記横断面視で、パネル面部17の表面が、周方向の全長にわたって、長辺部分16と同様に、径方向の外側に向けて突の曲面状を呈するので、前述したように、パネル面部17の周方向の端部と、長辺部分16の周方向の端部と、が周方向に互いに近付けられていることと相俟って、パネル面部17の深さを確保しても、パネル面部17の周方向の端部と、長辺部分16の外周面と、の間の段差が高くなるのを確実に抑えることができる。
【0044】
本実施形態による扁平ボトル1の製造方法によれば、パリソンWが、周方向の位置を互いに異ならせて設けられた薄肉部分W1および厚肉部分W2を備え、ブロー工程時に、薄肉部分W1を長辺部分16に成形し、厚肉部分W2を短辺部分15に成形する。すなわち、ブロー工程時の延伸量が大きい短辺部分15が、パリソンWの厚肉部分W2から成形され、ブロー工程時の延伸量が小さい長辺部分16が、パリソンWの薄肉部分W1から成形されるので、胴部13において、ボトル軸O方向の同じ位置における肉厚が、周方向の全長にわたって同等となっている扁平ボトル1を確実に形成することができる。
【0045】
本発明は上記した実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0046】
例えば前記実施形態では、前記横断面視で、パネル面部17の表面が、周方向の全長にわたって、径方向の外側に向けて突の曲面状を呈する構成を示したが、径方向の内側に向けて突の曲面状を呈してもよいし、直線状に延びてもよい。
前記横断面視において、パネル面部17における周方向の端縁17aが、長辺部分16の外周面における周方向の端部に段部を介して連なっていてもよい。
【0047】
扁平ボトル1は、単層構造体に限らず中間層を有する積層構造体としてもよい。中間層としては、例えばガスバリア性を有する樹脂材料からなる層、再生材からなる層、若しくは酸素吸収性を有する樹脂材料からなる層等が挙げられる。
【0048】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【0049】
次に、検証試験について説明する。
【0050】
まず、前記実施形態で示した薄肉部分W1および厚肉部分W2を備えたパリソンWと質量が同じで、肉厚が全周にわたって同じになっているパリソンを用いて、扁平ボトルを形成した。
この扁平ボトルでは、図6に破線で示されるように、胴部のボトル軸方向の中央部において、肉厚の最小値が約0.32mmとされ、肉厚の最大値が約0.83mmとされていて、肉厚の最小値が、肉厚の最大値の約38.6%となっていることが確認された。短辺部分(C、G)および角部(B、D、F、H)の各肉厚は、互いにほぼ同じで、長辺部分(A、E)の肉厚が、短辺部分および角部の各肉厚と比べて2倍程度厚くなっている。
【0051】
次に、前記間隔Xが異なる複数種の扁平ボトルについて、内圧が低下する過程での、一対の長辺部分の径方向の内側に向けた各変形量の差を、数値解析により確認した。
実施例1として、前記間隔Xが約1.53mm(長辺部分16における長軸方向の大きさW3の約2.5%)の扁平ボトル1を採用し、実施例2として、前記間隔Xが約5.04mm(長辺部分16における長軸方向の大きさW3の約8.3%)の扁平ボトルを採用し、比較例1として、前記間隔Xが約14.0mm(長辺部分16における長軸方向の大きさW3の約23.0%)で、かつパネル面部の、短軸方向から見た形状が円形状となっている扁平ボトルを採用した。
【0052】
その結果、実施例1、2では、内圧が低下する過程で、一対の長辺部分の径方向の内側に向けた各変形量の差がいったん大きくなった後に、小さくなることが確認された。つまり、扁平ボトル内の減圧時に、一対の長辺部分のうちのいずれか一方のみが、径方向の内側に向けて変形しても、扁平ボトル内の減圧状態が解消、若しくは緩和される前に、いずれか他方の変形が開始、若しくは進行することが確認された。
比較例1では、扁平ボトル内の減圧時に、一対の長辺部分のうちのいずれか一方のみに、径方向の内側に向けた変形が進行し、いずれか他方の変形が開始、若しくは進行する前に、扁平ボトル内の減圧状態が解消、若しくは緩和されたことが確認された。
実施例1では、内圧が大きく低下しても、パネル面部17の周方向の端部と、長辺部分16の外周面と、の接続部分が径方向の内側に向けて反転変形しないことが確認された。
【符号の説明】
【0053】
1 扁平ボトル
11 口部
12 肩部
13 胴部
14 底部
15 短辺部分
16 長辺部分
16a 長辺部分における周方向の端縁
17 パネル面部
17a パネル面部における周方向の端縁
O ボトル軸
W パリソン
W1 薄肉部分
W2 厚肉部分
図1
図2
図3
図4
図5
図6