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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-28
(45)【発行日】2023-10-06
(54)【発明の名称】アルキレンオキシド重合体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 65/08 20060101AFI20230929BHJP
   G01N 25/04 20060101ALN20230929BHJP
【FI】
C08G65/08
G01N25/04 D
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019227540
(22)【出願日】2019-12-17
(65)【公開番号】P2021095500
(43)【公開日】2021-06-24
【審査請求日】2022-12-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】古家 吉朗
(72)【発明者】
【氏名】岡部 仁
(72)【発明者】
【氏名】福井 拓也
【審査官】山口 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-303208(JP,A)
【文献】特開2017-147060(JP,A)
【文献】特開平01-259119(JP,A)
【文献】特開2013-035832(JP,A)
【文献】特開2004-143267(JP,A)
【文献】特開昭58-134009(JP,A)
【文献】特開2007-002090(JP,A)
【文献】特開2017-178666(JP,A)
【文献】特開平09-157386(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2019-0079385(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G65/00-67/04
G01N25/00-25/72
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルキレンオキシドの重合により、全重合体末端を100モル%として、その70モル%以上がOH基であるアルキレンオキシド重合体(II)を製造する過程において、下記の方法によりアルキレンオキシド重合体(II)の分子量情報を得る工程を含むことを特徴とするアルキレンオキシド重合体の製造方法:
(分子量情報取得工程)
電解質塩(I-a)を含む溶質(I)と、
重合過程から抽出したアルキレンオキシド重合体(II)と
をそれぞれ特定の濃度で含む水溶液の曇点を測定する工程と、
予め下記の方法で作成した検量線に基づき、アルキレンオキシド重合体(II)の分子量を推算する工程:
検量線作成方法:数平均分子量が既知であって、且つ分子量の異なる2種以上のアルキレンオキシド重合体(II-n)を、前記溶質(I)と共に前記特定の濃度で含む水溶液を調製し、それぞれの水溶液における曇点を測定し、該曇点と該数平均分子量とをそれぞれ縦軸と横軸に設定したグラフにプロットして近似線を設けて検量線とする。
【請求項2】
前記電解質塩(I-a)の濃度が0.1~30質量%である請求項1に記載のアルキレンオキシド重合体の製造方法。
【請求項3】
前記溶質(I)がさらにハンセン溶解度パラメーター(HSP)値が20~35((J/cm0.5)の範囲の有機化合物(I-b)を含む請求項1又は2に記載のアルキレンオキシド重合体の製造方法。
【請求項4】
前記有機化合物(I-b)は、HSP値が20~26((J/cm0.5)の範囲の化合物である請求項3に記載のアルキレンオキシド重合体の製造方法。
【請求項5】
前記有機化合物(I-b)の濃度が0.5~10質量%であり、前記溶質(I)の濃度が0.6~35質量%である請求項3又は4に記載のアルキレンオキシド重合体の製造方法。
【請求項6】
前記アルキレンオキシド重合体(II)の濃度が0.3~25質量%である請求項1~5のいずれかに記載のアルキレンオキシド重合体の製造方法。
【請求項7】
前記電解質塩(I-a)が、酸素を含む塩である請求項1~6のいずれかに記載のアルキレンオキシド重合体の製造方法。
【請求項8】
前記検量線作成に用いる分子量の異なる2種以上のアルキレンオキシド重合体(II-n)のうち、少なくとも1種は数平均分子量が3000未満のアルキレンオキシド重合体である請求項1~7のいずれかに記載のアルキレンオキシド重合体の製造方法。
【請求項9】
前記検量線作成に用いる分子量の異なる2種以上のアルキレンオキシド重合体(II-n)は、数平均分子量が500以上3000未満のアルキレンオキシド重合体である請求項8に記載のアルキレンオキシド重合体の製造方法。
【請求項10】
前記アルキレンオキシド重合体(II)は、測定された分子量が3000未満で重合を終了する請求項1~9のいずれかに記載のアルキレンオキシド重合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエチレングリコールなどのアルキレンオキシド重合体(ポリエーテルポリオールやポリアルキレングリコールと呼ばれることもある。)の製造方法に関する。より具体的には、前記重合体の生産効率を高めることを特徴とする前記重合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アルキレンオキシド重合体は、例えば活性水素を持つ開始剤を用いてエチレンオキシド、プロピレンオキシドのようなアルキレンオキシド化合物を重合して製造されている。また、アルキレンオキシド重合体は、例えば、ポリウレタンエラストマーのソフトセグメント成分、接着剤、塗料、シーラント等の所謂CASE材などの用途が代表的である。
【0003】
アルキレンオキシド化合物等の高分子量の重合体及び共重合体を生成するための重合方法は長い間にわたって開発されており、数多くの文献が存在している。代表的なアルキレンオキシドの重合方法としては、鉄のような遷移金属類並びにマグネシウム、アルミニウム、亜鉛及びカルシウムのような金属類の酸化物及び/又は水酸化物を包含する金属原子をベースとする広範囲にわたる触媒を使用して重合する方法が有る。例えば米国特許2,971,988号公報(特許文献1)には、カルシウムベースの触媒を用いた方法が開示されている。亜鉛ベースの触媒を用いる方法としては特公昭45-7751号公報(特許文献2)、特公昭53-27319号公報(特許文献3)、欧州特許239,973号公報(特許文献4)、米国特許4,667,013号公報(特許文献5)などに開示されている方法がある。また、国際公開99/51610号公報(特許文献6)にミセル状態を利用した重合方法が開示されている。
【0004】
さらに現在も、重合速度の高いアルキレンオキシド重合体の製造方法が継続的に開発されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】米国特許2,971,988号公報
【文献】特公昭45-7751号公報
【文献】特公昭53-27319号公報
【文献】欧州特許239,973号公報
【文献】米国特許4,667,013号公報
【文献】国際公開99/51610号公報
【非特許文献】
【0006】
【文献】富田寿代、舟橋弘幸、鈴鹿短期大学紀要、第12巻、 73-78頁, 1992年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来、アルキレンオキシド重合体は、連続重合法やバッチ重合法で製造される。これらの重合法での条件決定の過程で、その中途段階での分子量を迅速に把握することが、分子量制御の観点で重要である。特に重合速度が速くなると、その重要性が増す傾向にある。
分子量測定の正確性の観点では、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法が優れている。しかしながら、GPC法には多くの装置の組合せが必要で、測定試料の準備も含め、測定時間が比較的長い方法である。また、別の方法として、溶液粘度を分子量の指標とする方法は古くから用いられており、比較的短時間で測定可能な方法である。ただし、この方法は、分子量の低い領域の重合体の場合、粘度の差が現れにくく、精度が十分とは言えなくなる場合が有る。
【0008】
アルキレンオキシド重合体の場合、食塩水の様な電解質を含む水溶液において、アルキレンオキシド重合体が水和状態から遊離に転換する温度、所謂、曇点を示すことが知られている(非特許文献1)。また非特許文献1には、その曇点がポリエチレングリコール(PEG)の分子量、電解質(NaCl)のモル濃度、さらには電解質カチオン、アニオンの種類によって変化することも開示されている。なお非特許文献1は、PEGの水溶液に電解質(染料)を添加して、染色助剤として使用される非イオン界面活性剤の代替物になり得るかの検証が主たる目的である。ポリプロピレングリコールにも同様に曇点が発現することが示されている。
曇点の測定方法は、簡便な方法であり比較的短時間に測定結果を得ることができる。この為、曇点測定で分子量を把握できれば、アルキレンオキシド重合体の製造プロセスに大変有益であると考えられる。
末端を炭化水素基で封止した構造のアルキレンオキシド重合体の水溶液に関しては、比較的低温で曇点を示し、曇点と分子量とに比較的リニアな関係があることは公知である。
【0009】
一方、前記の非特許文献1や本発明者らの検討によれば、末端がOH基である比率の高いアルキレンオキシド重合体(以下、単にアルキレンオキシド重合体と言うことがある)の電解質塩を含む水溶液にて観測される曇点は、以下の特徴があることが分かってきた。
・比較的高温である。
・分子量と曇点の関係は、末端封止型アルキレンオキシドとは以下の点で傾向が異なる。
分子量が高い方が曇点が低い場合がある。(末端封止型アルキレンオキシド重合体ではこの関係が逆であり、よって分子量と曇点とがリニアな関係にあるかは不明と考えられる。)
更に分子量が例えば3000未満の様な低分子量領域では、特に比較的低温で曇点を示し難い場合があることも分かってきた。
上記のような低分子量領域のアルキレンオキシド重合体は、適用される用途が多く、その効率的な製造法の開発は社会への貢献が大きい。
【0010】
よって本発明は、アルキレンオキシド重合体の重合過程における分子量を簡便に把握する方法を含むアルキレンオキシド重合体の製造方法を提供することを目的とする。特に低分子量のアルキレンオキシド重合体を効率的に製造する方法を開発することを課題としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決する本発明は、以下の態様を含む。
[1]アルキレンオキシドの重合により、全重合体末端を100モル%として、その70モル%以上がOH基であるアルキレンオキシド重合体(II)を製造する過程において、下記の方法によりアルキレンオキシド重合体(II)の分子量情報を得る工程を含むことを特徴とするアルキレンオキシド重合体の製造方法:
(分子量情報取得工程)
電解質塩(I-a)を含む溶質(I)と、
重合過程から抽出したアルキレンオキシド重合体(II)と
をそれぞれ特定の濃度で含む水溶液の曇点を測定する工程と、
予め下記の方法で作成した検量線に基づき、アルキレンオキシド重合体(II)の分子量を推算する工程。
検量線作成方法:数平均分子量が既知であって、且つ分子量の異なる2種以上のアルキレンオキシド重合体(II-n)を、前記溶質(I)と共に前記特定の濃度で含む水溶液を調製し、それぞれの水溶液における曇点を測定し、該曇点と該数平均分子量とをそれぞれ縦軸と横軸に設定したグラフにプロットして近似線を設けて検量線とする。
【0012】
[2]前記電解質塩(I-a)の濃度が0.1~30質量%である[1]に記載のアルキレンオキシド重合体の製造方法。
[3]前記溶質(I)がさらにハンセン溶解度パラメーター(HSP)値が20~35((J/cm0.5)の範囲の有機化合物(I-b)を含む[1]又は[2]に記載のアルキレンオキシド重合体の製造方法。
[4]前記有機化合物(I-b)は、HSP値が20~26((J/cm0.5)の範囲の化合物である[3]に記載のアルキレンオキシド重合体の製造方法。
[5]前記有機化合物(I-b)の濃度が0.5~10質量%であり、前記溶質(I)の濃度が0.6~35質量%である[3]又は[4]に記載のアルキレンオキシド重合体の製造方法。
【0013】
[6]前記アルキレンオキシド重合体(II)の濃度が0.3~25質量%である[1]~[5]のいずれかに記載のアルキレンオキシド重合体の製造方法。
[7]前記電解質塩(I-a)が、酸素を含む塩である[1]~[6]のいずれかに記載のアルキレンオキシド重合体の製造方法。
[8]前記検量線作成に用いる分子量の異なる2種以上のアルキレンオキシド重合体(II-n)のうち、少なくとも1種は数平均分子量が3000未満のアルキレンオキシド重合体である[1]~[7]のいずれかに記載のアルキレンオキシド重合体の製造方法。
[9]前記検量線作成に用いる分子量の異なる2種以上のアルキレンオキシド重合体(II-n)は、数平均分子量が500以上3000未満のアルキレンオキシド重合体である[8]に記載のアルキレンオキシド重合体の製造方法。
[10]前記アルキレンオキシド重合体(II)は、測定された分子量が3000未満で重合を終了する[1]~[9]のいずれかに記載のアルキレンオキシド重合体の製造方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、比較的安全な水溶液を用いた曇点測定と言う比較的簡便な方法で、比較的精度よく分子量の情報を得ることができるので、アルキレンオキシド重合体の製造を効率的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施例1における検量線グラフである。
図2】実施例2における検量線グラフである。
図3】実施例3における検量線グラフである。
図4】実施例4における検量線グラフである。
図5】実施例5における検量線グラフである。
図6】実施例6における検量線グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明では、非特許文献1に開示されるように、PEG等の末端がOH基である比率の高いアルキレンオキシド重合体(II)と電解質塩とを含む水溶液が、非イオン界面活性剤と同様に曇点を有する点、分子量により曇点が変わるという知見等を参考に、予め分子量既知の複数種のアルキレンオキシド重合体と電解質塩を含む水溶液における曇点を測定し、そのデータを用いて検量線を作成し、分子量未知のアルキレンオキシド重合体の分子量の情報を得る(分子量を推算する)方法を用いて、所望の分子量のアルキレンオキシド重合体を製造する方法を見出した。
【0017】
すなわち、本発明のアルキレンオキシド重合体の製造方法は、公知のアルキレンオキシドの製造方法の過程で、下記の様な曇点測定による分子量の情報を得る工程を組み入れることを特徴とする。より具体的には、アルキレンオキシドの重合反応工程の途中、前記、曇点測定による分子量情報を得る工程を行うことを特徴とする。この方法は、原則として公知のアルキレンオキシドの製法方法に制限なく適用することができる。
【0018】
本発明に用いられる曇点による分子量の情報を得る工程は、特定の水溶液を用いることが特徴である。具体的には、電解質塩(I-a)を含む溶質(I)を含む水溶液を用いることを特徴とする工程である。
【0019】
上記の電解質塩(I-a)としては、塩化リチウム、塩化ナトリウム(食塩を含む)、塩化カリウムなどの塩化物塩、フッ化リチウム、フッ化ナトリウム、フッ化カリウムなどのフッ化物塩、臭化リチウム、臭化ナトリウム、臭化カリウムなどの臭化物塩、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウムなどのヨウ化物塩、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硝酸アンモニウムなどの硝酸塩、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸アンモニウムなどの硫酸塩、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸アンモニウムなどの炭酸塩等を挙げることができる。これらの中でも炭酸塩、硫酸塩、硝酸塩などの酸素を含む塩は、より少ない重合体濃度でも曇点測定が可能である点で好ましい。また、金属イオンの視点からはナトリウム塩、カリウム塩の態様が好ましい。
【0020】
本発明の電解質塩の水溶液(水と前記電解質塩とを含む溶液)の電解質塩の濃度は0.1~30質量%であることが好ましい。より好ましい下限値は0.2質量%であり、さらに好ましくは1質量%であり、特に好ましくは2質量%である。一方、より好ましい上限値は25質量%、更に好ましくは20質量%、特に好ましくはくは15質量%である。この様な濃度であれば、低分子量の重合体、好ましくは数平均分子量が3000未満であって、より好ましくは3000未満500以上、さらに好ましくは3000未満800以上、特に好ましくは3000未満1000以上の範囲のアルキレンオキシド重合体であっても曇点を測定することができ、分子量に関する情報を得ることができる。
【0021】
本発明の態様においては、アルキレンオキシド重合体(II)の分子量が低い程、曇点が高い傾向がある様であり、末端封止型のアルキレンオキシド重合体での傾向(分子量が高い程曇点が高い)とは異なる。この理由は定かではないが、例えば電解質塩の存在によりアルキレンオキシド(II)が疑似架橋したような状態になり易く、高分子量体の様な挙動を示す可能性が考えられる。
本発明者の検討により、本発明に係るアルキレンオキシド重合体(II)は、特定の態様において曇点と分子量とがある程度のリニアな関係を示すことを見出している。上記の様な挙動を示しつつも曇点と分子量との間にある程度のリニアな関係を持つ得る事までは、従来の知見からは一義的に導くのは困難ではないかと本発明者らは考えており、その観点では今回見出した曇点と分子量との関係は予想外と言うことも出来る。
【0022】
上記の電解質塩(I-a)は、アルキレンオキシド重合体の特定の温度での水溶液からの遊離を促進する効果が優れる為、上記の様に低分子量のアルキレンオキシド重合体であっても曇点を示すものと思われる。
【0023】
上記曇点の測定に用いられる溶質(I)はさらに、ハンセン溶解度パラメータ(HSP)が20~35((J/cm0.5)の範囲にある有機化合物(I-b)を含むことができる。HSP値がこの範囲にある有機化合物は、水に溶解する性質を示す化合物である。前記のHSP値は20~26((J/cm0.5)の範囲であることがより好ましい。
【0024】
このような化合物としては、エタノール(26.5)、1-プロパノール(24.6)、2-プロパノール(23.6)、n-ブタノール(23.2)、s-ブタノール(22.2)、i-ブタノール(22.7)、t-ブタノール(21.8)の様な1価のアルコール、エチレングリコール(33.0)、ジエチレングリコール(29.1)、トリエチレングリコール(27.5)等の2価のアルコールを挙げることができる。より好ましくは1価のアルコールである。括弧内の数値はそれぞれのHSP値((J/cm0.5)である。
また本発明の有機化合物(I-b)の沸点は水の沸点に近いレベルかそれ以上であることが、曇点の測定範囲を広げる意味で好ましい。具体的には、常圧での沸点が60℃以上が好ましく、より好ましくは75℃以上であり、さらに好ましくは90℃以上であり、特に好ましくは95℃以上である。一方、その上限値は原理的に制限は無い。好ましくは300℃であり、より好ましくは250℃である。
【0025】
本発明の曇点測定用の水溶液における前記有機化合物(I-b)の濃度は、0~10質量%とすることができる。有機化合物を必須とする場合、好ましい下限値は0.5質量%であり、より好ましくは1質量%、更に好ましくは2質量%である。一方、より好ましい上限値は8質量%、さらに好ましくは7質量%である。
この様な濃度であれば、低分子量の重合体、好ましくは数平均分子量が3000未満のアルキレンオキシド重合体であっても比較的低温領域の曇点を測定することができ、分子量に関する情報を得ることができる。低分子量の重合体としては数平均分子量の下限値として500程度まで対応することができ、より好ましい下限値は800、さらに好ましい下限値は1000である。
【0026】
本発明の有機化合物(I-b)は、少量であってもアルキレンオキシド重合体を水溶液から遊離させる効果が高く、特に電解質塩(I-a)と併用すると遊離効果が高いので、上記の様に低分子量のアルキレンオキシド重合体であっても水溶液での測定に適したより低い温度でも曇点を示すものと思われる。
【0027】
本発明に用いられる水溶液の溶質(前記の電解質塩(I-a)および有機化合物(I-b))の濃度は、上記電解質塩(I-a)および有機化合物(I-b)それぞれの好ましい範囲内で組み合わせることができるが、両者を含む場合、1.1~35質量%であることが好ましい。より好ましい下限値は1.2質量%であり、さらに好ましくは2質量%であり、特に好ましくは3質量%である。一方、より好ましい上限値は30質量%、更に好ましくは25質量%、特に好ましくはくは20質量%である。前述の通り、有機化合物(I-b)を用いずとも低分子量範囲の重合体の曇点を測定することは可能であるが、好ましくは電解質塩(I-a)と有機化合物(I-b)の両者を併用するとより有用である。これは電解質塩(I-a)が主としてアルキレンオキシド重合体と相互作用を示して遊離し易い状態を形成し、有機化合物(I-b)を併用すると、水との相互作用を加速度的に弱めることで、水との遊離を効果的に促進できるためではないかと考えられる。
上記の濃度は、アルキレンオキシドの種類、分子量、末端構造等に応じて、適宜選択することができる。
【0028】
本発明において、前記曇点測定用の水溶液に溶解させる前記のアルキレンオキシド重合体(II)は、前記水溶液に対する濃度が0.3~25質量%であることが好ましい。より好ましい下限値は0.5質量%、さらに好ましくは1質量%、特に好ましくは2質量%、殊に好ましくは3質量%である。一方、より好ましい上限値は20質量%、さらに好ましくは17質量%、特に好ましくは15質量%である。この様な濃度の範囲であれば、低温で効率よく曇点を測定することができる。
【0029】
本発明の水、溶質(I)、アルキレンオキシド重合体(II)のを含む水溶液(曇点測定用の水溶液)は、前記のように水と溶質(I)を含む水溶液を調製してから、アルキレンオキシド重合体(II)を溶解させる方法が好ましいが、その方法に制限されない。本発明の目的に合致する水溶液が得られれば、水、溶質(I)、アルキレンオキシド重合体(II)を任意の順番で接触させて調製することができる。溶質(I)が有機化合物(I-b)を含む場合、主に固体の電解質塩(I-a)を水に溶解してから、有機化合物(I-b)を添加することが好ましい。
【0030】
上記の曇点測定用の水溶液を調製する際に、本発明の効果を損なわない範囲内で、上記以外の成分(他成分)を併用することもできる。他成分の使用量は、水、溶質、アルキレンオキシド重合体の合計100質量%に対して、5質量%以下、より好ましくは2質量%以下、さらに好ましくは1質量%以下である。ここで、他成分とは、典型的な例としてアルキレンオキシド重合体の重合過程からの試料に含まれる溶媒、触媒、開始剤などが挙げられる。
【0031】
本発明の曇点の測定方法は特に制限されないが、好ましくは以下の様な方法が好ましい。尚、この方法は、後述する実施例で用いた方法である。
水と溶質とを所定の割合で混合し、水溶液を調製する。次いで、温度センサー、撹拌装置を取り付けたガラス製容器に、この水溶液とアルキレンオキシド重合体とを所定の割合で装入して水溶液とする。次いで、この水溶液を加温し、液の濁りが均一になったところで、液温を確認しながら(空気中で)徐冷する。液が濁った状態から透明に変化した時点の温度を曇点とする。
【0032】
本発明の方法では、重合過程における重合物の曇点から分子量に関する情報を得るために、予め検量線を作成する必要がある。後述の実施例データの通り、複数の電解質塩や有機化合物を併用した環境下で、本発明に係るアルキレンオキシド重合体(II)は曇点と分子量とがある程度のリニアな関係を示すことを見出している。このことから、下記の様にして検量線を得ることが出来る。
当該検量線は、上記の曇点測定法を用いて、分子量の異なる2種以上の重合体の曇点をそれぞれ測定し、曇点と、分子量とを縦軸、横軸に設定して、それらの関係をプロットしたグラフとし、近似線を設けることで得られる。縦軸、横軸をどちらの項目に設定するかは任意である。近似線はより多くのプロット点を通過するように最適化された近似曲線であり、市販の表計算ソフト(例えばマイクロソフト社の商品名「Excel」)の機能として標準搭載される近似曲線のうち最適な曲線を選択して使用することができる。
【0033】
使用する分子量の異なる重合体は2種以上であれば検量線を得ることはできる。目的のアルキレンオキシド重合体の目標分子量が含まれるような範囲で検量線作成用の重合体の分子量を選択することが好ましいが、勿論、目的の効果が得られる範囲内であれば、目標分子量が検量線作成用の重合体の分子量範囲から外れていても、検量線を延長(外挿)することで分子量を推算することができる。また、その種類が多い方が正確度の高い検量線を作成できる。検量線の作成に用いる重合体の種類の好ましい下限値は3種であり、より好ましくは4種であり、さらに好ましくは5種である。一方で、余りに種類を増やし過ぎると、工数に比して正確度の向上は少なくなる場合がある。測定する分子量の範囲設定にもよるが、検量線作成に用いる重合体の種類の好ましい上限は、15種類、より好ましくは10種類である。勿論、各重合体の分子量は、適切な差を有するものであることが好ましいことは言うまでもないであろう。
【0034】
特に本発明では、分子量3000未満のアルキレンオキシド重合体の製造を目的としている場合、検量線作成用の重合体の少なくとも1種は数平均分子量が3000未満のアルキレンオキシド重合体であることが肝要である。検量線作成用の重合体の全てに数平均分子量が3000未満のアルキレンオキシド重合体を使用することがより好ましい。
本発明の検量線作成用重合体の好ましい数平均分子量の下限値は500であり、より好ましくは800である。
また、分子量3000以上のアルキレンオキシド重合体の製造を目的としている場合は、さらに高分子量の検量線作成用重合体、目的の分子量近くの重合体を用いて、検量線を作成すればよい。
【0035】
この際、狙い目とする分子量の領域に応じて、各成分の濃度は適宜選択することができるが、前記の分子量の異なる重合体は濃度など、分子量以外の測定条件を同一にしておく必要が有る。勿論、分子量を決定するための試料の曇点測定についても同様の条件で実施する必要がある。
【0036】
検量線作成用の分子量の異なる重合体は、予め公知の分子量測定方法、例えばGPC法や水酸基価(官能基数が既知の重合体に適用可能)等で数平均分子量が特定された重合体を用いる。このような重合体は、後述する重合方法で得たものであっても、市販品であってもよい。検量線作成用の重合体は、試料となる重合対象の重合体と同一の組成であることが好ましいが、共重合体を製造する場合、厳密な意味で同じ組成とすることは困難な場合がある。よってホモ重合体の検量線用サンプルを用いて得た検量線で、測定する重合体の分子量に関する「所謂換算情報を得る方法」を採用することも勿論可能である(GPC法で、ポリスチレン換算値として各種重合体の分子量を規定する方法と同様の考え方である。)。
【0037】
検量線を作成した後、後述するアルキレンオキシド重合体の製造工程での曇点測定は以下の様に行われる。
上記製造工程の途中、反応装置から抜き出すなどの作業により得られた重合体試料を用い、検量線測定時と同様の条件で曇点を測定する。その曇点に対応する分子量の情報を検量線から読み取り(推算し)、分子量として記録する。
これにより、重合工程途中の分子量の情報をレスポンス良く取得することができる。勿論、より確度の高い情報を得るため、その後に、同試料の分子量をGPC等で測定してもよい。
【0038】
本発明のアルキレンオキシド重合体の製造方法は、前記の曇点測定によって分子量の情報を得る工程を含んでいれば、特に制限は無い。典型例としては、反応溶媒と触媒の存在下、対応するアルキレンオキシドを重合させて、アルキレンオキシド重合体を得る方法を挙げることができる。
勿論、アルキレングリコールを塩基性触媒の存在下で脱水縮合させるようなアルキレンオキシド重合体の製造方法に適用することも可能である。以下、アルキレンオキシドの重合方法の例について記載する。
【0039】
(アルキレンオキシド)
本発明の開環重合反応において使用するアルキレンオキシドとしては、特に制限はなく、炭素数2のエチレンオキシド、炭素数3以上のアルキレンオキシドが好ましく使用できる。炭素数3以上のアルキレンオキシドとしては、プロピレンオキシド、1,2-ブチレンオキシド、2,3-ブチレンオキシド、エピクロロヒドリンなどが挙げられる。これらは2種以上を併用できる。後述する様に炭素数3以上のアルキレンオキシドをエチレンオキシドと併用するのが好ましい態様の一つである。これらのアルキレンオキシドの中でも、エチレンオキシド、プロピレンオキシドが好ましい。
【0040】
またエチレンオキシドはそれ単独では高重合体を得ることが難しい場合があるが、炭素数3以上のアルキレンオキシドを併用して共重合を行うと、高重合体を得易い場合がある。このような場合、特に好ましい炭素数3以上のアルキレンオキシドは、プロピレンオキシドである。
また、アルキレンオキシドとともにラクトン等の環状エステルを併用してもよい。
本発明においては、特にエチレンオキシドを主成分とする重合を行うことが、当該重合体の用途の広さなどを考慮すると好ましい。
【0041】
(触媒及び開始剤)
本発明に係るアルキレンオキシドの重合方法では、通常、触媒や開始剤を用いる。触媒としては、苛性ソーダなどの塩基性化合物や金属化合物等、公知の物を挙げることができる。開始剤としては、水や、ポリオールやモノオール化合物を用いることができる。ポリオールやモノオール化合物は具体的には以下のような化合物である。
【0042】
ポリオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリンなどの多価アルコール、水酸基数2~12、分子量300~900程度のポリエーテルポリオール等を挙げることができる。前記ポリエーテルポリオールの水酸基数は2~8が好ましく、2~3が特に好ましい。
【0043】
また、モノオールとしては、メタノール、エタノールなど炭素数1~12のアルコールや、アルカリ触媒やカチオン触媒を用いてアルキレンオキシドを開環重合させて得られる分子量300~900のポリエーテルモノオールが挙げられる。
後述する様に本発明のアルキレンオキシド重合体(II)は、末端の多くがOH基の構造を有するものである。その為、開始剤としてモノオールを用いる場合、前記のポリオ―ル等と併用することが好ましい。
【0044】
これらの開始剤は、重合反応の初期に、前記触媒とともに重合反応系に供給することが好ましい。また、重合反応中、開始剤を単独で、または、アルキレンオキシドとともに反応系に供給してもよい。重合反応の途中で供給できる開始剤としては、上記低分子量のポリエーテルポリオールの他、水、プロピレングリコール、エチレングリコール、ジプロピレングリコール、ジエチレングリコールなどの2価アルコール、グリセリン、トリメチロールプロパンなどの3価のアルコールが使用できる。
【0045】
(アルキレンオキシドの供給速度)
本発明におけるアルキレンオキシドの開環重合反応の過程において、アルキレンオキシドの供給速度は一定である必要はなく、ある程度変動させてもよい。したがって、本発明においてアルキレンオキシドの供給速度は、平均供給速度として表現する場合がある。
一般的に重合工程の中盤期は、同終盤期に比してアルキレンオキシドの供給速度を速くすることが好ましい。具体的には中盤期と終盤期の供給速度の比は1.2~6.0の範囲が好ましい。このような範囲であれば、効率よくアルキレンオキシドを製造することができる。
【0046】
(重合温度)
重合温度は、特に制限はないが、通常110℃以上であり、125℃以上が好ましく、135℃以上が特に好ましい。重合温度をより高く設定することにより、重合反応系の除熱を容易にし、重合反応の全過程におけるアルキレンオキシドの平均供給速度を上げることができ、アルキレンオキシド重合体の生産性を高めることができる。また、同じ平均供給速度の場合、温度を高くした方がより低粘度で、分子量分布の小さいアルキレンオキシド重合体が得られる。また、重合温度は160℃以下が好ましく、150℃以下が特に好ましい。重合温度が高すぎると触媒が失活するおそれがある。
【0047】
(アルキレンオキシド重合体)
本発明の製造方法で得られるアルキレンオキシド重合体(II)は、その全ての末端を100モル%として、70モル%以上がOH基である。好ましくは、80モル%以上、さらに好ましくは85モル%以上、特に好ましくは90モル%以上である。また、本発明に用いられるアルキレンオキシド重合体(II)の分子量は、曇点の測定が可能な限りにおいては特に制限は無いが、好ましい下限値は500であり、より好ましくは800である。一方、好ましい上限値は10万、より好ましくは5万、さらに好ましくは1万である。また、前記の通り、本発明に用いられるアルキレンオキシド重合体(II)の分子量は、3000未満であっても構わない。本発明のアルキレンオキシド重合体(II)本発明で得られるアルキレンオキシド重合体(II)の水酸基価は、繰り返し構造単位や末端の構造によって好ましい範囲が異なる場合があるが、例えば直鎖型で水酸基が1分子当たり2個のポリエーテルジオール(全重合体末端の100%がOH基の態様に該当)の場合、その水酸基価の好ましい範囲は、5以上、250以下である。より好ましい下限値は10であり、さらに好ましくは15であり、特に好ましくは20である。一方、水酸基価のより好ましい上限値は、200であり、さらに好ましくは170であり、特に好ましくは150である。水酸基価はJISK1557の「プラスチック-ポリウレタン原料ポリオール試験方法-第1部:水酸基価の求め方」のA法又はB法に準拠して測定することができる。水酸基価の単位は(mgKOH/g)である。
【0048】
(用途)
本発明の製造方法により得られるアルキレンオキシド重合体は、例えば弾性ポリウレタンフォームの製造がその用途の一例である。弾性ポリウレタンフォームを製造する場合、アルキレンオキシド重合体(ポリエーテルポリオール)は末端にオキシエチレン基を有することが好ましい。末端にオキシエチレン基を有するポリエーテルポリオールは、ブロック重合法を用い、最後の工程でエチレンオキシドを反応させることにより製造できる。この際に用いる触媒として、アルカリ触媒としては、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物、ナトリウムアルコキシド、カリウムアルコキシドなどのアルカリ金属アルコキシドなどが好適に使用できる。
【0049】
本発明の方法により得られるアルキレンオキシド重合体は、また、ポリウレタンエラストマーの製造にも適する。また、ポリマー微粒子を含むポリマー分散ポリオールとしても使用できる。
本発明の方法により得られるアルキレンオキシド重合体は、また界面活性剤、潤滑油、などの用途に使用できる。
【実施例
【0050】
(曇点の測定)
1.使用した材料
・数平均分子量が特定された下記12種のポリエチレングリコール(重合体末端の100モル%がOH基)
分子量:562、587、692、795、889、1004、1372,1496、1968、1975,2826、2960
・純水
・市販の試薬:塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、1-プロパノールを用い、下記濃度の水溶液を準備する。
塩化ナトリウム:25wt%水溶液
硫酸ナトリウム:12wt%水溶液
炭酸ナトリウム:5wt%水溶液、10wt%水溶液
炭酸カリウム :12.4wt%水溶液
1-プロパノール:2wt%水溶液、5wt%水溶液
【0051】
2.曇点測定方法
下記表1~表6の条件に従い、以下のような操作を行った。
外径約30mm、長さ約125~150mmの試験管に、特定濃度の各種水溶液と、上記ポリエチレングリコールと、純水とを、所定のポリマー濃度となる重量比で装入する。
前記試験管に、かき混ぜ装置と温度センサーとを付して密閉し、撹拌しながら濁りが一定になるまでオイルバスで昇温させる。(内温は原則100℃以下)
その後、オイルバスから取り出し、撹拌しながら、徐冷(空冷)し、透明になった温度を記録する。(1回の操作はおよそ15~20分で完了する。)
上記の操作を3回行い、その平均値を曇点とする。
【0052】
実施例1(塩化ナトリウム水溶液使用)
表1の条件で曇点を測定した。
その結果を横軸:曇点、縦軸:分子量のグラフを作成し、図1とした。
【0053】
【表1】
【0054】
図1から明らかな通り、塩化ナトリウム水溶液を使用した場合、ポリエチレングリコール(PEG)の濃度によらず、分子量により曇点が同様に変化していることが確認できた。
【0055】
実施例2(硫酸ナトリウム水溶液使用)
表2の条件で曇点を測定した。
その結果を横軸:曇点、縦軸:分子量のグラフを作成し、図2とした。
【0056】
【表2】
【0057】
図2から明らかな通り、硫酸ナトリウム水溶液を使用した場合、ポリエチレングリコール(PEG)のより少ない濃度によっても、分子量による曇点変化が観察できることが確認できた。
【0058】
実施例3(炭酸ナトリウム水溶液使用)
表3の条件で曇点を測定した。
その結果を横軸:曇点、縦軸:分子量のグラフを作成し、図3とした。
【0059】
【表3】
【0060】
図3から明らかな通り、炭酸ナトリウム水溶液を使用した場合、分子量約1000以下と分子量約1500以上3000未満で検量線を分けることで、それぞれに最適な曇点の測定が可能となることが分かる。
【0061】
実施例4(炭酸カリウム水溶液使用)
表4の条件で曇点を測定した。
その結果を横軸:曇点、縦軸:分子量のグラフを作成し、図4とした。
【0062】
【表4】
【0063】
図4から明らかな通り、炭酸カリウム水溶液を使用した場合、分子量約1500以下の範囲で曇点が広く分布しており、この範囲でより詳細に分子量の情報を得ることが可能となることが分かる。
【0064】
以上実施例1~4の結果からわかるように、曇点とポリエチレングリコールの分子量とは、一定の関係を示すことが分かる。よってこのグラフを検量線して用いれば、分子量不明のポリエチレングリコールの曇点から分子量の情報を得ることができる。用いる水溶液の組み合わせにより、曇点と分子量とのグラフの傾きが異なるので、目的に見合った条件を選択して測定を行えば、より正確な分子量の情報を得ることができる。また、実施例1に対して、酸素を含む塩である硫酸塩及び炭酸塩を使用した実施例2~4では、より少ないポリマー量でより低分子量の曇点測定が可能であった。
【0065】
実施例5(炭酸カリウム/1-プロパノール水溶液使用)
表5の条件で曇点を測定した。なお、1-プロパノールのHSP値は24.6((J/cm0.5)である。
その結果を横軸:曇点、縦軸:分子量のグラフを作成し、図5とした。図5には、1-プロパノールを添加していない実施例4の結果(0%)も併せて示す。
【0066】
【表5】
【0067】
実施例6(硫酸ナトリウム/1-プロパノール水溶液使用)
表6の条件で曇点を測定した。
その結果を横軸:曇点、縦軸:分子量のグラフを作成し、図6とした。図6には、1-プロパノールを添加していない実施例2(塩濃度、PEG濃度は同じ)の結果(0%)も併せて示す。
【0068】
【表6】
【0069】
上記実施例5及び6の結果から、HPSが20~35((J/cm0.5)の範囲である有機化合物に該当する1-プロパノールを含む水溶液を用いると、曇点が1-プロパノールを添加していない実施例に比して全体的に低くなることが分かる。室温雰囲気下で曇点を測定する方法においては、室温に近づく程、測定時の温度低下速度が低下する傾向があるので、測定はし易いと考えることができる。
この為、特定の有機化合物を含む水溶液を用いる方法は、より低分子量の重合体の分子量情報を得るのに好ましい方法であることが分かる。
【0070】
実施例7(ポリエチレングリコール1540の製造)
触媒として27%水酸化ナトリウム水溶液を用い、ジエチレングリコールを開始剤とし、バッチ法にてエチレンオキシドの付加重合を行った。
エチレンオキシドを所定の量供給し終わったところで、表5の条件で重合体(製造方法より、全重合体末端の100モル%がOH基であることは明白である)の曇点を測定したところ60.1℃であった。図5の検量線から分子量は588と推算され、ポリエチレングリコール600未中和品として取得した。
上記で得られたポリエチレングリコール600未中和品に触媒量の48%水酸化カリウム水溶液を添加し、減圧条件にて加熱し脱水した後、連続的にエチレンオキシドを供給し、ポリエチレングリコール1540の合成を行った。分子量確認のため途中の重合体を採取し、表1の条件(ポリマー濃度15wt%)にて曇点を測定したところ、70.1℃であった。図1の検量線から分子量は1398と推算された。引き続きエチレンオキシドを供給し所定の量供給し終わったところで表1の条件にて曇点を測定したところ67.8℃であった。図1の検量線から分子量は1525と推算された。不足分のエチレンオキシドを供給し再び曇点を測定したところ67.5℃であった。図1の検量線から分子量は1543と推算された。既知の方法で中和および触媒除去を行った後に得られたポリエチレングリコールの水酸基価から求めた分子量は1558となり、目標とする分子量範囲のポリエチレングリコール1540を得た。本方法を用いれば、簡単且つ相対的に短時間で分子量の測定、確認が可能なので、レスポンス良く重合条件(重合時間等)を決定することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6