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特許73576013-メチル-1-フェニル-2-ピラゾリン-5-オン原薬の分析方法、筋萎縮性側索硬化症の治療および筋萎縮性側索硬化症の進行抑制、ならびに、3-メチル-1-フェニル-2-ピラゾリン-5-オン原薬を含む薬剤の製造方法
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  • 特許-3-メチル-1-フェニル-2-ピラゾリン-5-オン原薬の分析方法、筋萎縮性側索硬化症の治療および筋萎縮性側索硬化症の進行抑制、ならびに、3-メチル-1-フェニル-2-ピラゾリン-5-オン原薬を含む薬剤の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-28
(45)【発行日】2023-10-06
(54)【発明の名称】3-メチル-1-フェニル-2-ピラゾリン-5-オン原薬の分析方法、筋萎縮性側索硬化症の治療および筋萎縮性側索硬化症の進行抑制、ならびに、3-メチル-1-フェニル-2-ピラゾリン-5-オン原薬を含む薬剤の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/15 20060101AFI20230929BHJP
   A61K 31/4152 20060101ALI20230929BHJP
   A61P 21/02 20060101ALI20230929BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20230929BHJP
【FI】
G01N33/15 Z
A61K31/4152
A61P21/02
A61P25/28
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020503541
(86)(22)【出願日】2019-02-27
(86)【国際出願番号】 JP2019007415
(87)【国際公開番号】W WO2019167974
(87)【国際公開日】2019-09-06
【審査請求日】2022-02-25
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2018/007544
(32)【優先日】2018-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002956
【氏名又は名称】田辺三菱製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100103230
【弁理士】
【氏名又は名称】高山 裕貢
(72)【発明者】
【氏名】若杉 剛
(72)【発明者】
【氏名】佐野 彩
【審査官】西浦 昌哉
(56)【参考文献】
【文献】特公平05-031523(JP,B2)
【文献】国際公開第02/034264(WO,A1)
【文献】特開2008-001607(JP,A)
【文献】特開2010-077104(JP,A)
【文献】特開2008-001606(JP,A)
【文献】特開昭63-132833(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102841170(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/15
G01N 33/48-33/98
A61K 31/33-33/44
A61P 1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
3-メチル-1-フェニル-2-ピラゾリン-5-オン原薬中のフェニルヒドラジン含有量を分析する方法において、以下を含む方法:
フェニルヒドラジンまたはその塩、第1酸性水および第1水溶性有機溶媒を含み、0.01μg/mLから10μg/mLのフェニルヒドラジン濃度を示すフェニルヒドラジン標準溶液のフェニルヒドラジン含有量を測定して第1測定値を得ること、
3-メチル-1-フェニル-2-ピラゾリン-5-オン原薬、第2酸性水および第2水溶性有機溶媒を含む3-メチル-1-フェニル-2-ピラゾリン-5-オン試料溶液のフェニルヒドラジン含有量を測定して第2測定値を得ること、ならびに
前記第1測定値および前記第2測定値から前記3-メチル-1-フェニル-2-ピラゾリン-5-オン原薬中のフェニルヒドラジン含有量を検出すること、
ここに、前記第1酸性水は、0.1mol/Lから1mol/Lの酸を含み、前記第1水溶性有機溶媒は、アセトニトリルであり、
前記第2酸性水は、0.1mol/Lから1mol/Lの酸を含み、前記第2水溶性有機溶媒は、アセトニトリルであり、ならびに、
前記第1酸性水と前記第1水溶性有機溶媒の体積比は、6:4から7:3の範囲であり、前記第2酸性水と前記第2水溶性有機溶媒の体積比は、6:4から7:3の範囲である。
【請求項2】
前記第1酸性水が0.1mol/Lの塩酸を含み、前記第2酸性水が0.1mol/Lの塩酸を含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記第1酸性水と前記第1水溶性有機溶媒の体積比が7:3であり、前記第2酸性水と前記第2水溶性有機溶媒の体積比が7:3である、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
3-メチル-1-フェニル-2-ピラゾリン-5-オン原薬中のフェニルヒドラジン含有量を分析する方法において、以下を含む方法:
フェニルヒドラジンまたはその塩、第1酸性水および第1水溶性有機溶媒を含み、0.01μg/mLから10μg/mLのフェニルヒドラジン濃度を示すフェニルヒドラジン標準溶液のフェニルヒドラジン含有量を測定して第1測定値を得ること、
3-メチル-1-フェニル-2-ピラゾリン-5-オン原薬、第2酸性水および第2水溶性有機溶媒を含む3-メチル-1-フェニル-2-ピラゾリン-5-オン試料溶液のフェニルヒドラジン含有量を測定して第2測定値を得ること、ならびに
前記第1測定値および前記第2測定値から前記3-メチル-1-フェニル-2-ピラゾリン-5-オン原薬中のフェニルヒドラジン含有量を検出すること、
ここに、前記第1酸性水は、0.1mol/Lから1mol/Lの塩酸を含み、前記第1水溶性有機溶媒は、メタノールであり、
前記第2酸性水は、0.1mol/Lから1mol/Lの塩酸を含み、前記第2水溶性有機溶媒は、メタノールであり、
前記第1酸性水と前記第1水溶性有機溶媒の体積比は、5:5であり、前記第2酸性水と前記第2水溶性有機溶媒の体積比は、5:5である。
【請求項5】
前記第1酸性水が0.1mol/Lの塩酸を含み、前記第2酸性水が0.1mol/Lの塩酸を含む、請求項4記載の方法。
【請求項6】
更に以下を含む請求項1から5までのいずれか記載の方法:
前記フェニルヒドラジンまたはその塩、前記第1酸性水および前記第1水溶性有機溶媒を含む前記フェニルヒドラジン標準溶液を調製すること、ならびに
前記3-メチル-1-フェニル-2-ピラゾリン-5-オン原薬、前記第2酸性水および前記第2水溶性有機溶媒を含む前記3-メチル-1-フェニル-2-ピラゾリン-5-オン試料溶液を調製すること。
【請求項7】
前記第1測定値が、高速液体クロマトグラフィーを用いて前記フェニルヒドラジン標準溶液の前記フェニルヒドラジン含有量を測定した値であり、前記第2測定値が、高速液体クロマトグラフィーを用いて前記3-メチル-1-フェニル-2-ピラゾリン-5-オン試料溶液の前記フェニルヒドラジン含有量を測定した値である、請求項1から6までのいずれか記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3-メチル-1-フェニル-2-ピラゾリン-5-オン原薬の分析方法、筋萎縮性側索硬化症(以下、ALSと記すこともある)の治療および進行抑制、ならびに、3-メチル-1-フェニル-2-ピラゾリン-5-オン原薬を含む薬剤の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
運動ニューロン疾患の一つであるALSは、手の脱力、手指の運動障害および上肢の線維束攣縮などの初期症状から、筋萎縮・筋力低下、球麻痺や筋肉の線維束攣縮を経由し、呼吸不全に至る難病である。ALSは、発症部位により上肢型、球型、下肢型および混合型に分けられ、いずれの型でも症状の進行とともに全身の筋群が侵される。ALSの治療および病勢進行の抑制に効果がある医薬品としては、3-メチル-1-フェニル-2-ピラゾリン-5-オン原薬を含む薬剤が日本や米国などで承認され、臨床において使用されている(一般名「エダラボン」、商品名「ラジカット(登録商標)」、「Radicava(登録商標)」:田辺三菱製薬株式会社製造・販売など)。
【0003】
薬剤に含まれる可能性のある不純物の1つとしてフェニルヒドラジンが挙げられる。3-メチル-1-フェニル-2-ピラゾリン-5-オン中のフェニルヒドラジンを分析する方法としては、リン酸でpHを2.0に調整したリン酸二水素アンモニウム溶液-メタノールを溶解液として調製し、この溶解液を、リン酸でpH3.5に調整したリン酸二水素アンモニウム溶液-メタノールを移動相としてHPLCを用いて分析する方法が報告されている(非特許文献1)。この開示内容は、ここに参照することにより本明細書に組み込まれるものとする。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】Central South Pharmacy, August 2014,Vol.12 No.8, 814-816.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、3-メチル-1-フェニル-2-ピラゾリン-5-オン原薬中に含まれるフェニルヒドラジンを、正確かつ簡便に測定する分析方法を提供することを課題とする。
また、本発明は、フェニルヒドラジンの含有量が厳密にコントロールされた3-メチル-1-フェニル-2-ピラゾリン-5-オン原薬を含む薬剤を用いて、筋萎縮性側索硬化症の治療および筋萎縮性側索硬化症の進行抑制を行う方法を提供することを課題とする。
さらに、本発明は、フェニルヒドラジンの含有量が厳密にコントロールされた3-メチル-1-フェニル-2-ピラゾリン-5-オン原薬を含む薬剤の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る3-メチル-1-フェニル-2-ピラゾリン-5-オン原薬中のフェニルヒドラジン含有量を分析する方法は、フェニルヒドラジンまたはその塩、第1酸性水および第1水溶性有機溶媒を含み、0.01μg/mLから10μg/mLのフェニルヒドラジン濃度を示すフェニルヒドラジン標準溶液のフェニルヒドラジン含有量を測定して第1測定値を得ること、3-メチル-1-フェニル-2-ピラゾリン-5-オン原薬、第2酸性水および第2水溶性有機溶媒を含む3-メチル-1-フェニル-2-ピラゾリン-5-オン試料溶液のフェニルヒドラジン含有量を測定して第2測定値を得ること、前記第1測定値および前記第2測定値から前記3-メチル-1-フェニル-2-ピラゾリン-5-オン原薬中のフェニルヒドラジン含有量を検出することを含み、ここに、前記第1酸性水は、塩酸、酢酸水溶液、トリフルオロ酢酸水溶液、ギ酸水溶液、リン酸水溶液および過塩素酸水溶液からなる群より選択される少なくとも一種の酸性水であり、前記第1水溶性有機溶媒は、アセトニトリルおよびメタノールからなる群より選択される少なくとも一種の水溶性有機溶媒であり、前記第1水溶性有機溶媒がメタノールの場合、前記第1酸性水は、塩酸、酢酸水溶液、トリフルオロ酢酸水溶液、ギ酸水溶液および過塩素酸水溶液からなる群より選択される少なくとも一種の酸性水であり、ならびに、前記第2酸性水は、塩酸、酢酸水溶液、トリフルオロ酢酸水溶液、ギ酸水溶液、リン酸水溶液および過塩素酸水溶液からなる群より選択される少なくとも一種の酸性水であり、前記第2水溶性有機溶媒は、アセトニトリルおよびメタノールからなる群より選択される少なくとも一種の水溶性有機溶媒であり、前記第2水溶性有機溶媒がメタノールの場合、前記第2酸性水は、塩酸、酢酸水溶液、トリフルオロ酢酸水溶液、ギ酸水溶液および過塩素酸水溶液からなる群より選択される少なくとも一種の酸性水である。
【0007】
本発明の他の一態様に係る筋萎縮性側索硬化症を治療する方法は、フェニルヒドラジンまたはその塩、第1酸性水および第1水溶性有機溶媒を含み、0.01μg/mLから10μg/mLのフェニルヒドラジン濃度を示すフェニルヒドラジン標準溶液のフェニルヒドラジン含有量を測定して第1測定値を得ること、3-メチル-1-フェニル-2-ピラゾリン-5-オン原薬、第2酸性水および第2水溶性有機溶媒を含む3-メチル-1-フェニル-2-ピラゾリン-5-オン試料溶液のフェニルヒドラジン含有量を測定して第2測定値を得ること、前記第1測定値および前記第2測定値から前記3-メチル-1-フェニル-2-ピラゾリン-5-オン原薬中のフェニルヒドラジン含有量を検出してフェニルヒドラジン量が20ppm以下であることを決定すること、前記3-メチル-1-フェニル-2-ピラゾリン-5-オン原薬を含む薬剤を必要とする患者に投与することを含み、ここに、前記第1酸性水は、塩酸、酢酸水溶液、トリフルオロ酢酸水溶液、ギ酸水溶液、リン酸水溶液および過塩素酸水溶液からなる群より選択される少なくとも一種の酸性水であり、前記第1水溶性有機溶媒は、アセトニトリルおよびメタノールからなる群より選択される少なくとも一種の水溶性有機溶媒であり、前記第1水溶性有機溶媒がメタノールの場合、前記第1酸性水は、塩酸、酢酸水溶液、トリフルオロ酢酸水溶液、ギ酸水溶液および過塩素酸水溶液からなる群より選択される少なくとも一種の酸性水であり、ならびに、前記第2酸性水は、塩酸、酢酸水溶液、トリフルオロ酢酸水溶液、ギ酸水溶液、リン酸水溶液および過塩素酸水溶液からなる群より選択される少なくとも一種の酸性水であり、前記第2水溶性有機溶媒は、アセトニトリルおよびメタノールからなる群より選択される少なくとも一種の水溶性有機溶媒であり、前記第2水溶性有機溶媒がメタノールの場合、前記第2酸性水は、塩酸、酢酸水溶液、トリフルオロ酢酸水溶液、ギ酸水溶液および過塩素酸水溶液からなる群より選択される少なくとも一種の酸性水である。
【0008】
本発明のさらに他の一態様に係る筋萎縮性側索硬化症の進行を抑制する方法は、フェニルヒドラジンまたはその塩、第1酸性水および第1水溶性有機溶媒を含み、0.01μg/mLから10 μg/mLのフェニルヒドラジン濃度を示すフェニルヒドラジン標準溶液のフェニルヒドラジン含有量を測定して第1測定値を得ること、3-メチル-1-フェニル-2-ピラゾリン-5-オン原薬、第2酸性水および第2水溶性有機溶媒を含む3-メチル-1-フェニル-2-ピラゾリン-5-オン試料溶液のフェニルヒドラジン含有量を測定して第2測定値を得ること、前記第1測定値および前記第2測定値から前記3-メチル-1-フェニル-2-ピラゾリン-5-オン原薬中のフェニルヒドラジン含有量を検出してフェニルヒドラジン量が20ppm以下であることを決定すること、前記3-メチル-1-フェニル-2-ピラゾリン-5-オン原薬を含む薬剤を必要とする患者に投与することを含み、ここに、前記第1酸性水は、塩酸、酢酸水溶液、トリフルオロ酢酸水溶液、ギ酸水溶液、リン酸水溶液および過塩素酸水溶液からなる群より選択される少なくとも一種の酸性水であり、前記第1水溶性有機溶媒は、アセトニトリルおよびメタノールからなる群より選択される少なくとも一種の水溶性有機溶媒であり、前記第1水溶性有機溶媒がメタノールの場合、前記第1酸性水は、塩酸、酢酸水溶液、トリフルオロ酢酸水溶液、ギ酸水溶液および過塩素酸水溶液からなる群より選択される少なくとも一種の酸性水であり、ならびに、前記第2酸性水は、塩酸、酢酸水溶液、トリフルオロ酢酸水溶液、ギ酸水溶液、リン酸水溶液および過塩素酸水溶液からなる群より選択される少なくとも一種の酸性水であり、前記第2水溶性有機溶媒は、アセトニトリルおよびメタノールからなる群より選択される少なくとも一種の水溶性有機溶媒であり、前記第2水溶性有機溶媒がメタノールの場合、前記第2酸性水は、塩酸、酢酸水溶液、トリフルオロ酢酸水溶液、ギ酸水溶液および過塩素酸水溶液からなる群より選択される少なくとも一種の酸性水である。
【0009】
本発明のさらに他の一態様におけるフェニルヒドラジンの含有量が20ppm以下である3-メチル-1-フェニル-2-ピラゾリン-5-オン原薬を含む薬剤の製造方法は、フェニルヒドラジンまたはその塩、第1酸性水および第1水溶性有機溶媒を含み、0.01μg/mLから10μg/mLのフェニルヒドラジン濃度を示すフェニルヒドラジン標準溶液のフェニルヒドラジン含有量を測定して第1測定値を得ること、3-メチル-1-フェニル-2-ピラゾリン-5-オン原薬、第2酸性水および第2水溶性有機溶媒を含む3-メチル-1-フェニル-2-ピラゾリン-5-オン試料溶液のフェニルヒドラジン含有量を測定して第2測定値を得ること、前記第1測定値および前記第2測定値から前記3-メチル-1-フェニル-2-ピラゾリン-5-オン原薬中のフェニルヒドラジン含有量を検出してフェニルヒドラジン量が20ppm以下であることを決定すること、前記3-メチル-1-フェニル-2-ピラゾリン-5-オン原薬と少なくとも1つの薬理学的および製剤学的に許容される添加物を混合することを含み、ここに、前記第1酸性水は、塩酸、酢酸水溶液、トリフルオロ酢酸水溶液、ギ酸水溶液、リン酸水溶液および過塩素酸水溶液からなる群より選択される少なくとも一種の酸性水であり、前記第1水溶性有機溶媒は、アセトニトリルおよびメタノールからなる群より選択される少なくとも一種の水溶性有機溶媒であり、前記第1水溶性有機溶媒がメタノールの場合、前記第1酸性水は、塩酸、酢酸水溶液、トリフルオロ酢酸水溶液、ギ酸水溶液および過塩素酸水溶液からなる群より選択される少なくとも一種の酸性水であり、ならびに、前記第2酸性水は、塩酸、酢酸水溶液、トリフルオロ酢酸水溶液、ギ酸水溶液、リン酸水溶液および過塩素酸水溶液からなる群より選択される少なくとも一種の酸性水であり、前記第2水溶性有機溶媒は、アセトニトリルおよびメタノールからなる群より選択される少なくとも一種の水溶性有機溶媒であり、前記第2水溶性有機溶媒がメタノールの場合、前記第2酸性水は、塩酸、酢酸水溶液、トリフルオロ酢酸水溶液、ギ酸水溶液および過塩素酸水溶液からなる群より選択される少なくとも一種の酸性水である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、3-メチル-1-フェニル-2-ピラゾリン-5-オン原薬中に含まれるフェニルヒドラジンを、正確かつ簡便に測定する分析方法を提供することができる。
また、本発明によれば、フェニルヒドラジンの含有量が厳密にコントロールされた3-メチル-1-フェニル-2-ピラゾリン-5-オン原薬を含む薬剤を用いて、筋萎縮性側索硬化症の治療および筋萎縮性側索硬化症の進行抑制を行う方法を提供することができる。
さらに、本発明によれば、フェニルヒドラジンの含有量が厳密にコントロールされた3-メチル-1-フェニル-2-ピラゾリン-5-オン原薬を含む薬剤の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、0.1mol/L塩酸/アセトニトリル混液(6:4)にて調製したフェニルヒドラジン溶液をHPLCで測定したクロマトグラムである。
図2図2は、0.1mol/L塩酸/アセトニトリル混液(4:6)にて調製したフェニルヒドラジン溶液をHPLCで測定したクロマトグラムである。
図3図3は、0.1mol/L塩酸/アセトニトリル混液(2:8)にて調製したフェニルヒドラジン溶液をHPLCで測定したクロマトグラムである。
図4図4は、1mol/L塩酸/アセトニトリル混液(6:4)にて調製したフェニルヒドラジン溶液をHPLCで測定したクロマトグラムである。
図5図5は、0.1mol/L塩酸/アセトニトリル混液(7:3)にて調製したフェニルヒドラジン溶液をHPLCで測定したクロマトグラムである。
図6図6は、0.1mol/L塩酸/アセトニトリル混液(7:3)にて調製した添加試料溶液中に含まれるフェニルヒドラジンの初期値に対するピーク面積の割合(%)の経時変化を示すグラフである。
図7図7は、0.1mol/L塩酸/メタノール混液(5:5)にて調製した添加試料溶液中に含まれるフェニルヒドラジンの初期値に対するピーク面積の割合(%)の経時変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して3-メチル-1-フェニル-2-ピラゾリン-5-オン原薬の分析方法、筋萎縮性側索硬化症(以下、ALSと記すこともある)を治療する方法、筋萎縮性側索硬化症の進行を抑制する方法、および3-メチル-1-フェニル-2-ピラゾリン-5-オン原薬を含む薬剤の製造方法の実施形態を詳細に説明する。
【0013】
本発明の3-メチル-1-フェニル-2-ピラゾリン-5-オン原薬中のフェニルヒドラジン含有量を分析する方法は、フェニルヒドラジンまたはその塩、第1酸性水および第1水溶性有機溶媒を含み、0.01μg/mLから10μg/mLのフェニルヒドラジン濃度を示すフェニルヒドラジン標準溶液のフェニルヒドラジン含有量を測定して第1測定値を得ること、3-メチル-1-フェニル-2-ピラゾリン-5-オン原薬、第2酸性水および第2水溶性有機溶媒を含む3-メチル-1-フェニル-2-ピラゾリン-5-オン試料溶液のフェニルヒドラジン含有量を測定して第2測定値を得ること、前記第1測定値および前記第2測定値から前記3-メチル-1-フェニル-2-ピラゾリン-5-オン原薬中のフェニルヒドラジン含有量を検出することを含む。
本発明の3-メチル-1-フェニル-2-ピラゾリン-5-オン原薬中のフェニルヒドラジン含有量を分析する方法は、必要に応じてさらに他の工程を含んでいてもよい。
【0014】
3-メチル-1-フェニル-2-ピラゾリン-5-オンは下記構造式で表すことができる。3-メチル-1-フェニル-2-ピラゾリン-5-オンは、下記構造式で示す互変異性体が存在する。
【0015】
【化1】
【0016】
3-メチル-1-フェニル-2-ピラゾリン-5-オン原薬中のフェニルヒドラジン含有量は、3-メチル-1-フェニル-2-ピラゾリン-5-オン原薬の試料溶液を1種類またはそれ以上の定量性のある分析技術により分析し、得られた試験結果を、実質的に純粋なフェニルヒドラジン標準溶液の試験結果と比較することで決定することができる。
【0017】
3-メチル-1-フェニル-2-ピラゾリン-5-オン原薬の試料溶液およびフェニルヒドラジン標準溶液は、3-メチル-1-フェニル-2-ピラゾリン-5-オン原薬およびフェニルヒドラジンまたはその塩が、それぞれ用いる溶媒に完全に溶解することが好ましい。このような溶解液を用いることによって、3-メチル-1-フェニル-2-ピラゾリン-5-オン原薬中に含まれるフェニルヒドラジンを、正確に測定することが可能になる。
3-メチル-1-フェニル-2-ピラゾリン-5-オン原薬およびフェニルヒドラジンまたはその塩が、完全に溶解しているか否かは、目視によって確認することができる。また、微量な溶解残渣を評価する場合は、フィルターろ過後、HPLCで測定することによって確認することができる。
【0018】
3-メチル-1-フェニル-2-ピラゾリン-5-オン原薬の試料溶液およびフェニルヒドラジン標準溶液は、それぞれの溶液を調製して一定時間経過した後に分析するまでに、3-メチル-1-フェニル-2-ピラゾリン-5-オンまたはその生理学的に許容される塩、および/または、フェニルヒドラジンが実質的に分解しないことが望ましい。なお、3-メチル-1-フェニル-2-ピラゾリン-5-オンまたはその生理学的に許容される塩の分解物の1つとしてフェニルヒドラジンが挙げられ、3-メチル-1-フェニル-2-ピラゾリン-5-オンまたはその生理学的に許容される塩の分解の程度は、溶液中のフェニルヒドラジン量の変化を測定することによって確認し得る。3-メチル-1-フェニル-2-ピラゾリン-5-オン原薬の試料溶液、および/または、フェニルヒドラジン標準溶液中のフェニルヒドラジン含有量は、後述するHPLCを用いた分析方法により測定できる。
【0019】
フェニルヒドラジンが実質的に分解しないこととしては、具体的には、フェニルヒドラジン標準溶液を調製して30分以内に測定したフェニルヒドラジンの測定値と、一定時間経過した後に測定した測定値が20%またはそれ以上変化しないことが好ましく、より好ましくは10%またはそれ以上変化しないことであり、さらに好ましくは5%またはそれ以上変化しないことである。
また、3-メチル-1-フェニル-2-ピラゾリン-5-オンまたはその生理学的に許容される塩が実質的に分解しないこととしては、具体的には、3-メチル-1-フェニル-2-ピラゾリン-5-オン原薬の試料溶液を調製して30分以内に測定したフェニルヒドラジンの測定値と、一定時間経過した後に測定したフェニルヒドラジンの測定値が3-メチル-1-フェニル-2-ピラゾリン-5-オンの量に対して4ppmまたはそれ以上変化しないことが好ましい。より好ましくは2ppmまたはそれ以上変化しないことであり、さらに好ましくは1ppmまたはそれ以上変化しないことである。
一定時間としては、特に制限されるものではない。好ましくは、2時間、3時間、4時間、5時間、9時間、10時間、12時間または24時間であり、より好ましくは、2時間、3時間、4時間、5時間、9時間、10時間または12時間であり、とりわけ好ましくは、2時間、3時間、4時間または5時間である。
【0020】
3-メチル-1-フェニル-2-ピラゾリン-5-オン原薬の試料溶液は、3-メチル-1-フェニル-2-ピラゾリン-5-オン原薬、酸性水、および水溶性有機溶媒を含む。
【0021】
酸性水は、塩酸、酢酸水溶液、トリフルオロ酢酸水溶液、ギ酸水溶液、リン酸水溶液および過塩素酸水溶液からなる群より選択される少なくとも一種の酸性水である。これらの酸性水は、単独で用いてもよく、または二種以上の酸性水を適当な比率で混合して用いてもよい。好ましくは、塩酸、酢酸水溶液、トリフルオロ酢酸水溶液およびギ酸水溶液からなる群より選択される少なくとも一種の酸性水であり、より好ましくは塩酸である。
【0022】
酸性水の酸の濃度は、0.01mol/Lから5mol/Lであることが好ましく、より好ましくは0.02mol/Lから1mol/Lであり、さらに好ましくは0.05mol/Lから0.2mol/Lであり、とりわけ好ましくは0.1mol/Lである。
【0023】
水溶性有機溶媒は、アセトニトリルおよびメタノールからなる群より選択される少なくとも一種である。これらの水溶性有機溶媒は、単独で用いてもよく、または適当な比率で混合して用いてもよい。好ましくは、アセトニトリルである。
【0024】
水溶性有機溶媒がメタノールの場合、酸性水は、塩酸、酢酸水溶液、トリフルオロ酢酸水溶液、ギ酸水溶液および過塩素酸水溶液からなる群より選択される少なくとも一種の酸性水である。
【0025】
酸性水と水溶性有機溶媒の比率は適宜変更することができる。体積比で、酸性水:水溶性有機溶媒を3:1から4:5とすることができ、好ましくは3:1から5:5とすることができ、より好ましくは3:1から6:4とすることができる。例えば、体積比で、酸性水:水溶性有機溶媒を、7:3、6:4、5:5とすることができる。酸性水と水溶性有機溶媒が、塩酸とアセトニトリルの場合、とりわけ好ましい体積比は7:3である。酸性水と水溶性有機溶媒が、塩酸とメタノールの場合、とりわけ好ましい体積比は5:5である。
【0026】
試料溶液は、3-メチル-1-フェニル-2-ピラゾリン-5-オン原薬、酸性水および水溶性有機溶媒を含むものであれば、試料溶液の調製方法は特に制限されるものではない。調製した酸性水を、3-メチル-1-フェニル-2-ピラゾリン-5-オン原薬および水溶性有機溶媒と混合して試料溶液を調製してもよく、水を3-メチル-1-フェニル-2-ピラゾリン-5-オン原薬および/または水溶性有機溶媒と混合した後に、対応する酸を添加して試料溶液を調製してもよい。
【0027】
フェニルヒドラジン標準溶液は、フェニルヒドラジンまたはその塩、酸性水、および水溶性有機溶媒を含む。
フェニルヒドラジン標準溶液は、さらに3-メチル-1-フェニル-2-ピラゾリン-5-オン原薬を含んでいてもよい。
【0028】
フェニルヒドラジンの塩としては、例えば、塩酸、硫酸、臭化水素酸、リン酸等の鉱酸との塩が挙げられる。フェニルヒドラジンまたはその塩としては、フェニルヒドラジンの塩が好ましい。フェニルヒドラジンの塩としては、フェニルヒドラジン塩酸塩が好ましい。
本発明における分析方法において、フェニルヒドラジン塩酸塩は、フェニルヒドラジンに比べ、保存中に分解し難いため、本発明の標準溶液に用いるフェニルヒドラジンまたはその塩としては、最も好ましい。
【0029】
フェニルヒドラジンまたはその塩は、実質的に純粋であることが望ましい。具体的には、少なくとも90%以上の純度が好ましく、より好ましくは、少なくとも95%以上、少なくとも98%以上であり、さらに好ましくは、少なくとも99%以上の純度である。なお、純度98%以上や純度99%以上のフェニルヒドラジン塩酸塩が市販されているので(例えば、フェニルヒドラジン塩酸塩、 99%; Alfa Aesar;コード:A14645)、市販品を用いてもよい。
【0030】
酸性水は、塩酸、酢酸水溶液、トリフルオロ酢酸水溶液、ギ酸水溶液、リン酸水溶液および過塩素酸水溶液からなる群より選択される少なくとも一種の酸性水である。これらの酸性水は、単独で用いてもよく、または二種以上の酸性水を適当な比率で混合して用いてもよい。好ましくは、塩酸、酢酸水溶液、トリフルオロ酢酸水溶液およびギ酸水溶液からなる群より選択される少なくとも一種の酸性水であり、より好ましくは塩酸である。
【0031】
酸性水の酸の濃度は、0.01mol/Lから5mol/Lであることが好ましく、より好ましくは0.02mol/Lから1mol/Lであり、さらに好ましくは0.05mol/Lから0.2mol/Lであり、とりわけ好ましくは0.1mol/Lである。
【0032】
水溶性有機溶媒は、アセトニトリルおよびメタノールからなる群より選択される少なくとも一種である。これらの水溶性有機溶媒は、単独で用いてもよく、または適当な比率で混合して用いてもよい。好ましくは、アセトニトリルである。
【0033】
水溶性有機溶媒がメタノールの場合、酸性水は、塩酸、酢酸水溶液、トリフルオロ酢酸水溶液、ギ酸水溶液および過塩素酸水溶液からなる群より選択される少なくとも一種の酸性水である。フェニルヒドラジン標準溶液中のフェニルヒドラジン濃度は、分析する3-メチル-1-フェニル-2-ピラゾリン-5-オン原薬中のフェニルヒドラジン濃度に応じて適宜調整することができる。
例えば、フェニルヒドラジン標準溶液中のフェニルヒドラジンの濃度(フェニルヒドラジン遊離体の場合にはフェニルヒドラジンの濃度、フェニルヒドラジンの塩の場合にはフェニルヒドラジン相当の濃度)を0.01μg/mLから10μg/mLとすることができ、好ましくは0.05μg/mLから2μg/mLであり、とりわけ好ましくは0.1μg/mLから1μg/mLである。
または、フェニルヒドラジン標準溶液のフェニルヒドラジンの濃度は、3-メチル-1-フェニル-2-ピラゾリン-5-オン原薬の試料溶液の希釈率で1ppm相当から200ppm相当の濃度とすることができる。ppm相当の濃度とは、3-メチル-1-フェニル-2-ピラゾリン-5-オン原薬の試料溶液の希釈率に対応する濃度である。例えば、3-メチル-1-フェニル-2-ピラゾリン-5-オン0.10gを酸性水および水溶性有機溶媒と混合して10mLとすると、1ppm相当の濃度は、0.01μg/mLである。好ましくは5ppm相当から100ppm相当の濃度であり、より好ましくは10ppm相当から50ppm相当の濃度である。
【0034】
本発明の一実施態様では、0.01μg/mLから10μg/mLのフェニルヒドラジン濃度を示すフェニルヒドラジン標準溶液のフェニルヒドラジン含有量を測定して第1測定値を得る。この第1測定値の数は、3-メチル-1-フェニル-2-ピラゾリン-5-オン試料溶液のフェニルヒドラジン含有量を測定して得られる第2測定値との対比ができれば特に限定されるものではなく、1つまたは複数とすることができる。
【0035】
酸性水と水溶性有機溶媒の比率は適宜変更することができる。体積比で、酸性水:水溶性有機溶媒を3:1から4:5とすることができ、好ましくは3:1から5:5とすることができ、より好ましくは3:1から6:4とすることができる。例えば、体積比で、酸性水:水溶性有機溶媒を、7:3、6:4、5:5とすることができる。とりわけ好ましくは7:3である。酸性水と水溶性有機溶媒が、塩酸とアセトニトリルの場合、とりわけ好ましい体積比は7:3である。酸性水と水溶性有機溶媒が、塩酸とメタノールの場合、とりわけ好ましい体積比は5:5である。
【0036】
フェニルヒドラジン標準溶液は、フェニルヒドラジンまたはその塩、酸性水、および水溶性有機溶媒を含むものであれば、フェニルヒドラジン標準溶液の調製方法は特に制限されるものではない。調製した酸性水を、フェニルヒドラジンまたはその塩、および水溶性有機溶媒と混合してフェニルヒドラジン標準溶液を調製してもよく、水をフェニルヒドラジンもしくはその塩、および/または水溶性有機溶媒と混合した後に、対応する酸を添加してフェニルヒドラジン標準溶液を調製してもよい。
【0037】
3-メチル-1-フェニル-2-ピラゾリン-5-オン原薬の試料溶液における酸性水は、フェニルヒドラジン標準溶液における酸性水と同じであることが好ましい。3-メチル-1-フェニル-2-ピラゾリン-5-オン原薬の試料溶液における水溶性有機溶媒は、フェニルヒドラジン標準溶液における水溶性有機溶媒と同じであることが好ましい。3-メチル-1-フェニル-2-ピラゾリン-5-オン原薬の試料溶液における酸性水と水溶性有機溶媒の体積比と、フェニルヒドラジン標準溶液における酸性水と水溶性有機溶媒の体積比とは、同じ比率であることが好ましい。
より好ましくは、3-メチル-1-フェニル-2-ピラゾリン-5-オン原薬の試料溶液における酸性水、水溶性有機溶媒、および酸性水と水溶性有機溶媒の体積比は、それぞれフェニルヒドラジン標準溶液における酸性水、水溶性有機溶媒、および酸性水と水溶性有機溶媒の体積比と同じである。
【0038】
定量性のある分析技術には、高速液体クロマトグラフィー(HPLC,High Performance Liquid Chromatography)が含まれる。高速液体クロマトグラフィーには、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、超高速液体クロマトグラフィー(UHPLC,Ultra-High Performance Liquid Chromatography)が含まれる。高速液体クロマトグラフィーを用いる場合、フェニルヒドラジンピークの理論段数は大きいほど好ましく、例えば、半値幅法により求める理論段数Nが1000段以上、より好ましくは3000段以上とすることができる。
【0039】
式1
理論段数: N = 5.54×(tr/W0.5
tr: 保持時間
0.5: ピーク半分高さの幅
【0040】
シンメトリー係数Sは、クロマトグラム上のピークの対称性の度合いを表す指標であり、シンメトリー係数Sが1に近いほど、ピークが左右対称(正規分布)であることを示す。シンメトリー係数Sは1に近いほど真度・精度・定量限界等の分析法としての性能が高くなるため好ましく、例えば2.0以下、より好ましくは1.5以下とすることができる。
【0041】
式2
シンメトリー係数: S = W0.05h/2f
0.05h: ピークのベースラインからピークの高さの1/20の高さにおけるピーク幅
2f: W0.05hのピーク幅をピーク頂点から横軸へおろした垂線で2分したピーク立ち上がり側の距離
【0042】
3-メチル-1-フェニル-2-ピラゾリン-5-オンまたはその生理学的に許容される塩における生理学的に許容される塩の例としては、塩酸、硫酸、臭化水素酸、リン酸等の鉱酸との塩;メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、酢酸、シュウ酸、クエン酸、リンゴ酸、フマル酸等の有機酸との塩;ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属との塩;マグネシウム等のアルカリ土類金属との塩;アンモニア、エタノールアミン、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール等のアミンとの塩が挙げられる。また、生理学的に許容される塩には、水和物および溶媒和物が含まれる。
【0043】
3-メチル-1-フェニル-2-ピラゾリン-5-オン原薬は、有効成分である3-メチル-1-フェニル-2-ピラゾリン-5-オンまたはその生理学的に許容される塩を意味する。3-メチル-1-フェニル-2-ピラゾリン-5-オン原薬に含まれ得る不純物の1つとしてフェニルヒドラジンが挙げられる。欧州特許公開公報第208874号公報(または特公平5-31523号公報)に記載されている製造方法では、フェニルヒドラジンは3-メチル-1-フェニル-2-ピラゾリン-5-オンを合成するための前駆体として用いられている。
【0044】
3-メチル-1-フェニル-2-ピラゾリン-5-オン原薬を含む溶液製剤の保存期間中にフェニルヒドラジンが増加し得る。フェニルヒドラジンは変異原性を有する化合物であり、各国において産業衛生上の暴露許容量が設定されている。米国がフェニルヒドラジンの暴露許容濃度を最も厳しく設定しており、その値は2,860μg/kg/年である。フェニルヒドラジンは、光や酸素によって分解しやすい。
【0045】
3-メチル-1-フェニル-2-ピラゾリン-5-オン原薬中に含まれる不純物のフェニルヒドラジンの量は少ないほど好ましい。例えば、20ppm以下であることが好ましく、10ppm以下であることがより好ましい。
ALSの治療または進行抑制の目的で、3-メチル-1-フェニル-2-ピラゾリン-5-オンを使用するときには、本薬剤の投与開始後、生涯、本薬剤による薬物治療を継続することが好ましい。そのため、フェニルヒドラジンの量は厳密に管理されることが好ましい。
【0046】
本発明の一実施形態は、フェニルヒドラジンの含有量が20ppm以下である3-メチル-1-フェニル-2-ピラゾリン-5-オン原薬の製造方法において、以下を含む製造方法である:
フェニルヒドラジンまたはその塩、第1酸性水および第1水溶性有機溶媒を含み、0.01μg/mLから10μg/mLのフェニルヒドラジン濃度を示すフェニルヒドラジン標準溶液のフェニルヒドラジン含有量を測定して第1測定値を得ること、
3-メチル-1-フェニル-2-ピラゾリン-5-オン原薬、第2酸性水および第2水溶性有機溶媒を含む3-メチル-1-フェニル-2-ピラゾリン-5-オン試料溶液のフェニルヒドラジン含有量を測定して第2測定値を得ること、および
前記第1測定値および前記第2測定値から前記3-メチル-1-フェニル-2-ピラゾリン-5-オン原薬中のフェニルヒドラジン含有量を検出してフェニルヒドラジン量が20ppm以下であることを決定すること、
ここに、前記第1酸性水は、塩酸、酢酸水溶液、トリフルオロ酢酸水溶液、ギ酸水溶液、リン酸水溶液および過塩素酸水溶液からなる群より選択される少なくとも一種の酸性水であり、前記第1水溶性有機溶媒は、アセトニトリルおよびメタノールからなる群より選択される少なくとも一種の水溶性有機溶媒であり、前記第1水溶性有機溶媒がメタノールの場合、前記第1酸性水は、塩酸、酢酸水溶液、トリフルオロ酢酸水溶液、ギ酸水溶液および過塩素酸水溶液からなる群より選択される少なくとも一種の酸性水であり、ならびに、
前記第2酸性水は、塩酸、酢酸水溶液、トリフルオロ酢酸水溶液、ギ酸水溶液、リン酸水溶液および過塩素酸水溶液からなる群より選択される少なくとも一種の酸性水であり、前記第2水溶性有機溶媒は、アセトニトリルおよびメタノールからなる群より選択される少なくとも一種の水溶性有機溶媒であり、前記第2水溶性有機溶媒がメタノールの場合、前記第2酸性水は、塩酸、酢酸水溶液、トリフルオロ酢酸水溶液、ギ酸水溶液および過塩素酸水溶液からなる群より選択される少なくとも一種の酸性水である。
【0047】
本発明の一実施形態の薬剤は、本発明の製造方法によって製造された、3-メチル-1-フェニル-2-ピラゾリン-5-オン原薬中のフェニルヒドラジン含有量が20ppm以下である前記原薬を含有する、筋萎縮性側索硬化症を治療または進行抑制するための薬剤である。
【0048】
本発明のさらなる一実施形態の薬剤は、3-メチル-1-フェニル-2-ピラゾリン-5-オン原薬中のフェニルヒドラジン量を分析して、フェニルヒドラジン量が20ppm以下であることを決定した筋萎縮性側索硬化症の治療または病勢進行抑制の3-メチル-1-フェニル-2-ピラゾリン-5-オン原薬を含む薬剤である。
さらに、3-メチル-1-フェニル-2-ピラゾリン-5-オン原薬と薬理学的および製剤学的に許容される添加物を含むことができ、3-メチル-1-フェニル-2-ピラゾリン-5-オン原薬以外の原薬を1またはそれ以上含んでもよい。
本発明の一実施形態に係る薬理学的および製剤学的に許容される添加物を含む薬剤は、フェニルヒドラジンの含有量が20ppm以下である3-メチル-1-フェニル-2-ピラゾリン-5-オン原薬と薬理学的および製剤学的に許容される添加物を混合することを含む製造方法により生産してもよい。
【0049】
本発明の一実施形態に係る有効成分である3-メチル-1-フェニル-2-ピラゾリン-5-オンまたはその生理学的に許容される塩をそのまま患者に投与してもよいが、有効成分と薬理学的および製剤学的に許容される添加物を加え、上記薬剤として投与することが好ましい。
【0050】
薬理学的および製剤学的に許容される添加物としては、例えば、賦形剤、崩壊剤ないし崩壊補助剤、結合剤、滑沢剤、コーティング剤、色素、希釈剤、基剤、溶解剤ないし溶解補助剤、等張化剤、pH調節剤、安定化剤、噴射剤、および粘着剤等を用いてもよい。経口投与に適する薬剤の例としては、例えば、錠剤、カプセル剤、散剤、細粒剤、顆粒剤、液剤、またはシロップ剤等を挙げることができ、非経口投与に適する薬剤としては、例えば、注射剤、点滴剤、貼付剤または坐剤などを挙げることができる。
【0051】
経口投与に適する薬剤には、添加物として、例えば、ブドウ糖、乳糖、D-マンニトール、デンプン、または結晶セルロース等の賦形剤;カルボキシメチルセルロース、デンプン、またはカルボキシメチルセルロースカルシウム等の崩壊剤または崩壊補助剤;ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、またはゼラチン等の結合剤;ステアリン酸マグネシウムまたはタルク等の滑沢剤;ヒドロキシプロピルメチルセルロース、白糖、ポリエチレングリコールまたは酸化チタン等のコーティング剤;ワセリン、流動パラフィン、ポリエチレングリコール、ゼラチン、カオリン、グリセリン、精製水、またはハードファット等の基剤を用いてもよい。
【0052】
注射あるいは点滴用に適する薬剤には、注射用蒸留水、生理食塩水、プロピレングリコール等の水性あるいは用時溶解型注射剤を構成し得る溶解剤または溶解補助剤;ブドウ糖、塩化ナトリウム、D-マンニトール、グリセリン等の等張化剤;無機酸、有機酸、無機塩基または有機塩基等のpH調節剤等の製剤用添加物を用いてもよい。
【0053】
3-メチル-1-フェニル-2-ピラゾリン-5-オンを有効成分とする脳保護剤およびALSの治療、病勢進行の抑制剤としてすでに臨床において使用されている一般名「エダラボン」、商品名「ラジカット(登録商標)」、「Radicava(登録商標)」:田辺三菱製薬株式会社製造・販売などは、本発明の薬剤および方法に使用する3-メチル-1-フェニル-2-ピラゾリン-5-オンまたはその生理学的に許容される塩として用いてもよい。
【0054】
本発明の一実施形態に係る筋萎縮性側索硬化症を治療または病勢進行抑制する方法は、治療または病勢進行抑制を必要とする患者に対して有効量の3-メチル-1-フェニル-2-ピラゾリン-5-オン原薬を含む薬剤を必要とする患者に投与することを含み、その薬剤中の3-メチル-1-フェニル-2-ピラゾリン-5-オン原薬は、フェニルヒドラジン量を分析して、3-メチル-1-フェニル-2-ピラゾリン-5-オン原薬中のフェニルヒドラジン量が20ppm以下である。
【0055】
この実施形態において、フェニルヒドラジンまたはその塩、第1酸性水および第1水溶性有機溶媒を含み、0.01μg/mLから10μg/mLのフェニルヒドラジン濃度を示すフェニルヒドラジン標準溶液中のフェニルヒドラジン含有量を測定することで第1測定値を得ること、3-メチル-1-フェニル-2-ピラゾリン-5-オン原薬、第2酸性水および第2水溶性有機溶媒を含む3-メチル-1-フェニル-2-ピラゾリン-5-オン試料溶液中のフェニルヒドラジン含有量を測定することで、第2測定値を得ることと、および第1測定値および第2測定値から、前記3-メチル-1-フェニル-2-ピラゾリン-5-オン原薬中のフェニルヒドラジン含有量を検出して、フェニルヒドラジン量が20ppm以下であることを決定すること、をさらに含んでもよい。
【0056】
本発明の一実施形態の筋萎縮性側索硬化症を治療または病勢進行抑制する方法は、薬物治療期間中に休薬期間を設けて、投薬期間および休薬期間を1単位としてこれを繰り返してもよい。例えば、薬物治療期間中に14日間の休薬期間を2回以上設け、投薬期間および休薬期間を1単位としてこれを2回以上繰り返す。例えば、投薬期間および休薬期間を2回繰り返す場合、「投薬期間、休薬期間、投薬期間、休薬期間」となるが、最後の休薬期間を設けない、「投薬期間、休薬期間、投薬期間」も包含される。
【0057】
休薬期間は、例えば7日間以上連続して薬物投与を行わない期間のことである。
投薬期間は、例えば14日間、または14日間中の10日としてもよい。14日間中の10日とは、連続する14日間のうちの任意の10日という意味であり、この投薬される10日は、連続する10日間でもよいし、1日~4日間の投薬しない期間で分断されている連続ではない10日間でもよい。投薬期間は、患者の状態を観察しながら好ましい期間を選択してもよい。本発明の一実施形態における休薬期間は、好ましくは14日間である。
【0058】
14日間の投薬期間および14日間の休薬期間を繰り返す場合における繰り返しの回数は2回以上であれば特に限定されない。
14日間の初回投薬期間後に14日間の初回休薬期間を設けた後に14日間中10日間の投薬期間および14日間の休薬期間を繰り返す場合における、14日間中10日間の投薬期間および14日間の休薬期間を繰り返す回数は1回以上であれば特に限定されない。他の実施の形態では、休薬期間を設けずに毎日またはほぼ毎日の投薬を繰り返してもよい。
【0059】
有効成分の1日あたりの投与量は患者の年齢や状態などの条件に応じて適宜選択可能である。一般的には成人に対して、3-メチル-1-フェニル-2-ピラゾリン-5-オンの量(有効成分が3-メチル-1-フェニル-2-ピラゾリン-5-オンの場合には3-メチル-1-フェニル-2-ピラゾリン-5-オンの量、有効成分が3-メチル-1-フェニル-2-ピラゾリン-5-オンの生理的に許容される塩の場合には3-メチル-1-フェニル-2-ピラゾリン-5-オン相当の量、以下、同様)として約15mg~約240mgであることが好ましく、約30mg~約180mgであることがより好ましく、約60mg~約120mgであることがさらにより好ましく、約60mgであることがとりわけ好ましい。
【0060】
休薬期間を設けずに毎日またはほぼ毎日の投与を繰り返す場合において、一般的には成人に対して、1日当たりの3-メチル-1-フェニル-2-ピラゾリン-5-オンの量として約60mg、約120mg、または約180mgであることが好ましく、約60mg、または約120mgであることが特に好ましい。
【0061】
投薬期間中の1日あたりの投与回数に制限はなく、患者の状態を観察しながら好ましい回数を選択してもよい。しかし、患者の負担等を考え3回、2回および1回が好ましく、1回がより好ましい。
【0062】
有効成分を投与するにあたっては、その投与経路は特に限定されず、経口的または非経口的に投与してもよい。さらに、ボーラス(bolus)投与および持続的投与が可能であるが、持続的投与が好ましい。持続的投与とする場合、点滴による静脈内投与、経皮投与、舌下錠を用いた経口投与並びに徐放化製剤を用いた経口および直腸内投与等が挙げられるが、点滴による静脈内投与が好ましい。注射によるボーラス(bolus)投与や点滴による静脈内投与を行う場合には、例えば、特開昭63-132833号公報および特開2011-62529号公報に記載された注射剤などを用いてもよい。これらの開示内容は、ここに参照することにより本明細書に組み込まれるものとする。
【0063】
点滴による静脈内投与とする場合、その投与速度は3-メチル-1-フェニル-2-ピラゾリン-5-オンの量で約0.5mg/分~約1mg/分とすることが望ましく、時間に換算すると約15分~約480分、好ましくは約30分~約120分、より好ましくは約30分~約60分、さらにより好ましくは約60分である。
【0064】
他の投与形態としては、1分あたりの3-メチル-1-フェニル-2-ピラゾリン-5-オンの投与量を約0.5mg~約1mgとする点滴による静脈内投与と実質的に同等である投与形態が挙げられる。1分あたりの3-メチル-1-フェニル-2-ピラゾリン-5-オンの投与量を約0.5mg~約1mgとする点滴による静脈内投与と実質的に同等である投与形態とは、薬物動態学的に実質的に同等であれば良い。具体例を挙げると、投与された3-メチル-1-フェニル-2-ピラゾリン-5-オンまたはその生理学的に許容される塩の血漿中の3-メチル-1-フェニル-2-ピラゾリン-5-オン未変化体濃度の経時変化が実質的に同等であると認められる投与形態である。この様な投与形態としては、例えば、経皮投与、舌下錠を用いた経口投与並びに徐放化製剤を用いた経口および直腸内投与等が挙げられる。
【0065】
本発明の一実施形態に係る3-メチル-1-フェニル-2-ピラゾリン-5-オン原薬中のフェニルヒドラジン含有量を分析する方法は、フェニルヒドラジンもしくはその塩、第1酸性水および第1水溶性有機溶媒を含むフェニルヒドラジン標準溶液を調製し;および/または3-メチル-1-フェニル-2-ピラゾリン-5-オン原薬、第2酸性水および第2水溶性有機溶媒を含む3-メチル-1-フェニル-2-ピラゾリン-5-オン試料溶液を調製することを含んでもよい。
【0066】
本発明の他の一実施形態に係る3-メチル-1-フェニル-2-ピラゾリン-5-オン原薬中のフェニルヒドラジン含有量を分析する方法は、フェニルヒドラジンの第1測定値が高速液体クロマトグラフィーを用いてフェニルヒドラジン標準溶液を測定した値であり、および/または、フェニルヒドラジンの第2測定値が高速液体クロマトグラフィーを用いて3-メチル-1-フェニル-2-ピラゾリン-5-オン試料溶液を測定した値である。
【0067】
本発明の他の一実施形態の筋萎縮性側索硬化症を治療または病勢進行抑制する方法は、有効量の3-メチル-1-フェニル-2-ピラゾリン-5-オン原薬を含む薬剤を必要とする患者に投与することを含む。ここで、3-メチル-1-フェニル-2-ピラゾリン-5-オン原薬は、フェニルヒドラジン量が20ppm以下であることを分析、決定した3-メチル-1-フェニル-2-ピラゾリン-5-オン原薬である。フェニルヒドラジン量の分析は、フェニルヒドラジンまたはその塩、第1酸性水および第1水溶性有機溶媒を含み、0.01μg/mLから10μg/mLのフェニルヒドラジン濃度を示すフェニルヒドラジン標準溶液中のフェニルヒドラジン含有量を測定することで第1測定値を得ること、3-メチル-1-フェニル-2-ピラゾリン-5-オン原薬、第2酸性水および第2水溶性有機溶媒を含む3-メチル-1-フェニル-2-ピラゾリン-5-オン試料溶液中のフェニルヒドラジン含有量を測定することで第2測定値を得ること、ならびに第1測定値および第2測定値から、3-メチル-1-フェニル-2-ピラゾリン-5-オン原薬中のフェニルヒドラジン含有量を検出してフェニルヒドラジン量が20ppm以下であること、を決定することを含む。
【0068】
本発明の一実施形態の筋萎縮性側索硬化症を治療または病勢進行抑制するための薬剤の製造方法は、3-メチル-1-フェニル-2-ピラゾリン-5-オン原薬中のフェニルヒドラジン量を分析して、フェニルヒドラジン量が20ppm以下である3-メチル-1-フェニル-2-ピラゾリン-5-オン原薬と少なくとも1つの薬理学的および製剤学的に許容される添加物を混合することを含む。ここに、フェニルヒドラジン量の分析においては、フェニルヒドラジンまたはその塩、第1酸性水および第1水溶性有機溶媒を含み、0.01μg/mLから10μg/mLのフェニルヒドラジン濃度を示すフェニルヒドラジン標準溶液中のフェニルヒドラジン含有量を測定することで第1測定値を得ること、3-メチル-1-フェニル-2-ピラゾリン-5-オン原薬、第2酸性水および第2水溶性有機溶媒を含む3-メチル-1-フェニル-2-ピラゾリン-5-オン試料溶液中のフェニルヒドラジン含有量を測定することで第2測定値を得ること、ならびに第1測定値および第2測定値から、3-メチル-1-フェニル-2-ピラゾリン-5-オン原薬中のフェニルヒドラジン含有量を検出してフェニルヒドラジン量が20ppm以下であること、を決定することを含む。
【0069】
本発明の更に他の一実施形態の薬剤は、フェニルヒドラジンの含有量が20ppm以下である3-メチル-1-フェニル-2-ピラゾリン-5-オン原薬を含む薬剤が静脈内投与するためのものである薬剤である。
本発明の一実施形態の筋萎縮性側索硬化症を治療または病勢進行抑制するための薬剤の製造方法は、少なくとも1つの薬理学的および製剤学的に許容される添加物が注射用蒸留水または生理食塩水を含む。
【実施例
【0070】
以下、本発明の実施形態を、実施例を用いて説明するが、本発明は下記の実施例に限定されない。本実施例において、原薬である3-メチル-1-フェニル-2-ピラゾリン-5-オンをエダラボン原薬(EDVPと記すこともある。)と記す。
【0071】
[試験例1]溶解液の検討
酸性水の濃度、酸性水と水溶性有機溶媒との比率等を変更して、エダラボン原薬およびフェニルヒドラジンまたはその塩が溶解しうる条件を検討する。また、HPLCでの測定を行ってフェニルヒドラジンのピーク形状を確認し、最適な、酸性水の濃度、酸性水と水溶性有機溶媒との比率を検討する。
【0072】
以下の溶解液(a)~(f)を用いて試料溶液を調製し、エダラボン原薬の溶解の状態を検討した。次いで、エダラボン原薬が可溶な溶解液について、その溶解液にて調製したフェニルヒドラジン溶液をHPLCを用いて測定し、フェニルヒドラジンのピーク形状を検討した。
【0073】
溶解液
(a) 0.1 mol/L塩酸試液
(b) 0.1 mol/L塩酸/アセトニトリル混液(8:2)
(c) 0.1 mol/L塩酸/アセトニトリル混液(6:4)
(d) 0.1 mol/L塩酸/アセトニトリル混液(4:6)
(e) 0.1 mol/L塩酸/アセトニトリル混液(2:8)
(f) 1 mol/L塩酸/アセトニトリル混液(6:4)
【0074】
試料溶液の調製
エダラボン原薬約0.10gを量り、溶解液(a)~(f)に溶かし、正確に10mLとし、試料溶液とした。
【0075】
フェニルヒドラジン溶液の調製
フェニルヒドラジン5μLを採取し、0.1mol/Lの塩酸試液を加えて正確に100 mLとした。この液0.lmLを正確に量り、溶解液(a)~(f)を加えて正確に10mLとしフェニルヒドラジン溶液(0.5μg/mL)とした。
【0076】
試験条件
HPLCによる測定を以下の移動相の送液条件で実施した。
移動相A: pH2.5の0.05mol/L過塩素酸ナトリウム水溶液/アセトニトリル混液(90:10)
移動相B: pH2.5の 0.05mol/L過塩素酸ナトリウム水溶液/アセトニトリル混液(10:90)
移動相の送液:移動相Aおよび移動相Bの混合比を次のように変えて濃度勾配制御する。
【0077】
【表1】
【0078】
各溶解液の結果を表2、フェニルヒドラジン溶液のクロマトグラムを図1から図4に示す。 EDVPの溶解性と、フェニルヒドラジンのピーク形状から判断し、(c)0.1mol/L塩酸/アセトニトリル混液(6:4)が最も適切であり、(f)1mol/L塩酸/アセトニトリル混液(6:4)も使用し得ることがわかる。
【0079】
【表2】
【0080】
*5)pH試験紙で測定
【0081】
なお、本試験例において、フェニルヒドラジンに比べ、フェニルヒドラジンの塩酸塩は、保存中に分解し難く取扱いが容易であり標準物質としてより適切であることが明らかになった。
そのため、本試験例において、フェニルヒドラジン塩酸塩を用いて調製した標準溶液を測定した。フェニルヒドラジンのピークから理論段数およびシンメトリー係数を確認し得る。
また、本試験例により、EDVPの溶解性およびフェニルヒドラジンのピーク形状という観点から、pHを2に調整するだけでは、エダラボン原薬の分析に使用するための最適な溶解液を調製することができないことが明らかになった。
【0082】
[試験例2]溶解液の更なる検討
試験例1の結果より、溶解液(c)0.1mol/Lの塩酸/アセトニトリル混液(6:4))が最も適した溶解液であることが明らかになったが、フェニルヒドラジン溶液のピーク形状をより好ましい形状にさせるため、0.1mol/Lの塩酸/アセトニトリル混液(7:3)の溶解液(g)を用いた標準溶液を調製し、比較を行った。
【0083】
以下の溶解液(c)と溶解液(g)を用いて標準溶液を調製し、フェニルヒドラジンのピーク形状を更に検討した。
【0084】
溶解液
(c) 0.1mol/L塩酸/アセトニトリル混液(6:4)
(g) 0.1mol/L塩酸/アセトニトリル混液(7:3)
【0085】
標準溶液の調製
フェニルヒドラジン塩酸塩約13.4mg(フリー体として約10mg)を精密に量り、溶解液(c)と溶解液(g)にそれぞれ溶かして正確に100mLとした。この液2mLを正確に量り溶解液(c)と溶解液(g)をそれぞれ加えて正確に20mLとした。この液2mLを正確に量り、溶解液を加えて正確に20mLとし、標準溶液とした(フェニルヒドラジン:1μg/mL)。
【0086】
試験条件
以下の移動相の送液条件で実施した。
移動相A: pH2.5の0.05mol/L過塩素酸ナトリウム溶液/アセトニトリル混液(90:10)
移動相B: pH2.5の0.05mol/L過塩素酸ナトリウム溶液/アセトニトリル混液(40:60)
移動相の送液:移動相Aおよび移動相Bの混合比を次のように変えて濃度勾配制御する。
【0087】
【表3】
【0088】
溶解液(g)の0.1mol/L塩酸/アセトニトリル混液(7:3)にて試料溶液を調製したところ、エダラボン原薬は可溶であった。
上記溶解液(c)と溶解液(g)で調製した標準溶液の測定結果を表4および図1図5に示す。
本試験により、溶解液(g)を用いることで、フェニルヒドラジン溶液のピーク形状をより良好な形状にできることが明らかになった。
【0089】
【表4】
【0090】
[実施例1]
0.1020gのエダラボン原薬を、0.1mol/Lの塩酸/アセトニトリル混液(体積比7:3;以下、溶解液と記す)に溶かして正確に10mLとした第1試料溶液を準備した。
別に、13.693mgのフェニルヒドラジン塩酸塩(フェニルヒドラジンとして約10mg)を、溶解液に溶かして正確に100mLとした。得られた溶液2mLを正確に量り、溶解液を加えて正確に20mLとした。得られた溶液2mLを正確に量り、溶解液を加えて正確に20mLとした第1標準溶液を準備した(フェニルヒドラジン:1μg/mL)。
別に、5μLのフェニルヒドラジンを、溶解液に溶かして正確に100mLとした。得られた溶液1mLを精密に量り、溶解液を加えて正確に10mLとした。得られた溶液1mLを精密に量り、0.1010gのエダラボン原薬と混合し、溶解液を加えて正確に10mLとした第1添加試料溶液を準備した。
一定時間経過後の第1標準溶液、第1試料溶液および第1添加試料溶液をそれぞれ正確に10μLずつとり、次の条件で高速液体クロマトグラフィーにより試験を行い、それぞれの溶液中のフェニルヒドラジンピークのピーク面積(フェニルヒドラジンの測定値)を自動積分法により測定した。
エダラボン原薬中のフェニルヒドラジンの量は、以下の式3により求めることができる。
【0091】
試験条件
・溶解液の脱気/窒素バブリング:なし
・調製後の第1試料溶液、第1標準溶液および第1添加試料溶液の保管温度:5℃
・容器(第1試料溶液、第1標準溶液および第1添加試料溶液の調製および保管):褐色ガラス瓶
・検出器:紫外吸光光度計(測定波長:225nm)
・カラム: オクタデシルシリル化シリカゲル充填カラム (YMC-Pack Pro C18)
・カラム温度:40℃付近の一定温度
・移動相:移動相A100%で開始し、移動相B100%まで濃度勾配制御
移動相A:pH 2.5の0.05mol/L過塩素酸ナトリウム水溶液/アセトニトリル混液(体積比9:1)
移動相B:pH 2.5の0.05mol/L過塩素酸ナトリウム水溶液/アセトニトリル混液(体積比2:3)
*pH2.5の0.05 mol/L過塩素酸ナトリウム水溶液:過塩素酸ナトリウム7.0gを水1000mLに溶かし、過塩素酸を加えてpHを2.5に調整した。
【0092】
第1標準溶液、第1試料溶液および第1添加試料溶液におけるフェニルヒドラジンおよび/または3-メチル-1-フェニル-2-ピラゾリン-5-オンの安定性調査の結果を表5および図6に示す。
【0093】
【表5】
【0094】
経過時間(h)は、第1標準溶液、第1試料溶液または第1添加試料溶液を調製して30分以内に最初にHPLCへ溶液を注入した時点をそれぞれ経過時間0時間として、以降の経過時間を算出した。
【0095】
式3:エダラボン原薬中のフェニルヒドラジンの量 (ppm) = M/M×A/A×1×0.748
ここで、
:第1標準溶液におけるフェニルヒドラジン塩酸塩の秤取量 (mg)
:第1試料溶液におけるエダラボン原薬の秤取量 (g)
:第1試料溶液のフェニルヒドラジンのピーク面積 (μV秒)
:経過時間0時間における第1標準溶液のフェニルヒドラジンのピーク面積 (μV秒)
0.748:フェニルヒドラジン塩酸塩のフェニルヒドラジンへの換算係数
【0096】
第1標準溶液のフェニルヒドラジンピーク面積の初期値に対する割合は、28時間経過した後でも90%以上であり、溶液中のフェニルヒドラジンが安定であることがわかる。
また、第1添加試料溶液のフェニルヒドラジンピーク面積の初期値に対する割合は、5時間経過した後でも90%以上であり、溶液中のフェニルヒドラジン、3-メチル-1-フェニル-2-ピラゾリン-5-オンが安定であることがわかる。さらに、第1試料溶液では、5時間経過した後でもフェニルヒドラジンのピーク面積が変化しておらず、溶液中の3-メチル-1-フェニル-2-ピラゾリン-5-オンが安定であることがわかる。
また、0.1mol/Lの塩酸/アセトニトリル混液(体積比7:3)の溶解液を使用したことで、エダラボン原薬およびフェニルヒドラジンを完全に溶解することができ、かつ、溶液中に含まれるフェニルヒドラジン含有量を正確に測定することができた。
さらに、HPLCを行う際に、上述の通り、移動相Aおよび移動相Bを設けたことで、溶液中に含まれるエダラボン原薬を確実に分離することができた。また、移動相Aおよび移動相Bの組成比を上述の比率にしたことで、フェニルヒドラジンの保持時間付近に他のピークが存在せず定量的に測定ができ、また、試料溶液中のエダラボン原薬を短い時間で溶出でき、2段階の移動相を設けるものの、効率的に、HPLCを実施することができた。
【0097】
以上より、本方法によれば、溶解液の脱気/窒素バブリングや溶液調製後の迅速な測定などの煩雑な操作を行わずに、エダラボン原薬中のフェニルヒドラジン含有量を正確に、定量的かつ簡便に測定できることが明らかになった。
【0098】
[実施例2]
13.517mgのフェニルヒドラジン塩酸塩(フェニルヒドラジンとして約10mg)を、0.1mol/Lの塩酸/アセトニトリル混液(体積比7:3;以下、溶解液と記す)に溶かして正確に100mLとする。得られた溶液2mLを正確に量り、溶解液を加えて正確に20mLとする。得られた溶液2.5mLを正確に量り、溶解液を加えて正確に100mLとして第2標準溶液を準備した(フェニルヒドラジン:0.25μg/mL)。
第2標準溶液を正確に10μLとり、次の条件で高速液体クロマトグラフィーにより試験を行い、溶液中のフェニルヒドラジンピークのピーク面積(フェニルヒドラジンの測定値)を自動積分法により測定する。
【0099】
試験条件
・溶解液の脱気/窒素バブリング:なし
・調製後の第2試料溶液および第2標準溶液の保管温度:5℃
・容器(第2試料溶液および第2標準溶液の調製および保管):褐色ガラス瓶
・検出器:紫外吸光光度計(測定波長:225nm)
・カラム:オクタデシルシリル化シリカゲル充填カラム(YMC-Pack Pro C18またはそれと同等なカラム)
・カラム温度:40℃付近の一定温度
・移動相:移動相A100%で開始し、移動相B100%まで濃度勾配制御
移動相A:pH2.5の0.05mol/L過塩素酸ナトリウム水溶液/アセトニトリル混液(体積比9:1)
移動相B:pH2.5の0.05mol/L過塩素酸ナトリウム水溶液/アセトニトリル混液(体積比2:3)
*pH2.5の0.05mol/L過塩素酸ナトリウム水溶液:過塩素酸ナトリウム7.0gを水1000mLに溶かし、過塩素酸を加えてpHを2.5に調整した。
【0100】
第2標準溶液におけるフェニルヒドラジンの安定性調査の結果を表6示す。
【0101】
【表6】
【0102】
経過時間(h)は、第2標準溶液を調製して30分以内に最初にHPLCへ溶液を注入した時点を経過時間0時間として、以降の経過時間を算出した。
【0103】
また、第2標準溶液を用いる場合、第1試料溶液中のエダラボン原薬中のフェニルヒドラジンの量は、式4により求めることができる。
【0104】
式4:エダラボン原薬中のフェニルヒドラジンの量 (ppm) = M/M×A/A×0.25×0.748
ここで、
:第2標準溶液におけるフェニルヒドラジン塩酸塩の秤取量 (mg)
:第1試料溶液におけるエダラボン原薬の秤取量 (g)
:第1試料溶液のフェニルヒドラジンのピーク面積 (μV秒)
:経過時間0時間における第2標準溶液のフェニルヒドラジンのピーク面積 (μV秒)
0.748:フェニルヒドラジン塩酸塩のフェニルヒドラジンへの換算係数
【0105】
第2標準溶液のフェニルヒドラジンピーク面積の初期値に対する割合は、12時間経過した後でも90%以上であり、溶液中のフェニルヒドラジンが安定であることがわかる。また、本実施例で調製した第2標準溶液が、実施例1で調製した第1標準溶液と同様に、本発明の分析方法に使用し得ることが明らかになった。
このことから、本方法によれば、溶解液の脱気/窒素バブリングや溶液調製後の迅速な測定などの煩雑な操作を行わずに、エダラボン原薬中のフェニルヒドラジン含有量を定量的かつ簡便に測定できることが明らかになった。
【0106】
[実施例3]
溶解液中の有機溶媒をアセトニトリルからメタノールに変更し、溶液におけるフェニルヒドラジンおよび/または3-メチル-1-フェニル-2-ピラゾリン-5-オンの安定性を確認した。
0.1mol/L塩酸試液とメタノールの混液を調製し、EDVPが可溶な範囲で、より有機溶媒の比率が低くなるように(これまでの検討で、有機溶媒の比率を移動相の比率に近づけるとピーク形状を良くなるため)溶解液を選択する。溶解液を変更し、その他の条件は実施例1に準じて溶液におけるフェニルヒドラジンおよび/または3-メチル-1-フェニル-2-ピラゾリン-5-オンの安定性を調査した。
下記の3種類の溶解液にて試料溶液を調製した。
【0107】
[1]0.1mol/L塩酸/メタノール混液(7:3)
[2]0.1mol/L塩酸/メタノール混液(6:4)
[3]0.1mol/L塩酸/メタノール混液(5: 5)
【0108】
その結果、[3]の溶解液でEDVPが可溶であった。よって、0.1mol/L塩酸/メタノール混液(5:5)にて添加試料溶液(エダラボン原薬:0.10111g、フェニルヒドラジン:5μL)、標準溶液(フェニルヒドラジン塩酸塩:13.154mg)、試料溶液(エダラボン原薬:0.10275g)を調製し、溶液の安定性の調査を実施した。
式3の計算方法に準じた方法によりエダラボン原薬中のフェニルヒドラジンの量を求めることができる。
0.1 mol/L塩酸/メタノール混液(5:5)溶液におけるフェニルヒドラジンの安定性調査の結果を表7および図7に示す。0.1mol/L塩酸/アセトニトリル混液(7:3)を用いて調製した実施例1の結果に比べ、フェニルヒドラジンの分解が速い傾向にあった。
【0109】
【表7】
【0110】
*15)経過時間 (h)は、添加試料溶液、標準溶液および試料溶液を調製して30分以内に最初にHPLCへ溶液を注入した時点をそれぞれ経過時間0時間として、以降の経過時間を算出した 。
【0111】
フェニルヒドラジンは、光や酸素によって分解しやすい。その為、通常であれば、溶液中のフェニルヒドラジンの分解を防ぐために、事前に溶解液に脱気および窒素バブリングを行っておく、溶液調製後に迅速に測定を開始する等、煩雑な操作が必要である。しかし、本発明の実施形態では、事前に溶解液に脱気および窒素バブリングを行っておく必要がなく、長時間溶液中のフェニルヒドラジンの分解を抑制できることが判明した。
【0112】
実施例1から実施例3の結果より、塩酸/アセトニトリル混液(溶解液)と塩酸/メタノール混液(溶解液)を用いた本発明の実施形態に基づく分析方法で、溶解液の脱気や窒素バブリングをすることなしに、長時間溶液中のフェニルヒドラジンの分解および3-メチル-1-フェニル-2-ピラゾリン-5-オンの分解を抑制でき、エダラボン原薬中のフェニルヒドラジン含有量を定量的かつ簡便に測定できることが明らかになった。
【0113】
本発明のさらなる変更やバリエーションは、上記の教示に基づいて可能である。従って、添付の請求項の範囲において、本明細書中の特定の記載以外にも本発明を実施しえることを理解されたい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7