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特許7357599細胞外小胞分離法、コロイド粒子とその調製方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-28
(45)【発行日】2023-10-06
(54)【発明の名称】細胞外小胞分離法、コロイド粒子とその調製方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/07 20100101AFI20230929BHJP
【FI】
C12N5/07
【請求項の数】 9
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020218405
(22)【出願日】2020-12-28
(65)【公開番号】P2021108658
(43)【公開日】2021-08-02
【審査請求日】2021-03-09
(31)【優先権主張番号】62/954,670
(32)【優先日】2019-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】390023582
【氏名又は名称】財團法人工業技術研究院
【氏名又は名称原語表記】INDUSTRIAL TECHNOLOGY RESEARCH INSTITUTE
【住所又は居所原語表記】No.195,Sec.4,ChungHsingRd.,Chutung,Hsinchu,Taiwan 31040
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(72)【発明者】
【氏名】顏 ▼ユ▼芳
(72)【発明者】
【氏名】陳 建安
(72)【発明者】
【氏名】陳 振泰
【審査官】山本 匡子
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-077397(JP,A)
【文献】国際公開第2019/040920(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第108918228(CN,A)
【文献】特開2019-191176(JP,A)
【文献】特表2017-505753(JP,A)
【文献】特表2015-510396(JP,A)
【文献】特表2011-505237(JP,A)
【文献】国際公開第2019/122003(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第109576207(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0212540(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 1/00-5/28
C12Q
G01N
MEDLINE/BIOSIS/REGISTRY/CAPLUS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞外小胞の分離に用いるコロイド粒子を調製する方法であり、
水とアガロースで2wt%~6wt%の濃度のアガロース溶液を調製し、90℃~100℃に加熱してから、5wt%~20wt%の濃度の界面活性剤と50wt%~60wt%の濃度の鉱油を前記アガロース溶液に加えて乳化し、第1コロイド材料を形成し、
前記第1コロイド材料をふるいでふるいにかけ、粒子径範囲が25μm~500μmの第2コロイド材料を得て、前記第2コロイド材料を洗剤で洗浄して、油分や不純物を除去し、
洗浄した前記第2コロイド材料に濃度0.1M~0.5Mの架橋剤を添加し、攪拌して第3コロイド材料を形成し、
前記第3コロイド材料を有機溶剤で洗浄し、次に前記第3コロイド材料を修飾溶液で表面修飾して、生体適合性分子で表面が修飾されたコロイド粒子を得て、
そのうち、前記修飾溶液が生体適合性分子を含み、前記修飾溶液に含まれる前記生体適合性分子の濃度は0.1Mから0.5Mであり、前記生体適合性分子は、CMC(カルボキシメチルセルロースナトリウム,sodium carboxymethyl cellulose)、MC(メチルセルロース,methyl cellulose)、グリシン(glycine)、アスパラギン酸(aspartic acid)、グルタミン酸(glutamic acid)、ウシ血清アルブミン(BSA)、胎児ウシ血清(FBS)またはそれらの組み合わせである、
コロイド粒子の調製方法。
【請求項2】
前記界面活性剤が、Triton X-100、Tween 20、Tween 80、Span 80、またはそれらの組み合わせである、請求項1に記載のコロイド粒子の調製方法。
【請求項3】
前記洗剤が、SDS(ドデシル硫酸ナトリウム,sodium dodecyl sulfate)、DOC(デオキシコール酸ナトリウム,sodium deoxycholate)、CTAB(臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム,cetyltrimethylammonium bromide)、またはそれらの組み合わせである、請求項1に記載のコロイド粒子の調製方法。
【請求項4】
前記架橋剤が、エピクロロヒドリン(epichlorohydrin)、DCP(1,3‐ジクロロ‐2‐プロパノール/1,3-dichloro-2-propanol)、2,3‐ジブロモプロパノール(2,3-dibromopropanol)、ジビニルスルホン(divinyl sulfone)、ビスオキシラン(bis-oxiranes)またはそれらの組み合わせである、請求項1に記載のコロイド粒子の調製方法。
【請求項5】
前記有機溶剤が、アセトン(acetone)、エタノール(ethanol)、メタノール(methanol)またはそれらの組み合わせである、請求項1に記載のコロイド粒子の調製方法。
【請求項6】
エタノールの使用濃度は20%から75%、アセトンの使用濃度は20%から75%であり、メタノールの使用濃度は20%から75%である、請求項5に記載のコロイド粒子の調製方法。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載のコロイド粒子の調製方法で調製されたコロイド粒子を準備し、
前記コロイド粒子をカラムに充填し、ふるい板で前記コロイド粒子を軽く押してその表面を均し、
PBSバッファで数回すすいだ後、生物学的サンプルを前記カラムに加え、前記生物学的サンプルとカラム内の前記コロイド粒子を18℃から24℃で作用させ、
PBSバッファを前記カラムに加え入れて溶離及び/または遠心分離して、中段の溶離溶液を収集し、前記中段の溶離溶液には細胞外小胞が含まれる、細胞外小胞の分離方法。
【請求項8】
前記生物学的サンプルが、細胞培養液、血漿、血清、尿液、脳脊髄液(cerebrospinal fluid)、または羊水(amniotic fluid)を含む、請求項に記載の細胞外小胞の分離方法。
【請求項9】
前記カラムがオープンカラム、遠心分離カラムあるいはフラッシュカラムである、請求項に記載の細胞外小胞の分離方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分離方法、コロイド粒子およびその調製方法に関し、特に細胞外小胞の分離方法、コロイド粒子およびその調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
細胞外小胞(Extracellular vesicles, EVs)は、膜構造を持つさまざまな小胞の総称であり、直径は30nm~40nmや8μm~9μmなど様々であり、多種の細胞から周囲の環境に分泌され、血液、尿液、唾液及びその他の体液中のいずれにもその存在が確認される。現在、細胞外小胞の機能は完全には解明されておらず、公知の文献では、それらは宿主と病原体との相互作用を調節し、感染症、神経疾患、癌などのさまざまな病理学的過程に関与し、正常な生理学的過程において細胞間での通信伝達で重要な機能を発揮すると認められている。細胞外小胞は、臨床医学においても多くの潜在的な応用用途があり、主に臨床状態、治療反応、疾患の進行などを監視するために使用できるバイオマーカーを豊富に含んでおり、また同時に生体分子を送達する機能を備えているため、臨床薬物担体の発展においても極めて大きな潜在力を有している。
【0003】
細胞外小胞を分離するための従来のゴールドスタンダードな方法は、少なくとも12時間かかる超高速遠心分離であり、超高速での遠心分離の最大回収率はわずか20%しかなく、高純度の細胞外小胞は得られるものの、回収率は非常に低くなる。近年、ポリグリコール沈殿法、免疫磁気ビーズ精製法、マイクロ流路精製装置など、細胞外小胞を分離するための多くの方法や装置がさまざまな文献や特許で開発されているが、いずれも高回収率、時間節約、高純度の要件を同時に満たすことはできない。
【0004】
したがって、高い回収率、時間の節約、高純度を同時に達成できる細胞外小胞分離法を開発することがますます重要になっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、さまざまな文書や特許で細胞外小胞を分離するための多くの方法や装置の開発が進められているが、それらのいずれも高い回収率、時間の節約、そして高純度の要件を同時に満たすことはできない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、高回収率、時間節約および高純度を同時に兼ね備える、化学合成したコロイド粒子を分離カラムに充填して、細胞外小胞を分離する、細胞外小胞の分離方法、コロイド粒子およびその調製方法を提供する。
【0007】
本発明のコロイド粒子の調製方法は、以下のステップを含む。水とアガロースで2wt%~6wt%の濃度のアガロース溶液を調製し、90℃~100℃に加熱してから、5wt%~20wt%の濃度の界面活性剤と50wt%~60wt%の濃度の鉱油をアガロース溶液に加えて乳化し、第1コロイド材料を形成する。その後、第1コロイド材料をふるいでふるいにかけ、粒子径範囲が25μm~500μmの第2コロイド材料を得て、第2コロイド材料を洗剤で洗浄して、油分や不純物を除去する。次に、洗浄した第2コロイド材料に濃度0.1M~0.5Mの架橋剤を添加し、攪拌して第3コロイド材料を形成する。最後に、第3コロイド材料を有機溶剤で洗浄し、次に第3コロイド材料を修飾溶液で表面修飾して、生体適合性分子で表面が修飾されたコロイド粒子を得る。修飾溶液は、CMC(カルボキシメチルセルロースナトリウム,sodium carboxymethyl cellulose)、MC(メチルセルロース,methyl cellulose)、グリシン(glycine)、アスパラギン酸(aspartic acid)、グルタミン酸(glutamic acid)、ウシ血清アルブミン(BSA)、胎児ウシ血清(FBS)またはそれらの組み合わせを含む。
【0008】
本発明のコロイド粒子は、細胞外小胞を分離するために使用され、2重量%から6重量%のアガロースを含み、粒径は25μmから500μmであり、表面は生体適合性分子で修飾されている。生体適合性分子は、CMC(カルボキシメチルセルロースナトリウム,sodium carboxymethyl cellulose)、MC(メチルセルロース,methyl cellulose)、グリシン(glycine)、アスパラギン酸(aspartic acid)、グルタミン酸(glutamic acid)、ウシ血清アルブミン(BSA)、胎児ウシ血清(FBS)またはそれらの組み合わせを含む。
【0009】
本発明の細胞外小胞分離法は、以下のステップを含む。上記のコロイド粒子を用意し、コロイド粒子をカラムに充填し、コロイド粒子をふるい板で軽く押してその表面を均す。次に、PBSバッファで数回すすいだ後、生体サンプルをカラムに加え、生体サンプルとカラム内のコロイド粒子を18℃~24℃の温度で作用させる。続いて、PBSバッファを前記カラムに加えて溶離および/または遠心分離し、中段溶離液を収集し、前記中段溶離液には細胞外小胞が含まれる。
【発明の効果】
【0010】
上記に基づいて、本発明のコロイド粒子は、細胞外小胞を分離するために使用することができ、それは2wt%から6wt%のアガロースを含み、粒径サイズが25μmから500μmで、表面は生体適合性分子で修飾されており、本発明のコロイド粒子をカラムに充填し、細胞外小胞を分離して、高回収率かつ高純度の細胞外小胞を短時間で得ることができ、高回収率、時間節約、高純度を同時に実現することができる。
【0011】
本発明の上記の特徴および利点をより明確かつ理解し易くするために、以下の特定の実施形態を、添付の図面と併せて以下の通り詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明の一実施形態によるコロイド粒子の調製方法の概略フローチャートである。
図2図2は、本発明の一実施形態による細胞外小胞分離法の概略フローチャートである。
図3図3は、本発明によって提供されるコロイド粒子で分離した細胞外小胞のクロマトグラムである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下において実施形態と図面を併せて詳細な説明を行っているが、提供する実施形態は、本発明がカバーする範囲を制限するものではない。また、本文中で使用されている「含む」、「有する」、「備える」などの用語はいずれも開放性の用語であり、即ち「含むがこれらに限定されない」という意味である。
【0014】
本発明はコロイド粒子の調製方法を提供し、調製されたコロイド粒子は主に細胞外小胞の分離に用いられる。図1は、本発明の一実施形態によるコロイド粒子の調製方法の概略フローチャートである。以下、図1により本発明の一実施形態におけるコロイド粒子の調製方法について詳細に説明する。
【0015】
図1を参照すると、まず、ステップS10を実行し、水とアガロース(agarose)により、たとえば2wt%~6wt%の濃度のアガロース溶液を準備し、約90℃~100℃に加熱し(たとえば、マイクロ波オーブンまたはオートクレーブを使用して加熱してもよい)、次に、例えば5wt%から20wt%の濃度の界面活性剤と、例えば50wt%から60wt%の濃度の鉱油(mineral oil)をアガロース溶液に加えて乳化(emulsification)して、第1コロイド材料を形成する。より詳細には、界面活性剤は、Triton X-100、Tween 20、Tween 80、Span 80、またはそれらの組み合わせを含み得る。
【0016】
上記の本発明の実施例のステップS10では、水とアガロースの比率を調整することで、異なるパーセンテージ濃度のアガロース溶液を調製して、異なる細孔サイズのアガロースゲル(agarose gel)を生成することができ、乳化剤の種類と比率を調整して、コロイド粒子のサイズを調整することができる。理論的には、アガロース溶液の濃度が高いほど細孔は小さくなるが、アガロースゲルの硬度と分子量が異なると細孔のサイズにも影響し、現在のところ細胞外小胞の分離に適した細孔の範囲は、おおよそ濃度2wt%~6wt%アガロース溶液、例えば、約2.2wt%~5.8wt%、約2.5wt%~5.5wt%、約2.8wt%~5.3wt%、約3wt%~5wt%、約3.3wt%~4.7wt%、約3.5wt%~4.5wt%、約2.25wt%~2.75wt%、約2.75wt%~3.25wt%、約3.25wt%~3.75wt%、約3.75wt%~4.25wt%、約4.25wt%~4.75wt%、約4.75wt%~5.25wt%、約5.25wt%~5.75wt%などが採用されるが、これらに限定されない。
【0017】
上記本発明の実施例のステップS10において、調製されたアガロース溶液を加熱する方法は、マイクロ波オーブンまたはオートクレーブによる加熱を含み得るが、これに限定されない。加熱温度は、約90℃~100℃、例えば、約90℃~92℃、約92℃~95℃、約95℃~98℃、約98℃~100℃、約93℃、約97℃、約99℃であるが、これに限定されない。
【0018】
上記の本発明の実施例のステップS10において、使用される界面剤は、Triton X-100(ポリエチレングリコールオクチルフェニルエーテル、2-(2-[4-(1,1,3,3-Tetramethylbutyl)phenoxy]ethoxy)ethanol)、Tween20(ポリソルベート20,polyoxyethylene sorbitan monolaurate)、Tween80(ポリソルベート80,polyoxyethylene sorbitan monooleate)、Span80(ソルビタンモノオレアート,sorbitan monooleate)または前述の組み合わせを含み得るが、これに限定されない。使用される界面活性剤の濃度は、約5wt%~20wt%、例えば、約6wt%~18wt%、約8wt%~16wt%、約10wt%~15wt%などであり得るが、これらに限定されない。
【0019】
上記本発明実施形態のステップS10において、使用される鉱油は、パラフィン油、ナフテン系炭化水素油または芳香族炭化水素油を含み得るが、これらに限定されない。使用される鉱油の濃度は、約50wt%から60wt%、例えば、約52wt%から55wt%、約55wt%から58wt%、約53wt%、約56wt%または約59wt%であり得るが、これらに限定されない。
【0020】
上記の本発明実施形態のステップS12において、使用される洗剤は、SDS(ドデシル硫酸ナトリウム,sodium dodecyl sulfate)、DOC(デオキシコール酸ナトリウム,sodium deoxycholate)、CTAB(臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム,cetyltrimethylammonium bromide)、またはそれらの組み合わせを含み得る。洗浄には、一定量の上記洗剤を第2コロイド材料に1回以上施すことができ、使用する洗剤は有機溶剤を併せて洗浄して、油汚れをよりきれいに洗浄してもよく、併せて使用する有機溶剤は、n‐ヘキサン、アルコール溶液等またはそれらの組み合わせを含み得るが、これらに限定されない。たとえば、80mlの第2コロイド材料を反応に使用する場合、最初に250mlの1%SDS水溶液で油汚れを洗浄し、次に100mlのn‐ヘキサンで油汚れを洗浄し、濾過後に80mlの20%アルコール溶液で3回洗浄して、最後80mlの浄水で3回洗浄する。
【0021】
次に、引き続き図1を参照し、ステップS14を実行し、約0.1Mから0.5Mの濃度の架橋剤を洗浄した第2コロイド材料に加え入れ、攪拌して第3コロイド材料を形成する。より詳細には、架橋剤には、エピクロロヒドリン(epichlorohydrin)、DCP(1,3‐ジクロロ‐2‐プロパノール/1,3-dichloro-2-propanol)、2,3‐ジブロモプロパノール(2,3-dibromopropanol)、ジビニルスルホン(divinyl sulfone)、ビスオキシラン(bis-oxiranes)またはそれらの組み合わせを含み得る。
【0022】
上記本発明実施形態のステップS14において、使用される架橋剤の濃度は、例えば、約0.15Mから0.45M、約0.2Mから0.4M、約0.25Mから0.35Mなどであり得るが、これらに限定されない。
【0023】
最後に、引き続き図1を参照し、ステップS16を実行し、第3コロイド材料を有機溶媒で洗浄してから、第3コロイド材料の表面を修飾溶液で修飾して、生体適合性分子で表面修飾されたコロイド粒子を得る。より詳細には、使用される有機溶剤は、第3コロイド材料に1回以上一定量適用され、有機溶剤は、アセトン(acetone)、エタノール(ethanol)、メタノール(methanol)またはそれらの組み合わせを含み得る。そのうちエタノールの濃度は、例えば、20%から75%であり、メタノールの濃度は、例えば、20%から75%であり、アセトンの濃度は、例えば、20%から75%である。たとえば、80mlの第3コロイド材料を反応に使用する場合は、最初に80mlの20%アルコール溶液で3回洗浄し、次に80mlの浄水で3回洗浄する。使用するアセトンの量は少なく、約40mlの第3コロイド材料では濃度75%のアセトン10mlで洗浄するだけで済む。メタノールでの洗浄方法はエタノールと同様で、濃度は25%~75%でよく、使用量は約40mlの第3コロイド材料を40mlのメタノールで3回洗浄する。
【0024】
上記の本発明実施形態のステップS16では、修飾溶液は、CMC(カルボキシメチルセルロースナトリウム,sodium carboxymethyl cellulose)、MC(メチルセルロース,methyl cellulose)、グリシン(glycine)、アスパラギン酸(aspartic acid)、グルタミン酸(glutamic acid)、ウシ血清アルブミン(BSA)、胎児ウシ血清(FBS)、またはそれらの組み合わせを含み得る。より詳細には、ウシ血清アルブミン(BSA)および胎児ウシ血清(FBS)などのタンパク質類は、生体適合性を有するマクロ分子であり、適用可能な分子量範囲は、例えば、3kDaから150kDaである。グリシン、アスパラギン酸、グルタミン酸などのアミノ酸類は生体適合性を有する小分子であり、適用可能な分子量の範囲は、例えば、1Daから500Daである。CMC(カルボキシメチルセルロースナトリウム)およびMC(メチルセルロース)は生体適合性を有するポリマーであり、適用可能な分子量範囲は、例えば、10kDaから500kDaである。
【0025】
上記本発明実施形態のステップS16では、表面修飾方法は、吸着法または共有結合法を含み得る。吸着法は、第3コロイド材料を架橋反応させた後、直接カラムに通し、生体適合性分子をコロイド粒子表面に吸着させる方法である。共有結合法は、第3コロイド材料を架橋反応させた後、リンカー(linker)が露出した官能基を生体適合性分子に共有結合方法でつなげる。この実施形態では、吸着法は、上記の生体適合性を有するマクロ分子または小分子に適用することができ、上記のポリマーは、溶解性のために吸着法には適していない。共有結合法は、上記の生体適合性を有するマクロ分子、小分子、またはポリマーに適用できる。
【0026】
さらに、修飾溶液に含まれる生体適合性分子は、分離しようとする細胞外小胞の生物学的サンプルに応じて異なる選択をすることができる。たとえば、修飾溶液に生体適合性を有するマクロ分子が含まれている場合、生物学的サンプルが細胞培養液や血漿サンプルであれば細胞外小胞の回収率を大幅に向上させることができる。修飾溶液に生体適合性を有する小分子が含まれている場合、生物学的サンプルが細胞培養液であれば、細胞外小胞の回収率は中程度であるが、回収される細胞外小胞の純度は高い。生物学的サンプルが血漿サンプルである場合、修飾溶液に生体適合性ポリマーが含まれているものを選択すると、細胞外小胞の回収率は、生体適合性のある小分子を含む修飾溶液の回収率よりも高くなる可能性がある。
【0027】
さらに、上記本発明実施形態のステップS16において、修飾溶液で第3コロイド材料を表面修飾するとき、修飾溶液に含まれる生体適合性分子の濃度は、約0.1Mから0.5M、例えば、約0.15Mから約0.45M、約0.2Mから0.4M、約0.25Mから0.35M、約0.13M、約0.26M、約0.33M、約0.46Mなどであるが、これらに限定されない。生体適合性分子を含む修飾溶液で第3コロイド材料を表面修飾することにより、細胞外小胞の回収率を高めることができる。
【0028】
本発明はまた、細胞外小胞を分離するために用いることができる、上記のコロイド粒子調製法によって調製されたコロイド粒子を提供し、上記のコロイド粒子は約2wt%から6wt%のアガロースを含むことができ、粒径サイズは例えば25μmから500μmであり、表面が生体適合性分子で修飾され、生体適合性分子は、CMC(カルボキシメチルセルロースナトリウム,sodium carboxymethyl cellulose)、MC(メチルセルロース,methyl cellulose)、グリシン(glycine)、アスパラギン酸(aspartic acid)、グルタミン酸(glutamic acid)、ウシ血清アルブミン(BSA)、胎児ウシ血清(FBS)、またはそれらの組み合わせを含み得る。本発明のコロイド粒子表面は生体適合性分子で修飾されているため、回収率を効果的に高めることができる。
【0029】
さらに、上記の本発明実施形態で提供されるコロイド粒子は、そのアガロース調製濃度、加熱条件、界面活性剤および鉱油使用濃度、ふるいによるふるい分けによって得られる第2コロイド材料の粒径範囲、第2コロイド材料を洗浄するために使用される洗剤、第2コロイド材料に適用される架橋剤、架橋剤の使用濃度、第3コロイド材料の洗浄に使用される有機溶剤、第3コロイド材料の表面を修飾するのに適用する生体適合性分子、修飾溶液の適用濃度、およびコロイド粒子の表面修飾の程度などは、いずれも上記の細胞外小胞を分離するために使用されるコロイド粒子の調製方法に記載されている範囲または内容と類似または同一であり、ここでは繰り返しの説明は行わない。
【0030】
本発明は、上記のコロイド粒子を使用した細胞外小胞分離の方法も提供する。図2は、本発明の一実施形態による細胞外小胞分離法の概略フローチャートである。以下、図2を用いて、本発明の一実施形態の細胞外小胞分離法について詳細に説明する。
【0031】
図2を参照すると、まず、ステップS20を実行して、コロイド粒子を準備し、上記コロイド粒子は、上記の図1で説明した調製方法で作成され、上記で言及される粒径サイズと組成を有し、表面は生体適合性分子で修飾される。上記にて詳細に説明されているので、ここでは繰り返しの説明は行わない。
【0032】
次に、引き続き図2を参照すると、ステップS22を実行し、カラムにコロイド粒子を充填し、ふるい板でコロイド粒子を軽く押してその表面を均す。この実施形態では、カラムは、オープンカラム、遠心分離カラムあるいはフラッシュカラムであり得る。
【0033】
その後、引き続き図2を参照すると、ステップS24を実行し、PBSバッファで数回すすぎ、生物学的サンプルをカラムに加え入れ、生物学的サンプルとカラム内のコロイド粒子を約18℃~24℃の温度で作用させ、たとえば約19℃、20℃、21℃、22℃、23℃の温度で作用させることができるが、これに限定されない。
【0034】
この実施形態では、生物学的サンプルは、細胞培養液、血漿、血清、尿液、脳脊髄液(cerebrospinal fluid)、または羊水(amniotic fluid)を含み得るが、本発明はこれに限定されない。より詳細には、細胞培養液に適用する場合、例えば、6wt%のアガロースを含み、74μmから500μmの粒径サイズを有するコロイド粒子を使用することがより適切であり、コロイド粒子表面は生体適合性小分子で修飾され、好ましくは加圧条件下で操作される。血漿に適用する場合、例えば、5wt%のアガロースを含み、37μmから125μmの粒径サイズを有するコロイド粒子を使用することが好ましく、かつコロイド粒子の表面は生体適合性ポリマーで修飾され、好ましくはたとえば非加圧条件下で操作される。
【0035】
次に、引き続き図2を参照すると、ステップS26を実行し、カラムにPBSバッファを加え入れて溶離および/または遠心分離を行い、中段溶離液を収集し、中段溶離液には細胞外小胞が含まれている。このようにして、本発明の細胞外小胞の分離方法が完了する。本発明の細胞外小胞の分離法による回収率は、50%を超えることができ、たとえば、60%を超える、70%を超える、80%を超える、または90%を超えることさえでき、また99%以上のタンパク質を除去できるため、タンパク質の残留量を1%未満とすることができ、流速は約475μl/minに制御でき、操作時間は1時間未満とすることができ、高い分離効率を有する。さらに、加圧された操作条件下で、細胞外小胞のカラム通過を加速して、希釈率を下げて、細胞外小胞の回収率を上げることができる。
【0036】
以下、本発明が提案するコロイド粒子と細胞外小胞の分離方法を実験例により詳しく説明する。ただし、以下の実験例は本発明を制限することを意図したものではない。
【0037】
実験例
本発明のコロイド粒子が細胞外小胞を効率的に分離できることを証明するために、次の実験を特別に行った。
【0038】
実験例1:コロイド粒子の調製
(1)アガロース粒子の調製
【0039】
80mlの水を4.8gのアガロースと混合し、マイクロ波オーブンまたはオートクレーブで加熱し、90℃で2時間加熱して完全に溶解し、6%アガロース溶液を調製する。次に、13.5mlのSpan80、1.5mlのTritonX‐100、および85mlの鉱油を均一に混合し、95℃に加熱した後、6%アガロース溶液を加えて30分間乳化反応させる。反応終了後、反応温度を室温まで下げる。その後、油汚れを1%SDS水溶液で洗浄し、74μmから250μmのアガロース粒子をろ過により収集する。100mlのn‐ヘキサンと80mlの20%アルコールで3回洗浄し、次に80mlの二次水で3回洗浄して、40mlの74μmから250μmの6%アガロース粒子(前述の第2コロイド材料に相当)を得る。
【0040】
(2)架橋反応
【0041】
上記の40mlのアガロース粒子を、最終濃度0.5Nの水酸化ナトリウム溶液中で5mlのエピクロロヒドリン(epichlorohydrin)と反応させ、60℃に加熱して反応させ、一晩撹拌して架橋反応を実施し、前述の第3コロイド材料に相当する物を得る。
【0042】
(3)生体適合性分子による表面修飾
【0043】
架橋反応が完了したら、60℃の温度下で5mlのエピクロロヒドリン(epichlorohydrin)をコロイド材料に直接加え、3時間反応させて、より多くの官能基を活性化する。その後濾過し、コロイドを二次水で3回洗浄して、未反応のエピクロロヒドリンを除去する。官能基が活性化されたアガロース粒子(官能基が活性化された第3コロイド材料)を、最終濃度1Nの水酸化ナトリウム溶液中において、0.8gの生体適合性分子CMC固体および最終濃度0.2Mグリシン(glycine)溶液を加え入れ、60℃で一晩反応させる。その後、反応温度を室温まで下げ、二次水40mlで3回濾過洗浄し、次いでアルコール40mlで3回洗浄し、最後に二次水40mlで3回洗浄し、生体適合性分子CMCが修飾されたCMC6%アガロース粒子(前述のコロイド粒子に相当)を収集して、後続の細胞外小胞の分離に用いるために備える。
【0044】
実験例2:癌細胞培養液の細胞外小胞精製
(1)クロマトグラフカラムの充填
【0045】
直径8mm、長さ70mm、総体積約3.5mlのカラムの底部にふるい板を入れ、最初にPBSバッファですすぎ、次にスポイトを使用して実験例1で合成したコロイド粒子を吸い上げ、カラム中に充填する。コロイド粒子が必要とする充填する高さ(70mm)まで沈むのを待ち、ふるい板でその表面を押してコロイドの充填を完了し、次にカラムを10mlのPBSバッファで溶離してカラムバランスを取る。
【0046】
(2)細胞外小胞の分離
【0047】
ヒト乳がん細胞の細胞株SKBr3の培養液サンプル100μlをカラム上部に注入し、液面がふるい板より下がるのを待ちサンプル注入が完了する。PBSバッファでサンプルを溶離して、前段、中段、後段の溶離溶液を収集し、そのうち中段には高純度の細胞外小胞が含まれ、1管あたり200μLを収集して、合計24管分を収集する。
【0048】
(3)サンプルの純度と回収率の分析
【0049】
ナノ粒子トラッキング解析(nanoparticle tracking analysis, NTA)を使用してサンプルの濃度と回収率を計算し、ELISA法を使用して、すべての粒子がCD9/CD9抗体活性を有することを確認し、そのうちCD9抗体はBioLegendから購入した。microBCAを使用して、そのタンパク質残留量を測定した。分析結果は図3と表1に示すとおりである。
【0050】
図3は、本発明によって提供されるコロイド粒子で分離した細胞外小胞のクロマトグラムである。図3および表1を同時に参照すると、細胞外小胞信号はELISAによってCD9/CD9の信号が測定され、タンパク質残留量はmicroBCAによって測定される。精製前のがん細胞培養液と比較し、ELISAで得られたCD9/CD9信号値を計算して回収率を算出し、またコロイド粒子すべてにCD9/CD9抗体活性があることを確認した。そのうち、収集した前段の溶離液fraction1-5はブランクサンプルであり、fraction6-9はELISA pair CD9/CD9の吸収光450nmの信号を有し、fraction10-20はmicroBCAの吸収光562nmのタンパク質信号を有する。また、表1に示すように、本発明によるコロイド粒子による細胞外小胞の分離回収率は約85%に達し、残留タンパク質は約0.072%である。
【表1】
【0051】
実験例3:グリア細胞と幹細胞培養液の細胞外小胞精製
(1)クロマトグラフカラムの充填
【0052】
直径8mm、長さ70mm、総体積約3.5mlのカラムの底部にふるい板を入れ、まずPBSバッファですすぎ、次にスポイトを使用して実験例1で合成したコロイド粒子を吸い上げ、カラムに充填する。コロイド粒子が必要とする充填高さ(70mm)に沈むのを待ち、ふるい板でその表面を押してコロイドの充填を完了し、次に10mlのPBSバッファで溶離してカラムのバランスを取る。
【0053】
(2)細胞外小胞の分離
【0054】
グリア細胞株HCN‐2と幹細胞株iPSC-derived Mesenchymal Stem Cells(MSC)の培養液100μlをそれぞれカラム上部に注入し、液面がふるい板より下がるのを待ち、サンプル注入が完了する。PBSバッファでサンプルを溶離して、前段、中段、後段の溶離液を収集し、そのうち中段には高純度の細胞外小胞が含まれ、1管あたり200μLを収集して、合計24管分を収集する。
【0055】
(3)サンプル分析
【0056】
グリア細胞の細胞外小胞信号は一般に低いため、感度の高い抗体磁気ビーズを使用して回収を補助し、その回収率を確認する。使用する磁気ビーズの主成分は、酸化鉄と二酸化ケイ素であり、サイズは約180nmで、たとえば、CD63抗体はCD81抗体と併せて使用する(CD63/CD81)ことができるなど、異なる抗体を互いに組み合わせることができ、磁気ビーズと接合させて抗体磁気ビーズ(MP-CD63/CD81)とすることができる。前述のCD63抗体はBDPharmingenから購入し、CD81抗体はBioVisionから購入した。異なる抗体磁気ビーズをペアリングおよびスクリーニングした後、同様に精製前の細胞培養培液と比較し、それぞれ信号が最も強いMP‐CD63/CD81(実施例1:グリア細胞)およびMP‐CD81/CD81(実施例2:幹細胞)の信号値を選び出し、その後それぞれ回収率を計算し、かつすべての粒子が抗体活性を有することを確認した。同時に、microBCAを使用してそのタンパク質残留量を測定した。分析結果を表2に示す。
【0057】
表2に、実施例1と実施例2の細胞外小胞回収率、および残留タンパク質の割合を示す。表2に示すとおり、本発明のコロイド粒子を使用して細胞外小胞を分離すると、回収率を顕著に向上させると同時に、タンパク質残留量を1%未満に維持することができる。
【表2】
【0058】
実験例4:小体積サンプルと大体積サンプルのいずれにも適用
実施例3の実験操作条件および手順は、基本的に上記表2の実施例2と同じであり、違いは、サンプル分析において抗体磁気ビーズ法を使用していないことにあり、ELISAで検出されたCD9/CD9信号値を精製前の細胞培養培液と比較し、かつ細胞外小胞の回収率を推定し、同時にいずれのコロイド粒子もCD9/CD9抗体活性を有することを確認した。
【0059】
実施例4の実験操作の詳細は以下の通りである。
【0060】
(1)クロマトグラフカラムの充填
【0061】
直径30mm、長さ130mm、総体積約92mlのカラム底部にふるい板を入れ、最初にPBSバッファですすぎ、スポイトを使用して例1で合成したコロイド粒子を吸い上げ、カラムに充填し、コロイド粒子が必要とする充填高さ(130mm)まで沈むのを待ち、ふるい板でその表面を押してコロイドの充填を完了し、次に270mLのPBSバッファで溶離してカラムバランスを取る。
【0062】
(2)細胞外小胞の分離
【0063】
幹細胞株iPSC-derived Mesenchymal Stem Cells(MSC)の培養液サンプル10mlをカラム上部に注入し、液面がふるい板より下がるのを待ち、サンプル注入が完了する。PBSバッファでサンプルを溶離し、前段、中段、後段の溶離溶液を収集し、そのうち中段には高純度の細胞外小胞が含まれ、1管あたり200μLを収集して、合計24管分を収集する。
【0064】
(3)サンプル分析
【0065】
精製前の細胞培養液とELISAにより検出されたCD9/CD9信号値を比較し、細胞外小胞の回収率を計算し、いずれのコロイド粒子もCD9/CD9抗体活性を有することを確認し、そのうちCD9抗体はBioLegendから購入した。microBCAによってタンパク質残留量を測定した。分析結果は表3に示すとおりである。
【0066】
表3に、実施例3と実施例4の細胞外小胞回収率と残留タンパク質の割合を示す。表3から、本発明コロイド粒子を用いた細胞外小胞の分離は、サンプルが小体積であるか大体積であるかに関わらず、回収率はいずれも60%を超え、大体積サンプルに至っては回収率が90%を超え、かつ同時に1%未満のタンパク質残留量を維持することができることが分かる。
【表3】
【0067】
実験例5:血漿サンプルの細胞外小胞精製
(1)クロマトグラフカラムの充填
【0068】
クロマトグラフカラムの充填:直径8mm、長さ70mm、総体積約3.5mlのカラム底部にふるい板を入れ、最初にPBSバッファですすぎ、次にスポイトを使用して実験例1で合成したコロイド粒子(実施例5)、あるいは表面修飾されていないコロイド粒子(比較例1)を吸い上げ、カラムに充填する。コロイド粒子が必要とする充填高さ(70mm)に沈むのを待ち、ふるい板でその表面を押してコロイドの充填を完了し、次に10mlのPBSバッファで溶離してカラムのバランスを取る。
【0069】
(2)細胞外小胞の分離
【0070】
血漿サンプル100μlをカラム上部に注入し、液面がふるい板より下がるのを待ち、サンプル注入が完了する。PBSバッファでサンプルを溶離して、前段、中段、後段の溶離溶液を収集し、そのうち中段には高純度の細胞外小胞が含まれ、1管あたり200μLを収集して、合計24管分を収集する。
【0071】
(3)サンプル分析
【0072】
抗体磁性ビーズ法(MP‐CD9/CD9)により収集した細胞外小胞がいずれも抗体活性を有することを確認し、抗体磁性ビーズの調製方法は上記と同じであるので、繰り返しの説明は行わない。同時に、microBCAを使用してそのタンパク質の残留量を測定した。分析結果は表4に示すとおりである。
【0073】
留意すべきは、サンプルソースが異なれば、備わるバイオマーカーも異なるので、サンプル分離の前に複数のマッチングのふるい分けを行い、より高いパフォーマンスのペアを選択する必要がある。一般的に言えば、癌細胞のCD9/CD9の発現量はより高く、幹細胞はCD81シリーズでの発現がより多くなる。血漿に関しては、タンパク質不純物が高いと、相対して細胞外小胞の信号は低くなるため、検出感度を高めるために抗体磁性ビーズ法を選択する。ただし、抗体磁性ビーズ法は血漿サンプルに限定されず、他に由来するサンプルも同様に適用可能である。
【0074】
表4に、実施例5と比較例1の細胞外小胞回収率と残留タンパク質の割合を示す。表5より、表面修飾されていないコロイド粒子を使用した比較例1と比較して、本発明が提供する表面修飾された生体適合性分子を有するコロイド粒子を用いた実施例5は顕著に高い回収率を有し、かつ回収程度は表面修飾されていないもののほぼ2倍以上であり、同時にタンパク質の残留量も低いことが分かる。
【表4】
【0075】
まとめると、本発明はコロイド粒子の調製方法を提供し、調製されるコロイド粒子は細胞外小胞を分離するために使用することができ、それは2wt%から6wt%のアガロースを含み、粒径サイズが25μmから500μmで、表面は生体適合性分子で修飾されており、本発明のコロイド粒子をカラムに充填し、細胞外小胞を分離して、高回収率かつ高純度の細胞外小胞を短時間で得ることができ、高回収率、時間節約、高純度を同時に実現することができる。さらに、このコロイド粒子はオープンカラム、遠心分離カラム、フラッシュカラムなど広い範囲に応用でき、20分以内に50%以上の回収率が得られ、細胞外小胞の回収率が90%を超えることも可能であり、また99%以上のタンパク質を除去してタンパク質残留量を1%未満とすることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明は化学合成コロイド粒子を使用して分離カラムに充填し、細胞外小胞を分離し、高回収率、時間節約、高純度を同時に兼ね備え、臨床医学に応用できる可能性を有し、臨床ステータス、治療反応性、疾患の進行などの監視に使用することができ、臨床薬物担体の開発にも極めて大きな潜在力を有している。
【符号の説明】
【0077】
S10、S12、S14、S16、S20、S22、S24、S26:ステップ

図1
図2
図3