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特許7357574ステッピングモータ制御装置、ムーブメント、時計及びステッピングモータ制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-28
(45)【発行日】2023-10-06
(54)【発明の名称】ステッピングモータ制御装置、ムーブメント、時計及びステッピングモータ制御方法
(51)【国際特許分類】
   G04C 3/14 20060101AFI20230929BHJP
【FI】
G04C3/14 Q
G04C3/14 T
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020044921
(22)【出願日】2020-03-16
(65)【公開番号】P2021148430
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2023-01-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000002325
【氏名又は名称】セイコーインスツル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】及川 亮太
【審査官】榮永 雅夫
(56)【参考文献】
【文献】実開昭60-95588(JP,U)
【文献】国際公開第95/027926(WO,A1)
【文献】特開昭51-13280(JP,A)
【文献】国際公開第2008/013299(WO,A1)
【文献】特開昭57-40674(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04C 1/00 - 99/00
H02P 8/00 - 8/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステッピングモータの駆動方式に応じた測定タイミングで、前記ステッピングモータに電力を供給する電源の電源電圧を測定する測定部と、
前記測定部が測定する前記電源電圧が所定の閾値以下である場合に、前記電源の電力を消費する機能のうち少なくとも一部の機能の使用、または運針方式を制限する制御部と
を備えるステッピングモータ制御装置。
【請求項2】
前記測定タイミングは、前記ステッピングモータが備えるロータを回転させる駆動パルスが出力中の所定時間である
請求項1に記載のステッピングモータ制御装置。
【請求項3】
前記ステッピングモータの駆動方式は、正転駆動、または逆転駆動である、
請求項1又は請求項2に記載のステッピングモータ制御装置。
【請求項4】
前記測定タイミングは、前記ステッピングモータが正転駆動される場合と、逆転駆動される場合とで互いに異なる
請求項3に記載のステッピングモータ制御装置。
【請求項5】
前記ステッピングモータの駆動方式を特定する特定部と、
前記ステッピングモータの駆動方式と、前記測定タイミングと、を対応付けて記憶する記憶部と、
前記特定部が特定する前記ステッピングモータの駆動方式に応じた前記測定タイミングを前記記憶部から取得する取得部と、
をさらに備え、
前記測定部は、前記取得部が取得する前記測定タイミングで、前記電源電圧を測定する、
請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載のステッピングモータ制御装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載のステッピングモータ制御装置と、
前記ステッピングモータと
を備えるムーブメント。
【請求項7】
請求項6に記載のムーブメントを備える時計。
【請求項8】
ステッピングモータの駆動方式に応じた測定タイミングで、前記ステッピングモータに電力を供給する電源の電源電圧を測定し、
測定した前記電源電圧が所定の閾値以下である場合に、前記電源の電力を消費する機能のうち少なくとも一部の機能の使用、または運針方式を制限する
ステッピングモータ制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステッピングモータ制御装置、ムーブメント、時計及びステッピングモータ制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ステッピングモータを備える多機能時計において、所定の機能の実行中の電源電圧を測定し、その値が所定の閾値を下回った場合に、それまで実行していた機能を停止する技術があった。(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-103178号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、機能実行中の電源電圧は一定ではなく、機能を実行するために必要な駆動パルスに応じて、上昇と降下とを繰り返す。一方で、電源電圧の測定タイミングについては考慮されておらず、固定されたタイミングで測定している。したがって、機能実行中の電源電圧が一時的に所定の閾値を下回るような場合であっても、電源電圧の測定タイミングによっては、所定の閾値を上回る電圧を検出してしまう場合がある。この場合、ステッピングモータが正常に動作するために必要な電源電圧を確保できていないため、ステッピングモータが誤作動する、といった不具合が生じる。また、例えば時計にBLEマイコンが内蔵されており、BLEマイコンに、ステッピングモータと共通の電源から電圧が供給される場合には、BLEマイコンが正常に動作しなくなる、といった不具合が生じる。
【0005】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであって、ステッピングモータの駆動により降下した電源電圧の値を、所望のタイミングで得ることができるステッピングモータ制御装置、ムーブメント、時計及びステッピングモータ制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係るステッピングモータ制御装置は、ステッピングモータの駆動方式に応じた測定タイミングで、前記ステッピングモータに電力を供給する電源の電源電圧を測定する測定部と、前記測定部が測定する前記電源電圧が所定の閾値以下である場合に、前記電源の電力を消費する機能のうち少なくとも一部の機能の使用、または運針方式を制限する制御部とを備える。
【0007】
本発明の一態様に係るステッピングモータ制御装置において、前記測定タイミングは、前記ステッピングモータが備えるロータを回転させる駆動パルスが出力中の所定時間である。
【0008】
本発明の一態様に係るステッピングモータ制御装置において、前記ステッピングモータの駆動方式は、正転駆動、または逆転駆動である。
【0009】
本発明の一態様に係るステッピングモータ制御装置において、前記測定タイミングは、前記ステッピングモータが正転駆動される場合と、逆転駆動される場合とで互いに異なる。
【0010】
本発明の一態様に係るステッピングモータ制御装置は、前記ステッピングモータの駆動方式を特定する特定部と、前記ステッピングモータの駆動方式と、前記測定タイミングと、を対応付けて記憶する記憶部と、前記特定部が特定する前記ステッピングモータの駆動方式に応じた前記測定タイミングを前記記憶部から取得する取得部と、をさらに備え、前記測定部は、前記取得部が取得する前記測定タイミングで、前記電源電圧を測定する。
【0011】
本発明の一態様に係るムーブメントは、上述したステッピングモータ制御装置と、前記ステッピングモータとを備える。
【0012】
本発明の一態様に係る時計は、上述したムーブメントを備える。
【0013】
本発明の一態様に係るステッピングモータ制御方法は、ステッピングモータの駆動方式に応じた測定タイミングで、前記ステッピングモータに電力を供給する電源の電源電圧を測定し、測定した前記電源電圧が所定の閾値以下である場合に、前記電源の電力を消費する機能のうち少なくとも一部の機能の使用、または運針方式を制限する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ステッピングモータの駆動により降下した電源電圧の値を、所望のタイミングで得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施形態に係るアナログ電子時計の機能構成の一例を示すブロック図である。
図2】実施形態に係る対応情報の一例を示す図である。
図3】実施形態に係るステッピングモータ及びモータ駆動部の概略図である。
図4】実施形態に係るステッピングモータ駆動時の電源電圧波形である。
図5】実施形態に係るアナログ電子時計の一連の動作を説明するための図である。
図6】実施形態に係るステッピングモータ正転駆動時における測定タイミングの一例を説明するための図である。
図7】実施形態に係るステッピングモータ逆転駆動時における測定タイミングの一例を説明するための図である。
図8】実施形態に係るステッピングモータが2コイルモータである場合における測定タイミングの一例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、実施形態に係るアナログ電子時計1の機能構成の一例を示すブロック図である。
【0017】
[アナログ電子時計1の構成]
図1に示すように、アナログ電子時計1は、発振部101と、分周部102と、制御部103と、モータ駆動部104と、ステッピングモータ105と、電池120と、特定部121と、記憶部122と、測定タイミング取得部(取得部)123と、測定部124と、図示しない輪列と、アナログ表示部106と、を備えている。
【0018】
発振部101は、所定周波数の信号を発生する。
分周部102は、発振部101で発生した信号を分周して計時の基準となる時計信号を発生する。
制御部103は、アナログ電子時計1を構成する各電子回路要素の制御、およびモータ回転駆動用のパルス信号の制御を行う。
【0019】
モータ駆動部104は、制御部103により出力されたパルス信号に基づき、ステッピングモータ105を駆動する。
ステッピングモータ105は、モータ駆動部104から出力されたモータ回転駆動用の駆動信号によって回転駆動する。
【0020】
電池120は、例えばリチウム電池、いわゆるボタン電池である。電池120は、電力を、アナログ電子時計1が備えるステッピングモータ105等の各部に供給する。以降、電池120を電源とも記載する。
なお、電池120は、太陽電池によって発電された電力を蓄電する蓄電池であってもよい。
【0021】
特定部121は、ステッピングモータ105の駆動方式を特定する。
ここで、モータ駆動部104は、制御部103から出力されたパルス信号により、ステッピングモータ105を、正転駆動又は逆転駆動のいずれかの制御方式により制御する。特定部121は、ステッピングモータ105の駆動方式(例えば、正転駆動であるか、逆転駆動であるか)を制御部103から取得することにより、ステッピングモータ105の駆動方式を特定する。
なお、特定部121はステッピングモータ105から出力される信号等に基づくその他の方法により、ステッピングモータ105の駆動方式を特定してもよい。例えば、特定部121は、ステッピングモータ105が備えるコイルの両端の電圧に基づいて、ステッピングモータ105の駆動方式を特定してもよい。また、特定部121は、制御部103が出力する制御信号に基づいて、ステッピングモータ105の駆動方式を特定してもよい。
【0022】
記憶部122は、ステッピングモータ105の駆動方式と、測定タイミングとを対応付けて、対応情報として記憶する。測定タイミングとは、電池120の電圧を測定するタイミングである。
図2は、記憶部122が記憶する対応情報の一例を示す図である。同図を参照しながら対応情報について説明する。同図に示すように、記憶部122には、駆動方式と、測定タイミングとが、対応情報として対応付けられて記憶されている。
同図に示す一例では、駆動方式として“D1”、“D2”及び“D3”が記憶されている。また、駆動方式“D1”に対応する測定タイミングとして“T1”が、駆動方式“D2”に対応する測定タイミングとして“T2”が、駆動方式“D3”に対応する測定タイミングとして“T3”が、記憶されている。
【0023】
この一例において、電池120の電圧は、ステッピングモータ105に駆動パルスが印加された後、測定タイミングが経過した時点で測定される。すなわち、測定タイミングとは、ステッピングモータ105が備えるロータ202を回転させる駆動パルスが出力された後の所定時間である。また、測定タイミングは、駆動方式毎に定められた、電流の消費が最大となる時点(すなわち、電圧降下が最大となる時点)の情報である。したがって、測定タイミングは駆動方式毎に互いに異なるため、記憶部122には、ステッピングモータ105の駆動方式ごとに、異なる測定タイミングが記憶される。
なお、記憶部122に記憶される対応情報は、アナログ電子時計1が備える不図示の環境センサ(温度センサ等)の値に応じて、変化するよう構成してもよい。
なお、記憶部122に記憶される対応情報は、アナログ電子時計1の製品寿命に応じて、-制御部103により更新されるよう構成してもよい。たとえば、制御部103は、電池120の残容量や、電池120の使用時間等に応じて、記憶部122を更新するよう構成してもよい。
【0024】
図1に戻り、測定タイミング取得部123は、特定部121が特定するステッピングモータ105の駆動方式に応じた測定タイミングを、記憶部122から取得する。
図2の一例を参照しながら、具体的な一例について説明する。測定タイミング取得部123は、制御部103から駆動方式“D1”を取得した場合、駆動方式“D1”に対応する測定タイミング“T1”を記憶部122から取得する。
【0025】
図1に戻り、測定部124は、測定タイミング取得部123から、測定タイミングを取得する。測定部124は、モータ駆動部104がステッピングモータ105を駆動している間において、測定タイミングで電池120電圧を測定する。すなわち、測定部124は、測定タイミング取得部123が取得する測定タイミングで電池120の電圧を測定する。
例えば、測定部124は、モータ駆動部104から、ステッピングモータ105を駆動開始を示す情報を取得し、測定タイミングが示す所定の期間経過後に、電池120の電圧を測定する。測定部124は、不図示のA/Dコンバータ等により電池120の電圧を測定する。
【0026】
発振部101、分周部102、制御部103、モータ駆動部104、特定部121、記憶部122、測定タイミング取得部123及び測定部124は、アナログ電子時計1のステッピングモータ制御部(ステッピングモータ制御装置)112を構成している。
【0027】
輪列(不図示)は、ステッピングモータ105によって回転駆動される。
アナログ表示部106は、輪列によって回転駆動される時針107、分針108及び秒針109(以下、時針107、分針108及び秒針109を区別しない場合には指針と記載する。)や、日にち表示用のカレンダ表示部110等を有している。
【0028】
また、アナログ電子時計1は、時計ケース113を備えている。時計ケース113の外面側には、アナログ表示部106が配設されている。アナログ表示部106は、目盛りが刻まれた文字盤である。
また、時計ケース113の内部には、上述した輪列を含む時計用ムーブメント114が配設されている。ムーブメント114は、アナログ電子時計1の各部を駆動させるための機械式の機構である。時計用ムーブメント114は、ステッピングモータ制御部112と、ステッピングモータ105と、電池120とを備える。
【0029】
[モータ駆動部104及びステッピングモータ105の構成]
図3は、実施形態に係るモータ駆動部104及びステッピングモータ105の一例を示す図である。同図を参照しながら、モータ駆動部104及びステッピングモータ105の構成について説明する。モータ駆動部104は、トランジスタTP1と、トランジスタTP2と、トランジスタTN1と、トランジスタTN2と、端子ОUT1と、端子ОUT2とを備える。
【0030】
トランジスタTP1及びトランジスタTP2は、PチャネルのMОSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)であり、ローレベルのゲート信号を受信するとオンになり、ハイレベルのゲート信号を受信するとオフになる。また、トランジスタTN1及びトランジスタTN2は、NチャネルのMОSFETであり、ローレベルのゲート信号を受信するとオフになり、ハイレベルのゲート信号を受信するとオンになる。なお、ハイレベルの電位は、モータ駆動部104の電源電圧であるVDDと等しい電位である。また、ローレベルの電位は、0V又は基準電圧であるVSSと等しい電位である。
【0031】
トランジスタTP1及びトランジスタTP2のソースは、互いに電気的に接続されており、モータ駆動部104の電源電圧であるVDDが供給される。また、トランジスタTP1のドレイン及びトランジスタTN1のドレインは、端子ОUT1に電気的に接続されている。また、トランジスタTP2のドレイン及びトランジスタTN2のドレインは、端子ОUT2に電気的に接続されている。トランジスタTN1及びトランジスタTN2のソースは、互いに電気的に接続されており、0V又は基準電圧であるVSSが供給される。
【0032】
[ステッピングモータ105の構成]
ステッピングモータ105は、ステータ201と、ロータ202と、ロータ収納用貫通孔203と、内ノッチ204と、内ノッチ205と、外ノッチ206と、外ノッチ207と、磁心208と、コイル209とを備える。
【0033】
磁心208は、磁性材料で作製されている棒状の部材であり、ステータ201の両端と接合されている。
【0034】
コイル209は、磁心208に巻き付けられている。コイル209の一端は、端子ОUT1に接続されており、コイル209の他端は、端子ОUT2に接続されている。コイル209は、駆動電流Idrvが流されることにより磁束を発生させる。
【0035】
ステータ201は、例えばU字状に湾曲しており、磁性材料で作製されている部材である。ステータ201は、コイル209が発生させる磁束をロータ202に与える。
【0036】
ロータ202は、円柱状に形成されており、ステータ201に形成されたロータ収納用貫通孔203に対して回転可能な状態で挿入されている。また、ロータ202は、着磁されているため、N極及びS極を有する。以下の説明において、ロータ202のS極からN極に向かう軸を磁極軸Aとも称し、磁極軸AのS極からN極へ向かう方向を磁極軸Aの正の方向(又は単に磁極軸Aの方向)とも称する。
ロータ202は、正転方向に回転することにより輪列を介して指針155を時計周りに回転させ、逆転方向に回転することにより輪列を介して指針155を反時計周りに回転させる。すなわち、ロータ202は、指針155を時計回りに回転させる正転方向及び指針155を正転方向とは反対の方向である逆転方向、に回転することができる。
【0037】
内ノッチ204及び内ノッチ205は、ロータ収納用貫通孔203の壁面に形成された切り欠きであり、ステータ201に対するロータ202の停止位置を決定している。すなわち、例えば、図2に示すように、コイル209が励磁されていない場合、ロータ202は、磁極軸が内ノッチ204と内ノッチ205とを結ぶ線分と直交する位置で静止する。
【0038】
外ノッチ206及び外ノッチ207は、それぞれ湾曲しているステータ201の内側及び外側に形成されている切り欠きであり、ロータ収納用貫通孔203との間に過飽和部を形成している。ここで、過飽和部は、ロータ202の磁束により磁気飽和せず、コイル209が励磁されたときに磁気飽和して磁気抵抗が大きくなる部分である。
【0039】
図4は、実施形態に係るステッピングモータ105駆動時における電池120の電圧波形である。同図を参照しながら、電池120の電圧降下について説明する。図4の横軸はに時間を示し、図4の縦軸は電池120の電圧を示している。
同図は、ステッピングモータ105が早送り正転駆動される場合における電池120の電圧波形の一例を示す図である。
【0040】
この一例において、制御部103は、ロータ202を所定の角度回転させる駆動パルスと、ロータ202の位置を保持するための保持パルスとにより、ロータ202の回転角を制御する。図4は、スリープ状態等の所定の状態から駆動状態に切り替わる場合における電池120の電圧の時間変化を示す。
時刻t2以前は、スリープ状態等のように、所定の機能が実行されていない状態(非駆動状態)である。時刻t2以前において、電圧変動は電圧v0から電圧v1の間であり、安定している。時刻t2以前における電池120の電圧の最大値は、時刻t0における電圧v0である。時刻t2以前における電池120の電圧の最小値は、時刻t1における電圧v1である。
【0041】
時刻t2以降において、制御部103は、ステッピングモータ105を、駆動パルスおよび保持パルスにより駆動する。時刻t2以降において、電圧変動は電圧v2から電圧v3の間であり、大きく変動している。時刻t2以降における電池120の電圧の最大値は、時刻t5等における電圧v2である。時刻t2以降における電池120の電圧の最小値は、時刻t6等における電圧v3である。
【0042】
図4を参照しながら、駆動パルスと保持パルスにより正転駆動する場合の一例について説明したが、電池120の電圧が最小値となるタイミングは、駆動方式毎に異なる。したがって、本実施形態では、駆動方式毎に異なる測定タイミングを記憶し、駆動方式毎に異なる測定タイミングで電池120の電圧を測定する。したがって、本実施形態では、電池120の電圧が最小値となるタイミングで電圧を測定することができる。
【0043】
図5は、実施形態に係るアナログ電子時計1の一連の動作を説明するための図である。同図を参照しながら、アナログ電子時計1の一連の動作について説明する。
(ステップS10) 特定部121は、ステッピングモータ105の駆動方式を特定する。例えば、特定部121は、制御部103から、ステッピングモータ105の駆動方式を取得する。
(ステップS20) 測定タイミング取得部123は、特定部121が取得した駆動方式に応じた測定タイミングを記憶部122から取得する。
【0044】
(ステップS30) 測定部124は、駆動パルスが印加された場合(ステップS30;YES)には、処理をステップS40に進める。測定部124は、駆動パルスが印加されない場合(ステップS30;NO)には、ステップS30の処理を続け、駆動パルスが印加されるまで待機する。例えば、測定部124は、モータ駆動部104から駆動パルスを印加したことを示す情報を取得し、駆動パルスが印加されたか否かを判定する。なお、測定部124は、コイル209の両端の電圧を測定することにより、駆動パルスが印加されたか否かを判定するよう構成してもよい。
(ステップS40) 測定部124は、駆動パルスが印加されると、測定タイミング取得部123により取得された測定タイミングで、電池120の電圧を測定する。測定部124は、測定した結果を制御部103に提供する。
【0045】
(ステップS50) 制御部103は、測定部124から測定した電池120の電圧を取得する。制御部103は、取得した電圧が所定の電圧値以下である場合(ステップS50;YES)には、処理をステップS60に進める。制御部103は、取得した電圧が所定の電圧値以下でない場合(ステップS50;NO)には、処理を終了する。
【0046】
ここで、所定の電圧値とは、例えば、特定の機能の最小動作電圧から定められる電圧であってもよい。アナログ電子時計1が備える各種の機能(例えば、コンパス機能やストップウォッチ機能等)は、機能ごとに最小動作電圧を有する。所定の電圧とは、アナログ電子時計1が備える各種の機能のうち、一部の機能を使用することができないが、その他の機能を使用することができる電圧である。以降、所定の電圧を所定の閾値とも記載する。
なお、所定の閾値は、不図示の記憶部に記憶されていてもよい。
【0047】
(ステップS60) 制御部103は、電池120の電圧が所定の閾値以下であった場合には、特定の機能を制限する。特定の機能とは、例えば、電池120の電力を消費するコンパス機能、ストップウォッチ機能、等である。すなわち、制御部103は、測定部124が測定する電池120の電圧が所定の閾値以下である場合に、電池を消費する機能のうち、少なくとも一部の特定の機能の使用を制限する。
なお、特定の機能とは、ブルートゥース(登録商標)(Bluetooth)、Wi-Fi(登録商標)、IrDA(Infrared Data Association)、TransferJet(登録商標)、ZigBee(登録商標)等の無線通信機能、その他の周辺機能であってもよい。
また、制御部103は、電池120の電圧が所定の閾値以下であった場合には、運針方方式を制限する。ここで、運針方式の制限とは、指針の同時駆動本数を減らす、駆動周波数を遅くする、指針の駆動方向を負荷が軽いほうに切り替える、等を意味する。
【0048】
図6は、実施形態に係るステッピングモータ105が正転駆動される場合における測定タイミングの一例を説明するための図である。
同図には、ステッピングモータ105が備えるコイル209の両端の電圧の時間変化と、ステッピングモータ105が備えるコイル209に流れる電流の絶対値の時間変化とが示される。なお、図6の横軸は、時間を示す。また、図6の上側の図の縦軸は、コイル209の両端の電圧を示し、図6の下側の図の縦軸は、コイル209に流れる電流を示す。同図は、ステッピングモータ105を正転駆動させる場合における一例である。
この一例において、制御部103は、ロータ202を所定の角度回転させる駆動パルスとロータ202の位置を保持するための保持パルスとにより、ロータ202の回転角を正転駆動により制御する。
【0049】
時刻t0から時刻t50において、制御部103は、モータ駆動部104に正転駆動用の駆動パルスを出力する。モータ駆動部104に正転駆動用の駆動パルスが出力されると、コイル209の両端には電池電圧である電圧vが印加され、コイル209には電流が流れる。時刻t0から時刻t50における電流の最大値は電流isである。
【0050】
時刻t50から時刻t70において、制御部103は、モータ駆動部104に保持パルスを出力する。ここで、保持パルスとは、所定の周期でチョッピング駆動するチョッピングパルスである。モータ駆動部104に保持パルスが出力されると、コイル209の両端に電池電圧である電圧vが印加されるオン状態と、コイル209の両端に電圧が印加されないオフ状態と、が繰り返される。時刻t50から時刻t70における電流の最大値は、時刻t52における電流i52である。
【0051】
ここで、コイル209に流れる電流が大きいほど、電池120の電圧は降下する。したがって、コイルに流れる電流が大きいタイミングで電池120の電圧を測定することが望ましい。
この一例において、駆動パルス印加時における電流の最大値は、時刻tsにおける電流isであり、保持パルス印加時における電流の最大値は、時刻t52における電流i52である。したがって、測定タイミングは、時刻tsまたは時刻t52とすることが望ましい。なお、測定タイミングは、駆動パルス印加中である時刻tsとすることがより望ましい。
【0052】
図7は、実施形態に係るステッピングモータ105が逆転駆動される場合における測定タイミングの一例を説明するための図である。
同図には、ステッピングモータ105が備えるコイル209の両端の電圧の時間変化と、ステッピングモータ105が備えるコイル209に流れる電流の絶対値の時間変化とが示される。なお、図7の横軸は、時間を示す。また、図7の上側の図の縦軸は、コイル209の両端の電圧を示し、図7の下側の図の縦軸は、コイル209に流れる電流を示す。同図は、ステッピングモータ105を逆転駆動させる場合における一例である。
この一例において、制御部103は、ロータ202を所定の角度回転させる駆動パルスとロータ202の位置を保持するための保持パルスとにより、ロータ202の回転角を逆転駆動により制御する。
【0053】
時刻t0から時刻t73において、制御部103は、モータ駆動部104に逆転駆動用の駆動パルスを出力する。制御部103は、時刻t0において、コイル209の両端に電池電圧である電圧vを印加する。
制御部103は、時刻t71において、時刻t0から時刻t71において印加した電圧と逆方向の電圧である電圧-vを印加する。したがって、時刻t71から時刻t72においては、コイル209に、時刻t0から時刻t71において流れた電流とは逆方向の電流が流れる。
制御部103は、時刻t72において、再び、時刻t0から時刻t71において印加した電圧と同じ電圧である電圧vを印加する。したがって、時刻t72から時刻t73においては、コイル209に、時刻t0から時刻t71において流れた電流と同じ方向の電流が流れる。時刻t72から時刻t73において流れる電流の最大値は、時刻tsにおける電流isである。時刻t72から時刻t73において流れる電流の大きさは、時刻t0から時刻t71において流れた電流の大きさよりも大きい。
【0054】
時刻t73から時刻t97において、制御部103は、モータ駆動部104に保持パルスを出力する。モータ駆動部104に保持パルスが出力されると、コイル209の両端に電池電圧である電圧vが印加されるオン状態と、コイル209の両端に電圧が印加されないオフ状態と、が繰り返される。時刻t73から時刻t97における電流の最大値は、時刻t75における電流i75である。
【0055】
この一例において、駆動パルス印加時における電流の最大値は、時刻tsにおける電流isであり、保持パルス印加時における電流の最大値は、時刻t75における電流i75である。したがって、測定タイミングは、時刻tsまたは時刻t52とすることが望ましい。なお、測定タイミングは、駆動パルス印加中である時刻ts、とすることがより望ましい。
すなわち、測定タイミングは、ステッピングモータ105が正転駆動される場合と、逆転駆動される場合とで互いに異なる。
【0056】
なお、上述した実施形態においては、ステッピングモータ105が1つのコイルを有する場合の一例について説明したが、本発明の実施形態は、ステッピングモータ105が2つのコイルにより構成される場合においても、同様に適用することができる。
図8は、実施形態に係るステッピングモータが、2コイルモータである場合における測定タイミングの一例を説明するための図である。
同図には、ステッピングモータが2つのコイル(第1コイル、第2コイル)を備える場合における、第1コイルの両端(out1、out2)の電圧の時間変化および第2コイルの両端(out3、out4)の電圧の時間変化と、当該コイルに流れる電流の絶対値の時間変化とが示される。なお、図8の横軸は、時間を示す。また、図8の上側の2つの図の縦軸は、当該コイルの両端の電圧を示し、図8の下側の図の縦軸は、当該コイルに流れる電流を示す。同図は、ステッピングモータを二層励磁により駆動する場合の一例について説明した図である。
【0057】
時刻t0から時刻td1において、制御部103は、ロータを45°回転させるためのパルスである駆動パルスP1を印加させる。時刻t0から時刻td1において、第1コイルの一端(out1)には、電池電圧である電圧vが印加される。これにより、ロータは45°回転した状態(第1の状態)となる。
時刻td1から時刻td2において、制御部103は、第1の状態からロータを135°回転させるためのパルスである駆動パルスP2を印加させる。時刻td1から時刻td2において、第2コイルの一端(out3)には、時刻t0から時刻td1において印加された電圧と同じ電圧である電圧vが印加される。これにより、ロータは180°回転した状態(第2の状態)となる。
時刻td2から時刻td3において、制御部103は、各コイルの両端に電圧を印加させない。
時刻t3から時刻td4において、制御部103は、第2の状態からロータを45°回転させるためのパルスである駆動パルスP1を印加させる。時刻t3から時刻td4において、第1コイルの他端(out2)には、電池電圧である電圧vが印加される。これにより、ロータは225°回転した状態(第3の状態)となる。
時刻td4から時刻td5において、制御部103は、第3の状態からロータを135°回転させるためのパルスである駆動パルスP2を印加させる。時刻td4から時刻td5において、第2コイルの他端(out4)には、時刻t3から時刻td4において印加された電圧と同じ電圧である電圧vが印加される。これにより、ロータは3600°回転した状態(第1の状態)となる。
【0058】
この一例において、時刻t0から時刻td5における電流の最大値は、時刻td2、td5における電流isである。したがって、測定タイミングは、駆動パルスP2の印加中である時刻td2、td5とすることが望ましい。
【0059】
[実施形態のまとめ]
以上説明した実施形態によれば、ステッピングモータ制御部112は、特定部121と、記憶部122と、測定タイミング取得部123と、測定部124と、制御部103とを備える。測定タイミング取得部123は、特定部121により特定されたステッピングモータ105の駆動方式に応じた測定タイミングを、記憶部122から取得する。測定部124は、取得した測定タイミングで、電池120の電圧を測定する。すなわち、ステッピングモータ制御部112は、駆動方式に応じて記憶された測定タイミングで、電池120の電圧を測定する。
したがって、以上説明した実施形態によれば、電池120の電圧が最小値となるタイミングで、電圧を測定することができる。電池120の電圧の最小値は、駆動方式ごとに異なるため、いずれの駆動方式で駆動した場合でも、電圧が最小値となるタイミングで、電圧を測定することができる。
【0060】
また、以上説明した実施形態によれば、測定タイミングとは、ステッピングモータ105が備えるロータ202を回転させる駆動パルスが出力された後の所定時間である。すなわち、測定部124は、駆動パルスが出力される周期ごとに電池120の電圧を測定する。
したがって、以上説明した実施形態によれば、電池120の電圧を測定した次の周期から、測定した結果を反映させることができるため、急な電圧降下が発生した場合においても、当該電圧降下を測定することができる。
【0061】
また、以上説明した実施形態によれば、測定タイミングは、ステッピングモータ105が正転駆動される場合と、逆転駆動される場合とで互いに異なる。また、ステッピングモータ105が正転駆動される場合と、逆転駆動される場合とでは、電池120の電圧の最小値となるタイミングが異なる。
したがって、以上説明した実施形態によれば、正転駆動時及び逆転駆動時それぞれの最小値を測定することができる。
【0062】
以上、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明したが、具体的な構成が上述した実施形態に限られるわけではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲での設計変更等も含まれる。
【符号の説明】
【0063】
1…アナログ電子時計、101…発振部、102…分周部、103…制御部、104…モータ駆動部、105…ステッピングモータ、106…アナログ表示部、107…時針、108…分針、109…秒針、110…カレンダ表示部、112…ステッピングモータ制御部、113…時計ケース、114…時計用ムーブメント、120…電池、121…特定部、122…記憶部、123…測定タイミング取得部、124…測定部、201…ステータ、202…ロータ、203…ロータ収納用貫通孔、204…内ノッチ、205…内ノッチ、206…外ノッチ、207…外ノッチ、208…磁心、209…コイル
図1
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図8