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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-28
(45)【発行日】2023-10-06
(54)【発明の名称】オゾン処理装置および処理装置
(51)【国際特許分類】
   A61L 2/20 20060101AFI20230929BHJP
   A61L 9/015 20060101ALI20230929BHJP
   E05D 15/28 20060101ALI20230929BHJP
   A61L 101/10 20060101ALN20230929BHJP
【FI】
A61L2/20 100
A61L9/015
E05D15/28
A61L101:10
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019135789
(22)【出願日】2019-07-24
(65)【公開番号】P2021016730
(43)【公開日】2021-02-15
【審査請求日】2022-06-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000128496
【氏名又は名称】株式会社オーク製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100090169
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 孝
(74)【代理人】
【識別番号】100124497
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 洋樹
(72)【発明者】
【氏名】吉田 悠太
(72)【発明者】
【氏名】五味 工
【審査官】上坊寺 宏枝
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-017808(JP,A)
【文献】特開2004-360180(JP,A)
【文献】特開2001-115727(JP,A)
【文献】特開2006-045906(JP,A)
【文献】特表2003-521413(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0305964(US,A1)
【文献】韓国登録特許第10-2025040(KR,B1)
【文献】特開平10-216207(JP,A)
【文献】特開2017-086257(JP,A)
【文献】国際公開第2013/084485(WO,A1)
【文献】実開昭50-128116(JP,U)
【文献】実開平03-130959(JP,U)
【文献】特開2012-192060(JP,A)
【文献】米国特許第06264901(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 2/20-2/28
A61L 9/015
E05D 15/10、15/28、15/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オゾン処理対象物を収容可能な空間領域を内部に形成した筐体と、
前記空間領域内にオゾンを生成するオゾン生成部と、
前記筐体の前面に形成された開口を密閉可能であって、密閉位置で前記筐体の前面の一部を構成する開閉扉と、
前記開閉扉を、一端が前記筐体内に取り付けられたアームによって、筐体左右方向に移動させる開閉機構とを備え、
前記開閉機構が、前記開閉扉を、前記開口を密閉するときの姿勢を保ちながらの筐体前方側への移動を伴って密閉位置から筐体側面側へ移動させ
前記開閉扉が、前記開閉扉の筐体上下方向外側縁が、筐体後方向に前記前面を超える位置まで、移動可能であることを特徴とするオゾン処理装置。
【請求項2】
前記開閉機構が、前記開閉扉を、密閉位置から筐体前方側への移動量が大きくなるほど筐体左右方向への移動量が大きくなるように、移動させることを特徴とする請求項1に記載のオゾン処理装置。
【請求項3】
前記開閉機構が、前記開閉扉を、楕円軌道もしくは楕円軌道に近い軌道に沿って移動させることを特徴とする請求項1または2に記載のオゾン処理装置。
【請求項4】
前記開閉機構が、前記開閉扉が筐体前方側へ前記開閉扉の幅半分以下となる所定距離に達するまでの間、前記開閉扉を前記開口に対し略平行な姿勢で移動させることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のオゾン処理装置。
【請求項5】
オゾン処理対象物を収容可能な空間領域を内部に形成した筐体と、
前記空間領域内にオゾンを生成するオゾン生成部と、
前記筐体の前面に形成された開口を密閉可能であって、密閉位置で前記筐体の前面の一部を構成する開閉扉と、
前記開閉扉を、一端が前記筐体内に取り付けられたアームによって、筐体左右方向に移動させる開閉機構とを備え、
前記開閉機構が、前記開閉扉を、前記開口を密閉するときの姿勢を保ちながらの筐体前方側への移動を伴って密閉位置から筐体側面側へ移動させ、
前記開閉機構が、前記開閉扉が筐体前方側へ前記開閉扉の幅半分以下となる所定距離に達するまでの間、前記開閉扉を前記開口に対し略平行な姿勢で移動させ、
前記開閉機構が、前記開閉扉の前記所定距離到達後、前記開閉扉を回転させながら移動させることを特徴とするオゾン処理装置。
【請求項6】
前記開閉扉が、前記開閉扉の筐体上下方向外側縁が、筐体後方向に前記前面を超える位置まで、移動可能であることを特徴とする請求項5に記載のオゾン処理装置。
【請求項7】
前記開閉扉の筐体上下方向内側縁が、前記開閉扉の最も開いた開放位置で、筐体左右方向に沿って前記前面を超えないことを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載のオゾン処理装置。
【請求項8】
前記開閉扉が、一対の開き戸から成る両開き扉であり、
一方の扉に対する手動開閉操作に連動して、他方の扉を動かす連動機構をさらに備えることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載のオゾン処理装置。
【請求項9】
前記開閉扉は、筐体上下方向内側縁付近にハンドルを備え、
前記ハンドルは、筐体左右方向に沿って90cm以下の範囲で移動可能であり、
前記開閉扉が密閉位置から開放位置へ移動する間、前記開閉扉の内側縁が前記前面から筐体前方側に60cm以下の距離の範囲で移動することを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載のオゾン処理装置。
【請求項10】
脱臭、洗浄、除菌、殺菌、滅菌の少なくともいずれか1つの処理を行うことが可能な処理装置であって、
処理対象物を収容可能な空間領域を内部に形成した筐体と、
前記筐体の前面に形成された開口を密閉可能であって、密閉位置で前記筐体の前面の一部を構成する開閉扉と、
前記開閉扉を、一端が前記筐体内に取り付けられたアームによって、筐体左右方向に移動させる開閉機構とを備え、
前記開閉機構が、前記開閉扉を、筐体前方側へのせり出しを伴って密閉位置から筐体側面側へ移動させ
前記開閉扉が、前記開閉扉の筐体上下方向外側縁が、筐体後方向に前記前面を超える位置まで、移動可能であることを特徴とする処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オゾン生成などによって脱臭、除菌などの処理を行う処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
医療施設や介護施設では、車いす、歩行器などの移動用器具やマットレスなどの用具に対し、定期的なメンテンナンスとして洗浄、脱臭、除菌などの処理が行われる。例えば、洗浄液を対象器具などに噴霧して洗浄する方法が知られている(特許文献1参照)。また、エキシマランプによってオゾンを生成し、オゾンによって対象物の脱臭、除菌処理を行う装置が知られている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-309号公報
【文献】特開2019-17808号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の処理装置では、医療や介護現場などにおいて従事する看護師、介護士等が立った状態で操作することを想定した構成になっている。車いすを使用する人などがハンドル操作によって扉を開け、車いすなどの器具を装置内に収容し、扉を閉めることを想定していない。そのため、そのような人々にとっては装置の扱いが容易でない。
【0005】
したがって、車いすを使用する人などに対しても扉の開閉操作がしやすい処理装置が求められる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のオゾン処理装置は、オゾン処理対象物を収容可能な空間領域を内部に形成した筐体と、空間領域内にオゾンを生成するオゾン生成部と、筐体の前面に形成された開口を密閉可能な開閉扉と、開閉扉を、筐体左右方向に移動させる開閉機構とを備える。筐体は、例えば直方体状に構成可能である。また、オゾン生成部は、エキシマランプなどを備えることが可能である。開閉扉は、1つの扉で構成することが可能であり、また、両開きの扉で構成することも可能である。
【0007】
本発明では、開閉機構が、開閉扉を、開口を密閉するときの姿勢を保ちながらの筐体前方側への移動を伴って密閉位置から筐体側面側へ移動させる。ここで、「開口を密閉するときの姿勢を保つ」とは、開口に対する開閉扉の姿勢を実質的に維持することを表し、厳密に姿勢変化なく開口に対して完全に平行状態であることに限定されるものではない。また、「筐体前方側への移動を伴って」とは、筐体側面方向への移動を伴いながら姿勢を維持する構成も含まれることを表す。
【0008】
開閉扉の移動の仕方は様々であり、車いすの使用者を考慮すると、開閉機構が、開閉扉を、密閉位置から筐体前方側への移動量が大きくなるほど筐体左右方向への移動量が大きくなるように、移動させる構成にすることが可能である。例えば、開閉機構が、開閉扉を、楕円軌道もしくは楕円軌道に近い軌道に沿って移動させればよい。
【0009】
開閉機構は、開閉扉が筐体前方側へ開閉扉の幅半分以下となる所定距離に達するまでの間、開閉扉を開口に対し略平行な姿勢で移動させることも可能である。すなわち、密閉位置から前方側へせり出しながら筐体側面方向へ移動可能である。そして、開閉機構が、開閉扉の所定距離到達後、開閉扉を回転させながら移動させることが可能である。ここで「回転」とは、開閉扉の開口(筐体)に対する姿勢を変化させる動きを表す。
【0010】
開閉機構は、開閉扉を最も開いた開放位置まで移動させることが可能である。このときの開閉扉の位置、姿勢は様々である。例えば、開閉扉が、開閉扉の筐体上下方向外側縁が、筐体後方向に前面を超える位置まで、移動可能であるように構成することができる。また、開閉扉の筐体上下方向内側縁が、開閉扉の最も開いた開放位置で、筐体左右方向に沿って前面を超えないように構成することも可能である。
【0011】
開閉扉が、一対の開き戸から成る両開き扉で構成される場合、一方の扉に対する手動開閉操作に連動して、他方の扉を動かす連動機構をさらに備えることが可能である。
【0012】
開閉扉は、例えば、筐体上下方向内側縁付近にハンドルを備える。ハンドルは、筐体左右方向に沿って90cm以下の範囲で移動可能であり、開閉扉が密閉位置から開放位置へ移動する間、開閉扉の内側縁が前面から筐体前方側に60cm以下の距離の範囲で移動するように構成することが可能である。
【0013】
本発明の他の態様である処理装置は、脱臭、洗浄、除菌、殺菌、滅菌の少なくともいずれか1つの処理を行うことが可能な処理装置であって、処理対象物を収容可能な空間領域を内部に形成した筐体と、筐体の前面に形成された開口を密閉可能な開閉扉と、開閉扉を、筐体左右方向に移動させる開閉機構とを備え、開閉機構が、開閉扉を、筐体前方側へのせり出しを伴って密閉位置から筐体側面側へ移動させる。ここで、「せり出しを伴って」とは、筐体側面側へ移動しながら筐体前方側への突出する動きが含まれることを示す。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、車いすを使用する人などに対しても扉の開閉操作がしやすい処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本実施形態であるオゾン処理装置の概略的斜視図である。
図2】オゾン処理装置の概略的正面図である。
図3】オゾン処理装置の概略的ブロック図である。
図4】開閉扉が開いたときのオゾン処理装置の概略的斜視図である。
図5】開閉扉が開いたときのオゾン処理装置の上から見た図である。
図6】開閉扉が開くときのアームおよび開き戸の動きを示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下では、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
【0017】
図1は、本実施形態であるオゾン処理装置の概略的斜視図である。図2は、オゾン処理装置の概略的正面図である。
【0018】
オゾン処理装置10は、オゾンによって器具などを脱臭、除菌可能な装置であり、ここでは、車いすを含めた移動用補助器具を収容可能な筐体15を備えている。車いすの使用者は、バスケットボールなどの競技用車いすを脱臭、除菌するために自ら運んでオゾン処理装置10に収容することができる。開閉扉20は、筐体15の前面15Fに設けられ、前面15Fに形成された開口15Pを密閉可能である。ここでは、開閉扉20が一対の開き戸20A、20Bによって構成されている。
【0019】
一対の開き戸20A、20Bは、それぞれハンドル22A、22Bを備え、開き戸20A、20Bの上下方向に沿った扉中心側の縁(上下方向内側縁)21A1、21B1付近において対向配置されている。また、ハンドル22Bの下方には、ロックハンドル24が設けられ、開き戸20Bの背面側にはソレノイド機構(図示せず)が設けられている。車いすの使用者は、ハンドル22A、22Bを手動操作することで、開閉扉20を自在に開閉することができる。なお、筐体15内部からも開閉扉20を開閉できるようにしてもよい。
【0020】
車いす使用者による開閉操作が行われることを考慮すると、ハンドル22A、22Bは、床下から60~120cmの範囲に設置すればよい。また、ロックハンドル24は、床下から30~110cm(好ましくは40~90cm)の範囲に設置すればよい。
【0021】
筐体15の前面15Fには、筐体15の側面15S2と、開き戸20Bの上下方向に沿った外側の縁(上下方向外側縁)21B2との間に操作パネル30が設けられている。車いす使用者による操作が行われることを考慮すると、操作パネル30は、床下から80~110cmの範囲で設置すればよい。使用者は、操作パネル30を操作することによって、オゾン処理時間などを調整し、オゾン処理を開始させることができる。
【0022】
筐体15の高さHと幅W、および開閉扉20によって密閉された開口15Pの幅W1は、車いす使用者による使用を考慮した高さH、幅W、W1にそれぞれ定められる。ここでは、高さHは140cm以下、幅W1は90cm以上、幅Wは幅W1より大きい値に定められている。また、幅Wの値は、高さHの値より大きく、筐体15が横長のエリアに定められている。
【0023】
図3は、オゾン処理装置10の概略的ブロック図である。
【0024】
オゾン処理装置10は、オゾン生成手段51(エキシマランプなど)を含むオゾン生成部52と、オゾン除去手段(活性炭や触媒など)、ファンなどを含むオゾン除去部54と、オゾン処理を制御する制御部50とを備えている。制御部50は、操作パネル30からの操作信号に基づいて、オゾン生成部52、オゾン除去部54を動作制御する。なお、オゾン生成部52とオゾン除去部54を一体的に構成してもよい。
【0025】
開閉扉20がロックされた後、操作パネル30に対してオゾン処理開始の操作が行われると、制御部50がオゾン生成部52を動作制御する。エキシマランプの紫外線照射によってオゾンが発生し、筐体15内に充満する。オゾン処理中、開閉扉20はロックされている。なお、人が筐体15内にいることが検知されている間、ソレノイド機構によって開閉扉20のロックが禁止される。また、オゾン処理中でも、開閉扉20の内外両側からロック解除および開閉操作によって開閉扉20を開閉することが可能である。
【0026】
オゾン処理終了後、制御部50は、オゾン除去部54を動作制御し、オゾンを除去する。オゾン濃度が所定値以下になると、オゾン除去を終了させ、操作パネル30に終了を知らせる表示を行う。
【0027】
図4は、開閉扉20が開いたときのオゾン処理装置の概略的斜視図である。図5は、開閉扉20が開いたときのオゾン処理装置の上から見た図である。
【0028】
開閉扉20の一方の開き戸20Aには、筐体上下方向の上端側、下端側にそれぞれ一対のアーム60、70が連結している。一対のアーム60は、アーム60A、60Bから構成され、その一端61A、61Bが筐体15の側面15S1付近に設けられた支柱15T1(図5では図示せず)に軸回転自在に取り付けられ、他端62A、62Bは開き戸20Aの背面側に軸回転自在に取り付けられている。
【0029】
アーム70A、70Bから成る一対のアーム70も同様の構成であり、筐体上下方向に沿って設けられた支柱64A、64Bによってアーム60A、60Bとそれぞれ連結している。
【0030】
アーム60A、アーム60Bは、それぞれ折れ曲がり部分63A、63Bを有し、アーム60Aの方が、アーム60Bと比べて折れ曲がり部分角度が大きい。また、アーム60Aの端部61Aは、アーム60Bの端部61Bよりも筐体前方側に位置し、筐体側面15S1により近い(図5参照)。一方、アーム60Aの他方の端部62Aは、折れ曲がり部分63Aによってアーム60Bの端部62Bよりも筐体側面15S1により近い箇所で開き戸20Aと連結している。
【0031】
このような二対のアーム60、70は、それぞれ、開き戸20A、支柱15T1を含めて1自由度の連鎖機構として構成され、開き戸20Aの開閉機構となっている。二対のアーム60、70は、開き戸20Aを、筐体15の内部空間Sを密閉した位置(密閉位置)から図4、5に示す最も開いた位置(開放位置)までの範囲で移動させる。開閉時の軌道は楕円に近い軌道であり、開き戸20Aは同じ軌道で開放位置から密閉位置へ移動する。
【0032】
開き戸20Bについても、二対のアーム80、90が開き戸20Bの背面側と筐体15の側面15S2付近の支柱(図示せず)に軸回転自在に連結され、同様の楕円に沿うような軌道で開き戸20Bを開閉させる。後述するように、二対のアーム80、90は、連動機構によって二対のアーム60、70と接続されており、一方のアームの開閉移動に応じて他方のアームも開閉移動する。なお、筐体15のサイズに応じて、筐体上下方向の中央付近に一対のアームから成る機構を採用して開閉扉20を開閉させてもよい。
【0033】
図6は、開閉扉が開くときのアーム60および開き戸20Bの動きを示した図である。
【0034】
例えば、車いす使用者がハンドル22Aを操作して密閉位置にある開き戸20Aを開ける動作を行うと、開き戸20Aは、前方側へせり出すとともに側面側に向けて移動する。この間、開き戸20Aは、開口15Pに対して略平行な姿勢を保ちながら移動する。開き戸20Aの移動開始直後は、前方側へ向けてそのまませり出し、筐体左右方向への移動量はほとんどない。開き戸20Aの前方側への移動量(移動距離)が大きくなるにつれて、筐体左右方向への移動量が大きくなっていく。このような開き戸20Aの移動は、開き戸20Aが、開口15Pの幅半分以下である所定距離Bに達するまで続く。
【0035】
二対のアーム60、70は、連動機構95によって反対側の二対のアーム60、70と連結している。そのため、開き戸20Aの動きに連動して開き戸20Bも同様に動く。連動機構95は、ここではラック&ピニオン式の機構で構成されている。
【0036】
開き戸20Aが前方側に所定距離Bだけせり出す位置に達すると、開き戸20Aが回転し始め(回り始め)、開口15Pに対する姿勢が変化する。上下方向に沿った外側縁21A2が側面15S1へ近づき、上下方向に沿った内側縁21A1が開口15Pから前方側へ離れていく。すなわち、開き戸20Aは側面15S1側へ回り込むように回転する。
【0037】
図4、5に示すように、開き戸20Aの開放位置における上下方向外側縁21Aは、筐体後方向に筐体15の前面15F(開口15P)を超える位置まで移動している。一方、開き戸20Aの上下方向内側縁21Bは、筐体左右方向に沿って前面15Fを超えていない。
【0038】
以上のように、二対のアーム60、70が、開き戸20に対し、前方側へのせり出し、前方側への移動量増加に伴う筐体側面方向への移動量増加、そして姿勢変化を伴う回転という動きをさせることにより、車いす使用者がハンドル22A操作しても開閉扉20を開閉しやすくなっている。
【0039】
具体的には、車いす使用者がハンドル22Aを手前に引いた直後、ヒンジ構造の扉のように扉が軸回転せず、開き戸20Aは自身の方向に近づくため、ハンドル24Aが引きやすい。また、開き戸20Aの前方側へのせり出し(移動量)が大きくなるにつれて側面側への移動量が大きくなることで、車いす使用者に対して開き戸20Aが必要以上に接近することがなく、筐体側面側へ開き戸20を開けるために自然なハンドル操作を続けることができる。
【0040】
そして、開き戸20Aが側面15S1側へ回り込むように回転するため、開き戸20Aの左右方向への移動量を抑え、オゾン処理装置10の設置場所においてスペース制限があっても、開閉扉20を開放位置まで移動させることが可能となる。さらに、開き戸20Bの開放位置によって操作パネル30が前面側から見て隠れることになり、誤操作を防ぐことができる。それとともに、筐体15の内部空間Sの側面15S1、15S付近には、前方から見て隠れたスペースが確保されるため、オゾン生成部52などを配置することが可能となる。
【0041】
一方、開閉扉20を閉じるとき、開き戸20Aは、密閉位置近くでは筐体15の前後方向に沿ってそのまま移動するため、車いす使用者は、開き戸20Aを筐体15側へ押し付けながら閉じることができる。そのため、開き戸20Aは確実に密閉位置に到達し、筐体15の気密性を高めることができる。
【0042】
二対のアーム80、90が連動機構95によって二対のアーム60、70の動きに連動するため、車いす使用者は一方の開き戸20Aを片手操作で開けるだけで、他方の開き戸20Bも合わせて開けることができる。なお、二対のアーム80、90、および二対のアーム60、70を連動させず、開き戸20A、開き戸20Bが独立して開閉するようにしてもよい。
【0043】
このように本実施形態によれば、オゾン処理装置10は、開閉扉20を筐体15の前面15Fに備え、開閉扉20は、開き戸20A,20Bの両開き扉で構成される。開き戸20Aは、二対のアーム60、70によって開閉し、開き戸20Bは、二対のアーム80、90によって開閉する。開き戸20A、20Bは、筐体前方側へのせり出しを伴って密閉位置から側面側へ移動する。
【0044】
車いす使用者によるハンドル操作を考慮すると、ハンドル22A、22Bの筐体左右方向の移動量は90cm以内にすることが好ましく、開口15Pの幅を90cm以上にした場合でも、開閉操作が安定する。より好ましくは、70cm以下であるのがよい。また、開き戸20Aが密閉位置から開放位置へ移動する間、開き戸20Aの内側縁21A1が前面15Fから前方側に60cm以下の距離の範囲で開き戸20Aが動くようにするのがよい。
【0045】
なお、開閉扉20を開閉させる機構については様々な機構が適用可能であって、開閉扉20を筐体左右方向にスライドさせる運動が主体となるようにしてもよく、さらに、二対のアーム60、70、および80、90の関節が曲がるようにして、開閉扉20のより大きな回転や全体的なスライド移動を可能にしてもよい。
【0046】
本実施形態では開閉扉20は両扉で構成されているが、筐体15のサイズなどに応じて1枚の扉で構成してもよい。また、車いす以外の歩行器など移動用補助器具などを収容可能な装置にしてもよく、あるいは、車いすが収容できないサイズのオゾン処理装置に対し適用してもよい。さらに、オゾンによる脱臭、除菌処理などを行うオゾン処理装置だけでなく、洗浄液などを利用して、脱臭、除菌、殺菌、滅菌などを行う装置に対しても、本実施形態の開閉扉および開閉機構を適用することが可能である。
【0047】
なお、エキシマランプを使用してオゾンを生成する場合、発生したオゾンが筐体の下側に溜まりやすく、筐体の上側のオゾン濃度の上昇に時間がかかるので、処理対象物に対し除菌、脱臭が効果的に行えない。しかしながら、本実施形態では、筐体15の開口幅Wが筐体高さHより大きいため、効果的に除菌、脱臭を行うことができる。
【0048】
したがって、上述した開閉扉以外の機構で扉を開閉させるオゾン処理装置の提供も可能である。すなわち、オゾン処理対象物を収容可能な空間領域を内部に形成した筐体と空間領域内にオゾンを生成するオゾン生成部と、筐体の前面に形成された開口を密閉可能な開閉扉と開閉扉を、筐体左右方向に移動させる開閉機構とを備え、筐体の幅が、筐体の高さよりも大きいオゾン処理装置を提供することが可能である。例えば、筐体の開口幅は、筐体の高さ(開口の高さ)以上にすることができる。
【符号の説明】
【0049】
10
15 筐体
15P 開口
20 開閉扉
20A 開き戸
20B 開き戸
60~90 アーム(開閉機構)
52 オゾン生成部
図1
図2
図3
図4
図5
図6