(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-28
(45)【発行日】2023-10-06
(54)【発明の名称】吹付機用操縦支援装置およびこれを用いた吹付け作業方法
(51)【国際特許分類】
E21D 11/10 20060101AFI20230929BHJP
【FI】
E21D11/10 D
(21)【出願番号】P 2019218446
(22)【出願日】2019-12-03
【審査請求日】2022-05-17
(31)【優先権主張番号】P 2018247241
(32)【優先日】2018-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(72)【発明者】
【氏名】高倉 克彦
(72)【発明者】
【氏名】西田 与志雄
(72)【発明者】
【氏名】加藤 崇
(72)【発明者】
【氏名】木下 勇人
(72)【発明者】
【氏名】友野 雄士
(72)【発明者】
【氏名】小仲井 一朗
(72)【発明者】
【氏名】竹中 計行
【審査官】佐久間 友梨
(56)【参考文献】
【文献】実開昭49-047433(JP,U)
【文献】特開平06-323094(JP,A)
【文献】特開2018-121195(JP,A)
【文献】特開2003-013699(JP,A)
【文献】特開2000-226996(JP,A)
【文献】特開2001-233597(JP,A)
【文献】特開2000-055653(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 11/00-19/06
23/00-23/26
E04G 21/00-21/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オペレータの吹付作業位置よりも切羽側の位置から支保工周りでの吹付材の吹付け情報を撮像可能に自身単体で地上に設置される吹付け情報撮像部と、
該吹付け情報撮像部で撮像された吹付け情報を切羽後方の位置にて無線もしくは有線で取得する吹付け情報処理部と、
該吹付け情報処理部が取得した吹付け情報をオペレータが認識可能な支保工周辺画像として表示するヘッドマウントディスプレイによる画像表示部と、
を有することを特徴とする吹付機用操縦支援装置。
【請求項2】
前記吹付け情報撮像部は、広角二眼の撮像部により遠近感を有する支保工周辺画像を撮像可能に構成されるとともに、当該吹付け情報撮像部の視野中心軸を水平または垂直に設定可能に構成されて当該吹付け情報撮像部を単独で地上に設置可能な支持体上に設けられている請求項1に記載の吹付機用操縦支援装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の吹付機用操縦支援装置を用い、山岳トンネルの掘削における吹付け作業を行う方法であって、
前記吹付け情報撮像部を、オペレータの吹付作業位置よりも切羽側の位置であって支保工周りでの吹付材の吹付け情報を撮像可能な地上に設置し、
前記地上に設置された吹付け情報撮像部で撮像された画像を、前記吹付け情報撮像部よりも後方に配置された前記吹付け情報処理部に無線もしくは有線で送信し、
前記ヘッドマウントディスプレイをオペレータが装着して、前記吹付け情報撮像部で取得されたる画像を見て吹付機を遠隔操作により操縦することを特徴とする吹付け作業方法。
【請求項4】
前記吹付け情報撮像部を、前回建込みを行った支保工よりも切羽側に配置するとともに、前回建込みを行った支保工の切羽側を当該吹付け情報撮像部の撮像範囲に入れるように地上に設置する請求項3に記載の吹付け作業方法。
【請求項5】
オペレータの吹付作業位置よりも切羽側の位置から支保工周りでの吹付材の吹付け情報を撮像可能となるように、オペレータの吹付作業位置から切羽側の位置に向けて移動可能である吹付機本体のブーム先端部に備えられたマンケージの下方に位置するように設置される吹付け情報撮像部と、
該吹付け情報撮像部で撮像された吹付け情報を切羽後方の位置にて無線もしくは有線で取得する吹付け情報処理部と、
該吹付け情報処理部が取得した吹付け情報をオペレータが認識可能な支保工周辺画像として表示するヘッドマウントディスプレイによる画像表示部と、を有し、
前記
マンケージの下方には、当該
マンケージを地上面に対して水平方向に旋回させるチルト機構を備えたチルト架台が設けられており、
前記吹付け情報
撮像部である魚眼カメラは、当該ブーム先端を水平軸として上下に回動可能であり、前記チルト架台により地上面に対して水平方向に旋回可能である、
ことを特徴とする吹付機用操縦支援装置。
【請求項6】
前記吹付け情報撮像部は、広角二眼の撮像部により遠近感を有する支保工周辺画像を撮像可能に構成されることを特徴とする請求項5に記載の吹付機用操縦支援装置。
【請求項7】
請求項5に記載の吹付機用操縦支援装置を用い、山岳トンネルの掘削における吹付け作業を行う方法であって、
前記吹付け情報撮像部を、オペレータの吹付作業位置よりも切羽側の位置であって支保工周りでの吹付材の吹付け情報を撮像可能となるように該マンケージに設置し、
前記マンケージに設置された吹付け情報撮像部で撮像された画像を、前記吹付け情報撮像部よりも後方に配置された前記吹付け情報処理部に無線もしくは有線で送信し、前記ヘッドマウントディスプレイをオペレータが装着して、前記吹付け情報撮像部で取得されたる画像を見て吹付機を遠隔操作により操縦することを特徴とする吹付け作業方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、山岳トンネルの切羽での掘削におけるコンクリート等の吹付材の吹付け技術に関する。
【背景技術】
【0002】
山岳トンネルの切羽での掘削において、吹付機を操縦するオペレータは、吹付材の吹付け状況を正確に確認するために、ある程度まで吹付け部に接近して吹付機を操縦している。
【0003】
一方、吹付材の跳ね返りや切羽崩落への巻込まれによるオペレータの被災を回避することが極めて重要である。そのため、オペレータは、吹付材の吹付け状況をある程度視認できる範囲で、吹付け部から離れた吹付作業位置(一般的には切羽から4~5m離れた位置)で吹付機を操縦している。
【0004】
しかし、この吹付作業位置であっても、吹付材の跳ね返りの影響が皆無とはいえない。そのため、オペレータの安全性をより向上させるためには、切羽からさらに離れた吹付作業位置で操縦を行うことが望まれる。
【0005】
これに対し、近年、山岳トンネルにおいて、正確かつ安全な吹付け作業を実現するために、吹付け作業を支援する種々の支援システムが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1記載の支援システムでは、吹付機にカメラを設置するとともに、吹付け作業用のモニタ室を設けている。そして、モニタ室内に配置されたモニタに、カメラによる撮像情報とともに複数の支援情報を表示させて、吹付け作業におけるナビゲーションを行うものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1記載の支援システムでは、オペレータは、トンネルの切羽内の吹付け部の状況を、モニタに表示された数値情報や画像情報などによる複数の支援情報を見ながら吹付機を操縦する。そのため、オペレータには、当該支援システムを運用する特別な技能が必要となる上、吹付け作業は、連続的に操作と吹付けを行うので、複数の画面と数値を見ながらの作業では必ずしも作業効率が向上するとはいえず、オペレータの実視野またはそれに近い状態で支援情報を取得することが望まれる。
【0008】
そこで、本発明は、このような問題点に着目してなされたものであって、山岳トンネルの掘削における吹付け作業において、オペレータの吹付け作業の安全性をより向上させるとともに、オペレータの実視野またはそれに近い状態で支援情報を取得することにより吹付け状況の確認性をより向上させ得る、吹付機用操縦支援装置およびこれを用いた吹付け作業方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の一態様に係る吹付機用操縦支援装置は、オペレータの吹付作業位置よりも切羽側の位置であって支保工周りでの吹付材の吹付け情報を撮像可能に地上に設置される吹付け情報撮像部と、該吹付け情報撮像部で撮像された吹付け情報を切羽後方の位置にて無線もしくは有線で取得する吹付け情報処理部と、該吹付け情報処理部が取得した吹付け情報をオペレータが認識可能な支保工周辺画像として表示するヘッドマウントディスプレイによる画像表示部と、を有することを特徴とする。
【0010】
本発明の一態様に係る吹付機用操縦支援装置によれば、吹付け情報撮像部が、オペレータの吹付作業位置よりも切羽側の位置であって支保工周りでの吹付材の吹付け情報を撮像可能に地上に設置される。
そして、吹付け情報処理部は、吹付け情報取得部で撮像された吹付け情報を切羽後方の位置にて無線もしくは有線で取得し、画像表示部は、吹付け情報処理部が取得した吹付け情報をオペレータが認識可能な支保工周辺画像としてヘッドマウントディスプレイに表示できる。
【0011】
これにより、本発明の一態様に係る吹付機用操縦支援装置によれば、山岳トンネルの掘削における吹付け作業において、切羽側の位置に吹付け情報撮像部(例えば魚眼カメラ)を配置し、後方の吹付け情報処理部(例えばコンピュータ等のデータ処理装置)に無線もしくは有線で送信できるため、オペレータは、吹付材の跳ね返り範囲から離れた吹付作業位置で吹付機を遠隔操作できる。
【0012】
したがって、吹付材の跳ね返り範囲から十分はなれた位置で操縦できるため、吹付材の跳ね返りによる影響を回避できる。よって、オペレータの吹付け作業の安全性をより向上させることができる。
そして、オペレータは、ヘッドマウントディスプレイに表示された画像表示部に表示された支保工周辺画像を見て吹付機を操縦できるので、オペレータの実視野またはそれに近い状態で支援情報を取得することにより、吹付け状況の確認性をより向上させることができる。
【0013】
また、上記課題を解決するために、本発明の一態様に係る吹付け作業方法は、本発明のいずれか一の態様に係る吹付機用操縦支援装置を用い、山岳トンネルの掘削における吹付け作業を行う方法であって、前記吹付け情報撮像部を、オペレータの吹付作業位置よりも切羽側の位置であって支保工周りでの吹付材の吹付け情報を撮像可能な地上に設置し、前記地上に設置された吹付け情報撮像部で撮像された画像を、前記吹付け情報撮像部よりも後方に配置された前記吹付け情報処理部に無線もしくは有線で送信し、前記ヘッドマウントディスプレイをオペレータが装着して、前記吹付け情報撮像部で取得されたる画像を見て吹付機を遠隔操作により操縦することを特徴とする。
【0014】
本発明の一態様に係る吹付け作業方法によれば、本発明のいずれか一の態様に係る吹付機用操縦支援装置を用い、山岳トンネルの掘削における吹付け作業を行う。これにより、オペレータは、ヘッドマウントディスプレイに表示される支保工周辺画像を見て離れた位置から吹付機の遠隔操縦を行える。そのため、オペレータの吹付け作業の安全性をより向上させることができる。
そして、オペレータは、ヘッドマウントディスプレイの画像表示部に表示された支保工周辺画像を見て吹付機を操縦できるので、オペレータの実視野またはそれに近い状態で支援情報を取得することにより、吹付け状況の確認性をより向上させることができる。
【0015】
上記課題を解決するために、請求項5に係る発明である吹付機用操縦支援装置は、オペレータの吹付作業位置よりも切羽側の位置から支保工周りでの吹付材の吹付け情報を撮像可能となるように、オペレータの吹付作業位置から切羽側の位置に向けて移動可能である吹付機本体のブーム先端部に備えられたマンケージの下方に位置するように設置される吹付け情報撮像部と、 該吹付け情報撮像部で撮像された吹付け情報を切羽後方の位置にて無線もしくは有線で取得する吹付け情報処理部と、該吹付け情報処理部が取得した吹付け情報をオペレータが認識可能な支保工周辺画像として表示するヘッドマウントディスプレイによる画像表示部と、を有し、前記マンケージの下方には、当該マンケージを地上面に対して水平方向に旋回させるチルト機構を備えたチルト架台が設けられており、前記吹付け情報撮像部である魚眼カメラは、当該ブーム先端を水平軸として上下に回動可能であり、前記チルト架台により地上面に対して水平方向に旋回可能である、ことを特徴とする。
【0016】
請求項6に係る発明は、請求項5に記載の吹付機用操縦支援装置において、 前記吹付け情報撮像部は、広角二眼の撮像部により遠近感を有する支保工周辺画像を撮像可能に構成されていることを特徴とする。
これにより、請求項5に係る発明である吹付機用操縦支援装置によれば、山岳トンネルの掘削における吹付け作業において、切羽側の位置に吹付け情報撮像部(例えば魚眼カメラ)を近づけ、後方の吹付け情報処理部(例えばコンピュータ等のデータ処理装置)に無線もしくは有線で送信できるため、オペレータは、吹付材の跳ね返り範囲から離れた吹付作業位置で吹付機を遠隔操作できる。
【0017】
したがって、切羽崩落への巻込まれによるオペレータの被災を回避でき、さらに、崩落による吹付材の跳ね返り範囲から十分はなれた位置で操縦できるため、吹付材の跳ね返りによる影響を回避できる。よって、オペレータの吹付け作業の安全性をより向上させることができる。
そして、オペレータは、ヘッドマウントディスプレイに表示された画像表示部に表示された支保工周辺画像を見て吹付機を操縦できるので、オペレータの実視野またはそれに近い状態で支援情報を取得することにより、吹付け状況の確認性をより向上させることができる。
【0018】
また、上記課題を解決するために、請求項7に係る発明である吹付け作業方法は、請求項5に係る発明の吹付機用操縦支援装置を用い、山岳トンネルの掘削における吹付け作業を行う方法であって、前記吹付け情報撮像部を、オペレータの吹付作業位置よりも切羽側の位置であって支保工周りでの吹付材の吹付け情報を撮像可能となるように該マンケージに設置し、前記マンケージに設置された吹付け情報撮像部で撮像された画像を、前記吹付け情報撮像部よりも後方に配置された前記吹付け情報処理部に無線もしくは有線で送信し、前記ヘッドマウントディスプレイをオペレータが装着して、前記吹付け情報撮像部で取得されたる画像を見て吹付機を遠隔操作により操縦することを特徴とする。
【0019】
請求項7に係る発明の吹付け作業方法によれば、請求項5に係る発明の吹付機用操縦支援装置を用い、山岳トンネルの掘削における吹付け作業を行う。これにより、オペレータは、ヘッドマウントディスプレイに表示される支保工周辺画像を見て離れた位置から吹付機の遠隔操縦を行える。そのため、オペレータの吹付け作業の安全性をより向上させることができる。
そして、オペレータは、ヘッドマウントディスプレイの画像表示部に表示された支保工周辺画像を見て吹付機を操縦できるので、オペレータの実視野またはそれに近い状態で支援情報を取得することにより、吹付け状況の確認性をより向上させることができる。
【発明の効果】
【0020】
上述のように、本発明によれば、山岳トンネルの掘削における吹付け作業において、オペレータの吹付け作業の安全性をより向上させるとともに、オペレータの実視野またはそれに近い状態で支援情報を取得することにより吹付け状況の確認性をより向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の一態様に係る吹付機用操縦支援装置を用いた吹付け作業の一実施形態を説明する模式図であり、同図(a)は、トンネルの切羽およびその近傍におけるトンネル子午面断面とトンネル内での吹付け作業のイメージとを併せて図示し、同図(b)は、(a)で用いている吹付機用操縦支援装置の構成をブロック図にて示している。
【
図2】
図1に示す魚眼カメラの構成例を説明する模式図であり、同図(a)は内部構造の平面図、(b)は正面図、(c)は側面図である。
【
図3】トンネルでの支保工および吹付け作業の一例を説明する模式図であり、同図(a)は、トンネルの切羽およびその近傍におけるトンネル子午面断面、(b)は(a)に一点鎖線で示す矢印部分の断面を示している。
【
図4】トンネルでの支保工および吹付け作業の一例を説明する模式図であり、同図(a)は、トンネルの切羽とその近傍におけるトンネル子午面断面、(b)は(a)に一点鎖線で示す矢印部分の断面を示している。
【
図5】トンネルでの支保工および吹付け作業の一例を説明する模式図であり、同図(a)は、トンネルの切羽およびその近傍におけるトンネル子午面断面とトンネル内での吹付け作業のイメージとを併せて示し、(b)は(a)に一点鎖線で示す矢印部分の断面を示している。
【
図6】本発明の一態様に係る吹付機用操縦支援装置を用いた吹付け作業として好適な他の実施形態を説明する模式図であり、同図は、トンネルの切羽とその近傍におけるトンネル子午面断面とトンネル内での吹付け作業のイメージを併せて図示している。
【
図7】
図1に示す魚眼カメラの構成の他の例(第一変形例)を説明する模式図であり、同図(a)は内部構造の平面図、(b)は正面図、(c)は側面図である。
【
図8】
図1に示す魚眼カメラの構成の他の例(第二変形例)を説明する模式図であり、同図(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は側面図である。
【
図9】
図8に示す魚眼カメラの支持体を含む構成を説明する模式図であり、同図(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は側面図である。
【
図10】
図9に示す魚眼カメラおよびその支持体の設置例を説明する模式的平面図である。
【
図11】従来の吹付け作業の一例を説明する模式図であり、同図(a)は、トンネルの切羽およびその近傍におけるトンネル子午面断面とトンネル内での吹付け作業のイメージとを併せて図示している。
【
図12】他の態様に係る吹付機用操縦支援装置を用いた吹付け作業の第2実施形態を説明する模式図であり、同図(a)は、トンネルの切羽およびその近傍におけるトンネル子午面断面とトンネル内での吹付け作業のイメージとを併せて図示し、同図(b)は、(a)で用いている魚眼カメラとマンケージの部分を拡大した図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
[第1実施形態:地上設置型吹付け情報撮像部]
以下、本発明の一実施形態について、図面を適宜参照しつつ説明する。なお、図面は模式的なものである。そのため、厚みと平面寸法との関係、比率等は現実のものとは異なることに留意すべきであり、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている。
また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記の実施形態に特定するものではない。
【0023】
図1に示すように、本実施形態の操縦支援装置10は、魚眼カメラ20と、コンピュータ30と、ヘッドマウントディスプレイ(HMD)40と、を有する。
本実施形態の魚眼カメラ20は、吹付け情報撮像部であり、オペレータPまたは支援作業者が、魚眼カメラ20を支保工部Dまたはその近傍の地上に配置する。同図(a)の例は、支保工部Dの近傍の地上に配置した例である。
【0024】
より具体的には、本実施形態の魚眼カメラ20は、オペレータPの吹付作業位置Sよりも切羽K側の位置であって支保工H周りでの吹付材Mの吹付け情報を撮像可能な位置に設置される。
【0025】
図2に示すように、魚眼カメラ20は、筐体24と、筐体24内に収容された左右一対の撮像部21、22とを有する。各撮像部21、22は、広角な魚眼レンズを有し、これにより、広角二眼の撮像部により、遠近感を持ってかつ臨場感を持った画像を撮像可能になっている。
【0026】
撮像部21、22の撮像側は、透明材料(例えばアクリルや強化ガラス)からなる保護ドーム23によって覆われている。各撮像部21、22は、後方のコンピュータ30に無線もしくは有線で撮像の信号を送信可能になっている。
筐体24の下部には、筐体24の傾倒姿勢やレベルを調整可能な三脚25が支持体として装備されている。本実施形態では、三脚25は、筐体24の傾倒姿勢として、
図1に示す水平姿勢と、
図6に示す垂直姿勢との間の任意の姿勢(角度)に設定可能に地上に設置される支持脚になっている。
【0027】
ここで、山岳トンネルの掘削における吹付け作業において、例えばブルートゥース(登録商標)による無線を切羽Kで使用した場合、ジャンボなどの作業機器(鉄物)の影響で通信できない状況になるおそれがある。また、山岳トンネル内においては、無線仕様での不具合は原因がすぐに特定できない可能性がある。そのため、無線仕様よりも有線仕様の方が望ましい。なお、有線にすることで無線よりも画像品質についても向上させることができる。
【0028】
本実施形態では、魚眼カメラ20は、撮像した吹付け情報によるオペレータPが認識可能な遠近感を有する支保工周辺画像を、魚眼カメラ20よりも後方のコンピュータ30に有線で送信する。これにより、コンピュータ30は、オペレータPの実視野またはそれに近い状態で支援情報を取得可能になっている。なお、左右一対の撮像部21、22は、同一の構成を有するので、以下、第一の撮像部21について説明する。
【0029】
第一の撮像部21は、魚眼レンズが装着された光学レンズ部21aと、光学レンズ部21aの後部に設けられた処理部21bと、を有する。筐体24内には、第一の撮像部21用のバッテリ21cと、通信部21dとが設けられ、バッテリ21cと、通信部21dとは、ケーブルを介して処理部21bに接続されている。
【0030】
信号線および電源のケーブルは、各撮像部21、22を防護する筐体24内での配線と筐体24の外側の同軸ケーブルによる配線と、を筐体外側のコネクタ部(不図示)で着脱可能に接続される。電源は、各撮像部21、22毎に、交流100Vが直流12Vに変換されてバッテリ21cに供給される。なお、同軸ケーブルは、人に踏まれたりすると断線する可能性があるため、耐荷性の高いケーブルが用いられている。
【0031】
魚眼カメラ20は、筐体24の適所に以下図示しない排気口が設けられ、筐体内が図示しないファンにより送風および排気されて冷却可能になっている。なお、筐体24内に送風がなされると、透明な保護ドーム23に静電気が発生して埃などが吸着される可能性がある。この場合には、保護ドーム23への静電気除去剤の塗布や送風方向の調整などが必要になる。
【0032】
コンピュータ30は、吹付け情報処理部であり、上記魚眼カメラ20で撮像された吹付け情報を切羽K後方の位置にて無線もしくは有線で取得する。同図の例では、上述のように有線で撮像された吹付け情報を取得している。
HMD40は、画像表示部であり、コンピュータ30が取得した吹付け情報を、オペレータPが認識可能な遠近感を有する支保工周辺画像としてHMD40の表示部に表示可能に構成されている。なお、画像表示に係る処理については、周知の技術を必要に応じて採用できるので、詳細説明は省略する。
【0033】
オペレータPは、HMD40を自身の顔に装着するとともに、遠隔操作器50を操作可能に両手で所持している。HMD40は、表示部に遠近感を有する画像をオペレータPが視認可能なように構成されている。
そして、吹付機60は、遠隔操作器50で遠隔操作可能にシステムが構成されており、これにより、本実施形態では、オペレータPは、跳ね返った吹付け材Mrの跳ね返り範囲から離れた吹付作業位置Sにて、魚眼カメラ20からの遠近感を有する支保工周辺画像を見て、遠隔操作器50によって吹付機60を操縦可能になっている。
【0034】
次に、上記吹付機用操縦支援装置10を用いた吹付け作業方法について説明する。
吹付け作業手順としては、まず、
図3に示すように、第一工程として、切羽Kの掘削(次期の支保工建込み部までの範囲)がなされる。次いで、
図4に示すように、第二工程として、支保工Hの建込みが行われる。
次いで、
図5に示すように、第三工程として、切羽Kの肌落ちを防止するために、吹付機60による切羽Kおよび支保工Hの建込み部分への吹付け作業が行われる。切羽の肌落ち(崩落)が懸念される場合や、掘削面が軟弱と予想される場合は必要に応じて切羽Kへの吹付けが支保工Hの建込みより先になることがある。
【0035】
ここで、従来は、
図11に一例を示すように、切羽Kの肌落ち防止のために行う吹付け作業では、吹付機60のオペレータPが切羽Kから4~8m程度の後方の位置で吹付け作業を行っている。その際、オペレータPは、吹付け箇所の確認などを目視によって行いながら吹付け作業をする。
つまり、従来は、オペレータPが、吹付部の状況を視認できる位置で吹付機60の操縦を行っている。そのため、オペレータPが、跳ね返った吹付け材Mrにより被災するおそれがある。また、切羽Kの崩落に巻き込まれるおそれがある。なお、同図において符号Mrで示す矢印は、跳ね返った吹付け材Mrのイメージを示している(他の図において同様)。
【0036】
これに対し、本実施形態では、オペレータPの安全性および視認性を向上させるために、
図1に示したように、従来の操縦者位置Sjに魚眼カメラ20を設置し、魚眼カメラ20で撮像することによって切羽Kおよび支保工Hの建込み部分への吹付材Mの吹付け状況を捉えることができる。
【0037】
同図の例では、上記三脚25による姿勢調整機能によって魚眼カメラ20の視野中心軸が水平となるように筐体24の傾倒姿勢を設定し、魚眼カメラ20の視野方向を切羽Kに対向するように設置している。
【0038】
本実施形態では、山岳トンネルTの掘削における吹付け作業において、従来の吹付作業位置Sjや前回建込み支保工Hの位置よりも切羽K側の位置に魚眼カメラ20を配置し、この魚眼カメラ20で取得した遠近感を有する画像を、魚眼カメラ20よりも後方のコンピュータ30に無線もしくは有線で送信する。
【0039】
そして、オペレータPは、HMD40を装着して、魚眼カメラ20からコンピュータ30に無線もしくは有線で送信された遠近感を有する画像を確認しながら、吹付機60を遠隔操作器50で操縦できる。
【0040】
これにより、オペレータPは、吹付機60の後方で吹付け作業を行えるので、吹付材Mの跳ね返り範囲から十分はなれた位置で操縦できる。そのため、切羽Kから離れた位置で作業を行うことにより、肌落ちに対する安全性が向上する。また、支保工周りの吹付け作業の状況の確認性も向上する。
【0041】
以上説明したように、本実施形態では、二眼の魚眼カメラ20とHMD40を導入した吹付機用操縦支援装置10により、魚眼カメラ20前方の広角の範囲を、遠近感を持ってかつ臨場感を持ってHMD40で疑似的に見渡すことができる。これにより、オペレータPは、切羽Kから離れた位置で安全に且つ臨場感を持って吹付け状況をより確実に把握しつつ、吹付機60を操縦できる。
【0042】
[実施例]
次に、上記吹付機用操縦支援装置10を用い、山岳トンネルTの掘削における吹付け作業を行った実施例について説明する。
発明者らは、実際の切羽Kでの状況下(切羽形状、照度など)で、上記操縦支援装置10を用い、魚眼カメラ20を上記の位置Sjに対応する複数の位置に配置して、HMD40による切羽の視認性を確認した。なお、1KW程度の100Vの電源は切羽Kで確保可能である。また、切羽Kでは100~300ルックスの明るさが確保されている。
【0043】
本実施例では、上記吹付機用操縦支援装置10の機能の検証に加え、切羽Kに対して、上記魚眼カメラ20を1セット配置すればよいか、2セット必要か否かを確認するために、切羽Kでの作業が行われていない時間帯に、魚眼カメラ20およびHMD40を含む上記操縦支援装置10を実際の切羽Kに持ち込んで、断面が大規模な山岳トンネルにて視認範囲の確認作業を実施した。なお、オペレータPは、ヘルメットと防塵マスク(フルフェイスマスクを除く)装着した状態でHMD40を装着可能である。
【0044】
本実施例では、広角二眼の魚眼カメラ20を、切羽Kに向かって中央の位置、ならびに中央から5m右側で切羽Kからの離隔距離が3m、4m、5mとなる位置であって切羽Kの面に直交する向きにそれぞれ設置して切羽Kの視認性を確認した。
切羽Kからの距離を3m、4m、5mとしたのは、現場での状況確認時に、オペレータPの作業位置Sj(
図11参照)が、主に切羽Kの面から4m程度の離隔位置であったためである。
【0045】
切羽Kの照度は、天端照明のみでは中央部で200LUX(5m右で120LUX、端部で85LUX)程度であるが、これに吹付機60の照明が加わると、中央部で400LUX(5m右で200LUX)程度に向上した。上記吹付機用操縦支援装置10を用い、HMD40による切羽Kの視認性を確認した結果は、天端照明のみの場合でも良好であり、吹付機60の照明が加わるとさらに画像が鮮明となった。
【0046】
切羽Kから3m離れた位置では、切羽Kの視認範囲が狭く感じるものの、オペレータPが主に吹付け作業を行う切羽から4m離れた位置ならびに5m離れた位置では、十分な視認範囲が得られた。
但し、現場の状況から、吹付け作業時には、魚眼カメラ20を更に1セットを用意して、ホース類の取り回しを行う補助者に、交代使用用の魚眼カメラ20の移動・設置を行ってもらう方法を採用することが、作業効率を向上させる上でより好ましいことが判った。
【0047】
ここで、本実施例では、曇りの無い状態のアクリル製ならびに強化ガラス製の保護ドーム23を用意し、それぞれの保護ドーム23を通して魚眼カメラ20の見え具合を確認した。その結果、いずれの場合であっても、上記魚眼カメラ20により、アクリル製ならびに強化ガラス製の保護ドーム23の存在を忘れさせるような鮮明な画像が得られた。
【0048】
特に、切羽Kからの距離が、オペレータPと同程度の位置に配置したとき、アクリル製ならびに強化ガラス製の保護ドーム23への吹付け材Mの固着状況を確認した。その結果、アクリル製ならびに強化ガラス製の保護ドーム23ともに汚れることを確認したものの、魚眼カメラ20のアクリルドーム全面がペーストで覆われてしまうような状況にはならず、いずれの材質の保護ドーム23であっても、トンネル奥側の状況を十分に視認でき、吹付け作業が可能な視認性が得られることが確認された。
【0049】
ただし、粉末状の微粒子がアクリル製の保護ドーム23に多く付着していた。微粒子の付着が多いためか、アクリル製の方が強化ガラス製に比べて若干鮮明さに欠けている箇所があった。
以上、本実施例に示すように、本発明に係る、魚眼カメラ20とHMD40とを備える吹付機用操縦支援装置10の導入による遠隔操作の吹付け作業方法は、実際の切羽Kの状況下(切羽形状、照度など)において十分に採用できることが確認された。
【0050】
なお、本発明に係る、魚眼カメラ20とHMD40を備える吹付機用操縦支援装置10の導入による吹付け作業の遠隔操作は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しなければ種々の変形が可能である。
例えば上記実施形態では、オペレータPが遠隔操作器50によって吹付機60の操縦を行う例を示したが、これに限定されず、本実施形態の吹付機用操縦支援装置10で示したトンネル技術は、「自動吹付け」にも適用できる。
【0051】
ここで、
図11に従来例を示したように、支保工部(切羽Kの面から1.5m程度後方から切羽までの範囲)Dでの吹付材Mの吹付けにおいては、オペレータPからは、同図に符号Vpで示す矢印のように、前回設置した支保工Hの、切羽側のフランジとウェブとの間を直接見通すことが困難である。
【0052】
そのため、オペレータPは、フランジとウェブとの間に吹付材Mの吹付けを行いながら、吹付材Mが層状に盛り上がってきた部分(同図に斜線で示す符号Gの部分)を視認することで、フランジとウェブとの間の吹付けが完了したと判断している。
【0053】
しかし、前回建込んだ支保工Hの切羽K側のフランジとウェブ間は、オペレータPが視認できない(視認できる位置に立ち入ることが危険作業となる)。そのため、従来は、その箇所の吹付工の状況を直接視認困難なため、吹付け量もしくは吹付け厚さが不十分となる懸念がある。
【0054】
フランジとウェブ間への吹付材の吹付け量もしくは吹付け厚さが不十分であると、肌落ちの原因となることが考えられる。そのため、フランジとウェブ間への吹付け状況を、より確実に確認することが望まれる。しかし、例えば、上記特許文献1記載の支援システムでは、吹付機自体にカメラを設置しているので、フランジとウェブとの間の吹付け状態を監視する上では、未だ改善の余地が残される。
【0055】
これに対し、本実施形態の吹付機用操縦支援装置10によれば、遠近感を有する支保工周辺画像を撮像可能な吹付け情報撮像部である魚眼カメラ20を、前回建込まれた支保工Hよりも切羽K側に配置し、前回建込まれた支保工Hの切羽側を魚眼カメラ20の視界に入れるように吹付機60とは無関係に種々の位置に設置できる。よって、例えば上記特許文献1記載の支援システムでのカメラに比べて、フランジとウェブとの間の吹付け状態を監視する上で優れたシステム配置が可能となる。
【0056】
具体的には、
図6にそのようなシステム配置例を示すように、魚眼カメラ20を吹付けの合間のタイミングで、切羽K近くの地上に配置することで、従来は見通すことのできなかった支保工Hの死角の吹付け状況を確認しながら、吹付け作業が可能である。
同図の例では、上記三脚25による姿勢調整機能によって魚眼カメラ20の視野中心軸が垂直となるように筐体24の傾倒姿勢を設定し、魚眼カメラ20の視野方向を真上に向けて設置している。
【0057】
このような配置構成であれば、魚眼カメラ20を前回建込み支保工よりも切羽側に配置して、前回建込み支保工の切羽側を魚眼カメラ20の視界に入れることができる。これにより、本実施形態では、前回設置した支保工Hの切羽K側のフランジとウェブ間を見通す範囲を広くすることができる。これにより、本実施形態では、吹付け量もしくは吹付け厚さが不十分となって肌落ちが発生するおそれをより低減できる。
【0058】
また、
図7に魚眼カメラ20の他の例(第一変形例)を示す。同図に示す第一変形例は、魚眼カメラ20前面の透明な保護ドーム23への吹付け材Mの付着を防止するために、筐体24にエアカーテンによるエアダスタ機構27を装備した例である。
【0059】
ここで、上記実施例において、実際の切羽Kでの状況下、跳ね返りの吹付け材Mrは、粉塵と吹付け材料の跳ね返り材(リバウンド材)が多く、吹付け作業で跳ね返った吹付け材Mrにより、アクリル板製の保護ドーム23には、跳ね返った吹付け材Mrが付着していた。但し、アクリルに跳ね返りの骨材が当たってもアクリルが割れることはなかった。しかし、急結材が保護ドーム23の表面で固化してしまうと、その後に、保護ドーム23の外面を拭ってもアクリル面に傷がついて透明性が低下した。
【0060】
そこで、この第一変形例では、保護ドーム23としてアクリル製に替えて、強化ガラス製の保護ドーム23を用意するとともに、エアカーテンによるエアダスタ機構27を装備している。また、エアダスタ機構27に圧縮空気を供給するために、コンプレッサ(ベビーコンプレッサーを想定)を別途に用意している。
【0061】
なお、吹付け作業時の視認性が良好であれば、上記のアクリル板製の保護ドーム23を用いてもよいし、また、付着防止用のエアダスタ機構27を必ずしも用いる必要はない。コンプレッサからの供給直接のエアにはオイルが含まれている場合があるため、必要に応じてオイルトラップを介在させる。
【0062】
同図に示すように、このエアダスタ機構27は、保護ドーム23の周囲を囲繞するように円環状に配管された圧縮空気供給管27bと、圧縮空気供給管27bの途中部分に連通するように接続されるとともに圧縮空気Aを保護ドーム23の側に向けて噴射可能に配置された複数の噴射ノズル27aと、を有する。
【0063】
圧縮空気供給管27bには、その途中部分の適所に、圧縮空気供給管27cが接続され、この圧縮空気供給管27cを介して圧縮空気供給管27bに、上記コンプレッサから圧縮空気が供給される。
【0064】
これにより、複数の噴射ノズル27aから保護ドーム23の側に向けて圧縮空気Aが噴射されると、保護ドーム23の外面に沿ってエアカーテンが形成される。そのため、このような構成を採用すれば、吹付け時におけるエアカーテンによる付着防止性能の発揮により、跳ね返りの吹付け材Mrの保護ドーム23への付着の程度を低減または防止する上で好適である。また、保護ドーム23が強化ガラス製なので、アクリル製のものに比べて、保護ドーム23の外面を拭っても強化ガラス面が傷付き難い。
【0065】
次に、
図8~
図10に、魚眼カメラ20およびその支持体の他の例(第二変形例)を示す。同図に示す第二変形例は、魚眼カメラ20による視認性の更なる向上、並びに、魚眼カメラ20の支持状態の安定性および機動性を更に向上するために、筐体24にLED投光器29を装備するとともに、魚眼カメラ20の支持体として台車28およびガイドレール26を装備した例である。
【0066】
詳しくは、第二変形例の魚眼カメラ20は、
図8に示すように、筐体24にLED投光器29が装備されている。LED投光器29は、筐体24の左右側面に設けられた、一対の投光部29a,29bを有する。さらに、第二変形例の魚眼カメラ20は、筐体24の底面に台車28が装備されている。
【0067】
台車28は、直方体状の枠体で構成された台車本体28cを有する。台車本体28cの上部には、筐体24の傾倒姿勢やレベルを調整可能な連結部28dが設けられている。台車本体28cの下部には、移動方向の前後に離隔配置された計4つの車輪28a,28bが設けられている。
【0068】
第二変形例の魚眼カメラ20は、
図9に示すように、台車28が、ガイドレール26の上に走行可能に載置される。ガイドレール26は、5m程度の長さを有する一対のレール部材26a,26bと、一対のレール部材26a,26b相互を適所で繋ぐ複数の梁部材26cと、を有する。
【0069】
ガイドレール26は、ガイドレール26の両端近傍の位置それぞれに配置されたレール支持用三脚25A、25Bによって、地上の低い位置に支持されるようになっている。つまり、第二変形例においては、レール支持用の三脚25A、25B、ガイドレール26および台車28によって魚眼カメラ20の支持体が構成されている。
【0070】
この第二変形例のような構成であれば、筐体24に装備した白色系のLED投光器29の効果により、魚眼カメラ20による視認性を更に向上させることができる。また、支持体として、三脚25A、25B、ガイドレール26、およびこのガイドレール26上を走行可能な台車28を有するので、魚眼カメラ20の支持状態の安定性および機動性を更に向上させることができる。
【0071】
さらに、このような構成であれば、魚眼カメラ20の移動をガイドレール26に沿ってスムーズに行うことができるので、オペレータPによる吹付機60の操縦に際し、魚眼カメラ20の移動作業による操縦待ちの時間を短縮できる。また、魚眼カメラ20の移動時の画像の変化による不快感を軽減できる。
【0072】
さらにまた、ガイドレール26の設置位置により、魚眼カメラ20の高さを低い位置で一定に保つことにより、魚眼カメラ20をガイドレール26に沿って移動する際に、吹付機60のブームなどとの干渉を防ぐことができる。また、このような構成であれば、上記実施形態での三脚25を移動する時に懸念される、魚眼カメラ20の横倒しなどによる破損を防止できる。
【0073】
なお、第二変形例の構成や、魚眼カメラ20の切羽Kでの配置位置についても、上記例示した内容に限定されない。例えば、台車28に駆動部を設けて自動走行可能に構成することができる。また、
図10に示す例では、ガイドレール26を切羽Kと並行に配置している例を示しているが、これに限らず、例えば、トンネル延在方向に沿ってガイドレール26を配置することができる。
[第2実施形態:マンケージ型吹付け情報撮像部]
【0074】
図12は、
図1~
図11の地上に設置された魚眼カメラ20 とは異なり、マンケージ80に魚眼カメラ20が設置された吹付機用操縦支援装置の第2実施形態を示す。
図12 において、
図1~
図11で用いた符号と同一のものは同一または相当物である。
図12に示すように、第2実施形態の操縦支援装置11は、魚眼カメラ20と、コンピュータ30と、ヘッドマウントディスプレイ(HMD)40と、ブーム70と、マンケージ80と、を有する。
【0075】
本実施形態の魚眼カメラ20は、吹付け情報撮像部であり、オペレータPまたは支援作業者が、魚眼カメラ20をブーム先端部に備えられたマンケージ80に配置する。同図(a)の例は、支保工部Dの近傍にマンケージを近づけた例である。
【0076】
より具体的には、第2実施形態の実施形態の魚眼カメラ20は、吹付機本体110に設けられたブーム70のブーム先端部70bに備えられたマンケージ80の下方に位置するように固定される。ブーム70は、ブーム基端部70aからブーム先端部70bに向けて伸縮可能である。これにより、吹付機本体110のブーム70がオペレータの吹付作業位置よりも切羽側の位置に向けて伸縮可能となる。また、魚眼カメラ20により吹付材Mの吹付情報を近い位置で撮影可能となるように、マンケージ80が取り付けられるブーム先端部70bがブーム基端部70aに対して旋回可能となるように構成されている。さらに、
図12(a)で示すように、ブーム先端部70bを水平軸として、魚眼カメラ20を上下に回動することが可能であり、吹付け情報撮像部の視野中心軸を上下方向に微調整することができる。
ブーム基端部70aは、吹付機本体110上に固定される構成でも良いが、切羽K側からオペレータP側の方向に向けて移動可能となるよう吹付機本体110に設置される構成でも良い。このように、ブーム基端部70aが前後方向に移動可能とすることで、マンケージ80に設けられた魚眼レンズ20を切羽Kから離れた位置(地上)に降ろして、整備など(例えば、魚眼レンズ20に付着した吹付材Mを拭き取る。)をすることが可能となる。
【0077】
さらに、マンケージ80の下方にはチルト架台90が設けられている。魚眼カメラ20は、チルト架台90の前方(切羽側)に配置される。
このチルト架台は、チルト機構によりマンケージを地上面に対して水平方向に旋回させることが可能となる。すなわち、このチルト架台90によりマンケージ80下方に位置する魚眼カメラ20が地上面に対して水平方向に旋回可能となり、吹付け情報撮像部の視野中心軸を地上面と水平方向に微調整することができる。このような構成とすることで、魚眼カメラ20を吹付部に近づけながらトンネル発掘断面に対して左下方部吹付、中央上部吹付、右下方部吹付の撮影を行うことができる。
【0078】
次に、上記吹付機用操縦支援装置11を用いた吹付け作業方法について説明する。
図12 において、
図1~
図11で用いた符号と同一のものは同一または相当物である。
図12に示す第2実施形態では、吹付機60の操作を行うオペレータPとは別のオペレータ(不図示)が、魚眼カメラ20で吹付材Mの吹付情報を撮影できるようにマンケージ80の向き、角度などの操作を行う。なお、オペレータPがマンケージ80の向き、角度などの操作を行っても良い。
【0079】
この第2実施形態では、
図8~
図11で示した上記他の実施形態と同様の効果を奏する。加えて、この他の実施形態では、マンケージ80が、オペレータPの吹付作業位置よりも切羽側の位置に向けて伸縮可能となるとともに、マンケージ80がブーム基端部70aに対して旋回可能となり、さらに、マンケージ80がチルド機構により旋回可能であるため、マンケージ80(魚眼カメラ20)を吹付部に近づけることができ、吹付部をより鮮明な映像で撮影することが可能となる。これにより、トンネルの切羽全面の吹付に対応することができる。
また、魚眼カメラ20がマンケージ80下部に設置されるので、マンケージ80が魚眼カメラ20の上方の保護となり、マンケージ80後方に位置するチルト架台90が魚眼カメラ20の後方の保護となる、という特有の利点を有する。
【符号の説明】
【0080】
10,11 操縦支援装置
20 魚眼カメラ
30 コンピュータ
40 ヘッドマウントディスプレイ(HMD)
50 遠隔操作器
60 吹付機
70 ブーム
80 マンケージ
90 チルト架台
110 吹付機本体
P オペレータ
S 吹付作業位置
D 支保工部
T トンネル
H 支保工
M 吹付材
K 切羽