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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-28
(45)【発行日】2023-10-06
(54)【発明の名称】自動分析装置及び反応異常判定方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/00 20060101AFI20230929BHJP
【FI】
G01N35/00 F
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020012620
(22)【出願日】2020-01-29
(65)【公開番号】P2021117191
(43)【公開日】2021-08-10
【審査請求日】2022-06-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000004271
【氏名又は名称】日本電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000925
【氏名又は名称】弁理士法人信友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小川 亨
【審査官】岡村 典子
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-275252(JP,A)
【文献】特開2000-275254(JP,A)
【文献】国際公開第2019/130668(WO,A1)
【文献】特開2006-047319(JP,A)
【文献】特開平11-326334(JP,A)
【文献】特開2019-158738(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/00-35/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応容器に検体が分注された時点から、測定項目毎に設定された反応時間が終了するまでの間、前記反応容器内の液体の反応過程における吸光度を時系列的に測定して測光データを取得する測定機構と、
前記反応容器への前記検体の分注から前記反応時間の完了までの時間を、所定の時間間隔で区切って得られる区間における前記測光データを前記測定機構が取得し終えた段階で、前記区間における測光データに基づいて前記反応過程が異常であるか否かを判定する反応異常判定部と、
前記反応異常判定部で反応過程が異常であると判定された場合に、前記反応過程が異常であると判定された段階で、前記反応時間の終了を待つことなく、異常を通知するアラームを出力部に出力するアラーム部と、
制御部と、を備え、
前記制御部は、前記反応過程が異常であると判定された段階で、前記反応時間の終了を待つことなく、反応過程が異常であると判定された液体を収容する前記反応容器に対する前記反応過程が異常であるか否かを判定する処理を終了し、
前記制御部は、前記反応容器に試薬が分注される前に、前記反応異常判定部によって前記反応過程が異常であると判定された場合、反応過程が異常であると判定された液体を収容する前記反応容器への前記試薬の分注を中止する制御を行う
自動分析装置。
【請求項2】
前記区間における前記測光データの平均値、傾き、分散値の各演算値のうちの少なくとも一つを算出する測光値演算部をさらに備え、
前記反応異常判定部は、前記演算値と予め設定された閾値とを比較することにより、前記反応過程が異常であるか否かを判定する
請求項1に記載の自動分析装置。
【請求項3】
記制御部は、前記反応異常判定部で反応過程が異常であると判定された場合前記反応過程が異常であると判定された段階で、前記反応時間の終了を待つことなく、自動的な再検査を実施する制御を行う
請求項1又は2に記載の自動分析装置。
【請求項4】
前記測定機構は、希釈液によって希釈された希釈検体を収容した希釈容器を保持する希釈機構をさらに備え、
前記制御部は、前記反応異常判定部で反応過程が異常であると判定された場合前記反応過程が異常であると判定された段階で、前記反応時間の終了を待つことなく、再検査の実施が十分に可能な量の希釈検体が前記希釈容器に残っているか否かを判定し、十分な希釈検体が残っていると判定された場合に、前記希釈機構によって保持されている前記希釈容器内の前記希釈検体を用いて、前記自動的な再検査を実施する制御を行う
請求項3に記載の自動分析装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記反応異常判定部によって前記反応過程が異常であると判定された場合、予め設定された所定の期間に前記反応過程が異常であると判定された回数の累積回数を算出し、該累積回数に基づいて、自動分析装置の故障の可能性を通知するアラームを前記アラーム部に出力させる制御を行う
請求項3又は4に記載の自動分析装置。
【請求項6】
前記閾値は、第1の閾値及び第2の閾値を含み、
前記制御部は、前記演算値が前記第1の閾値を超えた場合、前記アラーム部に前記異常を通知するアラームを出力させ、前記演算値が前記第2の閾値を超えた場合、前記アラーム部に前記異常を通知するアラームを出力させるとともに、自動的な再検査を実施する制御を行う
請求項に記載の自動分析装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記反応異常判定部によって前記反応過程が異常であると判定された場合、前記異常の原因を特定し、前記異常の原因を示す情報を前記出力部に出力する
請求項3~のいずれか一項に記載の自動分析装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記反応異常判定部によって前記反応過程が異常であると判定された場合、前記異常の原因を特定し、前記異常の原因に基づいて、前記異常を通知するアラームの出力のみを行うか、前記アラーム部に前記異常を通知するアラームを出力させるとともに、前記自動的な再検査を実施する制御を行うか、を選択する
請求項3~のいずれか一項に記載の自動分析装置。
【請求項9】
反応容器に検体が分注された時点から、測定項目毎に設定された反応時間が終了するまでの間、前記反応容器内の液体の反応過程における吸光度を時系列的に測定して測光データを取得する手順と、
前記反応容器への前記検体の分注から前記反応時間の完了までの時間を、所定の時間間隔で区切って得られる区間における前記測光データを取得し終えた段階で、前記区間における測光データに基づいて前記反応過程が異常であるか否かを判定する手順と、
異常であると判定された場合に、前記反応過程が異常であると判定された段階で、前記反応時間の終了を待つことなく、異常を通知するアラームを出力部に出力する手順と、
前記反応過程が異常であると判定された段階で、前記反応時間の終了を待つことなく、反応過程が異常であると判定された液体を収容する前記反応容器に対する前記反応過程が異常であるか否かを判定する処理を終了する手順と、
前記反応容器に試薬が分注される前に前記反応過程が異常であると判定された場合、反応過程が異常であると判定された液体を収容する前記反応容器への前記試薬の分注を中止する制御を行う手順と、を含む
反応異常判定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検体に含まれる成分を分析する自動分析装置、及び、反応異常判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動分析装置として、血液や尿などの検体に含まれる各種成分を分析する生化学分析装置が知られている。この生化学分析装置では、反応容器に分注された検体及び試薬の反応が測光され、吸光度が算出される。そして、反応時間として予め設定された所定の時間範囲における吸光度の変化率に基づいて、検体中に含まれる特定の成分(以下、「測定項目」とも称する)の量が分析される。そして、反応時間の終了後に、吸光度の変化における異常(以下、「反応異常」とも称する)の有無が判定され、異常があると判定された場合には、その旨がユーザーに報知される。
【0003】
特許文献1には、特定の時系列範囲での反応容器内の液体の反応過程の測光値変化と、基準となる反応データの変化率と、を比較して、測光値変化が異常であるか否かを判定する判定手段と、この判定手段での判定結果に基づいて異常を告知する告知手段と、を備えた自動分析装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2000-275254号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された技術では、測光値変化の異常の有無を判定するにあたり、全測定範囲における測光ポイント間での吸光度の変化率を算出する必要がある。すなわち、測光値変化の異常の有無は、全測定範囲における測光が完了した後に行われるものと考えられる。したがって、例えば、反応時間中の早い段階で異常な反応が起こっており、反応異常発生の判定が行われることが確定しているような状況においても、全測定範囲における測光の終了を待ってからでないと、ユーザーは、反応異常の発生を知ることができなかった。
【0006】
本発明は、上記状況に鑑みてなされたものであり、ユーザーが反応異常の発生を迅速に知ることができる自動分析装置及び反応異常判定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様の自動分析装置は、反応容器に検体が分注された時点から、測定項目毎に設定された反応時間が終了するまでの間、反応容器内の液体の反応過程における吸光度を時系列的に測定して測光データを取得する測定機構と、反応容器への検体の分注から反応時間の完了までの時間を、所定の時間間隔で区切って得られる区間における測光データを測定機構が取得し終えた段階で、区間における測光データに基づいて反応過程が異常であるか否かを判定する反応異常判定部と、反応異常判定部で反応過程が異常であると判定された場合に、反応過程が異常であると判定された段階で、反応時間の終了を待つことなく、異常を通知するアラームを出力部に出力するアラーム部と、制御部と、を備える。制御部は、反応過程が異常であると判定された段階で、反応時間の終了を待つことなく、反応過程が異常であると判定された液体を収容する反応容器に対する反応過程が異常であるか否かを判定する処理を終了する。また、制御部は、反応容器に試薬が分注される前に、反応異常判定部によって反応過程が異常であると判定された場合、反応過程が異常であると判定された液体を収容する反応容器への試薬の分注を中止する制御を行う。
【発明の効果】
【0008】
上述のように、本発明の一態様では、予め設定された所定の時間的な区間における測光データに基づいて、反応過程が異常であるか否かが判定され、異常であると判定された時点で、アラームが出力部から出力される。それゆえ、本発明の一態様によれば、ユーザーは、反応異常の発生を反応時間の終了を待たずに迅速に知ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の第1の実施形態に係る自動分析装置を模式的に示す説明図である。
図2】本発明の第1の実施形態に係る計算機の内部構成例を示すブロック図である。
図3】本発明の第1の実施形態に係る異常判定項目テーブルの構成例を示す図である。
図4】本発明の第1の実施形態に係る生化学分析装置による反応異常判定処理の手順の例を示すフローチャートである。
図5】本発明の第2の実施形態に係る生化学分析装置による反応異常判定処理の手順の例を示すフローチャートである。
図6】本発明の第2の実施形態に係る装置故障判定項目テーブルの構成例を示す図である。
図7】本発明の第3の実施形態に係る生化学分析装置による反応異常判定処理の手順の例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態の例について、添付図面を参照しながら説明する。なお、各図において実質的に同一の機能又は構成を有する構成要素については、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0011】
<第1の実施の形態>
[自動分析装置の構成]
まず、図1を参照して、本発明の自動分析装置が適用される生化学分析装置1について説明する。生化学分析装置1は、血液や尿等の患者の生体試料に含まれる特定の成分の量を自動的に測定する装置である。図1は、本発明の第1の実施形態に係る自動分析装置を模式的に示す説明図である。
【0012】
図1に示すように、生化学分析装置1は、測定機構1Aと、計算機30と、を備える。測定機構1Aは、サンプルターンテーブル2と、希釈ターンテーブル3(希釈機構の一例)と、第1試薬ターンテーブル4と、第2試薬ターンテーブル5と、反応ターンテーブル6と、を備える。また、測定機構1Aは、サンプル希釈ピペット7と、サンプリングピペット8と、希釈撹拌装置9と、希釈洗浄装置11と、第1試薬ピペット12と、第2試薬ピペット13と、第1反応撹拌装置14と、第2反応撹拌装置15と、多波長光度計16と、恒温槽17と、反応容器洗浄装置18と、を備える。
【0013】
サンプルターンテーブル2は、軸方向の一端が開口した略円筒状をなす容器状に形成される。このサンプルターンテーブル2には、複数の検体容器21と、複数の希釈液容器22と、が収容される。検体容器21には、血液や尿などからなる検体(サンプル)が収容される。希釈液容器22には、通常の希釈液である生理食塩水以外の特別な希釈液や、標準検体、精度管理検体、洗浄液などが収容される。
【0014】
複数の検体容器21は、サンプルターンテーブル2の周方向に所定の間隔を開けて並べて配置される。また、サンプルターンテーブル2の周方向に並べられた検体容器21の列は、サンプルターンテーブル2の半径方向に所定の間隔を開けて2列セットされる。
【0015】
複数の希釈液容器22は、複数の検体容器21の列よりもサンプルターンテーブル2の半径方向の内側に配置される。複数の希釈液容器22は、複数の検体容器21と同様に、サンプルターンテーブル2の周方向に所定の間隔を開けて並べて配置される。そして、サンプルターンテーブル2の周方向に並べられた希釈液容器22の列は、サンプルターンテーブル2の半径方向に所定の間隔を開けて2列セットされる。
【0016】
なお、複数の検体容器21及び複数の希釈液容器22の配列は、2列に限定されるものではなく、1列でもよく、3列以上であってもよい。
【0017】
サンプルターンテーブル2は、不図示の駆動機構によって周方向に沿って回転可能に支持される。そして、サンプルターンテーブル2は、駆動機構により、周方向に所定の角度範囲ごとに、所定の速度で回転する。サンプルターンテーブル2の周囲には、希釈ターンテーブル3が配置される。
【0018】
希釈ターンテーブル3、第1試薬ターンテーブル4、第2試薬ターンテーブル5及び反応ターンテーブル6は、サンプルターンテーブル2と同様に、軸方向の一端が開口した略円筒状をなす容器状に形成される。希釈ターンテーブル3及び反応ターンテーブル6は、不図示の駆動機構により、その周方向に所定の角度範囲ずつ、所定の速度で回転する。なお、反応ターンテーブル6は、例えば、測定機構1Aの動作サイクル毎に約1/3周回転するように駆動される。
【0019】
希釈ターンテーブル3には、複数の希釈容器23が希釈ターンテーブル3の周方向に並べて収容される。希釈容器23には、サンプルターンテーブル2に配置された検体容器21から吸引されて希釈された検体(以下、「希釈検体」と称する)が収容される。
【0020】
第1試薬ターンテーブル4には、複数の第1試薬容器24が第1試薬ターンテーブル4の周方向に並べて収容される。また、第2試薬ターンテーブル5には、複数の第2試薬容器25が第2試薬ターンテーブル5の周方向に並べて収容される。そして、第1試薬容器24には、第1試薬が収容され、第2試薬容器25には、第2試薬が収容される。
【0021】
なお、第1試薬ターンテーブル4、第1試薬容器24、第2試薬ターンテーブル5及び第2試薬容器25の温度は、不図示の保冷機構によって所定の温度に保たれる。これにより、第1試薬容器24に収容された第1試薬の温度、及び、第2試薬容器25に収容された第2試薬の温度も、所定の温度に保たれる。
【0022】
反応ターンテーブル6は、希釈ターンテーブル3と、第1試薬ターンテーブル4及び第2試薬ターンテーブル5と、の間に配置される。反応ターンテーブル6には、複数の反応容器26が反応ターンテーブル6の周方向に並べて収容される。反応容器26には、まず、第1試薬ターンテーブル4の第1試薬容器24からサンプリングした第1試薬が分注され、次に、希釈ターンテーブル3の希釈容器23からサンプリングした希釈検体が分注される。これにより、反応容器26内で第1試薬と希釈検体とが予備反応する。次に、第1試薬と希釈検体とが収容された反応容器26に、第2試薬ターンテーブル5の第2試薬容器25からサンプリングした第2試薬が分注される。これにより、この反応容器26内において、第1試薬と予備反応した希釈検体と、第2試薬と、の反応(本反応)が開始される。
【0023】
サンプル希釈ピペット7は、サンプルターンテーブル2及び希釈ターンテーブル3の周囲に配置される。サンプル希釈ピペット7は、不図示の希釈ピペット駆動機構により、サンプルターンテーブル2及び希釈ターンテーブル3の軸方向(例えば、上下方向)に移動可能に支持される。また、サンプル希釈ピペット7は、希釈ピペット駆動機構により、サンプルターンテーブル2及び希釈ターンテーブル3の開口と略平行をなす水平方向に沿って回動可能に支持される。そして、サンプル希釈ピペット7は、水平方向に沿って回動することにより、サンプルターンテーブル2と希釈ターンテーブル3との間を往復運動する。このサンプリング希釈ピペット7は、サンプルターンテーブル2の検体容器21内にピペットを挿入して、所定量の検体を吸引する。そして、サンプリング希釈ピペット7は、吸引した検体を希釈ターンテーブル3の希釈容器23内に吐出する。この希釈容器23には、サンプリング希釈ピペット7の内部の生理食塩水、又は、サンプルターンテーブル2上の希釈液容器22内の希釈液も分注される。なお、サンプル希釈ピペット7がサンプルターンテーブル2と希釈ターンテーブル3との間を移動する際、サンプル希釈ピペット7は、不図示の洗浄装置を通過する。
【0024】
サンプリングピペット8は、希釈ターンテーブル3と反応ターンテーブル6との間に配置される。サンプリングピペット8は、不図示のサンプリングピペット駆動機構により、サンプル希釈ピペット7と同様に、希釈ターンテーブル3の軸方向(上下方向)と水平方向に移動及び回動可能に支持される。そして、サンプリングピペット8は、希釈ターンテーブル3と反応ターンテーブル6との間を往復運動する。
【0025】
このサンプリングピペット8は、希釈ターンテーブル3の希釈容器23内にピペットを挿入して、所定量の希釈検体を吸引する。そして、サンプリングピペット8は、吸引した希釈検体を反応ターンテーブル6の反応容器26内に吐出する。
【0026】
第1試薬ピペット12は、反応ターンテーブル6と第1試薬ターンテーブル4との間に配置され、第2試薬ピペット13は、反応ターンテーブル6と第2試薬ターンテーブル5との間に配置される。第1試薬ピペット12は、不図示の第1試薬ピペット駆動機構により、反応ターンテーブル6の軸方向(上下方向)と水平方向に移動及び回動可能に支持される。そして、第1試薬ピペット12は、第1試薬ターンテーブル4と反応ターンテーブル6との間を往復運動する。
【0027】
第1試薬ピペット12は、第1試薬ターンテーブル4の第1試薬容器24内にピペットを挿入して、所定量の第1試薬を吸引する。そして、第1試薬ピペット12は、吸引した第1試薬を反応ターンテーブル6の反応容器26内に吐出する。
【0028】
また、第2試薬ピペット13は、不図示の第2試薬ピペット駆動機構により、第1試薬ピペット12と同様に、反応ターンテーブル6の軸方向(上下方向)と水平方向に移動及び回動可能に支持される。そして、第2試薬ピペット13は、第2試薬ターンテーブル5と反応ターンテーブル6の間を往復運動する。
【0029】
第2試薬ピペット13は、第2試薬ターンテーブル5の第2試薬容器25内にピペットを挿入して、所定量の第2試薬を吸引する。そして、第2試薬ピペット13は、吸引した第2試薬を反応ターンテーブル6の反応容器26内に吐出する。
【0030】
希釈撹拌装置9及び希釈洗浄装置11は、希釈ターンテーブル3の周囲に配置される。希釈撹拌装置9は、不図示の撹拌子を希釈容器23内に挿入し、希釈容器23内の検体と希釈液とを撹拌する。そして、希釈容器23内の検体と希釈液とが撹拌されることにより、希釈検体が調製される。
【0031】
希釈洗浄装置11は、サンプリングピペット8によって希釈検体が分注された後、分析が終了した希釈検体を収容する希釈容器23を洗浄する装置である。この希釈洗浄装置11は、複数の希釈容器洗浄ノズルを有する。複数の希釈容器洗浄ノズルは、不図示の廃液ポンプと、不図示の洗剤ポンプと、に接続される。希釈洗浄装置11は、希釈容器洗浄ノズルを希釈容器23内に挿入し、廃液ポンプを駆動させて挿入した希釈容器洗浄ノズルによって希釈容器23内に残留する希釈検体を吸い込む。そして、希釈洗浄装置11は、吸い込んだ希釈検体を不図示の廃液タンクに排出する。
【0032】
その後、希釈洗浄装置11は、洗剤ポンプから希釈容器洗浄ノズルに洗剤を供給し、希釈容器洗浄ノズルから希釈容器23内に洗剤を吐出する。そして、希釈洗浄装置11は、この洗剤によって希釈容器23内を洗浄する。その後、希釈洗浄装置11は、洗剤を希釈容器洗浄ノズルによって吸引し、希釈容器23内を乾燥させる。
【0033】
第1反応撹拌装置14、第2反応撹拌装置15及び反応容器洗浄装置18は、反応ターンテーブル6の周囲に配置される。第1反応撹拌装置14は、不図示の撹拌子を反応容器26内に挿入し、反応容器26内の希釈検体と第1試薬とを撹拌する。これにより、希釈検体と第1試薬との反応が均一かつ迅速に行われる。なお、第1反応撹拌装置14の構成は、希釈撹拌装置9と同一であるため、ここではその説明は省略する。
【0034】
第2反応撹拌装置15は、不図示の撹拌子を反応容器26内に挿入し、反応容器26内の希釈検体と、第1試薬と、第2試薬と、を撹拌する。これにより、反応容器26内における希釈検体と、第1試薬と、第2試薬との反応が、均一かつ迅速に行われる。なお、第2反応撹拌装置15の構成は、希釈撹拌装置9と同一であるため、ここではその説明は省略する。
【0035】
反応容器洗浄装置18は、検査が終了した反応容器26内を洗浄する装置である。この反応容器洗浄装置18は、複数の反応容器洗浄ノズルを有する。複数の反応容器洗浄ノズルは、希釈容器洗浄ノズルと同様に、不図示の廃液ポンプと、不図示の洗剤ポンプと、に接続される。なお、反応容器洗浄装置18における洗浄工程は、上述した希釈洗浄装置11と同様であるため、その説明は省略する。
【0036】
多波長光度計16は、反応ターンテーブル6の周囲における反応ターンテーブル6の外壁と対向するように配置される。多波長光度計16は、ランプによって光が照射された反応容器26内の、希釈検体と試薬との反応液の吸光度を測定し、測定した吸光度を測光データとして後述する計算機30に出力する。多波長光度計16は、一の反応容器26内の反応液に対して、一度に複数の波長の吸光度を測定する。
【0037】
多波長光度計16による測光は、測定項目に対応する第1試薬が分注された反応容器26に希釈検体が分注された時から、検体中の各成分、すなわち、測定項目毎に設定された反応時間が終了するまでの間、多波長光度計16の前を反応容器26が通過する都度行われる。上述したように、反応容器26を収容した反応ターンテーブル6は一回の移動で約1/3周回転するため、多波長光度計16によって、反応ターンテーブル6に収容されたすべての反応容器26のうち、約1/3程の反応容器26が同時に測光される可能性がある。
【0038】
多波長光度計16には、計算機30が接続されている。そして、計算機30の制御部31(図2参照)は、多波長光度計16から入力された測光データに基づいて、測定項目の成分の量を算出する。制御部31による測定項目の成分の算出には、特定の波長(基本的に2つの波長)の吸光度が使用され、特定の波長は、測定項目毎に、不図示の分析パラメータ画面等を介してユーザーによって予め設定されている。特定の波長として、測定項目の吸収が最も大きい波長が主波長に設定され、吸収の少ない波長が副波長に設定される。そして、制御部31は、主波長と副波長との吸光度の差を用いて、測定項目の成分の量を算出する。
【0039】
また、制御部31は、予め設定された所定の時間的な区間分、多波長光度計16の測光データを取得した時点で、所定の時間範囲に取得した測光データに基づいて、反応過程が異常であるか否かを判定する。制御部31は、反応過程が異常であると判定した場合、反応時間の終了を待つことなく、その段階でアラームを出力する。アラームは、例えば、後述の出力部33(図2参照)での警告メッセージなどの表示等によってユーザーに報知される。なお、アラームの報知は、文字によるものに限定されず、不図示のスピーカー等より放音される通知音や音声などによるものであってもよい。
【0040】
なお、図1には、多波長光度計16が反応ターンテーブル6の外壁の外側に配置される例を示したが、本発明はこれに限定されない。ランプ及び多波長光度計16は、反応容器26を挟んで対向する位置に配置されればよく、例えば、ランプが反応ターンテーブル6の外壁の外側に配置されてもよい。
【0041】
反応ターンテーブル6の周囲には、恒温槽17が配置される。この恒温槽17は、反応ターンテーブル6に設けられた反応容器26の温度を常時一定に保持する。
【0042】
[計算機の構成例]
次に、図2を参照して、計算機30の構成例を説明する。図2は、計算機30の内部構成例を示すブロック図である。計算機30は、バス36に接続された、制御部31と、記録部32と、出力部33と、入力部34と、インタフェース部35とを、備える。
【0043】
制御部31は、CPU(Central Processing Unit)等によって構成され、生化学分析装置1内の各部の動作を制御する。制御部31は、測光値演算部31aと、反応異常判定部31bと、アラーム部31cと、を備える。
【0044】
測光値演算部31aは、測定機構1Aから出力される予め設定された所定の時間的な区間の測光データの、平均値、レート(傾き)、分散値を算出する。平均値は、所定の区間に取得された測光データの平均値である。レートは、所定の区間に取得された測光データの、単位時間(1分間等)当たりの測光データの変化量(傾き)である。分散値は、所定の区間に取得された測光データのばらつきを示す値である。
【0045】
測光値演算部31aが測光データを演算する時間範囲(区間)は、例えば、多波長光度計16が測光を行う各測光ポイントの開始点及び終了点により定義される。測光ポイントは、多波長光度計16の前を通過する(多波長光度計16の光路を横切る)反応容器26内の反応液の測光を、多波長光度計16が行うポイントであり、測光ポイントの数は、反応時間の長さによって異なる。測光値演算部31aが測光データの演算値を算出する区間は、測光開始から反応時間終了までの間において、複数個設けられる。なお、測光ポイントを横軸、測定値を縦軸とするグラフに測光データをプロットすることにより、測光データの時系列変化を確認することができる。
【0046】
反応異常判定部31bは、予め設定された時間範囲における各演算値と、予め定められた閾値と、を比較する事により、反応容器26内の希釈検体及び試薬の反応過程が異常であるか否かを判定する。閾値は、異常判定項目テーブル321(図3参照)において定義され、異常判定項目テーブル321は、記録部32等に記憶される。
【0047】
アラーム部31cは、反応異常判定部31bによって反応異常と判定された場合に、異常の発生を報知するアラーム(異常を報知する文又はメッセージ等)を出力部33に表示する。
【0048】
記録部32は、例えば、HDD(Hard disk drive)、SSD(Solid State Drive)等の大容量の記録装置によって構成される。記録部32には、異常判定項目テーブル321や、測光値演算部31aにより計算された各検体の測定項目の測光値などが記録される。また、記録部32には、制御部31のプログラム、各種パラメータ、反応異常判定部31bによる反応異常の判定結果、判定結果に対応付けられた反応容器26の情報等も記録される。
【0049】
出力部33は、例えば、液晶ディスプレイ等の表示装置で構成され、制御部31の制御に基づいて、検体の測定結果や、アラーム部31cから出力された警告メッセージなどを表示する。なお、出力部33は、表示装置に限定されず、音や音声などを放音するスピーカー等で構成されてもよい。
【0050】
入力部34は、例えば、マウス、キーボード、タッチパネルに重畳されたタッチセンサ等で構成され、ユーザーによって行われる生化学分析装置1に対する操作入力を受け付け、操作入力に対応する入力信号を制御部31に出力する。
【0051】
インタフェース部35は、多波長光度計16が測定した反応容器26内の反応液の吸光度である測定データが入力されると、制御部31に測光データを渡す。なお、図2では、インタフェース部35に多波長光度計16だけを接続した例を示しているが、生化学分析装置1内の各部についても同様にインタフェース部35に接続され、計算機30による制御が行われる。
【0052】
[異常判定項目テーブルの構成]
次に、図3を参照して、異常判定項目テーブル321の構成について説明する。図3は、異常判定項目テーブル321の構成例を示す図である。異常判定項目テーブル321は、図3に示すように、「測光ポイント」、「平均正常範囲」、「レート正常範囲」及び「ばらつきの許容値」の各項目を有する。「平均正常範囲」及び「レート正常範囲」は、それぞれ「上限値」及び「下限値」の項目を有し、「ばらつきの許容値」は、「主波長」及び「副波長」の項目を有する。これらの各項目は、「第1区間」、「第2区間」及び「第3区間」のそれぞれに対応して設けられる。これらの区間は、測光値演算部31aによって演算値が算出される区間、すなわち、反応異常判定部31bが反応過程の異常の有無を判定する区間である。なお、図3には、この区間の数が「第1区間」~「第3区間」の3つである例を挙げたが、本発明はこれに限定されない。区間の数は、ユーザーが任意の値に設定できるものであり、2つ以下であってもよく、4つ以上であってもよい。
【0053】
「測光ポイント」には、「第1区間」~「第3区間」の各区間を定義する測光ポイントの開始点及び終了点が格納される。図3には、「第1区間」は測光ポイントが「5」~「19」までの区間であり、「第2区間」は、測光ポイントが「20」~「33」までの区間であり、「第3区間」は、測光ポイントが「39」~「64」までの区間である例が示されている。
【0054】
「平均正常範囲」の「上限値」には、各区間で測定された測光データの平均値の正常範囲の上限値が格納され、「平均正常範囲」の「下限値」には、各区間で測定された測光データの平均値の正常範囲の下限値が格納される。反応異常の発生の有無の判定対象の区間における測光データの平均値が、「平均正常範囲」の「上限値」に示される値を上回った場合、又は、「平均正常範囲」の「下限値」に示される値を下回った場合、反応異常判定部31bは、反応過程が異常であると判定する。
【0055】
「レート正常範囲」の「上限値」には、各区間で測定された測光データの傾きの正常範囲の上限値が格納され、「レート正常範囲」の「下限値」には、各区間で測定された測光データの傾きの正常範囲の下限値が格納される。反応異常の発生の有無の判定対象の区間における測光データの傾きが、「レート正常範囲」の「上限値」に示される値を上回った場合、又は、「レート正常範囲」の「下限値」に示される値を下回った場合、反応異常判定部31bは、反応過程が異常であると判定する。
【0056】
「ばらつきの許容値」の「主波長」には、多波長光度計16の主波長を用いて各区間において測定された測光データの分散値の許容値が格納される。「ばらつきの許容値」の「副波長」には、多波長光度計16の副波長を用いて各区間において測定された測光データの分散値の許容値が格納される。反応異常の発生の有無の判定対象の区間における、主波長による測光データのばらつきが、「ばらつきの許容値」の「主波長」に示される値を超えた場合、反応異常判定部31bは、反応過程が異常であると判定する。また、反応異常の発生の有無の判定対象の区間における、副波長による測光データのばらつきが、「ばらつきの許容値」の「副波長」に示される値を超えた場合、反応異常判定部31bは、反応過程が異常であると判定する。
【0057】
図3には、測光ポイントが「5」~「19」までの区間である第1区間においては、「平均正常範囲」の「上限値」は“0.001”であり、「平均正常範囲」の「下限値」は“0.0”であることが示されている。また、「レート正常範囲」の「上限値」は“0.01”であり、「レート正常範囲」の「下限値」は“0.0”であることが示されている。さらに、「ばらつきの許容値」の「主波長」及び「副波長」は、それぞれ“0.1”であることが示されている。
【0058】
測光ポイントが「20」~「33」までの区間である第2区間においては、「平均正常範囲」の「上限値」は“0.8”であり、「平均正常範囲」の「下限値」は“0.3”であることが示されている。また、「レート正常範囲」の「上限値」は“0.06”であり、「レート正常範囲」の「下限値」は“0.01”であることが示されている。さらに、「ばらつきの許容値」の「主波長」及び「副波長」は、それぞれ“0.8”であることが示されている。
【0059】
測光ポイントが「39」~「64」までの区間である第3区間においては、「平均正常範囲」の「上限値」は“1.0”であり、「平均正常範囲」の「下限値」は“0.5”であることが示されている。また、「レート正常範囲」の「上限値」は“0.08”であり、「レート正常範囲」の「下限値」は“0.03”であることが示されている。さらに、「ばらつきの許容値」の「主波長」及び「副波長」は、それぞれ“1.0”であることが示されている。なお、この異常判定項目テーブル321は、測定項目毎に設けられる。
【0060】
[生化学分析装置による反応異常判定処理]
次に、図4を参照して、本発明の第1の実施形態に係る生化学分析装置1による反応異常判定処理について説明する。図4は、第1の実施形態に係る生化学分析装置1による反応異常判定処理の手順の例を示すフローチャートである。図4に示す処理は、反応容器26における反応が開始した後に行われる。
【0061】
前提として、多波長光度計16は、測定対象の反応容器26が前を通過する都度(測光ポイント毎に)測光を行うことにより、測光データを取得し、制御部31に出力する。まず、制御部31は、所定区間の測光データを取得したか否かを判定する(ステップS1)。具体的には、制御部31は、異常判定項目テーブル321(図3参照)で設定された、第1区間の測光ポイントの終了点までの測光データを取得したか否かを判定する。ステップS1で、所定区間の測光データは取得していないと判定された場合(ステップS1がNO判定の場合)、制御部31は、ステップS1の判定を繰り返す。
【0062】
一方、ステップS1で所定区間の測定データを取得したと判定された場合(ステップS1がYES判定の場合)、測光値演算部31a(図2参照)は、測光データの演算値を算出する(ステップS2)。具体的には、測光値演算部31aは、演算値として、測光データの平均値、傾き(レート)、ばらつき(分散値)を算出する。次いで、測光値演算部31aは、ステップS2で算出した各演算値を記録部32に記録する(ステップS3)。
【0063】
次いで、反応異常判定部31bは、測光値演算部31aで算出された演算値と、記録部32に記憶された異常判定項目テーブル321における閾値と、を比較する(ステップS4)。次いで、反応異常判定部31bは、比較の結果に基づいて、測定対象の反応容器26において反応異常が発生しているか否かを判定する(ステップS5)。ステップS5で、反応異常が発生していると判定された場合(ステップS5がYES判定の場合)、アラーム部31cは、反応異常の発生を通知するアラームを、出力部33を介してユーザーに報知する(ステップS6)。そして、制御部31は、生化学分析装置1による反応異常判定処理を終了する。
【0064】
ステップS5で反応異常は発生していないと判定された場合(ステップS5がNO判定の場合)、制御部31は、反応異常の判定が行われていない区間があるか否かを判定する(ステップS7)。ここで判定される区間は、異常判定項目テーブル321(図3参照)で設定された区間である。ステップS7で、反応異常の判定が行われていない区間があると判定された場合(ステップS7がYES判定の場合)、制御部31は、ステップS1に処理を戻し、次の区間(第2区間)の測光ポイントの終了点までの測光データを取得したか否かを判定する。一方、ステップS7で、反応異常の判定が行われていない区間はないと判定された場合(ステップS7がNO判定の場合)、制御部31は、生化学分析装置1による反応異常判定処理を終了する。
【0065】
なお、この反応異常判定処理は、多波長光度計16の前を通過する各反応容器26を対象として行われる。したがって、反応異常判定処理が、反応中の希釈検体が注入された複数の反応容器26において、時間的に同時期に行われる可能性がある。
【0066】
上述した第1の実施形態では、予め設定された所定の時間的な区間における測光データを測定機構が取得し終えた段階で、反応異常判定部31bが、区間における測光データに基づいて反応過程が異常であるか否かを判定する。そして、反応異常判定部31bで反応過程が異常であると判定されたその段階で、アラーム部31cが、異常を通知するアラームを出力部33に出力する。それゆえ、本実施形態によれば、ユーザーは、反応時間の終了を待たずに、反応異常の発生を迅速に知ることができる。
【0067】
また、本実施形態によれば、ユーザーは、反応異常の発生が通知された時点で、検査をやり直すかの判断や、反応異常の原因を特定する作業等を迅速に行うことができる。それゆえ、本実施形態によれば、検査の依頼者に対する測定結果の報告の遅れを、最小限に留めることができる。
【0068】
<第2の実施の形態>
第2の実施の形態では、生化学分析装置1の制御部31は、反応異常判定部31bによって反応容器26内の反応液の反応過程に異常があると判定された場合に、アラーム部31cから出力部33にアラームを出力させるとともに、自動再検を実施させる制御を行う。なお、本実施形態においても、制御部31は、反応異常判定部31bで反応異常が検知された時点で、反応時間の終了を待たずに、アラーム部31cにアラームを出力させる。
【0069】
自動再検では、最初の検査(初検)において希釈容器23内に調製された希釈検体が再度反応容器26に分注され、反応容器26内に分注された希釈検体に対する再検査が行われる。なお、初検で調製された希釈検体を用いた自動再検は、希釈ターンテーブル3に収容された希釈容器23内に、再検査の実施が十分に可能な程度の希釈検体が残っている場合に行われる。
【0070】
また、本実施形態では、希釈容器23内に収容された希釈検体を用いて自動再検が行われる例を挙げるが、本発明はこれに限定されない。自動再検は、サンプルターンテーブル2に収容された検体容器21内の検体や、不図示の検体搬送装置から再度搬送された検体容器21内の検体などを用いて行われてもよい。
【0071】
図5は、第2の実施形態に係る生化学分析装置1による反応異常判定処理の手順の例を示すフローチャートである。ステップS11~ステップS16までの処理は、図4のステップS1~ステップS6までの処理と同一であるため、ここではこれらの処理の説明は省略する。
【0072】
ステップS16の処理後、すなわち、アラーム部31cが、出力部33を介して反応異常の発生をユーザーに報知した後、制御部31は、再検査の実施が十分に可能な量の希釈検体が、希釈容器23内に残っているか否かを判定する(ステップS17)。ステップS17で、十分な希釈検体が残っていると判定された場合(ステップS17がYES判定の場合)、制御部31は、希釈検体を用いた自動再検処理を測定機構1Aに実施させる制御を行う(ステップS18)。そして、自動再検の実施後、制御部31は、生化学分析装置1による反応異常判定処理を終了する。
【0073】
一方、ステップS17で、十分な希釈検体は残っていないと判定された場合(ステップS17がNO判定の場合)、制御部31は、再検査の実施が十分に可能な量の希釈検体が残っていないことを、アラーム部31cを介して出力部33からユーザーに通知する。そして、ユーザーにマニュアル再検の実行を促すメッセージを出力部33から出力する(ステップS19)。すなわち、制御部31は、再検対象の検体容器21をサンプルターンテーブル2に再度設置し、生化学分析装置1に再検の実施を指示するようにユーザーに促すメッセージを出力部33から出力する。そして、制御部31は、メッセージの出力後、生化学分析装置1による反応異常判定処理を終了する。
【0074】
ステップS15で、反応異常は発生していないと判定された場合(ステップS15がNO判定の場合)、制御部31は、反応異常の判定が行われていない区間があるか否かを判定する(ステップS20)。ステップS20で、反応異常の判定が行われていない区間があると判定された場合(ステップS20がYES判定の場合)、制御部31は、ステップS11に処理を戻し、次の区間(第2区間)の測光データを取得したか否かを判定する。一方、ステップS20で、反応異常の判定が行われていない区間はないと判定された場合(ステップS20がNO判定の場合)、制御部31は、生化学分析装置1による反応異常判定処理を終了する。
【0075】
上述した第2の実施形態では、反応異常が検出された段階で自動的に再検査が実施される。それゆえ、本実施形態によれば、上記第1の実施形態により得られる効果と同様の効果が得られる他、反応異常が検出された場合における検査の依頼者に対する測定結果の報告の遅延を、第1の実施形態と比較してより少なくすることができる。
【0076】
<第3の実施の形態>
次に、第3の実施形態について説明するが、その前に、第3の実施形態が考案された背景について説明する。反応過程に異常が発生したと判定される原因には、各容器への各液体の分注が正しく行われないことや、撹拌がうまく行われないこと、各液体の各容器への分注時や撹拌時などにより生じる泡に起因する光の散乱、多波長光度計16のランプ又は検出器等の機械的な異常などがある。これらの要因のうち、泡の要因により生じた反応異常に関しては、再検査を実施することにより解消する。しかし、それ以外の要因は、測定機構1Aの装置故障によって引き起こされている可能性が高いと考えられる。
【0077】
それゆえ、第3の実施形態では、生化学分析装置1の制御部31は、反応異常が繰り返し検出される場合には、装置故障が発生している可能性が高いと判定して、アラーム部31cにアラームを出力させる。装置故障の可能性は、例えば、1時間等の予め定められた監視期間において反応異常が検出された累積回数が、予め定められた装置故障判定回数を超えたか否かに基づいて判定される。装置故障判定回数や、装置故障が発生している可能性があるか否かの判定を行う期間などを規定する各種設定値は、装置故障判定項目テーブル322(図6参照)において定義される。
【0078】
ここで、図6を参照して、装置故障判定項目テーブル322の構成について説明する。図6は、装置故障判定項目テーブル322の構成例を示す図である。
【0079】
装置故障判定項目テーブル322は、「設定項目」及び「設定値」の各項目を有する。「設定項目」には、「装置故障監視期間」と、「装置故障判定回数」と、がある。図6に示す例では、「装置故障監視期間」には「1時間以内」の設定値が設定され、「装置故障判定回数」には「5回」の設定値が設定されている。制御部31は、装置故障監視期間として設定された1時間以内に、装置故障判定回数として設定された5回以上、反応異常判定部31bが反応異常を検出した場合、測定機構1Aが故障した可能性が高いことを、アラーム部31cを介して出力部33からユーザーに報知する。なお、図6に示す装置故障判定項目テーブル322における各設定値の値は一例であり、これらの設定値には、実験等に基づき求められる最適な値が設定されるものとする。
【0080】
次に、図7を参照して、第3の実施形態に係る生化学分析装置1による反応異常判定処理の手順について説明する。図7は、第3の実施形態に係る生化学分析装置1による反応異常判定処理の手順の例を示すフローチャートである。ステップS31~ステップS36までの処理は、図4のステップS1~ステップS6までの処理と同一であるため、ここではこれらの処理の説明は省略する。
【0081】
ステップS36の処理後、すなわち、アラーム部31cが、出力部33を介してユーザーに反応異常の発生を報知した後、制御部31は、装置故障監視期間内における反応異常の発生回数は、装置故障判定回数以上であるか否かを判定する(ステップS37)。ステップS37で、装置故障監視期間内における反応異常の発生回数は装置故障判定回数以上であると判定された場合(ステップS37がYES判定の場合)、制御部31は、装置故障が発生した可能性が高い旨を通知するアラームを、アラーム部31cを介して出力部33からユーザーに報知する(ステップS38)。
【0082】
ステップS38の処理後、又は、ステップS37で、装置故障監視期間内における反応異常の発生回数は装置故障判定回数未満であると判定された場合(ステップS37がNO判定の場合)、制御部31は、再検査の実施が十分に可能な量の希釈検体が、希釈容器23内に残っているか否かを判定する(ステップS39)。ステップS39で、十分な希釈検体が残っていると判定された場合(ステップS39がYES判定の場合)、制御部31は、希釈検体を用いた自動再検処理を測定機構1Aに実施させる制御を行う(ステップS40)。そして、自動再検の実施後、制御部31は、生化学分析装置1による反応異常判定処理を終了する。
【0083】
一方、ステップS39で、十分な希釈検体は残っていないと判定された場合(ステップS39がNO判定の場合)、制御部31は、再検査の実施が十分に可能な量の希釈検体が残っていないことを、アラーム部31cを介して出力部33からユーザーに通知する。そして、ユーザーにマニュアル再検の実行を促すメッセージを出力部33から出力する(ステップS41)。制御部31は、メッセージの出力後、生化学分析装置1による反応異常判定処理を終了する。
【0084】
ステップS35で、反応異常は発生していないと判定された場合(ステップS35がNO判定の場合)、制御部31は、反応異常の判定が行われていない区間があるか否かを判定する(ステップS42)。ステップS42で、反応異常の判定が行われていない区間があると判定された場合(ステップS42がYES判定の場合)、制御部31は、ステップS31に処理を戻し、次の区間(第2区間)の測光データを取得したか否かを判定する。一方、ステップS42で、反応異常の判定が行われていない区間はないと判定された場合(ステップS42がNO判定の場合)、制御部31は、生化学分析装置1による反応異常判定処理を終了する。
【0085】
なお、ステップS37がYES判定の場合、すなわち、装置故障監視期間内における反応異常の発生回数は装置故障判定回数以上であると判定された場合、制御部31は、ステップS38の処理に加えて、生化学分析装置1を強制停止させ、メンテナンスの実施を促すメッセージを出力させてもよい。この処理の実施の要否は、例えば、ユーザーが設定することができる。また、ステップS37の判定及びステップS38の処理と、ステップS39の判定及びステップS40の処理とは、時間的に同時に(並行して)実施されてもよい。
【0086】
上述した第3の実施形態では、装置故障監視期間における異常反応の発生回数に基づいて、装置故障の発生の可能性が高いと判定された場合に、その旨がユーザーに報知されるため、ユーザーは、装置のメンテナンスを行う等の対策を迅速に行うことができる。それゆえ、本実施形態によれば、第1の実施形態で得られる効果と同様の効果が得られる他、メンテナンスが行われないことにより生じる生化学分析装置1のダウンタイムを、低減することができる。
【0087】
<変形例>
なお、本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された要旨を逸脱しない限りにおいて、その他種々の変形例、応用例を取り得ることは勿論である。
【0088】
例えば、上述した各実施形態において、反応異常の判定の際に参照する閾値として、アラーム発生用の第1の設定値(第1の閾値の一例)と、アラーム発生及び自動再検実施用の第2の設定値(第2の閾値の一例)と、が用いられてもよい。この場合、反応異常判定部31bが、判定対象の値が第1の設定値を超えたと判定した場合に、制御部31は、アラーム部31cを介して出力部33からアラームをユーザーに報知する。一方、反応異常判定部31bが、判定対象の値が第2の設定値を超えたと判定した場合には、制御部31は、アラーム部31cを介して出力部33からアラームをユーザーに報知するとともに、自動再検処理を測定機構1Aに実施させる制御を行う。なお、第1の設定値及び第2の設定値は、自動分析の測定項目毎に個別に設定されてもよい。
【0089】
また、上述した各実施形態において、反応異常が検出された時点で、制御部31は、反応異常の原因を特定し、該反応異常の原因の特定結果に基づいて、アラームの出力のみを行うか、アラームの出力及び自動再検処理の実施を行うかを決定してもよい。このとき、特定した反応異常の原因の情報を、出力部33を介してユーザーに通知する制御が行われてもよい。
【0090】
また、上述した反応異常の原因を特定する実施形態において、反応異常判定部31bが特定の測定項目に着目して判定を行うことにより、反応異常の原因(例えば試薬等)を特定してもよい。例えば、反応異常判定部31bは、特定の測定項目で連続的に所定回数以上の反応異常が検出された場合に、反応異常の原因を、当該測定項目に対応する試薬の劣化であると特定する。
【0091】
また、上述した反応異常の原因を特定する実施形態において、初検における判定結果と、自動再検時における反応異常の発生状況と、に基づいて、反応異常の原因(例えば検体等)を特定してもよい。例えば、反応異常判定部31bは、初検と自動再検ともに反応異常が検出された場合に、反応異常の原因を、当該検体自体に問題があると特定する。
【0092】
また、上述した各実施形態では、アラームが出力部33を介してユーザーに報知される例を挙げた。このとき出力部33にアラームが表示される仕組みは、生化学分析装置1において異常が検出された場合に使用される共通の仕組みを想定しているが、本発明はこれに限定されない。反応過程の途中で検出された反応異常は、反応異常の報知用に設けられた専用のダイアログボックス等を介して、ユーザーに報知されてもよい。このような処理が行われることにより、反応異常の発生にユーザーがより気づきやすくなる。また、生化学分析装置1の上位のシステム(図示略)にアラームを通知する制御が行われてもよい。
【0093】
また、上述した各実施形態では、反応異常の検出対象が患者の検体(希釈検体)である例を挙げたが、本発明はこれに限定されない。反応異常の検出対象は、精度管理(コントロール)検体、キャリブレーション検体等であってもよい。
【0094】
また、上述した各実施形態では、希釈容器23において検体が希釈液によって希釈される例を挙げたが、本発明はこれに限定されない。検体が希釈されずに希釈容器23に分注されてもよい。
【0095】
また、上述した各実施形態では、生化学分析装置1が希釈ターンテーブル3(希釈機構)を備える例を挙げたが、本発明はこれに限定されない。本発明の自動分析装置は、希釈機構を備えず、元検体が反応容器26に直接分注される生化学分析装置に適用されてもよい。
【0096】
また、上述した各実施形態では、反応時間が終了するまでの間、多波長光度計16が測光を継続する例を挙げたが、本発明はこれに限定されない。反応異常が検出された段階で、その反応容器26に対する多波長光度計16による測光を中止してもよい。
【0097】
また、上述した各実施形態において、制御部31は、反応容器26に試薬が分注される前に、反応異常判定部31bによって反応過程が異常であると判定された場合、反応過程が異常であると判定された反応液を収容する当該反応容器26への試薬の分注を中止する制御を行ってもよい。例えば、反応容器26内で第1試薬と希釈検体とが予備反応している段階において反応異常判定部31bによって反応過程が異常であると判定された場合、制御部31は、当該反応容器26にこれから分注する予定であった第2試薬の分注を中止する。これにより、無駄な試薬の消費が抑制される。
【0098】
また、上述した各実施形態では、本発明に係る自動分析装置を生化学分析装置1に適用した例を挙げたが、本発明はこれに限定されない。本発明に係る自動分析装置は、免疫分析装置、尿分析装置等の様々な分析装置に適用することが可能である。
【0099】
また、本明細書において、時系列的な処理を記述する処理ステップは、記載された順序に沿って時系列的に行われる処理はもちろん、必ずしも時系列的に処理されなくとも、並列的あるいは個別に実行される処理(例えば、並列処理あるいはオブジェクトによる処理)をも含むものである。
【0100】
さらに、上述した各実施形態は、本発明を分かりやすく説明するために装置(生化学分析装置1)の構成を詳細且つ具体的に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、図2中に実線で示した制御線や情報線などは、説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線などを示しているとは限らない。実際には、殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
【符号の説明】
【0101】
1…生化学分析装置、1A…測定機構、16…多波長光度計、30…計算機、31…制御部、31a…測光値演算部、31b…反応異常判定部、31c…アラーム部、32…記録部、33…出力部、34…入力部、321…異常判定項目テーブル、322…装置故障判定項目テーブル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7