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特許7357576ボビン、コイルボビン及びコイルステータ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-28
(45)【発行日】2023-10-06
(54)【発明の名称】ボビン、コイルボビン及びコイルステータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 3/46 20060101AFI20230929BHJP
   H01F 5/02 20060101ALI20230929BHJP
   H01F 5/04 20060101ALI20230929BHJP
   H02K 5/08 20060101ALN20230929BHJP
【FI】
H02K3/46 B
H01F5/02 B
H01F5/02 D
H01F5/04 C
H02K5/08 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020047110
(22)【出願日】2020-03-18
(65)【公開番号】P2021151031
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2022-06-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000116574
【氏名又は名称】愛三工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】寺澤 功朗
【審査官】津久井 道夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-124217(JP,A)
【文献】特開平02-219429(JP,A)
【文献】特開2015-204433(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 3/46
H01F 5/02
H01F 5/04
H02K 5/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円環状をなし、外周に導線が巻き付けられる巻芯部と、
前記巻芯部の軸方向の両端に形成された第1フランジ部及び第2フランジ部と、
前記第1フランジ部及び前記第2フランジ部は、その軸方向において前記巻芯部に面する内面と前記内面の反対側に位置する外面とを含むことと、
前記導線の端部が接続される複数の端子と、
複数の前記端子を前記巻芯部の前記軸方向と直交する方向へ並列に保持するために前記第1フランジ部に設けられた端子保持部と
を備えたボビンにおいて、
前記端子保持部は、隣り合う前記端子の間にて前記巻芯部の前記軸方向に沿って貫通する溝と、前記溝で分断され、それぞれ一つの前記端子が配置された複数の基台とを含み、
前記第1フランジ部の前記外面の側に対応して、複数の前記基台には、前記導線の張力を保持するために前記導線の一部が係合する張力保持部が設けられ
複数の前記端子に対応して前記第1フランジ部の前記外面の側にて周方向に延びるように形成され、前記端子から前記巻芯部へ向けて引き込まれる前記導線を前記巻芯部へ案内するための導線案内部を備え、
前記導線案内部は、互いに対向する二面の一方を第1導線案内部とし、前記二面の他方を第2導線案内部として含み、
前記第1導線案内部及び前記第2導線案内部には、それぞれ異なる前記端子から前記巻芯部へ向けて引き込まれる異なる前記導線が案内されるようになっている
ことを特徴とするボビン。
【請求項2】
請求項に記載のボビンにおいて、
前記導線案内部には、前記周方向に延び、前記導線が係合する導線溝が形成された
ことを特徴とするボビン。
【請求項3】
請求項又はに記載のボビンに前記導線を巻き付けたコイルボビンにおいて、
前記導線は、前記第1フランジ部の前記外面の側にて前記端子から前記張力保持部及び前記導線案内部を経由して前記巻芯部へ引き込まれ、前記巻芯部に複数回巻き付けられてコイルが形成され、前記第1フランジ部の前記内面の側から前記溝の隅部と前記張力保持部に係合しながら前記端子へ引き戻り、前記端子に接続された
ことを特徴とするコイルボビン。
【請求項4】
請求項に記載のコイルボビンを備えたコイルステータであって、
前記ボビン、前記導線及び前記コイルの外周が外装樹脂材によりモールドされた
ことを特徴とするコイルステータ。
【請求項5】
請求項に記載のコイルボビンを備えたコイルステータであって、
前記コイルの外周と、前記巻芯部の内周と、前記第2フランジ部の前記外面とを覆うように前記コイルボビンを収容するカップと、
前記カップに収容された前記コイルボビンの前記第1フランジ部の前記外面と、前記巻芯部の内周とを覆うように前記カップに組み付けられたステータと、
前記コイルボビンが前記カップに収容され、前記カップに前記ステータが組み付けられた状態で、前記カップと前記ステータの外周を覆うと共に、前記カップと前記ステータと前記コイルの外周との間に形成された閉空間に充填された外装樹脂材と
を備えたことを特徴とするコイルステータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この明細書に開示される技術は、例えば、自動車用の電動弁を構成するモータ等に使用されるボビン、コイルボビン及びコイルステータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、自動車用の電動弁等に使用されるステップモータは、コイルステータを構成要素として備える。このコイルステータは、樹脂製のボビンに導線が巻き付けられたコイルボビンを含む。このコイルボビンは、耐水、耐湿及び防塵等の観点から、外装樹脂材(絶縁封止材)によりモールドされる。樹脂モールドをする際、コイルボビンはワークとして金型に装着され、金型に溶融樹脂材を流し込むことでワークの外周が樹脂材によりモールドされる。ところが、この樹脂モールドをする際には、ワークへの溶融樹脂材の流れ込みにより導線が押圧され、導線に引張応力が発生し、断線のおそれがあった。特に、ボビンのフランジ部に設けられた端子から巻芯部へ導線が引き込まれる引き込み部では、導線が渡り線(宙浮き又は一面のみに沿って配線された状態の導線)となり、その渡り線の部分で引張応力が発生し、導線に断線のおそれがあった。
【0003】
そこで、上記問題を解決するために、下記の特許文献1に記載される技術(ボビン及びコイルステータ)が提案されている。この技術は、導線が巻き付けられる巻芯部と、巻芯部の軸方向端部に形成されたフランジ部と、フランジ部に設けられた端子とを含むボビンを備える。このボビンには、端子が設けられたフランジ部の軸方向一端面側(外面側)に、周方向に延びるように導線案内部が形成される。この導線案内部は、導線の引き込み部を端子から巻芯部へ向けて案内するようになっている。また、端子が設けられたフランジ部には、導線案内部で案内される導線の張力を保持するための張力保持部が設けられる。更に、導線案内部には、案内される導線を外力に対し保持するための外力保持部が設けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-124217号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、特許文献1に記載の技術では、導線の引き込み部分につき、樹脂モールドの成形圧力への対策はできているものの、フランジ部の軸方向他端面側(内面側)、すなわち導線の引き込み部分の反対側(導線の引き戻し部分)では、巻芯部から端子へ引き戻す導線が長いまま渡り線として残ってしまう。そのため、樹脂モールドの際に、導線の引き戻し部分が、樹脂モールドの成形圧力を受けて断線するおそれがあった。
【0006】
この開示技術は、上記事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、樹脂モールドの際に、巻芯部から端子へ引き戻す導線の引き戻し部分が、樹脂モールドの成形圧力を受けて断線することを抑制可能としたボビン、コイルボビン及びコイルステータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1に記載のボビンは、円環状をなし、外周に導線が巻き付けられる巻芯部と、巻芯部の軸方向の両端に形成された第1フランジ部及び第2フランジ部と、第1フランジ部及び第2フランジ部は、その軸方向において巻芯部に面する内面と内面の反対側に位置する外面とを含むことと、導線の端部が接続される複数の端子と、複数の端子を巻芯部の軸方向と直交する方向へ並列に保持するために第1フランジ部に設けられた端子保持部とを備えたボビンにおいて、端子保持部は、隣り合う端子の間にて巻芯部の軸方向に沿って貫通する溝と、溝で分断され、それぞれ一つの端子が配置された複数の基台とを含み、第1フランジ部の外面の側に対応して、複数の基台には、導線の張力を保持するために導線の一部が係合する張力保持部が設けられ、複数の端子に対応して第1フランジ部の外面の側にて周方向に延びるように形成され、端子から巻芯部へ向けて引き込まれる導線を巻芯部へ案内するための導線案内部を備え、導線案内部は、互いに対向する二面の一方を第1導線案内部とし、二面の他方を第2導線案内部として含み、 第1導線案内部及び第2導線案内部には、それぞれ異なる端子から巻芯部へ向けて引き込まれる異なる導線が案内されるようになっていることを趣旨とする。
【0008】
上記ボビンの構成によれば、巻芯部に巻き付けた導線を端子に接続する場合、導線を巻芯部から溝と張力保持部を経由させて端子へ引き戻すことになる。ここで、端子へ引き戻す導線の引き戻し部分は、溝の隅部と張力保持部に係合させながら端子に接続させることになる。従って、端子保持部では、導線の引き戻し部分の渡り線(宙浮き又は一面のみに沿って配線された状態)が短くなり、導線の引き戻し部分に樹脂モールドの成形圧力がかかり難くなる。また、導線を巻芯部に巻き付ける場合、端子に一端部を接続した導線を巻芯部へ向けて引き込む。ここで、巻芯部へ引き込まれる導線の引き込み部分は、張力保持部を経由し、導線案内部に沿って巻芯部へ案内されることになる。従って、フランジ部の外面の側では、導線の引き込み部分の張力が張力保持部により保持され、引き込み部分の外力に対する引張応力が緩和される。また、導線の引き込み部分が導線案内部に沿って案内されるので、導線の引き込み部分の渡り線が短くなり、導線の引き込み部分に樹脂モールドの成形圧力がかかり難くなる。
【0011】
上記目的を達成するために、請求項に記載のボビンは、請求項に記載のボビンにおいて、導線案内部には、周方向に延び、導線が係合する導線溝が形成されたことを趣旨とする。
【0012】
上記ボビンの構成によれば、請求項に記載のボビンの作用に加え、導線案内部にて導線が導線溝に係合しながら保持されるので、導線にその幅方向への外力が加わっても、導線の幅方向への移動が規制される。
【0013】
上記目的を達成するために、請求項に記載のコイルボビンは、請求項又はに記載のボビンに導線を巻き付けたコイルボビンにおいて、導線は、第1フランジ部の外面の側にて端子から張力保持部及び導線案内部を経由して巻芯部へ引き込まれ、巻芯部に複数回巻き付けられてコイルが形成され、第1フランジ部の内面の側から溝の隅部と張力保持部に係合しながら端子へ引き戻り、端子に接続されたことを趣旨とする。
【0014】
上記コイルボビンの構成によれば、請求項又はに記載のボビンと同等の作用が得られる。
【0015】
上記目的を達成するために、請求項に記載のコイルステータは、請求項に記載のコイルボビンを備えたコイルステータであって、ボビン、導線及びコイルの外周が外装樹脂材によりモールドされたことを趣旨とする。
【0016】
上記コイルステータの構成によれば、請求項に記載のコイルボビンの作用に加え、ボビン、導線及びコイルが外装樹脂材によりモールドされるので、ボビン、導線及びコイルが湿気や損傷から保護される。
【0017】
上記目的を達成するために、請求項に記載のコイルステータは、請求項に記載のコイルボビンを備えたコイルステータであって、コイルの外周と、巻芯部の内周と、第2フランジ部の外面とを覆うようにコイルボビンを収容するカップと、カップに収容されたコイルボビンの第1フランジ部の外面と、巻芯部の内周とを覆うようにカップに組み付けられたステータと、コイルボビンがカップに収容され、カップにステータが組み付けられた状態で、カップとステータの外周を覆うと共に、カップとステータとコイルの外周との間に形成された閉空間に充填された外装樹脂材とを備えたことを趣旨とする。
【0018】
上記コイルステータの構成によれば、請求項に記載のコイルボビンの作用に加え、コイルボビンがカップに収容され、カップにステータが組み付けられた状態で、ボビン、導線、コイル、カップ及びステータが外装樹脂材によりモールドされるので、ボビン、導線、コイル、カップ及びステータが湿気や損傷から保護される。
【発明の効果】
【0019】
請求項1に記載のボビンによれば、樹脂モールドの際に、巻芯部から端子へ引き戻す導線の引き戻し部分が、樹脂モールドの成形圧力を受けて断線することを抑制することができる。また、樹脂モールドの際に、端子から巻芯部への導線の引き込み部分が、樹脂モールドの成形圧力を受けて断線することを抑制することができる。
【0021】
請求項に記載のボビンによれば、請求項に記載のボビンの効果に加え、導線案内部における導線の幅方向への移動又は擦れを防止することができ、導線の絶縁性を確保することができる。
【0022】
請求項に記載のコイルボビンによれば、請求項又はに記載のボビンの効果と同等の効果を得ることができる。
【0023】
請求項に記載のコイルステータによれば、請求項に記載のコイルボビンの効果に加え、ボビン、導線及びコイルを備えたコイルステータの耐久性を向上させることができる。
【0024】
請求項に記載のコイルステータによれば、請求項に記載のコイルボビンの効果に加え、ボビン、導線、コイル、カップ及びステータを備えたコイルステータの耐久性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】一実施形態に係り、コイルステータを示す側面図。
図2】一実施形態に係り、コイルステータを示す縦断面図。
図3】一実施形態に係り、組みサブコイルステータを示す側面図。
図4】一実施形態に係り、組みサブコイルステータを示す図3のA-A線断面図。
図5】一実施形態に係り、第1ボビンを正面右側から視て示す斜視図。
図6】一実施形態に係り、第1ボビンを正面左側から視て示す斜視図。
図7】一実施形態に係り、第1ボビンの端子保持部等を含む部分を示す正面図。
図8】一実施形態に係り、第1導線案内部及び第2導線案内部を示す図7のB-B線に沿った拡大断面図。
図9】一実施形態に係り、第1コイルボビンを示す正面図。
図10】一実施形態に係り、第1コイルボビンを示す背面図。
図11】一実施形態に係り、第1コイルボビンを示す左側面図。
図12】一実施形態に係り、第1コイルボビンを示す図9のC-C線断面図。
図13】一実施形態に係り、第1コイルボビンを示す図11のD-D線断面図。
図14】一実施形態に係り、第1コイルボビンの一部(図9の一点鎖線円で囲った部分)を示す正面図。
図15】一実施形態に係り、組みサブコイルステータを示す斜視図。
図16】一実施形態に係り、組みサブコイルステータを示す分解斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、ボビン、コイルボビン及びコイルステータを具体化した一実施形態につき図面を参照して詳細に説明する。
【0027】
[コイルステータについて]
先ず、コイルステータについて説明する。図1に、この実施形態におけるコイルステータ1を側面図により示す。図2に、コイルステータ1を縦断面図により示す。このコイルステータ1は、電動式EGR弁のモータ部に使用され、ロータ(図示略)と組み合わせることによりステップモータが構成される。図2に示すように、このコイルステータ1は、上下に配置された第1ボビン3及び第2ボビン4を備える。第1ボビン3及び第2ボビン4には、それぞれコイル5が設けられる。第1ボビン3にコイル5が設けられることにより、第1コイルボビン11が構成される。第2ボビン4にコイル5が設けられることにより、第2コイルボビン12が構成される。各ボビン3,4は、それぞれ樹脂材により形成される。
【0028】
第1コイルボビン11に対応して、それぞれ金属材より形成される第1カップ15と第1ステータ16が設けられる。第1コイルボビン11は、第1カップ15と、第1カップ15に組み付けられた第1ステータ16とから形成される空間に収容される。第1コイルボビン11、第1カップ15及び第1ステータ16により、第1サブコイルステータ21が構成される。
【0029】
また、第2コイルボビン12に対応して、それぞれ金属材より形成される第2カップ17と第2ステータ18が設けられる。第2コイルボビン12は、第2カップ17と、第2カップ17に組み付けられた第2ステータ18とから形成される空間に収容される。これら第2コイルボビン12、第2カップ17及び第2ステータ18により、第2サブコイルステータ22が構成される。
【0030】
そして、第1サブコイルステータ21と第2サブコイルステータ22が、互いに同軸上に上下に重ねて配置されることにより、一対をなす組みサブコイルステータ25が構成される。図3には、組みサブコイルステータ25を側面図により示す。図4には、組みサブコイルステータ25を、図3のA-A線断面図により示す。図2図3に示すように、第1サブコイルステータ21の上には、金属材より形成されたキャップ27が重ねて設けられる。
【0031】
そして、この実施形態では、図3に示すように、組みサブコイルステータ25の上にキャップ27が重ねられた状態で、各カップ15,17と各ステータ16,18の外周が外装樹脂材29により覆われると共に、各カップ15,17と各ステータ16,18と各コイルボビン11,12の外周との間に形成された閉空間に外装樹脂材29が充填されている。すなわち、各カップ15,17と各ステータ16,18と各コイルボビン11,12が外装樹脂材29により樹脂モールドされている。これにより、図1図2に示すコイルステータ1が形成される。
【0032】
すなわち、図3に示すように組み合わされた各カップ15,17と各ステータ16,18と各コイルボビン11,12をワークとして金型に装着し、その金型に溶融した樹脂材を流し込んでワークの外周及び内部を外装樹脂材29により樹脂モールドしている。各ボビン3,4の巻芯部31は、空洞をなし、その空洞部に各ステータ16,18の楔板16b,18bが組み込まれる。これらステータ16,18(楔板16b,18b)の内側にロータ(図示略)が組み込まれることにより、ステップモータが構成される。
【0033】
[ボビンについて]
次に、ボビンについて説明する。この実施形態では、第1ボビン3と第2ボビン4が同じ構成を有することから、第1ボビン3のみについて説明し、第2ボビン4の説明は省略する。図5に、第1ボビン3を正面右側から視た斜視図により示す。図6に、第1ボビン3を正面左側から視た斜視図により示す。図7に、第1ボビン3の端子保持部36等を含む部分を正面図により示す。
【0034】
図5図7に示すように、第1ボビン3は、円環状をなし、外周に導線41(図9等参照)が巻き付けられる巻芯部31と、巻芯部31の軸方向Xの両端に形成された第1フランジ部33及び第2フランジ部34と、導線41の端部が接続される複数の端子35A,35B,35Cと、複数の端子35A~35Cを巻芯部31の軸方向Xと直交する方向へ並列に保持するために第1フランジ部33に設けられた端子保持部36と、複数の端子35A~35Cに対応して第1フランジ部33の外面33b(後述する)の側にて周方向に延びるように形成され、端子35Bから巻芯部31へ向けて引き込まれる導線41の引き込み部分を巻芯部31へ案内するための第1導線案内部37Aと、端子35Aから巻芯部31へ向けて引き込まれる導線41の引き込み部分を巻芯部31へ案内するための第2導線案内部37Bとを備える。第1フランジ部33は、その軸方向Xにおいて巻芯部31に面する内面33a(図11等参照)と内面33aの反対側に位置する外面33bとを含む。第2フランジ部34は、その軸方向Xにおいて巻芯部31に面する内面34aと内面34aの反対側に位置する外面34b(図11等参照)とを含む。第1ボビン3は、全体が樹脂材により一体に形成される。各端子35A~35Cは、導電性金属材により形成され、導線41の一部を係止するための括れ35dとフック35eを有する。
【0035】
図5図6に示すように、端子保持部36は、隣り合う端子35A~35Cの間にて巻芯部31の軸方向Xに沿って貫通する複数(二つ)の溝36a,36bと、二つの溝36a,36bで分断され、それぞれ一つの端子35A~35Cが配置された複数(三つ)の基台36c,36d,36eとを含む。この実施形態で、第1フランジ部33の外面33bの側に対応して、複数の基台36c~36eには、導線41の張力を保持するために導線41の一部が係合する複数(三つ)の張力保持部38A,38B,38Cが設けられる。各張力保持部38A~38Cは、導線41の張力を保持するために、導線41の一部が係合するように平坦又は外へ凸に湾曲した形状をなす。また、図5図7において、右端の基台36eには、張力保持部38Cに隣接して流路36fが形成される。
【0036】
図5図7に示すように、第1導線案内部37Aは、中央の端子35Bに接続された導線41を巻芯部31へ案内するように形成される。第2導線案内部37Bは、図5図7において、左側の端子35Aに接続された導線41を巻芯部31へ案内するように形成される。また、第1フランジ部33には、導線41を第1フランジ部33の外面33b側から巻芯部31へ導入するための切り欠き部33cが形成される。
【0037】
図8に、第1導線案内部37A及び第2導線案内部37Bを図7のB-B線に沿った拡大断面図により示す。第1導線案内部37A及び第2導線案内部37Bそれぞれの隅部には、図8に示すように、周方向に延び、導線41が係合する導線溝39a,39bが形成される。第1導線案内部37Aに形成される第1導線溝39aには、端子35Bから延びる導線41が係合しながら案内され、第2導線案内部37Bの第2導線溝39bには、端子35Aから延びる導線41が係合しながら案内される。このように各導線案内部37A,37Bにて案内された2本の導線41は、巻芯部31では2本を一組として一緒に巻き付けられることになる。
【0038】
[コイルボビンについて]
次に、コイルボビンについて説明する。この実施形態では、第1コイルボビン11と第2コイルボビン12が同じ構成を有することから、第1コイルボビン11のみについて説明し、第2コイルボビン12の説明は省略する。
【0039】
図9に、第1コイルボビン11を正面図により示す。図10に、第1コイルボビン11を背面図により示す。図11に、第1コイルボビン11を左側面図により示す。図12に、第1コイルボビン11を、図9のC-C線断面図により示す。図13に、第1コイルボビン11を、図11のD-D線断面図により示す。図14に、第1コイルボビン11の一部(図9の一点鎖線四角で囲った部分)を正面図により示す。図11図13において、各端子35A~35Cに接続される導線41の図示は省略する。
【0040】
図9図14に示すように、第1コイルボビン11は、上記した第1ボビン3の巻芯部31に導線41を巻き付け、各端子35A~35Cに導線41の端部を巻き結ぶことにより形成される。導線41は、第1フランジ部33の外面33bの側にて、二つの端子35A,35Bから対応する二つの張力保持部38A,38B、第1導線案内部37A及び第2導線案内部37B及び切り欠き部33cを経由して巻芯部31へ引き込まれ、巻芯部31に複数回巻き付けられることによりコイル5が形成される。また、第1フランジ部33の内面33aの側から各溝36a,36bの隅部又はその近傍(図14参照)と張力保持部38B,38Cに係合しながら二つの端子35B,35Cへ引き戻り、各端子35B,35Cに巻き結ばれ、接続される。
【0041】
[組みサブコイルステータについて]
次に、上記のように構成した第1コイルボビン11及び第2コイルボビン12を含む組みサブコイルステータ25について説明する。図15に、組みサブコイルステータ25(キャップ27を下側に配置した)を斜視図により示す。図16に、組みサブコイルステータ25を分解斜視図により示す。図15図16において、各端子35A~35Cに接続される導線41の図示は省略する。
【0042】
図15図16に示すように、第1カップ15は、略円筒形をなし、円環状の底板15aと、底板15aの外周に形成された二つの円弧板15bと、底板15aの内周に等間隔に配置され楔形をなす複数の楔板15cとを含む。第1カップ15には、底板15a、円弧板15b及び楔板15cで囲まれた円環状の空間に第1コイルボビン11が収容される。第1ステータ16は、略円筒形をなし、円環状の底板16aと、底板16aの内周に等間隔に配置され楔形をなす複数の楔板16bとを含む。第1ステータ16には、底板16aと楔板16bで挟まれた円環状の空間に第1コイルボビン11が嵌め合わされる。すなわち、第1カップ15の円環状の空間に、第1コイルボビン11が収容され、その第1コイルボビン11を覆うように第1ステータ16が第1カップ15に組み付けられることにより、第1サブコイルステータ21が形成される。
【0043】
図15図16に示すように、第2カップ17は、第1カップ15と同一形状をなし、円環状の底板17aと、底板17aの外周に形成された二つの円弧板17bと、底板17aの内周に等間隔に配置され楔形をなす複数の楔板17cとを含む。第2カップ17には、底板17a、円弧板17b及び楔板17cで囲まれた円環状の空間に第2コイルボビン12が収容される。第2ステータ18は、第1ステータ16と同一形状をなし、円環状の底板18aと、底板18aの内周に等間隔に配置され楔形をなす複数の楔板18bとを含む。第2ステータ18には、底板18aと楔板18bで挟まれた円環状の空間に第2コイルボビン12が嵌め合わされる。すなわち、第2カップ17の円環状の空間に、第2コイルボビン12が収容され、その第2コイルボビン12を覆うように第2ステータ18が、第2カップ17に組み付けられることにより、第2サブコイルステータ22が形成される。
【0044】
そして、図15に示すように、第1サブコイルステータ21と第2サブコイルステータ22を、それらの円弧板15b,17bが互いに整合するように重ね合わせることにより、組みサブコイルステータ25が構成される。この組みサブコイルステータ25において、隣り合う円弧板15b,17bの間に二つの開口26が形成される。その一つの開口26には、第1コイルボビン11の端子保持部36と第2コイルボビン12の端子保持部36が重ね合わされて配置され、両コイルボビン11,12の各端子35A~35Cが両カップ15,17の外周から突出する。
【0045】
[ボビン、コイルボビン及びコイルステータの作用及び効果について]
以上説明したこの実施形態における各ボビン3,4、各コイルボビン11,12及びコイルステータ1の構成によれば、それらの巻芯部31に巻き付けた導線41を二つの端子35B,35Cに接続する場合、導線41を巻芯部31から各溝36a,36bと、対応する張力保持部38B,38Cを経由させて対応する各端子35B,35Cへ引き戻すことになる。ここで、巻芯部31から各端子35B,35Cへ引き戻す導線41の引き戻し部分は、各溝36a,36bの隅部又はその近傍と各張力保持部38B,38Cに係合させながら各端子35B,35Cに接続させることになる。従って、端子保持部36では、導線41の引き戻し部分の渡り線(宙浮き又は一面のみに沿って配線された状態)が短くなり、導線41の引き戻し部分に樹脂モールドの成形圧力がかかり難くなる。すなわち、樹脂モールドの際には、図14図15に黒矢印で示すように、各ボビン3,4の端子保持部36に設けた溝36a,36b、流路36f及び導線案内部37A,37Bに沿って溶融した樹脂材が流れ、導線41の配線方向に沿った方向に樹脂材が流れることになる。これにより、導線41の引き戻し部分が、せん断方向に成形圧力を受け難くなる。このため、樹脂モールドの際に、巻芯部31から各端子35B,35Cへ引き戻す導線41の引き戻し部分が、樹脂モールドの成形圧力を受けて断線することを抑制することができる。
【0046】
この実施形態における各ボビン3,4、各コイルボビン11,12及びコイルステータ1の構成によれば、導線41を巻芯部31に巻き付ける場合、二つの端子35A,35Bに一端部を接続した導線41を巻芯部31へ向けて引き込む。ここで、各端子35A,35Bから巻芯部31へ引き込まれる導線41の引き込み部分は、対応する張力保持部38A,38Bを経由し、対応する各導線案内部37B,37Aに沿って巻芯部31へ案内されることになる。従って、第1フランジ部33の外面33bの側では、導線41の引き込み部分の張力が、対応する張力保持部38A,38Bにより保持され、引き込み部分の外力に対する引張応力が緩和される。また、導線41の引き込み部分が、対応する導線案内部37A,37Bに沿って案内されるので、導線41の引き込み部分の渡り線が短くなり、導線41の引き込み部分に樹脂モールドの成形圧力がかかり難くなる。このため、樹脂モールドの際に、各端子35A,35Bから巻芯部31への導線41の引き込み部分が、樹脂モールドの成形圧力を受けて断線することを抑制することができる。
【0047】
この実施形態における各ボビン3,4、各コイルボビン11,12及びコイルステータ1の構成によれば、端子35B及び端子35Aから延びる導線41が対応する各導線案内部37A,37Bにて対応する導線溝39a,39bのそれぞれに係合しながら保持される。従って、各導線41にその幅方向への外力(例えば、樹脂モールドの成形圧力)が加わっても、各導線41の幅方向への移動が規制される。このため、各導線案内部37A,37Bにおける各導線41の幅方向への移動又は擦れを防止することができ、各導線41の絶縁性を確保することができる。
【0048】
この実施形態におけるコイルステータ1の構成によれば、各コイルボビン11,12が対応する各カップ15,17に収容され、各カップ15,17に各ステータ16,18が組み付けられた状態で、各ボビン3,4、導線41、コイル5、各カップ15,17及び各ステータ16,18が外装樹脂材29によりモールドされる。従って、各ボビン3,4、導線41、コイル5、各カップ15,17及び各ステータ16,18が湿気や損傷から保護される。このため、各ボビン3,4、導線41、コイル5、各カップ15,17及び各ステータ16,18を備えたコイルステータ1の耐久性を向上させることができる。
【0049】
なお、この開示技術は前記実施形態に限定されるものではなく、開示技術の趣旨を逸脱することのない範囲で構成の一部を適宜変更して実施することもできる。
【0050】
(1)前記実施形態では、二つのサブコイルステータ21,22、すなわち二つのコイルボビン11,12を備えたコイルステータ1を構成した。これに対し、一つのサブコイルステータ、すなわち一つのコイルボビンを備えたコイルステータを構成することもできる。
【0051】
(2)前記実施形態では、電動式EGR弁のモータ部に使用され、ロータとの組み合わせによりステップモータが構成されるコイルステータに具体化したが、これに限られるものではなく、その他の電動式の弁のモータ部(ステップモータ又は直流モータを含む)に使用されるコイルステータに具体化することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
この開示技術は、例えば、ステップモータや直流モータ等の構成要素であるコイルステータに利用することができる。
【符号の説明】
【0053】
1 コイルステータ
3 第1ボビン
4 第2ボビン
5 コイル
11 第1コイルボビン
12 第2コイルボビン
15 第1カップ
16 第1ステータ
17 第2カップ
18 第2ステータ
29 外装樹脂材
31 巻芯部
33 第1フランジ部
33a 内面
33b 外面
34 第2フランジ部
34a 内面
34b 外面
35A 端子
35B 端子
35C 端子
36 端子保持部
36a 溝
36b 溝
36c 基台
36d 基台
36e 基台
37A 第1導線案内部
37B 第2導線案内部
38A 張力保持部
38B 張力保持部
38C 張力保持部
39a 第1導線溝
39b 第2導線溝
41 導線
図1
図2
図3
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図5
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図11
図12
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図15
図16