(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-28
(45)【発行日】2023-10-06
(54)【発明の名称】レーダシステムの方法、レーダシステム及びレーダシステムの装置
(51)【国際特許分類】
G01S 13/84 20060101AFI20230929BHJP
G01S 13/74 20060101ALI20230929BHJP
【FI】
G01S13/84
G01S13/74
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020097743
(22)【出願日】2020-06-04
(62)【分割の表示】P 2017501462の分割
【原出願日】2015-03-23
【審査請求日】2020-07-03
(31)【優先権主張番号】102014104273.5
(32)【優先日】2014-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】516287933
【氏名又は名称】シメオ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ペーター グルデン
(72)【発明者】
【氏名】マルティン フォスジーク
【審査官】安井 英己
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-236951(JP,A)
【文献】特開平11-252631(JP,A)
【文献】特開平03-140889(JP,A)
【文献】特開平07-159529(JP,A)
【文献】特表2010-522342(JP,A)
【文献】特開2002-323556(JP,A)
【文献】特開昭54-083795(JP,A)
【文献】特開2001-033543(JP,A)
【文献】特開平05-273350(JP,A)
【文献】特開2011-038836(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0022111(US,A1)
【文献】欧州特許出願公開第02602636(EP,A1)
【文献】特表2008-527339(JP,A)
【文献】国際公開第2010/019975(WO,A1)
【文献】特開平11-125674(JP,A)
【文献】特開2002-236175(JP,A)
【文献】特開平09-264947(JP,A)
【文献】国際公開第2008/102686(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00- 7/42,
G01S 13/00-13/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーダシステムにおける方法であって、
第1の信号(sigTX1)を、第1の非コヒーレント送受信部(NKSE1)で生成し、経路(SP)を介して放出し、
第2の信号(sigTX2)を、前記第1の非コヒーレント送受信部(NKSE1)から空間的に離れて設置される第2の非コヒーレント送受信部(NKSE2)で生成し、前記経路(SP)を介して放出し、
前記第1の非コヒーレント送受信部(NKSE1)において、前記第1の信号(sigTX1)及び前記第1の非コヒーレント送受信部(NKSE1)で受信した前記第1の信号(sigTX1)の後方反射信号(sinRx11)より形成される別の比較信号(sigC11)を抑制して、前記第1の信号(sigTX1)及び前記経路(SP)を介して前記第2の非コヒーレント送受信部(NKSE2)から受信した前記第2の信号(sigTX2)より第1の比較信号(sigC12)を形成し、
前記第2の非コヒーレント送受信部(NKSE2)において、前記第2の信号(sigTX2)及び前記経路(SP)を介して前記第1の非コヒーレント送受信部(NKSE1)から受信した前記第1の信号(sigTX1)より第2の比較信号(sigC21)を形成し、
前記第2の比較信号(sigC21)を、前記第2の非コヒーレント送受信部(NKSE2)から前記第1の非コヒーレント送受信部(NKSE1)に伝送し、
比較-比較信号(sigCC12)を、前記第1の比較信号(sigC12)及び前記第2の比較信号(sigC21)から形成し、
前記比較-比較信号(sigCC12)の位相に基づき前記第1および第2の非コヒーレント送受信部(NKSE1、NKSE2)間の距離および/又は速度を決定する方法であって、
前記第1および前記第2の比較信号(sigC12;sigC21)が互いに処理された前記比較-比較信号(sigCC12)が、コヒーレントレーダシステムによって生成された信号に対応する、方法。
【請求項2】
前記第1および第2の比較信号(sigC12;sigC21)が共役複素的な乗算により互いに処理される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の比較信号(sigC12)、前記第2の比較信号(sigC21)又は前記比較-比較信号(sigCC12)の少なくとも一つを混合又は相関の少なくとも一つによって形成する請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1および第2の信号(SigTX1,sigTX2)の少なくとも一つを、無線インタフェースとして形成された前記経路(SP)を介して送信信号として送信する請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記第1および第2の信号(SigTX1,sigTX2)の送信時点を、前記第1および第2の信号(SigTX1,sigTX2)が少なくとも一部で時間的に互いに重なるように調整する請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記第1および第2の非コヒーレント送受信部(NKSE1,NKSE2)の間の経路の前記第1および第2の信号(SigTX1,sigTX2)によって要求される信号伝搬遅延(τ12)を、前記比較-比較信号(sigCC12)の位相若しくは位相値、周波数、振幅進行又は位相進行を分析することによって決定する請求項1~5いずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記第1および第2の信号(SigTX1,sigTX2)の少なくとも一つを、FMCW又はOFDM変調信号として生成及び送信する請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記第1および第2の信号(SigTX1,sigTX2)の少なくとも一つを、マルチランプ信号として生成及び送信する請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
複数の前記比較-比較信号(sigCC12)を、前記第1および第2の非コヒーレント送受信部(NKSE1,NKSE2)の少なくとも一つが移動する際に、前記第1および第2の非コヒーレント送受信部(NKSE1,NKSE2)により時間ごとに次々と測定し、
前記第1および第2の非コヒーレント送受信部(NKSE1,NKSE2)の一つの距離、位置、速度若しくは存在の少なくとも一つ、前記第1および第2の非コヒーレント送受信部(NKSE1,NKSE2)の存在、物体(O)に対する距離、位置若しくは速度の少なくとも一つ又は物体(O)の存在を、合成開口法によって決定する請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
第1の非コヒーレント送受信部(NKSE1)が、第1の信号(sigTX1)を生成し、経路(SP)を介して放出するように構成されており、
前記第1の非コヒーレント送受信部(NKSE1)から空間的に離れて設置される第2の非コヒーレント送受信部(NKSE2)が、第2の信号(sigTX2)を生成し、前記経路(SP)を介して放出するように構成されており、
前記第1の非コヒーレント送受信部(NKSE1)は、前記第1の信号(sigTX1)及び前記第1の信号(sigTX1)を前記第1の非コヒーレント送受信部(NKSE1)で受信した後方反射信号(sinRx11)より形成される別の比較信号(sigC11)を抑制して、前記第1の信号(sigTX1)及び前記経路(SP)を介して前記第2の非コヒーレント送受信部(NKSE2)から受信した前記第2の信号(sigTX2)より第1の比較信号(sigC12)を形成するように構成されており、
前記第2の非コヒーレント送受信部(NKSE2)は、前記第2の信号(sigTX2)及び前記経路(SP)を介して前記第1の非コヒーレント送受信部(NKSE1)から受信した前記第1の信号(sigTX1)より第2の比較信号(sigC21)を形成するように構成されており、
前記第2の比較信号(sigC21)を、前記第2の非コヒーレント送受信部(NKSE2)から前記第1の非コヒーレント送受信部(NKSE1)に伝送し、
比較-比較信号(sigCC12)を、前記第1の比較信号(sigC12)及び前記第2の比較信号(sigC21)から形成し、前記第1および前記第2の比較信号(sigC12;sigC21)が互いに処理された前記比較-比較信号(sigCC12)が、コヒーレントレーダシステムによって生成された信号に対応し、
前記比較-比較信号(sigCC12)の位相に基づき前記第1および第2の非コヒーレント送受信部(NKSE1、NKSE2)間の距離および/又は速度を決定する、レーダシステム。
【請求項11】
前記第1および第2の非コヒーレント送受信部(NKSE1,NKSE2)を含む三つ以上の空間的に離れた複数の非コヒーレント送受信部(NKSE1,NKSE2,NKSE3,...,NKSE-N)を備え、
前記第2の非コヒーレント送受信部(NKSE2)以外の他の前記複数の非コヒーレント送受信部の位置が既知の場合において、前記第2の非コヒーレント送受信部(NKSE2)と
前記第2の非コヒーレント送受信部(NKSE2)以外の前記複数の非コヒーレント送受信部との間で測定された信号を用いて得られる複数の比較-比較信号に基づき前記第2の非コヒーレント送受信部(NKSE2)の距離、位置、存在の少なくとも一つを決定する、または、
前記複数の非コヒーレント送受信部の位置が既知である場合において、前記複数の非コヒーレント送受信部から送信され、物体(O)より反射され、前記複数の非コヒーレント送受信部にて受信された反射信号を用いて得られる複数の比較-比較信号に基づき前記物体(O)に対する距離、位置若しくは速度の少なくとも一つ又は物体(O)の存在を決定する
請求項10に記載のレーダシステム。
【請求項12】
前記第1の非コヒーレント送受信部(NKSE1)及び前記第2の非コヒーレント送受信部(NKSE2)及び/又は評価装置(P)が、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法を実施するように形成されている請求項10または11に記載のレーダシステム。
【請求項13】
請求項1~9のいずれか一項に記載の方法を実施するレーダシステム及び/又は請求項10~12のいずれか一項に記載のレーダシステムの装置であって、
前記第1の信号(sigTX1)を生成するとともに前記第1の信号を経路(SP)を介して放出するように形成されている信号生成器及び少なくとも一つのアンテナ(TA1;RA1)と、
前記第1の信号(sigTX1)及び前記経路(SP)を介して前記第2の非コヒーレント送受信部(NKSE2)から受信した前記第2の信号(sigTX2)より形成される前記第1の比較信号(sigC12)と、前記第1の信号(sigTX1)及び前記第1の非コヒーレント送受信部(NKSE1)で受信した前記第1の信号(sigTX1)の後方反射信号(sinRx11)より形成される別の比較信号(sigC11)とを出力する第1の比較部(sigComp1)と、
前記第1の非コヒーレント送受信部(NKSE1)の通信手段による、前記第2の非コヒーレント送受信部(NKSE2)によって生成された前記第2の比較信号(sigC21)を受信するように形成されているインタフェース(CommRX)と、
前記第1の非コヒーレント送受信部(NKSE1)で形成された前記第1の比較信号(sigC12)及び前記第2の非コヒーレント送受信部(NKSE2)から前記第1の非コヒーレント送受信部(NKSE1)に送信された前記第2の比較信号(sigC21)より比較-比較信号(sigCC12)を形成する第2の比較部(sigComp12)と、を備える装置であって、
前記装置が、前記第1の比較部(sigComp1)と前記第2の比較部(sigComp12)との間にフィルタ(FLT)を更に備え、
前記フィルタ(FLT)は前記別の比較信号(sigC11)を抑制して前記第1の比較信号(sigC12)を前記第2の比較部(sigComp12)に供給する、または、前記フィルタ(FLT)は前記別の比較信号(sigC11)を接続部に供給し、
前記第1および前記第2の比較信号(sigC12;sigC21)が互いに処理された前記比較-比較信号(sigCC12)が、コヒーレントレーダシステムによって生成された信号に対応する、装置。
【請求項14】
請求項1~9のいずれか一項に記載の方法を実施するレーダシステム及び/又は請求項10~12のいずれか一項に記載のレーダシステムの装置であって、
前記第1の信号(sigTX1)を生成するとともに前記第1の信号を経路(SP)を介して放出するように形成されている信号生成器及び少なくとも一つのアンテナ(TA1;RA1)と、
前記第1の比較信号(sigC12)を前記第1の信号(sigTX1)及び前記経路(SP)を介して前記第2の非コヒーレント送受信部(NKSE2)から受信した前記第2の信号(sigTX2)より形成する第1の比較部(sigComp1)と、
前記第1の非コヒーレント送受信部(NKSE1)の通信手段による、
前記第1の比較信号(sigC12)を前記第2の非コヒーレント送受信部(NKSE2)に伝送するように形成されている第1のインタフェース(CommTX)又は
前記第2の非コヒーレント送受信部(NKSE2)によって生成された前記第2の比較信号(sigC21)を受信するように形成されている第2のインタフェース(CommRX)の少なくとも一つと、
前記第1の非コヒーレント送受信部(NKSE1)で形成された前記第1の比較信号(sigC12)及び前記第2の非コヒーレント送受信部(NKSE2)から前記第1の非コヒーレント送受信部(NKSE1)に送信された前記第2の比較信号(sigC21)より比較-比較信号(sigCC12)を形成する第2の比較部(sigComp12)と、を備えた装置であって、
前記比較-比較信
号が、コヒーレントレーダシステムによって生成された信号に対応し、
前記装置がさらに互いに空間的に離れた複数の受信アンテナ(RA1,1,...,RA1,N;RA2,1,...,RA2,N)を備え、前記複数の受信アンテナが前記第1の信号(sigTX1)及び前記第2の非コヒーレント送受信部(NKSE2)から前記経路(SP)を介して受信した前記第2の信号(sigTX2)よりそれぞれ比較信号(sigC12,1,sigC12,2,sigC12,3,...,sigC12,N)を形成するように各々配置される、
装置。
【請求項15】
前記第1または第2のインタフェース(CommTX,CommRX)の少なくとも一つはデータインタフェースである請求項14に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーダシステムの方法、レーダシステム及びレーダシステムの装置に関する。特に、これは、分散型送受信部を有するレーダ配置に適用される。
【背景技術】
【0002】
レーダ技術において、1次レーダと2次レーダとの間の区別が行われている。1次レーダは、以前に送信された高周波信号の受動的に受信した信号のエコーを分析するレーダシステムを指す。二次レーダの場合において、第1のレーダ部によって以前に送信された高周波信号が第2のレーダ部によって受信される。その後、第2のレーダ部は、応答信号を第1のレーダ部に能動的に送信する。二次レーダは、時々トランスポンダーシステムと称され、この場合、第1のレーダ部は、しばしば基地局と称され、第2のレーダ部はトランスポンダーと称される。一次レーダシステムは、それ自体が送信した個別の信号を受信及び処理し、それに対し、二次レーダシステムは、異なるユニットで生成された外部の信号を受信及び処理する。
【0003】
合成開口(SA)を用いるレーダ方法は、レーダ撮像とトランスポンダーの配置の両方において知られている。確立された方法及び実施例を、例えば、参考書「MATLAB(登録商標)アルゴリズムを用いる逆合成開口レーダ撮像」(Inverse Synthetic Aperture Rader Imaging with Matlab Algorithms)の第3章及び第4章、2013年7月に刊行されたIEEE Transactions on Automation Science and Engineeringのvol.10,no.3,807~815頁のR.Miesen,F.Kirsch及びM.Vossiekによる「合成開口に基づくUHF RFID 位置確認」(UHF RFID Localization Based on Synthetic Apertures)又は2012年11月に刊行されたJournal of RF-Engineering and Telecommunicationsのvol.66,no.11-12,363~371頁のG.Li,R.Ebelt及びM.Vosseikによる「リアルタイム3Dワイヤレス位置確認のための合成開口再構成法に基づく新規の逐次モンテカルロ法」(A Novel Sequential Monte Calro Method Based Synthetic Aperture Reconstruction Approach for Real-TIme 3D wireless Local Positioning)で見つけることができる。SA法も米国特許第7948431号明細書、米国特許第8299959号明細書及び本明細書で概説した従来技術から既知である。
【0004】
SAを全てのコヒーレント波、例えば、レーダの分野において電磁波を用いて実行できることが一般的に知られている。これに関連して、レーダセンサの分野において、SAR(合成開口レーダ)、SDRS(ソフトウェアレーダセンサ)又はMIMO(マイモ)レーダが主に引き合いに出される。
【0005】
少なくとも二つの空間的に離れた位置で受信した信号から信号が形成される場合、波源の伝播及びコヒーレンスが受信器によって知られていない信号をSA法によって処理することができ、その信号は、もはや絶対位相を表現せず、信号の位相差を表現する。このアプローチは、レーダ干渉法の概念から知られている又は1988年9月に刊行されたGeoscience and Remote Sensing,IEEE Transactions onのvol.26,no.5,597頁及び611頁のRuf,C.S.;Swift,C.T.;Tanner A.B.及びLe Vine,D.M.による「地球のリモートセンシングの干渉合成開口マイクロ波放射測定」(Interferometric synthetic aperture microwave radiometry for the remote sensing of the Earth)で説明されている。この方法は、少なくとも二つの信号の位相差を決定できるようにするために少なくとも二つの空間的に離れた位置で受信した信号をコヒーレントに動作する受信器によって受信することを要求する必要もある。しかしながら、そのような方法において二つの受信位置のみを用いることによって波源から距離を決定することができない。
【0006】
複数の二次レーダ法も、例えば、米国特許第7940743号明細書、2004年1月に刊行されたMicrowave Symposium Digest,2004,IEEE MTT-S Internationalのvol.2,6-11の655~658頁のStelzer,A.,Fischer,A.,Vossiek,M.による「正確な位置測定の新しい技術LPM」(A New Technology for Precise Position Measurement-LPM)又は2008年に刊行されたWireless Technology,2008,EuWit2008,European Conference onの49~52頁のR.Gielich,J.Huttner,A.Ziroff及びM.Huemerによる「分別N PLLシンセサイザ及び多チャネル型基地局を用いる屋内位置決め」(Indoor positioning utilizing fractional-N PLL synthesiser and multi-channel base stations)に記載されているように知られている。
【0007】
複数の送信器の信号を多重化操作によって分離することがレーダ電波探知及び通信技術の分野においても知られている。タイムコード又は周波数多重化は、現在の多重化方法である。FMCW信号(FMCW:周波数変調連続波)により多重化を実現できる方法は、例えば、2008年10月に刊行されたMicrowave Theory and Techniques, IEEE Transactions on,vol.56,no.10,2329頁及び2339頁のRoehr,S.;Gulden,P.;Vossiek,M.による「周波数変調連続波二次レーダアプローチを用いるマルチパス環境でのリアルタイム位置決めの正確な距離及び速度」(Precise Distance and Velocity Measurement for Real Time Locating in Multipath Environments Using a Frequency-Modulated Continuous-Wave Secondary Radar Approach)において説明されている。OFDM信号(OFDM:直交周波数分割多重)は、IET Rader,Soner&Navigation,2013,7th Year,No.3の261~269頁のSturn,Christian等による「レーダネットワークアプリケーション及び多重入力多重出力レーダに対するスペクトル的にインターリーブされた多重搬送波信号」(Spectrally interleaved multi-carrier signals for rader network applications and multi-input multi-output rader)及びAcoustic,Speech and signal Processing(ICASPP),2013 IEEE International conference on,IEEE,2013の2775~2779頁のGUTIERREZ DEL ARROYO,Jose R.,JACKSON,Julie Ann;TEMPLE,Micheal A.による「ORDMベースのレーダ撮像のための受信信号処理」(Receive signal processing for OFDM-based rader imaging)において多重化に用いられている。
【0008】
距離及び速度を測定するためにいわゆるマルチランプ(multi-ramp)FMCW信号を用いるレーダ法が、例えば、2010年3月に刊行されたGerman Microwave Conference,2010の214頁、217頁及び15~17頁のAli.F.;Vossiek,M.による「2DレンジドップラーFMCWレーダフーリエ処理に基づく弱い動きのターゲットの検出」(Detection of weak moving target based on 2-D range-Doppler FMCW rader Fourier processing)、ここで引用した従来技術及び米国特許第2014/0022111号明細書から知られている。
二次レーダ法及び二次レーダ配置が、Microwave symposium Digest,2008 IEEE MTT-S Interanational,IEEE,2008の121~124頁のScheiblhofer,Stefan等による「強調FMCWレーダ距離測定システムの性能分析」(Performance analysis of cooperative FMCW radar distance measurement systems)並びに2008年10月に刊行されたMicrowave Theory and Techniques,IEEE Transaction on,vol.56,no.10の2329頁及び2339頁のRoehr,S.;Gulden.P.;Vossiek,M.による「周波数変調連続波二次レーダ法を用いたマルチパス環境におけるリアルタイム位置決めのための正確な距離及び速度測定」(Precise Distance and Velocity Measurement for Real Time Locating in Multipath Environments Using a Frequency-Modulated Continous-Wave Secondary Rader Approach)から一般的に知られている。これらの方法は、非コヒーレント同期又はダウンコンバート信号の周波数の差の送信に基づく。したがって、両方の方法は、コヒーレント距離測定及びSAR法の基礎に不適切である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
発明の目的は、ユニット間のコヒーレント距離測定を可能にする代替的な方法及びシステム配置を提案することである。特に、二次レーダ部の間の非常に正確な距離測定を可能にし、レーダに対しては、一般的には、更に大きな開口の合成及び/又は更に高い達成可能な解像度を可能にすることを意図する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的は、請求項1の特徴を有するレーダシステムの方法、請求項12によるレーダシステム及び請求項16の特徴を有するレーダシステムの装置によって達成される。好適な実施の形態は、従属項の対象である。
【0012】
したがって、レーダシステムにおける方法であって、第1の信号を、第1の非コヒーレント送受信部で生成し、経路を介して送信、特に、放出し、第1の信号を、別の、特に、第2の非コヒーレント送受信部で生成し、経路を介して送信、特に、放出し、第1の送受信部において、比較信号を、それの第1の信号及び経路を介して別の送受信部から受信した第1の信号から形成し、別の送受信部において、別の比較信号を、それの第1の信号及び経路を介して第1の送受信部から受信した第1の信号から形成し、別の比較信号を、別の送受信部から第1の送受信部に送信、特に、伝送する方法が特に好適である。
【0013】
「信号」のみの代わりの用語「第1の信号」を、特に、比較信号及び比較-比較信号に関連する概念的な区別として用いる。そのような比較信号の一つは、特に、二つの送受信部の一方の第1の比較段で生成された比較信号に対応し、二つの送受信部の少なくとも他方の比較信号は、送受信部の少なくとも他方に送信される。
【0014】
用語「第2の」、「別の」又は「他の」を用いる限りにおいて、この概念を、特に、そのような送受信部の第1の送受信部の信号又はコンポーネントを方法の実施のために又はシステムコンポーネントとしてそのような送受信部と関係を持つそのような送受信部の少なくとも第2の送受信部の少なくとも信号又はコンポーネントにそれぞれ関連して区別するのに用いる。
【0015】
経路は、特に、信号及び比較信号がアンテナによって送受信される無線インタフェースである。
【0016】
計算、評価又は他の方法ステップを送受信部で実行する限りにおいて、これは、送受信部に接続されている付加的な個別の有形の評価装置も含む。したがって、例えば、送受信部を、特に、少しの信号生成又は信号処理コンポーネントを有する一つ以上のアンテナからなる配置として形成することができ、一方、信号比較部又は評価装置のような他のコンポーネントを、構造的に個別のコンポーネントとしてそのような配置に接続する。コンポーネントを用いることができる限りにおいて、これらを、技術的に実現可能である場合には、処理コンポーネントからなるいわゆるハードウェアとして形成することができる、及び/又は、プロセッサで実行される信号又はデータ処理ステップにおいて完全に又は部分的に実現することができる。
【0017】
したがって、向上したデータ処理を第1の送受信部で有利に行うことができるようになる。その理由は、前記第1の送受信部に送信された比較信号が特にクロック又は他の送受信部の位相及び周波数状態の情報内容又はデータを含むとともにコヒーレンス又はコヒーレンスに出現する信号を送受信部に配置された又は送受信部に接続された評価装置で再構成及び評価することができるからである。
【0018】
また、比較信号を決定することによって、低周波数の信号が存在し、これによって、明瞭な表示のために少数の走査点を要求するのが有利である。その結果、含まれる情報を、一つ以上の他の送受信部に更に容易に送信することができる。特に、1GHzより上の周波数範囲の信号に対して、比較信号の低い走査速度は、技術情報に対して非常に有利であり、したがって、望ましい。データ量が小さくなることによってメモリに対する要求が減少することも有利である。
【0019】
一実施の形態は、比較-比較信号を、比較信号及び別の比較信号から形成する。そのような比較-比較信号は、特に、二つの送受信部の一つの第2の比較段で二つのそのような比較信号から生成した信号に対応し、比較信号は、特に、送受信部それ自体から発生し、比較のために用いられる他の比較信号は、他の送受信部から送信される。そのような比較-比較信号は、一次レーダシステムによって生成することができる特に二次レーダシステムの信号の特性を有する信号である。
【0020】
一実施の形態は、比較-比較信号は、二つの比較信号が互いに処理される、特に、共役複素的に乗算するようにコヒーレントレーダシステムによって生成された信号に対応する。
【0021】
特に、方法を、第1の非コヒーレント送受信部において比較信号が前記送受信部それ自体から生成された第1の信号及び別の、特に、第2の非コヒーレント送受信部において生成されるとともに経路を介して送信、特に、放出され、その後、比較-比較信号が前記比較信号及び別の比較信号かれ形成されるように比較-比較信号が形成され、別の比較信号が、別の送受信部において、ここで生成された第1の信号及び経路を介して受信した第1の送受信部からのそのような第1の信号からそれぞれ形成され、第1の送受信部に送信、特に、伝送され、比較-比較信号が前記比較信号及び別の比較信号から形成されるレーダシステムにおいて実行することができる。
【0022】
特に、方法を、第1の非コヒーレント送受信部において第1の信号が生成されるように比較-比較信号が形成され、比較信号が、第1の信号及び別の、特に、第2の非コヒーレント送受信部から受信した第1の信号から形成され、第1の信号が、別の送受信部によって生成され、特に、経路を介して第1の送受信部に放出され、別の比較信号が、別の送受信部において、ここで生成されたそのような第1の信号及び経路を介して受信した第1の送受信部のそのような第1の信号からそれぞれ形成され、第1の送受信部に送信、特に、伝送され、比較-比較信号が前記比較信号及び別の比較信号から形成されるレーダシステムにおいて実行することができる。
【0023】
特に、方法を、少なくとも二つの空間的に離れた送受信部をレーダ部として有し、送受信部はそれぞれ信号生成器を備え、信号生成器は、レーダ部の間で互いにやり取りされる信号を生成し、送受信部は、通信手段を備え、形成される送受信部の比較信号の少なくとも一つが、通信手段によって少なくとも一つの他の送受信部に送信され、送受信部の少なくとも一つは、第2の又は別の比較部を備え、前記第2の比較部に、二つの送受信部の二つの第1の比較部の決定された比較信号が供給され、前記第2の比較部において、少なくとも一つの混合プロセス又は相関が実行され、比較-比較信号が、前記比較-比較信号のある特徴が送受信部の間の距離のために信号が必要とする信号電波遅延に比例するように形成され、特徴は、比較信号の位相、位相進行若しくは周波数又は比較信号のパルス状の信号の最大値の位置である分散型レーダシステムにおいて実施することができる。
【0024】
前記方法を実施するこの方法又は配置は、二次レーダ部の間の非常に正確な距離測定に有利である。他の実施の形態による前記方法を実行するこの方法又は配置は、レーダの一般的に大きい開口又は高い達成可能な解像度を可能にするために有利である。アレイの技術的に簡単な実現を、大きな開口に対して有利に提供することができる。その理由は、特に、以前に必要とされていた高周波信号の複雑な分配をもはや必要としないからである。
【0025】
一実施の形態は、比較信号、別の比較信号又は比較-比較信号の少なくとも一つを混合又は相関の少なくとも一つによって形成する。
【0026】
少なくとも一つの混合プロセスを、好適には、別の比較部又は第2の比較プロセスにおいて実行し、これによって、比較-比較信号が形成され、信号は、フーリエ変換により前記比較-比較信号から決定又は計算される。物体又は送受信部として用いられる第2のレーダ部の距離及び/又は空間位置及び/又は速度を、前記決定又は計算された信号から決定する。
【0027】
少なくとも一つの比較-比較信号を、好適には、別の比較部又は第2の比較プロセスで形成し、少なくとも一つの位相又は位相値及び/又は少なくとも一つの周波数値を、フーリエ変換により前記比較-比較信号から決定する。特に、距離及び/又は速度値を、前記位相値又は周波数値の少なくとも一つにより決定、特に、計算する。
【0028】
相関を混合の代わりに又はそれに加えて用いることができる。
【0029】
一実施の形態は、少なくとも一つのそのような別の比較信号を、データ、データを含む信号又は再構成することができるデータを含む信号として送受信部の間で送信する。
【0030】
これは、比較信号のデータコンテンツを歪みなく受信器によって受信すること又はそこから再構成できるようにすることを保証する。歪み又は妨害の影響を比較信号の比較の際に回避し、歪み又は分散の影響は、信号に含まれるデータの送信の際の信号の結果として生じうる。データ、特に、デジタルデータが送信又は伝送され、そのようなデータを、アンテナによる送信を介してアンテナの周囲環境に送信することができる又は配線によっても送信することができる。この場合、特に、信号の必要な部分のみを送信することも有利であり、信号を圧縮/前処理形式で送信できるようにして通信中のデータ速度の要求を低くすることも有利である。
【0031】
一実施の形態は、第1の信号の少なくとも一つを、無線インタフェースとして形成された経路を介して送信信号として送信する。したがって、第1の信号の送信は、送信アンテナを介した送信アンテナの周囲環境へのアナログ信号としてレーダ信号が送信又は放出される状来の方法で行うことができる。
【0032】
一実施の形態は、第1の信号の送信時点を、第1の信号が少なくとも一部で時間的に互いに重なるように調整する。これによって、特に、信号が信号長又は変調周期の少なくとも1/4、好適には、信号長又は変調周期の半分より多く重なり合うように第1の信号を送信する送受信部を予め同期させる。低い帯域幅は、そのような実現の場合に有利に要求され、帯域幅を、信号生成及び必要なコンポーネントの寸法決めの際に考察する必要がある。さらに、両方の信号が更に長い期間に亘って存在するので範囲が改善される。
【0033】
一実施の形態は、送受信部の間の経路のそのような第1の信号によって要求される信号伝搬遅延を、比較-比較信号の位相若しくは位相値、周波数、振幅進行又は位相進行を分析することによって少なくとも一つの比較-比較信号から決定する。
【0034】
関連する送受信部の間の距離を、特に、信号伝搬遅延から決定することができる。スペクトル分析、特に、フーリエ変換の周波数、分析又はフーリエ変換の位相値、振幅-時間図からの振幅進行及び/又は位相-時間図からの位相進行を、信号伝搬遅延を決定する方法として決定することができる。特に、比較-比較信号の位相、周波数、振幅進行若しくは位相進行又は比較-比較信号のパルス状信号の最大値の位置を、信号伝搬遅延により決定論的に決定することができる。
【0035】
相関操作を、特に、第2の比較プロセスで実行して比較-比較信号を形成し、前記比較-比較信号において、少なくとも一つのパルス状信号の最大値又はパルスを検出する。比較信号のパルスの時間的位置又は少なくとも一つの検出したパルスの位相値若しくは周波数を次に決定し、これらの以前に決定した位置、位相値又は周波数値の少なくとも一つを、距離又は速度値の計算に用いる。
【0036】
一実施の形態は、第1の信号の少なくとも一つを、FMCW又はOFDM変調信号として生成及び送信する。FMCW変調信号によって、特に、フーリエ変換による比較-比較信号の評価を簡単にすることができる。さらに、これらは、原理的には距離測定に特に適している。その理由は、これらの時間-周波数関係が特によく知られているからである。さらに、FMCW信号を、少ない技術的努力で生成することができる。OFDM信号は、特に、通信システムに有利である。これらによって、通信システムにおける方法の有利な統合を可能にする。
【0037】
一実施の形態は、第1の信号の少なくとも一つを、マルチランプ信号として生成及び送信する。これによって、有利に良好な速度決定及びターゲットの区別を行うことができる。
【0038】
一実施の形態は、複数の比較-比較信号を、送受信部の少なくとも一つが移動する少なくとも二つの前記送受信部により時間ごとに次々と測定し、送受信部の一つの距離、位置、速度若しくは存在の少なくとも一つ、そのような送受信部の存在、物体に対する距離、位置若しくは速度の少なくとも一つ又は物体の存在を、合成開口法によって決定する。
【0039】
このために、距離を、例えば、二次レーダにあるような送受信部の間の直接経路を介して測定し、これによって、二つのユニットの間の距離を決定する。送受信部の間の距離を受動的なターゲットのような物体の反射を介して決定又は測定することもできる。物体の距離及び位置を、ユニットの既知の位置を用いて決定することもできる。
【0040】
少なくとも一つの第1の非コヒーレント送受信部が、第1の信号を生成し、経路を介して送信、特に、放出するように形成されており、少なくとも一つの別の、特に、第2の非コヒーレント送受信部が、第1の信号を生成し、経路を介して送信、特に、放出するように形成されており、第1の送受信部は、比較信号をそれの第1の信号及び経路を介して別の送受信部から受信した第1の信号から形成するように形成されており、別の送受信部は、別の比較信号をそれの第1の信号及び経路を介して第1の送受信部から受信した第1の信号から形成するように形成されており、別の比較信号を、別の送受信部から第1の送受信部に送信、特に、伝送するレーダシステムが特に好適である。
【0041】
一実施の形態は、レーダシステムにおいて、比較-比較信号は、比較信号及び別の比較信号から形成されている。
【0042】
一実施の形態は、三つ以上の空間的に離れた送受信部を備え、空間的に離れた送受信部の二つの各々からの3対以上で測定された二つ以上の比較-比較信号から送受信部の一つの距離、位置、速度若しくは存在の少なくとも一つ、そのような送受信部の存在、物体に対する距離、位置若しくは速度の少なくとも一つ又は物体の存在を決定するレーダシステムにある。
【0043】
開口行列は、配置によって決定され、その評価によって、入射角を決定することができる。開口を、一つだけの送受信部によってカバーすることもでき、入射角を、合成開口法によって決定することができる。
【0044】
一実施の形態は、第1の送受信部及び少なくとも一つのそのような別の送受信部及び/又は評価装置が、そのような方法を実施するように形成されているレーダシステムである。そのような評価装置は、特に、一方又は両方の送受信部のコンポーネントである又はそのような送受信部の一つ以上に接続されている。
【0045】
特に、そのような方法を実施するレーダシステム及び/又はそのようなレーダシステムの装置であって、第1の非コヒーレント送受信部、特に、第1の非コヒーレント送受信部として形成されており、第1の信号を生成するとともに信号を経路を介して送信、特に、放出するように形成されている信号生成器及び少なくとも一つのアンテナを備え、比較信号を第1の信号及び経路を介して別の送受信部から受信した第1の信号から形成するように形成されている配置を備え、比較信号を別の送受信部に送信、特に、伝送するように形成されているインタフェース又は第1の送受信部の送信、特に、伝送によって別の送受信部によって生成されたそのような別の比較信号を受信するように形成されているインタフェースの少なくとも一つを備える装置が好適である。
【0046】
一実施の形態は、同一の送受信部で形成された比較信号及び送受信部に送信された比較信号から比較-比較信号を形成する別の比較部を更に備える装置からなる。比較信号を出力する配置及び比較部は、特に、ミキサ又は相関器として形成される。したがって、処理、特に、相関プロセスが実行される。例えば、前記送受信部からの物体の距離、位置又は速度を、特に、最終的に形成された比較-比較信号から決定する。
【0047】
一実施の形態は、少なくとも一つのインタフェースはデータインタフェースである装置からなる。
【0048】
一実施の形態は、比較信号を出力する配置と比較-比較信号を形成する別の比較部との間にフィルタを配置し、フィルタは、比較信号を比較部に適用し、フィルタは、フィルタの上流の配置で形成された別の比較信号を適用せず、上流の配置で形成された比較信号を抑制する又はそれを接続部に供給する装置からなる。
【0049】
その結果、送受信部の送信アンテナからその受信アンテナへの後方反射によって生成された別の比較信号を、別の比較部から離すことができる又は個別の出力部又は別の処理のための接続部に供給することができる。そのような配置は、CW信号の使用に特に有利であり、後方又は横反射によって生じた受動的なレーダ成分を考察する。
【0050】
一実施の形態は、複数の互いに空間的に離れた受信アンテナを備え、その各々は、第1の信号及びそのような別の送受信部から経路を介して受信したそのような第1の信号から比較信号をそれぞれ形成するために形成されている配置に関連させる装置からなる。
【0051】
このようにしてコヒーレント多チャネル受信器が形成され、これによって、第1の信号
の測定又は送信によって複数の比較-比較信号を生成する空間開口をエミュレートするとともに例えば相対的な及び/又は空間の装置の角度位置の各々の評価を可能にする。
【0052】
したがって、互いに非コヒーレントに動作する複数の送受信部によってコヒーレントなデータ信号を生成する方法、そのようは方法を実施する装置並びに方法及び装置を用いて検出及び撮像を行う新規の分散型レーダシステムが特に好適である。コヒーレンスは、特に、種々の信号の後処理によって生じる。
【0053】
目的は、特に、ソースが互いにコヒーレントでない少なくとも二つのレーダ部からなる分散型レーダシステムで測定信号が形成され、そのように形成された信号の位相がコヒーレントなレーダ部の場合におけるレーダ部の間でやり取りされた測定信号の信号伝搬遅延に比例するような方法で達成される。複数の非コヒーレント送受信部を有する新規の強力な分散型レーダシステムは、受動的に反射する物体の検出及び撮像に適切であるとともに他の非コヒーレント送受信部の検出にも適切である好適な方法及び配置によって可能になる。SA法を、特に、複数の非コヒーレント送受信部を有するこれらの分散型レーダシステムに適用することもできる。
【0054】
これは、明白な向上を表す。その理由は、上述したように、SA法が実際にはコヒーレントな送受信部を必要とするからである。特に、好適な方法の結果として、必要とされていた共通のコヒーレントな高周波反射信号を複数のユニットに供給する必要なく複数の空間的な分散型送受信部を有する大きな合成開口を生じることができる。高周波基準信号を分配する高周波回線を回避することによって、コストを削減し、かつ、そのような配置の複雑さが著しく減少する。
【0055】
位置、動き及び速度測定の精度が、配置による二次レーダの領域で増大する。その理由は、コヒーレントな信号が存在するからである。
【0056】
実施の形態を、図面を参照することにより以下で更に詳細に説明する。同一又は同様な動作ステップ、シグナル、コンポーネント等については、これに関する説明を他の図面に対して行うために同一参照番号を種々の図面で用いる。特に、上述したような他の図面の説明に関する違いを好適に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【
図1】二つの非コヒーレント送受信部の構成、相互関係及び信号処理を線形的に示す。
【
図2】CWレーダ信号(CW:連続波)を用いるときの二つの非コヒーレント送受信部の構成、相互関係及び信号処理を線形的に示す。
【
図3】オブジェクトを検出又はオブジェクトシーンを撮影するために受動的な反射を行うオブジェクトを測定するMIMO配置に関する複数のそのような非コヒーレント送受信部の配置を示す。
【
図4】少なくとも一つの別の非コヒーレント送受信部を検出するために能動的な反射を行う非コヒーレント送受信部の間の測定のためのMIMO配置に関する複数のそのような非コヒーレント送受信部の配置を示す。
【
図7】第2のアンテナ面に対する二つの非コヒーレント送受信部の間の角度を測定する配置を示す。
【
図8】第1のアンテナ面に対する二つの非コヒーレント送受信部の間の角度を測定する配置を示す。
【
図9】物体と二つの非コヒーレント送受信部の一つの間の角度を測定する、物体を検出する又は物体シーンを撮影する配置を示す。
【
図10】一例として用いられるFMCWマルチランプ信号を示す。
【発明を実施するための形態】
【0058】
図1は、例示の好適な基本構成を示すために分散型レーダシステムのコンポーネントとしての二つの非コヒーレント送受信部NKSE1,NKSE2の構成、その好適な相互関係及び信号処理を線形的に示す。送受信部NKSE1,NKSE2を、以下では常に非コヒーレント送受信部NKSE1,NKSE2とする。
【0059】
二つの送受信部NKSE1,NKSE2は、特に、互いに空間的に離れて配置される。送受信部NKSE1,NKSE2は、信号、情報を有する信号又はそれに含まれるデータを、特に無線インタフェースとして形成される経路SPを介して互いにやり取りする。経路SPに沿った物体で反射される間接的に送信された信号も、他の送受信部NKSE1,NKSE2によって直接送信された信号に加えて送受信部NKSE1,NKSE2の一つで受信される。
【0060】
好適な方法の適用のために、好適な配置は、少なくとも二つの同様に配置された送受信部NKSE1,NKSE2からなる。
【0061】
少なくとも二つの送受信部NKSE1,NKSE2の第1の送受信部において、信号生成器SigGen1は第1の信号SigTX1を生成する。その後、第1の信号SigTX1は、信号スプリッタを介して二つの経路に分けられる。第1の信号SigTX1は、送信アンテナとして形成されたアンテナTA1により経路の一つを介して第1の送受信部NKSE1から送信される。第1の信号TX1は、他の経路を介して信号比較部SigComp1に供給される。信号生成器は、特に、クロック源、発振器又は発振信号を用いる。
【0062】
少なくとも二つの送受信部の第2の又は別の送受信部NKSE2は、受信アンテナとして形成されたアンテナRA2を介して第1の送受信部によって送信された信号を受信し、前記信号を第1の受信信号sigRX21として信号比較部SigCom2に送信する。前記第2の又は別の送受信部NKSE2において、信号生成器SigGen2は、別の第1の信号TX2を生成する。前記別の第1の信号sigTX2も、特に信号スプリッタを介して分けられ、経路上の信号比較部SigComp2に供給される。別の第1の信号sigTX2は、送信アンテナとして形成されたアンテナTA2を介して第2の経路に送信される。
【0063】
第1の送受信部NKSE1は、受信アンテナとして形成されたアンテナRA1を介して第2の又は別の送受信部NKSE2によって放出された信号を受信し、それを第1の受信信号sigRX12として第1の送受信部NKSE1の信号比較部SigCom1に供給する。
【0064】
一つの変形によれば、第1の信号sigTX1,sigTX2の各々を、例えば、方向性結合器を介して信号生成器SigGen1,SigGen2とアンテナTA1,TA2の間の経路から分離することができる。第1の信号sigTX1,sigTX2を送信アンテナとしてのアンテナTA1,TA2を介して送信するとともにそれを受信アンテナとしての別のアンテナRA1,RA2を介して受信して前記信号を信号比較部SigComp1に供給することもできる。第1の信号sigTX1,sigTX2を送信アンテナとしてのアンテナTA1,TA2を介して送信するとともに前記信号を同一経路の受信アンテナとしての同一のアンテナを介して受信してそれを信号比較部SigComp1,SigComp2に供給することもできる。
【0065】
周波数変調信号を、例えば、第1の信号TX1及びsigTX2として好適に用いる。信号及び/又は変調の好適な形式は、特に、線形周波数変調信号(FMCW:周波数変調連続波)、ステップ周波数変調信号(FSCW:周波数ステップ連続波)、周波数シフトキード信号(FSK:周波数シフトキーイング)、周波数ホップを伴う信号(FHOP:周波数ホップ)又は直交周波数分割多重方式の信号(OFDM:直交周波数分割多重方式)である。雑音信号、バーカーシーケンス若しくはカザミシーケンスのような振幅又は位相変調を伴う疑似ランダムパルスシーケンス又は多相コードのようなレーダ技術において一般的に知られているようないわゆる良好な相関特性を有する他の全ての信号形式を用いることもできる。複数の送受信部NKSE1,NKSE2とN個の送受信部NKSE-Nとを多重化するために複数の送受信部NKSE1,NKSE2の同時の動作が特に有利であり、この場合、N>1であり、信号形式は、N個の直交変調信号sigTX1,sigTX2,...,sigTXNを形成することができるいずれかのセットで選択される。その結果、送受信部NKSE1,NKSE2,...NKSE-Nの一つにおいてこのように形成された第1の信号sigTX1,sigTX2,...の各々を、送受信部NKSE1,NKSE2,...NKSE-Nのそれ以外の送受信部で形成された第1の受信信号の同時の受信中にも分けることができる。数Nを、特に、2より大きくすることもできる。
【0066】
信号比較部SigComp1,SigCom2は、それに供給される第1の信号TX1及びTX2と第1の受信信号sigRX12及びsigRX21とを比較し、その各々は、特に、第1の比較信号sigC12及びsigC21を形成する。これらの比較信号sigC12,sigC21については、その位相及び/又は時間進行は、第1の信号TX1及びTX2の各々と第1の受信信号sigRX12及びsigRX21の各々との時間、周波数及び/又は位相差によって予め決定され、かつ、任意に決定される。特に、第1の送受信部NKSE1の比較信号sigC12については、その位相及び/又は時間進行を、第1の送受信部NKSE1の第1の信号sigTX1と第1の受信信号sigRX12の時間、周波数及び/又は位相差によって決定するとともに決定することができ、第2の送受信部NKSE2の比較信号sigC21については、その位相及び/又は時間進行を、第2の送受信部NKSE2の第1の信号sigTX2と第1の受信信号sigRX21の時間、周波数及び/又は位相差によって決定するとともに決定することができる。
【0067】
そのような信号比較部SigCom1及びSigComp2は、好適には、比較信号sigC12及びsigC21を形成するために、周波数変調信号を用いるときのいわゆるミキサ又は位相及び周波数変調若しくはパルス状信号を用いるときの相関器を備える。二つのそれぞれ供給された信号は、ミキサにおいて完全に又は部分的に重ね合わされる又は相関器において完全に又は部分的に相関される。ミキサ及び相関器の組合せの使用も実現することができる。
【0068】
第2の又は別の送受信部NKSE2の比較信号sigC21は、第2の送受信部NKSE2のデータインタフェースCommTX,CommRXを介して第1の送受信部NKSE1のデータインタフェースCommTX,CommRXに送信され、第1の送受信部NKSE1において、別の信号比較部sigComp12に供給される。比較信号sigC21は、好適には、デジタル化され、その後、デジタルインタフェースとして形成されたインタフェースを介して送信される。データインタフェースCommTX,CommRXの間のインタフェースを、特にそれらの間の経路SPを介した無線インタフェースのような無線形式、結束線又は有線で形成することができる。第1の送受信部NKSE1の別の比較部SigComp12には、第1の送受信部NKSE1で形成された比較信号sigC12が別の信号として供給される。
【0069】
別の信号比較部SigComp12は、それに供給される比較信号sigC12とsigC21aとを比較し、比較-比較信号sigCC12を形成する。特に、その位相又は振幅及び/又は位相進行を、第1の送受信部NKSE1から第2の及び/又は別の送受信部NKSE2までの又は第2の及び/又は別の送受信部NKSE2から第1の送受信部NKSE1までの経路について信号に必要な信号電波遅延によって決定する又は任意に決定する。このために、別の信号比較部SigComp12は、好適には、比較-比較信号sigCC12を形成するためにミキサ及び/又は相関器を備える。比較信号sigC12は、好適にはデジタル化されて別の信号比較部SigComp12に供給され、信号比較を、好適には、デジタル信号処理によって行う。
【0070】
したがって、特に、第1のステップ及び第1の送受信部NKSE1において、比較信号sigC12を、それによって形成された第1の信号sigTX1及び第2の又は別の送受信部NKSE2で生成された第1の信号sigTX2から形成するとともに経路SPを介して送信し、次の第2のステップにおいて、比較-比較信号sigCC21を前記第1の比較信号sigC21及び別の第1の比較信号sigC21から形成し、予め別の第1の比較信号sigC21を他の送受信部NKSE2においてその第1の信号sigTX2及び経路SPを介して受信した第1の送受信部NKSE1からの第1の信号sigTX1から個別に形成されて特にデータ信号として送信されるように、比較-比較信号sigCC21が形成される。
【0071】
最初に一つの送受信部NKSE1のアンテナTA1によって放出された信号sigTX1が受信アンテナとしてのアンテナRA2に到達するか物体を介して反射して他の送受信部NKSE2の受信アンテナとしてのアンテナRA2に到達するかは特に関係ない。一つのアンテナTA1から他のアンテナRA2までの送信経路を、システム理論で通常用いられるものとして、チャネル伝達機能によって又はいわゆるチャネルインパルス応答によって説明することができる。一つの送受信部NKSE1の送信に用いられるアンテナTA1から他の送受信部NKSE2の受信に用いられるアンテナRA2までの方向の逆方向で送信のために用いられるアンテナTA2によって放出される信号sigTX2を同一のチャネルを介してアンテナRA1に送信することをここで説明する方法において特に利用する。両方の送信方向におけるチャネル伝達機能の特に要求される一様性のための一般的に知られている技術用語は、いわゆるチャネルレシプロシティである。当業者は、アンテナTA1及びRA1が同一位置に配置される又は一つのアンテナのみが一つの送受信部NKSE1における送受信に用いられるとともに他の送受信部NKSE2のアンテナTA2及びRA2が同一位置にある又は一つのアンテナのみが他の送受信部NKSE2の送受信に用いられるときにチャネルレシプロシティを仮定できることを知っている。特に、一つの送受信部NKSE1の両方のアンテナTA1,RA1及び少なくとも一つの他の送受信部NKSE2のアンテナTA2,RA2を互いに非常に近接して配置したときにも十分適切なチャネルレシプロシティを仮定することができる。互いに非常に近接することを、空間サンプリング定理が維持されること、すなわち、180°の開き角度を有するアンテナの距離が半波長であること又は90°の距離で1波長であることと理解すべきである。
【0072】
比較-比較信号sigCC21を、比較-比較信号sigCC12を送受信部NKSE1で形成したのと同様なやり方で少なくとも一つの他の送受信部NKSE2で個別に形成することができる。しかしながら、チャネルレシプロシティの場合、比較-比較信号sigCC21から抽出することができる情報及び比較-比較信号sigCC12から抽出することができる情報は同一である。そのために、通常、二つの比較-比較信号の一方のみを形成すれば十分である。
【0073】
各手順を設けることによって、第1の送受信部NKSE1の比較信号sigC12を、第1の送受信部NKSE1の一つのデータインタフェースCommTX,CommRXにより第2の及び/又は他の送受信部NKSE2の一つのデータインタフェースCommTX,CommRXに任意に追加的に送信して前記第2の及び/又は他の送受信部NKSE2の別の信号比較部SigCOmp21に供給することができる。前記第2の及び/又は他の送受信部NKSE2の別の信号比較部SigCOmp21には、前記送受信部NKSE2で形成される比較信号sigC21が別の信号として供給される。したがって、比較-比較信号sigCC21は、別の信号比較部SigComp21によって形成される。
【0074】
適切な非コヒーレント送受信部の基本的な機能及び基本的な構造を、
図2に示す例示的な実施の形態を参照しながら例示により説明する。
【0075】
簡単な数学的な説明のために、先ず、信号生成器を、正弦波信号生成器と仮定する。生成されたCW信号(CW=連続波)をそれぞれ、例示的な送受信部NKSE1,NKSE2の固定された角周波数ω1又はω2を有する複素数値正弦(連続)波信号として数学的に表す。連続波信号は、特に、期間中に一定周波数で連続的に放出される信号である。この信号の伝播を実数値信号で表現することは、それ自体知られている。CW送信信号と仮定される二つの送受信部NKSE1,NKSE2の第1の信号sigTX1,sigTX2は、時間tに応じて以下のように規定される。
【0076】
【0077】
信号sigTX1,sigTX2の開始時間はT01及びT02であり、位相φ1及びφ2は、任意のゼロ位相角、すなわち、時間t=0での角度である。時間的に制限された信号の場合、信号の開始時間を、好適には、二つの信号SigTX1,SigTX2が互いに関連しながら重なり合うように選択する。Tが二つの信号SigTX1,SigTX2の持続時間であり、ΔT12が開始時間T01及びT02の差の量である場合、好適には、持続時間Tを差の量ΔT12より著しく大きくすること、有利には少なくとも10倍にすることを要求する。そうでない場合、送受信部NKSE1,NKSE2に、信号送信後にオフラインで信号sigTX1,sigTX2,sigRX21,sigRX12を比較するために送信及び受信した信号sigTX1,sigTX2,sigRX21,sigRX12を格納するように形成された装置を設ける。
【0078】
送受信部の一つの送受信部NKSE1は、第1の信号sigTX1を送信する。前記信号は、送信部の少なくとも一つの他の送受信部NKSE2に送信されるとともに信号sigRX21としてここで受信される。それに対し、送信された信号は、物体に反射されて送受信部NKSE1に戻され、送信部NKSE1は、前記送信された信号を送信し、信号sigRX11としてここで受信される。その結果、まだダウンコンバートされていない信号に以下の式が適用される。
【0079】
【0080】
この場合、τ12は、送受信部の一つ、特に、第1の送受信部NKSE1から送受信部の他の、特に、第2の送受信部NKSE2までの信号の伝搬時間を表し、τ11は、送受信部の一つ、特に、第1の送受信部NKSE1から物体に到達して物体から戻る信号の伝搬時間を表す。生じうる全ての一定のシステムの位相シフト及び反射によって導入された位相シフトを、位相φ1及びφ2によって考察する。
【0081】
他の送受信部NKSE2は信号sigTX2を送信する。この信号は、特に、送受信部の一つの送受信部NKSE1に送信され、そこで信号sigRX12として受信される。それに対し、信号は、物体に反射されて他の送受信部NKSE2に戻され、他の送受信部NKSE2が前記信号を送信し、前記信号が信号sigRX22として受信される。結果的に、以下の式が適用される。
【0082】
【0083】
ここで、τ21は、送受信部の他の、特に、第2の送受信部NKSE2から送受信部の一つの、特に、第1の送受信部NKSE1までの信号の伝搬時間を表し、τ22は、他の送受信部NKSE2から物体に到達してから再び戻されるまでの信号の伝搬時間を表す。伝搬時間τ21及びτ22は、チャネルレシプロシティの場合には等しく、以下のように仮定される。生じうる全ての一定のシステム位相シフト及び反射が導入される位相シフトを、位相値φ21及びφ22によって考察する。位相φ1及びφ2は、チャネルレシプロシティの場合には等しく、簡単化のために以下のように仮定される。
【0084】
信号比較部sigComp1,sigComp2は、本実施の形態ではミキサMixとして形成される。これらは、受信した信号sigRX21,sigRX11及びsigRX12,sigRX22をそれぞれ低周波数帯にダウンコンバートするのに用いられる。信号の一つと他の信号の共役複素信号(*=共役の記号)の乗算のような二つの複素正弦波信号の場合に混合処理をシステム理論によって多重化又はダウンコンバートとして表現できることが一般的に知られている。したがって、以下の式が適用される。
【0085】
【0086】
第1の送受信部NKSE1の信号比較部SigComp1において、比較信号sigC12は、第1の送受信部NKSE1の信号sigTX1及び他の送受信部NKSE2からここで受信した信号sigRX12から形成され、比較信号sigC11は、第1の送受信部NKSE1の信号sigTX1及びここで受信した後方反射信号sigRX11から形成される。他の、特に、送受信部NKSE2の信号比較部SigComp2において、比較信号C21は、前記送受信部NKSE2の信号sigTX2及び他の第1の送受信部NKSE1からここで受信した信号sigRX21から形成され、比較信号sigC22は、第2の送受信部NKSE2の信号sigTX2及びここで受信した後方反射信号sigRX22から形成される。
【0087】
比較信号sigC21及びsigC21並びに比較信号sigC21及びsigC22を簡単に互いに分けること、すなわち、特に多重化操作を可能にすることを保証するために、一つの送受信部NKSE1の角周波数ω1を、他の送受信部NKSE2の周波数ω2と異なるように選択する。周波数オフセット|Δ12|=|ω1-ω2|を、好適には、ゼロより大きいが非常に大きくないように選択する。このように非常に大きくならないようにすることは、特に、アナログ-デジタルコンバータADC、フィルタFLT、別の信号比較部SigComp12及びデータインタフェースCommTX,CommRXのようなコンポーネントに対する比較信号の帯域幅を不必要に増大することを回避するために有用である。特に、周波数オフセット|Δ12|を、例えば、通常の動作周波数として20MHZ未満にする。ダウンコンバートされた比較信号の帯域幅は、信号に含まれる周波数、特に、ゼロから比較信号に含まれる最大周波数までの範囲に対応する。
【0088】
そのようなアナログ-デジタルコンバータADCは、特に、外向きの回路において信号比較部SigComp1,SigComp2に接続される。形態に応じて、アナログ-デジタルコンバータADCは、特に、外向きの回路において、例えば、フィルタFLT又はデータインタフェースCommTX,CommRXを設ける。そのようなフィルタFLTは、特に、外向きの回路において、別の信号比較部SigCom12に接続される。別の信号比較部SigComp12は、例えば、ミキサMIXとして形成される。
【0089】
フィルタFLTと受信データインタフェースRXとの間で切り替えられる別の信号比較部SigComp12には、フィルタFLTによって、この送受信部NKSE1において生成された信号sigTX1及び経路SPを介して他の送受信部NKSE2によって受信した信号sigRX12から形成された比較信号C12が供給される。さらに、他の送受信部NKSE2によって送信される信号sigC21は、データインタフェースCommRXにより別の信号比較部SigComp12に供給される。
【0090】
フィルタFLTは、更なる処理のために後方反射によって生成された比較信号sigC11を任意に提供する。データインタフェースCommRXは、更なる処理のために同時に送信される比較信号sigC22を提供し、当該比較信号は、他の送受信部NKSE2において後方反射により生成され、同時に送信される。
【0091】
三つ以上の非コヒーレント送受信部NKSEi(i=1,2,..N)を用いる場合、全ての送受信部NKSEiの信号は、特に、多重化操作により操作される。説明した実施の形態において、それは、例えば、|Δ12|≠|Δ13|≠|Δ23|かつ|Δ12|≠0,|Δ12|≠0,|Δ12|≠0である各周波数オフセットの第3の非コヒーレント送受信部に当てはまる。
【0092】
複素変調信号、すなわち、FMCW,FSK,FSCW又はOFDM信号を、送受信部によって生成された信号sigTX1及びsigTX2として用いる場合、前記信号sigTX1及びsigTX2を多重化できるように、すなわち、送受信部によって生成された全ての送信信号を送受信部での受信後に分けるとともに信号を送信した各送受信部に関連させることができるように信号sigTX1及びsigTX2を変調する又は好適には変調する。通常の符号分割多重化方法、周波数分割多重化方法及び時分割多重化方法を、信号を分けるために適用することができる。
【0093】
送受信部により生成、送信及び後方反射された信号から生成した比較信号sigC11,sigC22は、特に個別に考察したときの通常のCWレーダ信号又はFMCW変調送信信号を用いるときの特に個別に考察したときの通常のFMCW信号を表す。前記比較信号sigC11,sigC22を取得するためのコンポーネント及びその配置は、特に、個別に考察した時の通常のCWレーダに対応する。したがって、CWレーダシステムを構成する方法、CWレーダ信号を処理する方法、複数の信号周波数を用いるときにFMCW,FSK,FHOP又はOFDMレーダ法によって複数のターゲットに対する距離及び速度を決定することができる方法が知られている。
【0094】
特に、第2の送受信部NKSE2の第1の比較部SigComp2の両方の比較信号sigC22,sigC21は、インタフェースCommTX,CommRXを介して特に第1の送受信部NKSE1に送信され、そこで更に処理される。場合によっては、同様に、特に第1の送受信部NKSE1で形成された二つの比較信号sigC11,sigC12をそれぞれ他の、特に、第2の送受信部NKSE2に送信してそこで処理することもできる。説明を明瞭にするために、このために必要なオプション及びコンポーネントを実施の形態に示さない。
【0095】
上述したように、そのように送信された比較信号sigC21及びsigC12を少なくとも一つの別の信号比較部SigComp12に供給するのが特に好適なアプローチである。各々の例において、特に第1の送受信部NKSE1の別の信号比較部SigComp12は、特に、伝送を介して受信した比較信号sigC21及び前記送受信部NKSE1で形成された比較信号C12を処理、特に、乗算するミキサとして形成される。以下の式が、位相値φ12=φ21を用いることによって比較-比較結果、特に、混合結果として得られる。
【0096】
【0097】
式に示すように、この比較-比較信号sigCC12は、形式的には、第2の比較プロセスの後に、一般的に通常のCWレーダシステムの信号に対応する。その理由は、信号の位相が信号の伝搬時間τ12に比例するからである。相互の測定及び別の信号比較の結果、特に、最初の非コヒーレント信号の全ての未知の成分を補償するように管理される。したがって、二つの非コヒーレント送受信部NKSE1,NKSE2が測定に用いられるとしても、レーダ信号は、コヒーレントレーダシステムで生成されるように生成される。
【0098】
比較-比較信号sigCC12も形式的には通常のCWレーダ信号に対応するので、二つの非コヒーレント送受信部NKSE1,NKSE2の間の距離及びこれらの間の相対速度を決定するために複数の信号周波数を用いるときに一般的に知られているFMCW,FSK,FHOP又はOFDMレーダ法を適用することもできる。FMCW,FSK,FHOP又はOFDMレーダ法は、レーダ技術の分野において既知であり、これらを、送信される第1の信号sigTX1,sigTX2に適用することができる。
【0099】
送受信部NKSE1,NKSE2が互いに未知の距離にある場合又はこれらが互いに未知の相対速度で移動する場合、上述したように、送受信部の間の信号が視覚的な接続を介して直接やり取りされる限りにおいて複数の周波数で決定される比較-比較信号sigCC12の評価によって送受信部の互いの距離及び速度を決定することができる。
【0100】
図3は、物体Oを検出又は撮影するための測定状況における複数の非コヒーレント送受信部NKSE1,NKSE2,...NKSE-Nのあり得る配置を示す。送受信部NKSE1,NKSE2,...NKSE-Nはそれぞれ、既知の位置
【0101】
【0102】
を有する。特に一般的な評価装置Pには、特に、更なる処理のために送受信部NKSE1,NKSE2,...NKSE-Nから比較信号sigC11,sigC12,sigC13,sigC22,sigC21,sigC23,...,sigC33,sigC31,sigC32が供給される。比較信号sigC11,sigC12,sigC13,sigC22,sigC21,sigC23,...,sigC33,sigC31,sigC32は、送受信部NKSE1,NKSE2,...NKSE-Nの組合せ、特に、そのような配置によって得られる送受信部NKSE1,NKSE2,...NKSE-Nの全てのあり得る組合せをカバーする。
【0103】
送受信部NKSE1,NKSE2が常に互いに既知の距離である場合及びこれらが物体Oに伝送信号を当てる場合、信号伝送経路の距離又は長さを、上記実施の形態による後方反射した比較信号sigC11及びsigC22において見られるような比較方法で決定することができ、物体Oに対する相対速度を、比較-比較信号sigCC12において見られるように決定することができる。
【0104】
したがって、信号伝送経路のそれぞれの長さを、後方反射の結果として形成された二つ以上の比較信号sigCC11,sigCC12及び比較-比較信号CC12を評価することによって形成することができる。全方向性アンテナの場合において、後方反射によって形成される比較信号sigC11,sigC22から形成された距離値はそれぞれ、物体Oを配置することができる円軌道を提供し、比較-比較信号CC12は誇張表現を示す。特に、送受信部NKSE1,NKSE2の位置に対する物体Oの位置を、それ自体既知のマルチラテレーション法によって決定することができる。別の送受信部NKSE-Nを追加して用いることによって、検出精度が向上し、向上したマルチターゲッティング能力を達成する。
【0105】
位相値φ11,φ22及びφ12の互いの偏差は、通常一定であるが必ずしも既知ではない。位相値φ11,Φ22及びφ12の互いの偏差が、例えば、キャリブレーション測定から既知である場合、後方反射の結果として形成された信号sigCC11,sigC22と、比較-比較信号sigCC12とを、これらの位相について比較することができる。これによって、特に、位相モノポリーパルス法又は干渉法及びSAR再構成法又はブロードバンドホログラフィのようないわゆる再構成撮影法の適用による非常に正確な角度測定が可能になる。再構成法もデジタルビーム形成又は回折トモグラフィの用語でそれ自体既知である。再構成法が多数の(例えば、N個の)送受信部を用いるのが有利である。現在の好適な方法の適用において、分散型の非コヒーレントに動作するレーダにおいて通常用いられるN個の一方的/モノスタティック測定部の位相値φ11,φ22,...,φNNを決定できるようにするだけでなく横方向の伝送経路の位相値φ12,φ13,...φ1N,φ23,φ24,...φ2N,φN-1Nを評価に含めて測定情報を大幅に増大させるのが有利である。いわゆるスパースアレイのアンテナ位置の適切な選択の場合において、比較的少ない数の送受信部を用いて良好な再構成結果を達成することができる。
【0106】
図4は、少なくとも一つの別の非コヒーレント送受信部NKSE2を検出する測定状況におけるMIMO二次レーダに関連する複数の非コヒーレント送受信部NKSE1,NKSE2,NKSE3,...,NKSE-Nのあり得る配置を示す。本例において、送受信部NKSE1,NKSE2,NKSE3,...,NKSE-NのN-1個の位置
【0107】
【0108】
は既知である。別の又は他の、特に、第2の送受信部NKSE2の位置
【0109】
【0110】
は最初に既知であると仮定する。
【0111】
好適な方法の結果、送受信部の他の送受信部NKSE1,NKSE3,...,NKSE-Nからの距離を、送受信部NKSE1,NKSE3,...,NKSE-Nの各々から決定することができる。実施の形態において、比較-比較信号sigCC12は、これらの送受信部NKSE1,NKSE2の第1の送受信部及び第2の送受信部NKSE1,NKSE2で生成された信号sigTX1,sigTX2を用いることによって、第1の送受信部NKSE1と第2の送受信部NKSE2との間の距離を提供し、第3の送受信部NKSE3及び第Nの送受信部NKSE-Nもそれぞれ、第2の送受信部NKSE2からの距離値を提供する。したがって、第2の送受信部NKSE2の位置を、それ自体既知のマルチラテレーション法によって決定することができる。別の適切に配置された送受信部を用いることによって検出精度が更に向上する。
【0112】
位相値φ11,φ32及びφN2の互いの偏差は、通常一定であるが必ずしも既知ではない。キャリブレーションによって保証することができる位相値の偏差が既知である場合、送受信部NKSE1,NKSE3で生成された信号に基づいて形成されるとともに他の、特に、第2の送受信部NKSE2によって生成される比較信号sigC12,sigC32と、第Nの送受信部NKSE-Nの信号及び送受信部NKSE2の信号に基づいて形成される比較-比較信号sigCCN2もその位相又は位相値φ11,φ32及びφN2について比較される。これによって、位相モノポリーパルス法又は干渉法及びSAR再構成法又はブロードバンドホログラフィのようないわゆる再構成撮影法の適用による非常に正確な角度測定が可能になる。そのような方法を、各送受信部が少なくとも二つの受信チャネルで操作されるとともにその伝送信号が用いられるように代替的に実行することもできる。その結果、送受信部の信号の入射角がチャネルの位相差の評価によって生じることができる。
【0113】
トランスポンダーを検出するための適切なSAR法は、最初に説明した文献から既知である。ここで説明した好適な方法及びそのような配置に基づいて、そのようなトランスポンダーを検出するための方法を、レーダ信号がコヒーレントな搬送波位相のトランスポンダーによって変調して反射される特徴があるいわゆる後方散乱トランスポンダーに用いることができる。個別の信号源を有するトランスポンダーが非コヒーレントに応答するとしても他のトランスポンダーシステムへの伝送も可能である。特に、上述した方法によって、二つの互いにやり取りを行うコヒーレント又は非コヒーレント送受信部の間の各距離と比例関係にある位相値φ12,φ32,...,φN2を決定することができる。全ての検出法及び再構成法を、例えば、一次レーダ技術の分野及びそのような後方散乱トランスポンダーの検出の分野から知られているように適用することができる。後方散乱トランスポンダーシステムと比較すると、ここで説明するような非コヒーレント送受信部を有するトランスポンダーシステムは、その範囲を特に著しく大きくすることができる及び特に著しく大きくなるという利点を提供し、更に複雑な多重化方法を適用することができる。
【0114】
二つの非コヒーレント送受信部NKSE1,NKSE2の間の測定中に送受信機の少なくとも一つの送受信部NKSE1が移動するとともに送受信部NKSE1,NKSE2の相対移動が慣性センサシステム、走行距離計又は他の任意の移動測定装置のような補助センサシステムによって決定できる場合に好適な方法を特に有利に適用することができる。例示的なSAR測定状況を、二次レーダ開口合成の記録状況とともに
図5に示す。位相が送受信部NKSE1,NKSE2の間の距離に比例する信号が、ここで説明した方法によって二つの送受信部NKSE1,NKSE2の測定中に形成されるので、レーダ技術において一般的に知られている合成開口法(SAR)及び逆合成開口法(ISAR)を適用することができる。
【0115】
特に、第1の送受信部NKSE1は、時間tで位置
【0116】
【0117】
でゼロでない速度
【0118】
【0119】
で軌道に沿って移動を開始し、他の、特に、第2の送受信部NKSE2に向かう間にここで説明する方法に従って複数の測定を実行する。第2の送受信部NKSE2は、位置
【0120】
【0121】
に配置され、例えば、ゼロでない速度
【0122】
【0123】
を有する。これら二つの送受信部NKSE1,NKSE2の比較-比較信号CC12は、特に、評価のために用いられる。第1の送受信部NKSE1に対する第2の送受信部NKSE2の位置を、例えば、最初に説明した文献から知られているホログラフィック再構成アルゴリズムによって高い精度で決定することができる。したがって、説明した方法及び配置は、自動車、飛行機、鉄道車両、移動ロボット、自律走行車等のような車両の高い精度の検出に特に適切である。第1の送受信部NKSE1は、例えば、車両に配置され、別の送受信部NKSE2は、マイルストーンとして既知の位置に配置される。車両が移動すると、第1の送受信部NKSE1は、SA法に従って他の送受信部NKSE2に対する相対位置を決定することができ、マイルストーンの座標系においてそれ自体の位置を決定することができる。
【0124】
図6は、逆二次レーダ高校合成の例示的な測定状況及び記録状況を示す。特に、第2の送受信部NKSE2は、時間tで位置
【0125】
【0126】
でゼロでない速度
【0127】
【0128】
で軌道に沿って移動を開始し、少なくとも一つの他の、特に、第1の送受信部NKSE2を用いた好適な方法に従って複数の測定を実行する。さらに、第2の送受信部NKSE2は、例えば、慣性プラットフォームによって奇跡の進行を決定し、それを無線によって、特に固定位置
【0129】
【0130】
及びゼロでない速度
【0131】
【0132】
のままである第1の送受信部NKSE1に送信する。加速度センサ及び角速度センサからなる配置は、好適には3軸で配置された慣性プラットフォームと理解される。これら二つの送受信部NKSE1,NKSE2の比較-比較信号CC12は、特に、評価のために用いられる。第1の送受信部NKSE1に対する第2の送受信部NKSE2の位置を、例えば、最初に説明した文献から知られているホログラフィック再構成アルゴリズムによって高い精度で決定することができる。したがって、説明した方法及び配置は、そのような非コヒーレント送受信部を有するトランスポンダーを装備した移動体の検出又はこのように装備したロボットのエンドエフェクタクタ、クレーンのジブ又は負荷を受け止める手段を検出するのに適している。複数の固定された送受信部が移動する送受信部の位置を決定するのに用いられる場合、「多角的逆合成開口二次レーダ」(multilateral inverse synthetic aperture secondary rader)として最初に説明した文献で指定した検出方法が特に有利に用いられる。
【0133】
以下の図は、そのような非コヒーレント送受信部のあり得る他の実施の形態を示す。
【0134】
図7は、特に、受信のために切換えられる複数のアンテナRA2,1,RA2,2,RA2,3を有するアンテナ面に関する二つの非コヒーレント送受信部NKSE1,NKSE2の間の角度を測定する配置を示す。送受信部の第1の送受信部NKSE1は、第1の送受信部NKSE1と特に関連するように配置され、フィルタを示さない又は完全に回避することができる。他の、特に、第2の送受信部NKSE2から信号を受信する通信インタフェースCommRXは、送信のために形成されたアンテナCA2を介して第2の送受信部NKSE2により無線インタフェースを通じて送信される比較信号を受信できるように任意に形成される。
【0135】
第2の送受信部NKSE2は、生成した信号sigTX2をアンテナTA2を介して送信するとともに分ける信号生成器SigGen2も備える。受信のために切り替えられる複数の、例えば、3個のアンテナRA2,1,RA2,2,RA2,3はそれぞれ、第2の送受信部NKSE2において、例えば、ミキサとして形成される外向きの回路の信号比較部SigComp2を備える。生成された信号sigTX2は、アンテナの受信信号と混合するために信号比較部SigCom2にも供給される。混合された信号はそれぞれ直接送信される、又は、特に、外向きの回路に接続されたアナログ-デジタルコンバータにそれぞれ供給されるとともに他の送受信部NKSE1に送信するために通信インタフェースCommTRXに供給される。前記通信インタフェースCommTRXには、例えば、インタフェースを介した送信のためのアンテナCA2が装備される。
【0136】
したがって、三つ以上の比較信号sigC21,1,sigC21,2,sigC21,3が第1の送受信部NKSE1に送信され、比較信号sigC21,1,sigC21,2,sigC21,3をそれぞれ第2の送受信部NKSE2の異なる受信位置に関連させる。したがって、複数の比較-比較信号sigCC121,sigCC122,..,sigCC12Nは、好適には、第1の送受信部NKSE1において形成され、評価のために提供される又は評価される。
【0137】
送受信部NKSE2の複数のコヒーレントに結合した受信アンテナのそのような使用によって、二つの送受信部NKSE1,NKSE2の間の距離及び速度だけでなく互いの角度を決定することができる。波の入射角を複数のコヒーレント送受信チャネルを用いて決定することができる方法は、一般的に知られている。
図7による配置を用いることによって、送受信部NKSE2のアンテナ面に関する二つの送受信部NKSE1,NKSE2の間の角度を、特に、複数のアンテナRA2,1,RA2,2,RA2,3を用いて決定する。
【0138】
第1の送受信部NKSE1に関する二つの非コヒーレント送受信部NKSE1,NKSE2の間の角度を、
図8による配置によって決定することができる。
【0139】
この例を用いると、送受信部の第1の送受信部NKSE1は、特に、
図7の第2の送受信部NKSE2に関連して形成され、特に、受信のために切り替えられる複数のアンテナRA1,1RA1,2,RA1,3が装備される。これらには、外向きの回路において、アンテナRA1,1,RA1,2,RA1,3ごとにミキサをそれぞれ備える信号比較部sigComp1の配置を設ける。アンテナの一つの少なくとも一つの信号は、第1の送受信部NKSE1で生成した信号sigTX1と共に混合のために前記比較部SigComp2に供給される。ミキサによって生成した信号はそれぞれ、外向きの回路に接続されたアナログ-デジタルコンバータADC1,ADC2又はADCNにそれぞれ供給され、変換後又は直接信号比較部SigComp12に供給される。さらに、通信インタフェースCommTRXを介して受信した信号又はデータは、信号比較部SigComp12に供給され、その信号又はデータは、第2の送受信部NKSE2から受信した比較信号sigC21を含む。信号比較部SigComp12は、特に、評価のために提供される又は評価される複数の比較-比較信号sigCC112,sigCC122,...,sigCCN2を生成する。
【0140】
通信インタフェースCommTRXには、一例として、インタフェースを介した受信のためのアンテナCA1が設けられる。したがって、無線インタフェースを介した送信のためのアンテナCA2を有する通信インタフェースCommTRXを第2の送受信部NKSE2に設ける。第2の送受信部NKSE2は、他の全てに関して
図2の第2の送受信部NKSE2と同様に形成される。それに対し、
図8の第2の送受信部NKSE2は、アナログ-デジタルコンバータADCと通信インタフェースCommTRXとの間で切り替えられ、それ自体が生成した信号sigTX2と第1の送受信部NKSE1から受信した信号sigRX21の比較から生じた比較信号のみを通信インタフェースCommTRXに伝送できるようにするフィルタFLTを備える。
【0141】
受信のために切り替えられる複数のアンテナを両方の非コヒーレント送受信部において他の実施の形態に従って形成する場合、送受信部の間の角度及び二つのアンテナ面の互いの傾斜を決定することができる。代替的に又は付加的に複数のコヒーレント伝送チャネルを用いることもできる。
【0142】
平行に配置された複数の非コヒーレント送受信部を有するそのような配置は、受動的なレーダターゲットとしての物体Oの測定にも有利である。
図9は、角度測定を含む非共同ターゲットに対する二つの非コヒーレント送受信部NKSE1,NKSE2を用いた測定のための一例の配置を示す。送受信部NKSE1,NKSE2を、
図8のように形成するが、送信される第1の信号sigTX1及びsigTX2を物体Oに向け、当該信号は、アンテナRA1,1,RA1,2,...RA1,N又はRA2にそれぞれ反射される。この配置によって、入射角を、前記の方法の一つにより位相差及び位相差によって評価することができ、距離と組み合わせることができる。慣性キャリブレーション問題を解決するために、各送受信部に受信チャネルをキャリブレートするいわゆる後方散乱を設けることもできる。
【0143】
測定信号として又は各信号生成器SigGen1,SigGen2による信号sigTX1,sigTX2としていわゆるマルチランプFMCW信号を用いるために距離及び速度を測定するのが特に有利である。
図10は、上述した図面の第1の送受信部NKSE1及び他の/第2の送受信部NKSE2の信号sigTX1としての信号生成器SigGen1,SigGen2による第1の信号sigTX1,1,sigTX1,2,...sigTX2,1,sigTX2,2,...,sigTX2,Kとして生成される一例によるFMCWマルチランプ信号を示す。これらのマルチランプFMCW信号において、複数の、好適にはK個の同様なFMCW変調信号sigTX1,1,sigTX1,2,...sigTX1,K又はsigTX2,1,sigTX2,2,...,sigTX2,Kを、好適には一定の時間間隔で送信する。多重化のために、マルチランプFMCW信号は、時間又は周波数に関する僅かなオフセットの測定に関連した送受信部において送信される。用語「僅かな」は、特に、測定ランプ持続時間の10%未満の時間遅延又は時間-周波数図の同等の周波数オフセットを意味する。
【0144】
FMCW測定信号は、上述したように、信号の好適な交互のやり取りにより個別のFMCW信号において生成される。全てのFMCW測定信号が生成される。これらは、好適には、比較-比較信号sigCC12,1;sigCC12,2,...sigCC12,Kとして行列に配置される。信号の列の配置の場合、このデータ行列は、例えば、以下の形態を有する。
【0145】
【0146】
二次元フーリエ変換をこの行列に適用する場合、いわゆるレンジドップラー図が生成され、それから非コヒーレント送信部の間の距離及び速度を非常に正確に決定することができる。
【0147】
好適には周波数/クロックレート及び時間オフセットに関して説明した測定プロセスを実行する前に無線信号をやり取りすることによって非コヒーレント送受信部を備える局又は装置の信号源の同期をとることは分散型送受信部の信号生成部の更に良好な調整に都合がよい。その理由は、廉価な発振器が公称値から著しく逸脱することがあるとともに温度が変化する場合にドリフトすることがあるからである。信号源のクロック生成器の逸脱によって全ての周波数値及び持続時間のスケーリングが生じ、例えば、特に、信号変調及びデジタル信号の時間基準がゆがめられ、比較の誤った結果が生じる。米国特許第8,108,558号明細書の「ネットワークのクロックの同期を取るための回路配置及び方法」(Circuit arramgement and method for synchronization of clocks in a network)又は米国特許第7,940,743号の「無線局の同期を取るための方法及び装置並びに時間同期無線バスシステム」(Method and device for the synchronization of radio stations and a time-synchronous radio bus system)は、例えば、非コヒーレント送受信部の同期をとるのに適切である。特に、非コヒーレント送受信部の同期をとるために米国特許第7,940,743号の方法を比較信号sigC21及びsigC12に適用するのが有利である。この場合において、特に、量及び符号が異なる少なくとも二つのスイープレートの少なくとも二つのFMCWレーダ信号のやり取りを行うのが有利である(スイープレート:時間に対する信号周波数の変化)。好適な実施の形態は、このために少なくとも二つのFMCWレーダ信号を使用し、周波数は、これらのFMCW信号のうちの正のスイープレートに対応する一つのFMCW信号において経時的に増大し、周波数は、負のスイープレートに対応する別のFMCW信号において経時的に減少する。
【0148】
特に、上述した実施の形態以外の実施の形態の代替的な種々の構成要素の別の組合せを実現することができ、これらの構成要素を種々の図面に示す。
【0149】
比較信号sigC21,sigC12の関心のある範囲の事前選択及び通信装置を介して全体の比較信号を送信する代わりこの範囲のみ送信することを、例えば、別の実施の形態として実現することができる。したがって、用語「比較信号」は、比較信号が比較-比較信号の決定のために十分なデータ内容を含む限りにおいて少なくとも部分的な比較信号のみを含む。そのような場合、インデックス値を任意に付加的に送信することができ。それは、比較信号の度の範囲を送信したかを表す。さらに、そのような比較信号の複数の範囲又はセクションの送信を実現することができる。
【0150】
比較信号の送信を、実際に生成された比較信号の代わりにスペクトルを送信することにより及び/又はスペクトルを解体して送信することにより別の実施の形態で実現することもできる。特に、二つの比較信号のスペクトルの形成又は比較-比較信号を形成するためのスペクトルレベルでの複素共役変調を実現することもできる。
【符号の説明】
【0151】
NKSE1、NKSE2……非コヒーレント送受信部